ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第12回門下発表会でした。講評、次回のこと、コンセプトなど。

こんにちは。一番最初に申し上げたいことは謝罪です。

このブログを見てレッスン依頼やリード注文の連絡をしてくださる人が結構いるし、記事を楽しみにしてくれている方も一定数いるのに、前回の更新が第11回発表会の講評記事でした・・・。

といっても恐ろしいことに(?)3か月半しか経ってないんですよね。いやでも3か月以上間の開くブログなんて、ブログとしての意味を成さないと思いますし、書きたいネタはたくさん溜まっているので近いうちにまた。

それにしても言いたいことを文章にするの、若いころに比べて苦手になったなぁ・・・。

 

というわけでタイトル通り、第12回の門下発表会が先週末に行われました。

ここまで回数をやっていると、わりと著名な奏者の方に存在を知られていたりすることも多いので、もうビビってる場合ではないと思い(?)今回のゲストは神奈川フィルの首席ファゴット奏者である鈴木一成さんに来て頂きました。

会場も日本ダブルリード株式会社様のサロンということで、会そのものが公なものになってきたなぁという気持ちです。

とはいえこの僕が取り仕切る会なので色々とゆるい部分も多いのも確かで、そこは常連出演者たちに助けられながらどうにかやっていけている、という感じでしょうか。

 

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毎回言ってる気がしますが、そもそものコンセプトが「難しいこと考えずにソロのレパートリーを人前で演奏すれば手っ取り早くうまくなるのでは」という気楽なものです。ファゴットの方はだれでも最初は「私がソロなんてとんでもない」と言って敬遠しがちですが、うちの会では楽器を初めて1年未満の初心者までもがきちんと1曲吹ききります。そして見違えるようなレベルアップをしていきますので、

「短期間でレベルアップ」「旋律をうまく吹けるようになりたい」「テクニックが欲しい」「ファゴット吹きの仲間が欲しい」「土日たくさん時間を取れないのでオケや吹奏楽は難しいけど楽器は吹きたい」という方にはおススメです。

最後の「土日に時間をあまりとれない人」というのは、発表会というのはとどのつまり、自分が練習さえできれば、あとはピアノ合わせに1時間程度と本番の日の予定だけ抑えれば演奏できますので、時間がない人にこそおススメの場所だと思います。レッスンは平日にも行っていますのでご都合よい時に来てくだされば。

 

というわけで、次回発表会のご案内です。興味のある方は下記のフォームからご連絡くださいね。

秋のひとときコンサート(第13回とのむら門下発表会)

2018年11月24日(土)お昼頃開演

アーティストサロン"dolce"(新宿駅西口より徒歩5分程度、ドルチェ楽器新宿店内)

参加内容

ファゴットソロを演奏する方(ピアノ伴奏あり、なしどちらでも)

・アンサンブルを演奏する方(編成自由)

です。普段ほかの先生に習っている方も歓迎(条件あり?)です、ご相談ください。

参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン1回分など)

ファゴットソロ(社会人)14000円

ファゴットソロ(学生)10000円

・アンサンブル 1人6000円

かけもちについてはご相談ください。

参加費にはレッスン1回分の料金を含んでいます。ふるってご参加ください!

参加〆切は特にありませんが、準備やレッスンのことなどを考えると10月末までにお申込みいただくとスムーズかもしれません。

皆様のご連絡お待ちしております。

申し込みフォームはこちら 

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さて、ここからは今回の発表会の演奏に対する講評記事です。

出演者以外の方には興味のない部分かもしれません。ご了承ください。

プログラム順です。演奏者については伏せていますが、問題があれば変更・削除しますのでご連絡頂ければと思います。

最後に総評を書いていますので興味があれば飛ばして読んでみてください。

 

1.無伴奏チェロ組曲1番より「ブーレ1.2」/バッハ

正直驚きました。技術的な進歩よりも、本来上級者でも難しいバッハの無伴奏を、自分なりにとても音楽的に演奏されていました。僕が教えた事を実施するのはある意味簡単なことかもしれませんが、それを越えて来てくれたのは、音楽的背景(人生経験?)の豊かさを感じます。さすがのひと言です。

1音1音をしっかり吹く、ということと音楽的な流れを作るということは逆のことのようで実は共通する部分が多く、そういった意味では前者はもう少しあってもよかったかもしれません。流れを作るための「この音!」みたいなものがもっと見たかった。それについては、僕の教えた事をもっと実施してくれてもよかったのかもしれません。

でもそんなこと、今後いくらでもできますので、初心者でもなんでも「自分のやりたい演奏」をきちんと伝えてくれたことが僕はとても嬉しかったです。今後も期待しています!

 

2.ファゴットソナタ/グリンカ

出演者の中で最もプレッシャーを感じていたのではないでしょうか。自分でどう感じているのかは分からないけど、「魅力的」であることと「派手」が大前提のこの曲、きっと苦手分野だった(魅力を伝えづらいタイプの曲に味付けがうまいタイプだと僕は評価しています)と思うのだけど、苦手をものともしない、魅力的で派手な演奏だったと思います。

レッスンで口をすっぱく「ピアノとのデュエット」という要素について触れたと思います。たしかによく聴いて演奏しているのですが、よく聴く(だけ)ということとデュエットをすることは似てるようで全然違います。そういう意味で「聴く」に徹してしまった部分が多く聞えました。それは間接的に自分の首を絞めることになっていたこともあったかと思います。テンポ感とか音程とかね。特にピアノの「左手」がよく聴けるのはさすがファゴット吹きといったところですが、「右手」もよく聴いてみよう。相手がオーボエクラリネットだったら今回みたいな寄り添い方はきっとしないはず。

でもとにかく、色彩感覚に優れた演奏だったと思います。場面転換の上手さや色の変え方はさすがでした。古株の貫禄は十分に見せてくれたと思います。次も同じ路線、というかしっかり歌う曲に挑戦してもいいかも。テクニックは十分あると思うので、テクニックの使い方に問題がありそうです。

