ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第13回発表会でした。総括と各奏者・団体への講評とか、次回のこととか。

こんにちは。またまたお久しぶりの投稿になってしまいました。

「ブログ」って名称はいいですね。「web日記」だったら日記の体裁を保ててないのでもうやめてしまっているかもしれません。笑

 

先日、年3回行われている僕の生徒たちの発表会が行われました。

生徒たちによるファゴットソロ演奏と、僕のレッスンを受けたアンサンブル団体による演奏を中心とした発表会です。初期のころはソロばっかりだったのですが、ここ最近はアンサンブル団体が増えてきてバリエーション豊かなプログラムとなってきました。

11時に開演し19時に終演。すごく長いようですが僕としては教えたことをどうやって消化して本番にのぞむのか、とても楽しみな時間です。出演者同士も終演後に互いの演奏を認め合う、とても素敵なコミュニティになってきました。認め合ううちにアンサンブル団体が結成されたり。

今回はドルチェ楽器東京のサロンをお借りしました。なかなか使うことのできない会場を使えるようになったのも、これだけたくさんの人に参加してもらっているからだと思っています。出演者のみなさま、本当にお疲れさまでした。

 

発表会そのものが「レッスン受けて人前で演奏すれば誰でも手っ取り早くうまくなるからやってみよう」というコンセプトです。レベルは初心者から音大生顔負けな子まで様々です。それぞれ色んな環境で楽器に取り組んでいますが、一人残らず別人のようにレベルアップしていきます。そういったコミュニティを築き上げることができたこと、とても嬉しく思っています。今後もとても楽しみ。

 

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第13回発表会の集合写真です。50人越えの出演者たち。

 

さて、次回発表会のお知らせです。

2019年3月24日(日)お昼ごろ開演

アーティストサロン"dolce"東京(新宿駅西口より徒歩5分)

以下の出演者、募集しております。

ファゴットソロ演奏

ファゴットのソロを演奏して頂きます。僕のレッスンを1回以上受けて頂ければどなたでも演奏参加して頂けます。参加費にレッスン1回分を含んでおります。

・アンサンブル演奏

2重奏~8重奏程度のアンサンブルでの演奏をして頂きます。僕のアンサンブルレッスンを1回受けて頂ければどなたでも演奏参加できます。こちらも参加費にレッスン1回分を含んでいます。

参加費はファゴットソロが14000円(学生10000円)、アンサンブルはひとり6000円(出演人数によって割引あります)です。

詳しくは

発表会参加・お問い合わせフォーム

までご連絡ください。参加申し込みもこちらから。お待ちしております。

 

さてここからは、恒例といいますか、各演奏の講評となります。

出演者以外には興味のない記事になるかと思います、が、意外と出演者以外でも講評まで読む方がけっこういるようです。なんだか恐れ多いような・・・。

 

1.ファゴットソナタ1.3楽章/シュレック

忙しい日程のなかお疲れ様でした。以前までの君を知っている子たちが口々に「とてもうまく(よく)なった」と言っています。僕もそう思います。

細かいテクニックであるとか音楽であるとか、日々レッスンで伝えていることが身についているのも確かですが、人の印象が変わるほどの変化がようやく(?)訪れたようです。それはきちんと向き合ってきたからこその大きな成果なので、自信を持ってほしいです。

力まかせな部分はまだ抜けないようです。「こう吹きたい」が先行すると音程だのリズムだのがよそへ行ってしまう傾向はまだまだ改善する必要があります。「こう吹きたい」と吹くのではなく、物理現象として自分の音がどう変わっているか気にしながら練習するようにしてください。楽器の演奏というのは心のうち5割くらいは冷静でいないとできません。今回印象が変わったのは、冷静であったからではなく適切な吹き方をなんとか習得できたから、です。冷静ささえ身に付ければもっと化けるんじゃないかなと思います。

レッスンでかなり厳しく言ったリズムのことは、付け焼刃ではありながらもよくなりました。これも「こう吹いているつもり」ではなく「こう聴こえている」のを大切に。

ピアノとの絡みがかなり複雑ま曲でしたが、ピアニストのおかげもありますが大きなズレは感じませんでした。以前までなら、もっとズレていたでしょう・・・。「きれいな曲」というのは大変なものですね。次はもう少し、聞き映えといいますか、テクニックを音楽が両立するような選曲ができるといいかもしれませんね。その辺はまたレッスンで。次はピアノともっと深く絡み合う曲が面白そうですね。ソナタものをぜひもう1曲。そろそろ若い子にあこがれてもらいましょう。

 

2.ファゴット協奏曲1楽章/シュターミッツ

初参加お疲れ様でした。

練習量でねじ伏せる!というよりは、なにかと考えて練習する必要のあるこの曲を選ぶとみんなとてもよく成長します。単純な奏法もものすごくよくなりました。小さな音、大きな音、をきちんとコントロールするテクニックがついたので、忘れないよう日々の練習で今自分はフォルテなのかピアノなのか、考えながら吹くようにしましょう。

トリルはもうひとつ、といったところでした。「なんとかごまかす」ところまでは練習出来ているのですが、旋律としてきれいに入れるのはもう少し訓練が必要でした。ここまでトリルがたくさん出てくる曲もなかなかないものですが・・・。

少し発音があいまいな箇所が時折見受けられます。きれいな発音とあいまいな発音は似ているようでけっこう違います。特に古典ものはハッキリ発音しないといけないところがたくさんあります。ハッキリ発音、柔らかい発音、がしっかり使い分けられるように。その2種類とスラ―を組み合わせるだけでずいぶんと色彩感が出てくるものです。

難所はよく練習しました!本番で危なげなくできたことはいい練習時間を過ごしたということです。その感覚を忘れず、今後に生かしていってください。

さてカデンツァ。楽器のトラブルについてあまり世話してあげられなかったことは申し訳ありませんでした。それにしても、出ないものは出ません。カデンツァであっても音楽は続いていますから、吹きなおすのではなくそのまま先にいくしかありません。それは初めてのソロ舞台ですから分からなくてもしょうがないので、今後は同じことがあっても出なければ先へ。と言っても、何度も何度も取り組む姿は決して格好の悪いものではなかったんだけどね。性格がよく出ています。あ、もちろんそれについては、ピアニストの援護への感謝も忘れないように。

今後も楽しみにしています。早めに取り組めるのであれば、ウェーバーの協奏曲に挑戦しましょう!

 

3.無伴奏組曲より「ブーレ1.2」/バッハ

復帰戦お疲れさまでした。自分の演奏を人に聴いてもらう、という喜びはじゅうぶんに味わえたでしょうか?

