ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第28回門下発表会でした。講評と次回のことと、大事な告知があります。

こんにちは。秋すっ飛ばして冬来ましたね。1個前の記事は真夏だったのに不思議ですね。

何度も言ってますがいくつか書きかけの記事はあるので、僕がその気になるのを末永くお待ちください・・・。

 

さて先日、第28回の門下発表会が開催されました。

 

今回はソロ12人、アンサンブル2組の参加でした。

とにかくハイレベルな会でした。元々うまい子たちもそうですが、レッスンに来る回数が多い子が増えてきた、というのも理由になってくるでしょうか。

1回のレッスンで出演する子もいますしそれでいいとは思っていますが、やはり2回3回4回と重ねていくうちに本人の理解度も上がり、演奏の質も上がっていくのは当然のことなのでしょう。

 

この回は「上達」を目的とした発表会です。1人ないし少人数で演奏する場を作り、それに向けて練習をしレッスンを受けて披露すれば必ず技術的向上が見られる、というのがコンセプト。なので続けていけばいくほど平均レベルの向上は当然と言えば当然、でしょうか。嬉しいことです。

 

次回も決まっています。ピアノ伴奏つきのファゴットソロ、もしくはアンサンブル(ファゴットを含まなくても可)でのエントリーお待ちしております。下記概要です。

 

春のひとときコンサート(第29回とのむら門下発表会)

2024年3月23日(土)お昼以降開演、夜終演

立川サロンスタジオFIX(各線立川駅より徒歩3分)

参加費(会場代、伴奏者謝礼、レッスン代1回分込み)

ファゴットソロ 社会人15000円、学生10000円

アンサンブル ひとり6000円(編成によって多少の変動あり)

エントリーは直接ご連絡頂くか、下記フォームまで。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

これが大事な告知。ほとんどまだ何も決まっていませんが・・・

次々回の発表会も決まっています。ただし次々回は第30回を記念として、いつもと違ったスタイルでの開催を計画しています。

いつものような公募は行いませんので、次々回以降の参加を考えている方はその次、来年11月以降のお知らせをお待ちください。次々回への参加はこちらからお声掛けさせて頂いています。

第30回となる次々回開催は、いつものような発表会形式ではなく演奏会形式を取り、入場無料ではありますがチラシや(電子)チケットを作り集客をするつもりです。このブログや各種SNSでももちろんお知らせしますので、気になる方はぜひ聴きに来て頂ければ幸いです。

日付は2024年7月28日(日)、午前中リハーサル、午後以降本番予定です。会場は

国立オリンピック記念青少年総合センター カルチャー棟 小ホールを予定しています。

きちんと告知しますので、続報をお待ちください。

 

 

さてここからは、第28回参加者向けの講評記事となります。関係者以外の方は次の記事をご期待ください。いちおう書き進めてはいるのです・・・・

 

1.演奏会用独奏曲/ピエルネ

初参加者は一番最初、と決めているための出演順でした。じっくり準備を進めただけあって非常に完成度の高い演奏となりました。本番の演奏中、非常によく集中できている印象で、聴いている方も引き込まれている人が多かったように思います。

流れやフレーズを作るのがうまくなったので、今回の経験はオケ中でソロや旋律を吹くときに活きるのではないでしょうか。フレーズに到達点を作り、そこに向けての流れと到達した後の流れを考える。これだけなのですが、それがなかなか難しいですね。今回は非常によく表現できていました。

改善点なんて挙げることもないのですが・・・強いていえば表現に関して、「やっているつもり」の点が多いこと。見ていれば何をしたいのかはよく分かりますが、音に現れていないことも多々ありました。やはり楽器の音は物理現象。具体的な変化を作ることを意識づけていきいましょう。特にフォルテやクレッシェンドを作るとき、息を入れるだけにならないよう、しっかりリードが振動しそれがボーカル、楽器に伝わって音の変化になっていく感覚をもって練習しましょう。

小さいことだけど長めの休符の時、はやくリードくわえると聞いている方も「あれ?」となるのでやめた方がいいかな。緊張していて間が持たない気持ちはわかるのですが・・・

次回以降の参加も楽しみにしていますね!

 

2.ファゴット小協奏曲/ダビッド

レッスンの最後の最後までアーティキュレーションの話になってしまったこと、申し訳なくは思ってます、がしっかり伝わった、と僕は思っていますがどうだったかな。演奏とは再現であること。再現とは楽譜情報の引き出しであること。それでも人や場所が違えば出てくるのが「個性」であること。理解してくれたら嬉しいです。

表現への欲求はいつも通り素晴らしく、旋律を美しく歌うことができていました。音量などの変化も素晴らしいのですが、譜面を横方向に見てしまうクセがついてきたようで(楽譜通り、に僕がかなり言及したせいだとは思うのですが)ピアノとのアンサンブルはややイマイチでした。タイミングはあっているけど、和音の進行への意識付けがなかったこと、すこし残念でした。

やっぱり必要なのは客観性。自分の演奏がどう聴こえているか、同時に聴く側に回れないのは演奏者が抱える一生のジレンマですが・・・想像することはできます。録音をとってみるのもいいでしょう。君の考えるちょっとしたフレーズのこだわりとか、僕はとっても素敵だと思うけど、聴いている人はもっと大きな問題を「惜しいな」と思って聴いています。そこに気付くことができれば・・・。

演奏の技術は大したものです。技術はいくらあってもいいですが、何のための技術なのか、よく考えて練習しましょう。

 

3.ファゴット大協奏曲より第2.3楽章/フンメル

どこまでいっても大曲。細かいフレーズのことにかなり言及してきましたが、僕の言ったことをよく噛み砕いて理解してくださったのが演奏を聴いていてよくわかりました。「僕の言う通り吹きなさい」なんて一生誰にも言うつもりないけど、伝わっているのがわかると嬉しいものです。僕はかなり細かく言いましたが、「言う通り」ではなくご自身の頭で考えて演奏しているのが伝わってきて、とってもいい2楽章だったと思います。このレベルでこの曲の2楽章が吹ける人、そうはいないでしょう・・・!

3楽章、もう本当にこれはどうしようもないかもしれませんが疾走感がもっと欲しかった。もちろんテンポを上げようということではなく、ハツラツとした感じといいますか、ちょっと元気がなく優しい印象で終始いってしまったのが勿体なかったでしょうか。技術的には言うこと何もないです。よく練習してあるし見事な超絶技巧でございました。フレーズの取り方は2楽章同様とってもよかったのですが・・・。逆に疾走感への意識があればもっとテンポゆっくりでも良かったくらい。古典派の曲はそこが本当に難しいですね、ロッシーニしかりモーツァルトしかり。

それにしてもフンメルを吹き切れたこと、本当に凄いことです。自分への自信にしていってくださいね。

 

4.5つの小品/イベール

ほんと、これぞトリオダンシュ、と言える演奏だったと思います。レッスンの時も話したけど、トリオダンシュって「フルートとホルン見つからないからこの3人で」みたいな気持ちでやるものではないですね。この3人で(楽器で)遊ぼう、くらいの気持ちが一番。作品への愛で取り組んでもいいですね、それくらい魅力的な作品がたくさんありますから。

レッスンでかなり言及したそれぞれのバランスや個人個人のダイナミクスについては非常によく考えられていました。楽譜情報の違いもそうですが、楽器ごとの差も考えて今回のように演奏できると違う楽器のアンサンブルは面白みが増しますね。また声部の違う楽器3本なので本来あまり気にならないはずの音程が、今回けっこう気になりました。チューナーで真ん中を取る、というより楽器が美しく響く音程感、それぞれ探ってみるといいかもしれません。

1楽章はテンポ感、というかスピード感がもっとあって良かったかな?丁寧ではあったけど少し退屈に感じてしまうテンポ感かも。他楽章との対比もあるしオープニングだし、飛ばしていってもよかったかも。2.3楽章は箇所箇所でいい攻め具合が聴けて愉快でした。地味だけど個人技もそれぞれ光っていました。4楽章はアンサンブルが丁寧な分、積極性に欠けてしまう場所がちょこちょこ。テンポの変化があるあたりが特に・・・。スタミナ問題がなんとかなっていたのでそれだけでも及第点ではあるのですが。4楽章→5楽章への切り替えが非常によかったと思います。テンポ感は今のまま、シンプルな旋律ラインを彩る要素がもっと色々見え隠れするとよかった。隠れるのは3人ともうまいのだけど・・・

オーボエは音量や音色の操作が自由自在なのが本当に素晴らしいのですが、自由自在である、ということはちょっと間違えれば逸脱してしまう、ということ。いったん少し不自由(=ダイナミクスや音程の変化が少ない)なセッティングを試し、今と同じことをしてみる、という工夫を試してみてもいいかも。

クラリネットは間を受け持つのは達人級でそれはそれで大事にしてほしい技術ですが、やっぱり木管アンサンブルは1人1人がスターであってほしい。オーボエファゴットを従えてクラリネットが主役に、というときにどうしても負けてしまうのが惜しかった。まずは主張し慣れるところから。「やりすぎ」って怒られるのを心の奥底で喜べるような奏者に。

ファゴットはアンサンブルで聴くとここ数年での上達を本当に感じました。見劣りしないのは当然として、なにかと忙しい曲ですがいろいろな役割をいい具合にこなせていました。アーティキュレーションの差をもっと音楽に活かせるようになるとより魅力的な演奏ができるようになるでしょう。例えば短い音も鋭いのかコンパクトなのかで違ってくるし、レガートの旋律はいい意味で機械的に取っていくのか歌いながら取るのかでやっぱり違ってきます。色々試して遊んでみるといいですよ。

非常にいい3人だと思います。やってもやっても面白いのがトリオダンシュ。またの参加をお待ちしています~!

 

5.無伴奏パルティータ/J.S.バッハ

今回これ吹きました。丁寧にコンパクトに、がコンセプト。どうだったかな。

 

 

6.狂詩曲/オズボーン

なめるな危険オズボーン、ってところですか。安定感と再現性の高さはさすがの一言。何よりキツいところをコンパクトにまとめて崩壊しないスタミナとリスク配分がお見事でした。この曲が吹ける用のリード、ってあると思うんだけどその準備ができればもっと違ったのかな・・・。

とは言えレッスンで言った通り、死ぬほど指定の細かいこの曲、短期間でよくすべての要素を拾ってきたな、とも思います。ある種、この曲は要素を拾いつくして傷を減らしてスタミナ配分するだけの曲だとも思うから、その点は完璧に近かったと思います。この曲知らない人にこの曲の良さは伝わっても難しさってなかなか伝わらない気がする・・・。

改善点があるとすればダイナミクス、特に小さい方がもっと聴きたかった。ピアニッシモ、というより細くて消え入りそうな音、みたいなものがほとんど聴けなかったのでそこは残念。この曲のピアニッシモはその手の音が欲しいよね。難しいことは重々承知していますけれど。

ある意味で無伴奏の面白いところが詰まった曲だったと思います。楽しめていれば何より!アーノルドだのなんだの、バッハ以外の無伴奏いろいろあるので探してみて、懲りずにまたやってみてくださいね。

7.ファゴット協奏曲第1楽章/ウェーバー

いい意味で無駄を美しく省いた非常に練度の高いウェーバーだった、と思います。雑に済ませてしまっていたテクニックを丁寧にやるとここまで純度の高い連符が並ぶんですね。自分でも録音で確認してみてください。ウェーバーにおいてみんなが取り組む、技術的な指標は完全にクリアしていると思います。素晴らしいことです。

また少し気になっていた音程もだいぶ改善されています。フリックだのハーフだのを中心とした細かいテクニックの改善に由来するものだと思います。地味だけどとっても大事なことなので抜け落ちてしまわないように。←これが一番難しかったりします

今回、非常にオーソドックスなスタイルで演奏できていたと思います。星の数ほど音源や演奏のあるこの曲、実は型破りなものがたくさん存在します。いま色々聴いてみると発見が多いかもしれません。「あれもこれもやればよかった」とまで思えれば今回の演奏がうまくいった証拠です。

それからピアノとのアンサンブルが非常にお上手でした。普段からピアノの音を想像して演奏いていなかったらこうはならないと思うので、この意識は他の曲でも持っていてください。オケや室内楽でも同様です。

 

8.プルミエソロ/ブルドー

冒頭、めちゃくちゃ良かったと思います。準備やコンディションに不足があっても、この曲の冒頭があそこまで美しく吹けることはこだわりを持っていい練習ができていた証拠です。まず誇りましょう!僕も鼻が高いですこれは。

テクニカルについて僕がここであれこれ言う必要はないと思います。最後のレッスンで言ったような、地味だけど確実に根付いていく練習を今後は心がけていきましょう。それでも動かないときは動かない。身体や脳、心のリフレッシュをするだけで急に動くようになる、なんてこともあります。練習量でねじ伏せる、みたいな時期はもう過ぎ去ったのかもしれないね。量ではなく質。何より本番時期を見据えてじっくり積み重ねていくこと。

楽器が「上手い」ということは、大好きだったり大尊敬してる仲間にできる唯一の恩返し、と僕は考えています。自分が「上手い」ことで仲間を幸せにできること、ってこれ以上ない喜びなのよ。だからそのために「テクニックを積み上げる」質のいい時間は絶対に必要。でもそれと同じくらい、今回みたいな冒頭が吹けるちからも「上手い」演奏には必要不可欠なものだと僕は思います。今後に期待しましょう!

 

9.ファゴット協奏曲イ短調第1楽章/ヴィヴァルディ

派手さが売りのこの曲、君はどうなるか、と思っていたけど、ちゃんと派手に演奏できていた、と思います。音がデカいとか小さいとか指や舌が動く、ということより「派手さを演出する」ということがどれだけ難しいか。今回、そこにこだわりの見えるいい演奏だったと思います。

「別に難しくも別段早くもないけど積み重なっていて難しい」タイプの曲。本番はなんとか間に合ったけど、この手の曲をサッと攻略できるようなることが、激ムズ曲を時間かけて演奏できるようになることよりも大事なことだと僕は考えています。この曲の難しいところくらいの難易度の難所(変な日本語だな)がじっさい合奏なんかで一番多いからね。サッと攻略してほしかった理由は他にもあるので後述。

音の濃淡が良く表現できていたので、あとはその濃淡のままフレーズ(=到達点)がもっと見えると良かった。ソリストが忙しいことをしている間も和声は動いているし、そこに意識を向ける余裕がなかったのもちょっと勿体なかった。それからヴィヴァルディの協奏曲、曲の終わりは通奏低音吹いた方がいいですね、これは発見でした。

1楽章の攻略に時間がかかりすぎてしまった問題点として、やっぱりヴィヴァルディの協奏曲は全楽章セットで聴きたいね・・・!当然それ前提の曲構成になっているし、出来がよかったぶん、終わってしまうのが惜しかったです。そのうち2.3楽章に挑戦してもいいけど、ホ短調やら何やら他のものに挑戦するときはぜひ全楽章を。要領よく譜読みができる=上手い人、とも言えるものね。

 

10.ソナタ第3番より1.2楽章/ヴィヴァルディ

まず全体として、流れがスムーズで非常に良かったと思います。テンポ的にも和声感的にも通奏低音にうまく乗れているので、聴いていて心地のいい演奏でした。技術的にはやっぱり音程が下から過ぎるのがね・・・いっそ下のまま取っていればいいんだけど持ち上げちゃう分、音色のイメージとして暗く聴こえてしまうのが勿体ない。ちょっと明るすぎるかな?くらいのリードがあっているのかも。

1楽章のテンポ感、僕はすごく好きなんだけど、3拍子がもっと見えると良かった。前述の通り流れがいいのであまり気にならないんだけど、拍子が見えればメリハリも効いてくるしフレーズも輪郭がハッキリしてきたはず。この辺はもう少しじっくりレッスンで見てあげられればよかったのかもしれません。2楽章も同様、4拍子の表現が甘いところが多く、ほとんど2拍子に聴こえてしまうのが惜しい。4拍子って基本なようで表現するのが非常に難しくて、シンプルなつくりであるバロック時代の作品は特に気を付けて演奏しないとどこに強拍がきているか分からなくなってしまうので注意が必要です。

繰り返し後の変化をきっちり楽しんでいる演奏なのも非常に好印象でした。精度がもっと高い方がいいのは確かですが、"遊んでいる感"が出ていました。しかし遊んでいる感はもっとあったほうが良くて、やり方としてはアーティキュレーションを少し誇張してみる、なんかが今回に関しては良かったかも。時間があったらおさらいしてみて。

 

11.ファゴットソナタヘ長調/ドゥビエンヌ

精度の高い演奏でした。特に素敵だなと思ったのが長調の表現。ちょっとしたスタカートの跳ね方とかスラーの切り方とか音程感とかで表現されているように聴こえました。短調はみんなこだわるのだけど長調がうまい子はなかなかいません。また全体としていい意味でコンパクトな表現幅だったのも良かったです。室内楽ですしフレンチバロックということで、あまり盛大な音楽にはならないので今回くらいの幅感が聴いていて非常に小気味よかったです。狙ってコンパクトに演奏していたのであれば大正解です。狙ってなかったのであれば・・・作品によりますね。またそれはレッスンで。