 

3.ファゴット小協奏曲/ダビッド

脱・芸人は間違いないと思います。本番でちょろちょろあったことなんてひとつも気にならなくて、ロマン派のこの手の旋律が美しく吹けるのは才能と努力と感性があってこそだと思います。もっと誇りに思ってほしいところ。

音の処理、ということについてもう少し考えてみてほしい。音の処理というのは、フレーズの終わりの音をどうする、ではなくその音に向かう前の音をどう処理していくか、ということなんだと思います。最後の音だけで何かしようとする癖があるようです。

楽器とボーカルの鳴らし方はよく分かってきたんじゃないかなと思います。自分にとってのいい楽器を買うのは(信用があってローンを組めば)簡単なことですしそれはそれで素晴らしいと思いますが、今あるセッティングを信じていい音を作っていく、というのもやはり楽器演奏の醍醐味。そういったこだわりが少し演奏に見えてきて、聴いていて「うまいファゴット」以上に「君のファゴット」を愛して貰えるような、そんな風に成長していってると思います。

早い部分をさらうのも随分上手になりました。今回うまくいかなかった部分というのは、今後数をこなしていけば「何が難しかったんだっけ?」と思うくらいスムーズにいくようになると思います。ただ少し「諦めグセ」が気になります。生演奏が前提なのだから、何かあっても突き進む精神はぜったいに必要なことです。

 

4.3つの小品/ツェムリンスキー

楽曲に対する想い以上の「適性」はないな、と思わせる演奏でした。まだ若いですしハマり役、と言えるほど多分まだ個人で楽曲に取り組んではいないかとは思いますし僕も数回しか演奏を聴いていませんが、この曲が「ハマっている」と思わせる演奏でした。それは実力以上に演奏をうまく聴かせてくれます。何か月か前の「えっ私がソロなんて・・・」と言っていた頃より、ずっといい顔するようになりました。

1回のレッスンしかしてあげられなかったことをこんなに悔やんだ事は発表会創立以降はじめてかもしれません。技術的に音楽的に、もっと大きく僕に影響を受ければ君の思い通り吹けたんじゃないか、という箇所が数えきれないほどありました、それについてはこちらにも責任がありますね・・・次回はもっとじっくりやりましょう!

吹奏楽コンクールは「技術」と「表現」で採点しますが、僕はそのバランスがとても大事だと思っていて、どちらかに偏った演奏は必ずいい評価を得れません。そういった意味で、今回の演奏はそのバランスがずば抜けてよかったと思います。音楽表現のための技術を、自分なりにたくさん磨いた時間を過ごしたんだろうね。時間の使い方は大変にうまいと思います。

課題としては音色の操作でしょうか。まずは「厚い音」と「薄い音」の操作から覚えるといいかもしれません。「厚くて」「小さい」音、「薄くて」「大きい」音、という使い分けをすることで、今回みたいな時間の使い方をすればもっとやりたいことがスムーズにやれたんじゃないかなと思います。色彩感や和声感も気になる部分ですが、それは音色の操作ができれば気にならない要素なのかもしれません。

 

5.ファゴット協奏曲第1楽章/ロッシーニ

何度か言ってると思いますが、ステージのふるまいをいい加減に覚えましょう。君がそうだというわけではもちろんないですが、仮に普段横柄なひとだとしても「演奏家」を演じるてふるまうことで聴いている人の印象はずいぶん変わります。例えばチューニングにしても、馬鹿でかい音量を出してる人がほかにいるでしょうか。演奏前に「うげ」と思われたらもう聴いてもらえないですよ。

さて演奏ですが、各段にレベルアップしていると思います。自分では納得していないかもしれませんが、技術的には今までで一番安定していました。これがどれだけ大きな意味のある誉め言葉なのかは、きっと本人にしか伝わっていないと思いますが・・・。

表現としては、例えば「この音を大きく(小さく)!!」と思ったら、その音だけではなくその前後の音にもっともっと気を遣うことです。アーティキュレーションに関しても選択した以上、それを使った表現というものが必ずついてきます。最後の方でギリギリ理解したきたようですがもっと身に着ければ理想の演奏に近づくのではないでしょうか。

本番だけ何かしかけるようなことをもししているのなら、それは5年早いのですが、もしそうでないのなら、いや、仮にそうだとしても。もっと「1音1音大切に」演奏できるようにしましょう。もちろん本番で。逸脱した大きい音や限界に挑むような小さい音は使用回数に限度があります。0~3回でおさめてください。悪い意味で先のことしか見ていないためアウフタクトの音やフレーズ最後の音のへの想いが致命的に欠けている印象です。気を付けて練習していても、本番で意気込んで壊してしまっては台無しです。

今まででもっとも「丁寧に練習する」ということを意識してきたと思います。それを知っているからこそ、本番でもっとそれが見える演奏をしてほしかった。そう思います。

とはいえ難曲をよく演奏しました。次回はもう少し、手の届く曲の方がいいかもしれませんね。

 

ファゴットソナタホ短調より第1.2楽章/テレマン

演奏中、体調不良を思わせるようすは全くなかったです。それは高い集中力によるものだと思います。なんだかんだ言って演奏に最も大切な能力だと思います、素晴らしい!

