ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

門下発表会でした。〜全演奏の講評やらなにやら〜

こんにちは。

どうにもこうにも、事務作業や運営業務が苦手なとのむぅです。今年度も終わりですね。

僕は4月からとあるオーケストラでの仕事が始まります。固定のメンバーでのオーケストラでの活動は初めてと言ってもいいので、とても楽しみにしています。

 

さて、先日、僕の門下の発表会が終了いたしました。

出演者総勢36名、お客様にもたくさんご来場いただき、50ちょっとの客席がパンパンで、息苦しく感じた出演者やお客様がいたかとは思います。運営についても、一人で取り仕切るのはかなり難しい人数になっており、お手伝いのTくんや撮影のSくんにはお世話になりっぱなしで頭が上がらない1日でした。

今回が8回目なのですが、毎回「次はもっと大きな会場を・・・」と言われ続けていますが、この会そのものが年間3回のペースで行われていて、大きな会場はだいたい半年前くらいに取る必要があり難しい状況でした。すこし考える必要がありますね。

 

そんな僕の不手際から起きるご迷惑を吹き飛ばすくらいの、すばらしい演奏だらけでした。

この発表会は

1.ファゴット枠(ファゴットソロ)

2.アンサンブル枠(アンサンブル)

3.友人ファゴット枠(ファゴットソロ)

4.友人枠(その他楽器ソロ)

5.ゲスト枠(プロの演奏)

と分かれています。

1.と2.については、僕のレッスンを1回以上受けてくれればどなたでも参加できる枠です。つまりはメイン参加者となるわけです。

3と4はこの発表会独特の制度かもしれません。色んな場所で出会った、アマチュアさんだけどいい演奏をする(しそうな)人を厳選して呼んできています。この友人枠の演奏が発表会へのいい刺激になっていて、生徒たちへの影響がとても大きく感じます。

この記事では、枠関係なく、僕自身の感想や講評、感謝の言葉をまとめたいと思います。

 

1.プルミエソロ/ブルドー(ファゴット枠)

事情があり、1番手で演奏後すぐに会場を出なければならない、というドタバタした環境の中、すばらしくパワフルな演奏でした。派手さと繊細さを兼ね備えたこの曲。譜面の指示もかなり細かく、主にその表現について指導してきました。本人もどうやら自覚しているようですが、押しの演奏は得意な反面、引く表現や演奏面におけるいわゆる「色気」の出し方がもう一つ、といった部分があるようです。テクニックや音色、音程なんかはかなりハイレベルなので、今後は音楽表現を幅広く・手広く覚えていければいいんじゃないかなぁ、と思いました。

 

2.演奏会用独奏曲/ピエルネ(ファゴット枠)

楽器を買ってから1週間未満の出演でした。そもそもこの子は楽器を始めてから1年にも満たない、レッスンも部活が忙しくなかなか来れない環境ではありましたが、そんなことを感じさせないハイレベルな演奏でした。前の楽器で困っていたことは今の楽器でほとんど消し飛び、鳴らしたいだけ鳴る楽器でした演奏はきっとものすごく楽しかったんだろうと思います。楽器を鳴らすのは大得意、テクニックも及第点、問題は弱奏部だからそこを課題にしましょう、と指導できたのは、なんと発表会の前日・・・(笑)ただ、4月にもう一度この曲を演奏する機会があるようなので、そこまでに弱奏部のクオリティを上げていけるといいと思います。もう一度言いますが、部内1位を獲れる伸び代がまだまだあると思います。2位や3位じゃなく、1位ね。

同伴してくれたピアニストもとっても上手でした。テクニックだけではなく伴奏慣れを感じました。ファゴットの伴奏がうまいピアニストは希少価値が高い・・!?今後とも素敵なピアノを奏でていってくださいね。

 

3.アンダンテとハンガリー風ロンド/ウェーバーファゴット枠)