技術的にはスタカートの速いタンギングがとても上手かったと思います。変にテンポを上げてしまわなかったことも幸いしていい表現に落ち着いていました。

合わせも少なく当日もいきなりなので仕方ないと言えば仕方ないのですが・・・自分で気付いているとは思うけど、通奏低音への意識が抜けて練習してしまっている箇所は非常に勿体なかったですね(2楽章の冒頭はまさにその結果でしょう)いつだって共演者がそこにいる意識を。これは受け売りですが、普段の練習環境を空間ごと切り取って本番会場に持っていくイメージを持つといいです。そのつもりでいると普段の練習から頭の中にオケ(ピアノ)が鳴ってないとうまくいかないからね。

教え子の演奏聴いて自分も演奏したくなる、という数年に1回ある現象が僕にはあるのだけど、今回それでした。この曲、いいですね。僕もどこかでやります。

 

12.ファゴット協奏曲1楽章/シュターミッツ

ある種、たくさんの縛りがあるような曲に感じたと思います。本来はすごく自由でハツラツとした曲なのでしょうが・・・とにかく演奏の様式を分かりやすく学べる、ということで、僕としても不本意なのですがこの曲に関してはそんなレッスンをするようにしています。

しかし性格なのか、様式そのものを楽しんでいる印象が本番はあり、縛りを感じさせない良い演奏ができていたと思います。この曲で得た学びはほぼすべての曲に使える要素なのでぜひ今手近にある譜面から活かして練習してみてください。

縛りにしばったレッスンをしたので仕方のないことですが・・・最初から最後まで音色的な変化がなかったのは少し残念でした。フォルテなのかピアノなのか、エスプレッシーヴォなのかドルチェなのか、レガートなのかレジェーロなのか。はっきり差をつけて演奏しようとすればおのずと音色(発音、音のディレクション、処理の仕方など)は変わっていくはずなので、その手の自発的な工夫が欲しかったなと思うところです。レッスンで触れられたのが強弱くらいだったのもちょっともったいなかったかなぁ・・・

とはいえ、地味難しいこの曲を高い精度で演奏できていたと思います。トリルへの苦手意識もだいぶ薄れたでしょうから、今度はウェーバーかダビッドか、ってところでしょうか。

 

13.演奏会用独奏曲/ピエルネ

フランスの風を感じる演奏でした。レッスンでも言ったけどあくまで純日本人の僕たちには「フランス風」が限界なのかもしれませんが・・・いやそれでも、確かに今回のピエルネは良かったと思います。MVPと言ってもいい。今回の演奏は、かつて僕があまり好きじゃなかったピエルネではなく、僕が大好きになったピエルネだったと思います。

表現過多に気を付けつつも、狙ったであろう表現幅がきちんと聴く側にも伝わっていました。いい想像力とバランス感覚だと思います。またピアノとのアンサンブルも精度が高く、ピアニストがいい顔して弾いてくださっていました。どこまでいっても二重奏、なんだよね。

しかしやっぱり難しいのは8分6拍子。レッスン時よりはだいぶ美しく取れるようになっていましたが、時折2の倍数がチラついてしまう・・・。やはり一朝一夕にはいきませんので、次またこの拍子に出会ったら今回のような意識をしてみて。

細かい傷はちっとも気にならない演奏でした。自分で気になるなら気を付けてみてほしいのは、ほとんどの傷が急いだブレス直後であるということ。ブレスの前後は自分でも理解できないようなミスが多発するので、普段の練習から警戒しておくこと。備えておけばだいぶ減ってきます。お試しください。

 

14.三重奏曲/プーランク

まさに満を持して、でしたね。トリを飾るにふさわしい演奏だったと思います。曲の魅力とピアニストの地力によるところも大きいとは言えますが・・・

僕が常々言っている「アンサンブルとはけっきょく個人技の集合体」であることをよく理解しているように見えました。それぞれが自分の頭できっちり考えて演奏し、リハーサルはそれのすり合わせ作業であるということ。すり合わせるだけで、別に考えを変える必要があるかは個人の判断に委ねられる、というのも生演奏のいいところです。3人がそれぞれ、自分の思うプーランクを演奏できていたと思います。細かい傷はあっても、あと10回リハーサルをしてもこれ以上の演奏にはならないです(良くも悪くも、後述します)

まずオーボエファゴットも、シンプルに以前と比べて楽器が上手くなりました。今回の演奏において胸を張っていい出来だったと思います。ピアノは抜群だったので何も言うことはないですが・・・とにかくピアニスト特有の「アンサンブルモード」のオンオフが切り替えられるようになるともっといいですね。下等な管楽器ども、ひれ伏せ!みたいな箇所がもっと何か所もあっても良かった。そこが三重奏のいいところで、二重奏だと弦や管は完全に力負けしてしまいますが三重奏だと意外といい勝負ができたりするし、そこが魅力だったりもします。もっと楽器の王様であってよかったと思います。

オーボエは「優等生」も「ヤンチャ」のどちらもこなせる、抜群に表現力豊かな演奏だったと思います。そこに「ひょうきんもの」や「みんなの憧れる超絶美少女」なんてキャラクターも、追加してみませんか。いつだって主役級であってほしい楽器、まだまだ表情の引き出しはあっていいものです。

ファゴットはとにかく「自分の頭で考えて吹く」がよく出来ていました。当たり前のことに思うかもしれないけど、すごく上手くてもこれができない人は多いので自分の長所だと思ってください。発音や表情の変化も豊かでピアノやオーボエに決して色彩感で負けていなかったです。力負け?そりゃしますよ。していいです。色味や響きで勝負しましょう。以前個人レッスンで言及しまくっていた細かいテクニック(運指とか息の入れ方とか)はだいぶ改善しましたが、もっとこだわれるはず。今回すごく丁寧に練習したと思うので、この経験を活かしつつ、テクニカルにもっとこだわっていきましょう。

 

 

第27回門下発表会でした。講評と次回のこと

こんにちは!やはり年3回更新のブログとなっています。災害的に暑い日が続いていますがいかがお過ごしですか?

僕は最近は色々な出会いと経験により、演奏に対しての精神的な向き合い方が変わってきています。精神的なところ、ってあんまり気にしたことないんだけど変わるものですね。こうご期待(?)

 

それから最近、YouTubeでの活動を再開(?)しました。「ふぁごまみれ」という団体・チャンネル名で動画投稿をしています。よかったらチェックしてみてくださいね↓

ふぁごまみれ - YouTube

 

さて先日、第27回となる門下発表会が開催されました。

 


決して広い会場ではないのですが、ファゴットにとって心地いい響きに加えてピアノの音もよく、みんなのびのび演奏できていました。今回はアンサンブルのエントリーも数団体あり、それぞれ精度の高い演奏を聴かせてくれました。

ところで今回で第27回。次回は11月なので28回。30回という節目が見えてきました。来年7月開催予定の第30回の発表会は、ちょっとだけ趣向を変えたイベントにしようと考えています。近いうちに各種SNSでお知らせしますね。まずは次回のことから。

 

秋のひとときコンサート(第28回とのむら門下発表会)

2023年11月18日(土)午後開演(19時すぎ終演予定)

立川サロンスタジオFIX(JR立川駅より徒歩3分)

参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン代1回分など込み)

ファゴットソロ(社会人)15000円

ファゴットソロ(学生)10000円

アンサンブル参加 おひとり6000円(編成により多少の上限あり)

 

とにかく「上達」がテーマの発表会です。ファゴットを吹いている方もしくはアンサンブル団体(ファゴットを含まなくてもOKです)なら、僕のレッスンを1回以上受ければどなたでも出演できます。お問い合わせ・出演申し込みは下記フォームからどうぞ。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さてここからは第27回発表会の講評記事となります。

出演者や聴いていた方以外には意味のない内容になりますことご理解ください。

 

 

1.5つの小品より/ワイセンボーン

初出場、どうだったかな。見てる限りはすごく落ち着いて見えました。技術的にかなり色々詰め込んでいるので考えることは多かったと思うけど、発音、息の取り方や運指が正しく定着した演奏ができていたと思います。特にスタカートは理想的な奏法ができていると思います。あとは今の奏法を定着させながら、強弱を含めた表現力が増すといいですね。

あとは発表会とはいえ、何分間か人に自分の演奏を聴いてもらう場なのだから、礼の時は(演技でいいから)笑顔をつくること。ステージの上では「音楽家」の演技をしましょう。

まだまだこれからだと思うから、色んな人の演奏を聴いて得た刺激を忘れないように。

 

2.ファゴットソナタ/ヒンデミット

どんな音でこの名曲を奏でたいか、という意思が伝わってくる演奏でした。抑揚の付け方なんかとっても理想的で、またいつかに比べて音程も安定してきたように思えます。こだわりを感じる演奏でした。

その「こだわり」の中にピアニストとのアンサンブルが含まれていない(ように聴こえた)のが非常に残念でした。ソナタ室内楽であり二重奏であるので、自分の音とピアノの音がどう響くか、が演奏結果ですので、そこ含めてこだわれるとよかったですね。また楽器の傾向でしょうが、響きが多いのはいいのですがちょっと音色が一辺倒で、明るい音が多すぎるようにも思えました。暗い音がすべてではありませんが、曲が曲ですからね・・・。そういった意味ではマーチは雰囲気に合っていましたので、他をコントロールできるといいですね。

個人的には、セッティングは暗めに、明るいところは技術で変化をつける、方が効果的に思えますので、少し意識づけしてみてください。

 

3.ファゴットソナタ/ケックラン

あんまりほめ過ぎても良くないけど、このクオリティでケックランが吹ける人はそういないと思います。ピアニストとのアンサンブルも絶妙で、この曲の難しさが難しく聴こえない演奏でした。大変すばらしかったと思います。

曲想の変化はよく表現できていました。拍子の変化が目まぐるしい曲なので、そこを活かすともっと色が出たはずなので考えてみるといいですね。それから、いわゆる「音色の変化」は乏しかったです。後半やハイトーンを気持ちよく吹けるリードで1~2楽章を技術て吹く、という印象でしたが逆だともっと良かったかな?技術で楽器を鳴らし、薄いところはリードの適正で勝負。そうすればもっと変化を作る余裕ができたかも。

そのくらいかな。今回の演奏は誇っていいと思います。

 

4.ゲスト演奏

先ほども書きましたが、さいきん「ふぁごまみれ」という団体名で、鈴木多恵子さん、泉田章子さんとアンサンブル活動をしています。主にYouTubeでの活動を考えていますが、宣伝も兼ねて遊びにきてもらって2曲ほど演奏しました。チャンネルこちら↓

ふぁごまみれ - YouTube

 

5.2つのモノディ/ケックラン

ケックラン繋がりで、僕が演奏しました。ケックランの無伴奏作品で、つかみどころも聴きどころもないなぁ、と思いながらなんとかかんとか演奏しました。

 

6.二重奏曲より/ライナグル

理想的な二重奏の形、だと思いました。聴きあい支えあい、また刺激しあい煽りあい、のような。レッスンの時は支えあいと調和重視、という感じでしたが、指摘した通り、本番は駆け引きがたくさんあって、ライブ感のある非常にいいアンサンブルができていたと思います。

僕はファゴットで演奏する形態の中で、Fg二重奏が一番好きです。真髄と言ってもいい、と思っています。

シンプルで簡単な曲でこれができたので、もう少し内容の多い曲で今回のようなアンサンブルができるといいですね。そのために「技術」はあると思うので、これからも磨いていって、いつかまたお2人での演奏聞かせてください。

 

7.五重奏曲より/ニールセン

名曲にして大曲、の3分の1でしたが、いい演奏だったと思います。合わせ回数が少なくても1人1人キッチリやればできるものですね。いい意味で緊張感もあったでしょうし、みっちり練習するよりこのくらいの方がいいんじゃないか、と僕は思います。

とにかく5人とも音楽表現に積極的なので、それがうまくかみ合ったところがたくさんあって飽きのこない演奏でした。ニールセンは複雑すぎずシンプルすぎず、本当にやってて楽しい曲ですね。

フルートは曲のこともあってか、本来しづらいはずの調和ができていてよかったと思います。和音の上に乗るのが上手いので、他のメンバー思いのフルートですね。それはそれで素晴らしいので、シーンによってはもっとわがままで横柄で理不尽なところも見せてほしい。「俺に合わせないの?え?なんで?」くらいの立ち位置でちょうどいい、と思うけどどうでしょうか。

オーボエは自分でどう思うかは分からないけどちっとも見劣りしないクオリティでした。特に弱奏がうまく、これがオケでもできればどんな上手いオケにでも乗れると思います!が、フォルテの時は逆に力任せになりすぎかな。力では豊かな音は得られないので、フォルテは広い部屋に自分の音が響き渡るようなイメージを持つといいです。それは楽器が大きくなっても一緒です。

クラリネットはミスを引きずらないこと。言うほど周りは気にしてないし、引きずらないで次にいく、ということができるようになるといいですね。ミスが起きるのは攻めた結果だから本番中に恥じないで。「考えないようにする」は生物的に不可能なので、「ミスを取り返そうとしないこと」が肝心かも。

ホルンは木五百戦錬磨、って感じ(実際どうかは存じ上げませんが)。周りへの調和と自分の音の善し悪し、リソースの割き方が難しいと思うんだけどそのへんのさじ加減がよかった。個人的には木五のホルンはもっと勝手でいいと思うので、次回やる機会があったら、周りに対してどうこうはいったん置いといて、もっと自分がいい音で吹くことを重視してみて。

ファゴットは積極的でとってもよかったです。周りに調和しにいくことと我が道をいく(周りに振り回されない)ことのバランスを取るのがうまいね。しかしやっぱり木五のファゴットはとにかくパワーが大事。いい音だしよく鳴っているからオケだったら十分なんだと思うけど・・・。楽器の性能かもしれないし、リードのこともあるかもしれません。僕は木五の時はパワー全振りです。それでも足りないなって思うことばかりですが・・・

 

8.三重奏曲/ドニゼッティ

そもそも厄介な編成だな、と僕もやるたびに思います。はっきり言ってあまり調和する編成とは思えないし、レパートリーもあるようであまりないし・・・

出だしの和音、決めて欲しかった・・・音程もそうだけどバランスの悪さと音色の差が大きくて少し残念でした。3人だからこそ難しいのですが、まずは管楽器同士でうまくハマった和音の響きをもっと経験していくことからでしょうか。旋律的なところはお2人とも積極的で非常に良かっただけに、惜しかったですね。

 

フルートは楽器がよく鳴っていて大変すばらしかったと思います。周りがどう、は差し置いてまずは自分がいい音を、という楽器だと思いますから、いい仕事されていました。旋律の終わりが雑になる傾向にあるので、少し気を遣ってみるようにしてください。

ファゴットはこの手の曲はとにかく「ヴィルトゥオーゾ」でなくてはいけません。意味はよく調べてみてください。言葉の意味じゃなくて、イメージで。相手がフルートであれば、なおさらです。そういう意味でもやっぱり難しい編成ですね・・・。

 

9.三重奏曲/プーランク

この曲のいちばん難しいところは、曲の魅力に奏者の魅力が殺されるところだな、とやるたびに聴くたびに思いますね・・・。

まずオーボエファゴットお2人に共通する部分として、音程の「低い」に関して無頓着である印象があるところ。シンプルに音程が低いところが多いのと、フレーズの終わりのぶら下がりを気にせず吹いてしまうこと、どちらも頻繁に見受けられるので、支えを失ってしまわないように注意して。もちろん音程が上がってしまうと何もできなくなってしまう楽器ではあるのですが。

それぞれがよそを向いて表現をしたり、突然3人で調和しなきゃいけなかったり。その方向転換も難しい曲ですね。それぞれソロに関してはよく考えているし表現への意欲もあるのだけど、相手のソロに対して自分がどうするか、ソロから調和に向かうときにどうするか、が不足していて、結果としては少し散らかった印象の演奏になってしまっていました。また2人ともフレーズが短いことが多く、せっかくの歌心が分断されるところも多かったです。

「理想のプーランク」があると思いますから、それと自分たちがどう解離しているのか、聴き比べてみると色々発見があるかもしれません。

メジャーどころでフランセ、プレヴィン。マイナーどころだとラリエ、ミルデ、シュターミッツ。オリジナルに絞ってもこれだけレパートリーがあるのでぜひ色々やってみてくださいね。その上でプーランクに戻ってくると発見があるはず。

 

10.ファゴットソナタヘ短調/テレマン

レッスンからの伸び幅にビックリしました。いわゆる「一夜漬け」だとしてもここまで仕上がるなら立派なものです。表現に対しての積極性は初めて会った頃からあったと思いますが、それが今回は非常にいい形で表れていたと思います。「積極性」はいつだって空回りとの戦いなので、今回の演奏の感覚を忘れないようにするといいでしょう。

ここはおさめて、ここは向かって、ここは引いて・・・などなど、かなり口うるさく言いましたがそれは最低限の「様式」で、やればとりあえず形になる、みたいなところに限って指摘してきました。よく理解し表現できていたと思います。

あと後半になってもバレてる印象が音に出ていなかったのもすごいことです!体の使い方が上手いのでしょうか。素直に感心しました。

あとはバロック特有の自由さだったり即興性みたいなところまで踏み込めるとよかったですね。本番への一夜漬け、大変立派ですが、僕も頑張りますのでレッスンに向けた小さな一夜漬けにも期待してます!