さて技術的な成長は自分が一番感じてると思うのでここで語ることはなにもないです。安定した楽器の鳴らし方が身に着いたし、もともととても器用なので今後どんな曲も怖くないでしょう。遅い楽章でビート感まで遅くなってしまうのが残念でした。アゴーギグは伸びた分縮む必要があるのです。1楽章はすこし、伸びっぱなしでした。縮むのには勇気がいるよね。

2楽章もとてもよく安定し、提案した表現の仕方にもよく対応したと思います。なんだかんだ休みの少ないこの曲で最後まで集中して吹けたのはいい練習時間を過ごしたからなのでしょう。もっと自分の演奏を誇って、褒めてあげてほしい。気になるのはフレーズの始まり方。同じリズムや音が多いこの曲において、フレーズの始まりを常に意識しないと、いくらそのあと色んなことをしても棒吹きに聞こえてしまいがちです。

デートで大切なのは待ち合わせと別れ際。ですよ。

 

7.ファゴット協奏曲第1楽章/シュターミッツ

チューニングではもっと、自分の状態を確かめましょう。Aを吹いたことで今から吹くリードの調子を見るのです。ほかの音を吹いてもいいですが、それがイマイチなら感覚を修正すること。そういった準備を恥ずかしげなくチューニングの時にやるのも、本番を成功させる秘訣のひとつです。

さて、それにしても本当に成長しました。基本的に「身の丈ちょっと上くらい」の選曲をすすめていますが、身の丈の倍以上あるようなこの曲をよくモノにしました。これを吹けるようになるためにした練習方法を、今後に生かしていけばもう誰にも初心者なんて呼ばせないでしょう。

いつも言っている事ですが、音を発音するときに「ブレス」→「発音準備」→「発音」という過程を今一度定着させましょう。録音を聴けばフレーズの最初の音の発音が7割くらい失敗していることがわかると思いますが、それはその過程に起因するものだと思います。

いつか1~2年後、この曲にリベンジして誰よりもうまいシュターミッツを聴かせてほしい。自分で思っている以上に器用なので、思いのほかひょいと乗り越えてしまった要素をきちんと振り返るような練習時間をとれるともっとうまくなるんじゃないかな。

 

8.カプリオール組曲より/ウォーロック

9.ユーモレスク/ツェムリンスキー

打ち上げでも言いましたが・・・フルートの方の成長に驚きました。音色が良くなった、というと言葉が安っぽいですが、元々持っていた「いい音」をきちんと並べられるようになった、という印象です。なんだかんだ木五の顔はフルートだと思います。その調子で皆の憧れを目指していってほしいです。

オーボエが棒吹き気味、というのはもう再三言ってることですが・・・。例えばですが、実際にわざと「棒吹き」をしてみて、「そうじゃない」演奏を目指すと面白くなるんじゃないでしょうか。自分たちで合わせをするだけで本番を迎える普通のコンサートと違ってうちはいつでも僕のレッスンが間に入るので、さすがに同じことをそう何度も言いたくはないです。言ってほしいのなら言うけど。なにも「音量」や「音色」や「ビブラート」を操作することだけが「表現」ではないです。それをしたくないのなら、ほかのやり方を模索するべきです。

僕はアマチュアの方でも、たった1曲、たった1楽章、たった1フレーズ、たった1音ならプロに匹敵、いや越えることがたくさんあると思います。特にアンサンブルの団体にはその領域を目指してほしいと僕は思っています。

クラリネットは「棒吹き」も「引っ込み思案」も克服したと言っていいと思います。もともと小さいほうにバランスを取るのはとても上手なので、今後は全体のバランスを動かさないまま、その他4人(クラリネットと比べると大変強弱に不自由な楽器ばかりです)をいい意味で煽るような操作するような、そんな演奏を目指してほしいです。例えば誰よりも曲の仕組みを理解するためにスコアを熟読するとか見ながら吹くとか。そんな領域を目指していっていいと思います。

ホルンは会場でいきなりでバランスが取りにくく苦労したかと思います。5人の中で最もアンサンブルがうまかった、と言っていいと思います。別の人で述べていますがアンサンブルするというのは寄り添うだけではなくて、時に仕掛けたり守ったりすることも大事かと思いますが、無意識かもしれませんがそういった合わせ方がとてもお見事でした。ただし木五というのはソリスト集団である必要があります。うちの会では少数派かもしれませんが、木五を聴く時にホルンを一番楽しみに聴く、という人もいるかと思います。その人のために、もっともっと不意に出てくる「ホルンのソロ」が美しいといいなぁ。客席に人気投票アンケートを取ったら、ひとフレーズのソロだけで9割がホルンに入れるような、そんな音を聴かせてほしいです。

ファゴットはもともと、ソロよりアンサンブルで光るタイプのようです。技術的な底上げがあったのもあり今回さらに光っていました。他人に影響を受けながら吹く、というのは時にしんどいですが、楽隊である我々には適性と言えるのではないでしょうか。支え、強奏時の先導、自分が主役・そうでない時のバランス感覚、見事でした。弱奏時に人を救ったり頼ったり煽ったり、みたいなものが見えるともっといいかな。小さいほうのダイナミクスに余裕があればもっとできるのかもしれないですね。

全体としては(少しずつ人が変わったにしろ)継続していってる貴重な木五の一つです。このまま続けていくことで見えてくるものを大切に色んなレパートリーにいどんでいってほしいと思います。

 

10.3つの小品/ケックラン

もはや絶滅危惧種である友人枠。ほんと、いつも選曲がたまらない!

Fis-Hにたくさんの想いを感じました。想いは感じるのですが、それがもっと音に変わればうれしいなぁ。特に発展する前。ただの2本の音が並んでいて、なにか操作しているわけではないけど、意思がある、そんな2本を目指せるとよいですね。

僕らの師匠のケックラン、聴いてみたいですね・・

 

11.トリオソナタNo.1 RV/ヴィヴァルディ

異色トリオ。アンサンブル参加はファゴット抜きの編成も大歓迎です。ですが、なかなか集まりづらいのが現状なのですが・・・・定着してくれて嬉しいです。前回と同タイプの曲ですが、アレンジがいい方に変わってくれたのでとてもよかった。

レッスンから本番までドタバタの準備だったかと思いますが、それでも本番あそこまでいい演奏になったのはいい時間を過ごせたからでしょう。ただ音楽表現に関して、レッスンでお伝えして本番で実施したことは、今までのアンサンブルレッスンの中で教えたことがおそらく自分たちである程度応用できることばかりだったのではないでしょうか。

鍵盤楽器、管楽器、弦楽器、と3種類の楽器が集まれば違う角度からの意見が飛び交って当然で、そういった交わりがあまり見えなかったことが残念でした。安定したいい演奏、曲の魅力もきちんと表現できていますが、3人が曲の中で交流しているようには聴こえませんでした。そこがとっても残念。でも確実にレベルアップはしていると思います。そろそろMVP狙ってほしい!