この人は個人としての教え子としては2人目。「僕は指が回りませんしそこが問題なのです」という意思がひしひしと見えるので「いやまぁそうなんだけど、そこだけじゃなくってね」と何度も何度も叩き込んでいるうちに、指はもちろん、鳴らし方、弱奏、他人の音への反応、音色の変化など、あらゆるテクニックを身につけていき、「門下次男」の肩書きに恥じない立派な演奏でした。とはいえ、曲が大変に難易度が高いもので、どうなるんだ一体、と思っていたのですが、まぁそこについては「なんとかなった」といったところでしょうか。それよりも、音色や音楽表現の引き出しが増えていったことが大きな収穫かと思います。今後はその蓄えに蓄えた技術を「きちんと本番で表現できる」レベルのものを演奏して、「うまくなる」こと以上に「うまく演奏する」ことの気持ち良さを味わっていってほしいなぁと思います。曲に振り回されるのはもういいでしょ。

 

4.オーボエソナタより第1楽章/プーランク(友人枠)

ファゴット生徒のオケ仲間でした。「ソロははじめてです」と言って緊張している面持ちでしたが、ひとたび演奏が始まればプロと見間違えるほどの堂々とした振る舞いでした。演奏も曲の魅力をたっぷりと表現してくれていて「これぞ僕の期待している友人枠!!」という演奏でした。本当にありがとう。今後とも声かけていくので楽器なんとかしといてくださいね(私信)

 

5.ファゴットソナタfmollより第3.4楽章/テレマンファゴット枠)

前々回の発表会はお客様、前回はアンサンブル(木5)、今回はソロで、というある種理想的な形で参加者になってくれました。「わたしがソロなんて」と言っていたこの人ですが、おそらくファゴット枠の誰よりも曲の魅力に入りこみ演奏を楽しんでいる様子でした。バロック音楽特有のルールをよく理解し、その上で自由な箇所を楽しみながら、スタミナ配分と戦いつつ、持っているテクニックを駆使した素晴らしい演奏を聴かせてくれました。今後はウェーバーやダビッドに挑戦してほしいなと思いますが、おそらくエチュードなどを使って楽器の鳴らし方や運指の使い方の引き出しを増やしたほうがいいかもしれません。うまくすればこの人は、学生たちの比じゃないくらいの伸び代を持っているんじゃないかと思っております。

 

6.木管四重奏曲より第2.1楽章/フランセ(アンサンブル枠)

ほんと、難曲によく挑戦してくれました。笑 なんでこの曲かといえば「木管アンサンブルやりたいけどホルン見つからないから四重奏やりましょう」「えっフランセとか?」「じゃあそれで」という流れだったようです。それぞれのパートで色んな意味で激ムズ箇所がありましたが各々しっかり向き合い挑戦してくれました。2楽章のオーボエが低い音域で難しい箇所のバランス、とってもよかった。バランスを取りながら楽譜通り、というのが、音域によってクセが異なる木管楽器のアンサンブルでは最も難しいんだと思います。でも本番、そこもバッチリでした。通るか心配だったレベルの1楽章も、フランセ特有の世界観がよく見える素晴らしい演奏でした。特にフルートの方が大変な名手でした。今回で終わりはもったいないので、ぜひまたご参戦ください!

 

7.ファゴットソナタfmollより第1楽章/テレマンファゴット枠・丸山門下)

すごく大人っぽく見えたので3度見くらいしてしまいましたが、中学生の女の子でした。今回最年少の出演者ですね。テレマンの1楽章、大人顔負けの立派すぎる演奏でした。師である丸山さんの指導が透けて見えるくらい、表現・テクニック共にしっかりしていました。ここまでちゃんと吹けるなら、ぜひ2楽章もやってほしかった・・・!!