 

11.コンチェルティーノ/ダビッド

第30回への展望はケックランと君のダビッドを聴いて、実現を決断しました。特筆すべきは音楽的な安定感。「おかしなことをしない」と「やりたいことをやる」の両立が安定して出せているので、旋律を奏でる、ということをよく感覚で理解できているのだと思います。それがあれば技術的なことは後から必ずついてくるので、今の感覚を忘れないで。ダビッドは理解しやすい音楽だから、それも助けてくれたと思います。

表現が素晴らしいと気になってくるのは技術。明るく突き抜けてくるような音だとか、ハッとするような鋭い発音だとか、息をのむような弱い発音だとか、表現のためのテクニックをもっと磨く意識を持って。基本はイメージから身に付く技術だと思うので、普段出さないような音も練習で出してみる習慣をつけるといいかもね。

速いところも安定していましたが、少しフレーズが止まりがちなので意識を変えてみて。休符の取り方とその前後の処理や準備でフレーズの切れ方はどうとでも変わってくると思います。

 

12.ファゴットソナタより/ハールストン

昔から音の線が細い印象がありましたが、今回の演奏の豊かなこと。大変な名演だったと思います。曲へのイメージと実現が確実になされていて、聴いていてまったく飽きのこない演奏ができていました。これだけ自分のやりたいことができれば、アンサンブルや合奏で人のやりたいことも理解できるようになると思うので、そこへのアプローチが面白くなってくるんじゃないでしょうか。この先とっても楽しみです。

レッスンでも触れましたがとにかく課題は音色の変化。表現幅が広がってくると、やはり音量や発音の差は限界があり、音色の変化が必要になってきます。「ちょっと汚いかな」と思ってしまう強い音も、「ちょっと抑え過ぎかな」と思ってしまう死んだ音も、時には有効かもしれません。「いい音」のイメージを捨てて、「この音楽にはこんな音を」のイメージを持てるようになればもっともっと音楽表現が楽しくなるはず。

僕の良く知らない曲で教えた子がいい演奏をすると、やってみてくなるね。どこかで機会があったら僕もハールストン、挑戦してみようと思います。

 

13.プルミエソロ/ブルドー

僕のレッスンって3種類あるんですよね。形にしてあげるレッスン、整えるレッスン、そして今回君にした散らかすレッスン。良くも悪くも刺激になったと思いますが、そのせいで本番いろいろ考えること多くなっちゃったかな・・・。笑 とにかくこの発表会は上達が目的なので、それでよかったとは思っています。

そもそも、テレマンやヴィヴァルディ、ウェーバーやダビッド、シュターミッツやドゥビエンヌを経ずにこの曲に挑戦しているのでそれなりに飛び級なチョイスだったようにも思えます。もちろん技術的に難しい曲ではないけど、やっぱりフランス人の作品はね、いい演奏しようと思うと難しいです。

色々反省もあると思うけど、今意識してほしいのは音色の変化。終始ダークな音で、この曲はそれでいいところが多いけど、やっぱり突き抜けた明るい音もどこかでは聴きたい。それじゃないと変化のない演奏になってしまうしダークさも活きないので。フォックスはきちんと響かせるとダークな音が出る楽器だから、もう一歩踏み込めるとよかったですね。

とはいえトリを任せただけのハイクオリティな演奏はできていたと思うので、次回も楽しみにしていますね!

第26回門下発表会でした。ちょっと色々始めます。

こんにちは。しっかり春らしくなってきましたね。今日通った道で綺麗に桜が咲いていました。

2年間勤めた洗足学園での仕事が年齢で契約終了となり、4月からはちょっと時間がありそうです。色々と新しく始めようと思っていますので、ここでもまたお知らせしますね。

 

先日、第26回の門下発表会がありました。

 

今回は15名のソロ演奏がありました。レベルアップはもちろんですが、お互いの演奏を聴き、本番後や休憩中に称えあったり感想を言いあったり。この手の交流がコミュニティの良さですよね。

もともと来るもの拒まずなのもあって初めまして同士が結構多いのですが、すぐ打ち解けて仲良くなれるのはファゴット吹き同士のいいところですよね。

やる曲を決め、練習をしレッスンを受け、ピアノ合わせを経て本番へ。人前で5分や10分演奏を聴いてもらう、という時間に向けて、みんな必死に練習するのもあって、終わったあと別人のように上手くなります。とにかく発表することと同じくらい、それぞれが「うまくなる」がコンセプトなのがうちの発表会です。

 

次回は2023年7月16日(日)立川市某所で開催されます。午後以降開演、夜までやっている予定です。

参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン代1回分込み)

ファゴットソロ(社会人)15000円

ファゴットソロ(学生)10000円

アンサンブル団体 ひとり6000円(人数によって多少の増減あり)

ファゴット吹きか、アンサンブル団体(ファゴットを含まなくてもOKです!)ならどなたでもご参加頂けますので、ご興味ある方は下記フォームからエントリーしてくださいね。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さて、恒例の講評記事となります。今回とってもレベルが高かったので、安心して聴いていられましたね!プログラム順に掲載します。

 

1.演奏会用独奏曲/ピエルネ

初参加お疲れ様でした。色んな曲とファゴット吹きと出会うことができてよかったですね。いい刺激になっていると主催してよかったなと思います。

演奏は、もちろん言うまでもなくとっても上手になりました。技術的にもそうですが、きっちりフレーズごとに吹き切ること、ちょっと間違えても先に進むこと、よく心がけて練習ができていたと思います。

ソナタものはピアノに埋もれがちなのですが、しっかり音も前に飛び、バランスが取れていてよかったです。いつもレッスンで言っている「いい音をしっかり鳴らす」ことができていると最低限よく聴こえる音が出てくるのだと思います。またピアニストとのアンサンブルも思った以上にうまくいっていて、いい耳とアンサンブル力を持っているなと思いました。

課題は表現力と、表現に対する欲でしょうか。みんなの演奏聴いていて気付いたと思うけど、「こう演奏したい」という欲から表現は生まれてくるし、そのための技術がほしくなるもの。漠然と「うまく吹けたいいな」と思うのではなく、表現への意欲が生まれてくるとより上手くなるきっかけがつかめるんじゃないかなと思います。またご参加お待ちしてますね!

 

2.民謡風小品より/シューマン

レッスンでも言ったけどとにかく音程が良くなりました。とくに上の音域を楽器の性能に任せて吹けるようになったことが自分でも感じていると思いますが一皮むけるキッカケになったと思います。今の感覚を忘れず、楽器の性能を活かしにいってください。

クセのある表現を強いられる曲ですが、よく表せていたと思います。やりたいことへの拘りみたいなものも感じられて、楽器の音が良くなると欲が出てくるんでしょうね、そこらへんもとっても良かったと思います。あとはそのこだわりを自分一人ではなく、ピアニストと共有して一緒に出していけるようになるといいですね。どこまでいっても室内楽なんですよね。

課題はやっぱり音色のこと。明確な変化がないので、合うところには合うけど合わないところにはとことん合わない。強弱や音程感、発音での表現が良くできているので非常にもったいないですね。「ここはこんな音を出したい、響かせたい」みたいなイメージがもっとあると変わっていくんじゃないでしょうか。音色は操作より前にイメージが大事だと思います。

 

3.アンダンテとハンガリー風ロンド/ウェーバー

難曲を見事に演奏していました。ここ1年くらい、技術的にというか1人の音楽家としてとっても大きく成長したように思えます。持ち前の技術と表現力をうまく曲に落とし込めるようになってきましたね。音程や音色のイメージもよく曲にハマっていました。またいつも思うことですが、ピアニストとのアンサンブルが上手い。耳がいいとかセンスがいいとかいうのもそうですが、共演者に対して真摯であることがきちんと演奏に現れていて、僕は今回の演奏でそこが一番いいところだったと思います。

曲への取り組み方がうまくなってきたので、基本的に今の感じいいと思います。課題があるとすれば、曲をうまくまとめられるようになった一方、まとめにいくと幅が小さくもなる、ということ。いい意味でもっとやりたいことはやっていいし、やってみて「あれ?」と感じる感性があってもいいはず。非常に高水準だったけれど、一方でちょっとずつ物足りなくもあったのも事実です。以前までのようにまとまりなさい!と言ったり、今のように取っ散らかりなさい!と言ったりするのは矛盾しているようですが、きちんと君が成長・変化している証拠でもあると思います。

 

4.朗唱、レチタティーヴォとロンド/ボザ

長らく取り組んできただけあって、抜群の安定感でした。昔から課題だった表現力の部分も、とっても成長したように思います。レチタティーヴォのようなものを吹く機会はあまり多くないでしょうけれど、今回くらい積極的な音楽表現、ぜひ続けてみて。音量だけではなく、発音やら音色やら何やら色々なところからアプローチをかけていけてよかったですね。

技術的に不安を感じたときに表現が消極的になるのは悪いクセ。不安なときこそ思いっきりいきましょう!

シシリエンヌ、とっても素敵でした。ここ好きじゃないファゴット吹きいないと思うけど、とても素敵な演奏ができていました。それだけにハイEがね・・・。形にはなったけど、まだまだ。次いつハイトーンに挑戦するかわからないけど、音出しやリード試奏でのチャレンジをし続けてみましょう。指も忘れないように。

ロンドは余裕ありそうだったし、もっと攻めたテンポでもよかったですね。テンポも大事な音楽表現の選択肢だから、こだわっていきましょう。

苦手意識あるかもしれないけど、今度はバロックものに挑戦してみるのはどうでしょうか?また色々と発見があるんじゃないかな。

 

5.ロマンス/エルガー

復帰1曲目には重い選曲だったでしょう?僕に言われるまでもなく感じたと思いますが。笑 それでもきっちり仕上げてきたのはさすがですね。とにかく色んな譜面を「きっちり」演奏すること、その成功体験を積み重ねることが今は大事なんだと思います。その「きっちり」が自分でなかなか分からないのが君のファゴットの一番の問題点で、分かってさえしまえばとってもいい演奏ができるということ、今回の本番で理解してくれたら僕はとっても嬉しいです。

成功体験を積み重ねていきましょう。今は難しい譜面を吹く必要はないでしょう。

ピアノとはよくアンサンブルできていると思います。そこもこだわりがあったのでしょうが、テンポへの乗り方がほんの少しずつ遅く、またそれをごまかすためにちょっとずつ速くしていく、みたいなありがちなクセがなかなか抜けませんので、やっぱり自分自信でテンポとリズムを理解しかためることが大事だと思います。演奏自体の技術や表現力は言うことなしです。総じて難しい曲をよく演奏できていたので、スタートラインをもっと高くできるように。この場合のスタートラインというのは、オケで言うところの初合奏に当たるんでしょうね。

 

6.15の中級ソロより/arr.スパーク

初参加お疲れ様でした。奏法を中心とした基礎的なところをじっくり見ることが多く、曲に関してはあんまり触れることもありませんでしたが、本番はメリハリもありいい演奏ができていたと思います。レッスンで触れた奏法のところは、なおった分だけやはり良いですね。無駄もなくなるし、結果的に表現へ活きています。これから直す、というところもあると思いますので、引き続き気を付けていきましょう。

チューニングですが、オケだろうと室内楽だろうと、音質に気を遣いましょう。原則として、基準音より大きな音を出さない(基準音が聴こえなくなるので)こと。音程のチェックだけではなくて、基準音に対して自分の音がどう響いているか聞くこと。言い出せばキリがないですが、管楽器のチューニングはパフォーマンスでもあることをお忘れなく。ちょっと無神経な音でした。

僕は奏法や技術だけを見る、というのがあんまり得意でも好きでもないので・・・ぜひ次回はオリジナルやそれに準ずる曲を持ってきてほしいところです。

 

7.組曲/タンスマン

考え方色々あると思いますが、やっぱりステージ上なので、楽器を床に直置き、やめましょう。せっかくの素敵な衣装もステージ上のふるまいで台無しでした。大切なこと、ですよね。僕はシートストラップユーザーなので、いつもスタンドと一体です。

前の講評でも言った気がしますが、音程が良くなりましたね。チューナーで真ん中、とかつまらないことを言うつもりはなくて、ピアノの音程にピタリとハマるところが聴いていて非常に心地よく、とっても純正律してました。これぞオーケストラ楽器の真骨頂ですね。

フレーズの長さが天敵であるところですが・・・そこを苦にして居らず、タンスマンの魅力をよく表現できていました。一方で、聴かせる音と引く音の差があまりなく、フレーズ感はあるのに音楽の濃淡といいますか、メリハリは少なく聴こえてしまっていました。単純にフォルテはもっと出てもいいし、ピアノはもっと攻めてもよかったかもしれません。安定することと表現すること、両立ってとっても難しいのですが・・・表現に消極的になったらオシマイです、もっと色々仕掛けていきましょう!

 

8.ソナタヘ短調/テレマン

リズム、フレーズ感ともにとっても良かったです、分かりやすいようで意外にもつかみどころのない曲なのですが・・・よく表現できてしました。即興的なところも音楽の表現を活かすことができていて、直前レッスンが無駄にならずよかったです。聴いている限り、スタミナもなんとかなっていました。これ、本当にすごいことだと思います。

またピアノ、というより通奏低音パートとファゴットのパートがよくアンサンブルできていました。基本的には2声だけなのにこの濃度の高さ、バロックものはやっぱりいいですね。魅力を活かせていました。

安定感のある演奏だったのですが・・・ハッとするようなフォルテやピアノがなかったのが少し勿体なかったでしょうか。スタミナ管理の都合上仕方ない部分もあるのでしょうが、山場がハッキリ聴いてわかる、というのは予定調和が基本のクラシック音楽においては必須じゃないかな、と僕は考えています。楽章ごとに山場を1か所か2か所でいいので、決めておくとよりよかったと思います。

 

9.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

やりたいこと、が明確に見える演奏でした。そのためにしっかり準備できていたこともとってもよかったです。やはり「やりたいこと」のために技術というものはあるし、そのための練習方法はよく心得ているから、あとは場数かな、という感じがします。その場数というやつがなかなかに厄介で、踏むうちに荒くなったり、なぜだか技術的に衰えたり、色々あると思いますがそれ含めて成長なので今後も自分でよく考え練習していってほしいです。

安心して聴いていられる演奏だったか、というとやっぱり・・・。安定感はやっぱり以前までの方があった。それは演奏に欲が出てきた結果でもあるのですが、やっぱり安定感というのも一つ大事な要素だと思います。練習時の小さな傷を見落とさずきっちり楽器を通してソルフェージュをしていくことを怠らずに。難しいところを練習するだけが練習じゃない。またリズムに関してはかなり甘かったので、もっともっと厳しく。リズムは数学なので、レッスンでいくらでも言って差し上げますが、自分でもっと数えられるように。録音録って聞いてみるのもいいでしょう。

色んな楽譜をきっちり読む場数、たくさん踏んでいきましょう!

 

10.スケルツォ/ミロシニコフ

色々とハンデのある中、しっかり準備されてて素晴らしかったと思います。レッジェーロの表現というのは勇気が要るんですよね・・・一つ間違えば痩せた音になってしまうし、得意不得意もかなりあります。よく表現できていたと思いますが、やはりスケルツォという作品においては、もっともっとはっきり短く滑稽に音を並べてもよかったかもしれません。ただその分と言いますか、楽器は効率よく鳴っていて、ピアノが厚いところでもよく聴こえてきました。そこの塩梅は難しいところです。

途中の抒情的なところはさすがの表現力でした。ビブラートが少し浅く早いのが気になりますので、もう少し楽にコントロールする方法を探してみるといいかもしれません。

またリズムを活かそうとするとやはり拍感が乱れてしまうのも気になりました。要するに短く吹くと転んでしまうのですが、これも短い音を用いた音楽に慣れるとまた違ってくると思います。レッジェーロの音楽への経験値をもっと増やしていくといいかもしれませんね。

また演奏聴けるのを楽しみにしてます!

 

11.朗唱、レチタティーヴォとロンド/ボザ

音色の変化がとっても魅力的な演奏でした。音量だけじゃなく音色が変わることでファゴットの表現はどこまでも幅広くなりますね、あらためて思いました。甘い音、太い音、深い音、痩せた音などなど・・・言語化するのは簡単ですね。とにかく変化に富んだ演奏で聴いていてとても楽しめました。

中・低音域のピッチはちょっと気になったかな。基本的に高いことが多いです(普通のことなんだけど)それもハイトーン仕様と思うとやむをえませんが・・・そーいうリードでいかに下げるか、も慣れでしょうかね。低音はどうにもならなくても、中音域は気にすればもっとどうにかなったんじゃないかな。いい音程を吹くとピアノがうまく聴こえてくるんですよね。ハイEはなんとかなってよかった。直前で小さくしていくとうまくいかないので、そこはちょっと攻めすぎでしょうか。

連符の後ろの方が少し投げやりに聴こえがち。丁寧に処理するところ、先に向かうところ、パッと止めるところ、色々あっていい曲だったと思うので気を付けてみて。

それでも安定感はやっぱりさすがでした。練習の質と量のバランスがよかったんだと思います。その調子でやれるといいですね!この曲みたいに簡単じゃない曲が多いですが・・・

 

12.ファゴット協奏曲第1楽章/シュターミッツ

安定感抜群、かつ制約の多い曲ですがきちんと演奏できていました。また圧倒的に音抜けが良かったですね、きちんと楽器が響いている=いい音が出ている、ということだと思いますのでその方向性で鳴らしていきましょう。

緊張もあったんだろうけど、音を出していない短い休符とか伸ばしている時に拍感を見失うのは良くない傾向だと思います。特に伸ばしている間は、ただ数えてるだけではなくオケの音をきちんと聴いて乗っかる必要があります。すこしクレッシェンドなどをかける、などは簡単ですが・・・まずはきちんとカウントを取ることから。それは合わせどうこうではなく、自分の練習でやる習慣をつけましょう。

あとは全体的に優等生な演奏だったので、音量やら発音やらビブラートやら何やら、とにかくもっと変化をつけましょう。やっているつもりでも、伝わるにはもっと仕掛けないと。何事も、まずはきちんと人に伝えるところから。

色々言いましたが、精度の高いいい演奏だったと思います。他の人の演奏で色々刺激もあったかな?