 

12.演奏会用独奏曲/ピエルネ

前回のMVP演奏から今回にかけて「あれはまぐれか」と皮肉を言うのを実は楽しみにしていた(くらい前回が素晴らしかった、という意味です)のですが・・・本当にマグレじゃなくて、一皮向けたようです。人(この場合は先生にあたる人物)にいろいろ言われて、その通りやるのはある意味簡単ですが、自分なりに咀嚼して別のもっといいものに変えて演奏する、というやり方がしっかり身に着いたんだと思います。誰にでもできることではないし、そういった意味ではこの会にいる他門下勢(普段はほかの先生、発表会前は僕のところへ)より一枚上手かもしれません。素晴らしいことです。

さて気になるのは音色です。いやいい音です、いい音なんですが・・・同じいい音がずっと並ぶとやはり飽きます。それを飽きさせないように工夫して演奏できているので素晴らしいのですが、もう一皮むけるには、「いい音」の引き出しをもっと増やすことです。「私の音はこんな音」と決めつけるのではなく、役者さんのようにその「役」に適した音色をその都度作っていく必要がありそうです。

とはいえいつも通り、いやいつも以上にハイレベルな演奏だったと思います。レパートリーをただなぞるのではなく、その中できっちりと成長していけてるのは演奏への想いがなせる業ですね。

 

13.朗唱、シチリアーノとロンド/ボザ

いや本当に、MVPで良かったんじゃないかなって思わなくもないです。大変見事な演奏でした。レッスンとピアノ合わせを経てどんどん変わっていくさまが本当におもしろく、呑み込みの早さが素晴らしかった。反応がいいとピアニストがどんどんいい音を出してくださるので相乗効果でやるたび良くなっていきました。

ビブラートが大変美しいですしとても僕の好みです、もっと磨いていってほしいのですが、(むろん音によりますが)かかる前に比べて後ろが、音程が下がり気味に落ち着くことが多くクセのようです。惜しいところなので改善するといいかも。デッドな会場なら気になりませんが、2~3秒の残響があると気持ち悪く聞えてしまうかも。その弊害なのか、音の処理で音程がぶら下がることも多いです。音色の印象は「出だし、伸ばした音、処理」の3要素で決まります。要注意です。

コンサート向きな作品強さは間違いなくあるようです。今後は大曲と呼ばれる作品(ウェーバーモーツァルトの協奏曲、タンスマンやサンサーンスヒンデミットなどのソナタもの)に取り組んでいくことで、レパートリーが広がる以上にもっと根っこの部分が成長できるんじゃないかなと思います。

今後も楽しみにしています!年長者のハードルを爆上げしにきてくださいね。

 

14.バス・ナイチンゲール/シュルホフ

発表会史上初・コントラファゴットの演奏でした。前評判(?)通り本当にコントラファゴットの名手だなと思います。慣れない楽器でよくここまで作りこみました。

冒頭の2部音符2個目、Gesの音程は(楽器の特性ですが)異様に低いです。特に半音進行のときは気を付けないと、同じ音に聴こえかねません。もしかしたらGを低めに取るのも作戦かも・・?

色物、と言われても仕方のない選曲ですから、もっと「えげつなさ」を出す工夫があってよかったかもしれません。2楽章のテンポはもっと動いていいし、息を吸うためにぽっかりと穴をあけない工夫(テンポの操作、フレーズで)はもっと研究してほしかったです。アーティキュレーションは器楽作品の命ですから、そこにももっと意味を持たせてほしかった。

とはいえ、操作が難しい楽器でよくここまでこの曲の面白さを見せてくれたなと思います。今度僕もこの曲どこかで吹いてみようかな・・・。

 

15.ファゴットソナタホ短調第1.2楽章/テレマン

まず立ち姿から。なんだか立派になりました。「おっちょっとやるのかな?」と思わせる構えはなかなかできることじゃないです。前は「いかにも不安そう」だったので。精神的なところも大きいのかな。自信があったんだと思います。事実、自信に見合ったしっかりとした演奏でした。

少し音色が、下に向くというかこもりすぎてるのが気になります。それが前提だと少し口が閉まるともう音が出ないので、1楽章の最後のトラブルはそこに起因していると思います。2楽章のテンポ感、「おいおいそれで大丈夫か!?」と思ったらそのテンポで吹けるまで練習してきたんですね・・・良くも悪くも練習嫌いが多い門下の中で、本当によくやってきたんだと思います。

さて。ステージ上で自分と楽器以外に味方ってどれだけいるでしょうか。発表会に限って言えばピアニストは味方です。大いに助けてもらっていいと思いますが、もう1つだけあると思います。それが譜面です。僕は暗譜なんてものは一切必要のない行為(少なくと発表会においてピアノ伴奏で曲を吹くことに関して)だと思いますし譜面を見てることでできることが増える、とまで思っています。その譜面の管理、というか操作で起きた事故というものは、起きるべくして起こります。それ込みで練習し、それがスムーズにいくのも大切なことなんだ、と、たぶん本人が最も自覚していることでしょう。

ただ、落ちて戻ってこれなかったのは伴奏の形を覚えていないから、です。動揺したのもあると思いますが・・・ステージ慣れも影響しますしまだまだその領域は遠いかもしれませんが、あそこですっと戻ってこれるような曲への理解は本来必要なことなのかもしれません。

とはいえ、急成長を遂げた人の一人だと思います。自分の演奏に誇りを持って、今後ともいい演奏ができますように!