 

今回から「丸山門下」という括りを放り込んでみました。今後とも「他門下」という括りがもっと増えていくといいなぁ・・・

 

8.earth/村松崇継(友人枠)

そもそも「友人枠」はこの子を出演させたくて作ったようなものです。笑 普段はフルートではなくピッコロを吹いてるこの子、絶対フルートもうまいはず、と思って出演してもらったら案の定。音楽表現、ステージでの振る舞い、衣装や演奏に至るまでの思い入れなど、圧倒的でした。この発表会、最初は「男性スーツ、女性黒黒」な雰囲気でしたが、この子をきっかけに女性陣がカラードレスや素敵なワンピースを着て演奏してくれるようになりました。もちろん個人差があると思いますが、そういった衣装に身を包んだ女性陣の演奏は気持ちの乗り方が全然違って効果てきめんでした。なおそういった出演者が客席にいる関係の男性陣も演奏もどことなくよくなっている(ようななっていないような)

とにかくこの子がいてこそ、今のこの発表会があると思っています。いつもありがとう!今後ともぜひ。そのメロディセンス、もっともっと磨いていってください。

 

9.ファゴット協奏曲より第1楽章/ウェーバーファゴット枠)

「いつも誰かがやっている」ウェーバーの1楽章ですね。この子を教え始めて1年くらいになりますか。指や舌はよく動き、綺麗な音を出せば一級品。でも積極性に欠ける演奏だな、というのが第一印象でした。ピアノもよく弾ける(らしい)この子は耳がとてもよく、お手本を吹いてあげれば言葉が必要ないこともしばしば。器用さとセンス、そして練習の仕方も覚えてきたこの子にもはや演奏不可な曲はないと思うくらいにはハイレベルでした。でも、まだまだ必要なのは積極性のようです。「私はこうやって演奏するんだ!聞けー!」といった主張が、もうひとつあればもっともっと魅力的になるんじゃないかな、と思いました。いつかピアノの演奏も聴いてみたいなぁ。

 

10.ファゴット協奏曲より第2.3楽章/ウェーバーファゴット枠)

毎回、終演後の打ち上げで「今日のMVP」というものを発表しています。今回の MVPはこのひと。

彼は音楽スタートが大学入って少ししてからで、レッスンもほとんど受けたことがない状況から、僕(の主催するファゴット吹きのイベント)に出会って本当に音楽人生ががらりと変わってしまった人の一人です。最初は、器用は器用だけど、それ以上に何かを持っている子ではありませんでした。ただ彼は持ち前の研究熱心さやフットワークの軽さから、あらゆる場所で自身の音楽センスを磨いていき、ある時は「基礎みっちりやってください」、ある時は「ほとんど譜読みしてませんっっ」、などと、ある種とっても教えがいのある生徒でした。今回演奏したウェーバー2.3楽章は、ただぼーっと吹いてるだけでは魅力の伝わりにくい曲なのですが、歴代この曲を吹いてきた子たちが異様に魅力的だったため、彼にはものすごくハードルの高い挑戦でした。案の定、1回目の曲のレッスンでは「いやちょっと曲変えてもいいんじゃないか」とうっすら思ったほどだったのですが・・・。

ものすごい伸び代を発揮してくれました。もともと楽器を鳴らすのは上手なのですが、鳴らしどころがよくわかっていないためいびつな演奏になってしまう事が多く、そういったコントロールの難しい曲なため心配していました。ですが、そこがうまくハマり、懸念していた2楽章の数え間違いもなく、曲の持ってる美しさを十二分に発揮してくれました。聴いてる側もそれを幸せに感じましたが、きっと彼が誰よりも幸せだったことでしょう。

音楽というのはやって楽しく聴いて楽しいものですが、結局のところ「やる以上に楽しむ方法はない」というのが僕の持論です。そんな演奏者である我々の演奏を聴いている人に楽しんでいただくためには、自身がめちゃくちゃ楽しんでいて、そのおこぼれが聴いている人に伝わればもうそれは最高の演奏会であるものだと思います。その境地に彼の演奏は達していました。よってMVP。先生、泣いちゃいそうになったよ。笑

 

11.幻想即興曲/シューマンファゴット枠)

