ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第13回発表会でした。総括と各奏者・団体への講評とか、次回のこととか。

こんにちは。またまたお久しぶりの投稿になってしまいました。

「ブログ」って名称はいいですね。「web日記」だったら日記の体裁を保ててないのでもうやめてしまっているかもしれません。笑

 

先日、年3回行われている僕の生徒たちの発表会が行われました。

生徒たちによるファゴットソロ演奏と、僕のレッスンを受けたアンサンブル団体による演奏を中心とした発表会です。初期のころはソロばっかりだったのですが、ここ最近はアンサンブル団体が増えてきてバリエーション豊かなプログラムとなってきました。

11時に開演し19時に終演。すごく長いようですが僕としては教えたことをどうやって消化して本番にのぞむのか、とても楽しみな時間です。出演者同士も終演後に互いの演奏を認め合う、とても素敵なコミュニティになってきました。認め合ううちにアンサンブル団体が結成されたり。

今回はドルチェ楽器東京のサロンをお借りしました。なかなか使うことのできない会場を使えるようになったのも、これだけたくさんの人に参加してもらっているからだと思っています。出演者のみなさま、本当にお疲れさまでした。

 

発表会そのものが「レッスン受けて人前で演奏すれば誰でも手っ取り早くうまくなるからやってみよう」というコンセプトです。レベルは初心者から音大生顔負けな子まで様々です。それぞれ色んな環境で楽器に取り組んでいますが、一人残らず別人のようにレベルアップしていきます。そういったコミュニティを築き上げることができたこと、とても嬉しく思っています。今後もとても楽しみ。

 

f:id:torakitsune:20181204034407j:plain

第13回発表会の集合写真です。50人越えの出演者たち。

 

さて、次回発表会のお知らせです。

2019年3月24日(日)お昼ごろ開演

アーティストサロン"dolce"東京(新宿駅西口より徒歩5分)

以下の出演者、募集しております。

ファゴットソロ演奏

ファゴットのソロを演奏して頂きます。僕のレッスンを1回以上受けて頂ければどなたでも演奏参加して頂けます。参加費にレッスン1回分を含んでおります。

・アンサンブル演奏

2重奏~8重奏程度のアンサンブルでの演奏をして頂きます。僕のアンサンブルレッスンを1回受けて頂ければどなたでも演奏参加できます。こちらも参加費にレッスン1回分を含んでいます。

参加費はファゴットソロが14000円(学生10000円)、アンサンブルはひとり6000円(出演人数によって割引あります)です。

詳しくは

発表会参加・お問い合わせフォーム

までご連絡ください。参加申し込みもこちらから。お待ちしております。

 

さてここからは、恒例といいますか、各演奏の講評となります。

出演者以外には興味のない記事になるかと思います、が、意外と出演者以外でも講評まで読む方がけっこういるようです。なんだか恐れ多いような・・・。

 

1.ファゴットソナタ1.3楽章/シュレック

忙しい日程のなかお疲れ様でした。以前までの君を知っている子たちが口々に「とてもうまく(よく)なった」と言っています。僕もそう思います。

細かいテクニックであるとか音楽であるとか、日々レッスンで伝えていることが身についているのも確かですが、人の印象が変わるほどの変化がようやく(?)訪れたようです。それはきちんと向き合ってきたからこその大きな成果なので、自信を持ってほしいです。

力まかせな部分はまだ抜けないようです。「こう吹きたい」が先行すると音程だのリズムだのがよそへ行ってしまう傾向はまだまだ改善する必要があります。「こう吹きたい」と吹くのではなく、物理現象として自分の音がどう変わっているか気にしながら練習するようにしてください。楽器の演奏というのは心のうち5割くらいは冷静でいないとできません。今回印象が変わったのは、冷静であったからではなく適切な吹き方をなんとか習得できたから、です。冷静ささえ身に付ければもっと化けるんじゃないかなと思います。

レッスンでかなり厳しく言ったリズムのことは、付け焼刃ではありながらもよくなりました。これも「こう吹いているつもり」ではなく「こう聴こえている」のを大切に。

ピアノとの絡みがかなり複雑ま曲でしたが、ピアニストのおかげもありますが大きなズレは感じませんでした。以前までなら、もっとズレていたでしょう・・・。「きれいな曲」というのは大変なものですね。次はもう少し、聞き映えといいますか、テクニックを音楽が両立するような選曲ができるといいかもしれませんね。その辺はまたレッスンで。次はピアノともっと深く絡み合う曲が面白そうですね。ソナタものをぜひもう1曲。そろそろ若い子にあこがれてもらいましょう。

 

2.ファゴット協奏曲1楽章/シュターミッツ

初参加お疲れ様でした。

練習量でねじ伏せる!というよりは、なにかと考えて練習する必要のあるこの曲を選ぶとみんなとてもよく成長します。単純な奏法もものすごくよくなりました。小さな音、大きな音、をきちんとコントロールするテクニックがついたので、忘れないよう日々の練習で今自分はフォルテなのかピアノなのか、考えながら吹くようにしましょう。

トリルはもうひとつ、といったところでした。「なんとかごまかす」ところまでは練習出来ているのですが、旋律としてきれいに入れるのはもう少し訓練が必要でした。ここまでトリルがたくさん出てくる曲もなかなかないものですが・・・。

少し発音があいまいな箇所が時折見受けられます。きれいな発音とあいまいな発音は似ているようでけっこう違います。特に古典ものはハッキリ発音しないといけないところがたくさんあります。ハッキリ発音、柔らかい発音、がしっかり使い分けられるように。その2種類とスラ―を組み合わせるだけでずいぶんと色彩感が出てくるものです。

難所はよく練習しました!本番で危なげなくできたことはいい練習時間を過ごしたということです。その感覚を忘れず、今後に生かしていってください。

さてカデンツァ。楽器のトラブルについてあまり世話してあげられなかったことは申し訳ありませんでした。それにしても、出ないものは出ません。カデンツァであっても音楽は続いていますから、吹きなおすのではなくそのまま先にいくしかありません。それは初めてのソロ舞台ですから分からなくてもしょうがないので、今後は同じことがあっても出なければ先へ。と言っても、何度も何度も取り組む姿は決して格好の悪いものではなかったんだけどね。性格がよく出ています。あ、もちろんそれについては、ピアニストの援護への感謝も忘れないように。

今後も楽しみにしています。早めに取り組めるのであれば、ウェーバーの協奏曲に挑戦しましょう!

 

3.無伴奏組曲より「ブーレ1.2」/バッハ

復帰戦お疲れさまでした。自分の演奏を人に聴いてもらう、という喜びはじゅうぶんに味わえたでしょうか?

状態のいいとは言えない楽器だとは思いますが、苦にせずきちんとコントロールして吹けていました。音程もリズムも決して悪くありませんでした。ただもっと音楽そのものに積極的でいてほしかったです。「明るい」「暗い」はよく伝わってきましたが、それ以外のなんというか、指向性といいますか、向かう、収める、みたいなものがもっとたくさん聴きたかった。そういったものを作りあげる余力はまだ感じました。

チューニングから演奏開始が早すぎます。聴いている人にも準備があります。チューニングを終えたら目をつぶり、演奏後の清々しい気持ちを想像して、目を開け、ピアニストに目配せをし演奏開始、くらいの間があっていいものです。あれだけ丁寧に始まったアウフタクトがもったいないです・・・。

あとはソロの舞台というのは完全なる「非日常」です。それを楽しむには、やっぱり「おめかし」なのかな、と思います。いつも素敵なオシャレをしていると思いますが、非日常を楽しんで「私なんて」と思わず、気分の乗るオシャレをしてステージにあがってほしいものです。

今後も楽しみにしてます!オケや吹奏楽への参加がハードルが高ければ、ソロに加えて簡単な曲でいいのでアンサンブルに挑戦してもいいかもしれませんね!それはまた、相談しましょう。

 

4.チェロソナタ第2番より1.2楽章/ヴィヴァルディ

始めた会ったころからは別人、と、毎回言ってますが今回で完全体ですね。1年ちょっとですか、社会人でよくここまで成長できました。

難しい「はず」な箇所を難なく通り過ぎることができるようなる感覚、病みつきになりませんか?いい練習をすれば、それは無限に味わえます。だから楽器、やめられないんですね。

元々持っている音色がとても綺麗です。音程や音質もよくなってきたので、良くも悪くも「それで終わり」になりがちです。いい音色でいい音程、おかしな音もしない、でも起伏もない・・・といった印象があります。その音でもっと、音楽に流れを作りましょう。レッスンでも少しずつは提案してきたはず。「こうはならないように」は全部できていますが、「こうするとより良い」はすぐ忘れてしまうようです。

もう君のファゴットは下手ではありません。だからこそ、もっといい音楽が聴きたいですし、「もっといい音楽を奏でたい」という欲を持ってほしい。今回の演奏は、今までの悔しさがぜんぶ消し飛ぶほどよかったのですが、ここで満足せず、今回のクオリティを「最低ライン」に持っていけるように、また一緒に頑張りましょう。

「下手じゃない」で終わらず、「うまい」「かっこいい」「あこがれる」演奏を目指して。次回は、今回たくさん聴いた中で、好きな曲があればぜひそれに挑戦しましょう。

 

5.ファゴット協奏曲ホ短調より1楽章/ヴィヴァルディ

ほんと、最後のレッスンでどうしようかと思った。笑 決して練習していないわけじゃない、でも僕に会う前の悪い練習グセがどうしても抜けていなくて、今回いちばん心配していました。前奏がはじまって、「えっうそこのテンポはまずい」とさらに青ざめました。

君の持っている性質なのだろうけど、「なんとかする」力をすごく持っています。そこに適切な練習がほんの少し(日にちにしてほんの少し、密度はとても高かったのでしょう)乗っかって、今回の演奏にこぎつけた、という印象です。なぜその練習を最初からしなかったのか・・・!!と思いますが、みんなそうですし、僕も若いころそうだったので、仕方のないことなのでしょう。

とにかく最後のレッスンから比較して「本番いい演奏だった」自覚はお持ちでしょうか?持ってなかったら、捏造でいいので持ってください。直前ではありますが、とてもいい時間を過ごしたのだと思います。

「なんとかした」ことだけではなくて、曲のカッコよさはきちんと引き出せていたことに、とても驚きました。なるほど君はこの曲が大好きなんだな、というのもよく分かりました。今回のことで色んなことを掴んだと思います。単純にとてもうまくなったとも思います。今回みたいな練習を、次回は最初からしましょう!それが身につけば、ファゴットを吹くのがいまの10倍楽しくなるかと思います。今回のような練習を、曲だけではなく、(譜面の)数たくさんやることです。そのためにエチュードというのは無理なく効率よく練習ができる素材だと思いますので、時間見つけて練習しぜひレッスンに持ってきてください。

今後も楽しみにしています。そして、やっぱりウェーバーに挑戦してほしい!

 

6.木管五重奏曲/ニールセン

大曲、お疲れさまでした!前にも言った通り、僕は木管五重奏のレパートリーの中でもっともこの曲が好きです。大変さもよく分かっています。この木五の圧倒的にいいところは、単純に「聴こえてほしい音」がきちんと聴こえるバランス感覚です。アンサンブルを楽しむ術を5人ともよく知っていて、それは本当に素晴らしいことだと思います。それを生かしこの大曲の音楽をよく表現していました。

朝一で合わせをしてから来たのでしょうか?ホルンは調子が良くなさそうでした。木管五重奏の要はホルンです。朝一の合わせはホルン奏者の調子と相談して決めることです。また奏者自身も、自分の調子をととのえるためにもよく考えて時間を使うようにしましょう。そういったコミュニケーションもアンサンブルをやる上では重要なことです。

全員がそう、というわけではありませんが、個人でやれる練習や準備が足りてない箇所がいくつか見受けられました。合わせは楽しいですし大切ですが、以前にも書いている気もしますがアンサンブルというのはけっきょく個人技です。5人とも完璧に「楽譜通り」演奏できていれば合わせなんて確認で済むものです。これ以上のアンサンブルを望むのであれば、個人個人がもっと伸びる必要があります。それゆえMVPからは外しました。アンサンブルとしてクオリティが高いからこそ、個人が気になるものです。普通逆なんだけどね。

(ほぼ)同じメンバーで本番をこなしていくと生まれる無言のやり取りがもっとたくさんできるようになるといいですね!ヒンデミットとかダマーズなんか、その手のやりとりがないと成り立ちません。いかがでしょう?

 

7.プルミエソロ/ブルドー

バソンの演奏でした。「友人枠」で来て頂いたのですが、お仕事で何度もお世話になっている方のいつもと違う一面(?)を見れて僕はとても楽しかったです。

本当にバソンのお仕事できるんじゃないでしょうか・・・ぜひ出演情報お待ちしております。笑

 

8.ホルンとファゴットのための小協奏曲/ラハナー

実はアンサンブル部門MVP候補でした。

本来意外と溶けるのが難しいこの2本の楽器、確かに合わせの時は音色差が悪い意味で作用して三重奏としてはイマイチでしたが、本番は2人の音色がとてもよく寄り添うことができていて、音楽の方向性もレッスンで伝えたこともとてもよく理解し発揮してくれていました。本来はバランスが難しい編成だとも思いますが、ファゴットはしっかり鳴りホルンは優しい音色をうまくコントロールし聞こえたい音が聞こえたいように聞こえてくれていました。

ただ技巧的な部分でもっと音楽的であってほしかった。ホルンにその余力がなければファゴットがもっと先導してほしかったです。音楽のキャラクターはよく伝えていますが同じキャラクターの中にも方向性やおさめるところなんかがもっとたくさん見たい印象でした。

お2人がどのくらい仲がいいのかは存じ上げませんがとてもいいコンビでした。ピアニストへの乗っかり方も2人ともとても上手でした!この2人ならちょっとくらい破天荒な高音木管が一緒でも五重奏がうまくいきそうです。また一緒になにかやってください、待ってます。

 

9.ファゴットソナタヘ長調より1楽章/ドヴィエンヌ

音楽の組み立てがとてもうまくなりました。ちょっとくらい技術が不安定なところがあっても気にならないくらいよく組み立てられています。オケやアンサンブルでの君は僕はほとんど見たことがないけれど、どこでもそんな風に音楽の方向性を失わないように演奏していれば頼れるファゴット吹きでいられるでしょう。

よく楽器も鳴っていますが、「楽器のくせ」が悪い意味でよく出てしまっています。冒頭のCなんかは分かっていても不安定になりがちなようです。そこら辺はもう買い替え考えてもいいんでしょうね・・・そこは難しいところですが。これだけ日常で時間を使っている道具なのだから、お金をかける価値はありそうです。

技巧的な箇所に関して、もっと単純に楽器をもっと鳴らして音楽に方向性を持たせてほしく聞こえます。全くできてないわけではないのですが、よく回っている分もったいないですね。連符の頭だけ大きくて、後ろが小さい、ということが多いのは、ゆっくりさらっているときにそう吹いてしまっているからだと思います。速い音符こそ息をたっぷり入れるくせをつけましょう。

そろそろ歌う曲が聴きたいですねぇ。シューマンエルガー、フランスもので背伸びをするならタンスマンの組曲やボザのシチリアーノとロンドなんかも面白そう。今後も楽しみにしています!