 

16.幻想小曲集より第1.2楽章/シューマン

出演者の中でもトップクラスに準備時間が少なかったと思いますが、それを感じさせないクオリティと楽曲に対する理解度でした。普段どれだけ楽器に誠実に向き合ってるかが音楽に現れていて僕好みの演奏でした。

「こう吹きたい」「こういった流れにしたい」という意思はよく伝わってきます。ただしやりすぎは厳禁です。リードと楽器のキャパシティを越えた息を入れてもいい音は鳴ってくれませんし、逆効果になることも多いです。何度か「息を入れる」のではなく「リードを鳴らす」のだ、という話をしてきていますが、それはよく理解し実行できていると思います。もうワンステップ先にある意識として、鳴らしたリードの振動をボーカルに押し込めるような感覚がつかめるともっといいかもしれません。それはつまり、リードをしっかり鳴らすが適切でない鳴らし方をしない、ということです。

小さい音、大きい音、どちらも自在に使いこなしていると思います。レベルアップのためには、小さいけど強い音、大きいけど優しい音、のような操作を覚えていけたらいいですね。それにはきっと、リードの鳴り方やビブラートのかけ方を計算していくといいのかもしれません。もちろんケースバイケースですが。

シューマンという作曲家がよくハマりますね。好きなのでしょうか。ハマる曲もいいですが、ハマらない曲、というのもいいものです。ヒンデミットやボザ、タンスマンの組曲などに挑戦すると面白いかもしれません。

 

17.木管五重奏曲より第1.3楽章/タファネル

今回のアンサンブルMVPでした。いやいやメンツ見れば当たり前でしょ、という常連組の声が聞こえてきそうですが、何をおっしゃる、アンサンブルというのはメンツが決まった時点で7割は完成しているんですよ。その行動力と人望でいいアンサンブルを作るのです。

各々に伝えた課題のようなものは見事に越えてきてくれました。長年寄り添った仲間同士のようにも見える演奏でした。普段からそれぞれ色んなことを考えて楽器を吹いてることがこの5人が集まることでいい形にまとまったのだと思います。

特にフルートのレベルアップには脱帽です。初めて参加する人はこのフルートの人が5部でファゴットを持ってフンメルのコンチェルトを演奏したことにぶったまげたことでしょう。この発表会を一番楽しんでいるのはこの木五のフルート吹きなんじゃないかな。

ファゴットはすこし低音のレスポンスが悪いように聞こえます。2楽章を外したのですから、もっと強い低音の鳴りやすいリードを選んだほうがよかったのかも。木五のファゴットに一番大切なのは馬力だと思います。いい音でも支える厚さがなければ馬力不足になりがち。馬力が足りないのはオーボエも同様でしたが、それは今後に期待するとしましょう。

何度でも言いますが2楽章のホルンソロが聴いてみたかった。尺のことは気にせず全楽章に挑戦してほしかったなぁ。クラリネットは今まで聴いたどんな演奏より光って見えました、ソロやトリオより、ある程度人数のいるアンサンブルで実力を発揮するタイプなんでしょうか。間違いなくこの木五の中枢だったと言えます。

「このメンツはずるい!」「このメンバーは面白そう!」とコミュニティ内で思わせるような木五の結成、ほかの参加者の皆様からもお待ちしております。

 

18.サラバンドとコルテージュ/ディティーユ(ゲスト演奏)

僕がなにか語るようなことがあるでしょうか。笑

ゲストの鈴木一成さんとは、日本で行われたIDRSのときにFOXプレイヤーのステージでご一緒したときに出会いました。とにかく圧倒的に自由で魅力的で、一瞬でファンになってしまい、いつかこの会に・・・!と思っていましたがまさかこんなに早く願いが叶うとは。本当にありがとうございました!生徒たちも大喜びでした。

 

19.ファゴットソナタ/サンサーンス

出来の悪い演奏でした!

・・・いや、私です、これ吹いたの。運営しながら自身もシビアな曲を演奏する、というのは自分で決めたことではあるのですが、やはりこの曲を納得できるクオリティで演奏するにはまだまだレベル不足ですね・・・。笑

とは言え色んな方から貴重なお褒めの言葉も頂き、自己評価と他人の評価というのはなかなかかみ合わないものです。

何度かお話してる気もしますが、ここまでたくさんの生徒のレッスンをしていると「レッスンプロ」「発表会運営の人」というレッテルを貼られてしまいそうで。もちろんオケや室内楽のお仕事もさせて頂いていますが、表に出ることもそう多くはないですし人の印象というのはなかなか思った通りに作ることができないものです。あくまで僕自身が現役のプレイヤーであること、だからこそ生徒たちに与えてあげられるものがあるということ、それをかなえるためには、と思った結果、自身も生徒たちと一緒に曲に挑戦する!ということになりました。

おかげ様でサンサーンスは今後も取り組むことになりましたので次は納得できるクオリティまで仕上げたいですね。

 

20.ファゴットソナタヘ短調より第1.2楽章/テレマン

いや本当に上手くなったね。っていつも言ってるのですが、ここまで毎回確実に根っこからうまくなる子がほかにいるでしょうか。1楽章の冒頭なんて、ちょっとした音大生よりうまいんじゃないかな。ダイナミクスの操作は元々得意でしたが、「使い方」がよく分かってきて、曲によくハマっていました。以前ならもっと逸脱してしまっていたと思います。

バロック作品ですので、もっと遊びがあってもよかった。そしてそれが自主的に生まれてくるともっとよかった。上手くなることも大切ですが、曲を楽しむ・楽しませることも大切です、こんどバロック作品に取り組むときは「ちょっとそれ装飾入れすぎ」と僕にツッコミを入れさせてくれることを期待してます。もともとそーいうのは好きでしょ?