状態のいいとは言えない楽器だとは思いますが、苦にせずきちんとコントロールして吹けていました。音程もリズムも決して悪くありませんでした。ただもっと音楽そのものに積極的でいてほしかったです。「明るい」「暗い」はよく伝わってきましたが、それ以外のなんというか、指向性といいますか、向かう、収める、みたいなものがもっとたくさん聴きたかった。そういったものを作りあげる余力はまだ感じました。

チューニングから演奏開始が早すぎます。聴いている人にも準備があります。チューニングを終えたら目をつぶり、演奏後の清々しい気持ちを想像して、目を開け、ピアニストに目配せをし演奏開始、くらいの間があっていいものです。あれだけ丁寧に始まったアウフタクトがもったいないです・・・。

あとはソロの舞台というのは完全なる「非日常」です。それを楽しむには、やっぱり「おめかし」なのかな、と思います。いつも素敵なオシャレをしていると思いますが、非日常を楽しんで「私なんて」と思わず、気分の乗るオシャレをしてステージにあがってほしいものです。

今後も楽しみにしてます!オケや吹奏楽への参加がハードルが高ければ、ソロに加えて簡単な曲でいいのでアンサンブルに挑戦してもいいかもしれませんね!それはまた、相談しましょう。

 

4.チェロソナタ第2番より1.2楽章/ヴィヴァルディ

始めた会ったころからは別人、と、毎回言ってますが今回で完全体ですね。1年ちょっとですか、社会人でよくここまで成長できました。

難しい「はず」な箇所を難なく通り過ぎることができるようなる感覚、病みつきになりませんか?いい練習をすれば、それは無限に味わえます。だから楽器、やめられないんですね。

元々持っている音色がとても綺麗です。音程や音質もよくなってきたので、良くも悪くも「それで終わり」になりがちです。いい音色でいい音程、おかしな音もしない、でも起伏もない・・・といった印象があります。その音でもっと、音楽に流れを作りましょう。レッスンでも少しずつは提案してきたはず。「こうはならないように」は全部できていますが、「こうするとより良い」はすぐ忘れてしまうようです。

もう君のファゴットは下手ではありません。だからこそ、もっといい音楽が聴きたいですし、「もっといい音楽を奏でたい」という欲を持ってほしい。今回の演奏は、今までの悔しさがぜんぶ消し飛ぶほどよかったのですが、ここで満足せず、今回のクオリティを「最低ライン」に持っていけるように、また一緒に頑張りましょう。

「下手じゃない」で終わらず、「うまい」「かっこいい」「あこがれる」演奏を目指して。次回は、今回たくさん聴いた中で、好きな曲があればぜひそれに挑戦しましょう。

 

5.ファゴット協奏曲ホ短調より1楽章/ヴィヴァルディ

ほんと、最後のレッスンでどうしようかと思った。笑 決して練習していないわけじゃない、でも僕に会う前の悪い練習グセがどうしても抜けていなくて、今回いちばん心配していました。前奏がはじまって、「えっうそこのテンポはまずい」とさらに青ざめました。

君の持っている性質なのだろうけど、「なんとかする」力をすごく持っています。そこに適切な練習がほんの少し(日にちにしてほんの少し、密度はとても高かったのでしょう)乗っかって、今回の演奏にこぎつけた、という印象です。なぜその練習を最初からしなかったのか・・・!!と思いますが、みんなそうですし、僕も若いころそうだったので、仕方のないことなのでしょう。

とにかく最後のレッスンから比較して「本番いい演奏だった」自覚はお持ちでしょうか?持ってなかったら、捏造でいいので持ってください。直前ではありますが、とてもいい時間を過ごしたのだと思います。

「なんとかした」ことだけではなくて、曲のカッコよさはきちんと引き出せていたことに、とても驚きました。なるほど君はこの曲が大好きなんだな、というのもよく分かりました。今回のことで色んなことを掴んだと思います。単純にとてもうまくなったとも思います。今回みたいな練習を、次回は最初からしましょう!それが身につけば、ファゴットを吹くのがいまの10倍楽しくなるかと思います。今回のような練習を、曲だけではなく、(譜面の)数たくさんやることです。そのためにエチュードというのは無理なく効率よく練習ができる素材だと思いますので、時間見つけて練習しぜひレッスンに持ってきてください。

今後も楽しみにしています。そして、やっぱりウェーバーに挑戦してほしい!

 

6.木管五重奏曲/ニールセン

大曲、お疲れさまでした!前にも言った通り、僕は木管五重奏のレパートリーの中でもっともこの曲が好きです。大変さもよく分かっています。この木五の圧倒的にいいところは、単純に「聴こえてほしい音」がきちんと聴こえるバランス感覚です。アンサンブルを楽しむ術を5人ともよく知っていて、それは本当に素晴らしいことだと思います。それを生かしこの大曲の音楽をよく表現していました。

朝一で合わせをしてから来たのでしょうか?ホルンは調子が良くなさそうでした。木管五重奏の要はホルンです。朝一の合わせはホルン奏者の調子と相談して決めることです。また奏者自身も、自分の調子をととのえるためにもよく考えて時間を使うようにしましょう。そういったコミュニケーションもアンサンブルをやる上では重要なことです。

全員がそう、というわけではありませんが、個人でやれる練習や準備が足りてない箇所がいくつか見受けられました。合わせは楽しいですし大切ですが、以前にも書いている気もしますがアンサンブルというのはけっきょく個人技です。5人とも完璧に「楽譜通り」演奏できていれば合わせなんて確認で済むものです。これ以上のアンサンブルを望むのであれば、個人個人がもっと伸びる必要があります。それゆえMVPからは外しました。アンサンブルとしてクオリティが高いからこそ、個人が気になるものです。普通逆なんだけどね。

(ほぼ)同じメンバーで本番をこなしていくと生まれる無言のやり取りがもっとたくさんできるようになるといいですね!ヒンデミットとかダマーズなんか、その手のやりとりがないと成り立ちません。いかがでしょう?