 

13.シシリエンヌとアレグロジョコーゾ/グロヴレ

堂々としたいい演奏だったと思います。楽器を鳴らすのがうまいので、華のある音色がよく響いていました。音域が変わってもフォルテでもピアノでもそれが失われないのは素晴らしいことで、アンサンブルなんかだと周りを助けることでしょう。変なクセもなくなったのでぜひやってみて。

華のある音はいいのですが、音色の変化がほとんどないのは気になりました。大きい音と小さい音はあるのですが、それだけ、とも言えます。めいっぱい華のある音はいいのですが、そればかりでは飽きがくるし、強弱と音の長さだけで表現しきるほどファゴットはレンジが広くないので・・・。例えばピアノでも細い音と優しい音と甘い音、フォルテなら強い音キツい音太い音などなど・・・いうのは簡単ですが、とにかく「ここではこんな音色を出したい」とまず思うところから。そのために技術的に音の出し方を工夫していけば自ずと変化は生まれてくると思いますので、少し考えてみて。

とはいえミスも少なく精度が高く、基本的にはとても変化に富んだ演奏でした。

 

14.ファゴット協奏曲/ウェーバー

全楽章やると見えてくることがあるね。吹く側も聴く側も。

積極的に仕掛けていく、魅力的なウェーバーだったと思います。レッスンのときは単調でしたが本番は別人のようでした。また低音のタンギングがとてもうまいですね、ウェーバーやる上では大事な技術です。

1楽章は、箇所ごとのキャラクターの違いをもっともっと出していければよかったと思います。ちょっと滑稽なテーマ、甘々のアリア、迫力のある技巧ポイントなどなど。積極的にテンポの変化を使ってもよかったかもしれません。それはピアニストとの連携が必要になってきますが・・・2楽章はちょっと音程が気になったかな。積極的にいくときに一番気にするべきは音程。それを損なっては台無しになってしまうことも多々あります、今回はそこまでではありませんが。でも歌心のある演奏で、僕の伝えたいことはちゃんと伝わっていて嬉しかったです。3楽章は圧巻。1楽章と違ってキャラクターの違いが明確で、曲の魅力が抜群に活きた演奏でした。

やはりウェーバーは大曲ですね。

 

15.3つのロマンス/シューマン

やるもんじゃない、と(お互い)言いながらも、うちの発表会でこの曲史上最高の演奏だったと思います。そうそう更新されないでしょう。よく理解し、よく感じ演奏できていました。

技術的なことで言うと特定の音のビブラートのときに音程が下方向にブレるクセがあるのでそれが少しもったいない。また体力的なことと曲の難しさからだろうけど、少し守りに入った演奏には聴こえたかな。それゆえの完成度だとは思うのですが・・・もっと聴いている人を震えさせるようなフレーズがあってもよかったかも。そこらへんはお好みでしょうけれど・・・

あとこの手の曲だからこそ、強いアタックを使うべきところでちゃんと使ってほしかった。全部柔らかい発音なので、大事なところで変化に欠けることが(例えば2楽章の中間部とか)あるのも惜しかった。またバテからくるでしょうが音の処理が曖昧なところで明らかにエラーが起きているので録音で確認してみて。口離すのとブレスに集中しすぎず、音の処理にももっと神経を使ってみて。

でもそのくらいかな。とにかく完成度の高い演奏だったと思います。

 

第25回門下発表会でした。講評と次回のことと

こんにちは。ファゴット奏者のとのむぅです。恒例の発表会報告・講評記事です。

2022年11月19日に第25回門下発表会が行われました。

 

 

なんだかこじんまりとしてしまいました。今回は参加人数が少ない回となりました。

その分なのか何なのか、曲と演奏内容の濃い回でした。謎の偏りもあり、シューマンバロックだらけでした。なんでやねん。

少ない分スケジュールにもゆとりがあり、奏者同士やお客様との交流時間も多かったと思いますがどうでしょうか。

 

会場のゆとりもあったので、講師演奏、という名目でミニコンサートもやりました。モーツァルトの協奏曲、カリヴォダのサロン風小品を演奏し、コントラファゴットでバッハの無伴奏も演奏しました。コントラファゴットでソロ、ありですね・・・ちょっとレパートリー研究してみましょうか。

 

生徒たちに関しては始めましてのメンバーもおらず、非常にレベルの高い回になりました。絶対評価でうまい集団である必要はないのですが・・・今回は非常に上手かったですね。それぞれが毎回きちんとレベルアップした結果なので当然と言えば当然ですね。教えている僕も鼻が高いです。

 

 

この会はとにかく人前で自分の音を聴いてもらう。そのために練習してレッスンも受ければ、最短距離で上手くなる!というのがコンセプトの発表会です。知り合いがいなくても終演する頃には何人もファゴット吹きの仲間ができているはず・・・!ファゴットを吹いている方か、アンサンブル団体であれば僕のレッスンを受けどなたでもご参加頂けます。

次回発表会は2023年3月12日(日)@立川某所です。

参加費(レッスン代1回分、ピアニスト謝礼、会場代など込み)

ファゴットソロ(社会人)15000円

ファゴットソロ(学生)10000円

アンサンブル参加 ひとり6000円(人数などによって変動あり)

始めましての方も歓迎します。エントリーお待ちしております!〆切はレッスンや準備が間に合うのであれば特にありません。下記フォームからご連絡ください。

 

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さて、これからは恒例の講評記事となります。

演奏参加者以外の方には意味のない記事となりますので読み飛ばし推奨です。

 

1.3つのロマンス/シューマン

最後のレッスンがオンラインということもあり僕もご自身も不安だったと思いますが、堂々と演奏できていました。懸念していた伴奏との噛み合い方も悪くなく、きちんとシューマンという作曲家に向き合えていたと思います。

フレーズの取り方もよくできていました。このフレーズ取りというものがこの曲は本当に難しく、また色々な要素で理想と現実で悩むことが多いのですがよく折り合いをつけ演奏できていました。この手の曲の「練習」ってなかなか難しいのですが、取組と初回レッスンが早かったのもありきちんと準備できていました。

気になるのは鳴りと音程でしょうか。出るところはよく出ていますが、やや安定感に欠け、発音・伸ばし共に雑なところが多いのが気になりました。以外にもテクニックに向き合うことの多い曲だったのでそこに気がいかないのは仕方のないことですが・・・少し勿体なかったかな。

今回とは逆に、パッと見難しそうな曲をゆっくりじっくり挑む方が今後はレベルアップが見込めるかもしれません。ドゥビエンヌとかブルドーとか、比較的古いフランスものなんか美しい旋律もあるのでいいかもしれません。バロック物も手かな。

 

2.ファゴット協奏曲ホ短調/ヴィヴァルディ

圧巻の演奏でした。フレーズの取り方、入り方と収め方もよく理解して演奏できていました。繊細な表現が本当に上手になったなと思います、これ毎回言っている気もしますが毎回レベルアップしています、すごいことです。ダイナミクスのレンジも広く、表現的にも飽きがこない演奏ができていました。

いわゆる連符を演奏するとき、体が固まっているのか口がしまっているのかリードを無理矢理鳴らしてしまっているのか、原因は本番の演奏だけでは特定できませんでしたが、固く無機質な音が出てしまう傾向にあるのが勿体なかったかな。指や舌を忙しく動かしていても和音の動きは一定ですから、もう少し流れでとらえられるとよかった。

また遅い楽章に関してはもっともっとアゴーギグをつけて。ピアニストに乗っかることも大事ですが、少し強引でもこちらの音楽に巻き込むくらいのことをすると、初めて室内楽ピアニストは本領を発揮してくれますよ!

フォルテの音色が硬いのもちょっと気になった。力任せではなく、もっと空間を意識できるといいですね。なるべく広いところで、部屋いっぱいに自分の音が響くような感覚を身につけるといいでしょう。

それでも難曲にして大曲をハイクオリティで演奏できていました。次回も楽しみにしてます!

 

3.ファゴットソナタヘ短調より/テレマン

補習だったか居残りだったかしりませんが、2回のレッスンの成果はキッチリでていて素晴らしかったと思います。気ままに旋律を気持ちよく歌う、ということに関して、僕の生徒たちで君の右に出るものはなかなかいませんが、それとクラシック音楽というものの相性が非常に難しいですね。僕もたぶん本来同タイプですので、気持ちはよくわかります。

今回のような曲への理解を自分の頭でできるようになると、ファゴットの演奏は今よりずーっと面白くなるし、練習時間も少なく済むかもしれません。

技術的、音楽的に、言うことはあまりありません。非常に高水準の演奏だったと思います。通奏低音(ここで言うとピアノの左手パート)をもっと意識した演奏ができるとよかったかな。ピアノはよく聴いているけど、全体を聴くのではなくとにかく通奏低音パートを。すべての流れはそのパートが握っています。時間が足りなかったから仕方ないけど、全楽章聴きたかったですね。

 

4.3つの小品/ボザ

小品という言葉の意味をちゃんと調べてみるといいかもしれません。ライトで、さらっと終わってしまう曲の事を言いますが、なんだか深刻な大曲に取り組んでいるような雰囲気があったのが惜しかったかな。具体的にどうすればいいのかは人によって違う気もしますが・・・簡単そうに、複雑なことなんて何一つありませんよ、みたいな顔ができると違ったかもね。

しっかり取り組んできているので、逆に和音の流れやアンサンブルの動きなんかは非常によく合っていました。レッスンのとき不安定だったところも本番うまくいっていてよかったと思います。

技術的に一人一人に言うこともそんなにないかな。各々よく考えて演奏しているし、今思っていることをそのまま続けていけばきちんとレベルアップできると思います。フルートには優雅さ、オーボエには華やかさ、クラリネットには安定感、ファゴットには積極性があれば言うことなし、というところでしょうか。

速い楽章はもっと軽快にできるとよかったかな。多少危ないところがあってもその方が聴いている印象はよかったはず。次取り組むときは意識してみて。

 

5.無伴奏組曲第2番より/J.S.バッハ

さすが君、というか、ここまで長く僕のレッスンを受けてきた成果とも言えるでしょうし、そのための君の地力とも言えるし。これほどよく理解し表現できているバッハをどこのアマチュア奏者ができるでしょうか・・・?自分の生徒をここまで褒めるのもどうかと思いますが、本当にすごいことです。細かいミスなんかまるで気にならないくらいいい流れが作れていました。ブレスの取り方も良かったと思います。

ここは全体のバランス次第ですが、速くなる方のアゴーギグがもっとあるとよりよかったかな。遅くする方はうまいのですが逆がないので少し間延びした印象になってしまうところもありました。強弱の幅があると良いように、速い遅いの幅の楽章によってはもっとあると素敵です。関連して、ブレス後の発音に非常に気を使えていてよいのですが、副作用として入りが丁寧すぎて時間がかかってしまうので停滞してしまう傾向にあるのも勿体なかったかな。

速い楽章が最後だけだったので、もっと快活だと良かったかな。発音なのかテンポなのかは人によってやり方は違ってきますが、何かしらもっと大きな変化があるとよかった。

もう無伴奏バッハの魅力には取りつかれたと思うので、たまにでいいのでまた挑戦してみて!

 

6.幻想小曲集/シューマン

そこに至る経緯はともかく、本番の結果としてよく考えられた演奏になっていたと思います。演奏に理性が伴っていて、以前までの演奏とはちょっと違った印象になっていてとてもよかったと思います。ピアニストとのアンサンブルも抜群でした。

スラーの切れ目で息が入らなくなるクセがあるようです。そもそもこの曲のスラーは弦楽器仕様のものでフレーズとは関係ないことが多いのでちょっともったいないことになっていたかな。アーティキュレーションに振り回されないように。大事な改善点だと思います。

演奏者として非常に大人になった、と、本番に関しては思いましたのでこの方向性がいいんじゃないかなと僕は思います。その上で自分のやりたいこと、曲に対する想いなんかがきちんと乗るようになれば先輩たちのような演奏に近づくんじゃないかな、と思いますよ。

それから少し音程が気になるかな。全部高いとか全部低い、ではなく、ピアノとあっていない箇所が多く耳につきました。運指や息の入れ方も大事ですが、音程をきちっと取らないとまずい音というのは箇所箇所にありますので、よく見直してみて。

 

7.ファゴット協奏曲より/ウェーバー

王道曲に挑戦、という覚悟がきっちり感じられる演奏だったと思います。見た目以上に難しい曲ですが、それを感じさせない状態まで仕上げられていました。

レッスンでもしばしば指摘していますが、ちょっと体が動きすぎかな・・・体は自然と動いていいですが、動かないと吹けない状態は必ず技術的なエラーを呼びます。また微々たるものではありますが、動いてしまうと音の出所も動きますので、聴いている側に少なからず影響を与えてしまいます。もしかしたら座って静止した状態の練習が効果的かもしれません、お試しください。

3楽章のめまぐるしい音楽の変化はなんとか形になっていました。ギリギリだったなーという印象もありますが、音にきちんと現れているのでよく練習したのだと思います。この曲で人をふるわせるには、まだあと1歩・・・いや3歩くらいあるかな、というところ。先は長いですね。3楽章はもしかしたら暗譜すると違ったかも。

強弱はまだまだ課題が残ります。大きな音というより豊かな音。ふだん狭い場所で吹いているなら広い場所へ。広い場所で、部屋の端まで自分の音が響いているか、確認しながら演奏するようにしてみましょう。

 

8.民謡風小品より/シューマン

ブレス後の発音、もっと気を遣いましょう。何事も第一印象が全てです。基礎だ基礎だと言うのは簡単ですが、今回の演奏はブレス後に出す音への神経の使い方がほとんどすべてイマイチでしたので、これはもう習慣の問題でしょう。カラオケだろうと自室だろうと、どこかで誰かが聴いているような意識を持つと悪い習慣はぬけていきますので考えるようにしてみてください。

曲自体の完成度は全出演者で一番でしたね、曲に対するキャリアもありますが準備の仕方が本当に上手いなと思います。各所にこだわりも感じます。こだわりが音楽を伴っているとなおよいのですが・・・!(ハイトーン回りとか。短く吹いたら出ないのは分かるけど・・・)

それから以前と比べて音程がよくなったなと思いました。リードの質もあるでしょうが、音程も先ほど申し上げた「習慣」ですので、音程のいいリードを吹いていれば良くなっていくものです。

音程の良さ、曲への理解度は素晴らしかったので、シーンによって音色の使い分けができるようになるといいですね!音色ってやつは、微妙な音程の操作、発音の仕方、音量の操作などなどいろいろな条件で決まりますが、まずはイメージでしょうか。目の前の曲をどんな音で吹きたいか。これは演奏者の原点ともいえるところでしょうから、もっと大切にしましょう!

第24回門下発表会でした。講評と次回のこと

こんにちは。今回今までで一番遅くなってしまったかもしれません・・・?出演者各位とってもお待たせしました。

7/23に小岩アーバンプラザホールにて、第24回の門下発表会が行われました。某感染症の影響が今までの中でも大きく、出演者が減ったりもある中でみんなよく頑張りました。

 

 

うーんこう見ると本当に少ない。もちろん途中で帰った人やこのあと到着した子もいるのですが・・・。

参加者、もう少し積極的に増やしにかかろうと思います。ファゴットがいっぱいいるのではやっぱり楽しい。

 

毎回書いていますが、僕の門下発表会のコンセプトは「ソロの曲を練習してレッスン受けて人前で演奏するのが一番はやく上達する」です。上達がコンセプトですので、本当に皆さん気楽に参加してくれていると思います。曲は基本的にやりたい曲をやってくれて構いません。伴奏ピアニストは達人ぞろいですので、ちょっとくらい間違えても合わせてくださいます。

上達したい人、ファゴット仲間がほしい人、僕のレッスンを受けるキッカケがほしい人、ぜひご参加ください。アンサンブルでのエントリーも歓迎致します。

僕のレッスンを1回以上受ければどなたでもご参加頂けます。またプロのピアニストがきっちり伴奏してくださいます。

 

次回発表会のご案内です。

 

秋のひとときコンサート(第25回とのむら門下発表会)

2022年11月19日(土)午後開演(終演夜予定)

立川サロンスタジオFIX(JR立川駅徒歩3分)

参加費

ファゴットソロ 社会人15000円、学生10000円(ピアニスト謝礼、レッスン代1回分ふくむ)

アンサンブル お1人6000円(人数などで多少の変動あり)

お申込みやお問い合わせはこちらへどうぞ

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

ここからは第24回発表会の参加者への講評となります。

出演者以外の方には面白くもない内容となりますので読み飛ばし下さい。

講評ブログ以外にも更新できるようがんばります・・・

 

1.ファゴット協奏曲/シュターミッツ

初参加のプレッシャーを感じない堂々とした演奏でした。とにかく運指改善で最初はお互い頭がいっぱいでしたが、本番ではきちんと中身のともなった演奏ができていてよかったです。一皮も二皮もむけた感覚があるんじゃないでしょうか。

また元々、音域問わずムラなく鳴らせる力があるので、広い音域を使う曲ですがいい音がよく響いていました。

とにかく形式ばった曲なので制限が多く感じだと思いますが、今回のノウハウは何の曲を演奏するのにも使えることなので、今後に活かしていってほしいなと思います。

課題としては積極性でしょうか。欲が足りない、とも言えます。僕がやりなさい、と言った表現に関してもまだまだ足りませんし、その上で自分でやりたい!と思ったことをもっと表現してほしかったかな。僕がいくらレッスンをしようと、ステージはあなたのものですから、あなたがやりたいことをやればいいのです。自分で演奏をつくるよろこびをもっと知っていってほしいですね。

さて今回学んだ技術や表現についてはまだまだ序の口です。まだまだ知ると面白いことがたくさんありますので、今後も期待していますね!