この子もお客様→出演者の流れから「いつメン」になってきました。もともと他の先生のお弟子さんで、そこの発表会でソロの舞台にはよく慣れているようで、いい意味でいつも安定感抜群でステージをこなしてくれています。そんなこの子、今回本番数日前に体調を崩し、なんとレッスンなしで当日を迎える事に・・・。当日、ほとんど時間のない中、ちょろっと見てあげて、しかも病み上がりでの演奏という、おそらく全出演者の中で最もきつい環境だったと思います。ですが、やはり(ソロの)舞台経験の違いからでしょうか。安定感抜群な上、この曲の持つ魅力をしっかり見せてくれました。実は門下内でこの子のファンは多く、これからも憧れの存在でいてくれればいいなぁと思います。次はどんな曲持ってきてくれるのかな。

 

12.2つの小品/フランセ(ゲスト枠)

今回、2人のお弟子さんと共に参戦してくれました。「なに吹いたらいいですか?」と聞かれたので「えー、うーん、あんまアマチュアさんがやらないやつがいいなぁ」と曖昧すぎることを言ったところ、この曲を演奏してくれました。3つあるフランセ作品の中でこの曲は唯一ピアノ伴奏がオリジナルの曲で、僕はピアノとやるならこの曲が一番好きです。丸山さんは僕にって、付き合いはそこまで長くありませんが、いろんなご縁で欠かせない母親のような(あっまた怒られる)存在です。「フランスものは苦手分野なんです」と言っていましたが、これぞフランセのファゴット!!といった貫禄ある演奏を聴かせてくれました。この曲、誰か挑戦してくれないかなぁ・・・。

 

13.5つの小品より第1.4.5楽章/イベール(アンサンブル枠)

「トリオ断酒」というグループ名がいつの日か(諸説あり)ついたトリオダンシュ(リード楽器三重奏、Ob.Cl.Fg)の演奏でした。ファゴットは門下次男クラリネットはアンサンブル参戦が常連可してきました。そしてオーボエは、なんと楽器を始めて7ヶ月。今回の発表会はオーボエ吹きが6人もいましたが、他の子達もそれには本当に驚いていました。若干二十歳である彼に今後とも期待していきたいところです。

「小品ってどーいう意味かわかる?『一生懸命練習してたくさんリハーサルして頑張って演奏しました』ってしない曲ってことだから」と関係各所から怒鳴られそうな事をレッスン時に言ってしまいました。でも数ある木管アンサンブルの編成において、これほど合わせやすい三重奏もないもので、その中で入門編であるこの曲は(いい意味で)そのくらいの気持ちで取り組んで欲しかったのです。レッスンでは主にバランスの取り方について進めましたが、本番なんとかなってました。バランスの取り方は経験がものをいうので、いい経験になったんじゃないかなぁと思います。断酒せずに済んでよかったね(私信)

 

14.ファゴットとオブリガードチェンバロのための二重奏曲fmollより第1楽章/シャフラート(ファゴット枠・丸山門下)

今回最年長の出演者でした。「2年前より35年ぶりにファゴットを再開しました」とプログラムへの掲載文を送ってくれました。「35年ぶりにファゴットを再開する」という心境がどんなものなのか、僕のような若輩者には一切想像できないレベルなのですが・・・演奏の深みから、僕なりにいろいろと感じさせてもらいました。お仕事も忙しそうですが・・・今後も参戦していただき、今回のような10代・20代の若者とは別次元の何かを聴かせていただけたら幸いです。

 

15.プルミエソロ/ブルドー(ファゴット枠)

今回とても少ない曲かぶりでした。この子と出会ったのは某ファゴット吹きの集まりイベントのときで、出会ったときこの子は高校1年生でした。「ハ音記号が読めません〜〜」と言っていたこの子、次にそのイベント(半年後くらい?)で会ったときに楽器がすごく上達した上に「私、ハ音記号もう読めるんですよ」と微笑んでいました。何があったのかを聞いたら「ファゴットの講習会に行くようになったんです」と。誰の?と聞くと、なんと、僕の師の講習会でした。いつの間にか同門になっていたのです。この会は、普段どなたかのレッスンに通ってる人には「友人枠かファゴット枠かどっちがいいか」と聞いてるのですが、この子はファゴット枠でいつも参戦してくれています。つまり僕の師と僕の教えを受けて演奏をしてくれる、僕としてはとっっっっても興味深い存在であったりします。

テクニックや表現はかなりハイレベルですが、この曲特有の色気の出し方に苦労していましたが、本番はたくさん素敵なものを聴かせてくれました。ある種とてもストイックにファゴットに取り組むこの子がどこまで伸びるのか、とっても楽しみです。高校生からずっと見てる子が成長していく姿を見るのはなんというかとても幸せな事ですね・・・!