 

10.ファゴットソナタ/シュレック

いやーーMVPをあげたかった!元々うたうのは上手でしたが、この曲を経てさらに上手になりました。分かりやすいようで絶妙に歌いづらい箇所の多いこの曲。ともすれば平坦な演奏になりがちなのですが・・・しっかりメリハリのついた演奏でした。

色彩感がとにかくずば抜けていました。ころころと色の変わる忙しい曲だから苦労したのだと思います。懸念されていたピアノとのアンサンブルも1日でほとんど解決して聞こえました。

総じて「きれい」な印象です。いい意味でもあるのですが、山が分かりづらくも聞こえます。どこか1か所に大きな山を設けるのではなく、中くらいの山をたくさん作ると人の心に多段的に届き感動するに至ります。山はもっとたくさんあっていい。小さい山はたくさんあるのですが・・・。

音の処理も抜群でした。「ここの処理を気を付ける!」という意思がよく伝わってきますしそういった箇所は本当に数晴らしかったです。が、音の処理(に気を付ける)箇所は小さく切り分ければ実はものすごくたくさんあって、気づけていない箇所も多いようです。処理があれば山ももっと生まれてくるかも。色彩感だけではなく、もっとシンプルな盛り上がりやおさめがあったほうが聴いていてワクワクする演奏になります。

そろそろフランスものが聴きたいなぁ。タンスマンとかケックランとか。曲に「届かない」感覚を味わったら化けるかも。結果として、届くことができれば、なおさら。

 

11.ファゴット協奏曲第1楽章/ロッシーニ

難曲を少ない時間でよく吹ききりました!この曲らしい奔放な雰囲気がよく出ている演奏だったと思います。

最近ほんとうにアゴーギグの使い方といいますか、そーいうのが本当に上手になりました。テクニックでねじ伏せているタイプの若い子たちにもとてもいい刺激になったんじゃないかなと思います。

音響などの影響もあるかと思いますが、高音域の響きや鳴りがもっと聴きたかった。楽に吹く部分はいいのだけど山場でその辺の音域に到達すると唐突に温度が下がって聞こえてしまいます。楽器が適切に鳴るポイントをもう一度確認し慣れ親しんでいくことが大切かと思います。

古典派独特の歯切れのいい速いタンギングがもっと身に付くといいですね。少しぼやけて聞こえてしまうことが多いようです。古典派が続いてしまうけど、次回とは言いませんがそろそろモーツァルトなんかも面白いんじゃないかなぁ。バロック作品もいいかもしれない。まだまだ「リベンジシリーズ」には早いかな。君が早いなら、誰も挑戦できない理屈になるんだけど。ファゴットにもレパートリーはたくさんあるから、未挑戦で大切な曲がまだたくさんですね。

それにしてもどこまで皆勤賞でいられるんでしょうか。笑 今後も楽しみです。

 

12.ファゴット協奏曲第2.3楽章/ロッシーニ

友人枠。でいいのか、ほんとうに。笑

それにしても「うまい子供」から「巨匠」へ日に日に近づいています。どうしたらそんな豊かな音がポンポン生まれるのか、と疑問に思ってる参加者がたくさんいることでしょう。

2楽章はもっと奔放というか、即興的なほうが僕の好みでした。聴いている人がニヤリとするような仕掛けがもっとたくさんあってもかっこいいんじゃないかなぁ。「教わってきた」感がないのが理想的。

3楽章はほんの一瞬の音の処理が気になるシーンがちょこちょこ見えました。実は3楽章は初めて聴いたんだけど、なんだか「忙しいフンメル」って感じですね。ほんと、とんでもない曲をとんでもないテンポで吹きますね。試験も頑張って!

 

13.演奏会用独奏曲/ピエルネ

数年ぶりの発表会、いかがでしたか?

曲調によく合った音色や発音ができています。難しいところも難なく吹けていますし強弱もよくついています。そもそも聴き映えのいいこの曲ですから、いい意味で吹いていて楽しいんだろうな、という好印象でした。

さて、それでも「素晴らしく感動した」という演奏には及びませんでした。それはどういった部分からくるのでしょうか。

例えばアーティキュレーションを中心とした楽譜に記載されている音楽への忠実さ、左手の親指や小指などの運指の正確さ、伴奏パートが頭にしっかり入っている上での精巧なアンサンブル、などという、ある種いちばんシンプルな部分がイマイチな印象でした。これは「曲を一生懸命練習すればよい」という要素ではなく、日常でどんなふうに楽器と向き合っているか、の姿勢がハッキリと音に出ます。いい加減な性格、とまでは言いませんが、楽できる部分は楽しよう、というところはありそうです。それは間違っていないのですが、運指や楽譜のことは「楽できる部分」ではありません。自覚はなくとも、習慣として向き合い方が良くないのだと思います。

まずは色んな譜面をレッスンに持ってきてください。合奏の譜面でも構いません。1曲でも多く楽譜にきちんと向き合っていけば、技術的にも持ってる音楽としても、挑戦できない曲はないくらいハイレベルな奏者になれると思います。

ウェーバーテレマンシューマン、ヴィヴァルディあたりの定番レパートリーに挑んでみましょう。その本番までに読んだ譜面の数と質で出来が決まると思います。来年の今頃には、大人たちを脅かす若手に育っていることを期待しています。

 

14.三重奏曲/プレヴィン

難曲をよく演奏しました!良くも悪くも、2人らしく生真面目な演奏に仕上がりました。それはつまらない演奏という意味ではなくとても丁寧な印象でした。雑にやると面白さがなくなる曲ですから、丁寧な印象はとてもいいことだと思います。

書いてあるリズムをそのリズムに聴こえさせる、という難しさをよく分かったうえで、工夫をたくさん垣間見ることのできる演奏でした。いい意味で音源などの先入観が強くないからこそできたことかもしれません。

さて、丁寧な一方、少し守りに入りすぎることが多く聞えました。合わせの複雑な箇所は守りに入ることも大切ですが、そのまま守りっぱなしなことが多く、聴いていてドキドキするようなポイントが少なくなってしまいました。少しずつズレてもいい、かっこよく!という意思が弱かった。僕もピアニストも色々言いましたから、消化しきれてないままの本番だったのかもしれません。ファゴットのソロはみんな、そこをうまく消化してくるのですが・・・相方がいる分、考えすぎてしまったのでしょうか。トリオというのは合わせるというよりは、攻め方を寄せ合うようなものです。もっと2人の内側からくる音楽がたくさん聴きたかった。相性が良すぎたのかもしれませんね。

丁寧なので、テンポ感もかなり後ろ目に聴こえてしまいました。もっと前にいく箇所を作り、丁寧な箇所も作り、という作業ができればよかったですね。発表会という性質上、ピアニストとたくさん合わせはできませんから個々からもっと発信してよかったかと思います。崩壊の危険性はゼロでしたが、その手の演奏というのは良いことばかりではないですね。2人とも、もっと攻めを覚えましょう。

 

15.演奏会用小品/ベルヴァルド

僕自身の演奏でした。

今回こそ本当に、自分の演奏はやめようかな、と思うほどに準備が間に合わない日々だったのですが・・・。そこは僕も経験を積んでいるようで、なんとかしました。なりました。なってましたか?

曲調は平和ですが技術的には平和ではないこの曲、みなさんぜひ挑戦してみてくださいね。

 

16.6つの三重奏曲より/ワイセンボーン

やはりファゴットアンサンブルといえばこの曲ですね。

よく知られた曲ですが、いい意味で先入観にとらわれず面白い仕掛けをたくさん楽しめる演奏でした。変に守りに入らず、それぞれが色々な挑戦をしていたことがとても好感触な演奏でした。

レッスンで「合って当然の同族アンサンブル」というお話をしましたが、当然、という領域以上によく合っていたと思います。同メーカー楽器というコンセプトが生きていたのだと思います。生きていた、とは思いますが・・・。もっと一致した何かが欲しかった。ヘッケルだけのアンサンブル、となると製造番号次第でずいぶん差が出てしまいますが、他社メーカーならその特性をもっと生かした何かが聞こえてほしかった。自分の楽器の良いところ、じっくり探してみましょう。

さて1楽章の事故について。偶然落ちた、と思っているのならそれは大きな間違いで、「数え」をおろそかにした結果の必然以外の何物でもないです。いつでも起きうる状態だったのはレッスンの時にも分かっていましたし、対策を取る必要についても説明しました。それでも起きたというのは、単純な準備不足です。ソロで落ちるのは、ピアニストはプロですからとやかく言いませんし勝手ですが、アンサンブルでやってしまうのは仲間の信用を著しく失う行為です。たまたま起きた事なら笑って許せるんですけどね・・。じゅうぶん反省しているかとは思いますが、偶然ではない、ということ、よく頭に入れておきましょう。

とはいえ、レッスン時に出来ていなかったことが危なげないレベルまで身に付いていたことも確かです。途中からはとてく安心して聴ける演奏でした。ファゴット吹きとしてはよく知っている曲でも、他の楽器の人は知らないことが多いですしウケも意外とよいこの曲の魅力、たくさん伝わったんじゃないかなと思います。まだまだ未開発なジャンルですから、またぜひファゴットアンサンブルに挑戦してみてくださいね。

 

17.ターフェルムジーク第1集第2曲/テレマン

バロックアンサンブル、というジャンルへの挑戦が僕はとっても嬉しかったです。普段音出しして遊んでいる事は聞いていましたのでどんな音がするか本当に楽しみでした。ファゴット通奏低音に使ってくれてありがとうございます。不便なことも多いのですが、奏者としては大切な演奏経験になったかと思います。

終始バランスに気を付けながら、というのは大変だったかと思います。成果はきちんと出ていて、会場の助けもあってか本番は聞こえてほしい音がよく聞こえていました。並びに関してはもう少し考えてみてもよかったかもしれません。聴こえづらいリコーダーを真ん中に置くと、単純に後ろに下がってしまうので余計に聴こえづらかったのかも・・・?アンサンブルのしやすさと聞こえの問題、バランスを取るのが難しいかとは思いますが。

バランスはよくなったのですが、即興性も含めて個々の音楽がもっとたくさん聴きたかったです。バロック時代の音楽は決して音を並べればいいだけのもではなく、むしろ古典派などと比べると感情的なものだと思います。単純なダイナミクスもそうですし、音の長さやアーティキュレーションなんかでもメリハリがつけられます。そういった工夫にまで手が届くとより素敵な演奏になったのではないでしょうか。次回また挑戦するときはそういったところにも工夫があるといいですね。なかなか大変なことも多いかと思いますが、また参加してくださるのを楽しみにしています。

 

18.アメリカーナトリオ/フェルナンデス

まずは面白い選曲をありがとう。この編成は以前取り組んだ事がありますが知らない曲でした。冒頭なんか一昔前の映画のオープニングみたいですよね。曲の雰囲気がよく出る演奏でした。レッスン時に指摘したバランスのことも改善され、合わせや個人の技術が難しい箇所も問題なくなっていたので、いい準備の時間を過ごされたようです。

個として一番伸びたのはクラリネットでしょうか。「アンサンブルは好きだけどどう吹けばいいか分からない」という印象でしたが、本番の演奏では一番負担の大きいトリオのクラリネットというパートをじゅうぶんに楽しめるところまで上達していました。アンサンブルは仲間と一緒にステージに立ちますが、結局のところ合わせる力も含めた個人技の見せ合いですから、それぞれの技術が伸びる以外に演奏をよくする手段はありません。難しいパートが多い楽器ですから、「自分がうまくなること」で他人とのアンサンブルをより楽しめるよう励んでいってください。

フルートが非常にうまく色彩感を出してくれました。拍子感やフレーズ感も素晴らしいのですが、長いフレーズで少し平坦になりがちのようです。もっと仕掛けを増やし、その仕掛けのための技術(発音や音量変化など)が身に付くようにするといいと思います。もともと持ってるセンスは素晴らしいので、もっと表現を大きくしかけるクセをつけると必要な技術がおのずと見えてくるかと思います。

ファゴットは長い音での鳴りと細かい音符での鳴りの差がとても気になります。長い音は鳴らしすぎず、細かい音符にたくさん息が入るよう練習しましょう。そのためには細かい音には丁寧な(ゆっくりなテンポでの)練習が必要不可欠なので、結果として長い音の扱いも上手くなるのではないでしょうか。

まだまだ伸びしろの多いメンバーかと思います。他の楽器を増やしてでもいいので、この3人の共演をまた楽しみにしています。名物トリオになりますように。

 

19.組曲「さんぽみち」/大石祥子

僕とゲストの杉田さん、ドルチェ楽器の渡邉さんとの三重奏でした。3人とも同門であり、同じ大学の出身者。僕と杉田さんは演奏の道、渡邉さんは楽器屋さんという道を選びましたがこうしてまた一緒に演奏ができたこと、僕ら自身とても幸せでした。客席にいた同門のNさんにもそれは伝わったようです。

こういった試みができるのも発表会運営の面白いところですよね。

 

20.パーティピース/スパーク

ユーフォニアム用の作品です。そのことが曲目解説(ひとこと欄)で説明されていてほしかったですね。

門下入りからもうすぐ2年ですか。だいぶ安定感が出てきました。テクニックはもちろんですがフレーズの歌い方はもう別人です。とても上手になりました。魅力的なメロディをきちんと魅力的に吹けるようになったこと、誇りに思って良いでしょう。

装飾音符の入れ方もとても自然で良いのですが、本来「不自然」である装飾音符を、どれもこれも自然に入れてしまうと平坦になってしまいます。「ここは少し特徴的に」とか、「ここは元の音符を重視して」とか、そういった変化がたくさん見えたら素敵だったなと思います。また、良くも悪くも正確に吹きたがる性格なようなので、裏目に出るとアゴーギグのない演奏になりがちです。ここは少し前、ここは少し収めて、みたいな計算がもっとたくさんあると、よりメロディの達人に近づけるでしょう。

上の話に近いですが、音色の操作ももっと見たかった。元々音色がすこし荒いためか綺麗に吹く方に意識が向いてしまい平坦になってしまいます。例えばどう吹いても荒い音の出ないリードでガツンと鳴らすような訓練をするとその逆も今以上にうまくなります。ぜひお試しを。

間違えたとき声を出すクセ、日常からなおさないとせっかくステージでオシャレしても無駄になってしまいます。気を付けて。

 

21.チェロソナタ第1番より1楽章/ヴィヴァルディ

復帰戦、お疲れさまでした!堂々としていてとてもよかったと思います。

拍手は最後まで浴びてから演奏準備に入りましょう。ひとりでステージに立つこと、そうそうないですが大切なことです。

演奏は思ってるようにできたのではないでしょうか?レッスンの時にも思いましたが、練習がとても丁寧で確実なものになっていると思います。そういった練習ができれば理論上どんな難しい曲にでも挑戦できます。挑戦はできます。

遅い楽章でしたが、もっとダイナミクスとしての山を聴きたかったです。大きい音、というより、「あぁここが盛り上がってるんだな」としっかり伝えることが大切です。あまり演奏されないレパートリーですからなおさらです。そこまで大きな会場ではないですが、会場いっぱいに自分の音が響き渡るような箇所がほしかったです。小さくまとまってしまわぬように。

「綺麗」なだけでは綺麗なものは綺麗に表現できません。メリハリあってこその音楽表現ですから、もっともっと表現のための技術を身に付けていきましょう。次はフォーゲルの協奏曲かシュターミッツの協奏曲、ミルデのアンダンテとロンド、あたりに挑戦してみると面白いかもしれません。古典派の軽快な音楽をぜひ楽しんでいただきたい。

 

22.2つの小品/フランセ

苦手なタイプの曲、という印象が全くなかったこと、誠意をもって取り組んだ結果で本当に素晴らしいことだと思います。「平坦にうたう」という事が少しは理解できたでしょうか。

楽器の鳴りのコントロールがもっとできるといいのかもしれません。一定の音だけとびぬけてしまう、ということが少しだけあります。この手の曲だとそれがとても浮いてしまうことがありますので、楽器をもっと自分の支配下におけるような訓練をしましょう。

紳士だのよっぱらいだのひょうきんだの、到底きみのキャラクターとは遠いものを僕もピアニストも押し付けてみましたが、きみなりに表現してくれたことがとても嬉しかったです。実際よくつかめていたと思います。その手のキャラクター表現のために我々は細かいテクニックを練習するのです。シーンごとのコントラストはとてもよくついていたので、同一フレーズ内でもっといろいろ変化があるといいですね。

とはいえとても難解な曲をよく理解して演奏しました。次は得意なやつ、びしっとやってほしいところです。

 

23.ファゴットと弦楽のためのディベルティスマン/フランセ

まずはメンバー集め、合わせの調整など、この曲をこの編成で演奏するに至ったこと、苦労が多かったと思います。お疲れさまでした。やはりこの曲は弦楽器とやってこそ、と思いました。ピアノで今後挑戦する人がいるかな・・・?