 

7.プルミエソロ/ブルドー

バソンの演奏でした。「友人枠」で来て頂いたのですが、お仕事で何度もお世話になっている方のいつもと違う一面(?)を見れて僕はとても楽しかったです。

本当にバソンのお仕事できるんじゃないでしょうか・・・ぜひ出演情報お待ちしております。笑

 

8.ホルンとファゴットのための小協奏曲/ラハナー

実はアンサンブル部門MVP候補でした。

本来意外と溶けるのが難しいこの2本の楽器、確かに合わせの時は音色差が悪い意味で作用して三重奏としてはイマイチでしたが、本番は2人の音色がとてもよく寄り添うことができていて、音楽の方向性もレッスンで伝えたこともとてもよく理解し発揮してくれていました。本来はバランスが難しい編成だとも思いますが、ファゴットはしっかり鳴りホルンは優しい音色をうまくコントロールし聞こえたい音が聞こえたいように聞こえてくれていました。

ただ技巧的な部分でもっと音楽的であってほしかった。ホルンにその余力がなければファゴットがもっと先導してほしかったです。音楽のキャラクターはよく伝えていますが同じキャラクターの中にも方向性やおさめるところなんかがもっとたくさん見たい印象でした。

お2人がどのくらい仲がいいのかは存じ上げませんがとてもいいコンビでした。ピアニストへの乗っかり方も2人ともとても上手でした!この2人ならちょっとくらい破天荒な高音木管が一緒でも五重奏がうまくいきそうです。また一緒になにかやってください、待ってます。

 

9.ファゴットソナタヘ長調より1楽章/ドヴィエンヌ

音楽の組み立てがとてもうまくなりました。ちょっとくらい技術が不安定なところがあっても気にならないくらいよく組み立てられています。オケやアンサンブルでの君は僕はほとんど見たことがないけれど、どこでもそんな風に音楽の方向性を失わないように演奏していれば頼れるファゴット吹きでいられるでしょう。

よく楽器も鳴っていますが、「楽器のくせ」が悪い意味でよく出てしまっています。冒頭のCなんかは分かっていても不安定になりがちなようです。そこら辺はもう買い替え考えてもいいんでしょうね・・・そこは難しいところですが。これだけ日常で時間を使っている道具なのだから、お金をかける価値はありそうです。

技巧的な箇所に関して、もっと単純に楽器をもっと鳴らして音楽に方向性を持たせてほしく聞こえます。全くできてないわけではないのですが、よく回っている分もったいないですね。連符の頭だけ大きくて、後ろが小さい、ということが多いのは、ゆっくりさらっているときにそう吹いてしまっているからだと思います。速い音符こそ息をたっぷり入れるくせをつけましょう。

そろそろ歌う曲が聴きたいですねぇ。シューマンエルガー、フランスもので背伸びをするならタンスマンの組曲やボザのシチリアーノとロンドなんかも面白そう。今後も楽しみにしています!

 

10.ファゴットソナタ/シュレック

いやーーMVPをあげたかった!元々うたうのは上手でしたが、この曲を経てさらに上手になりました。分かりやすいようで絶妙に歌いづらい箇所の多いこの曲。ともすれば平坦な演奏になりがちなのですが・・・しっかりメリハリのついた演奏でした。

色彩感がとにかくずば抜けていました。ころころと色の変わる忙しい曲だから苦労したのだと思います。懸念されていたピアノとのアンサンブルも1日でほとんど解決して聞こえました。

総じて「きれい」な印象です。いい意味でもあるのですが、山が分かりづらくも聞こえます。どこか1か所に大きな山を設けるのではなく、中くらいの山をたくさん作ると人の心に多段的に届き感動するに至ります。山はもっとたくさんあっていい。小さい山はたくさんあるのですが・・・。

音の処理も抜群でした。「ここの処理を気を付ける!」という意思がよく伝わってきますしそういった箇所は本当に数晴らしかったです。が、音の処理(に気を付ける)箇所は小さく切り分ければ実はものすごくたくさんあって、気づけていない箇所も多いようです。処理があれば山ももっと生まれてくるかも。色彩感だけではなく、もっとシンプルな盛り上がりやおさめがあったほうが聴いていてワクワクする演奏になります。

そろそろフランスものが聴きたいなぁ。タンスマンとかケックランとか。曲に「届かない」感覚を味わったら化けるかも。結果として、届くことができれば、なおさら。

 

11.ファゴット協奏曲第1楽章/ロッシーニ

難曲を少ない時間でよく吹ききりました!この曲らしい奔放な雰囲気がよく出ている演奏だったと思います。

最近ほんとうにアゴーギグの使い方といいますか、そーいうのが本当に上手になりました。テクニックでねじ伏せているタイプの若い子たちにもとてもいい刺激になったんじゃないかなと思います。

音響などの影響もあるかと思いますが、高音域の響きや鳴りがもっと聴きたかった。楽に吹く部分はいいのだけど山場でその辺の音域に到達すると唐突に温度が下がって聞こえてしまいます。楽器が適切に鳴るポイントをもう一度確認し慣れ親しんでいくことが大切かと思います。

古典派独特の歯切れのいい速いタンギングがもっと身に付くといいですね。少しぼやけて聞こえてしまうことが多いようです。古典派が続いてしまうけど、次回とは言いませんがそろそろモーツァルトなんかも面白いんじゃないかなぁ。バロック作品もいいかもしれない。まだまだ「リベンジシリーズ」には早いかな。君が早いなら、誰も挑戦できない理屈になるんだけど。ファゴットにもレパートリーはたくさんあるから、未挑戦で大切な曲がまだたくさんですね。

それにしてもどこまで皆勤賞でいられるんでしょうか。笑 今後も楽しみです。

 

12.ファゴット協奏曲第2.3楽章/ロッシーニ

友人枠。でいいのか、ほんとうに。笑

それにしても「うまい子供」から「巨匠」へ日に日に近づいています。どうしたらそんな豊かな音がポンポン生まれるのか、と疑問に思ってる参加者がたくさんいることでしょう。

2楽章はもっと奔放というか、即興的なほうが僕の好みでした。聴いている人がニヤリとするような仕掛けがもっとたくさんあってもかっこいいんじゃないかなぁ。「教わってきた」感がないのが理想的。

3楽章はほんの一瞬の音の処理が気になるシーンがちょこちょこ見えました。実は3楽章は初めて聴いたんだけど、なんだか「忙しいフンメル」って感じですね。ほんと、とんでもない曲をとんでもないテンポで吹きますね。試験も頑張って!

 

13.演奏会用独奏曲/ピエルネ

数年ぶりの発表会、いかがでしたか?

曲調によく合った音色や発音ができています。難しいところも難なく吹けていますし強弱もよくついています。そもそも聴き映えのいいこの曲ですから、いい意味で吹いていて楽しいんだろうな、という好印象でした。

さて、それでも「素晴らしく感動した」という演奏には及びませんでした。それはどういった部分からくるのでしょうか。

例えばアーティキュレーションを中心とした楽譜に記載されている音楽への忠実さ、左手の親指や小指などの運指の正確さ、伴奏パートが頭にしっかり入っている上での精巧なアンサンブル、などという、ある種いちばんシンプルな部分がイマイチな印象でした。これは「曲を一生懸命練習すればよい」という要素ではなく、日常でどんなふうに楽器と向き合っているか、の姿勢がハッキリと音に出ます。いい加減な性格、とまでは言いませんが、楽できる部分は楽しよう、というところはありそうです。それは間違っていないのですが、運指や楽譜のことは「楽できる部分」ではありません。自覚はなくとも、習慣として向き合い方が良くないのだと思います。

