ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第9回門下発表会でした。〜講評とか次回のこととか〜

とっっっっても久しぶりの更新になってしまい申し訳ありません。

主に仕事量と作業効率のバランスの悪さと体調不良が原因です。こんなノリと雰囲気だけのブログですが、「読んでるよ」とたくさんお声をかけて頂いているのでちゃんと書いていかないとだめですね・・・。

 

さて、第9回の門下発表会が終わりました。

前回からたったの3ヶ月しか経っていません。なんでこんなハイペースでやっているんでしょうか。笑 でも出演者がいる限りやり続けていくつもりです。今後ともよしなに。

次回発表会は2017年11月5日(日)の予定です。会場未定ですが関東近郊です。

ファゴットのソロでの参加、もしくはアンサンブルでの参加を募集しています。

参加費はファゴットソロは12000円(学生8000円)、アンサンブルは1人6000円(人数によって前後します)です。

会場代、伴奏者謝礼、レッスン代1回分を含んでいます。

 

Q.「わたしがソロなんてとんでもないです」

A.みんなそう言いますがちゃんと立派に吹いています。終わる頃には「次はこの曲がやりたいです!」と目をキラキラさせていたりします。

Q.「どんな曲をやったらいいか分かりません」

A.「選曲から相談に乗ります。初心者でも吹けそうな曲からとんでもない超絶技巧な曲までありますので、レベルや経験などに合わせて選曲しましょう。」

Q.「伴奏者に迷惑をかけそうで・・・」

A.「仮に、本番でどんなハチャメチャに間違えてもどうにかしてくれるピアニストが伴奏してくださいますので、そこに関しては全く心配は要りません。ほんとに。」

 

もともと「ソロ曲に挑戦したら手っ取り早く上手くなるのでは」というコンセプトのもと、2〜3人で始まった発表会です。ステップアップとして、ぜひご利用ください。

発表会の参加希望、お問い合わせはこちらまで

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さて、ここからは前回同様、プログラム順で講評や感想をたらたらと書いていく記事になります。ご興味のない方は申し訳ありません。

 

 

1.ファゴット協奏曲1楽章/ウェーバー

この発表会のあと、少し楽器をおやすみするので、と言っていたので、少し背伸びかな、という選曲をお勧めしました。

テクニックはじゅうぶん追いついていました。ウェーバーの奥深い音楽性もしっかり表現できていたとおもいます。

緊張していたようですが、それでもテクニック・音楽性ともに発揮できていたのは、レッスンでお伝えした確実な練習方法を実践してくれたからだとおもいます。緊張は、いつだってします。場慣れしていけば緊張しつつも力を発揮できるようになっていきますよ。はじめてのオケだって、そうだったでしょ?

これから変わっていく環境の中で、今回の体験が一つの自信になっていけば嬉しいです。そしてまた戻ってきて、素敵な演奏ができますように。

 

2.6つのファゴットソナタより第2番1.2楽章/ガリアルド

自分で持ってきた曲とはいえ、厄介な曲でした。テクニカルな譜面を演奏するのはある種とても楽だ、ということを痛感できたと思います。

でも前回を「まぐれ」と感じさせない素晴らしい演奏でした。音楽を表現する、ということを学んだ君はもうとっくにファゴット演奏の虜なのでしょう、今回の演奏者の中で、一番楽しそうに吹いてるように見えました。前回MVPの風格じゅうぶんでした。

社会人という生活の中で練習をしていく、ということの難しさを乗り越えていって欲しいなと思います。この発表会でもっとも成長した人として、門下後輩たちに後ろ姿を見せつづけていってほしいとおもいます。宿直おつかれさま。笑

 

3.カプリッチョ/ポンキエッリ(オーボエ、友人枠)

今回のMVPのひとり。「友人枠」ってなんなんですか、とよく聞かれますが、面白いもん聞かせてくれそうな人に楽器は関係ないから来てくれ、という枠です。

曲に対してもオーボエに対しても、伴奏との絡みに対してまで、誠心誠意、という言葉がぴったりの演奏でした。君についてはほんとうに、ここがなければまた楽器が押入れで眠る生活になってしまうから欠かさず毎回お呼びしますが、ここで身につけた技術や音楽性をよそで合奏やアンサンブルで発揮して欲しいなと僕は常に思っています。

きっと緊張しつつ難しいことをたくさんしていたのでしょうが、はたから見てるととてもリラックスしつつ簡単そうに演奏して見えました。そう見えることそのものはまぎれもない才能なんだとおもいます。素晴らしかった!