1stヴァイオリンとファゴットの絡み方は本当に見事でした。よくも(悪くも?)1stヴァイオリン中心にアンサンブルが進んでいくのは聴いていてとても安心できます。ファゴットは自分のことに集中できますからね。懸念されていたバランスも決して悪くはありませんでした。コントラバスが少し大きく聞こえてしまうのは会場のせいでしょうか(録音では分からないところですが)

さて一方で、2ndヴァイオリン、ヴィオラ、チェロはもっともっともっともっと主張が聴きたかったところです。皆さんの室内楽の経験値は知らないのですが、室内楽の弦楽器はもっと内声がゴリゴリ主張しないと立体感が出ません。ちょっとうるさいかな、というところで様子を見る、くらいでちょうどいいのではないでしょうか。ヴァイオリンやヴィオラに音量で消されるのはファゴットはあまり悪い気分はしません(弦楽器の音色の中に入って自分の音を響きかせるって本当に楽しいんです)から、もっと攻めるポイントがあってもよかったと思います。

ファゴットには四重奏(Fg.Vn.Va.Vc)や二重奏(Fg.Vc)、弦楽バックの協奏曲など、弦楽器とのレパートリーが実はたくさんあります。もしよければ、気に入った奏者に声をかけ別の曲にも挑戦してみて頂きたい。失礼ながらフルートやクラリネットとの室内楽のように主従関係がうまれず、いい意味で対等な音楽づくりにはファゴット相手は最適ですから。

 

24.ファゴット協奏曲第1楽章/フランセ、レシタティーヴォとアレグロ/ギャロン

今回のゲスト演奏でした。

うちの会に彼がゲストできてくれたこと、僕は本当にうれしく思いました。彼は僕の永遠のライバルなんです。たのしかったなぁ。

 

25.アンダンテとハンガリー風ロンド/ウェーバー

満を持して、といったところでしょうか?友人枠の演奏でした。

音色の操作が抜群にうまくなりました。以前は良くも悪くもいつも同じ(とてもいい)音色でコントラストをつけようとしていたのですが、今回は音色の操作が加わって立体的な音楽表現をたくさん感じることができました。年齢を重ねた、というのも大きいのでしょうか。

ダブル(トリプル)タンギングはじゅうぶんすぎるほど習得できたようです。習得して終わりのテクニックではなく、すぐ衰えるものですので合奏などで積極的に使うようにしておかないともったいないです。が、使うとシングルがどんどん衰えていくというジレンマ。ダブルを覚えた人すべてが陥ります。でもそれ自体を楽しめるようになると、面白いですね。

またハードル爆上げ役として演奏しにきてくださいね。

 

26.アリア作品7/ダマーズ

友人枠の演奏です。楽器の操作がとても上手になりました。曲が曲ですから少々分かりづらいのですが、楽器のポテンシャルの高さが(ようやく)見えてきました!すごいことだと思います。まだまだ未開発な楽器かと思いますので、今後も色んな面白いものをきかせてください。

「マイナーな曲を」とお願いしてきましたが、マイナーな曲は毎回誰かが持ち寄ってくるようになりましたので、逆に定番レパートリーに取り組んでもらうのも面白い気がします。誰かと同じ曲をぶつけても面白いですね(興味があれば曲がだいたい決まってきたころに情報を横流ししますよ)

次回も楽しみにしています。

 

27.ファゴット大協奏曲より第1楽章/フンメル

いつもレッスンでほぼ完成したところから磨いていく作業でしたが、今回はレッスンでは完璧に(!)未完成状態で、大曲ですからそのくらいでちょうどよかったのかもしれません。フンメルが大曲と呼ばれる難しさを、いい意味できちんと見せてくれる最高に僕好みの演奏でした。すこし力任せな部分はありますが、その「力」がないとできない部分の多い曲ですからむしろちょうどよかったとすら思います。

テンポの操作も見事でした。許容範囲ですし出すべき表現をきちんと出すうえで適切な操作を行っていました。何度でも繰り返し聴ける音源のようです。揺らぎによって生まれたピアニストとのズレに動揺しないメンタルがあればもっとよかった。ちょっとくらいのズレ、気になりませんし後から修正してくれますから自身は気にせず突っ走っていいのです。そこはもう少し合わせの経験を積む必要がありますね。

音色、というよりは響きの伸びがイマイチです。操作性重視のセッティングだったのかとは思いますが、小さな会場を埋め尽くすような響きの音は残念ながらほとんど感じられませんでした。難しい曲ですから、そこまで気はまわせなかったのかもしれませんが・・・そこはいわゆる基礎力というやつですから、最後にものをいうのは響きの量です。どうすればいいか、と言うと、「自分で思う最高にいい音」をいつでも並べるような練習、つまり、フンメルでやったような練習をいつでも行うことです。量ではなく質の問題として。

今回の演奏に至った自分の練習方法や音の掴み方を自信にして今後の演奏活動に活かしていってください。古典派意外と(?)よさそうだし、モーツァルトとかやってみたらどうでしょうか?さすがにレッスン1回じゃきついかもね。

 

28.幻想小曲集/シューマン

実は、なんていう必要もないくらいMVP候補でした。相手が悪かった。

殻を破った印象は全出演者中1番でした。今までできなかったレベルの音楽表現を習得しています。自覚がないのなら、今後の演奏活動で少しずつ自覚していく瞬間が訪れると思います。よく成長しました。

複雑なピアノとのアンサンブルもとても見事でした。ピアノ譜が頭に入ってないとそこまで丁寧には絡み合わないでしょう。ピアニストからこの日一番いい音が鳴って聴こえました。それを引き出したのは君のちからだと僕は思います。

さてこの曲の魅力の引き出し方、ピアニストのアンサンブル、これ以上ないクオリティを見せてくれましたが、足りなかったのは、君自身のファゴット演奏時代のこだわりでした。技術的に荒いわけではありませんが、鳴ってほしい音が鳴ってこない、発展してほしい音が発展してこない、ピアノの音に溶けたい音が溶けない、という箇所がそれなりに多くありました。曲の魅力を引き出すことと自分のファゴットの良さを引き出すこと、そのバランスをもっと取らないと、不自由の多いこの楽器で人の心に届く演奏はできません。本当にその点において、惜しかった。もっと自分のファゴットを、音を、愛してあげてほしい。

きつい曲もう十分やったし、楽しい曲やりませんか。ドイツ古典、ロマン派ものか、とにかく聴き映えのする作品を聴いてみたい。ダビッド、ベルヴァルド(やってみませんか?)、クルーセル、ブルドー、プレヴィン、あたり。ブラームスソナタも僕は好きなんだけど、あれはちょっと重いかな・・・

 

29.ホルン三重奏曲より第1楽章/ブラームス

レッスンでも言いましたが、本当にいいピアニストをつかまえました。いい奏者をつかまえる、いい奏者につかまえてもらう、どちらもそれだけで素晴らしいことだと思います。

ホルンはすこし手元で鳴ってる音を重視した吹き方に聴こえます。それが何によって起きてる事なのか僕には分からないのですが・・・間違いなくいい音が鳴っているのですが、ホールの響きが加わるといわゆる「うまいホルン」と差が出てしまうかもしれません。1m以上離れた距離で人に聴いてもらう。これだけで楽器を習うことにメリットはありますから、少し考えてみてもいいかもしれません。そこまで時間もお金もかからないですからね。でも厄介なこの曲をよく理解しいい流れを作ってくれていました。音の種類として、ブラームスにピッタリだったように思います。ただ、もしかしたらライネッケ(Ob.Hn.Pfのトリオ)なんかだと浮いてしまうかもしれません。難しいですね、金管楽器というやつは・・・。

ヴァイオリンからは「習い事」をどうしても感じてしまいます。いいメンバーに乗っかって弾くことは楽ですし気持ちのいいものですが、三重奏、という小さな編成でそれだけでは通用しませんし、周りは気持ちよくはなれません。多少強引でズレていてもいいから我を通す、という能力が絶対に必要です。それが苦手なのはわかりますが、その能力はファゴットコントラバスといった縁の下のナンチャラ楽器にも必要な能力ですから、楽器は関係ないのかもしれません。合奏とは得られる満足感も難しさも全く違う室内楽というジャンルに取り組むには、我を通すだけの力を身に付ける必要があります。3人で一緒に、という箇所で出てる音を一人でも鳴らせれば、それだけでひとまわりもふたまわりもよく聴こえると思います。鳴らせないわけじゃない、鳴らしにいけない、という印象です。合わせでどうにかする、というのは卒業し、まず自身が説得力を持つことです。

 

30.ソナタK292より「アンダンテ」/モーツァルト

ステージマナー、完璧でした。毎回指摘しているところですが、今回こうもビシッとするとは。奏者としての自信がついてきた、というのも影響している気がします。

「いっぱい練習してできるようになる」以外のことをたくさんたくさん学ぶことができましたね。曲の面白さに感謝しましょう。そうしてみんな、クラシック音楽にハマっていくんですね。

つねに綺麗な音のならぶ曲のようですが、実際はかなりビックリさせてくる音楽なのがモーツァルトです。コントラストはついていますが、音色が一辺倒なため、やろうとしていることの3~4割しか客席には聴こえてきませんでした。例えば「大きい」「小さい」のほかに、「豊か」「控えめ」のような要素がコントロールできるようになるといいですね。とはいえ、きれいに吹く「責任」のあるこの曲の魅力を今できる範囲で精一杯表現してくれたこと、僕はとても嬉しく思いました。

次はそろそろ、ウェーバーでしょうか。背伸びに思うかもしれませんが、今回すこし、技術的に楽をした分そろそろ頑張ってみてもいいかもね。きつければ、テレマンソナタfmollやブルドーのプルミエソロあたりもいいかもしれません。ちょっと聴いてみておいてくださいね。

 

31.Soft Swing Music/Voert

映像を見るとわかるかと思いますが、4人ともすごくいい顔しています。ファゴットアンサンブルって、ほんとに面白いですよね。

ちょろっと話しましたが「合って当然の同族アンサンブル」の魅力をこれ以上なく発揮した演奏だと思います。ちょっとしたプロの演奏でもこうはいきません。それは4人ともがファゴットアンサンブルを限りなく楽しんだから、だと思います。楽しんでいいんです、アンサンブルは楽しんでなんぼ、楽しみ方を磨いていく、そんな風に考えていってください。

コントラを用いない四重奏の課題は4thの低音ソロ時のバランスですね。聴こえない、というほどではないですが、そこに限ってバランスが少し悪かった。4thは鳴らすこともそうですが聴こえさせる吹き方、みたいなものができるとよかったですし、上3人は歌うけど響きの少ない音、みたいな操作ができればバランスが取れたかな。同族だからこそ、バランスというものはいつでもこだわっていてほしいものです。

日常的にめいっぱいファゴットアンサンブルを楽しんで、そのレベルで他編成のアンサンブルや合奏も楽しめれば、演奏活動は無限におもしろくなっていきますね。面白おかしく吹くための技術をそれぞれが磨いていけますように。コントラ入りのファゴットアンサンブルもぜひに。楽器はあるからね。

 

32.ファゴットソナタfmollより1.2楽章/テレマン

単純にファゴットがうまくなった、という話では圧倒的にMVPです。初めて会ったころからは別人のように上手になりました。今回覚えた楽器の鳴らし方はぜったいに忘れないで。よく響く音をコントロールする力は自分で思っている以上にハイレベルかと思います。

短調の曲らしい「泣き」の部分がもっと聞きたかった。自分の演奏で鳥肌が足りますか?鳥肌を感じるような音楽表現って、どんな風にするといいのでしょうか。決してバカでかい音や蚊の鳴くような小さな音をコントロールすることではありません。楽器のコントロールは身に付きましたから、それを面白い音楽に結びつける力を今後は身に着けていけるようになりましょう。

速い楽章では和声感が不足して聞こえました。和音はどのように動いているか、その中で自分の旋律はどう響くと気持ちいいのか、考えるか感じるか、してほしかった。通奏低音のパートはどのくらい吹いてみましたか?あまり吹いていないのではないでしょうか。「ちょっとここ吹いてみてよ」と声をかけられるファゴット吹きの友人が、もしいなければ作りましょう。ファゴット吹きは群れてこそです。とはいえ楽器の鳴りの良さと質のいい練習による安定したテクニックで安心して聴ける2楽章でした。「なんでか吹けちゃう」という状態までこれた自分の練習方法に自信を持ってほしい。それこそが僕の門下の真骨頂かと思います。

社会人になってから伸びる子が多い門下です。今後も無理しない程度に、面白い曲にたくさん挑戦していってくださいね。

 

33.ファゴット協奏曲2.3楽章/モーツァルト

セッティングが解決してよかった。そこについては、長いものには巻かれてみるものです。それのおかげ、と自分では思っているかもしれませんが、音をコントロールする技術と練習方法によるところが大きいと僕は思います。今後この発表会で君の2楽章以上のモーツァルトが聴けることがあるのでしょうか。ただトリルはもっとこだわって。終わりよければすべてよし、にならないのがクラシックですが、キメがイマイチだと台無しです。

音の響き方が抜群に良かったです。ただ君のいい音は練習して工夫して考えてようやく出てくるものです。理想を言えば、いつ吹いても今回の2楽章みたいな音が出てくるようになってほしい。音色の良しあしなんて曲によってまるで違うものですが、基本的に持ってる音が少し荒いのをもう少し気にして音出しをしてほしい。

3楽章はよくさらったな、と印象。そこはもう卒業しませんか。拍子感だのフレーズ感に問題があるわけじゃない。ただ「うまい」というより「さらってある」という印象です。以前の低いレベルにおいては、そこは君の長所だったのですが・・・。そのためには、今日だけ「さらってある」ではなくて、いつでも「うまい」という事が大切です。譜面の数をさらうこと。別に大して重要でない譜面を今回の本番並みのクオリティでさらうこと。その積み重ねに「安定感」のある「うまい」があると僕は思います。

つぎこの発表会に出るときは、「うまい演奏」を期待しています。

 

34.木管五重奏曲1.2.4楽章/ホルスト

名曲なのによく聴かせるのが難しい、というタイプの曲でしたね。それでもアンサンブル的な問題点はよく解決してあり、木管五重奏としては実はとてもハイクオリティな演奏だったと僕は思います。テンポの変化、ダイナミクス、基本的なバランス感覚、どれを取ってもかなりレベルが高かった。

しかし気になるのは個人としてのズレ。音色感であったり、向かいかた(クレッシェンドなどの量やペース)、同じ旋律の吹き方など、本来アンサンブルで一番楽しみたい部分にズレが多く、本来のクオリティの高さがそこに埋もれてしまう演奏になってしまっていました。ひとりひとりを取り出せばかなりレベルが高いのですが・・・。そういった意味ではもう一つの木管五重奏と真逆のタイプ、と言えるでしょうか。

特に今回のような会場(管楽器の演奏家のためにできている音響)だと、よく聞えるようにできていますから、出ている音が自分と客席で感じ方がまるで違います。それは本来会場など関係なくあるものですから、我流と習い事で一番ギャップがうまれてしまう部分です。想像力で補うことには限界がありますよね。

音楽の流れはオーボエが非常にうまく繋いでいました。オーボエを核とする木五は少なくないですが、集まるにはちょうどいい楽器ですからその方向でいいのかもしれません。逆に言うとオーボエが楽に吹ける環境をフルートやクラリネットは作りに行く必要があるかもしれません。

ホルンは聞こえてほしいところにガツンと聞こえてくれる大変いい仕事をしてくれますか、引いたときに存在感がなくなりすぎる傾向にあるようです。確かにそこにあるけどうるさくない、みたいな存在感が木管五重奏では必要不可欠かと思いますので研究してみると面白いかもしれません。

少しずつメンバーが変わりながらも継続してる木管五重奏があることをすごくうれしく思っていますので、今後もぜひ継続していってくださいね。

 

35.協奏組曲より2.4楽章/ヴォルフ=フェラーリ

テクニックとしての安定感がすごくついてきました。この安定感を一般的に「うまい」と呼ぶのだと思います。一番足りなかった部分ですから、身に付いて本当によかった。安定してくると気になってくるのが、ブレス明けの事故の多さ、休符や伸ばし時の拍感、ちょっと厄介な箇所の音程など、「ひびわれ」のような事故の多さです。以前のような「惜しい演奏」ではなくなったからこそこういったひびわれを減らす努力が大切なかと思います。そのためには日々向き合う譜面への取り組み方の改善、効率のいい演奏法の習得(=エチュードや基礎のレッスンにくること)が必要不可欠かと思います。すでにそれらには取り組んでいるかと思いますので、その線でいけば大丈夫です。

今回わりと速い楽章2つに取り組んでいましたが、技術的に忙しい箇所にももっとたくさんコントラストをつけようとしてほしかった。拍子感やフレーズ感はじゅうぶん見えるようになったのは進歩ですが、山や谷がハッキリ言ってまったく見えない演奏でした。確かに2楽章はピークの分かりにくい音楽ではあるのですが・・・。長さ、大きさ、音色の操作など、コントラストをつける方法はたくさんあります。

今後はそういったコントラストが必要不可欠な曲に取り組むと面白いかと思います。ウェーバーの1楽章、ヴィヴァルディやドゥビエンヌなどのバロック作品のメジャーどころも面白いかもしれませんね。

 

36.組曲/タンスマン

実はトリ候補でした。体調不良なども加味して避けまして、トリの前、という曲順にさせてもらいました。

打ち上げ以降、ほうぼうから「タンスマンの組曲を(いつか)やりたい」という声を聞きます。今回の演奏が名演であったことを僕が語る必要がないようです。皆の評判は正直なものです。

表現が思いのほか難しい曲ですが細かいところまでよく手が届いていたと思います。曲の面白い仕掛けをきちんと面白く演奏する、というのは難しいことなのですが、その点はまったく問題のない演奏でした。

安定感のある演奏である一方、すこし守りに入りすぎるシーンの多い印象でした。カデンツァのような箇所のテンポ変化はもっと積極的にほしかったし、クレッシェンドなどももっとゴリゴリかけてほしかった。技術的にそれができないわけではないですから、気持ちとして守りに入ったことが原因かと思います。守りに入ってもうまくいくわけではないですから、基本的には攻め続けるものなのだと思います。今後はぜひ攻めの姿勢で。

吹いててどう感じたかは分かりませんが、ホール映えのするいい音でした。ピアノともよく溶けていましたので、今回のようなサウンドを意識していくとちょうど良いでしょう。バロック作品なんかは、そういった音色感を意識して演奏すると面白くなると思いますので、次回ぜひバロック作品を。また楽しみにしています!