まずは色んな譜面をレッスンに持ってきてください。合奏の譜面でも構いません。1曲でも多く楽譜にきちんと向き合っていけば、技術的にも持ってる音楽としても、挑戦できない曲はないくらいハイレベルな奏者になれると思います。

ウェーバーテレマンシューマン、ヴィヴァルディあたりの定番レパートリーに挑んでみましょう。その本番までに読んだ譜面の数と質で出来が決まると思います。来年の今頃には、大人たちを脅かす若手に育っていることを期待しています。

 

14.三重奏曲/プレヴィン

難曲をよく演奏しました!良くも悪くも、2人らしく生真面目な演奏に仕上がりました。それはつまらない演奏という意味ではなくとても丁寧な印象でした。雑にやると面白さがなくなる曲ですから、丁寧な印象はとてもいいことだと思います。

書いてあるリズムをそのリズムに聴こえさせる、という難しさをよく分かったうえで、工夫をたくさん垣間見ることのできる演奏でした。いい意味で音源などの先入観が強くないからこそできたことかもしれません。

さて、丁寧な一方、少し守りに入りすぎることが多く聞えました。合わせの複雑な箇所は守りに入ることも大切ですが、そのまま守りっぱなしなことが多く、聴いていてドキドキするようなポイントが少なくなってしまいました。少しずつズレてもいい、かっこよく!という意思が弱かった。僕もピアニストも色々言いましたから、消化しきれてないままの本番だったのかもしれません。ファゴットのソロはみんな、そこをうまく消化してくるのですが・・・相方がいる分、考えすぎてしまったのでしょうか。トリオというのは合わせるというよりは、攻め方を寄せ合うようなものです。もっと2人の内側からくる音楽がたくさん聴きたかった。相性が良すぎたのかもしれませんね。

丁寧なので、テンポ感もかなり後ろ目に聴こえてしまいました。もっと前にいく箇所を作り、丁寧な箇所も作り、という作業ができればよかったですね。発表会という性質上、ピアニストとたくさん合わせはできませんから個々からもっと発信してよかったかと思います。崩壊の危険性はゼロでしたが、その手の演奏というのは良いことばかりではないですね。2人とも、もっと攻めを覚えましょう。

 

15.演奏会用小品/ベルヴァルド

僕自身の演奏でした。

今回こそ本当に、自分の演奏はやめようかな、と思うほどに準備が間に合わない日々だったのですが・・・。そこは僕も経験を積んでいるようで、なんとかしました。なりました。なってましたか?

曲調は平和ですが技術的には平和ではないこの曲、みなさんぜひ挑戦してみてくださいね。

 

16.6つの三重奏曲より/ワイセンボーン

やはりファゴットアンサンブルといえばこの曲ですね。

よく知られた曲ですが、いい意味で先入観にとらわれず面白い仕掛けをたくさん楽しめる演奏でした。変に守りに入らず、それぞれが色々な挑戦をしていたことがとても好感触な演奏でした。

レッスンで「合って当然の同族アンサンブル」というお話をしましたが、当然、という領域以上によく合っていたと思います。同メーカー楽器というコンセプトが生きていたのだと思います。生きていた、とは思いますが・・・。もっと一致した何かが欲しかった。ヘッケルだけのアンサンブル、となると製造番号次第でずいぶん差が出てしまいますが、他社メーカーならその特性をもっと生かした何かが聞こえてほしかった。自分の楽器の良いところ、じっくり探してみましょう。

さて1楽章の事故について。偶然落ちた、と思っているのならそれは大きな間違いで、「数え」をおろそかにした結果の必然以外の何物でもないです。いつでも起きうる状態だったのはレッスンの時にも分かっていましたし、対策を取る必要についても説明しました。それでも起きたというのは、単純な準備不足です。ソロで落ちるのは、ピアニストはプロですからとやかく言いませんし勝手ですが、アンサンブルでやってしまうのは仲間の信用を著しく失う行為です。たまたま起きた事なら笑って許せるんですけどね・・。じゅうぶん反省しているかとは思いますが、偶然ではない、ということ、よく頭に入れておきましょう。

とはいえ、レッスン時に出来ていなかったことが危なげないレベルまで身に付いていたことも確かです。途中からはとてく安心して聴ける演奏でした。ファゴット吹きとしてはよく知っている曲でも、他の楽器の人は知らないことが多いですしウケも意外とよいこの曲の魅力、たくさん伝わったんじゃないかなと思います。まだまだ未開発なジャンルですから、またぜひファゴットアンサンブルに挑戦してみてくださいね。

 

17.ターフェルムジーク第1集第2曲/テレマン

バロックアンサンブル、というジャンルへの挑戦が僕はとっても嬉しかったです。普段音出しして遊んでいる事は聞いていましたのでどんな音がするか本当に楽しみでした。ファゴット通奏低音に使ってくれてありがとうございます。不便なことも多いのですが、奏者としては大切な演奏経験になったかと思います。

終始バランスに気を付けながら、というのは大変だったかと思います。成果はきちんと出ていて、会場の助けもあってか本番は聞こえてほしい音がよく聞こえていました。並びに関してはもう少し考えてみてもよかったかもしれません。聴こえづらいリコーダーを真ん中に置くと、単純に後ろに下がってしまうので余計に聴こえづらかったのかも・・・?アンサンブルのしやすさと聞こえの問題、バランスを取るのが難しいかとは思いますが。

バランスはよくなったのですが、即興性も含めて個々の音楽がもっとたくさん聴きたかったです。バロック時代の音楽は決して音を並べればいいだけのもではなく、むしろ古典派などと比べると感情的なものだと思います。単純なダイナミクスもそうですし、音の長さやアーティキュレーションなんかでもメリハリがつけられます。そういった工夫にまで手が届くとより素敵な演奏になったのではないでしょうか。次回また挑戦するときはそういったところにも工夫があるといいですね。なかなか大変なことも多いかと思いますが、また参加してくださるのを楽しみにしています。

 

18.アメリカーナトリオ/フェルナンデス

まずは面白い選曲をありがとう。この編成は以前取り組んだ事がありますが知らない曲でした。冒頭なんか一昔前の映画のオープニングみたいですよね。曲の雰囲気がよく出る演奏でした。レッスン時に指摘したバランスのことも改善され、合わせや個人の技術が難しい箇所も問題なくなっていたので、いい準備の時間を過ごされたようです。

個として一番伸びたのはクラリネットでしょうか。「アンサンブルは好きだけどどう吹けばいいか分からない」という印象でしたが、本番の演奏では一番負担の大きいトリオのクラリネットというパートをじゅうぶんに楽しめるところまで上達していました。アンサンブルは仲間と一緒にステージに立ちますが、結局のところ合わせる力も含めた個人技の見せ合いですから、それぞれの技術が伸びる以外に演奏をよくする手段はありません。難しいパートが多い楽器ですから、「自分がうまくなること」で他人とのアンサンブルをより楽しめるよう励んでいってください。