フレーズの最後の音の処理が曖昧かつ、ワンパターンです。シーンによって全然違うはずなのに全く変化が見受けられませんでした。全体のクオリティが高く流れが出来上がってるからこそとっても気になりました。ほかの子にも書いた言葉ですが、デートで最も大切なのは待ち合わせと別れ際です。肝に銘じましょう。

以前にも指摘しましたが、音色も1種類しかないように聞こえます。厚い音薄い音、響く音響かない音、あたりが作れて選べればもっと可能性が広がると思います。今後にも期待してます。

 

21.チェロとコントラバスのための二重奏曲より第1.2楽章/ロッシーニ

ファゴットコントラバスという異色デュエットでした。この曲はファゴットのコミュニティならまず間違いなくコントラファゴットと一緒にやるかと思うのですが・・・それだけこの相方と共演することに意味があったのだと思います。

「音域の違い」や「弦と管の差」など、実際に存在する差異以上にズレが大きかったように思います。それはバランスであったり音色の操作で調節するもので、管楽器同士のとき以上に気を付けなければいけないのですが・・・もっとすり寄ってほしかった。二重奏は「合っていて当たり前」で差を楽しんだりシンクロ感を楽しむものだと思いますが・・・残念ながら今回は曲にすることに精一杯の印象、という印象でした。

ロッシーニという作曲家の作品はもっと美しく高揚感のあるものだと思います。そういったものを目指すには練度が全く足りなかったと言えます。思い入れを感じるだけにそれが残念でした。具体的にはコントラバスはフレーズ感や和声感、ファゴットには音色のコントロールやフレーズの終わりへの気遣いが足りないようです。

とはいえ、本来とても難しい作品をオリジナル以上に難しい編成でなんとか演奏まで持っていったことも事実ですし、確かな思い入れを感じました。きっと人の心に響く演奏というのはその向こう側にあると思います。今後も面白いものを聴かせてくれるのを楽しみにしています。

関係ないですが、僕がファゴット以外で唯一ほんのちょっと触れる楽器がコントラバスです。僕個人としては聴いていてとっても幸せな編成でした。

 

22.ファゴットソナタ/グリンカ

いやもう、MVPでよかったよね。本日2回目。初めてレッスンにこの曲を持ってきたときのがむしゃらな演奏から、よくここまで色っぽい演奏まで仕上げたなと思います。今回グリンカは2人いましたがそれぞれ違って本当に面白かった。

なにに影響を受けてここまで面白い演奏ができるようになったのかはよく分からないのですが、レッスンをしている印象ではだれよりも僕の音をよく聴いてるように思います。もしそれが影響しているなら、僕もプレイヤーとしてすごく嬉しいです。音と音のつながり方もいい意味で自然でとても美しい音の並びがたくさん聴けました。ただ上手いだけの子ではこうは吹けません、大変見事でした。特に主役に回らないときのピアノとのバランス感覚は抜群でした。

レッスンでも指摘した内容ですが、フレーズの後ろの音が膨らむクセがあります。それでいいときもありますが、いつもそれでは少し不自然が生まれてしまいますし、「膨らませる」のと「膨らんでしまう」のは少し意味が違います。改善点だと思います。また、おそらく自覚があると思いますが強奏時、横に広がってしまうような傾向があってそれを気にして不完全燃焼になる事が多いです。ボーカルやリードで解決することもあると思いますが、時には音色を気にせず責めたてるような箇所があってもいいのではないでしょうか。再現部に冒頭との違いがもっとあるほうが僕は好きでした。

グリンカは今後ともうちの発表会で憧れのレパートリーの一つになるでしょう!

 

23.三重奏曲より第1楽章/プーランク

みんなの憧れ、プーランクのトリオですね。合わせでふたりが初対面、というなんとも現代らしい形でつながったアンサンブルでしたね。

総評として、2人ともかなりハイレベルな演奏をするし、ピアノと3人で合ってないわけでもない。でもこの曲の「聴きたいレベル」がものすごい高いところにあるのでしょう、そこには届いていない印象でした。それだけ大曲に取り組んだ、ということだけで本来価値のあるものですが、二人の目指すところはもっと高いところにあったと思うので、少し厳しめに。

オーボエはまず、少人数で立つステージをもっと踏む必要がありますね。ステージに立つ、礼をする、チューニングをする、自分の休符で他人の音を聴く、演奏後に礼をしてステージを降りる、などの一連の流れがあまり美しくありませんでした。あまり(室内楽や単独のリサイタルなどの)演奏会にも足を運ばないのかな。もし足を運ぶ機会があるのなら、そういった部分からよく見てみて真似をしてみるといいです。ファゴットやピアノのソロ時は楽器をおろしてどんな顔で吹いてるか観察するくらいの余裕が必要です。シンプルに共演者も動揺します。事実、明らかにしてました。笑 ステージ上での所作、難しいものですね。基本的には、自然でいいのですが。

またアーティキュレーションについてレッスン時にもいくつか指摘もしました。演奏者は「表現者」ではなく「再現者」と考えましょう。プーランクという大作曲家の作品を再現させていただく、という立場である以上、譜面にある情報を見過ごすのは責任を果たしていないことになります。どうしても難しい!という場所があれば限定的に変更し共演者に説明し合わせてもらう必要があると思います。

一流の室内楽ピアニストとアンサンブル大好きファゴット吹きにピッタリ寄り添ってもらった経験はきっとこの先に大きく生きると思います。いつかあなたが、この経験を活かしてほかのだれかに寄り添ってあげられたら素敵なことですね。「会場全体を虜にして」とお願いしたフレーズ、全体とは言わないまでも6割くらいは虜にできたんじゃないでしょうか。とても僕の好きな演奏をするオーボエだったと思います。今後に期待します。次回以降もぜひ。

ファゴットは寄り添うことと自分が前に出ることの瞬発力が問われる曲でしたね。ポテンシャルの高さを感じました。音色と音量の操作がとにかく一流で大変い見事な演奏でした。逆に言うとそれが仇となって(操作がうますぎて気にならないと言えばならないのですが)フレーズ感がおろそかになる事が多いようです。某門下生の言葉を借りるなら「規格外に上手い」と僕も思います。そこからもっと楽しむ・楽しませるためにはとにかくフレーズ感を磨くことです。「こう吹く!」とこだわることだけではなく、ほかのパターンや可能性を見つけて取り込んでいくようなことを繰り返したらまた違う世界が見えるでしょう!