 

37.ファゴット協奏曲1楽章/ウェーバー

ほんと会うたびよく伸びるなと思います。トリを振ってから1~2か月、どれだけプレッシャーに感じたか。でもそれもぜんぶ僕の思惑通りで、きちんと吸収し力に変えてくるあたり、君の類まれなるセンスを感じます。ほんとうにすごいことです。僕との相性もいいんじゃないかなーと(僕は)思います。

あまりこういった表現は僕好みではないのですが、女性的な感性と男性的な感性を切り替えながらうまく使い分けられる力を持っています。今後は使い分けではなく、同時使用を心掛けると面白いかも。思い切りのいい演奏はこの曲にピッタリですが、どこか冷静な部分を残りしておくと安定するだけでなく、実はより情熱的に聞こえることもあるのです。例えば低音の不安定さはそれだけで解決したのではないでしょうか。

テノールのアリアのように」「バリトンのアリアのように」は大成功と言っていいと思います。ひいき目なしに、史上最高クオリティの1楽章でした。みんなそれぞれ面白いセンスを持っていますが、そんなセンスにあふれた天才たちが今回の君のウェーバーに嫉妬していたので、そんな君をトリにし僕の判断は正しかった(でも泣かれると動揺するよ別にいいけど)

長い音のうたいかたがあまり得意でないようです。オケなどでわき役としての長い音ではなく、ソリストとしての長い音の処理やビブラートのかけかた、研究してほしいところ。また、和音の動きを技術的に忙しいところでもっと表現、というより楽しんでほしかった。そこが本当に惜しくて、吹けているし楽器も鳴っているんだけどイマイチ届いてこないんです。和音の動きはオケが出す前にこちらがキッカケづくりをしているが多いので、オーケストラ全パートとアンサンブルを楽しめるような音並べができるとより面白い演奏になったと思います。

今回にあじをしめて、「よくみんなやる曲」テロに挑戦してほしいなぁ。シューマンテレマン、ヴィヴァルディ、ドゥビエンヌ、ブルドー、タンスマン・・・いくらでも曲の候補は出てくるね。その手の名曲で、ほんの少しの冷静さが発揮できると、また一皮むけるんじゃないかな。

 

 

2万文字越えですか。これを全部(過去記事まで)読む人種がいることを最近しってびっくりしています。僕はあまり日本語がうまくないので恥ずかしいのですが・・・。

みなさん本当にお疲れさまでした。こうしてみんなの演奏を振り返るのが毎回とても楽しくて、どうしても情報量ばかりが多くなってしまいます・・・・・。笑

次回もまた、たくさんのドラマを作りましょう。

基礎練のすすめ。大切なのは取捨選択!

こんばんは。世間は夏休みですね。我々音楽家毎日が夏休みのようなものであるのですが、やっぱりうらやましいなぁ・・・。

思えば音大に入ってからはやれ合宿だセミナーだコンクールだ仕事だ、という感じで夏休みらしい生活は高校生のときが最後だったような。でも社会人になってからの方が意識的に休日を作って人生を楽しめている気もします。

みなさんも素敵な夏をお過ごしくださいね。

 

さてさて、各所でいちばんよく聞かれる基礎練習のお話です。

まず、この記事の存在意義を怪しくしてしまいますが、「やるだけで絶対にうまくなる基礎練習」はありません。野球ならバットの振り方やボールの投げ方捕り方、サッカーならボールの蹴り方や走り方を教わる必要があるように、音楽には「やり方」があります。あなたにとっての「やり方」はレッスンに通う以外には手に入りません。これは大前提として、まず明記しておきたい。それはそれとして。

 

大切なのは、「今必要な基礎練習をきちんと見極めること」です。

毎日8時間練習できる人は、納得いくまで基礎練習をすべて行うといいと思います。でも個人練習なんて、やれて2~3時間でしょう?今抱えている譜面の練習もあるのに基礎練習ばかりにとらわれていては演奏家としての信用を失ってしまいます。

これから重要な順に基礎練習をおススメしていきますが、難なくこなせるようになったらほかの項目にもどんどん挑戦していくことです。いつまでもロングトーンや難なく吹ける調のスケールにとらわれていてもうまくはならないのです。

 

 

1.ロングトーン練習

前記事にもあるとおり、すべての基本となるのがロングトーンです。

初心者のうちは覚えている運指の音すべてをとにかくまっすぐ(音程や音量が揺れないように)伸ばせるようになることは大切なことです。演奏に必要な口周りの筋肉も育っていくと思います。音量は基本はメゾフォルテくらいの鳴らしやすいところで。すべての音で同じ音量が出せることが大切です。基本的に長さは問題ではありませんので、きちんと伸ばせたと思ったら次の音にいきましょう。

 

ロングトーンで気にする点は3か所。発音、伸ばしの音、音の処理です。どれか一つ欠けても正しいロングトーンにはなりません。

発音は基本的にはっきりと。舌をリードに付け息を作り、舌を離して発音します。発音から伸ばしの音に向かって音程や音量が変わらないように。最初から伸ばしたい音が鳴るよう意識しましょう。応用編として、柔らかい発音や通常より強い発音の練習があってもいいかもしれません。

伸ばしの音はとにかく揺れずにまっすぐに。吹きながらだと自分の音がどうなってるか分からなければ、携帯などでも構いませんから自分のロングトーンの音を録音して聴いてみましょう。大変に心が苦しい練習なので覚悟が必要です(?)

音の処理も、やはり基本的にははっきりと。「余韻を作れ」と指導されているかもしれませんが、音の余韻というのはホールでは残響が作ってくれますからハッキリ切れば美しく音は響いてくれます。応用として減衰するような音の切り方を練習することもあるでしょう。

 

ある程度慣れてきたら、自分の苦手な音域の練習に絞りましょう。中級者以上におすすめの練習です。

・低音(最低音B♭~1オクターブ上のB♭くらい)の音程が悪い、特に高いのは問題です。リードなどの問題もありますが、息のコントロールである程度音程は下げられますので意識して練習をしましょう。

・中音(最低音B♭の1オクターブ上B♭~さらに1オクターブ上B♭~5度上のFあたり)の音程が悪い、音量が鳴らない、音色が開く、などが考えられます。息や正しい運指で改善することが多いようです。改善した音の響きに慣れることが大切です。

・高音(ヘ音上線3本目のG~5度上のDあたり)はそもそも鳴らし慣れてないことがよくあります。まずは慣れること。慣れてきたら中音や低音との鳴りムラを減らすよう意識するといいと思います。音程も取り辛い箇所かと思います。

 

ロングトーンにおいての「音程」に関しては機械(チューナー)に頼るといいです。目をつぶってから正しいと思った音程で吹き、目を開いて確認し、その差異を認識します。音域内すべての音で差異がなくなったころには、結果としてしっかりと楽器が鳴っていることでしょう。それ以上の「いい音」があるでしょうか?もちろん、そのためにはリードや楽器・ボーカルの見直しがあることでしょう。

ロングトーンで鳴らせる音以上の音は実践では絶対に鳴りません。そういった意味で、「基礎の基礎」であると思います。

 

また応用として、ピアノ・ピアニッシモ・フォルテ・フォルティッシモなど、ダイナミクスを変えたりクレッシェンドなどをくわえた練習も効果的かと思います。

 

2.音階練習

先述のロングトーンで得た「いい音」を、最も基本的な音列パターンである音階で練習します。出ている音が「いい音」かどうかをしっかり見張るために、可能な限りゆっくりのテンポで練習しましょう。自分の音が聴けないような速さで音階練習をしても、指をごまかすのがほんの少しうまくなるだけで、基礎的な部分がうまくなったりはしません。

 

さて、練習する音階についてですが。結論から先に言うならば、必ず24調すべて練習しましょう。

もう十分に吹けるFdurやCdurをいつまでも練習するより、手も足もでないであろうHdurやesmollを練習するほうが遥かに効果的と言えます。特にシャープ系や短調、苦手ですよね?勉強でも苦手な科目から点数を伸ばせばすぐに成績が上がりますよね。そういうことです。目指すところは、Fdurと同じクオリティで24調すべてが鳴らせることです。それを目指して、僕自身、いまでも毎日音階練習を続けています。

24調に慣れてきたら、B♭-E(Es)までの調は3オクターブ目にも挑戦してみましょう。ハイトーンを吹く技術というのは、本当にある日突然、必要になってきます。音階で吹ければ実践でも吹けます。また、Eまで吹ける人のCとCまで吹ける人のCは安定感がまるで違います。そこらへんはきっと、金管楽器とも通ずるものがあるのではないでしょうか。

 

これは持論であり暴論であることは承知していますが、24調音階が並ばないこれを読んでいるあなたは、初心者なのだと、思います。あるいは読み書きのできない幼稚園児、車の免許のないタクシードライバー、包丁の握れない料理人、パソコンを持っていないユーチューバー、です。たとえに深い意味はありません。

ムッとしましたか?ごめんなさい。でも騙されたと思って、ぜひ24調、覚えてみてください。世界が変わりますから。

 

3.分散和音、インターバル、半音階

音階に余裕がうまれてきたら挑戦しましょう。

インターバルというのは、所謂ドミレファミソファラ、ドファレソミラファシ、ドソレラミシファド、なんてパターンの練習です。分散和音もインターバルも、もちろん24調ありますしパターンは無限大ですから、日替わりで1つずつ色んな調に挑戦していくのがいいかもしれません。ゆっくり確実に、慌てないで吹けるテンポの練習でも効果的だと思います。ここでももちろん、「いい音」であることが大前提!

半音階はダラダラと下から上まで駆け上がるより、オクターブであったり5度であったり、範囲を決めて少しずつ上げるなり下げるなりして練習するのが効果的なようです。

 

 

この他にも、タンギング(シングル、ダブル、トリプル)の練習も効果的かと思います。速さよりもクオリティにこだわりましょう。

 

 

基礎練習について、まじめに語ってみました。

我々ファゴット吹きは、どうしても出番の多い生き物です。つまり抱える譜面の量が多いのですから、基礎練習も大切ですがしっかり楽譜の練習をしましょう。楽譜の中にもロングトーンや音階、分散和音やインターバルがたくさん出てきますから、それをきちんと丁寧に練習していくのが、何より効果的な基礎練習になるのではないでしょうか。

 

たかが基礎。されど基礎。迷ったら、ぜひレッスンに来て相談してくださいね。

「私にはどんな練習が必要か」なんてご相談もお待ちしてます。

ご連絡はこちらから。 レッスンお問い合わせフォーム

 

脱・ロングトーン練習のすすめ。そのロングトーン、本当に必要ですか?

こんにちは。まさかの2日連続投稿!に、なるでしょうか?笑

いま私は、明日に迫った関西ファゴットフェスティバルの前日リハーサルに参加するべく大阪へ向かっています。関西ファゴットフェスティバルというのは、毎年行われているファゴット吹きが100人以上集まるイベントで、前半はゲストによる演奏(今年は千葉交響楽団の柿沼麻美さんが来ます)やプロ・アマ有志団体によるアンサンブルステージ、後半は100人の大合奏によるステージによる演奏会です。

今年で4年連続の参加中で、僕はこのイベントにたくさんのロマンを感じています。いつか、東京で....と、このことは今は置いておきましょう。でもチラシも置いておきましょう。

f:id:torakitsune:20180715140223j:image

 

さて、今日はロングトーン練習についての記事です。

まず先に言っておきたいのは、ロングトーン練習は絶対に必要な練習だと思います。特に初心者やブランク明けのリハビリ、高音域に慣れるための訓練、などに効果があると思いますし、何よりも曲中のロングトーンを上手く吹くのはとっても難しいことです。そのための訓練は必要だと思います。それは絶対にそうです。

 

 

が。

 

 

あなたは思い込んでいませんか?

ロングトーン練習さえしていれば音色が良くなる

ロングトーン練習さえしていれば上手くなる

ロングトーン練習さえしていればコンクールで金賞が取れる

ロングトーン練習さえしていれば音程が良くなる

ロングトーン練習さえしていれば指が回るようになる(!?)

 

すべて、間違いだと僕は考えます。ええすべてです。

 

ロングトーンの練習は、あくまで「音を長く伸ばすための練習」で、それ以上の効果も以下の効果もありません。

 

先述のとおり、音を長く伸ばすということはとても難しいことです。その練習は必要だと思います。でも時間は有限です。

いま目の前にある譜面、すべてきちんと音が並びますか?その音は納得のいく音ですか?

指揮者や指導者から、ほかに課題を与えられていませんか?

スケール練習は完璧ですか? ※これは持論ですが、スケール練習は24調全てが寝てても綺麗に回る(B♭〜Eまでは3オクターブで)ようになってようやく脱・初心者だと思います。テンポ不問で。それについてはまた別の記事で。

 

いや、いいんです、今あなたに必要な練習が、音を長く伸ばす訓練なら、それをぜひ納得のいくまで練習してください。でも。

特に吹奏楽出身者(もちろん偏見ではなく統計的に)に多いですが、ロングトーンで吹かせればプロみたいな豊かな音を出せるのに、譜面を吹かせると魅力9割減。譜面は読めないわ音は並ばないわで、レッスンで教えることが多すぎて終わりません。あまりにもテクニック的に不備が多いから普段どんな練習をしてるのかと聞くと、ロングトーンに1時間。残りの時間をスケールや曲の練習にあてている、と。

それは野球に例えるなら、3時間の練習のうち1時間ベースランニングにあてるようなもの。料理に例えるなら、1時間しかないのに40分かけて具材を切ることに集中するようなもの。サッカーなら2時間の練習で1時間パス練習し続けてるようなもの。

いやいや、時折そーいう日があってもいいと思います。それで成果が出てるならそれでいいと思います。あなたが本当にロングトーン練習に必要を感じるのならそれでいいんです。でもそれ、本当に意味がありますか?

その状態の子に「君は半年間ロングトーンの練習しなくていいから、代わりにスケールを全調2オクターブで覚えなさい。寝てても吹けるようになったら3オクターブ目をゆっくり覚えていきなさい」と言って、次のレッスンでは見違えるほど上手くなってます。

 

僕が思うに、ロングトーンの練習というのは基礎の中の基礎です。

ロングトーンでいい音作り(基礎の基礎)、ロングトーンで作ったいい音を最も単純な音列であるスケールで並べる訓練をする(基礎)、そのスケールを曲中で生かせる練習をする(実践)、という流れだと考えます。

そしてファゴットという楽器は、リードとボーカルと楽器が整ってさえいれば、ロングトーンの練習にそこまで苦労はしないはずなんです。何度でもいいますが、もし苦労しているならロングトーン練習をたくさんしてください。でも多分、その前にリードやボーカルを確認してみたほうがいいかも。

 

実は何年も前から考えていたことなのですが、こうして記事にしたのは色んな子を教えて確証を持ったからです。

「今のあなたは、ロングトーンがうますぎる、今それ以上はロングトーンは上手くならないから、スケールを練習しなさい。1週間で別人のように上手くなるから。」

この指示で別人クラスに上達した子が本当にたくさんいます。逆にレベルが上がっていくと、またロングトーンの練習が必要になって指示したりしますけれど。

 

 

ロングトーン練習は万能ではありません。限られた練習時間の中で「何も考えずとりあえずやればいい練習」だと思ってるなら、それは大きな間違いです。何も考えずとりあえずやればいい練習なんて一つもありませんから。

必要な基礎練習は人によって違います。今あなたにとって何が必要なのか、ちゃんと考えて選択すること。時間は有限なのですから。

ロングトーン練習の呪いから皆さんが解放されますように。

 

それでも自分のロングトーンに自信がないのなら、一度あなたのロングトーンを僕に聴かせてください。そのうえで、あなたに必要な基礎練習を一緒に考えていきましょう。お問い合わせは https://docs.google.com/forms/d/152E8ulw8F4t_WI4IiZTHX8oQyTcXz2cckPJVaPhpdyM

こちらから。お待ちしてます。

 

 

 

 

第12回門下発表会でした。講評、次回のこと、コンセプトなど。

こんにちは。一番最初に申し上げたいことは謝罪です。

このブログを見てレッスン依頼やリード注文の連絡をしてくださる人が結構いるし、記事を楽しみにしてくれている方も一定数いるのに、前回の更新が第11回発表会の講評記事でした・・・。

といっても恐ろしいことに(?)3か月半しか経ってないんですよね。いやでも3か月以上間の開くブログなんて、ブログとしての意味を成さないと思いますし、書きたいネタはたくさん溜まっているので近いうちにまた。

それにしても言いたいことを文章にするの、若いころに比べて苦手になったなぁ・・・。

 

というわけでタイトル通り、第12回の門下発表会が先週末に行われました。

ここまで回数をやっていると、わりと著名な奏者の方に存在を知られていたりすることも多いので、もうビビってる場合ではないと思い(?)今回のゲストは神奈川フィルの首席ファゴット奏者である鈴木一成さんに来て頂きました。

会場も日本ダブルリード株式会社様のサロンということで、会そのものが公なものになってきたなぁという気持ちです。

とはいえこの僕が取り仕切る会なので色々とゆるい部分も多いのも確かで、そこは常連出演者たちに助けられながらどうにかやっていけている、という感じでしょうか。

 

f:id:torakitsune:20180714193217j:plain

 

毎回言ってる気がしますが、そもそものコンセプトが「難しいこと考えずにソロのレパートリーを人前で演奏すれば手っ取り早くうまくなるのでは」という気楽なものです。ファゴットの方はだれでも最初は「私がソロなんてとんでもない」と言って敬遠しがちですが、うちの会では楽器を初めて1年未満の初心者までもがきちんと1曲吹ききります。そして見違えるようなレベルアップをしていきますので、

「短期間でレベルアップ」「旋律をうまく吹けるようになりたい」「テクニックが欲しい」「ファゴット吹きの仲間が欲しい」「土日たくさん時間を取れないのでオケや吹奏楽は難しいけど楽器は吹きたい」という方にはおススメです。

最後の「土日に時間をあまりとれない人」というのは、発表会というのはとどのつまり、自分が練習さえできれば、あとはピアノ合わせに1時間程度と本番の日の予定だけ抑えれば演奏できますので、時間がない人にこそおススメの場所だと思います。レッスンは平日にも行っていますのでご都合よい時に来てくだされば。

 

というわけで、次回発表会のご案内です。興味のある方は下記のフォームからご連絡くださいね。

秋のひとときコンサート(第13回とのむら門下発表会)

2018年11月24日(土)お昼頃開演

アーティストサロン"dolce"(新宿駅西口より徒歩5分程度、ドルチェ楽器新宿店内)

参加内容

ファゴットソロを演奏する方(ピアノ伴奏あり、なしどちらでも)

・アンサンブルを演奏する方(編成自由)

です。普段ほかの先生に習っている方も歓迎(条件あり?)です、ご相談ください。

参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン1回分など)

ファゴットソロ(社会人)14000円

ファゴットソロ(学生)10000円

・アンサンブル 1人6000円

かけもちについてはご相談ください。

参加費にはレッスン1回分の料金を含んでいます。ふるってご参加ください!

