ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

基礎練のすすめ。大切なのは取捨選択!

こんばんは。世間は夏休みですね。我々音楽家毎日が夏休みのようなものであるのですが、やっぱりうらやましいなぁ・・・。

思えば音大に入ってからはやれ合宿だセミナーだコンクールだ仕事だ、という感じで夏休みらしい生活は高校生のときが最後だったような。でも社会人になってからの方が意識的に休日を作って人生を楽しめている気もします。

みなさんも素敵な夏をお過ごしくださいね。

 

さてさて、各所でいちばんよく聞かれる基礎練習のお話です。

まず、この記事の存在意義を怪しくしてしまいますが、「やるだけで絶対にうまくなる基礎練習」はありません。野球ならバットの振り方やボールの投げ方捕り方、サッカーならボールの蹴り方や走り方を教わる必要があるように、音楽には「やり方」があります。あなたにとっての「やり方」はレッスンに通う以外には手に入りません。これは大前提として、まず明記しておきたい。それはそれとして。

 

大切なのは、「今必要な基礎練習をきちんと見極めること」です。

毎日8時間練習できる人は、納得いくまで基礎練習をすべて行うといいと思います。でも個人練習なんて、やれて2~3時間でしょう?今抱えている譜面の練習もあるのに基礎練習ばかりにとらわれていては演奏家としての信用を失ってしまいます。

これから重要な順に基礎練習をおススメしていきますが、難なくこなせるようになったらほかの項目にもどんどん挑戦していくことです。いつまでもロングトーンや難なく吹ける調のスケールにとらわれていてもうまくはならないのです。

 

 

1.ロングトーン練習

前記事にもあるとおり、すべての基本となるのがロングトーンです。

初心者のうちは覚えている運指の音すべてをとにかくまっすぐ(音程や音量が揺れないように)伸ばせるようになることは大切なことです。演奏に必要な口周りの筋肉も育っていくと思います。音量は基本はメゾフォルテくらいの鳴らしやすいところで。すべての音で同じ音量が出せることが大切です。基本的に長さは問題ではありませんので、きちんと伸ばせたと思ったら次の音にいきましょう。

 

ロングトーンで気にする点は3か所。発音、伸ばしの音、音の処理です。どれか一つ欠けても正しいロングトーンにはなりません。

発音は基本的にはっきりと。舌をリードに付け息を作り、舌を離して発音します。発音から伸ばしの音に向かって音程や音量が変わらないように。最初から伸ばしたい音が鳴るよう意識しましょう。応用編として、柔らかい発音や通常より強い発音の練習があってもいいかもしれません。

伸ばしの音はとにかく揺れずにまっすぐに。吹きながらだと自分の音がどうなってるか分からなければ、携帯などでも構いませんから自分のロングトーンの音を録音して聴いてみましょう。大変に心が苦しい練習なので覚悟が必要です(?)

音の処理も、やはり基本的にははっきりと。「余韻を作れ」と指導されているかもしれませんが、音の余韻というのはホールでは残響が作ってくれますからハッキリ切れば美しく音は響いてくれます。応用として減衰するような音の切り方を練習することもあるでしょう。

 

ある程度慣れてきたら、自分の苦手な音域の練習に絞りましょう。中級者以上におすすめの練習です。

・低音(最低音B♭~1オクターブ上のB♭くらい)の音程が悪い、特に高いのは問題です。リードなどの問題もありますが、息のコントロールである程度音程は下げられますので意識して練習をしましょう。

・中音(最低音B♭の1オクターブ上B♭~さらに1オクターブ上B♭~5度上のFあたり)の音程が悪い、音量が鳴らない、音色が開く、などが考えられます。息や正しい運指で改善することが多いようです。改善した音の響きに慣れることが大切です。

・高音(ヘ音上線3本目のG~5度上のDあたり)はそもそも鳴らし慣れてないことがよくあります。まずは慣れること。慣れてきたら中音や低音との鳴りムラを減らすよう意識するといいと思います。音程も取り辛い箇所かと思います。

 