 

16.3つのロマンス/シューマンファゴット枠)

門下三男です。社会人1年目でレッスンどうなるかな、と思ったらあっという間に復帰してきてくれた、根っからのファゴットバカ(ほめてる)です。この子、教えてるこちらがびっくりするくらい、音楽表現がうまいです。僕はよく2種類(いい意味、悪い意味)の「天才」という言葉を用いますが、この子はいい意味での天才だと思ってます。教えた(というよりは提案した)表現を取り込むのも早いのですが、取り込んだ上で自分流に変換しさらに良いものへを発展させていくことができます。そんな表現の天才であるこの子が挑んだ、名曲「3つロマ」は大変に素晴らしい演奏でした。一つ一つの曲の良さをしっかり表現しており、特有の難しい箇所もさらりとこなしていました。

抜群の表現センスはある種諸刃の剣で、楽器の吹き方に影響を与える事が多いです。それはプラスに働く事も多いですが、マイナスに働くこともよくあります。表現と技術はバランスよく習得していかないといけないので、今後は少し、技術に寄っていってほしいなと思います。あとはピアノをよく聞き影響を受けてほしい、ということ。ある種の即興性が必要かもしれません。曲らしいエチュードか、無伴奏の曲でも持ってきてくれれば効果的かもしれないですね〜。

最後のレッスンで「次回フランセな」と言っておきましたが、果たして本当にやってくれるでしょうか。笑

 

17.トランペット協奏曲より第2.3楽章/ハイドン(友人枠)

何回かぶりの参戦でした。元々ジャズでトランペットを吹いていた彼とは、とあるオーケストラで出会いましたが、高音は出るもののオケとしては・・・?といった状態でした。年数を経て、きっと本人には葛藤があったんじゃないかと思いますが、今ではクラシックの演奏も立派にこなしていけているレベルまで上達していました。今回演奏したハイドンの協奏曲、僕はものすごく好きな曲でとっても楽しみにしていました。会場はとても狭く、また音出しが十分できる環境でなかったため金管にはかなりきつい環境だったと思うのですが・・・・それをものともしないくらい安定感ある演奏でした。特に2楽章、魅力たっぷりでした。本当にうまくなった・・・・!!!

実は「クラシックのトランペットの先生紹介してください」と頼まれ、友人を紹介したのですが、きっとその先生の影響もあるのでしょう。今後もとっても楽しみなトランペット吹きであります。

 

18.ファゴットソナタ/ケックラン

僕がファゴットのアマチュアさんへの意識をあらためたキッカケを作ってくれたのがこの子。技術、表現、感情、振る舞い、取り組み方、すべてが高水準でまとめられていて、それでいて穏やかな人柄なこの子を、はじめて吹きに来てもらって以降、是が非でも常連可してほしい、と思ったものです。そんなこの子が今回挑んだのはケックラン。事情があり、レッスンをほとんど受けられずに本番直前を迎えてしまい、本番前日の伴奏合わせに同伴しピアニストと共にたくさんの情報を叩き込みました。今思うととんでもない苦行だったと思うのですが(笑)彼女はそれを越えた演奏を本番で聴かせてくれました・・・!