フルートが非常にうまく色彩感を出してくれました。拍子感やフレーズ感も素晴らしいのですが、長いフレーズで少し平坦になりがちのようです。もっと仕掛けを増やし、その仕掛けのための技術(発音や音量変化など)が身に付くようにするといいと思います。もともと持ってるセンスは素晴らしいので、もっと表現を大きくしかけるクセをつけると必要な技術がおのずと見えてくるかと思います。

ファゴットは長い音での鳴りと細かい音符での鳴りの差がとても気になります。長い音は鳴らしすぎず、細かい音符にたくさん息が入るよう練習しましょう。そのためには細かい音には丁寧な(ゆっくりなテンポでの)練習が必要不可欠なので、結果として長い音の扱いも上手くなるのではないでしょうか。

まだまだ伸びしろの多いメンバーかと思います。他の楽器を増やしてでもいいので、この3人の共演をまた楽しみにしています。名物トリオになりますように。

 

19.組曲「さんぽみち」/大石祥子

僕とゲストの杉田さん、ドルチェ楽器の渡邉さんとの三重奏でした。3人とも同門であり、同じ大学の出身者。僕と杉田さんは演奏の道、渡邉さんは楽器屋さんという道を選びましたがこうしてまた一緒に演奏ができたこと、僕ら自身とても幸せでした。客席にいた同門のNさんにもそれは伝わったようです。

こういった試みができるのも発表会運営の面白いところですよね。

 

20.パーティピース/スパーク

ユーフォニアム用の作品です。そのことが曲目解説(ひとこと欄)で説明されていてほしかったですね。

門下入りからもうすぐ2年ですか。だいぶ安定感が出てきました。テクニックはもちろんですがフレーズの歌い方はもう別人です。とても上手になりました。魅力的なメロディをきちんと魅力的に吹けるようになったこと、誇りに思って良いでしょう。

装飾音符の入れ方もとても自然で良いのですが、本来「不自然」である装飾音符を、どれもこれも自然に入れてしまうと平坦になってしまいます。「ここは少し特徴的に」とか、「ここは元の音符を重視して」とか、そういった変化がたくさん見えたら素敵だったなと思います。また、良くも悪くも正確に吹きたがる性格なようなので、裏目に出るとアゴーギグのない演奏になりがちです。ここは少し前、ここは少し収めて、みたいな計算がもっとたくさんあると、よりメロディの達人に近づけるでしょう。

上の話に近いですが、音色の操作ももっと見たかった。元々音色がすこし荒いためか綺麗に吹く方に意識が向いてしまい平坦になってしまいます。例えばどう吹いても荒い音の出ないリードでガツンと鳴らすような訓練をするとその逆も今以上にうまくなります。ぜひお試しを。

間違えたとき声を出すクセ、日常からなおさないとせっかくステージでオシャレしても無駄になってしまいます。気を付けて。

 

21.チェロソナタ第1番より1楽章/ヴィヴァルディ

復帰戦、お疲れさまでした!堂々としていてとてもよかったと思います。

拍手は最後まで浴びてから演奏準備に入りましょう。ひとりでステージに立つこと、そうそうないですが大切なことです。

演奏は思ってるようにできたのではないでしょうか?レッスンの時にも思いましたが、練習がとても丁寧で確実なものになっていると思います。そういった練習ができれば理論上どんな難しい曲にでも挑戦できます。挑戦はできます。

遅い楽章でしたが、もっとダイナミクスとしての山を聴きたかったです。大きい音、というより、「あぁここが盛り上がってるんだな」としっかり伝えることが大切です。あまり演奏されないレパートリーですからなおさらです。そこまで大きな会場ではないですが、会場いっぱいに自分の音が響き渡るような箇所がほしかったです。小さくまとまってしまわぬように。

「綺麗」なだけでは綺麗なものは綺麗に表現できません。メリハリあってこその音楽表現ですから、もっともっと表現のための技術を身に付けていきましょう。次はフォーゲルの協奏曲かシュターミッツの協奏曲、ミルデのアンダンテとロンド、あたりに挑戦してみると面白いかもしれません。古典派の軽快な音楽をぜひ楽しんでいただきたい。

 

22.2つの小品/フランセ

苦手なタイプの曲、という印象が全くなかったこと、誠意をもって取り組んだ結果で本当に素晴らしいことだと思います。「平坦にうたう」という事が少しは理解できたでしょうか。

楽器の鳴りのコントロールがもっとできるといいのかもしれません。一定の音だけとびぬけてしまう、ということが少しだけあります。この手の曲だとそれがとても浮いてしまうことがありますので、楽器をもっと自分の支配下におけるような訓練をしましょう。

紳士だのよっぱらいだのひょうきんだの、到底きみのキャラクターとは遠いものを僕もピアニストも押し付けてみましたが、きみなりに表現してくれたことがとても嬉しかったです。実際よくつかめていたと思います。その手のキャラクター表現のために我々は細かいテクニックを練習するのです。シーンごとのコントラストはとてもよくついていたので、同一フレーズ内でもっといろいろ変化があるといいですね。

とはいえとても難解な曲をよく理解して演奏しました。次は得意なやつ、びしっとやってほしいところです。

 

23.ファゴットと弦楽のためのディベルティスマン/フランセ

まずはメンバー集め、合わせの調整など、この曲をこの編成で演奏するに至ったこと、苦労が多かったと思います。お疲れさまでした。やはりこの曲は弦楽器とやってこそ、と思いました。ピアノで今後挑戦する人がいるかな・・・?

1stヴァイオリンとファゴットの絡み方は本当に見事でした。よくも(悪くも?)1stヴァイオリン中心にアンサンブルが進んでいくのは聴いていてとても安心できます。ファゴットは自分のことに集中できますからね。懸念されていたバランスも決して悪くはありませんでした。コントラバスが少し大きく聞こえてしまうのは会場のせいでしょうか(録音では分からないところですが)

さて一方で、2ndヴァイオリン、ヴィオラ、チェロはもっともっともっともっと主張が聴きたかったところです。皆さんの室内楽の経験値は知らないのですが、室内楽の弦楽器はもっと内声がゴリゴリ主張しないと立体感が出ません。ちょっとうるさいかな、というところで様子を見る、くらいでちょうどいいのではないでしょうか。ヴァイオリンやヴィオラに音量で消されるのはファゴットはあまり悪い気分はしません(弦楽器の音色の中に入って自分の音を響きかせるって本当に楽しいんです)から、もっと攻めるポイントがあってもよかったと思います。