 

4.ファゴット協奏曲RV497イ短調/ヴィヴァルディ

ゲストとの曲かぶり(後述)、改めて本当にごめんね。笑

とはいえ彼ははそれにめげず、むしろ楽しめる、くらいの柔軟性を持っているようで、魅力たっぷりのヴィヴァルディでした。ゲストが抜群に素晴らしかったことを前提に、彼の演奏のほうがいい部分もたくさんありました。アマチュアとして本当にそれは素晴らしいことで、プロのはしくれとして僕も考えさせられる部分がとても多かったです。

少し一辺倒だった発音・タンギングについても色が出てきて、さて僕はこれから彼に何を教えていこうかな、と不安のような楽しみなような気持ちです。何よりも、仕事が本格的に忙しくなってきた今年度にここまで完成度が上げられたことは誇りに思って欲しいです。門下長男、さすがでした。「さすが」っていい褒め言葉だよね。

楽器もとっても調子良さそうでよかった!

 

5.ファゴットソナタト短調より第1楽章/ドゥビエンヌ

今回のMVP。初めてのソロでこの選曲を勧めたこと、曲の最初のレッスンで「ちょっときつかったか」と思ったくらいでしたが、みるみるうちに成長していき、本番も抜群によかったです。

楽器と自身のクセの克服、、音色や音程のツボの捉え方、それに伴う息の使い方を覚えながら、微妙に捉えにくいこの曲のフレーズをしっかりとつかまえて、オリジナリティもくわえつつ、地味に難しいトリルもしれっと乗り越えて、ある種、現状これ以上伸びようがないところまで完成度を上げてきてくれました。

こうまでまっすぐ成長してくる生徒を教えていると、こちら側が「うまくなるってこーいうことだ」と学ぶことがたくさんありました。

とはいえまだまだ伸び代タップリです。曲の前からやっていたエチュードのレッスンで得たことも含めて、今後も力をつけていってくれたら嬉しいです。

 

6.クラリネットソナタより第1楽章/サンサーンスクラリネット、友人枠)

アンサンブルでの参加が続いてきた子、今回はソロでの参戦でした。

アンサンブルのレッスンをしていて「そこちゃんと音鳴らして」と言わざるを得ないことが多かったので、ソロでどうなるのか、と心配していたのですが・・・

大変によかったです。意志と誠意がたっぷりの演奏でした。連れてきてくれたピアニストとの息もぴったり(?)でした。

このクオリティを常に発揮しましょう!それが一番むずかしい。次回はアンサンブルかな。楽しみにしています。

 

7.2つのオーボエ通奏低音のためのソナタ/ヴィヴァルディ

ヴァイオリンとオーボエでの参戦でした。バランスをとること以上に、ニュアンスを揃えるのは音大生やプロでもちょっと苦戦する部分かとおもいます。

よく考えられた演奏をしていましたが、ニュアンスを揃えるためには、個々のニュアンスが明確になっていないと揃いません。それはボウイングのアップダウンがどう、スラーがこう、という話ではなく、音楽の向かう方向性を個人個人が明確にしていないと形にはなりません。そこらへんをもっと覚えていければあらゆるシチュエーションでの演奏がもっと楽しくなるんじゃないかな、と思います。

一緒にやってくれてありがとう。まだまだ若い2人が、ここでの経験でどのくらい成長してくれるか楽しみです。次回はどんなアンサンブルかなっ?