 

2.ファゴットソナタ/レントヘン

本番通して聴いていて気づきましたが、どう考えても今までで一番難しい曲でしたね・・・音域のこともありますが、表現の難しさがはんぱじゃなかったと思います。しかしそこは発表会参加キャリア(だいぶ多い方になってきましたよね)の力か、持ってる力でせいいっぱい表現できていたと思います。指回しで頭がいっぱいな若い子にはいい刺激になったんじゃないでしょうか。

完成度が高く、あまり改善点を述べるところはないのですが・・・やっぱり課題は音の伸びでしょうか。自宅でのレッスンだとどうしてもそこがカバーできないのですが、たまには少し広い場所で空間いっぱいに楽器を鳴らす経験をしてもいいかもしれませんね。録音だとマイクが近いので聴こえるのですがホール(僕は一番前にいましたがそれでも)だと音があまり飛んでいませんでした。

特筆すべき点は音程が良くなったこと。音域問わずキッチリ音程が取れる人、そういないのですが少なくとも今回の本番ではかなり良かったです。ピアノとぴったりハモれていました。

今後聴きたいのはやっぱりザ・王道曲でしょうか。次回すぐ、じゃなくてもいいですが、バロック・古典派あたりの少しテクニカルなもの、いいんじゃないでしょうか?

 

3.幻想小曲集より/シューマン

楽章抜粋したとはいえ、大曲でしたね!地力がきっちり及んでいて、とにかく技術的にも音楽的にも丁寧で整った演奏でした。前回まなんだ楽器の鳴らし方もしっかり定着し、レッスン再開したときと比べたら別人のようです。楽器の力もあるかな。

さて丁寧で整った演奏だったのは間違いなくいいところですが、技術的に不安なところで舌と指(それぞれがズレないのは立派ですが・・・)が遅く動きテンポが止まりそうになるクセがあるみたい。ピアニストは上手く合わせてくれていますが、音楽の流れ次第でかなりもったいなく聴こえますので、気を付けましょう。どこまで準備しても不安なところというのはあって、人によって不安なところで起きるクセって違うんですよね。君の場合は遅くなる、停滞する、というクセがあるみたい。ちなみに僕は転ぶクセがあります。クセを理解すれば対策が取れるので、今後に活かしていってほしい。

前回も今回ももりもり歌う曲でしたから、次は「歌わない曲」なんてどうですか?フランスものがだいたいそうなります。ディティーユ(ハイトーンはオクターブ下げてもいいですね)やケックランの3つの小品、指さらう気があるなら朗唱、ボザのシチリアーノとロンドなんかもいいかも。そこでまた一皮むける事でしょう!

 

4.演奏会用独奏曲/ピエルネ

表現にくせがあるこの曲、大変だったと思いますがよく理解し演奏できていました。昔と比べて本当に楽器がよく鳴るようになって表現幅が広がっていることもその理由でしょうか。技術は正義。

しかし楽器が鳴るようになるとどうしても「鳴りムラ」というものが生まれてきます。この曲は中低音域を気持ちよくならせる曲なのでそういったリードを選びがちですが・・・残念ながらテノール以上、アルト音域とでもいいましょうか、そのあたりがかなり細く聴こえていました。とくにレガート系の演奏時でしょうか。やはりファゴットの音はそこの音域が真骨頂。低音が気持ちよく鳴るリードで上の音域は確かにキツいので分かるのですが・・・やはりそこは技術。テクニックです、リードの欠点は絶対ありますから、そこを補うための技術を磨きましょう。鳴らす、というより響かせる、というイメージでしょうか・・・?

後半のリズムはとってもよかったですね。6拍子特有のユルい感じがよく表現できていました。きちんと体にリズムが入ってよかったです、しつこく言った甲斐がありました。

今回本当に、一皮も二皮も剥けたと思います。やっぱりレッスンを受けて楽器を練習して人前で吹く、というプロセスは大事ですね。次回も楽しみにしています!もうどんな難しい曲でも吹けるよ。

 

5.ディベルティメント/モーツァルト

完全アウェイな中参加ほんとうにありがとう。僕としては大歓迎ですが、参加する側はちょっとだけ嫌ですよねきっと。

レッスンでは形式やフレージング、バランスのことばっかりであんまり面白くなかったかな、と後から反省していたのですが、本番ここまできっちりまとめてくるとは・・・!フレージングが全員で言った通り取れるようになるのはいいリハーサルをしたから。バランスがここまでちゃんと取れるようになっているのは地力(技術)があるから。細かい粗はともかく、ここまできっちりモーツァルトをアンサンブルで吹けるクラリネットアンサンブルはそう多くはないはず。

楽章間はもっと空けましょう。スワブ通すなり汗でも拭くなり、もっと自由なものです。聴いている方も一息つきたいものですから。短い曲だけど、楽章でかなり雰囲気変わるのでもう少し間がほしかったかな。別に水が溜まってなくても汗かいてなくてもいいので何かして時間を空けるともっと聴きやすい演奏だったかな。

僕の持論ですが「いいアンサンブルはいい個人技の集合体」なので、これ以上の演奏を目指すならもうそれぞれが練習してレッスンに通うしかないでしょう。アンサンブルとしてはこれ以上の誉め言葉はないはず。

 

6.ファゴット協奏曲ホ短調/ヴィヴァルディ

勢いと熱(字、似てますね)のこもった素晴らしい演奏だったと思います。攻めの姿勢で演奏できるファゴット奏者、そう多くはないのでぜひそのままの姿勢でいてほしいなと思います。以前は攻めてばかりでしたが、今回の演奏は引くところしっかり引いて、メリハリのついた演奏になっていました。

音符や音型に惑わされず、ディレクションがはっきり見えてくるだけでここまでフレーズは変わって聴こえるので、今後もぜひ意識していってほしい。

はっきり言ってソリストとして欠点を挙げるようなところはほぼない演奏だったと思うのですが・・・我々は演奏を聴いてもらった結果、けっきょく呼ばれる先はオケがほとんどです。そういった意味で、「オケでよく響く音」をもう少し意識した演奏を心がけるといいでしょう。具体的に言うと特定の音の音程や鳴りムラの改善、他人に溶けやすい音色への意識、とかでしょうか。ちょっと文章で説明できる類のことではないので難しいですが・・・。

これは好みですが、僕はもっとハっとするようなピアニッシモフォルティッシモが何か所かだけでもあったほうがいいかなとも思いました。出てくる回数としてはほんの少しでいいんだけど、やっぱりメリハリが足りなく聴こえがちだから、ファゴットって。

 

7.コンチェルトシュトゥック/ベルヴァルド

伸び伸びとしたいい演奏でした。ピアノとのアンサンブルのうまさが抜群だったと思います。難しい曲をものともしないテクニックもさすがでした。

レッスンでも言ったけどやっぱりフレーズが途切れて聴こえるのが気になる。これは1回理解すると自分の演奏も他人の演奏もどんどん気になることだと思うので、飲み込むまでなかなか難しいと思うのですが、レッスンでもわりとそこに触れてきたので、ちょっと活かしきれてなかったと思いました。基本的に何もしなければフレーズは途切れて聴こえる。途切れることと収めることは違うから、意識的に収めてるところ以外はぜんぶ途切れてると言っても言い過ぎではないかもしれません。ほんのちょっとしたところなのですが・・・。

あとはやっぱり溶ける音色・音程感を身につけましょう。自分の音が客観的にどう思われているか、というのはきょうびレッスンでもなかなか言ってもらえないものではあるのですが・・・オケの仕事、特にフリーランスとしていつも違う人と一緒に演奏する場合それがやっぱりキモになってきます。もちろん今回のステージはソロですが、ファゴットの場合はそこはあんまり大きく変わらないと僕は思うので。もちろんハイトーン用リードなんて使ってないよね・・・?溶ける音から、いつでも飛ぶ音に変化できるのが理想ですね。今は「ただきっちりといい音で鳴っているだけ」という感じがしました。

技術的、音楽的には言うこと何もないです。とっても素晴らしい演奏だった。アマチュアの生徒たちにもきっといい刺激になったことでしょう。

 

8.タンゴ組曲/ピアソラ

ホームともいえるファゴットアンサンブルとのやまでのゲスト演奏でした。

きちんとゲストとして人を呼んだのは久しぶりですがやっぱりいいものですね。生徒とゲストも少しは交流できたようで何より。

 

9.想い出は銀の笛/三浦真理

完成度が高く、またバランスの良さが引き立ちました。またコロコロと場面の変わる曲ですがうまく対応し曲の魅力が生かされた演奏でした。ファゴットアンサンブルの最大の敵「バランス」という部分も全く気になりませんでした。出るところ引くところ、はっきり理解して演奏できていました。

3人でそれぞれキャリアや地力も少しずつ異なるはずなのに、それがいい意味で聞こえない演奏だったのも好感が持てました。どうしても力のある人がねじ伏せる演奏になってしまいがちなのですが・・・それぞれがきちんと(演奏で)リスペクトしあえる関係性、素晴らしいと思います。

いっぽうで表現としては控えめな部分も多かった。もちろん控えめだからこそバランスがよく心地よく聴こえる箇所もあったのですが・・・いわゆる聴き映え曲ですから、もっとあざとく極端に魅せるところがあってもよかったかな。それも個性といえばそれまでですが。

最後の曲が顕著ですが、「ポップスっぽく」するとき、音色の操作もあるといいでしょう。クラシックで映える音とはやっぱりちょっと違うんですよね。荒く吹くわけじゃないんだけど、リズムの取り方とか発音とかもう少し工夫があるとよかったかな。これも必須だとは思いませんが、選択肢の一つとして。

 

10.ロマンス/エルガー

MVPを挙げるならこの人。表現に必要な技術をフル稼働できていました。楽器を吹く頻度が減ったからなのかもしれないけど、以前よりビブラートが効果的になりました。正しく使えるとビブラートってやつは本当に効果的ですね。僕ももっとちゃんとみんなに教えようかな・・・

技術という意味ではとにかく音程が良かった。合っている、というよりはシーンにあった音程が取れている、という印象。きちんと操作できているのもそうですが、伴奏に対してきちんと溶けてハモる音を作れているのが印象的でした。

一方でしっとりとした曲である分見せどころは難しいけど、ハッとするようなフォルテやピアノがなかったのは少しもったいなかったかな。表現がないわけではないけど・・・強弱のみではなく、色んな意味で攻めの姿勢が見たかった。この曲で攻めるってのもまたやり方が難しいとは思いますが。

歴代一番いい演奏だったんじゃないかな。やっぱり技術は正義、いい練習と準備は正義ですね。

 

11.ファゴット協奏曲ロ短調/ヴィヴァルディ

この会の目的である「とにかくソロの本番作ってレッスン受けて練習すれば上手くなるに決まっている」を体現するような演奏でした。最初のレッスンとは別人のような演奏で、ここまでレベルアップしていると普段のオケや室内楽にもいい影響があるんじゃないでしょうか、いや、だいぶ基礎に立ち返ったレッスンをやったのでそれがなきゃ困るのですが・・・

バロック特有の和声の動きや通奏低音との関わり方なんかをじゅうぶんに楽しめている演奏でした。聴き手を楽しませるのはまず演奏する側が楽しむこと、その10%でも聴き手に伝わればそれはもう大名演だと僕は思うんですよね。よく楽しめていたし、きちんと伝わってきました。

とくに技術的音楽的に大きな課題があるわけではなさそうです。よく練習できていました。この曲に使う技術はわりと限定的なものなので、これからも色んな曲(ソロ曲じゃなくてエチュードでも!)に挑戦してレッスンに持ってきてくれればまだまだスルスルと上手になっていくでしょう。今後も楽しみにしています。

 

12.イナのための歌/スパーク

少ない準備期間でよく頑張りました。安定感が出てきたのはもちろん言うまでもなく、初心者の頃からフレーズのことをうるさくいってきた甲斐があり、非常に美しい旋律を演奏できていました。休みを数えたり曲を覚えたり、という力もかなり身に付いてきたと思います。

技術的な課題としてはアルト音域(上のGあたり)の伸びがもっと欲しいかな。中音域の多い曲だったからリードには頼れないでしょうから、技術で出すしかなかったと思うけど、明らかに上の音域でトラブルが多かったのが勿体なかった。きちんと指がいくこと、力任せではなくきちんと倍音を取りにいければもうちょっといい演奏になったかな。

伴奏にはよく乗れていましたが、今後はその上、ピアニストが気持ちよく弾けるような演奏を心がけて。具体的にはどんな和音の上に今の旋律があるのかを常に気にしながら演奏したり、自分のフレージングをピアノパートがどう彩っているかをきちんと意識して練習をしていくこと。ピアニストを困らせるようなことはもうなくなったけど、まだまだ先がありますよ!

 

13.幻想小曲集/シューマン

期待に違わぬ名演でした。レッスンでこだわった身体のクセに関してはどうだったか、残念ながらステージと客席だと分かりませんが・・・

1曲目、ちょっとテンポ感が停滞してしまったのは残念でした。このテンポ感できちんと歌えているので立派なのですが・・・ここまで停滞するとアゴーギグはつけられず、結果強弱や音色だけで表現することになるので少々大変でしたね。

2曲目はコントラストがついていて大変良かったと思います。全体通して言えますが特にこの曲に関して、ビブラートの使い方がとってもうまくなりましたね!とりあえずかけているのではなく、きちんと音楽の変化にビブラートを乗せることができています。

3曲目も勢いがあってよかった。アウフタクトで音楽が始まるとき、もっとうまく運べた気もします、要研究ですね。

アルト音域の伸びがちょっと弱く、ピアノにかき消される箇所が少なくなかったです。力任せではなく、響きを意識した楽器の鳴らし方を研究すればもう一化けするでしょう。

 

14.ファゴット大協奏曲より/フンメル

大曲を堂々と演奏できていました。最後に課題となった生き生きとした感じもよく出せていました。技術の傷はどうしても起きるのがこの曲ですね・・・単純なテクニックの連続程難しいものはないですね。

それから前々から相談されていたところでもありますが、やっぱり拍に対してほんの少しだけ後ろ向きに取るクセがありますね。それでいい場所もありますが、それでは困る場所もあります。きっちり拍通り、と思いすぎているので、自分で時間を進めていく感覚があるといいかもしれません。自分に悪いクセがあって、それに気付けるのであればもう逆に意識していくしかありません。とにかく音楽を前向きにとらえるクセをつけること。転んでいる、と言われるくらいで演奏してようやく人並みなのかもしれません。程度問題ですが・・・

技術的にははっきりいって言うところがほとんどありません。気になるとすればアルト音域の響きが弱いこと。力任せではなく響きを意識した音色を意識しましょう。他の人にもこれ言っているのでもしかしたら使用楽器の傾向かもしれませんね。ボーカルを変えても変わるかもしれません。

 

15.ファゴット協奏曲より/シュターミッツ

復帰戦、お疲れ様でした。ブランクを感じない堂々とした演奏でした。この曲でとにかく苦戦する様式に関して、ほとんど言うことのない演奏でした。音程も響きもよく、きちんとコントラストもついていて飽きのこない演奏でした。この曲で飽きがこないのはすごい!