参加〆切は特にありませんが、準備やレッスンのことなどを考えると10月末までにお申込みいただくとスムーズかもしれません。

皆様のご連絡お待ちしております。

申し込みフォームはこちら 

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さて、ここからは今回の発表会の演奏に対する講評記事です。

出演者以外の方には興味のない部分かもしれません。ご了承ください。

プログラム順です。演奏者については伏せていますが、問題があれば変更・削除しますのでご連絡頂ければと思います。

最後に総評を書いていますので興味があれば飛ばして読んでみてください。

 

1.無伴奏チェロ組曲1番より「ブーレ1.2」/バッハ

正直驚きました。技術的な進歩よりも、本来上級者でも難しいバッハの無伴奏を、自分なりにとても音楽的に演奏されていました。僕が教えた事を実施するのはある意味簡単なことかもしれませんが、それを越えて来てくれたのは、音楽的背景(人生経験?)の豊かさを感じます。さすがのひと言です。

1音1音をしっかり吹く、ということと音楽的な流れを作るということは逆のことのようで実は共通する部分が多く、そういった意味では前者はもう少しあってもよかったかもしれません。流れを作るための「この音!」みたいなものがもっと見たかった。それについては、僕の教えた事をもっと実施してくれてもよかったのかもしれません。

でもそんなこと、今後いくらでもできますので、初心者でもなんでも「自分のやりたい演奏」をきちんと伝えてくれたことが僕はとても嬉しかったです。今後も期待しています!

 

2.ファゴットソナタ/グリンカ

出演者の中で最もプレッシャーを感じていたのではないでしょうか。自分でどう感じているのかは分からないけど、「魅力的」であることと「派手」が大前提のこの曲、きっと苦手分野だった(魅力を伝えづらいタイプの曲に味付けがうまいタイプだと僕は評価しています)と思うのだけど、苦手をものともしない、魅力的で派手な演奏だったと思います。

レッスンで口をすっぱく「ピアノとのデュエット」という要素について触れたと思います。たしかによく聴いて演奏しているのですが、よく聴く(だけ)ということとデュエットをすることは似てるようで全然違います。そういう意味で「聴く」に徹してしまった部分が多く聞えました。それは間接的に自分の首を絞めることになっていたこともあったかと思います。テンポ感とか音程とかね。特にピアノの「左手」がよく聴けるのはさすがファゴット吹きといったところですが、「右手」もよく聴いてみよう。相手がオーボエクラリネットだったら今回みたいな寄り添い方はきっとしないはず。

でもとにかく、色彩感覚に優れた演奏だったと思います。場面転換の上手さや色の変え方はさすがでした。古株の貫禄は十分に見せてくれたと思います。次も同じ路線、というかしっかり歌う曲に挑戦してもいいかも。テクニックは十分あると思うので、テクニックの使い方に問題がありそうです。

 

3.ファゴット小協奏曲/ダビッド

脱・芸人は間違いないと思います。本番でちょろちょろあったことなんてひとつも気にならなくて、ロマン派のこの手の旋律が美しく吹けるのは才能と努力と感性があってこそだと思います。もっと誇りに思ってほしいところ。

音の処理、ということについてもう少し考えてみてほしい。音の処理というのは、フレーズの終わりの音をどうする、ではなくその音に向かう前の音をどう処理していくか、ということなんだと思います。最後の音だけで何かしようとする癖があるようです。

楽器とボーカルの鳴らし方はよく分かってきたんじゃないかなと思います。自分にとってのいい楽器を買うのは(信用があってローンを組めば)簡単なことですしそれはそれで素晴らしいと思いますが、今あるセッティングを信じていい音を作っていく、というのもやはり楽器演奏の醍醐味。そういったこだわりが少し演奏に見えてきて、聴いていて「うまいファゴット」以上に「君のファゴット」を愛して貰えるような、そんな風に成長していってると思います。

早い部分をさらうのも随分上手になりました。今回うまくいかなかった部分というのは、今後数をこなしていけば「何が難しかったんだっけ?」と思うくらいスムーズにいくようになると思います。ただ少し「諦めグセ」が気になります。生演奏が前提なのだから、何かあっても突き進む精神はぜったいに必要なことです。

 

4.3つの小品/ツェムリンスキー

楽曲に対する想い以上の「適性」はないな、と思わせる演奏でした。まだ若いですしハマり役、と言えるほど多分まだ個人で楽曲に取り組んではいないかとは思いますし僕も数回しか演奏を聴いていませんが、この曲が「ハマっている」と思わせる演奏でした。それは実力以上に演奏をうまく聴かせてくれます。何か月か前の「えっ私がソロなんて・・・」と言っていた頃より、ずっといい顔するようになりました。

1回のレッスンしかしてあげられなかったことをこんなに悔やんだ事は発表会創立以降はじめてかもしれません。技術的に音楽的に、もっと大きく僕に影響を受ければ君の思い通り吹けたんじゃないか、という箇所が数えきれないほどありました、それについてはこちらにも責任がありますね・・・次回はもっとじっくりやりましょう!

吹奏楽コンクールは「技術」と「表現」で採点しますが、僕はそのバランスがとても大事だと思っていて、どちらかに偏った演奏は必ずいい評価を得れません。そういった意味で、今回の演奏はそのバランスがずば抜けてよかったと思います。音楽表現のための技術を、自分なりにたくさん磨いた時間を過ごしたんだろうね。時間の使い方は大変にうまいと思います。

課題としては音色の操作でしょうか。まずは「厚い音」と「薄い音」の操作から覚えるといいかもしれません。「厚くて」「小さい」音、「薄くて」「大きい」音、という使い分けをすることで、今回みたいな時間の使い方をすればもっとやりたいことがスムーズにやれたんじゃないかなと思います。色彩感や和声感も気になる部分ですが、それは音色の操作ができれば気にならない要素なのかもしれません。

 

5.ファゴット協奏曲第1楽章/ロッシーニ

何度か言ってると思いますが、ステージのふるまいをいい加減に覚えましょう。君がそうだというわけではもちろんないですが、仮に普段横柄なひとだとしても「演奏家」を演じるてふるまうことで聴いている人の印象はずいぶん変わります。例えばチューニングにしても、馬鹿でかい音量を出してる人がほかにいるでしょうか。演奏前に「うげ」と思われたらもう聴いてもらえないですよ。

さて演奏ですが、各段にレベルアップしていると思います。自分では納得していないかもしれませんが、技術的には今までで一番安定していました。これがどれだけ大きな意味のある誉め言葉なのかは、きっと本人にしか伝わっていないと思いますが・・・。

表現としては、例えば「この音を大きく(小さく)!!」と思ったら、その音だけではなくその前後の音にもっともっと気を遣うことです。アーティキュレーションに関しても選択した以上、それを使った表現というものが必ずついてきます。最後の方でギリギリ理解したきたようですがもっと身に着ければ理想の演奏に近づくのではないでしょうか。

本番だけ何かしかけるようなことをもししているのなら、それは5年早いのですが、もしそうでないのなら、いや、仮にそうだとしても。もっと「1音1音大切に」演奏できるようにしましょう。もちろん本番で。逸脱した大きい音や限界に挑むような小さい音は使用回数に限度があります。0~3回でおさめてください。悪い意味で先のことしか見ていないためアウフタクトの音やフレーズ最後の音のへの想いが致命的に欠けている印象です。気を付けて練習していても、本番で意気込んで壊してしまっては台無しです。

今まででもっとも「丁寧に練習する」ということを意識してきたと思います。それを知っているからこそ、本番でもっとそれが見える演奏をしてほしかった。そう思います。

とはいえ難曲をよく演奏しました。次回はもう少し、手の届く曲の方がいいかもしれませんね。

 

ファゴットソナタホ短調より第1.2楽章/テレマン

演奏中、体調不良を思わせるようすは全くなかったです。それは高い集中力によるものだと思います。なんだかんだ言って演奏に最も大切な能力だと思います、素晴らしい!

さて技術的な成長は自分が一番感じてると思うのでここで語ることはなにもないです。安定した楽器の鳴らし方が身に着いたし、もともととても器用なので今後どんな曲も怖くないでしょう。遅い楽章でビート感まで遅くなってしまうのが残念でした。アゴーギグは伸びた分縮む必要があるのです。1楽章はすこし、伸びっぱなしでした。縮むのには勇気がいるよね。

2楽章もとてもよく安定し、提案した表現の仕方にもよく対応したと思います。なんだかんだ休みの少ないこの曲で最後まで集中して吹けたのはいい練習時間を過ごしたからなのでしょう。もっと自分の演奏を誇って、褒めてあげてほしい。気になるのはフレーズの始まり方。同じリズムや音が多いこの曲において、フレーズの始まりを常に意識しないと、いくらそのあと色んなことをしても棒吹きに聞こえてしまいがちです。

デートで大切なのは待ち合わせと別れ際。ですよ。

 

7.ファゴット協奏曲第1楽章/シュターミッツ

チューニングではもっと、自分の状態を確かめましょう。Aを吹いたことで今から吹くリードの調子を見るのです。ほかの音を吹いてもいいですが、それがイマイチなら感覚を修正すること。そういった準備を恥ずかしげなくチューニングの時にやるのも、本番を成功させる秘訣のひとつです。

さて、それにしても本当に成長しました。基本的に「身の丈ちょっと上くらい」の選曲をすすめていますが、身の丈の倍以上あるようなこの曲をよくモノにしました。これを吹けるようになるためにした練習方法を、今後に生かしていけばもう誰にも初心者なんて呼ばせないでしょう。

いつも言っている事ですが、音を発音するときに「ブレス」→「発音準備」→「発音」という過程を今一度定着させましょう。録音を聴けばフレーズの最初の音の発音が7割くらい失敗していることがわかると思いますが、それはその過程に起因するものだと思います。

いつか1~2年後、この曲にリベンジして誰よりもうまいシュターミッツを聴かせてほしい。自分で思っている以上に器用なので、思いのほかひょいと乗り越えてしまった要素をきちんと振り返るような練習時間をとれるともっとうまくなるんじゃないかな。

 

8.カプリオール組曲より/ウォーロック

9.ユーモレスク/ツェムリンスキー

打ち上げでも言いましたが・・・フルートの方の成長に驚きました。音色が良くなった、というと言葉が安っぽいですが、元々持っていた「いい音」をきちんと並べられるようになった、という印象です。なんだかんだ木五の顔はフルートだと思います。その調子で皆の憧れを目指していってほしいです。

オーボエが棒吹き気味、というのはもう再三言ってることですが・・・。例えばですが、実際にわざと「棒吹き」をしてみて、「そうじゃない」演奏を目指すと面白くなるんじゃないでしょうか。自分たちで合わせをするだけで本番を迎える普通のコンサートと違ってうちはいつでも僕のレッスンが間に入るので、さすがに同じことをそう何度も言いたくはないです。言ってほしいのなら言うけど。なにも「音量」や「音色」や「ビブラート」を操作することだけが「表現」ではないです。それをしたくないのなら、ほかのやり方を模索するべきです。

僕はアマチュアの方でも、たった1曲、たった1楽章、たった1フレーズ、たった1音ならプロに匹敵、いや越えることがたくさんあると思います。特にアンサンブルの団体にはその領域を目指してほしいと僕は思っています。

クラリネットは「棒吹き」も「引っ込み思案」も克服したと言っていいと思います。もともと小さいほうにバランスを取るのはとても上手なので、今後は全体のバランスを動かさないまま、その他4人(クラリネットと比べると大変強弱に不自由な楽器ばかりです)をいい意味で煽るような操作するような、そんな演奏を目指してほしいです。例えば誰よりも曲の仕組みを理解するためにスコアを熟読するとか見ながら吹くとか。そんな領域を目指していっていいと思います。

ホルンは会場でいきなりでバランスが取りにくく苦労したかと思います。5人の中で最もアンサンブルがうまかった、と言っていいと思います。別の人で述べていますがアンサンブルするというのは寄り添うだけではなくて、時に仕掛けたり守ったりすることも大事かと思いますが、無意識かもしれませんがそういった合わせ方がとてもお見事でした。ただし木五というのはソリスト集団である必要があります。うちの会では少数派かもしれませんが、木五を聴く時にホルンを一番楽しみに聴く、という人もいるかと思います。その人のために、もっともっと不意に出てくる「ホルンのソロ」が美しいといいなぁ。客席に人気投票アンケートを取ったら、ひとフレーズのソロだけで9割がホルンに入れるような、そんな音を聴かせてほしいです。

ファゴットはもともと、ソロよりアンサンブルで光るタイプのようです。技術的な底上げがあったのもあり今回さらに光っていました。他人に影響を受けながら吹く、というのは時にしんどいですが、楽隊である我々には適性と言えるのではないでしょうか。支え、強奏時の先導、自分が主役・そうでない時のバランス感覚、見事でした。弱奏時に人を救ったり頼ったり煽ったり、みたいなものが見えるともっといいかな。小さいほうのダイナミクスに余裕があればもっとできるのかもしれないですね。

全体としては(少しずつ人が変わったにしろ)継続していってる貴重な木五の一つです。このまま続けていくことで見えてくるものを大切に色んなレパートリーにいどんでいってほしいと思います。

 

10.3つの小品/ケックラン

もはや絶滅危惧種である友人枠。ほんと、いつも選曲がたまらない!

Fis-Hにたくさんの想いを感じました。想いは感じるのですが、それがもっと音に変わればうれしいなぁ。特に発展する前。ただの2本の音が並んでいて、なにか操作しているわけではないけど、意思がある、そんな2本を目指せるとよいですね。

僕らの師匠のケックラン、聴いてみたいですね・・

 

11.トリオソナタNo.1 RV/ヴィヴァルディ

異色トリオ。アンサンブル参加はファゴット抜きの編成も大歓迎です。ですが、なかなか集まりづらいのが現状なのですが・・・・定着してくれて嬉しいです。前回と同タイプの曲ですが、アレンジがいい方に変わってくれたのでとてもよかった。

レッスンから本番までドタバタの準備だったかと思いますが、それでも本番あそこまでいい演奏になったのはいい時間を過ごせたからでしょう。ただ音楽表現に関して、レッスンでお伝えして本番で実施したことは、今までのアンサンブルレッスンの中で教えたことがおそらく自分たちである程度応用できることばかりだったのではないでしょうか。

鍵盤楽器、管楽器、弦楽器、と3種類の楽器が集まれば違う角度からの意見が飛び交って当然で、そういった交わりがあまり見えなかったことが残念でした。安定したいい演奏、曲の魅力もきちんと表現できていますが、3人が曲の中で交流しているようには聴こえませんでした。そこがとっても残念。でも確実にレベルアップはしていると思います。そろそろMVP狙ってほしい!