なんだか辛口になってしまい各方面から怒られそうでしたが、僕はこのトリオがものすごく好きなので同じメンバー(ピアニストのご都合が合うといいのですが!)でまた演奏してほしいと思っています。

 

24.3つのロマンス/シューマン

ロマンス3人衆の1人目。完成度の高いところからレッスンができるのでいつも色んなことを教えてあげられてこちらも楽しませてもらっています。2楽章があれだけ安定して吹ければ、第九の3楽章はへっちゃらでしょう!・・・いや、そうもいかないかな。成果のほどはいかに。「音量を絞りすぎない」という方法をいくつか取りましたが、結果として体力配分としてはうまくいったと思います。が、やはりフレーズの最後やワンポイント(エコーの部分とか)でもっと薄い音、弱い音が聴きたかった。

また、ちょっと指を回すポイントになるとテクニックにリソースがいくのか、流れのようなものが薄くなるのも気になりました。「指回しモード」みたいのが存在するのでしょうか。そこだけ音楽的に内容が薄くなるようです。音数が多い箇所ほど、大切に、大切に。

弱音時に音がフラつくようです。音程が変に上がらないのが立派ですが、むしろぶら下がることが多いような・・・。口は閉まっていないようですが、息の下の方(所謂お腹というやつ)の支えが弱くなるのかも。弱音時こそ気をつけて。

この手のゆっくり系、もう1曲どこかで取り組んでみてほしい。同じシューマンでもいいしケックランやディティーユなんかのフランスものでもいいかも。時間のないなか、本当にレベルアップした演奏を聴かせてくれました。

 

25.ロマンス/エルガー

ロマンス3人衆の2人目。楽曲に対する愛!というか思い入れを強く感じました。この曲を愛しいい演奏をしよう、ということはファゴット吹きとしてはとても大切なことだと思います。大切なレパートリーですよね。

音楽的な流れはとっても良かったです。テンポのゆらぎなんかも独特ではありますが不自然ではないし、曲のイメージ通りの演奏ができていたと思います。この曲を「イメージ通り吹く」というのは演奏した本人がどれだけ難しいことか分かっているはずなので、それはクリアしています。お見事でした。

さて、突然あらわれる指回しポイント。そこにアゴーギグを用いて丁寧に吹いてほしかった。ただの駆け上がりにするのではなく、その音の羅列に愛情をもっと持ってほしかった。フレーズの語尾で音程がぶら下がることも少し気になりました。コツとしては音程が上がることに気を付けながら、支えは失わずに、という意識を持つことでしょうか。

また、フレーズを作るとき、大きくなっていくときは音色の操作があるのですが、そこから収まるときに音色が変わりません。音量が変わってはいるのですが大きな印象の差を感じにくい演奏になってしまっています。語尾のこともありますし、フレーズの後ろの方をもっと大切に神経を使って練習するとより良くなるのではないでしょうか。

それにしても、今回は「ハマり役」な人が多かったけど、その中でも一番の「ハマり役」だったんじゃないかなぁ。この曲が似合うのはもう才能です!大切なレパートリーにしてください。結婚式で新郎として吹いてほしいなぁ。

 

26.ロマンス/ブルッフ

ロマンス3人衆の3人目。今回のMVP。この発表会では古参どころか創立メンバーみたいなもので、そんな彼をMVPにするのはちょっと手前味噌なところがあって恥ずかしいのですが・・・。笑 この曲は「ズルい」曲なようで、一部の子には永遠に(いい)演奏不可なんじゃないか、って思うくらいフレージングが難しく、それは演奏した本人が一番よくわかっていることでしょう。ただフレージングに関しては100点満点と言っていいと思います。長年の付き合いで、僕が伝えたいフレージングのことはよくよく理解してくれていて、とにかくそれが嬉しくてMVPに選びました。

元々テクニックに寄っていた君が、この曲をこれだけ魅力的に演奏できたことは大いに誇りに思ってほしい。楽曲にひとりで取り組むことがどれだけ奏者として成長するか、というのは君が見事に証明してくれていますね。

さて、リードが古いことはチューニングの時点でモロバレです。それは大いに気にすべきですし、この手の曲は表現も大切ですが音の響きも大切です。古いリードは響きを損なうものですから、いい演奏をしたければまずはそこから。吹きやすい、だけで演奏するようではこれ以上のレベルにはいけません。しっかりとね。いくらテクニックがあっても音色の汚いホルン、聴けたものではないでしょう?

強奏時に音程が下がることが多いようです。鳴ってさえいれば、多少上がっても気にはならないものですが下がるのは気になってしまいますね・・・。特にヘ音で五線より上にいったあたり、よくよく気を付けましょう。これもリードが影響しているでしょうね。

とはいっても、多少の傷は気にならないくらい見事な演奏でした。これだけ名手がそろってきた中でMVPなのは大いに誇ってください。次はだれがブルッフやるかな。審査をもうけようかな。笑

 