ちょっとしたアーティキュレーションの取り方で印象が変わるので難しいので、Fdurの速い楽章らしいハツラツとした雰囲気がもっとあればよかった。間延びした印象が多く、もっとマルカートな部分が多くて良かったですね。アーティキュレーションというのは楽譜通りやっておしまい、ではなく、どう表情をつけるかなので、もう一歩こだわりが欲しかった。

様式キッチリできていましたが、やっぱりフレーズの収まりがあんまり感じられなかったですね、それも間延びして聴こえる要因かもしれません。

奏法なんかに関しては殆ど言うことはないので、今の伸び伸びした音でもっといい音楽ができるようこれからも頑張りましょう。

 

16.ファゴットソナタ/グリンカ

うーんもうひと伸び!という印象です。よく表現できていますが、いってほしいところでちょっとだけ物足りなかったり、引いてほしいところで好ましくないビブラートがあったり・・・。良くも悪くも変化に富んだ演奏だったのですが、表現として非常に惜しいところがたくさんありました。基本的な傾向が間違っていないので、もう少し細部にこだわった演奏を。1音1音、一小節一小節、1フレーズ1フレーズでディレクションがはっきりしている演奏を意識し、そのための鳴らしたり引いたりするテクニックを身につけること。技術のための音楽、音楽のための技術。難しいですね。

また非常にいい音色なんですが、変化がありませんでした。もっと汚い音があってもいいし、もっと薄い音が聞きたいところもあった。音色というのは色々なことで印象付けられますが、発音が強いところから変われないのでそれが一番の要因に思われます。優しいアタックをもっと自在に使えるようになりましょう。音楽のための技術!

技術的には音程が非常に良くなったと思います。「音程が良い」というのは非常にポジティブなことですが、もしかしたら「いつもいい音程で」という意識が先行し過ぎているのかも・・・?それも難しいところですね、良いものは良いのですが・・・

まだまだ歌う曲のための技術が欲しいところですね!

 

17.2つの小品/フランセ

名曲の名演でございました。とにかく繊細な音楽が上手なのでハマり役、という感じでした。楽譜の強弱があってないようなものなので終始ふわふわした音楽が続く前半も、もっと濃い音薄い音の操作があってもよかったかな。運指であったり音程感であったりで操作するのでしょうが、薄い音=小さい音、という風に演奏してしまうと今以上上手にはなれません。いい音はじゅうぶん出ていますから、「いい音」から脱却してもいいので色んな音を出す工夫を普段からしてみるといいかもしれませんね。

後半もとってもよかった。やりたいことがハッキリしていて1音1音がしっかり粒で聴こえてきました。しかし後半もやっぱりもっと音色で音楽の操作ができるとよかった。強い音弱い音の変化は大変見事なのですがそれ以外の変化があまりないのが勿体なかった。だから細かいミスがとっても気になってしまう・・・もうちょっとハイトーンが楽に吹けるリードの方がよかったかな。中低音に寄っていた気がします。オケ吹くようなリードで吹ける曲じゃないよ?

ともかく稀に見る名演でした。これ聞いてこの曲やりたくなった子たくさんいるんじゃないかな。発表会においてそれって一番嬉しいことですよね。

 

18.ファゴットソナタ/ヒンデミット

だいぶ久しぶりの参加でしたね。「ソナタ」なのでピアノとのアンサンブル!と口を酸っぱくして言っていますが、けっきょく合わせてるのを聴くのって本番だけなので人によっていろいろなのですが、君はピアノと一緒に吹く能力が非常に高い。かけあいがちゃんとやり取りになっているし、音程も楽器の音程ではなくピアノの音から取れているのでよく溶けます。たぶん無意識なんでしょうが、そのためピアノと吹くといつもとは違った吹きかたになってしまうこともあるでしょう。共演者に合わせて吹くことと自分の吹きたい音を吹くこと、いつだってバランスが難しいですね。もっと自分の吹きたい音を吹いてもぜんぜんピアニストに迷惑かけないと思いますよ。

昔からの課題だった表情や音色の変化もたくさんあって、聞き映えの難しいヒンデミットソナタがきちんといい曲に聴こえていました。まだまだ表現の入り口に立ったところだと思いますが、大きな進歩だと思います。ピアノだけどハッキリ(2楽章後半冒頭部とか)、フォルテだけど柔らかく(2楽章後半最後の方とか)、みたいなことができるようになるともっともっと楽器を吹くのが面白くなると思いますよ!

 

19.ファゴットソナタ/ファッシュ

大人になったな、という印象です。逸脱しない、ピアニストを困らせない、その上できっちりと自分のわがままで演奏する、ということは実はすごく難しいのですがその点を非常に高い水準でできるようになりましたね。今回のように人とアンサンブルやオケをやればもっともっと人気者ファゴット吹きになるでしょう。

また低音から高音までの鳴りムラがいい意味でなかったですね。高音が力任せでなく美しく鳴っていました。体の使い方がうまくなったのかな。

楽章ごとの表情変化がとにかくうまかった。第一印象からきっちり変わって聴こえるので音量というよりは音色や表情で変化があるので飽きない演奏になっていました。ファッシュは名曲ですがちょびっと飽きるのがね・・・でも今回はそんなことなかったと思います。

テクニカルは言うまでもなく上手でしたし指だけじゃなくきちんと鳴っていましたが、もっとそこに表情があれば素敵だったかな。ちょっとだけ作業に聴こえるところがあった。それは逸脱せずきちんとピアノに合っているからそう聴こえる部分もあるのでしょうが・・・

 

20.3つのロマンス/シューマン

オオトリ。見た目の100倍難しいこの曲でしたが、説得力のある良い演奏でした。音量だけではない変化に富んだ演奏は若い子たちにいい刺激になったと思います。あと音程よくなりましたね。高音域だらけのこの曲で音程がきちんと取れるならもうオケで個人的な音程に困ることなんてないかもしれません。

またピアニストのアンサンブルが完璧でした。元々合わせをたくさんやれない環境なのでピアニスト頼りなところもあるのですが、だからこそ個々の準備が光るところで。ただ漫然と聴くだけではなく、ピアノとのやり取りを感じる演奏ができていました、これは本当に素晴らしい事だと思います。

2楽章は省エネの意識もあったんでしょうがちょっとサラサラいきすぎかもしれませんね。アゴーギグは前に運ぶところもあれば時間を使うところもないと偏って聴こえてしまいます。難しいフレージングはよく理解して演奏できていたと思います。

この曲をこのクオリティで演奏できたこと、ぜひ誇りに思って頂きたいとですね。今後も期待しております。

 

 

おしまい!

室内楽イヤーになりそうな1年です。告知と各演奏会への想いなど。

こんばんは、ファゴット奏者のとのむぅです。

発表会の講評を年3回アップするだけのブログになってしまっていますが、今回は告知記事です。何気にコンスタントに閲覧されているみたいなので、まとめて掲載してみようと思います。

それぞれのコンサートへの想いなんかも少しずつ。

 

情報解禁され次第、少しずつ更新していこうかな、と思っています。

 

アンサンブルレトロ

オーボエファゴット、ピアノによるクラシックコンサート~

2022年4月2日(土)13:30開場14:00開演

名曲喫茶カデンツァ(本郷三丁目駅徒歩5分)

オーボエ:炭崎友絵 ファゴット:殿村和也 ピアノ:森りか

入場料 一般:2500円 学生2000円

プログラム

 シシリエンヌ/フォーレ

 三重奏曲/フランセ

 コンチェルティーノ/ミルデ

 Honey,Lemon and Clove/渡辺将也(初演) ほか

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2年ほど前まで席のあったテアトロ・ジーリオ・ショウワオーケストラで苦楽を共にしたオーボエの炭崎友絵さんと、15年来の付き合いであるピアニスト森りかさんとの三重奏です。最初の音出しで、初めての3人のはずなのになんだか懐かしいような音がする、という話から「アンサンブルレトロ」と名前を付けました。とにかく歌心が素晴らしい炭崎さんのオーボエ、アンサンブルの達人である森りかさんのピアノと一緒に演奏する時間は、リハーサルと言えども幸せな気持ちでいっぱいになります。昨年くらいから炭崎さんと森りかさんが意気投合していたのもあり、組むべきして組んだトリオだな、と思うんですよね。

プログラムはこの編成の代表的作品であるフランセの三重奏をメインに、ラリエとミルデの三重奏曲(オリジナル作品!)、僕の飲み友達であり作編曲家である渡辺将也による初演曲など、見どころ盛沢山のコンサートになっております。

オーボエ奏者炭崎友絵さんのホームページ↓

https://www.sumizakitomoeoboe.com/

お問い合わせ・ご予約はチラシ掲載のメールアドレス(ongakubiyori.39@gmail.com)か下記フォームまで。

お問い合わせフォーム

 

 

アンサンブルレトロ コンサート

2022年5月18日(水)18:30開場19:00開演

みどりアートパーク ホール(JR横浜線東急田園都市線こどもの国線 長津田駅北口から徒歩4分)

オーボエ:炭崎友絵 ファゴット:殿村和也 ピアノ:森りか

入場料 一般:2000円 学生:1500円

プログラム

 フルートソナタト短調BWV.1020/J.S.バッハ

 コンチェルティーノ/ミルデ

 4つのスケッチ/ホープ

 シシリエンヌ/フォーレ

 オーボエ、バソンとピアノのための三重奏曲/プーランク

 オーボエ、バソンとピアノのための三重奏曲/フランセ

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アンサンブルレトロの2公演目です。こちらは横浜市緑区民文化センターであるみどりアートパークのホールにて。

4月にも演奏するミルデ、フランセ、フォーレに加えて、この編成と言えば!とも言えるプーランク、演奏機会は少ないですが至高のレパートリーであるホープ横浜市出身・在住の炭崎さんフィーチャーということでバッハのソナタをお届けします。半分同じ、半分異なるプログラムを2か月連続でお届けします。

4月のコンサートで「このメンバーのプーランクが聴きたい・・・!」と思った方はぜひご来場くださいませ。

お問い合わせ・チケットお申込みはチラシ掲載のメールアドレス(ongakubiyori.39@gmail.com)か下記フォームへどうぞ。

お問い合わせフォーム

 

フルート、ファゴット、ピアノ トリオコンサート

いわき公演

2022年6月25日(土)13:30開場14:00開演@いわき芸術文化交流館アリオス 音楽小ホール

入場料 一般:3000円 学生:2000円(当日500円増し)

東京公演

2022年7月2日(土)13:30開場14:00開演@アーティストサロン"Dolce"東京

入場料 一般:3000円 学生:2000円(当日500円増し)

出演

フルート:遠藤優衣 ファゴット:殿村和也 ピアノ:菊池真里亜

プログラム

 ロマンチックな小品/ゴーベール

 2つの間奏曲/イベール

 オペラ「カルメン」より/ビゼー

 ピアノ三重奏曲変ロ長調 作品28/シューベルト

 ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 作品49/メンデルスゾーン

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古巣のテアトロ・ジーリオ・ショウワで一緒に演奏していたフルートの遠藤優衣さんと、モデルとしても活動中のピアニスト菊池真里亜さんとの三重奏コンサートです。3人で打ち合わせをしたり音出しをしている時間は終始ゆったりとした時間が流れます。特に菊池さんのほんわかムードは元来せっかちである僕の心までもほんわかさせてくれます。笑 しかし遠藤さんも菊池さんも音を出し始めれば大変すばらしい音楽家たちで、何曲であるはずのメンデルスゾーンも曲決めの音出しからいきなり積極的な音楽を奏でる時間となりました。二面性のある2人とのリハーサル、本番がとっても楽しみです。

東京公演に加えて、遠藤さんの出身地であるいわきでの公演も行います。今回のプログラムはオリジナルがファゴットの作品が1曲もなく、僕はヴァイオリンパート、2ndフルートパート、チェロパートなどいろいろな楽器の代わりをつとめます。ファゴット吹きとしては珍しい事ではないのですがまさか全曲そうなるとは・・・!しかし名曲を詰め込みましたので、今回のプログラムにはかなり自信があります。いわき公演、東京公演ともにご来場お待ちしております。

お問い合わせ、ご予約はチラシ掲載のメールアドレス(ensemble.lord@gmail.com)もしくは下記お問い合わせフォームまでお願い致します。

お問い合わせフォーム

 

いま情報が出ているのは以上です。情報出次第、更新していきますので何卒よろしくお願い致します。

第23回門下発表会でした。講評と次回のことと告知と

こんばんは。ファゴット奏者のとのむぅです。

暖かくなりすっかり春に・・・!と思ったらまた冷え込んできて訳が分かりませんね、皆さん体調など崩れされていませんでしょうか。

3/19に門下発表会が行われました。今回は府中の森芸術劇場のウィーンホールにて。歴代最高にいいホールが取れてしまい、また会場スタッフの皆さんが素晴らしく対応してくださったお陰で、色々なところがスムーズかつ格式高くなりました。もちろん響きも素晴らしく、みんな気持ちよく演奏できていました。

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いやステージひっろ。笑 おかげでいつもより人数が少なく見えます。

そもそも写真撮影にいない子も珍しくないのですが、今回は合計40名ほどの会になりました。

 

総評としては、コロナ禍ということもあり初めましての方が減ってきている一方、いわゆる「常連組」ばかりになってきて、レベルが明らかに上がってきていますね。

参加者にも色々いて、普段は別の先生に定期的にレッスンを受けつつ準備して本番少し前に僕のところに1回くる人、そもそもレッスンは発表会前に1回受ける僕のレッスンだけという人なんかもいるんですが・・・今回特に成長したな!って思ったのは、手前味噌と言われてしまうかもしれませんが普段から僕のところに来てくれている子たち。発表会があれば曲、なければエチュードやオケの楽譜、発表会1か月前くらいまでエチュードを同時進行で練習してくるような子たちが特に目立って成長していた気がします。先生として非常に鼻が高いです。常にレッスンに来るので楽器に触る時間が多い、付き合いが長いほうが何かと師弟関係はうまくいく、というのも大きいでしょうか。

もちろんそれはあくまで僕の主観ですので、僕が教えた子が僕にとってうまく聴こえるのは当たり前です。それを差し引いても、という感じがしたのですが、参加者の皆さんにはどう聴こえたのでしょうか。

一方でうちの発表会をもっともエンジョイしている(?)ようにのは本番前に1回だけ僕のレッスンを受ける子たち、とも言えるかもしれません。ある程度でき上ってからレッスンに来ますから、伝える情報量は多めになるのでそのぶんやることが多くて面白いのでしょうか。

色々なスタイルの参加者がいるのも、またうちの回の特徴でしょうか。

 

また当日、日本ファゴット界最大手(?)YouTubeチャンネルである「えびチャンネル」の取材が入りました!えびチャンネルこと蛯澤亮さんは公私ともにお世話になっている方で、発表会取材のご連絡を頂いたので来ていただきました。その動画がこちら↓

youtu.be

 

自分が映像で喋ってる姿ってなかなか新鮮ですね・・・。一部生徒もインタビューを受けていました。ぜひご視聴ください。

えびチャンネルは奏法、楽器、楽器アクセサリー、リードなどなど多岐に渡る動画をアップしていて非常に面白いのでファゴット吹きならチャンネル登録してチェックすることをおすすめします!

 

うちの発表会は年3回行われているため、常に発表会への参加者を募集しています!

発表会参加・お問い合わせフォーム

次回の発表会は7月です。ファゴット吹き、もしくはアンサンブル団体ならどなたでも参加でき、いずれも1回以上僕のレッスンを受けて頂くことが参加の唯一の条件となります。毎回初心者から上級者まで、ここ1年くらいは音大生もちょこちょこ参加してくれるようになりました・・・!

 

夏のひとときコンサート(第24回とのむら門下発表会)

2022年7月23日(土)お昼ごろ開演、夜終演予定

会場:小岩アーバンプラザ ホール

参加費

ファゴットソロ(社会人)15000円

ファゴットソロ(学生)10000円

アンサンブル(1人あたり、編成などによって多少増減します)6000円

エントリー、お待ちしております・・・!ご自身の準備が間に合えばですが、6月いっぱいは受け付けております。申し込み、お問い合わせはこちらへ↓

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さて、ここからは今回の発表会参加者向けの講評記事となります。出演者以外の方には興味のないものになりますのでご了承ください。

と毎回前置きしてるのですが、思った以上にこの講評色んな人に読まれているんですよね・・・謎が深い。

 

1.無言歌/メンデルスゾーン

久しぶりの参加、お疲れさまでした。緊張してるのも伝わってきたけど、それをきちんとコントロールできているようにも見えました。そのため安定感があり、また以前はすごく課題であった音楽表現の幅もとっても広がりました。テクニカルな曲ではなくこの手のメロディックな曲なのでどうなるか、と最初は思っていましたが・・・。とっても上手になりました!まず今回の演奏に自信を持ってほしいです。

よく響くいい音を吹いていて、意外と厄介なリズムも正確でピアニストとのアンサンブル(ここはさすがですね!)も完璧でした。音程もよかったので室内楽として完成度の高い演奏だったと思います。

課題としては、音楽表現をもっと自分の意志で考えられるようになってほしい。それを僕がサポートする、という図式が健全なレッスンの形だと思います。僕が教えたことはほぼすべて出来ていて、曲の魅力も活きていましたが、そこに君の意志がもっと欲しかった。「私はこう演奏したい」「私はこの曲のここが好き」とか、そんな要素がもっと見えるとよかったですね。

マチュアだろうと久しぶりだろうと、5分弱のこのステージはあなたのもので、また聴いている人のために精一杯いいものを聴かせる必要がありますから、そのためにはまず自分が自分の音楽に自信を持ち、意志を乗せることからだと思うんですよね。そんなファゴット吹きになってほしいな。次回も楽しみにしてます!