ファゴットには四重奏(Fg.Vn.Va.Vc)や二重奏(Fg.Vc)、弦楽バックの協奏曲など、弦楽器とのレパートリーが実はたくさんあります。もしよければ、気に入った奏者に声をかけ別の曲にも挑戦してみて頂きたい。失礼ながらフルートやクラリネットとの室内楽のように主従関係がうまれず、いい意味で対等な音楽づくりにはファゴット相手は最適ですから。

 

24.ファゴット協奏曲第1楽章/フランセ、レシタティーヴォとアレグロ/ギャロン

今回のゲスト演奏でした。

うちの会に彼がゲストできてくれたこと、僕は本当にうれしく思いました。彼は僕の永遠のライバルなんです。たのしかったなぁ。

 

25.アンダンテとハンガリー風ロンド/ウェーバー

満を持して、といったところでしょうか?友人枠の演奏でした。

音色の操作が抜群にうまくなりました。以前は良くも悪くもいつも同じ(とてもいい)音色でコントラストをつけようとしていたのですが、今回は音色の操作が加わって立体的な音楽表現をたくさん感じることができました。年齢を重ねた、というのも大きいのでしょうか。

ダブル(トリプル)タンギングはじゅうぶんすぎるほど習得できたようです。習得して終わりのテクニックではなく、すぐ衰えるものですので合奏などで積極的に使うようにしておかないともったいないです。が、使うとシングルがどんどん衰えていくというジレンマ。ダブルを覚えた人すべてが陥ります。でもそれ自体を楽しめるようになると、面白いですね。

またハードル爆上げ役として演奏しにきてくださいね。

 

26.アリア作品7/ダマーズ

友人枠の演奏です。楽器の操作がとても上手になりました。曲が曲ですから少々分かりづらいのですが、楽器のポテンシャルの高さが(ようやく)見えてきました!すごいことだと思います。まだまだ未開発な楽器かと思いますので、今後も色んな面白いものをきかせてください。

「マイナーな曲を」とお願いしてきましたが、マイナーな曲は毎回誰かが持ち寄ってくるようになりましたので、逆に定番レパートリーに取り組んでもらうのも面白い気がします。誰かと同じ曲をぶつけても面白いですね(興味があれば曲がだいたい決まってきたころに情報を横流ししますよ)

次回も楽しみにしています。

 

27.ファゴット大協奏曲より第1楽章/フンメル

いつもレッスンでほぼ完成したところから磨いていく作業でしたが、今回はレッスンでは完璧に(!)未完成状態で、大曲ですからそのくらいでちょうどよかったのかもしれません。フンメルが大曲と呼ばれる難しさを、いい意味できちんと見せてくれる最高に僕好みの演奏でした。すこし力任せな部分はありますが、その「力」がないとできない部分の多い曲ですからむしろちょうどよかったとすら思います。

テンポの操作も見事でした。許容範囲ですし出すべき表現をきちんと出すうえで適切な操作を行っていました。何度でも繰り返し聴ける音源のようです。揺らぎによって生まれたピアニストとのズレに動揺しないメンタルがあればもっとよかった。ちょっとくらいのズレ、気になりませんし後から修正してくれますから自身は気にせず突っ走っていいのです。そこはもう少し合わせの経験を積む必要がありますね。

音色、というよりは響きの伸びがイマイチです。操作性重視のセッティングだったのかとは思いますが、小さな会場を埋め尽くすような響きの音は残念ながらほとんど感じられませんでした。難しい曲ですから、そこまで気はまわせなかったのかもしれませんが・・・そこはいわゆる基礎力というやつですから、最後にものをいうのは響きの量です。どうすればいいか、と言うと、「自分で思う最高にいい音」をいつでも並べるような練習、つまり、フンメルでやったような練習をいつでも行うことです。量ではなく質の問題として。

今回の演奏に至った自分の練習方法や音の掴み方を自信にして今後の演奏活動に活かしていってください。古典派意外と(?)よさそうだし、モーツァルトとかやってみたらどうでしょうか?さすがにレッスン1回じゃきついかもね。

 

28.幻想小曲集/シューマン

実は、なんていう必要もないくらいMVP候補でした。相手が悪かった。

殻を破った印象は全出演者中1番でした。今までできなかったレベルの音楽表現を習得しています。自覚がないのなら、今後の演奏活動で少しずつ自覚していく瞬間が訪れると思います。よく成長しました。

複雑なピアノとのアンサンブルもとても見事でした。ピアノ譜が頭に入ってないとそこまで丁寧には絡み合わないでしょう。ピアニストからこの日一番いい音が鳴って聴こえました。それを引き出したのは君のちからだと僕は思います。

さてこの曲の魅力の引き出し方、ピアニストのアンサンブル、これ以上ないクオリティを見せてくれましたが、足りなかったのは、君自身のファゴット演奏時代のこだわりでした。技術的に荒いわけではありませんが、鳴ってほしい音が鳴ってこない、発展してほしい音が発展してこない、ピアノの音に溶けたい音が溶けない、という箇所がそれなりに多くありました。曲の魅力を引き出すことと自分のファゴットの良さを引き出すこと、そのバランスをもっと取らないと、不自由の多いこの楽器で人の心に届く演奏はできません。本当にその点において、惜しかった。もっと自分のファゴットを、音を、愛してあげてほしい。

きつい曲もう十分やったし、楽しい曲やりませんか。ドイツ古典、ロマン派ものか、とにかく聴き映えのする作品を聴いてみたい。ダビッド、ベルヴァルド(やってみませんか?)、クルーセル、ブルドー、プレヴィン、あたり。ブラームスソナタも僕は好きなんだけど、あれはちょっと重いかな・・・

 

29.ホルン三重奏曲より第1楽章/ブラームス

レッスンでも言いましたが、本当にいいピアニストをつかまえました。いい奏者をつかまえる、いい奏者につかまえてもらう、どちらもそれだけで素晴らしいことだと思います。

ホルンはすこし手元で鳴ってる音を重視した吹き方に聴こえます。それが何によって起きてる事なのか僕には分からないのですが・・・間違いなくいい音が鳴っているのですが、ホールの響きが加わるといわゆる「うまいホルン」と差が出てしまうかもしれません。1m以上離れた距離で人に聴いてもらう。これだけで楽器を習うことにメリットはありますから、少し考えてみてもいいかもしれません。そこまで時間もお金もかからないですからね。でも厄介なこの曲をよく理解しいい流れを作ってくれていました。音の種類として、ブラームスにピッタリだったように思います。ただ、もしかしたらライネッケ(Ob.Hn.Pfのトリオ)なんかだと浮いてしまうかもしれません。難しいですね、金管楽器というやつは・・・。