27.ファゴット大協奏曲より第2.3楽章/フンメル

木五の方でも書きましたが、2つの楽器を同じ日に、これだけのクオリティで演奏できるのはセンスと努力と、時間の使い方の上手さを大いに感じます。

まず2楽章、僕とピアニストにまったく違うことを言われて戸惑ったのでしょう。笑 ただおそらく、僕らが言った2つのことは真逆のようで繋がっていて、最終的に同じところにたどり着くものなんだと思います。音楽の指導なんてそんなものです。そういった意味で、もっと突き詰めることができた演奏だったのかもしれません。古典派である以上、2楽章を音楽用語でいうところの「ロマンチック」に演奏するわけにはいかない。でもこれだけ綺麗なものを淡々とは吹けない。そのせめぎあいから名演は生まれてくるんじゃないかなぁと思います。そういう意味で、もっとロマンチックで良かったのかも。こんなこと「先生」という立場からいうことじゃない気もしますが。笑

歌いこむ時・強奏時の音色が、横に広がってしまう傾向にあるようです。どうも管楽器というのは息を入れにいくと冷静さを欠いてしまう傾向にあるので、心は熱く、頭はクールに、が基本です。今自分の音がどんなふうに聴こえているか、それを考えながら楽器を鳴らせばきっと改善していくことなんだと思います。

3楽章の難解ポイント、もっと「時間」をうまく使った吹き方をするのがいいです。テクニックでねじ伏せるということができない曲ですから、時間の操作が大切です。やろうとしてるのは伝わってくるのだけど、やはり実践するのは難しいですね。ちょっと1レッスンでは伝えきれなかった部分もあったのかもしれないので、そこは僕の反省点です。

僕の一番大好きな曲をこの会ではじめて演奏してくれたこと、とても嬉しかったです。それが君で良かった。さらなるレベルアップを楽しみにしています。もちろんフルートも!

 

28.2本のファゴットのためのソナタ/モーツァルト

ファゴットの2重奏、っていいものですよね。普段オケでどれだけ考えて吹いてるかがちょっと一緒に吹けばすぐわかって、刺激しあえて、バランスを気にする必要も(あまり)なくて、ファゴットを吹くうえでトップクラスに自由度が高い編成だと思います。

まず2nd(1楽章冒頭のパート割で)ですが、めざましい進歩を見せました。アンサンブル参加でもこんなに上達するものだとは。相方の影響が大きいかと思います。格上と二重奏をやれる、ということの喜びはそういったところにあると思います。テクニック、楽器の鳴り、寄り添い、(いい意味で)勝手、すべてが1週間弱で別人のように上達しました。今回の感覚をぜひ忘れないでいてほしいです。いわゆる「ド伴奏」時の時に音色がもう少しまとまるとオケでもいい仕事ができるのではないでしょうか。音量がそれ以上小さくなる必要はないのですが

1st、もっと最終的に自分のわがままを通して吹いてもよかったかもしれないですね。寄り添いも勝手するのもとても高水準ですが、相手のために自分がもっと楽しく吹けるポイントを増やす、みたいなことがあってもいいかも。人間関係が先輩後輩で腕前に差があっても、本番は対等ですからもっと自由でいいのです。それが相方のためにもなるんじゃないかなと思います。カデンツァはもっと自由にやってよかった、恥ずかしそうに駆け抜けていくようなところがまだまだです。「面白いこと」をやるというのはそのクオリティが高いほど面白いものです。でも発想自体はとても好き。

1、3楽章、ちょっと前のめりすぎるテンポ感が気になりました。前進する場所があってもいいですが、テンポ的に落ち着く場所がもっと欲しかった。2楽章はもっともっと美しい旋律が聴きたかった!音がきれい、ではなく、流れがきれいな演奏を心掛けてほしい。モーツァルトのフレージングはシンプルなようでなかなか複雑です。もっと気にしてほしかったな。

二重奏というジャンルがこの会でもっと流行っていくといいなぁ。

 

29.ファゴットソナタヘ短調より第1.2楽章/テレマン

今気が付いた、プログラム記載がホ短調になってました・・・よね。失礼しました。毎回トリを任せる人には多大なるプレッシャーをかけてしまっていますが、今回は「いい演奏になってほしい」と僕が心から思ったからの選出でした。

子どもを育てながらの準備、僕が想像もできないような苦労が多かったと思います。なのにレッスンのたびにレベルアップしてきて本当に関心していました。出てくる音色がだんだん曲にハマってきているのは強いイメージがあってこそなんだと思います。ただ暗い音色になっているだけではなくて、きちんと長調長調の音色になっていました。派手な装飾も大変に僕好みでした。装飾に振り回されないように、とレッスンで何度も言いました。本番は振り回されてはいない演奏ができていましたが、影響はあるようです。派手な装飾を使って、音楽的な流れを文字通り「装飾」するためには、もう一つテクニック不足でしたね。でもそれを補って余りある気迫あふれる演奏でした。バテても吹ける、という領域、少し飛び込めたように見えます。それは上級者でもなかなかできることではないのです。

今回、きっと時間はたくさんかけられなくても進歩していくやり方を見つけられたのだと思います。そのやり方で、ひとつひとつ丁寧に練習していくことで楽器はうまくなっていきます。そこにたくさんの時間なんていらないのです。

あなたの演奏が、今後、きっと楽器を産休でおやすみする生徒たちの励みになると思います。ぜひ相談にのってやってくださいね。

次回も楽しみにしています!

 

 

総評として、今までは「レベルの高い新人」と「元々そこそこうまかった古参」が名演を残し、そうでないメンバーは必死に食らいついていく、という傾向にありましたが・・・今回、「そうではないメンバー」が「レベルの高い古参」と呼んでいいレベルに到達していて、間違いなく今までで一番レベルの高い発表会でした。初心者組の飛躍的なレベルアップも考えると、これほどレベルの高いアマチュアファゴット発表会はそうそうないんじゃないか、と思います。

もし新人やお客様で、「こんなレベルの高いところ私にはついていけない」と感じた方、今回参加した「ハイレベルな古参」たちの昔の演奏録音、こっそり送りますのできいてみてください。1年やそこらでこれだけレベルアップできるのですから、どうか自信を持って練習に励んでください。

 

いやそれにしてても、面白い会になりました。次回はどんな発表会になりますことやら。