僕がケックランのソナタを始めて吹いたのは24歳の頃。本番を終えて「この曲、20台のうちに魅力的に吹くのはむずかしいな」と根拠もなく思ったものですが、20台前半でこの子にここまでうまく吹かれてしまっては、まもなく30台をむかえる僕は取り組まないわけにはいかないな・・・。とにかく技術表現うんぬんではなく、あらゆる難しさのつまったケックランのソナタをハイレベルに聴かせてくれました。今後とも君のファゴットで僕の生徒たちを刺激しまくってください。

 

19.オーボエ三重奏曲より第2.4楽章/ベートーヴェン(アンサンブル枠)

史上初、ファゴットを含まないアンサンブルのエントリーでした。3人のうち2人は、今までの発表会で友人枠としてソロを吹いてくれたメンバーです。

まず言いたいのは、この3人に関しては「適材適所」であったこと。コールアングレをいう不安定な楽器が一番下のパートを吹かなければならなく、そこに音域の狭い2本のオーボエという編成はそもそも半端じゃなく難しいものですが、2ndの子が思いの外(失礼?)いい仕事をしてみせてくれて、コールアングレが安定感ある3rdで支えてくれて、そこに魅力たっぷりの1stが乗っかっていて、一人一人もアンサンブルとしても間違いなく、全アンサンブル中最高のクオリティでした。発表会内でお話できなかったのが悔やまれますが、今回のアンサンブル部門でMVPでした。ちょっとファゴット頑張ろうよ・・・・笑

あまり関係ありませんが、アンサンブル枠が男だらけだった中、この三重奏は大変に華やかでありました。でもしょせんオーボエ女子は(以下自主規制)

 

20.ファゴットソナタより第1楽章/ハールストン(ファゴット友人枠)

同門アマチュアの方に参戦して頂きました。

なんども演奏を聴かせてもらっていますが、聴くたびにレベルアップしていて、とても50代の人の伸び代とは思えません・・・。「あんまみんながやらない曲やってください」と雑なリクエストをしたところ、ハールストンを選んでくれました。なんというかソロの場がここまで似合い、堂々としている人を僕は他に知りません。さすがの一言でした!

彼はオケや吹奏楽での活動をされていないそうなので、今後ともこの回で曲に挑んでいってほしいなと思います。

 

21.エレジアックダンス/ヘッド(友人枠)

何年も楽器を触っていないこの子に「ちょっと吹きにこいよ」と言って、今回目で何回目でしょうか(本当に忘れた。笑)

この子とはとある楽団のエキストラに行ったときに知り合い、そこでアンサンブルをやったりもしました。楽団に行かなくなって楽器を置いてしまったことを聞き、とても上手だったのでもったいないな、と思い声をかけました。いざ吹き始めるとすごくマジメに取り組む子らしく、会を重ねるたびにどんどんレベルアップしてきました。そもそも楽団時代はレッスンに通ってなかったようですからね。楽器の上達は、楽団への参加よりレッスン通いの方が成果があるのでしょうね、少なくとも、この子の場合は。

「エレジアックは哀しいという意味」とプログラムに掲載してくれた通り、哀しみが伝わってくる素敵な演奏でした。オーボエという楽器、表現力があるぶんコントロールが難しいイメージがあるのですが、それをまったく苦にしていない印象でした。今後ともぜひ。俺は君のモーツァルト(コンチェルト・オーボエ四重奏曲どっちでも)が聴きたいっ

 

22.ファゴット協奏曲より第3楽章/モーツァルトファゴット枠)

生徒からの紹介で参戦してもらいました。普段ついている先生の影響か、ある種独特なモーツァルトでした。独特さを殺さない程度にいい意味でオーソドックスな表現を伝えてあげた上で、基礎的な部分にかなりウェイトを置いたレッスンをしました。息漏れによる悪影響がかなり大きく、そこを課題に練習してもらいました。息漏れは治すのがかなり難しい悪癖なのですが、かなり改善されていました。そこに対する努力は本番の演奏を聞けばじゅうぶんに伝わってきました。テクニックは元々かなりハイレベルなものを持っているようなので、次回も素敵な演奏、楽しみにしてますね。クラリネット吹きを連れてきて三重奏にも挑戦してくれるようで、それもとっても楽しみ。

 

23.ファゴットとピアノのためのソナチネ/タンスマン(ファゴット友人枠?)