ロングトーンにおいての「音程」に関しては機械(チューナー)に頼るといいです。目をつぶってから正しいと思った音程で吹き、目を開いて確認し、その差異を認識します。音域内すべての音で差異がなくなったころには、結果としてしっかりと楽器が鳴っていることでしょう。それ以上の「いい音」があるでしょうか?もちろん、そのためにはリードや楽器・ボーカルの見直しがあることでしょう。

ロングトーンで鳴らせる音以上の音は実践では絶対に鳴りません。そういった意味で、「基礎の基礎」であると思います。

 

また応用として、ピアノ・ピアニッシモ・フォルテ・フォルティッシモなど、ダイナミクスを変えたりクレッシェンドなどをくわえた練習も効果的かと思います。

 

2.音階練習

先述のロングトーンで得た「いい音」を、最も基本的な音列パターンである音階で練習します。出ている音が「いい音」かどうかをしっかり見張るために、可能な限りゆっくりのテンポで練習しましょう。自分の音が聴けないような速さで音階練習をしても、指をごまかすのがほんの少しうまくなるだけで、基礎的な部分がうまくなったりはしません。

 

さて、練習する音階についてですが。結論から先に言うならば、必ず24調すべて練習しましょう。

もう十分に吹けるFdurやCdurをいつまでも練習するより、手も足もでないであろうHdurやesmollを練習するほうが遥かに効果的と言えます。特にシャープ系や短調、苦手ですよね?勉強でも苦手な科目から点数を伸ばせばすぐに成績が上がりますよね。そういうことです。目指すところは、Fdurと同じクオリティで24調すべてが鳴らせることです。それを目指して、僕自身、いまでも毎日音階練習を続けています。

24調に慣れてきたら、B♭-E(Es)までの調は3オクターブ目にも挑戦してみましょう。ハイトーンを吹く技術というのは、本当にある日突然、必要になってきます。音階で吹ければ実践でも吹けます。また、Eまで吹ける人のCとCまで吹ける人のCは安定感がまるで違います。そこらへんはきっと、金管楽器とも通ずるものがあるのではないでしょうか。

 

これは持論であり暴論であることは承知していますが、24調音階が並ばないこれを読んでいるあなたは、初心者なのだと、思います。あるいは読み書きのできない幼稚園児、車の免許のないタクシードライバー、包丁の握れない料理人、パソコンを持っていないユーチューバー、です。たとえに深い意味はありません。

ムッとしましたか?ごめんなさい。でも騙されたと思って、ぜひ24調、覚えてみてください。世界が変わりますから。

 

3.分散和音、インターバル、半音階

音階に余裕がうまれてきたら挑戦しましょう。

インターバルというのは、所謂ドミレファミソファラ、ドファレソミラファシ、ドソレラミシファド、なんてパターンの練習です。分散和音もインターバルも、もちろん24調ありますしパターンは無限大ですから、日替わりで1つずつ色んな調に挑戦していくのがいいかもしれません。ゆっくり確実に、慌てないで吹けるテンポの練習でも効果的だと思います。ここでももちろん、「いい音」であることが大前提!

半音階はダラダラと下から上まで駆け上がるより、オクターブであったり5度であったり、範囲を決めて少しずつ上げるなり下げるなりして練習するのが効果的なようです。

 

 

この他にも、タンギング(シングル、ダブル、トリプル)の練習も効果的かと思います。速さよりもクオリティにこだわりましょう。

 

 

基礎練習について、まじめに語ってみました。

我々ファゴット吹きは、どうしても出番の多い生き物です。つまり抱える譜面の量が多いのですから、基礎練習も大切ですがしっかり楽譜の練習をしましょう。楽譜の中にもロングトーンや音階、分散和音やインターバルがたくさん出てきますから、それをきちんと丁寧に練習していくのが、何より効果的な基礎練習になるのではないでしょうか。

 

たかが基礎。されど基礎。迷ったら、ぜひレッスンに来て相談してくださいね。

「私にはどんな練習が必要か」なんてご相談もお待ちしてます。

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