 

12.演奏会用独奏曲/ピエルネ

前回のMVP演奏から今回にかけて「あれはまぐれか」と皮肉を言うのを実は楽しみにしていた(くらい前回が素晴らしかった、という意味です)のですが・・・本当にマグレじゃなくて、一皮向けたようです。人(この場合は先生にあたる人物)にいろいろ言われて、その通りやるのはある意味簡単ですが、自分なりに咀嚼して別のもっといいものに変えて演奏する、というやり方がしっかり身に着いたんだと思います。誰にでもできることではないし、そういった意味ではこの会にいる他門下勢(普段はほかの先生、発表会前は僕のところへ)より一枚上手かもしれません。素晴らしいことです。

さて気になるのは音色です。いやいい音です、いい音なんですが・・・同じいい音がずっと並ぶとやはり飽きます。それを飽きさせないように工夫して演奏できているので素晴らしいのですが、もう一皮むけるには、「いい音」の引き出しをもっと増やすことです。「私の音はこんな音」と決めつけるのではなく、役者さんのようにその「役」に適した音色をその都度作っていく必要がありそうです。

とはいえいつも通り、いやいつも以上にハイレベルな演奏だったと思います。レパートリーをただなぞるのではなく、その中できっちりと成長していけてるのは演奏への想いがなせる業ですね。

 

13.朗唱、シチリアーノとロンド/ボザ

いや本当に、MVPで良かったんじゃないかなって思わなくもないです。大変見事な演奏でした。レッスンとピアノ合わせを経てどんどん変わっていくさまが本当におもしろく、呑み込みの早さが素晴らしかった。反応がいいとピアニストがどんどんいい音を出してくださるので相乗効果でやるたび良くなっていきました。

ビブラートが大変美しいですしとても僕の好みです、もっと磨いていってほしいのですが、(むろん音によりますが)かかる前に比べて後ろが、音程が下がり気味に落ち着くことが多くクセのようです。惜しいところなので改善するといいかも。デッドな会場なら気になりませんが、2~3秒の残響があると気持ち悪く聞えてしまうかも。その弊害なのか、音の処理で音程がぶら下がることも多いです。音色の印象は「出だし、伸ばした音、処理」の3要素で決まります。要注意です。

コンサート向きな作品強さは間違いなくあるようです。今後は大曲と呼ばれる作品(ウェーバーモーツァルトの協奏曲、タンスマンやサンサーンスヒンデミットなどのソナタもの)に取り組んでいくことで、レパートリーが広がる以上にもっと根っこの部分が成長できるんじゃないかなと思います。

今後も楽しみにしています!年長者のハードルを爆上げしにきてくださいね。

 

14.バス・ナイチンゲール/シュルホフ

発表会史上初・コントラファゴットの演奏でした。前評判(?)通り本当にコントラファゴットの名手だなと思います。慣れない楽器でよくここまで作りこみました。

冒頭の2部音符2個目、Gesの音程は(楽器の特性ですが)異様に低いです。特に半音進行のときは気を付けないと、同じ音に聴こえかねません。もしかしたらGを低めに取るのも作戦かも・・?

色物、と言われても仕方のない選曲ですから、もっと「えげつなさ」を出す工夫があってよかったかもしれません。2楽章のテンポはもっと動いていいし、息を吸うためにぽっかりと穴をあけない工夫(テンポの操作、フレーズで)はもっと研究してほしかったです。アーティキュレーションは器楽作品の命ですから、そこにももっと意味を持たせてほしかった。

とはいえ、操作が難しい楽器でよくここまでこの曲の面白さを見せてくれたなと思います。今度僕もこの曲どこかで吹いてみようかな・・・。

 

15.ファゴットソナタホ短調第1.2楽章/テレマン

まず立ち姿から。なんだか立派になりました。「おっちょっとやるのかな?」と思わせる構えはなかなかできることじゃないです。前は「いかにも不安そう」だったので。精神的なところも大きいのかな。自信があったんだと思います。事実、自信に見合ったしっかりとした演奏でした。

少し音色が、下に向くというかこもりすぎてるのが気になります。それが前提だと少し口が閉まるともう音が出ないので、1楽章の最後のトラブルはそこに起因していると思います。2楽章のテンポ感、「おいおいそれで大丈夫か!?」と思ったらそのテンポで吹けるまで練習してきたんですね・・・良くも悪くも練習嫌いが多い門下の中で、本当によくやってきたんだと思います。

さて。ステージ上で自分と楽器以外に味方ってどれだけいるでしょうか。発表会に限って言えばピアニストは味方です。大いに助けてもらっていいと思いますが、もう1つだけあると思います。それが譜面です。僕は暗譜なんてものは一切必要のない行為(少なくと発表会においてピアノ伴奏で曲を吹くことに関して)だと思いますし譜面を見てることでできることが増える、とまで思っています。その譜面の管理、というか操作で起きた事故というものは、起きるべくして起こります。それ込みで練習し、それがスムーズにいくのも大切なことなんだ、と、たぶん本人が最も自覚していることでしょう。

ただ、落ちて戻ってこれなかったのは伴奏の形を覚えていないから、です。動揺したのもあると思いますが・・・ステージ慣れも影響しますしまだまだその領域は遠いかもしれませんが、あそこですっと戻ってこれるような曲への理解は本来必要なことなのかもしれません。

とはいえ、急成長を遂げた人の一人だと思います。自分の演奏に誇りを持って、今後ともいい演奏ができますように!

 

16.幻想小曲集より第1.2楽章/シューマン

出演者の中でもトップクラスに準備時間が少なかったと思いますが、それを感じさせないクオリティと楽曲に対する理解度でした。普段どれだけ楽器に誠実に向き合ってるかが音楽に現れていて僕好みの演奏でした。

「こう吹きたい」「こういった流れにしたい」という意思はよく伝わってきます。ただしやりすぎは厳禁です。リードと楽器のキャパシティを越えた息を入れてもいい音は鳴ってくれませんし、逆効果になることも多いです。何度か「息を入れる」のではなく「リードを鳴らす」のだ、という話をしてきていますが、それはよく理解し実行できていると思います。もうワンステップ先にある意識として、鳴らしたリードの振動をボーカルに押し込めるような感覚がつかめるともっといいかもしれません。それはつまり、リードをしっかり鳴らすが適切でない鳴らし方をしない、ということです。

小さい音、大きい音、どちらも自在に使いこなしていると思います。レベルアップのためには、小さいけど強い音、大きいけど優しい音、のような操作を覚えていけたらいいですね。それにはきっと、リードの鳴り方やビブラートのかけ方を計算していくといいのかもしれません。もちろんケースバイケースですが。

シューマンという作曲家がよくハマりますね。好きなのでしょうか。ハマる曲もいいですが、ハマらない曲、というのもいいものです。ヒンデミットやボザ、タンスマンの組曲などに挑戦すると面白いかもしれません。

 

17.木管五重奏曲より第1.3楽章/タファネル

今回のアンサンブルMVPでした。いやいやメンツ見れば当たり前でしょ、という常連組の声が聞こえてきそうですが、何をおっしゃる、アンサンブルというのはメンツが決まった時点で7割は完成しているんですよ。その行動力と人望でいいアンサンブルを作るのです。

各々に伝えた課題のようなものは見事に越えてきてくれました。長年寄り添った仲間同士のようにも見える演奏でした。普段からそれぞれ色んなことを考えて楽器を吹いてることがこの5人が集まることでいい形にまとまったのだと思います。

特にフルートのレベルアップには脱帽です。初めて参加する人はこのフルートの人が5部でファゴットを持ってフンメルのコンチェルトを演奏したことにぶったまげたことでしょう。この発表会を一番楽しんでいるのはこの木五のフルート吹きなんじゃないかな。

ファゴットはすこし低音のレスポンスが悪いように聞こえます。2楽章を外したのですから、もっと強い低音の鳴りやすいリードを選んだほうがよかったのかも。木五のファゴットに一番大切なのは馬力だと思います。いい音でも支える厚さがなければ馬力不足になりがち。馬力が足りないのはオーボエも同様でしたが、それは今後に期待するとしましょう。

何度でも言いますが2楽章のホルンソロが聴いてみたかった。尺のことは気にせず全楽章に挑戦してほしかったなぁ。クラリネットは今まで聴いたどんな演奏より光って見えました、ソロやトリオより、ある程度人数のいるアンサンブルで実力を発揮するタイプなんでしょうか。間違いなくこの木五の中枢だったと言えます。

「このメンツはずるい!」「このメンバーは面白そう!」とコミュニティ内で思わせるような木五の結成、ほかの参加者の皆様からもお待ちしております。

 

18.サラバンドとコルテージュ/ディティーユ(ゲスト演奏)

僕がなにか語るようなことがあるでしょうか。笑

ゲストの鈴木一成さんとは、日本で行われたIDRSのときにFOXプレイヤーのステージでご一緒したときに出会いました。とにかく圧倒的に自由で魅力的で、一瞬でファンになってしまい、いつかこの会に・・・!と思っていましたがまさかこんなに早く願いが叶うとは。本当にありがとうございました!生徒たちも大喜びでした。

 

19.ファゴットソナタ/サンサーンス

出来の悪い演奏でした!

・・・いや、私です、これ吹いたの。運営しながら自身もシビアな曲を演奏する、というのは自分で決めたことではあるのですが、やはりこの曲を納得できるクオリティで演奏するにはまだまだレベル不足ですね・・・。笑

とは言え色んな方から貴重なお褒めの言葉も頂き、自己評価と他人の評価というのはなかなかかみ合わないものです。

何度かお話してる気もしますが、ここまでたくさんの生徒のレッスンをしていると「レッスンプロ」「発表会運営の人」というレッテルを貼られてしまいそうで。もちろんオケや室内楽のお仕事もさせて頂いていますが、表に出ることもそう多くはないですし人の印象というのはなかなか思った通りに作ることができないものです。あくまで僕自身が現役のプレイヤーであること、だからこそ生徒たちに与えてあげられるものがあるということ、それをかなえるためには、と思った結果、自身も生徒たちと一緒に曲に挑戦する!ということになりました。

おかげ様でサンサーンスは今後も取り組むことになりましたので次は納得できるクオリティまで仕上げたいですね。

 

20.ファゴットソナタヘ短調より第1.2楽章/テレマン

いや本当に上手くなったね。っていつも言ってるのですが、ここまで毎回確実に根っこからうまくなる子がほかにいるでしょうか。1楽章の冒頭なんて、ちょっとした音大生よりうまいんじゃないかな。ダイナミクスの操作は元々得意でしたが、「使い方」がよく分かってきて、曲によくハマっていました。以前ならもっと逸脱してしまっていたと思います。

バロック作品ですので、もっと遊びがあってもよかった。そしてそれが自主的に生まれてくるともっとよかった。上手くなることも大切ですが、曲を楽しむ・楽しませることも大切です、こんどバロック作品に取り組むときは「ちょっとそれ装飾入れすぎ」と僕にツッコミを入れさせてくれることを期待してます。もともとそーいうのは好きでしょ?

フレーズの最後の音の処理が曖昧かつ、ワンパターンです。シーンによって全然違うはずなのに全く変化が見受けられませんでした。全体のクオリティが高く流れが出来上がってるからこそとっても気になりました。ほかの子にも書いた言葉ですが、デートで最も大切なのは待ち合わせと別れ際です。肝に銘じましょう。

以前にも指摘しましたが、音色も1種類しかないように聞こえます。厚い音薄い音、響く音響かない音、あたりが作れて選べればもっと可能性が広がると思います。今後にも期待してます。

 

21.チェロとコントラバスのための二重奏曲より第1.2楽章/ロッシーニ

ファゴットコントラバスという異色デュエットでした。この曲はファゴットのコミュニティならまず間違いなくコントラファゴットと一緒にやるかと思うのですが・・・それだけこの相方と共演することに意味があったのだと思います。

「音域の違い」や「弦と管の差」など、実際に存在する差異以上にズレが大きかったように思います。それはバランスであったり音色の操作で調節するもので、管楽器同士のとき以上に気を付けなければいけないのですが・・・もっとすり寄ってほしかった。二重奏は「合っていて当たり前」で差を楽しんだりシンクロ感を楽しむものだと思いますが・・・残念ながら今回は曲にすることに精一杯の印象、という印象でした。

ロッシーニという作曲家の作品はもっと美しく高揚感のあるものだと思います。そういったものを目指すには練度が全く足りなかったと言えます。思い入れを感じるだけにそれが残念でした。具体的にはコントラバスはフレーズ感や和声感、ファゴットには音色のコントロールやフレーズの終わりへの気遣いが足りないようです。

とはいえ、本来とても難しい作品をオリジナル以上に難しい編成でなんとか演奏まで持っていったことも事実ですし、確かな思い入れを感じました。きっと人の心に響く演奏というのはその向こう側にあると思います。今後も面白いものを聴かせてくれるのを楽しみにしています。

関係ないですが、僕がファゴット以外で唯一ほんのちょっと触れる楽器がコントラバスです。僕個人としては聴いていてとっても幸せな編成でした。

 

22.ファゴットソナタ/グリンカ

いやもう、MVPでよかったよね。本日2回目。初めてレッスンにこの曲を持ってきたときのがむしゃらな演奏から、よくここまで色っぽい演奏まで仕上げたなと思います。今回グリンカは2人いましたがそれぞれ違って本当に面白かった。

なにに影響を受けてここまで面白い演奏ができるようになったのかはよく分からないのですが、レッスンをしている印象ではだれよりも僕の音をよく聴いてるように思います。もしそれが影響しているなら、僕もプレイヤーとしてすごく嬉しいです。音と音のつながり方もいい意味で自然でとても美しい音の並びがたくさん聴けました。ただ上手いだけの子ではこうは吹けません、大変見事でした。特に主役に回らないときのピアノとのバランス感覚は抜群でした。

レッスンでも指摘した内容ですが、フレーズの後ろの音が膨らむクセがあります。それでいいときもありますが、いつもそれでは少し不自然が生まれてしまいますし、「膨らませる」のと「膨らんでしまう」のは少し意味が違います。改善点だと思います。また、おそらく自覚があると思いますが強奏時、横に広がってしまうような傾向があってそれを気にして不完全燃焼になる事が多いです。ボーカルやリードで解決することもあると思いますが、時には音色を気にせず責めたてるような箇所があってもいいのではないでしょうか。再現部に冒頭との違いがもっとあるほうが僕は好きでした。

グリンカは今後ともうちの発表会で憧れのレパートリーの一つになるでしょう!

 

23.三重奏曲より第1楽章/プーランク

みんなの憧れ、プーランクのトリオですね。合わせでふたりが初対面、というなんとも現代らしい形でつながったアンサンブルでしたね。

総評として、2人ともかなりハイレベルな演奏をするし、ピアノと3人で合ってないわけでもない。でもこの曲の「聴きたいレベル」がものすごい高いところにあるのでしょう、そこには届いていない印象でした。それだけ大曲に取り組んだ、ということだけで本来価値のあるものですが、二人の目指すところはもっと高いところにあったと思うので、少し厳しめに。

オーボエはまず、少人数で立つステージをもっと踏む必要がありますね。ステージに立つ、礼をする、チューニングをする、自分の休符で他人の音を聴く、演奏後に礼をしてステージを降りる、などの一連の流れがあまり美しくありませんでした。あまり(室内楽や単独のリサイタルなどの)演奏会にも足を運ばないのかな。もし足を運ぶ機会があるのなら、そういった部分からよく見てみて真似をしてみるといいです。ファゴットやピアノのソロ時は楽器をおろしてどんな顔で吹いてるか観察するくらいの余裕が必要です。シンプルに共演者も動揺します。事実、明らかにしてました。笑 ステージ上での所作、難しいものですね。基本的には、自然でいいのですが。

またアーティキュレーションについてレッスン時にもいくつか指摘もしました。演奏者は「表現者」ではなく「再現者」と考えましょう。プーランクという大作曲家の作品を再現させていただく、という立場である以上、譜面にある情報を見過ごすのは責任を果たしていないことになります。どうしても難しい!という場所があれば限定的に変更し共演者に説明し合わせてもらう必要があると思います。

一流の室内楽ピアニストとアンサンブル大好きファゴット吹きにピッタリ寄り添ってもらった経験はきっとこの先に大きく生きると思います。いつかあなたが、この経験を活かしてほかのだれかに寄り添ってあげられたら素敵なことですね。「会場全体を虜にして」とお願いしたフレーズ、全体とは言わないまでも6割くらいは虜にできたんじゃないでしょうか。とても僕の好きな演奏をするオーボエだったと思います。今後に期待します。次回以降もぜひ。

ファゴットは寄り添うことと自分が前に出ることの瞬発力が問われる曲でしたね。ポテンシャルの高さを感じました。音色と音量の操作がとにかく一流で大変い見事な演奏でした。逆に言うとそれが仇となって(操作がうますぎて気にならないと言えばならないのですが)フレーズ感がおろそかになる事が多いようです。某門下生の言葉を借りるなら「規格外に上手い」と僕も思います。そこからもっと楽しむ・楽しませるためにはとにかくフレーズ感を磨くことです。「こう吹く!」とこだわることだけではなく、ほかのパターンや可能性を見つけて取り込んでいくようなことを繰り返したらまた違う世界が見えるでしょう!