 

8.レチタティーヴォとアレグロ/ギャロン

出だしはともかく(笑)あーそーいうの、そーいう演奏ができるようになってくれれば先生は何も心配せず聴いていられるよ、という演奏ができたな、とおもいます。

ナンノコッチャと思うかもしれませんが、すべての音がきちんと音楽に乗って動いていた、ということです。君はほんとうに練習の天才だとおもいますが、その練習が音楽に乗らずにほうぼうへ散っていくことがとっても問題だったのです。今回できたことを定着していけば、今後のファゴット生活は別次元の楽しさに繋がっていくことかとおもいます。

テクニックはもはやなんの問題もないので、今後の課題はこのクオリティ以上の「安定感」なんじゃないかなとおもいます。次回も楽しみにしています。

 

9.ファゴット三重奏曲より/ワイセンボーン

いやー、長かったね、3曲やると。笑

この曲は僕とゲストのお二人で演奏しました。「本番いっぱい仕掛けるよ」と宣言して、本当にたくさん仕掛けてごめんね。笑

2人ともまだお若いので、そーいう気まぐれな音楽性がもっと身につくと仕事に役立つこともあると思います。でも楽しかった。今後ともよろしくお願いします。

 

10.演奏会用独奏曲/ピエルネ

実は MVPで悩みました。音楽的な「押し」が多く「引き」がない、という話を前回(かな?)レッスンでしたと思うのですが、今回のピエルネはそれが克服され、どこが山なのかはっきりと見える演奏でした。

もともと聴き映えするこの曲で、どこまで聴いている人の心にファゴットの魅力を伝えられるか、というところなのですが、「我慢」「色彩」「ためらい」「発散」「熱情」が伝わってきました。次は繊細な曲でそれができたらとっても素敵ですね・・・・!

リード用リーマー、少しお高いですが用意したほうがいいかも。もしくはきちんとハマるリードを選ぶこと。買った時ちょっとキツいようなリードは使い古すともっとキツくなります。ご注意。

 

11.ファゴット小協奏曲/ダビッド

この子もMVPで悩みました。ファゴットの魅力を抽出したようなこの曲を、レッスンのとき安定して淡々と演奏していたので、ある意味その安定を「こわす」ような指導をしました。結果として本番で安定しなくても、なにかこの子の成長のヒントになるようなことがあれば、と思ったのですが、伴奏合わせ、本番と見るたびに見事な成長を遂げ、しかも安定感は損なわれなかったのです。

「はじめてドレスを着ます」と言ってくれたのもすごく嬉しくて、しかもドレス効果(本人の言葉を借ります)で、これまでになかった音楽を発揮してくれました。

これまでの選曲はある意味「わかりやすい」曲だったと思うので、いやゆるフランスもの、もしくはバロックものなど、様式や色彩感覚が必要になってくる曲に挑戦すると、また更にレベルアップできるんじゃないかなと思います。今後も楽しみにしています。

 

12.ファゴットソナタ/グリンカファゴット、友人枠)

アラ60ではないらしい(プログラムの主催者コメントに記載したら鋭いツッコミを受けましたのでここに訂正します 笑)

うちの発表会でグリンカやってくださいよ、っていつか言ったのですが、本当にやってくれてとっても嬉しかったです。「エロくですよ!エロく!」と前振りしておいたのですが、素晴らしくエロいグリンカでした。押すでも引くでもなく、でも淡々ともせず、という境地、僕もたくさん学ばせてもらいました。

また次回も、若輩者たちに面白い演奏聴かせてくださいね!