ヴァイオリンからは「習い事」をどうしても感じてしまいます。いいメンバーに乗っかって弾くことは楽ですし気持ちのいいものですが、三重奏、という小さな編成でそれだけでは通用しませんし、周りは気持ちよくはなれません。多少強引でズレていてもいいから我を通す、という能力が絶対に必要です。それが苦手なのはわかりますが、その能力はファゴットコントラバスといった縁の下のナンチャラ楽器にも必要な能力ですから、楽器は関係ないのかもしれません。合奏とは得られる満足感も難しさも全く違う室内楽というジャンルに取り組むには、我を通すだけの力を身に付ける必要があります。3人で一緒に、という箇所で出てる音を一人でも鳴らせれば、それだけでひとまわりもふたまわりもよく聴こえると思います。鳴らせないわけじゃない、鳴らしにいけない、という印象です。合わせでどうにかする、というのは卒業し、まず自身が説得力を持つことです。

 

30.ソナタK292より「アンダンテ」/モーツァルト

ステージマナー、完璧でした。毎回指摘しているところですが、今回こうもビシッとするとは。奏者としての自信がついてきた、というのも影響している気がします。

「いっぱい練習してできるようになる」以外のことをたくさんたくさん学ぶことができましたね。曲の面白さに感謝しましょう。そうしてみんな、クラシック音楽にハマっていくんですね。

つねに綺麗な音のならぶ曲のようですが、実際はかなりビックリさせてくる音楽なのがモーツァルトです。コントラストはついていますが、音色が一辺倒なため、やろうとしていることの3~4割しか客席には聴こえてきませんでした。例えば「大きい」「小さい」のほかに、「豊か」「控えめ」のような要素がコントロールできるようになるといいですね。とはいえ、きれいに吹く「責任」のあるこの曲の魅力を今できる範囲で精一杯表現してくれたこと、僕はとても嬉しく思いました。

次はそろそろ、ウェーバーでしょうか。背伸びに思うかもしれませんが、今回すこし、技術的に楽をした分そろそろ頑張ってみてもいいかもね。きつければ、テレマンソナタfmollやブルドーのプルミエソロあたりもいいかもしれません。ちょっと聴いてみておいてくださいね。

 

31.Soft Swing Music/Voert

映像を見るとわかるかと思いますが、4人ともすごくいい顔しています。ファゴットアンサンブルって、ほんとに面白いですよね。

ちょろっと話しましたが「合って当然の同族アンサンブル」の魅力をこれ以上なく発揮した演奏だと思います。ちょっとしたプロの演奏でもこうはいきません。それは4人ともがファゴットアンサンブルを限りなく楽しんだから、だと思います。楽しんでいいんです、アンサンブルは楽しんでなんぼ、楽しみ方を磨いていく、そんな風に考えていってください。

コントラを用いない四重奏の課題は4thの低音ソロ時のバランスですね。聴こえない、というほどではないですが、そこに限ってバランスが少し悪かった。4thは鳴らすこともそうですが聴こえさせる吹き方、みたいなものができるとよかったですし、上3人は歌うけど響きの少ない音、みたいな操作ができればバランスが取れたかな。同族だからこそ、バランスというものはいつでもこだわっていてほしいものです。

日常的にめいっぱいファゴットアンサンブルを楽しんで、そのレベルで他編成のアンサンブルや合奏も楽しめれば、演奏活動は無限におもしろくなっていきますね。面白おかしく吹くための技術をそれぞれが磨いていけますように。コントラ入りのファゴットアンサンブルもぜひに。楽器はあるからね。

 

32.ファゴットソナタfmollより1.2楽章/テレマン

単純にファゴットがうまくなった、という話では圧倒的にMVPです。初めて会ったころからは別人のように上手になりました。今回覚えた楽器の鳴らし方はぜったいに忘れないで。よく響く音をコントロールする力は自分で思っている以上にハイレベルかと思います。

短調の曲らしい「泣き」の部分がもっと聞きたかった。自分の演奏で鳥肌が足りますか?鳥肌を感じるような音楽表現って、どんな風にするといいのでしょうか。決してバカでかい音や蚊の鳴くような小さな音をコントロールすることではありません。楽器のコントロールは身に付きましたから、それを面白い音楽に結びつける力を今後は身に着けていけるようになりましょう。

速い楽章では和声感が不足して聞こえました。和音はどのように動いているか、その中で自分の旋律はどう響くと気持ちいいのか、考えるか感じるか、してほしかった。通奏低音のパートはどのくらい吹いてみましたか?あまり吹いていないのではないでしょうか。「ちょっとここ吹いてみてよ」と声をかけられるファゴット吹きの友人が、もしいなければ作りましょう。ファゴット吹きは群れてこそです。とはいえ楽器の鳴りの良さと質のいい練習による安定したテクニックで安心して聴ける2楽章でした。「なんでか吹けちゃう」という状態までこれた自分の練習方法に自信を持ってほしい。それこそが僕の門下の真骨頂かと思います。

社会人になってから伸びる子が多い門下です。今後も無理しない程度に、面白い曲にたくさん挑戦していってくださいね。

 

33.ファゴット協奏曲2.3楽章/モーツァルト

セッティングが解決してよかった。そこについては、長いものには巻かれてみるものです。それのおかげ、と自分では思っているかもしれませんが、音をコントロールする技術と練習方法によるところが大きいと僕は思います。今後この発表会で君の2楽章以上のモーツァルトが聴けることがあるのでしょうか。ただトリルはもっとこだわって。終わりよければすべてよし、にならないのがクラシックですが、キメがイマイチだと台無しです。

音の響き方が抜群に良かったです。ただ君のいい音は練習して工夫して考えてようやく出てくるものです。理想を言えば、いつ吹いても今回の2楽章みたいな音が出てくるようになってほしい。音色の良しあしなんて曲によってまるで違うものですが、基本的に持ってる音が少し荒いのをもう少し気にして音出しをしてほしい。

3楽章はよくさらったな、と印象。そこはもう卒業しませんか。拍子感だのフレーズ感に問題があるわけじゃない。ただ「うまい」というより「さらってある」という印象です。以前の低いレベルにおいては、そこは君の長所だったのですが・・・。そのためには、今日だけ「さらってある」ではなくて、いつでも「うまい」という事が大切です。譜面の数をさらうこと。別に大して重要でない譜面を今回の本番並みのクオリティでさらうこと。その積み重ねに「安定感」のある「うまい」があると僕は思います。

つぎこの発表会に出るときは、「うまい演奏」を期待しています。

 

34.木管五重奏曲1.2.4楽章/ホルスト

名曲なのによく聴かせるのが難しい、というタイプの曲でしたね。それでもアンサンブル的な問題点はよく解決してあり、木管五重奏としては実はとてもハイクオリティな演奏だったと僕は思います。テンポの変化、ダイナミクス、基本的なバランス感覚、どれを取ってもかなりレベルが高かった。