なんだか辛口になってしまい各方面から怒られそうでしたが、僕はこのトリオがものすごく好きなので同じメンバー(ピアニストのご都合が合うといいのですが!)でまた演奏してほしいと思っています。

 

24.3つのロマンス/シューマン

ロマンス3人衆の1人目。完成度の高いところからレッスンができるのでいつも色んなことを教えてあげられてこちらも楽しませてもらっています。2楽章があれだけ安定して吹ければ、第九の3楽章はへっちゃらでしょう!・・・いや、そうもいかないかな。成果のほどはいかに。「音量を絞りすぎない」という方法をいくつか取りましたが、結果として体力配分としてはうまくいったと思います。が、やはりフレーズの最後やワンポイント(エコーの部分とか)でもっと薄い音、弱い音が聴きたかった。

また、ちょっと指を回すポイントになるとテクニックにリソースがいくのか、流れのようなものが薄くなるのも気になりました。「指回しモード」みたいのが存在するのでしょうか。そこだけ音楽的に内容が薄くなるようです。音数が多い箇所ほど、大切に、大切に。

弱音時に音がフラつくようです。音程が変に上がらないのが立派ですが、むしろぶら下がることが多いような・・・。口は閉まっていないようですが、息の下の方(所謂お腹というやつ)の支えが弱くなるのかも。弱音時こそ気をつけて。

この手のゆっくり系、もう1曲どこかで取り組んでみてほしい。同じシューマンでもいいしケックランやディティーユなんかのフランスものでもいいかも。時間のないなか、本当にレベルアップした演奏を聴かせてくれました。

 

25.ロマンス/エルガー

ロマンス3人衆の2人目。楽曲に対する愛!というか思い入れを強く感じました。この曲を愛しいい演奏をしよう、ということはファゴット吹きとしてはとても大切なことだと思います。大切なレパートリーですよね。

音楽的な流れはとっても良かったです。テンポのゆらぎなんかも独特ではありますが不自然ではないし、曲のイメージ通りの演奏ができていたと思います。この曲を「イメージ通り吹く」というのは演奏した本人がどれだけ難しいことか分かっているはずなので、それはクリアしています。お見事でした。

さて、突然あらわれる指回しポイント。そこにアゴーギグを用いて丁寧に吹いてほしかった。ただの駆け上がりにするのではなく、その音の羅列に愛情をもっと持ってほしかった。フレーズの語尾で音程がぶら下がることも少し気になりました。コツとしては音程が上がることに気を付けながら、支えは失わずに、という意識を持つことでしょうか。

また、フレーズを作るとき、大きくなっていくときは音色の操作があるのですが、そこから収まるときに音色が変わりません。音量が変わってはいるのですが大きな印象の差を感じにくい演奏になってしまっています。語尾のこともありますし、フレーズの後ろの方をもっと大切に神経を使って練習するとより良くなるのではないでしょうか。

それにしても、今回は「ハマり役」な人が多かったけど、その中でも一番の「ハマり役」だったんじゃないかなぁ。この曲が似合うのはもう才能です!大切なレパートリーにしてください。結婚式で新郎として吹いてほしいなぁ。

 

26.ロマンス/ブルッフ

ロマンス3人衆の3人目。今回のMVP。この発表会では古参どころか創立メンバーみたいなもので、そんな彼をMVPにするのはちょっと手前味噌なところがあって恥ずかしいのですが・・・。笑 この曲は「ズルい」曲なようで、一部の子には永遠に(いい)演奏不可なんじゃないか、って思うくらいフレージングが難しく、それは演奏した本人が一番よくわかっていることでしょう。ただフレージングに関しては100点満点と言っていいと思います。長年の付き合いで、僕が伝えたいフレージングのことはよくよく理解してくれていて、とにかくそれが嬉しくてMVPに選びました。

元々テクニックに寄っていた君が、この曲をこれだけ魅力的に演奏できたことは大いに誇りに思ってほしい。楽曲にひとりで取り組むことがどれだけ奏者として成長するか、というのは君が見事に証明してくれていますね。

さて、リードが古いことはチューニングの時点でモロバレです。それは大いに気にすべきですし、この手の曲は表現も大切ですが音の響きも大切です。古いリードは響きを損なうものですから、いい演奏をしたければまずはそこから。吹きやすい、だけで演奏するようではこれ以上のレベルにはいけません。しっかりとね。いくらテクニックがあっても音色の汚いホルン、聴けたものではないでしょう?

強奏時に音程が下がることが多いようです。鳴ってさえいれば、多少上がっても気にはならないものですが下がるのは気になってしまいますね・・・。特にヘ音で五線より上にいったあたり、よくよく気を付けましょう。これもリードが影響しているでしょうね。

とはいっても、多少の傷は気にならないくらい見事な演奏でした。これだけ名手がそろってきた中でMVPなのは大いに誇ってください。次はだれがブルッフやるかな。審査をもうけようかな。笑

 

27.ファゴット大協奏曲より第2.3楽章/フンメル

木五の方でも書きましたが、2つの楽器を同じ日に、これだけのクオリティで演奏できるのはセンスと努力と、時間の使い方の上手さを大いに感じます。

まず2楽章、僕とピアニストにまったく違うことを言われて戸惑ったのでしょう。笑 ただおそらく、僕らが言った2つのことは真逆のようで繋がっていて、最終的に同じところにたどり着くものなんだと思います。音楽の指導なんてそんなものです。そういった意味で、もっと突き詰めることができた演奏だったのかもしれません。古典派である以上、2楽章を音楽用語でいうところの「ロマンチック」に演奏するわけにはいかない。でもこれだけ綺麗なものを淡々とは吹けない。そのせめぎあいから名演は生まれてくるんじゃないかなぁと思います。そういう意味で、もっとロマンチックで良かったのかも。こんなこと「先生」という立場からいうことじゃない気もしますが。笑

歌いこむ時・強奏時の音色が、横に広がってしまう傾向にあるようです。どうも管楽器というのは息を入れにいくと冷静さを欠いてしまう傾向にあるので、心は熱く、頭はクールに、が基本です。今自分の音がどんなふうに聴こえているか、それを考えながら楽器を鳴らせばきっと改善していくことなんだと思います。

3楽章の難解ポイント、もっと「時間」をうまく使った吹き方をするのがいいです。テクニックでねじ伏せるということができない曲ですから、時間の操作が大切です。やろうとしてるのは伝わってくるのだけど、やはり実践するのは難しいですね。ちょっと1レッスンでは伝えきれなかった部分もあったのかもしれないので、そこは僕の反省点です。

僕の一番大好きな曲をこの会ではじめて演奏してくれたこと、とても嬉しかったです。それが君で良かった。さらなるレベルアップを楽しみにしています。もちろんフルートも!

 

28.2本のファゴットのためのソナタ/モーツァルト

ファゴットの2重奏、っていいものですよね。普段オケでどれだけ考えて吹いてるかがちょっと一緒に吹けばすぐわかって、刺激しあえて、バランスを気にする必要も(あまり)なくて、ファゴットを吹くうえでトップクラスに自由度が高い編成だと思います。

まず2nd(1楽章冒頭のパート割で)ですが、めざましい進歩を見せました。アンサンブル参加でもこんなに上達するものだとは。相方の影響が大きいかと思います。格上と二重奏をやれる、ということの喜びはそういったところにあると思います。テクニック、楽器の鳴り、寄り添い、(いい意味で)勝手、すべてが1週間弱で別人のように上達しました。今回の感覚をぜひ忘れないでいてほしいです。いわゆる「ド伴奏」時の時に音色がもう少しまとまるとオケでもいい仕事ができるのではないでしょうか。音量がそれ以上小さくなる必要はないのですが

1st、もっと最終的に自分のわがままを通して吹いてもよかったかもしれないですね。寄り添いも勝手するのもとても高水準ですが、相手のために自分がもっと楽しく吹けるポイントを増やす、みたいなことがあってもいいかも。人間関係が先輩後輩で腕前に差があっても、本番は対等ですからもっと自由でいいのです。それが相方のためにもなるんじゃないかなと思います。カデンツァはもっと自由にやってよかった、恥ずかしそうに駆け抜けていくようなところがまだまだです。「面白いこと」をやるというのはそのクオリティが高いほど面白いものです。でも発想自体はとても好き。

1、3楽章、ちょっと前のめりすぎるテンポ感が気になりました。前進する場所があってもいいですが、テンポ的に落ち着く場所がもっと欲しかった。2楽章はもっともっと美しい旋律が聴きたかった!音がきれい、ではなく、流れがきれいな演奏を心掛けてほしい。モーツァルトのフレージングはシンプルなようでなかなか複雑です。もっと気にしてほしかったな。

二重奏というジャンルがこの会でもっと流行っていくといいなぁ。

 

29.ファゴットソナタヘ短調より第1.2楽章/テレマン

今気が付いた、プログラム記載がホ短調になってました・・・よね。失礼しました。毎回トリを任せる人には多大なるプレッシャーをかけてしまっていますが、今回は「いい演奏になってほしい」と僕が心から思ったからの選出でした。

子どもを育てながらの準備、僕が想像もできないような苦労が多かったと思います。なのにレッスンのたびにレベルアップしてきて本当に関心していました。出てくる音色がだんだん曲にハマってきているのは強いイメージがあってこそなんだと思います。ただ暗い音色になっているだけではなくて、きちんと長調長調の音色になっていました。派手な装飾も大変に僕好みでした。装飾に振り回されないように、とレッスンで何度も言いました。本番は振り回されてはいない演奏ができていましたが、影響はあるようです。派手な装飾を使って、音楽的な流れを文字通り「装飾」するためには、もう一つテクニック不足でしたね。でもそれを補って余りある気迫あふれる演奏でした。バテても吹ける、という領域、少し飛び込めたように見えます。それは上級者でもなかなかできることではないのです。

今回、きっと時間はたくさんかけられなくても進歩していくやり方を見つけられたのだと思います。そのやり方で、ひとつひとつ丁寧に練習していくことで楽器はうまくなっていきます。そこにたくさんの時間なんていらないのです。

あなたの演奏が、今後、きっと楽器を産休でおやすみする生徒たちの励みになると思います。ぜひ相談にのってやってくださいね。

次回も楽しみにしています!

 

 

総評として、今までは「レベルの高い新人」と「元々そこそこうまかった古参」が名演を残し、そうでないメンバーは必死に食らいついていく、という傾向にありましたが・・・今回、「そうではないメンバー」が「レベルの高い古参」と呼んでいいレベルに到達していて、間違いなく今までで一番レベルの高い発表会でした。初心者組の飛躍的なレベルアップも考えると、これほどレベルの高いアマチュアファゴット発表会はそうそうないんじゃないか、と思います。

もし新人やお客様で、「こんなレベルの高いところ私にはついていけない」と感じた方、今回参加した「ハイレベルな古参」たちの昔の演奏録音、こっそり送りますのできいてみてください。1年やそこらでこれだけレベルアップできるのですから、どうか自信を持って練習に励んでください。

 

いやそれにしてても、面白い会になりました。次回はどんな発表会になりますことやら。

第11回発表会でした。講評とか次回のこととか。

こんにちは。いつの間にか今年度も終わり、新しい年度が始まりますね。

新入生のみなさま、新入生を迎えるみなさま、新社会人のみなさまなど、新たな環境でも楽しく演奏していきましょう。

 

さて、先日、第11回門下発表会がありました。

f:id:torakitsune:20180402220504j:plain

この発表会は、いつも初心者から上級者まで幅広い参加者がいるのですが、コンセプトは「曲を人前で演奏すれば手っ取り早くうまくなるはず」というところから来ているため、どなたでも参加でき、基本的に好きな曲を好きなように演奏してもらっています。ファゴットのソロ(プロのピアニストによる伴奏、レッスン1回無料)かアンサンブル(レッスン1回無料)でのエントリーを受け付けています。

それにしても今回はとてもレベルが高かった。技術的なものではなく、曲の完成度や個々の成長具合が歴代最高だったかと思います。魅力的な演奏をたくさん聴いてとてもいい刺激になりました。

今回も僕自身もしっかり演奏しました。やはりきついのですが、今後とも色々と挑戦して行こうかと思います。

 

次回発表会のご案内です。

2018年7月8日(日)お昼頃開演、会場未定(決まり次第記事更新します)

ファゴットソロ(社会人)14000円

ファゴットソロ(学生)10000円

・アンサンブル(社会人・学生)1人6000円

※かけもちも可能、各レッスン1回無料

 

参加エントリーやお問い合わせは

発表会参加・お問い合わせフォーム

までどうぞ!

 

さて、恒例の講評タイムです。参加者やお客様以外には読んでも面白いものではないかと思いますので、次回記事をお待ちください・・・

 

1.コンチェルティーノ/ダビッド

主催者による演奏でした。どうしても企画運営やレッスンの方に気が向いてしまうこの会において、僕自身も生徒たちと一緒に演奏に向き合う、ということを前回からはじめています。

今後とも続けていきたいところ。

 

2.ファゴット協奏曲/ウェーバー

初めてのソロとは思えない、堂々とした素晴らしい演奏でした。2曲目にしてMVP決定か?と思ってしまったくらい。

とにかく楽曲の面白さが全プログラム中、最も発揮された演奏だったと思います。ささいなミスなど、本当に気にならないくらいに。

ソロを演奏するということは、演奏より前に大人数の前に出ることです。もし気にすべき点があるとすれば、その「見られている」感覚をもう少し養った方がいいかもしれません。また、ピアニストとのアンサンブルについてはもう一息あってもよかったかも。練習の時、ピアノからどんな音が鳴っているかの想定をあまりしていなかったように見えました。改善点があるとすればそのくらいでしょうか。

 

3.ピアノ三重奏曲第4番「街の歌」/ベートーヴェン

 

いわゆる「古典らしさ」や「ベートーヴェンらしさ」がとてもよく発揮されていました。吸収力の高さは2人ともさすがでしたが、この経験を生かして今後はもっと「らしさ」の出し方を研究していってほしいです。

クラリネットはもっとファゴットを見て。ファゴットは優しく寄り添うだけの楽器ではありません。相方のいろんな面を引き出すのも実力なのではないでしょうか。

ファゴットはもっと低音域の響きがピアノに溶けるよう意識できるといいです。そういった音を使えるようになればオケの2ndなどでも大活躍できるかと思います。

 

4.ファゴットソナタfmoll/テレマン

バロックもの得意」を名乗っていいかと思います。それだけ素晴らしい演奏でした。ほしいのは音楽的な「安定感」でしょうか。素晴らしい感覚を持っているのですが、その発揮のされかたにブレがあります。ピアニストへの反応は大変よかったです。通奏低音と二重奏、という感覚を掴めたのではないでしょうか。

装飾音符は「入れるために入れる」のではなく、音楽表現を彩るために入れられるとなおよかったです。

先生としての印象は、「ファゴットの吹きかた」そのものを一緒に見つめていけたらいいなと思いました。基盤となるテクニックが安定すれば、音楽的な安定感にも繋がるかも。

 

 

5.5つの小品/イベール

この発表会においていわくつき(?)なこの曲でしたが、大変な名演で1部のトリにふさわしかったと思います。

合図を出す人以外の2人が、それに反応して体を動かすのがちょっと気になりました。合図は静止して見ましょう。代わりにブレスを一緒に吸うと曲頭がもっと合います。

オーボエは技術より積極的な音楽を。トリオダンシュにおいてコンサートマスターのような立ち位置なので、オーボエが見せる音楽以上のものは生まれてきません。責任重大。

クラリネットはバランス感覚がとてもよく素晴らしかった。ソロの部分がもっと魅力的に吹けるといいです。やはりどちらもできないと。

ファゴットは響かせる音と周りに溶かす音がもっと切り替えられるとよかった。いい意味でも悪い意味でもいつも同じ音な印象があります。

 

 

6.ファゴット協奏曲/フォーゲル

前回同様、ステージ上のふるまいを覚えましょう。緊張しててもそれだけはできないと。お客様を大切に。

「できなかったこと」より「できたこと」を数えましょう。成長度合いで言えば君が一番です。丁寧に練習したらできなかったことができるようになっていく、という感覚を決して忘れないで。上手くなるということはそーいうことの連続です。

ピアノの先生にお礼の手紙を書きましょうか?