ピアニスト推薦による急遽の参戦でした。「マジメ、ストイック、愚直」を絵に描いたような演奏でした。テクニック、ソルフェージュ的に難しいことだらけのこの難曲を物ともせず演奏する高校生であるこの子の姿は、大人たちにいろんなことを感じさせてくれたそうです。4月から音大生になるこの子がどんな音楽家になるか、楽しみでいっぱいです。これからもよろしくね。

 

24.歌劇「セビリアの理髪師」より6つのアリア/ロッシーニ(ゲスト枠)

芸大1年生による二重奏でした。2ndを吹いた子は高校生の頃から僕がかわいがっていて、芸大に入ってどんどん大人っぽくなっていくさまがなんとも感慨深いです。1stを吹いた子は、すごく濃い芸大の学生たちの中でもさらに個性の強い子で、僕はその子の挙動がとてもツボで大好きなのですが、演奏はそれ以上に魅力的で、今回この二重奏を、参加者一同とっても楽しみにしていました。

その期待を大きく超えるクオリティの演奏でした。ハイクオリティなアマチュアさんのたちの演奏のなか、音大生やプロとしてはある種のプレッシャーがあったと思うのですが、このふたりはさすがの一言でした。何より、演奏を楽しんでるのがひしひしと伝わってきて、悪い意味で仕事慣れしてきている我々若手プロには大変いい刺激になりました。劣悪な環境のなか、素晴らしい演奏を本当にありがとう!いつか他の同級生も入れて三重奏や四重奏も聴かせてほしいなぁなんて勝手に思っております。

 

25.ディベルティスメント/ボザ(ゲスト枠)

ゲスト枠、なんて言ってますが僕も演奏しました。

僕は「とりおっぽ」という謎のネーミングであるファゴット三重奏の活動をしています。メンバーはフランセの2つの小品を吹いてくれた丸山さんと、どこに連れて行ってもファンが増えていくカリスマ性を持った栗林さんと僕の3人です。ファゴットアンサンブルのグループは今や珍しくなくなってきましたが三重奏はまだまだ珍しいので、レパートリーを増やしていくべく諸々活動中です。今回はボザに挑戦しました。

リハがあまり出来なかったこともあり、ハラハラしたりさせたりの連続だったのですが・・・アンサンブルにとって大事な「個人」と「(音楽的な)仲のよさ」が伝わっていれば幸いかと思います。はー、ほんと2人も大好き。(録音を聴きながらこの記事を書いています笑

 

26.アンダンテとハンガリー風ロンド(ファゴット枠)

門下の後輩、メイン枠にて参加してもらいました。というのも、プロとして活動した後、少しのブランクを経て復帰戦だったため、少し面倒をみたというわけです。

ブランクを抱える前と比べて、復帰後は音楽的な魅力をたくさんたくさんたくさん見せてくれるようになっていて、聴いていて楽しい部分がたくさんありました。技術はもちろん、音楽表現もプロとしてハイレベルになったなぁ、という印象でした。本人いわく「人生いろいろありますからねっ」とのこと。笑

これからの活躍が楽しみです。これからもよろしく、後輩!

 

27.サロン用三重奏曲/グランヴァル(アンサンブル枠)

プーランクソナタを吹いたオーボエ吹き、ウェーバーの2.3楽章を吹いたファゴット吹き、ピアノによる三重奏でした。僕もピアノの方も初めて知った曲だったわけですが、魅力的な要素がたくさんの演奏でした。

この2人、オケ内で何年も一緒に音楽をやっていたようで、抜群のコンビネーションでした。レッスンでもあまり多くを語る必要がなかったので個人技の範疇のみしか触れませんでした。

こうやって自分の相方を連れてきて一緒に演奏してくれるの、僕としてはとても嬉しかったのです。ありがとう。

 

28.ファゴットソナタemoll/テレマンファゴット枠)