 

2.コンチェルティーノ/ダビッド

正直ここまで完成度を上げてこれるとは思っていませんでした。もともと音もいいしピアノの音もよく聴けるし、アンサンブル的にも音楽的にも心配していませんでしたが、テクニカルも相当に高水準でした。

前半部、非常に伸びのある音で演奏できていました。バタバタしていたけど、吹いていてすごく気持ちよかったんじゃないかな・・・?とある著名なサキソフォン奏者が「良い音を作るには良い響きの会場で吹くことが一番」と言っていますが、今回の自分の音や響きを愛してあげてくださいね。

速くなってからも大変すばらしかった!ゆっくり丁寧に確実に、何回もしつこく練習すれば理論上吹けない楽譜はもうないですね。じっさいダビッドを吹くということはそーいうことだと僕は思います。この曲はよい練習の仕方と正しい運指が身に付いていれば絶対に吹けますし、逆に身に付いていなければ絶対に吹けません。それは自分が一番よくわかっているんじゃないかな・・・?僕個人としては、君はもう自分のやりたい曲を(使える時間や労力のバランスを取れば)なんでも吹いていいと思います。

足りなかったのはこだわりや個性かな。きれいにまとまっているけど、いわゆる上手い人というのはその上で音楽的な自分のこだわりをとっても大事にします。「私はこう吹きたい」みたいなものがもっと見えれば最高だった。「こうするべき」「こうしてはいけない」ばかりにならないでほしいな、と思います。環境も変わって大変だろうけど、次の参加を楽しみにしています・・・・!卒業おめでとう!

 

3.3つのロマンス/シューマン

少し前なら間違いなく即決で君がMVP!と言っていいくらい素晴らしい3つのロマンスでした。音もいいし技術的にもきちんと解決してきたし、何より歌心が素晴らしかった。これだけ美しくこの曲が歌える楽器奏者(ファゴットに限らず)がどれだけいるだろうか・・・?と思えるくらいに。非常に素晴らしかった。

あと成長したなと思う部分がピアニストとのアンサンブル。乗っかるだけではなく、きちんとやり取りを感じました。ピアノの音をきちんと体に入れてなければ1回の合わせでここまでは普通できませんから、いい準備をしてきたなと思いました。

これは表現・技術の両方に関することですが、課題はビブラートでしょうか。非常に響く会場だったのでそこまで気にはなりませんが、音楽表現を増幅するようなビブラートを選択できるようになったほうがいいかもしれません。大きく歌いたくない音はノンビブラート、クレッシェンドに合わせてビブラートの幅を増やす、ディクレッシェンドを補佐するビブラート、などなどなど。弦楽器やフルートのような響きを増すためのものではなく、音楽表現を助けるようなものになるといいですね。声楽のビブラートを参考にしてみるのもいいかもしれません。

この手の歌モノはもう達人の域と言っていい。いわゆる「エスプリ」な曲に手を付けると・・・どうなるだろうかね。フランセの2つの小品とかケックランの3つの小品とか。ボザもいいですがアレは派手だからどうかな。ボアモルティエ、ドゥビエンヌあたりもいいかもしれませんね。

 

4.ブラジル風バッハ第6番/ヴィラロボス

チューニング、必要だったかな?この曲はチューニングないほうがよかったかも。

よく響く会場が映える曲でした。アンサンブル的にも個人技としても難しい曲だったと思いますが、非常に良く仕上がっていました。

フレーズの終わりがもう少し見える演奏になると良かったかな。音楽が途切れる事なくずっと続いてしまう印象があったので、もう少しカデンツを意識できると違ったかな。これは会場の響きが少し邪魔してくる(響きが残ってしまってフレーズが終われない)なので、そこをリハーサルの時間を使って確認できるとよかった。

フルートはフレーズの終わりに限らず、ディクレッシェンドがもっと上手くなるといいですね。クレッシェンドは非常に上手く、フォルテもピアノもあるんだけど、だんだん小さく、となると不安定だったり収まりが足りなかったり。フルートの難しいところなのでしょうが・・・。ファゴットはよく理解して演奏できていましたが、音楽的にはもう少し積極的でいいですね、守りに入った印象を受けました。曲もいいですし響く会場なのでそれだけで気持ちいいんですが、もう一歩踏み込んでほしかった。

しかしこの難曲をよく仕上げてきました。僕も何年かに1回、この曲の演奏機会ってあるのですが、毎回発見があって面白いですね、今回レッスン中にも色々発見できて僕も面白かったです。

 

5.三重奏曲/オーリック

非常に安定した演奏でした。技術的にかなり高水準で、また3人とも音楽の趣味が似ているのかいいまとまり方をするシーンが多かった。趣味が似る、というのはけっこうアンサンブルするうえで大切なことですよね。これほど高水準なオーリック、なかなか聴けるものではないなと思います。

レッスンでも言いましたがトリオダンシュというのは合わせでどうこうではなく、とにかく一人一人がキッチリやってくればうまくいくものです。よく理解してくれていましたが、しかし・・・。「キッチリやってくる」というのは指をさらってくること(だけ)、では、ないと思います。もちろんミスのないよう練習してくるのは大事なことですが、レッスンの時に僕がアレコレ言った後の方が積極的でいい音楽をしていたのですが、そこから1週間で、レッスン時以上に積極さが減ってしまった印象を受けたのが、僕は少し残念でした。技術的には完成度が上がっていましたから、きっとミスをしないための練習をそれぞれがたくさんしたと思うのですが・・・僕がしてほしかったのはそーいう時間の過ごし方じゃなかったんですよね。

何度でも言いますがテクニック的には非常に高水準でした。無理矢理褒めているのではなく本当にそう思うのですが、だからこそ音楽の変化が乏しいのが余計に気になってしまいました。いい子(奏者)でいようとするのではなく、お客さんに好かれる演奏者、目指してみませんか・・・・?

曲の難易度に対する安定感で言えば全団体でピカイチ。難しいことをきっちりやっているので印象にも残る演奏でしたが、もう一歩、踏み込んでほしかった・・・!

初参加の人たちにあまりいいことが書けなくてごめんなさい。嫌でなければ、ぜひ同じメンバーで別の曲、演奏しに来てくださいね。その時はもっと「やんちゃ」な演奏をしてほしい。心からそう思います。

 

6.交響的協奏曲/ブレヴァール

ハツラツとしたいい演奏でした。2人とも明るい曲の方が得意なのかな、という印象でした。よく響く会場なのも相まって、オケバックでやっても負けない力強いサウンドになっていました。ソロだったりデュエットだったりの場面転換もよく理解して演奏できていました。

フルートは速いタンギングをよくコントロールできていて、また明るくよく響く音を演奏できていました。またピアノ、ファゴットをよく聴いて演奏できていました。レッスンでも言いましたがやっぱり課題はフレーズの収め方。張るところは張っていいのだけど、長い音は大きい短い音は小さい、語尾は必ずと言っていいほど大きい、というのはよくあるクセなので、矯正が必要かなと思います。特にこのくらいの時代の作品はかなり意識的にコントロールしないと逆に作用してしまいます。ドゥビエンヌとかボアモルティエあたりの古典ものを本番なくてもフルートの先生にレッスンしてもらうとパターンが理解できてくるんじゃないかな。

ファゴットは技術的によくここまで追い込みましたね。長いし容赦ない曲ですので、とりあえずなんとかした、というわけでいい練習ができたんだなと思います。そこは(吹かなかったけど)ファゴットのレッスンによる成果も出てきているのかな。しかし練習の仕方はもう理解しているはずですから、技術的になんとかなっている状態でレッスンにきてくれれば・・・とは思いますが、時間的にも少々厳しかったかな。よく練習できていましたし君はフレーズの収め方や歌い方は上手なので、もっと楽器の鳴りや響きをコントロールして「こんな音で!」「こんなイメージで!」というのがもっと出てくるといいですね。技術的な安定のもう一歩先まで狙ってほしかった・・・!

とにかく名コンビだなと思うので、ぜひまた一緒に発表会参加してくださいね!

 

7.ファゴット協奏曲第1楽章/ウェーバー

チューニングはもっとしっかりと。いつまでもAを伸ばす必要はないけど、ステージの上で自分の音がどんなふうに響くか試せる貴重な時間なので大切にして。これはオケでも同様なのですが。

どうなることかと思いましたがとにかく間に合わせていてよかった、苦しかったと思うけど、けっきょくここまで練習できるならそれがもっと早い時期であればレッスンで色んなことを伝えられたので、非常にもったいなかったですね。今回のような(やや非常識でも)遅いテンポでいいのでしっかり完成させる、という意識は必要で、その経験の連続のみで楽器は上手くなります。ごちゃごちゃ練習していても一生変わりませんので、そこは性根を入れ替えるつもりで。本当はもっと教えたいことが山ほどあるのに、こちらも悔しいのです。

タンギングが一種類なのが気になります。冒頭のようなハツラツとした音楽の発音と中間部アリアの声楽家のような発音は全然違うはずなのですが、どっちにも寄らないタンギングで演奏していたのが勿体なかった、本当は自分ももっとやりたいことがあるんじゃないのかな・・・?

とにかく次は準備を早く。楽譜だの練習だのの前にまずはレッスンをお願いすること。今はまだその時期なんじゃないかな。いずれ、そろそろレッスンでも・・・って思うまで自分で練習ができるようになる、かもしれません。またの参加お待ちしてます!

 

8.ファゴット協奏曲第2.3楽章/ウェーバー

本当に、上手くなりました。最初は楽器の鳴らし方ばかりのレッスンになってしまいましたが、最近それが華を開いてきらきらした音がたくさん出るようになりました。そのいい音は今回みたいな大きな会場でこそ活きますね。オケバックでも映えるくらい、いい響きしていました。

音楽表現と技術の練習を両立して行っているので、せめた表現をしても技術がブレない。これ、僕がみんなに大事にしてほしくて言っているのですがなかなか実現できないんですよね。今回君はそれを実現できていました。安心して聴ける、生きた演奏でした。やっぱりウェーバーの2.3楽章って何かあるのかな、やたら名演が多い。曲の魅力は、サンサーンスやヴィヴァルディの方が表現しやすいと思うのですが・・・。

課題は音色の操作、でしょうか。「いい音」というのは曲のシーンによって違うと思いますので、もっと音色をイメージして吹けると良くなると思います。この曲で言えば2楽章と3楽章じゃ全然表情が違うでしょうから、そのイメージがもっとあるとよかったかな。長調短調はよくイメージできているようなのですが。音程がいいので和声感はあるんですよね。その和声感に音色操作が加われば、もっといろんな表現ができるようになるんじゃないかな。音のイメージ、もう少し持ってみて。

 

9.コンチェルティーノ/ダビッド

音楽的なこだわりを感じる演奏でした。よく響く音はさすがで、速いところが技術的にも高水準だったので、音楽表現のこだわりがあるととてもいい演奏になりますね!また音程がすごく良いのでピアノの和音に乗って美しく響いていました。この曲特有の軽い感じもよく出せていました。

完成度の高い演奏だったから気になったのは、前半部分の技術的な粗さでしょうか。ちょっとした発音の質、ちょっとした運指ミス、ちょっとしたトリルの粗さ、スラーの粗さなどなどなど。表現がきちんとできているので非常にもったいなく、せっかくの流れを止めてしまっていました。「まぁ吹けるでしょ」ってフレーズこそテクニカルを大事に。全体的にパラパラした曲だから、練習箇所は多いので仕方ないといえばないのですが・・・。

美しい旋律を持った作品に挑戦するといいかもしれませんね!エルガーシューマンテレマンemollとか。テレマンはちょっと息がきついかな・・・?次回また楽しみにしています!

 

10.二重奏曲/シュタドラー

ご存じないかもしれませんがアンサンブルMVPでした。レッスンでは技術的にかなり荒かった部分が本番で非常にうまくまとまっていて、またそこに素敵な音楽表現が乗っていて、僕が伝えたかったことをきちんと理解し練習してきてくれたのがとっても嬉しかったです。

また楽器がらそこまで演奏機会の多くない時代の曲でしょうからやりづらかったと思うのですが、まったく苦にしておらず、非常に僕好みの演奏でした。やっぱりファゴット吹きからみてクラリネットは「ズルい楽器」なので、そこも余すところなく発揮してくれていました。

特にアンサンブル的に課題がどうこう、って感じではないですが、二重奏ですし、個々の技術的な粗はサッサと潰せばもっと速い段階でこのくらいの演奏はできていたはずですし、準備の質をもっと上げられるといいんでしょうね。

アウェイに感じる場だったとは思うのですが、僕としてはすごく嬉しいエントリーでしたので、懲りずにぜひまた。三重奏でも四重奏でも歓迎致します!

 

11.コンチェルティーノ/クルーセル

僕の演奏でした。このホールは響くわりにピアノの音も聞き取りやすく本当にいいですね、いつかここでリサイタルを、という想いが強くなりました。

とにかく勢いと聴き映えを意識した演奏をしたのですが、まだまだ洗いところも多く反省しています。

ここ最近は音大生が多くなってきてカモフラージュ(?)できるので自分も演奏していますが、次回はどうかな・・・。プログラム内の講師演奏やゲスト演奏、僕はすごく大事だと思うんだけど、反対する声もあるから難しいところ。主役は生徒たちなので、反対する声がある以上それを握りつぶしたくはないんですよね。

 

12.コンチェルティーノ/ダビッド

まずは参加ありがとう、そして素晴らしい演奏でした。表現が非常に豊かで、聴いていてわくわくする演奏でした。持っている歌心やビブラートが大変すばらしく、これからが楽しみです。

大変すばらしい歌心なのですが、今回のような大きな会場だと表現がすこし手元での変化が多く、会場の奥までは届かないことがあるようです。大幅に仕掛ければいいというものでもありませんが、会場の奥にどう響いているか、を考えながら演奏するとより良いものになるかと思いますので、つぎ大きい会場でソロを吹くときは意識してみて。例えばチューニングのときに自分の音がどう響いているか聴いてみるだけでもすこし感覚が掴めるかも。レッスンで触れたタンギングについては問題ないかと思われます。色々なタンギングができるようになるといいですね。シングルも諦めてしまわないで!

 

13.ファゴットソナタヘ短調/テレマン

レッスン時から大きく成長し、大変いい演奏だったと思います。バロックはじめて、レッスン僕だけ、ということで実はとても心配していたのですが・・・。また大きな会場ですが大変よく響く音で演奏できていてそれも良かったです、リードもハマってきましたね!

自分なりに色々と研究した結果なのでしょうが、表現や装飾はどこからの音源由来でしょうか。まずい表現や装飾をつけているわけではないのですが、どこか「借り物」感がぬぐえず、そこが残念でした。どこかから借りてきてもいいのだけど、それを自分のものに消化するのは容易ではありません。もっと音楽の引き出しを増やしていけばできるようになっていきますから、ぜひバロックものたくさん経験してみて。もちろん自分で考えて演奏できるようにならなくてはいけませんから、目指すところはまだまだ先にあるようです。少しずつ子供ではなくなってきます。自分の意志、きちんと人に伝えらえるように。言葉がなくても、僕たちにはファゴットがありますからね。

 

14.コンチェルティーノ/ダビッド

名演ダビッド。テクニックの安定感やオケに溶ける音色・音程はもちろんですが、それがブレる事がないまま非常に豊かな音楽表現を実現していました。レッスン中はそこまで思わないけど、発表会でいつも思うのは僕が1言うと10は理解してくるの、本当にすごいと思う。付き合いが長いのも君自身のセンスのこともあるでしょうが、レッスンでの対応力というのはそのままオケで指揮者(や他奏者)の要求に応える力になりますから、自信をもってその能力を合奏に活かしていってほしい。

そこまでこれが課題!という感じもないです。フレーズの語尾がやや膨らむクセ、ビブラートで音が細くなるクセなんかはもちろん引き続き気にしていってほしいですが、この曲においてはそこまで気になる感じもしませんでした。さらう時間の問題やレッスン回数が少ないこともありますが、もっと攻めた選曲してもいいんじゃないかな。やりたい曲はたくさんあるようだから、もちろんそれが一番なのだけど。次回も楽しみにしています!

 

15.ファゴットソナタ/ボアモルティエ

表現、技術ともに大変完成度の高い演奏でした。ブレスや跳躍など厄介な点もきちんとクリアしていたため、難しいところがいい意味で難しく聴こえず、優雅な印象を受けました。お金を取ってもいいくらいの演奏だったのではないでしょうか。通奏低音との絡み方も絶妙でよく理解して演奏できていました。音楽的なメリハリもしっかりついていました。

課題としては音の伸びや響き、でしょうか。大きな会場ですのでその差が人によって分かりやすく出てしまいました。なかなか広いところで吹くことも多くないでしょうし難しいと思うのですが・・・普段からもっと広い空間を意識し、狭いところで吹くなら多少ビリビリするくらいでいいのかもしれません。ダイナミックな演奏を心がけましょう。また発音も一辺倒になりがちで、曲の雰囲気がらあまり使用シーンは多くありませんがハッキリした発音がもっと多くても良かったですね。今回は発音以外の部分ででしっかりアプローチできていたのでそこまで気にはなりませんでしたが。コロナ禍であるうちは広い会場が続くと思いますので、まずは普段の音出しから広い空間をイメージしてみましょう!