しかし気になるのは個人としてのズレ。音色感であったり、向かいかた(クレッシェンドなどの量やペース)、同じ旋律の吹き方など、本来アンサンブルで一番楽しみたい部分にズレが多く、本来のクオリティの高さがそこに埋もれてしまう演奏になってしまっていました。ひとりひとりを取り出せばかなりレベルが高いのですが・・・。そういった意味ではもう一つの木管五重奏と真逆のタイプ、と言えるでしょうか。

特に今回のような会場(管楽器の演奏家のためにできている音響)だと、よく聞えるようにできていますから、出ている音が自分と客席で感じ方がまるで違います。それは本来会場など関係なくあるものですから、我流と習い事で一番ギャップがうまれてしまう部分です。想像力で補うことには限界がありますよね。

音楽の流れはオーボエが非常にうまく繋いでいました。オーボエを核とする木五は少なくないですが、集まるにはちょうどいい楽器ですからその方向でいいのかもしれません。逆に言うとオーボエが楽に吹ける環境をフルートやクラリネットは作りに行く必要があるかもしれません。

ホルンは聞こえてほしいところにガツンと聞こえてくれる大変いい仕事をしてくれますか、引いたときに存在感がなくなりすぎる傾向にあるようです。確かにそこにあるけどうるさくない、みたいな存在感が木管五重奏では必要不可欠かと思いますので研究してみると面白いかもしれません。

少しずつメンバーが変わりながらも継続してる木管五重奏があることをすごくうれしく思っていますので、今後もぜひ継続していってくださいね。

 

35.協奏組曲より2.4楽章/ヴォルフ=フェラーリ

テクニックとしての安定感がすごくついてきました。この安定感を一般的に「うまい」と呼ぶのだと思います。一番足りなかった部分ですから、身に付いて本当によかった。安定してくると気になってくるのが、ブレス明けの事故の多さ、休符や伸ばし時の拍感、ちょっと厄介な箇所の音程など、「ひびわれ」のような事故の多さです。以前のような「惜しい演奏」ではなくなったからこそこういったひびわれを減らす努力が大切なかと思います。そのためには日々向き合う譜面への取り組み方の改善、効率のいい演奏法の習得(=エチュードや基礎のレッスンにくること)が必要不可欠かと思います。すでにそれらには取り組んでいるかと思いますので、その線でいけば大丈夫です。

今回わりと速い楽章2つに取り組んでいましたが、技術的に忙しい箇所にももっとたくさんコントラストをつけようとしてほしかった。拍子感やフレーズ感はじゅうぶん見えるようになったのは進歩ですが、山や谷がハッキリ言ってまったく見えない演奏でした。確かに2楽章はピークの分かりにくい音楽ではあるのですが・・・。長さ、大きさ、音色の操作など、コントラストをつける方法はたくさんあります。

今後はそういったコントラストが必要不可欠な曲に取り組むと面白いかと思います。ウェーバーの1楽章、ヴィヴァルディやドゥビエンヌなどのバロック作品のメジャーどころも面白いかもしれませんね。

 

36.組曲/タンスマン

実はトリ候補でした。体調不良なども加味して避けまして、トリの前、という曲順にさせてもらいました。

打ち上げ以降、ほうぼうから「タンスマンの組曲を(いつか)やりたい」という声を聞きます。今回の演奏が名演であったことを僕が語る必要がないようです。皆の評判は正直なものです。

表現が思いのほか難しい曲ですが細かいところまでよく手が届いていたと思います。曲の面白い仕掛けをきちんと面白く演奏する、というのは難しいことなのですが、その点はまったく問題のない演奏でした。

安定感のある演奏である一方、すこし守りに入りすぎるシーンの多い印象でした。カデンツァのような箇所のテンポ変化はもっと積極的にほしかったし、クレッシェンドなどももっとゴリゴリかけてほしかった。技術的にそれができないわけではないですから、気持ちとして守りに入ったことが原因かと思います。守りに入ってもうまくいくわけではないですから、基本的には攻め続けるものなのだと思います。今後はぜひ攻めの姿勢で。

吹いててどう感じたかは分かりませんが、ホール映えのするいい音でした。ピアノともよく溶けていましたので、今回のようなサウンドを意識していくとちょうど良いでしょう。バロック作品なんかは、そういった音色感を意識して演奏すると面白くなると思いますので、次回ぜひバロック作品を。また楽しみにしています!

 

37.ファゴット協奏曲1楽章/ウェーバー

ほんと会うたびよく伸びるなと思います。トリを振ってから1~2か月、どれだけプレッシャーに感じたか。でもそれもぜんぶ僕の思惑通りで、きちんと吸収し力に変えてくるあたり、君の類まれなるセンスを感じます。ほんとうにすごいことです。僕との相性もいいんじゃないかなーと(僕は)思います。

あまりこういった表現は僕好みではないのですが、女性的な感性と男性的な感性を切り替えながらうまく使い分けられる力を持っています。今後は使い分けではなく、同時使用を心掛けると面白いかも。思い切りのいい演奏はこの曲にピッタリですが、どこか冷静な部分を残りしておくと安定するだけでなく、実はより情熱的に聞こえることもあるのです。例えば低音の不安定さはそれだけで解決したのではないでしょうか。

テノールのアリアのように」「バリトンのアリアのように」は大成功と言っていいと思います。ひいき目なしに、史上最高クオリティの1楽章でした。みんなそれぞれ面白いセンスを持っていますが、そんなセンスにあふれた天才たちが今回の君のウェーバーに嫉妬していたので、そんな君をトリにし僕の判断は正しかった(でも泣かれると動揺するよ別にいいけど)

長い音のうたいかたがあまり得意でないようです。オケなどでわき役としての長い音ではなく、ソリストとしての長い音の処理やビブラートのかけかた、研究してほしいところ。また、和音の動きを技術的に忙しいところでもっと表現、というより楽しんでほしかった。そこが本当に惜しくて、吹けているし楽器も鳴っているんだけどイマイチ届いてこないんです。和音の動きはオケが出す前にこちらがキッカケづくりをしているが多いので、オーケストラ全パートとアンサンブルを楽しめるような音並べができるとより面白い演奏になったと思います。

今回にあじをしめて、「よくみんなやる曲」テロに挑戦してほしいなぁ。シューマンテレマン、ヴィヴァルディ、ドゥビエンヌ、ブルドー、タンスマン・・・いくらでも曲の候補は出てくるね。その手の名曲で、ほんの少しの冷静さが発揮できると、また一皮むけるんじゃないかな。

 

 

2万文字越えですか。これを全部(過去記事まで)読む人種がいることを最近しってびっくりしています。僕はあまり日本語がうまくないので恥ずかしいのですが・・・。

みなさん本当にお疲れさまでした。こうしてみんなの演奏を振り返るのが毎回とても楽しくて、どうしても情報量ばかりが多くなってしまいます・・・・・。笑

次回もまた、たくさんのドラマを作りましょう。