門下長女の演奏でした。この子もある種の「天才」で、楽器に触れている時間が他の子よりはるかに少ないようなのですが、他の子より綺麗に音が並んでしまいます。この子がなんでここまで上手いのか、教えててもよくわかりません。笑 いつもハイクオリティの演奏をしてくれます。今回は自分で曲を選んだのもあって思い入れやこだわりをたくさんたくさん感じました。難しいところもよく練習していたのも感じました。ただ曲についての事ばかりで、楽器の鳴らし方はもう分かってるはずなのに曲で生かせず、小手先の演奏に寄ってしまったのが今回の問題点だったと思われます。これについては、多くの譜面を読んで吹いていく事が重要な気がするので、そろそろエチュード持ってきてくれないかなぁ・・・笑(この子は発表会前の曲レッスンと、オケや吹奏楽の譜面のレッスンがほとんどなのです)

普段の演奏に安定感があるわりに、曲の完成度にムラがあるのはおそらく、その場数の少なさからくるものかと思われます。それさえクリアすれば、もはや門下内に敵はいないじゃないか、というレベルなんですよね、この子は。今後に期待しましょう。

 

29.コンチェルティーノ/ダヴィッド(ファゴット友人枠)

同門アマチュアさんの演奏でした。到着がなんと、演奏開始の数十分前という予定だったためバタバタだったのですが、これまた凄まじく素晴らしい演奏でした。ビブラートが先生と同じで、ここまでできるものなのか・・・!と、素直に尊敬してしまいました。コンクールに挑戦したのもあってか、どこか堂々とした、風格のようなものを感じました。

 

 

30.アンテルフェランス/ブートリー(ゲスト枠)

ゲスト枠じゃなきゃありえません、こんな凄まじい曲。笑

もはや「安定」としか言いようがないのですが、あらためて、ただ上手い高校生から立派な芸大生へ成長したなぁという印象でした。この子は楽器をフォックスからヘッケル持ち替えたばかりなので、そこらへんもきっとまだ伸び代を残しているんだろうなと思います。若くてうまい子は本当にいい刺激になります。今後も僕を含めたこの会に、幸せなため息を製造しにきてほしいなと思うところです。ありがとう!

 

31.ファゴットソナタ/サンサーンスファゴット枠)

門下長男です。もはや僕の門下の顔と言ってもいいような彼ですが、今回は大曲サンサーンスに挑戦しました。

「ぜんぜんさらってません〜〜」と言いながらひょうひょうと吹いてしまういつもの彼とは覚悟がまるで違っていて、つよい意気込みを初回レッスンから感じていました。とにかくあらゆる意味で難易度が高いこの曲、この曲順(悪意たっぷり、まったく誰が決めたんだか)、そして門弟たちの期待の中、立派にトリをつとめてくれました。

ハイEが出てくる、ということはリードの選択肢がものすごく狭くなります。その点がおそらく失敗だったんだと思います。気持ちよく吹けるリードがいいリードとは限らないんですよね・・・。ある意味、リードにこだわったからこその結果だったので、今後はそこらへんのすり合わせが必要なのでしょう。でも、さすがの演奏だったと僕は思います。

 

アンコールでは、モーツァルトファゴット協奏曲の1楽章を、ゲストの4人と門下の後輩と僕とで演奏しました。アレンジを僕がしたのですが、それはそれは悪意たっぷりのアレンジで、それ込みで、演奏した僕ら、客席の皆さんが楽しんでくれたようでした。え、いや、楽しかったですよね?笑

ソロパートは持ち回り、再現部以降はめまぐるしく切り替わるソロパート、間奏部はハイトーンを含む超絶技巧だらけでした。無茶振りごめんなさい。でもみんな素晴らしかった!

 

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と、まぁ、ブログを初めて間もない僕ですが、凄まじく長い記事となりました。

これを最初から最後まで読んでくださった方、その根気と広い心は賞賛に値すると思います(笑)

次回開催は未定ですが、ここでも告知するかと思いますので、興味がある方はお問い合わせフォームからぜひどうぞ。

 

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