 

13.後悔と決意/ショッカー(フルート、友人枠)

この子のために友人枠は存在する、と言っても過言ではないです。

ピアニストとの息の合い方が抜群で、2人とも奔放なのだけどかっちり噛み合う、これぞ「相棒」という演奏でした。

曲から景色が見えてくるような音楽性、もはや技術や経験ではない何かこう、人間から滲み出てくる表現力のようなものなのでしょうか。彼女のフルートの何が素晴らしいのか、僕の貧弱な語彙では表現できませんね・・・

今後ともぜひ!個人的にはドゥビエンヌとかモーツァルトとか、古典よりの演奏をするとどうなるのか聴いてみたいな〜

 

14.ファゴット協奏曲RV497イ短調/ヴィヴァルディ(ファゴット、ゲスト)

あぁ、もうこの子は大人なのだな、と、吹き始め2〜3小節で感じました。

うまい子供から、プロの大人になっていく様を見て感慨深いな、と人に話すと「完全におじさん目線ですねそれ」と言われました。はいおじさんです。

君の参戦があるから、僕の生徒たちはいくらうまく演奏できても「あーまだ先は長い」と思えるのだと思います。君もこれから忙しくなっていくだろうから、どうなっていくかは分かりませんが、またここで皆を刺激し喜ばせて行ってほしいなと思います。ありがとう!

 

15.アリュシナシオン/ベルノーファゴット、ゲスト)

門下の後輩をゲストとしてお招きしてみました。

いわゆる「がちゃがちゃした現代曲」なこの曲、迫力満点でした。

やってみたい!とはならなくても、プロの威厳たっぷりの名演でした。

おとなしくて綺麗なだけの演奏をしていたこの子が、こんな演奏ができるようになったこと、先輩としてとても嬉しく思います。同時に、負けてられないな、とも思いました。

 

16.ファゴット協奏曲1楽章/ウェーバー

伸び代と成長度で、若手ながら第4部に配置しました。

間違いなく彼は、クラシック音楽の表現方法を学べたんじゃないかなと思います。それだけの成長はありました。

音色、音程、テクニックは申し分なし、音楽表現もじゅうぶんできていながら、自分の演奏が他人の演奏とまったく無関係になってしまう欠点があるようです。

本番に強い・弱いということとは関係なく、自分の音には常に他人の音が関係してくるということを認識した上で、確実な個人練習をこなしていけば大きく化ける逸材なのだとおもいます。

まだまだ(ちゃんと)読んだ譜面の量が足りないね。今後に期待しましょう。

 

17.ファゴット協奏曲RV484より2.3楽章/ヴィヴァルディ

速い楽章から逃げてきた、と本人コメントがありましたが、決して速い楽章が苦手には思えません。大変にいやな運指の多い3楽章をあそこまで吹ければ、他の曲なら難なく演奏できるんじゃないかなぁと思います。

そんなことよりも、ここには書ききれないほど、技術的、音楽的に惜しい部分がたくさんありました。1度のレッスンで伝えきれないことも大変多く、伸び代が無限にあるのに勿体ないなぁ、という印象でした。

とはいえ、特にバロック音楽に精通した彼女の演奏は抜群に素晴らしく、ソロ初挑戦とは思えないほど立派な演奏でした。オケに忙しい方にとって発表会はなかなか都合がつきづらいところですが、また参加していただきたいと思います。

 

18.ファゴット協奏曲1楽章/シュターミッツ

初挑戦、しかもシュターミッツという選曲なのにトリに抜擢しました。

毎回2〜3人は選曲されるこの曲なのですが、今回はこの子だけ。抵抗強めの楽器なためか、明るく豊かな響きの音を出すのがイマイチ得意でなかった彼女が、この曲を通じてパワフルな演奏ができるようになりました。

古典派とはいえ、朗々と歌い上げるような旋律だらけのこの曲は、いわゆる「音作り」の段階の子には挑むにはちょうどよく、彼女は素晴らしい音作りにくわえて大変素晴らしい音楽表現を身につけてくれました。

ちょっと苦手かな、と見えたカデンツァも堂々と演奏していて、ピアニストにも大絶賛されていました。トリにふさわしい演奏だったと思います。無茶振りしてごめんね。でもとっても良い演奏だったよ。

 

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以上、長々とえらそうに講評を書き綴ってみました。今後の参考にしてみてね。