 

16.木管五重奏曲/フェルステル

非常にハイレベルな演奏でした。技術的にもアンサンブル的にも難しいところの多い曲ですが、守りに入ることもなくアンサンブルを楽しんでいて、すごくいい木五メンバーだなと思いました。僕との付き合いが長くなったメンバーも多く、レッスンで伝える情報量が増えてきていますがしっかり活かして来てくれたのも良かったですね、対応力の高さも素晴らしいと思います。

皆さん素晴らしかったですが、会場との相性もあるのでしょうがメリハリの利いたホルンが非常にいい仕事をしていました。また鳴らせ鳴らせと言い続けていたファゴットも本番ではよく響いていて安心しました。

僕は色々な指導先で「アンサンブルはけっきょく個人技の集まり」と言って回っています。今回のホルン・ファゴットに関して本当にそれに尽きるところです。アンサンブルメンバー、取り組んでいる曲、聴いているお客様への愛情表現はもうけっきょく個人個人がきっちりやってくること以外にないんですよね。合わせや合奏中に何かしようとしてもそれはすり合わせにしかならないので。だから個人の伸びが僕はとっても嬉しかった。もちろん、この木五の要と言ってもいいクラリネットはきらきらしていたし、オーボエのリーダーシップも素晴らしかったしフルートの職人芸も光っていました。やっぱり木五っていいですね。

木五を同じメンバーで2回以上の参加、ってたぶん今までほとんどいなくて。今後もぜひエントリーしてください。楽しみにしています!

 

17.演奏会用独奏曲/ピエルネ

君のファゴットは本当に積極果敢で、レッスンでも本番でも聴いていてワクワクします。その攻めの姿勢は忘れないでいてほしいなと思います。以前は力任せなところが多く心配でしたが、体の使い方がうまくなってコントロールが取れるようになったのが今回特に感じた成長でした。楽器に慣れたことと、環境にも慣れたのも大きいかな。

やりたいことはきっちり伝わってきました。この広い会場で、ピアノがガンガン鳴るこの曲でそれができたのが素晴らしい。表現力に関しては言うことないですね、表現をするための技術が非常に高い!

課題は安定感かな。出だしこけるのとか、大して難しくもないところでぽろぽろミスが起きるのは、練習が「上手くいった場合」を意識しているからだと思います。同じフレーズを10回吹いて、一番うまくいったパターンのことは忘れて、一番うまくいかなかったパターンを意識し、そこを改善するような練習を心がけましょう。積極さの裏返しなのかもしれませんが、積極性と安定感は必ず同居できるはず。練習の質で安定感を掴めるようになるといいですね・・・!

それと、単純にテクニック強化という意味でもっといろんな譜面を読むといいかな。発表会はNGでも少しの練習時間とレッスンに通う気力があればエチュードに挑戦してみるのもいいと思いますよ!ワイセンボーンやミルデ以外にも面白いエチュードは結構いろいろあります。

 

18.組曲/タンスマン

非常にいい演奏でした!リズム感、ソルフェージュ、ピアノとのアンサンブルがうまく、難しいリズムの音楽ですが綺麗にかみ合っていました。また積極的に表現もできていたので、丁寧に練習ができていたのだと思います。

少々音程が気になるところがあります。もちろん合奏ではありませんからそこまで音程音程、って感じでもないのですが、逸脱してしまう音程が一部あるようです。特に遅いところでそれが顕著で、また音程が悪いので楽器の鳴りも殺されてしまうのが気になりました。リズミカルなところがうまい分、気になってしまいました。音程と鳴りは気になりましたが、この曲で一番難しいフレージングに関しては、よく考えられていました。レッスンもそればかりだったもんね。長いフレーズを繋がって聴こえる演奏をするのは非常に難しいのですが、そこをクリアしていたのでトントン、というところでしょうか。

パワーがあってテクニックがあり、それでいて繊細な曲も実は得意なのが君なので、うまくバランスを取れるといいですね。もちろんパワーやら繊細さなんてリードや楽器の調子一つだったりするのですが・・・。

それにしても2つの楽器で3曲乗りばん、見事でした。聴きに来ていた知人が「現代のドゥビエンヌ」と称していました。

 

19.3つの小品/ケックラン

ブランク明け、そしてレッスンを受けては初参加でしたね、お疲れ様でした。若者にはぜったいに手が出ないジャンルの作品を渋み旨味タップリに演奏できていました。レッスンでお伝えしたいくつかの小技もうまく使えていましたね。間の取り方もうまく、難しいはずの表現をいい感じに見せることができていました。

1音1音大切に、という印象も受けました。なので昔は結構気になっていた音程も非常に良く、ピアノとも綺麗に共鳴していました。一方で、音の強弱はあっても濃淡があまりなく、歌わなくていい音を歌ってしまったり、その逆があったり、というのが気になりました。しかしその手の判断が特に難しい曲ですから、他の曲だとそこまで気にならないのでしょうが・・・。

しかし復帰戦、ご自分のリードで、ここまでの演奏、大変すばらしいと思います。今後も楽しみにしております!

 

20.シシリエンヌとアレグロジョコーゾ/グロヴレ

アレグロジョコーゾ、か、と思ったんですよね、最初に。苦手なんじゃないかなと思ったんですが、レッスンの時からちっともそんな感じがせず、本当に君は日に日にレベルアップしていますね。今回この曲に限らず、本当に上手くなりました。音大生と見紛う音の良さ、というのは以前からしていますが、もうそこらの音大生よりよっぽどいい音で演奏できていました。大きな会場にもよく響いていました。

講評というのは褒めるところではないと思っているのですが、誉め言葉ばっかり浮かびますね・・・。パワフルな表現が上手になったので、そのぶん繊細なところが映えるようになりました。場面転換の多い曲ですが、これだけ表現幅があるとちっとも苦になりませんね。また技術的に音楽的にと、大変すばらしかった。

テノール音域以上がちょっと細くなる傾向にあるようです。それでいい事もありますが、クセなのか楽器の傾向なのかちょっと分かりませんが、少し鳴らし気味にするとバランスよくなるかもしれません。課題というとそのくらいしか浮かびませんね・・・。ぜひまた色々な曲に取り組んでいってみてください。サンサーンスとかケックランとかやってみたら色々発見あると思いますよ!

 

21.演奏会用独奏曲/ピエルネ

変化に富んだ演奏で非常に楽しめました。力任せなところがないので自然と楽器が鳴っていい音がよく響いていました。また技術的にとても安定していました、丁寧に練習してきたのが分かります。今回のような練習の仕方をぜひ色んな曲で試してみて。理論上もう吹けない楽譜なんてないはず。

技術的な部分で言うと、特筆すべきは音程の良さ。楽器の力もあるでしょうが、ピアノの和音と美しく共鳴していました。ファゴットはいい道具を使って正しい運指で吹けば基本的に音程が取れる楽器ですが、「余計なこと」をして音痴になりがちです。「余計なこと」は荒い練習をしていると染みつきがちなので、音程の良さも丁寧な練習が効果があったんじゃないかなと僕は思います。

課題としては、この曲に限らずフランスもの特有にありがちな「遊び心」かなと思います。対面のレッスンが少なかったので伝えきれなかった部分が多かったのですが・・・例えば冒頭のタイのついた三連のリズムとか、拍子が変わってからのリズムの取り方とか。すごく真っ当にリズムを取りにいっているのですが、そこに遊び心がもっと感じられるとよかったかな。

フランセとかディティーユとかケックランとか、フランス作品にもう少し取り組んでみると掴めるかもしれませんね。次の機会も楽しみにしていますね!

 

22.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

別の本番でも言った気がするけど、音の抜けが本当に素晴らしい。大きな会場なのに、奥の奥までたくさんいい音が響いていました。この曲を演奏する上でこれほど大事な技術もなく、ハマり役だなぁ、と思って聴いていました。楽器とか吹き方とかリードとかいろんな理由があるんだと思うけど、音抜けの良さは長所なので大事にしていってほしいなと思います。

技術的なことに関しては、けっこうレッスンやったしこの曲に関してはだいたい伝わっていると思うので特に言うことはないです。楽器が鳴る音程感、というのも少し理解できてきたかな、という印象を受けました。

ピアノとの合わせが1回なのでなかなか難しいのですが・・・もっといいアンサンブルができると良かったかな。ズレてるとか合ってないということではなく、シンクロ感がもっとあるとよかったかな。練習しているときにピアノの音が頭の中で鳴っていればいいのですが、そこまで余裕なかったかな。どこでどんな音型が鳴っているか、できればどんな和音が鳴っているか、というのも頭に入れておくと合わせや本番が何倍も楽しくなりますので、次はぜひピアノ譜見ながら練習してみて。

 

23.五重奏曲/カプレ

やっぱり1楽章から聴きたかったな・・・。それはともかく、5人でのリズム感や歌い方の共有がなされていてそれが心地よい演奏でした。お互いよく聴きあっている証拠だと思います。それと音量のバランスが非常に良かった。全員の音がきちんと聴こえてきました。

管楽器組の細かい連符がもっと聴きとれるとよりよかったでしょうか。サラサラ、っと指を回すだけではなく1音1音きちんと自分がソルフェージュできていないと客席には音は飛びません。アンサンブルとしての精度は非常に高かったですが、一方で個々の魅力がもっと聴きたいなぁという印象もありました。また少々フレーズが短い人が多く、1小節ごと、休符ごとに途切れて聴こえるところが多いのも気になりました。それが5人でそろってしまっているので流れが止まってしまうことが多かったです。ある意味、共有されてる、とも言えますが・・・アンサンブルが乱れてもいいからもっと個々の意志が出てくるとよりよかったのかな、と思います。

 

24.四重奏曲/スマリーズ

レッスンではアンサンブル的なことよりも個々の技術についての言及が多かったですが、言ったことをよく理解し、繰り返しゆっくり練習してきたのがよく伝わりました。同じ楽器が4本揃って合わないはずはないので、まずは個人個人の技量から。今後ファゴットアンサンブルに挑むときはそれぞれが無伴奏ソロを演奏するような気持ちで譜読みしてくるときっとうまくいきますよ!

ファゴットアンサンブルの最大の欠点は音量バランスがとりづらいこと、という話をしたと思いますが、今回の演奏は欠点をしっかり補えていたと思います。それは前述の通り、それぞれが旋律パートを丁寧に練習してきたのでよく響きよく鳴ってくれていました。バランスを取る、って実はすごく単純なことだったりするんでしょうね。今回得た経験を今後もぜひ活かしてみて。また、いっぱいソロ曲聴いたでしょうから興味があれば次回はぜひソロで参戦してくださいね!

またテンポ感の共有がよくなされていて、お互いよく聴きあっているんだな、と思いました。オケでもきっといいアンサンブルができることでしょう!

あ、最後の音、とっっっても良かった!音が出なかった人も、ある意味いい仕事をしました。攻めたppというのも曲の中で2~3回くらいあってもいいものですね。

 

25.三重奏曲/フランセ

舞台に上がったらもう演奏家ですから、音を出すまでの振る舞いにも少し気を遣いましょう。ここは発表会だけど、なにかとコンサートの体裁を保とうと(僕が)しているのはその手の意識を高めるためでもあります。

しかしまぁこれだけ難しい曲を綿密にアンサンブルできたのは大変すばらしいことです。余計なことをしなくても1人1人がきっちり演奏すればそれだけで名演、というのはさすがの名曲といいますか。

個人の技量に関して言うことはほとんどないですが、この編成やっぱりファゴットが埋もれるんですよ。僕はオーボエ・ピアノとのトリオの時は完全にパワー重視セッティングで挑みます。ファゴット吹きというフィルターを外してぜひ自分たちの演奏を聴いてみてほしい、ファゴット、音小さいでしょ?ピアノは音数のこともあるし、オーボエはいい音を犠牲にした音量を吹いていない(それでいいんです)のにファゴットは頑なに表記のダイナミクスを守ろうとしてしまうので、結果としてあまりバランスがよくありませんでした。この状態でオーボエサイドからできることって「もっと吹いてよ」と声かけるくらいしかできず、最終的にこのバランスにそれぞれの耳が慣れてしまうという状態になっていたのではないでしょうか。アンサンブルのためにもっと太い音を求めましょう。

オーボエの技術的な精度は相当なものでした。音の存在感があるので周りは相当演奏しやすいでしょうね。強弱もきちんとコントロールできているのですが、それでも初めから終わりまで同じような音色が続いてしまうのが気になりました。例えば長調短調で変えてみる、フォルテとピアノで(音量ではなく音色を)変えてみる、などの工夫が見えても良かったかな。音楽の変化を音量以外で表現できるようになれるといいですね。

ピアノはもう上手すぎて全然言うことがないのですが・・・音数が増えてくると拍子感が失われてしまうことがあるのでそこは惜しかったかな。この曲において拍子感というのは和声感以上に大切な要素になってくると思うので。そこまでの余力はないのかもしれませんが・・・

それでも我が発表会稀に見る名演だったと思います。同じ編成、僕の知る限りで他にもたくさん曲はありますからぜひ同じメンバーでまた参加しに来てください!

 

26.演奏会用独奏曲/ピエルネ

いい演奏でした。聴き映えのする曲を演奏する、というのはつまりハードルの上がる行為でもあるのですが、少ない準備期間でよくここまでやりました。きちんと聴き映えていたし、安心して聴いていられました。レッスン時とは大違いで。

技術的にこの曲を苦にする事はもうないでしょうから、欲を言えばもっと積極的なものが聴きたかったかな。フォルテはもっと大きく、歌うところはもっと豊かな音で、リズムはもっと遊び心を持って。最後の追い込みの練習で小さくまとまりにいってしまったんじゃないかな、それがちょっと惜しかった。

ピアノをよく聴けるようになったなと思います。音程がいいのは前からですが、1人で吹くよりピアノと吹いてる時の方が音程がいいのはよく聴いている証拠。ただし聴いているときはいいのですが、吹きはじめの瞬間にアンサンブルの相方であるピアニストの音ではなく、自らのカウント重視になって毎回ほんの少し(たまに大幅に)ズレます。カウントしていいのだけど、そのカウントはピアニストの音楽からきちんと拾って。立場は違えどステージ上では相方であること、もうそろそろ理解できるんじゃないかな。

もう映える曲は大丈夫だから、映えない曲をやりましょう。バロックものとか古典ものとか。次回も楽しみにしてます!

 

27.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

いや名演でした。僕はこの曲を人前で演奏したことはないですが、ここまで完成度の高いギャロンってそうそう聴けるものでもないなと思います。音の密度が高く、会場の響きをうまく使えているため音がよく抜けて聴こえてきました。全体的な音抜けがいいからこそ気になったのは短い音・細かい連符のとき鳴りが弱まること。理想としては逆がよくて、短い音や細かい音の音抜けを意識して、長い音はあまり抜けないよう意識すると遠くで聴くとバランスよく聴こえますので試してみて。

またアウフタクトから始まるフレーズが非常に美しく演奏できているのですが、扱いがすべて一緒なので少し退屈に感じました。例えば出だしから強いアウフタクトがあってもいいんじゃないかな?そういった音楽もこの曲にはいくつかあるはず。あとクレッシェンドの仕掛けがいつも遅いので、気付いたらフォルテになっていた、という箇所がいくつかありました。クレッシェンドやディクレッシェンドは結果ではなく経緯の方が聴いている人の印象には残りますから、仕掛け方をもっと考えられるといいですね。

もうこんな簡単な曲はいいですから、名曲難曲に挑みましょう!遠くて大変だとは思いますが次回のエントリー楽しみにしてます!

 

28.ファゴット協奏曲第1楽章/フンメル

トリに相応しい演奏でした。納得いかない部分もあるだろうけど、それ含めてフンメル、なんだと思いますよ。先生としてハッキリ言っておきたいのは、テンポ感に関しては君は悪くないので何も反省することはないです、大丈夫。やりたいテンポはちゃんと伝わってきていました。

全体的にコンパクトに吹きましたか?積極性が君の魅力であり場合によっては欠点にもなりうるので一長一短ですが、シーンによってはちょっとこじんまり聴こえたりもしました。何しろピアノで弾いてしまうとオケのパートはペラペラなので、ファゴットだけで世界観を作る必要があるのがこの曲(というかコンチェルトの類ほぼすべて)ですから、そこはもう少し意識が欲しかったかな。

僕や君に限らずフンメルはファゴット吹きにとってあこがれの1曲で、それに全力で向き合ってここまでレベルの高い演奏ができたことをぜひ誇りに思ってほしい。僕も自分が大学の卒業試験で吹いたフンメルは一ミリも納得してないけど誇りに思っています。

 

 

 

 

ぼやき

今回、全体的に講評ちょっと短いかしら。その分要約したつもりなんですが、どうでしょうかね。僕の講評に対する講評がほしい。

発表会の演奏を聴いていて一番楽しいのは他の誰でもなく僕自身で、僕が1曲演奏するのはその楽しませてもらっている御礼の気持ちがあるので、実は毎回すごく気合が入ってます。コンディションはそりゃ悪いんですが、その中でどのくらいできるか、という意味でやっぱり僕自身いい修行の場になっているんですよね。とはいえ講師演奏への反対意見はごもっとも。アンコールみたいにやればいいんだけど、やっぱりトリをつとめた子がちゃんとトリであってほしいんだよなぁ・・・難しいな。