 

7.5つの民俗的小品より/シューマン

「変な曲やってください」というリクエストにいつも応えてくれてうれしいです♡

僕個人としては、やりたい演奏表現が誠実ではっきりと見えるのがとっても好みな演奏でした。

フレーズが少し短いことと、弱奏部にもう少し色や起伏があるとなおよいかもしれません。楽器がきちんと鳴っていますので、「きちんと」以外の鳴らしかたを覚えるとまた魅力的になっていくんじゃないかなと思います。

 

8.ファゴット協奏曲1楽章/ウェーバー

今回レッスンで一番厳しくしたような気がします。

「ここはなんとかなった」と自覚する箇所、自分で思ってる以上にうまくいっていたと思います。素晴らしかった。ここまで頑張ってきてくれるなら厳しくした甲斐がある、かも。

曲のことや克服すべきテクニックについてはレッスンで十分語っているのでここれは割愛。またじっくり挑戦していきましょう。うまくなるのってたのしいよ。

 

11.ファゴット協奏曲2.3楽章/ウェーバー

礼、身だしなみ、演奏時以外のふるまい。少し気にしましょう。演奏以外で他人の評価を下げてしまわないように。

自分のためではなく聞いている人のための音楽をしましょう。それができないほど下手ではないはずなのに、どうしても独りよがりに聞こえる傾向にあります。

「こう演奏する」としっかり決めたところと「こんな感じ?」と曖昧に決めているところがはっきりと音に出ています。密度に差があると聞いている人に飽きがきやすい。

3楽章へのこだわりが足りない印象でした。指をさらうというところから離れるべき。

2楽章はなかなかにおもしろかったです。歴代には及ばないものの、2、3楽章のハードルを下げることもなかったと思います。よく頑張った、というより、よく考えたね。

 

12.シシリエンヌ/フォーレ

やるべきことを きっちりやってきた、誠意あふれる演奏でした。 今後はそれに、自分の「こうやりたい」が乗ればさらに面白くなるでしょう。練習を成果にしていく面白さを忘れずに今後とも頑張っていってほしいです。

今回できるようになったことを、今後すべての譜面できっちりやっていけば見えてくるものも変わり、やりたいことも増えていくんじゃないかなぁと思います。選曲も君らしくて大変よかった。次が気になるところ。

 

 

13.管楽五重奏曲ハ長調/ライヒ

念願の木管五重奏でしたね。合わせの成果がきっちりと出ていて、安定感のある演奏でした。ライヒャはダンツィは曲の迫力にかまけてなんとなくやる、みたいなことをすると全く面白くない演奏になりがちなのですが、魅力たっぷり引き出せていたと思います。

チューニングの前にA以外の音を出すと嫌がる層がいます。もし問題なくAが出るようならチューニング前に別の音を出すのは控えた方がいいかも。

自分のソロ以外でフルートが過剰に動くのが気になりました。見られている意識を。

木五のクラリネットは何をおいてもまずは安定感がほしいところ。これでいいや、をたくさん感じてしまったので、もっと理想高くいきましょう。やってできないことはないのは知っています。逆にフルートは高い理想が前提で、それに至るプロセスが荒いような印象です。難しいところを「なんとかなっている」ではなく、その難しさが面白く聞こえるような演奏を目指してほしいところです。

ホルンはバランスを取るのが難しかったかと思います。会場での鳴りをすぐに察知して調整できるとなおよいかと思います。プロのホルン奏者でも難しいことのようですが、挑戦していっていいかと思います。

ファゴットはバランスがよく、支える音色が見事でした。自分の見せ場でもっとオラオラ演奏できるといいですね。

とまぁ随分なことを書きましたが、僕個人としてはとても好きな演奏でした。個人技がもっと光っていてほしかった。5人で光るのではなく、1人1人が光っているからこそ木管五重奏なんじゃないかな。

 

14.ルネ王の暖炉/ミヨー

まずはステージマナーです。これが良くないとどんないい演奏も受け入れてはもらえません。

木管五重奏がいい演奏をする方法はただ一つ、「個々がいい音を出す」です。そういった意味で、まだまだやれることがそれぞれあったのではないでしょうか。

全体としては、曲の情景が良くみえていい演奏でした。それぞれが考えバランスを取って音を出していていい感じでした。

フルートは譜面の表面を追うことにリソースをもっていかれていて、面白みにかける印象でした。曲のシーンにあった音色やビブラートは天性のものでしょうか。単純に楽器の奏法よりも音楽を演奏する、ということをもっと知っていった方がいいかもしれません。

オーボエは演奏への思いを強く感じました。その思いはいい方へも転びますが、他の4人をなんとかしようと無理をして自滅するシーンが何度か見受けられました。いい意味でもっと自分勝手に演奏できるといいかも。

クラリネットは素晴らしいバランス感覚でした。やはりソロパートの魅力がイマイチです。木五でクラリネットに集中して聴く人もたくさんいるかと思います。魅力的に!

ホルン・ファゴットは他人に構い過ぎて自分を見失うことがやはり多かった。低音パートとしてはよいのですが、やはりソリストしてもっと面白くないといい演奏には繋がりません。ファゴットはもっと「支え」の音色を身につけましょう。

 

 

15.ファゴットのための組曲/ロンゴ

技術的な成長をとても感じました。音色、指や舌の動き、その結果としての音並びがとても美しかったです。技術的な成長は結果として、音楽的魅力をもっと感じたかったところです。もっともっと欲をもって演奏していってほしいと思いました。

 

 

16.プルミエソロ/ブルドー

フォルテがない!結果として、息を入れないために出ていない音がかなりたくさんあります。よくまとまった無難な演奏、を越えましょう。ここまで聴き映えする曲でその印象はちょっと問題です。いい音も結構ですが、息のコントロールをもっと使って演奏するようにしましょう。

全体としては、ドラマを感じるいい演奏だったかと思います。よく和声を感じて演奏している印象です。努力してやっているなら素晴らしいし、なんとなくでやっているならそれはそれで素晴らしいところ。

いいダシが効いているのだけど塩分と油分が不足しすぎていて、栄養価がない、そんな印象でした。

最後のトリルはお見事。それだけうまくできるのなら前から繋げた練習もしてきてほしかった(してなかったでしょ?)

名演ゆえに、惜しい、と思うシーンの多い演奏でした。自分の伸び代を信じてもっともっと。

 

15.ファゴットソナタ/ハールストン

ステージでいい顔するようになったね。

1楽章のはつらつとした曲想、2楽章の色彩感、素晴らしかった。曲の魅力という意味では、MVPクラスだったと思います。

いつも2~3回目のレッスンでようやく「いい音でいちおう音がならぶ」状態になるのだけど、そこから1回目、くらいのさらい方をそろそろ覚えればもっと化けるんじゃないでしょうか。伸びた音にもっと方向性や意思を持たせましょう。

ピアノ伴奏のない部分の作り方は見事でした。なにより演奏を楽しめるようになってきたような印象です。でももっと楽しいはず!

 

 

16.トリオソナタ/コレッリ

様式、といいましょうか、雰囲気のある演奏でした。クラリネットのppは本気でやりすぎるとこの手の作品に合わないかもしれません。音量ではない方法でみせられるともっと素敵ですね。本気ppはほんの一瞬出すくらいでいいのかも。

チェロはもっと弾いてほしかった。次回はもっと派手な活躍の仕方をする作品に挑戦してほしいです。

装飾音符の入れ方は素敵でした。わかっていたのでしょうから、最初から決めて練習しないと二度手間です。

作品がら、アウフタクトにきちんと意味を持たせましょう。それを聴いて踊り出すのです。

アンサンブルのなかでも完成度はトップクラスでした。

 

17.ファゴットとピアノのための組曲/タンスマン

 

最初のAだけで金一封モノ。素晴らしい演奏でした。

自他共に認めるような「安定してるけどおもしろくない」というタイプだったと思うのですが、いい意味で変わらずその路線のまま、君は君らしいままこの大曲を魅力たっぷりに演奏してくれたこと、僕はとっても嬉しかったです。

変化していくことだけが全てではなく、今の形のままで洗練していくようなさま、新たな発見でした。お見事。

テンポが速いシーンで、曲や雰囲気に合った音色の変化があったらもっと素敵だったかもしれません。

 

 

18.ファゴット協奏曲/モーツァルト

20.モーツァルト

初参戦でこの大曲、お疲れ様でした。

誠実な練習はとても得意なようですが、正直いうと最初見たときはとてもモーツァルトではなかったです。一生取り組んでいくこの曲において、今回グッとこの曲に近づけたこと、苦労はあったと思いますが誇りに思ってよいとおもいます。

不自然なテンポの伸び縮みが少し気になりました。一人で吹いていても伴奏系が聞こえてくるような演奏を。

これだけ曲に向き合えるならどんな曲も怖くはないと思います。次の選曲・演奏も楽しみにしています!

カデンツァもお見事でした!なかなかそのクオリティのモーツァルトは聴けないかと思います。

 

 

19.ファゴット小協奏曲/ビッチ

「ゲストの人にはみんなが憧れるような演奏を」と僕が思うようになったのは君の演奏を聴いてからです。すべての音符から感じる説得力のようなものをいつもとても尊敬しています。お弟子さんの指導もあるなかお疲れ様でした。またぜひ演奏しに来てください!

 

22.セビリアの理髪師より6つのアリアより

レッスン時にお互いの得手不得手について話しましたが、見事克服されていてびっくりしました。原作オペラの雰囲気がとても感じられてたのしい演奏でした。合わせるべき和音をきっちり合わせているのもとっても好印象でした。

素晴らしい相棒っぷりでした。2人でオケに乗っているのもちょっと見にいきたいところ。

ファゴット吹きは他人に影響を受けて上手くなっていく生き物かと思います。これからも2人で影響しあっていけるといいですね!

 

 

23.ディベルティメント/モーツァルト

それぞれの役割をよく果たしていた三重奏だったと思います。おそらく3rd以外は役割が苦手分野だったかと思いますがきちんと成長していたと思います。1楽章はもう少しスピード感がほしかったかな?

やはりファゴットといえばモーツァルト、1つでも多く作品に触れていってほしいです。願わくば3人でも一人増やしてでも続けていってほしいメンバーです。

5楽章の出だし、2ndよくつけました。1stはなにかご飯でもおごってあげましょう。笑

3rdはふわっと低音に存在することにかけては右に出るモノはいないと思うのですが、ファゴットアンサンブルの下パートはそれだけではつとまりきりません、どんな編成よりも低音域に責任がありますのでこれを機にどんどん挑戦していってください。

 

24朗唱、シシリアーノとロンド/ボザ

恥をしのばずよく音出ししました。その手の開き直りは大切です。

新しい楽器のパフォーマンスがここにきて生かされてきたように思えます。

ハイEおみごと!ドヤ顔含めて値千金です。

また一皮むけたように思えます。君のファゴットはやはり門下生たちの憧れなんだなと思います。

もっとわざとらしく表現していい部分がたくさんあったので、まだまだいろんなレパートリーに挑戦していってください。

 

25.ボザファンタジー

冒頭の雰囲気、最高です!空気を一人で作れてしまうのは才能ともいえます。すばらしい。

ピアノ伴奏のあるときのpp、もう少し溶けたり響いたりする感覚を持った方がいいかもしれません。ppを出すのが目的ではないはず。

難曲を難曲と感じさせないような演奏、素晴らしかったです。今後は音色の操作が課題でしょうか。響く音、溶ける音、大きい音、小さい音、この4つの組み合わせだけでかなりの種類の音色がつくれます。

 

 

26.ノクターンとダンス/ボザ

堂々としていて好印象でした。いい意味でソロのステージになれてきましたね。

pで演奏するとき、中身がもっと色々あってよかったのではないでしょうか。小さく吹くことで精一杯にならないように。そこまで小さい音は期待されていないものです。

低音の鳴りがとても良かったと思います。思うのですが、そこまで低音が鳴るリードでハイEを出すのはちょっと難しいかもしれません。結果として出ましたが、そこに折り合いをつけられればもっとスムーズな音が出たのかも。

 

27.三重奏曲/フランセ

主催者挑戦シリーズその2。余裕のかけらもなく挑戦しましたが、皆の反応を見ているとやってよかったなと思います。素晴らしい相方にも恵まれました。

 

28.ファゴットソナタ/グリンカ

冒頭に関しては、厳しいことを言うなら、この曲は初見で譜読みした段階で1~2分譜読みしたら冒頭くらいはパッと吹けちゃう人がやる曲で、できるかできないか、くらいの状態で本番だとほぼできない曲、なんだと思います。2回目はよく当てました。

とはいえ、本来それを吹けなくはないことは僕は知っていますのでそれでも「上手くなった」の一言を送りたい。ピアノとのアンサンブル部分の音色・音量操作なんかはさすがでした。本番でできていることは君の能力のほんの2割程度だから、それを引き出す技術を今後もっともっと磨いていきましょう。

とりあえずピアニストに(謝罪ではなくお礼の意味で)頭をさげることです。

後半調子が出てきた、ということは音出しが足りなかったのかもしれません。当日の時間の使い方をもう少し調整してもいいかも。

 

27.幻想小曲集/シューマン

驚いた、ソロの時は別人のようですね。レッスン等の成果なのでしょうか。いずれにしろプロとして仕事の来るタイプの吹き方だと僕は思いますので、レッスンで言われたことをその場限りの頓服薬にせず、初見のものにも発揮していければ仕事なんてあちら側からやってきてくれるのではないでしょうか。

きになるとすれば和声感でしょうか。すこし楽譜を横ではなく縦に見ればまた違ったものが見えてくるのではないでしょうか。

2楽章の即興性、僕はすごく好きでした。

 

28.ファゴットソナタ/サンサーンス

何回吹いても冒頭のGは嫌です。

サンサーンスの洗礼は十二分に受けたのではないでしょうか。自分でどう思っているかはわかりませんが相当にハイレベルな演奏だったと思います。

pの中にもっと色や形があってこその作品だと思います。fにはたくさんあるのに・・・crescも急すぎることが多いようです。

ハイEへのこだわり、みせてもらいました。その心意気に感動しないファゴット吹きは存在しないでしょう。

音色もテクニックも相当なものです。それを発揮するための音楽的経験値が少々まだ足りてないのだと思います。まだまだ人生長いですので、いつかまたこの曲に挑戦してほしいなぁ

もっと迫力系の曲のが得意なのでしょうか?

 

 

29.ファゴット協奏曲/シュターミッツ

大ブラボーでした!好きと得意と技術がマッチするとここまでハマるのかと。本来ならMVP間違いなしです。相手(タンスマン)が悪かった。

まだまだ古典作品を楽しめる余地がありそうです。以前見えた無理な奏法も随分改善されてみえますので、今後とも色々と挑戦していってくださいね。

歴代最高クオリティのシュターミッツ、とは思っていましたが、ここまで魅力的に吹いてれるとは!

 

30.パパゲーノの歌/モーツァルト

挑戦しただけで素晴らしい、音が並んだら最高、くらいに思っていましたが予想の遥か上をいく演奏でした。

この曲のもつ面白さもきちんと表現されていました。劇的に成長した一人だと思います。他の人の演奏を聴けなかったのが残念です。次回はぜひ最初から最後までご参加くださいね。

 

31.三重奏曲/プーランク

トリとはこーいうものです。不安とプレッシャーの中よく準備してくれました。

オーボエはパワー不足、ファゴットは色彩感がもう少し、といったところでしょうか。ピアニストとのかけあいも、少ない合わせの中、面白いシーンがたくさんありました。

でもこの演奏に講評なんて要らないと思いますので、ここらへんで。2人とも、いつまでもみんなの憧れでいてください。

今更聞けない?ファゴットリードの決め方・買い方

こんにちは。我々の業界において「繁忙期」と呼ばれる時期が続いていて目がまわりそうです。演奏も体が資本ですので、風邪などひきませんように・・・。

 

さて、今日はリードについてちょっとお話したいと思います。

この仕事をしていると、アマチュアさんや学生さんによく聞かれます。

「どんなリードを選べばいいでしょうか?」

「おすすめの完成リードを教えてください」

たぶんこれ答えなんてなくて、あなたとあなたの楽器にとって吹きやすいものを探してください、としかお答えできないことが多いです。僕自身、リードに答えなんて出ていませんし、万人にうけるリードを作る気もあまりないです。そんなリードがあるなら話は別ですが・・・。

 

一応、僕自身の答えとしては「パッと吹いた感じの音色は二の次で、低音域(Fより下)の音程が基準値より下げたら下げられて、中音域(下から2番目のC〜Fくらい)が極端にぶら下がらず、高音域が苦しくなりすぎないもの」と言っておきましょう。僕自身がリードをこのコンセプトで作っています。

 

一番よくないのは、「先輩が勧めるからよくわからないけどこれを吹いているが上手く吹けない」「先生からリードを買っているが上手く吹けない」という状態です。練習や表現と一緒で、リードに関して思考停止しているのが一番よくありません。あなたにとっていいリードを探す(作る)、というのはファゴットという楽器を吹く以上避けられない課題なのです。

 

さて、じゃあどうするのがいいのでしょうか。あなたが億万長者なら、各種楽器店に売ってるリードを片っ端から買って吹いてみるといいでしょう、きっといいものに出会えます。

そうでないのなら、レッスンの先生から買うのがいいでしょう。その場合、吹きづらいならはっきりと調整をお願いすること。遠慮してはいけません。

「レッスンの先生なんていない」「先生はリードをくれない」「先生のリードは私には合わない」なんて方については、今の時代、僕のオススメは1つです。通販で買いましょう。

ただし楽器店の通販ではなく、製作者個人から買いましょう。ここで勝手にリード製作者の方を紹介するわけにはいきませんが、「ファゴット リード 通販」と検索すれば山ほど出てきます。ツイッターFacebookなどでもたくさん出てくる時代になりました。1〜2本買ってみて、合わなければ違うリードをまた探せばよいのです。製作者個人から買えば、きちんと吹ける状態で調整されてから送られてきますから(そのリード内においての)ハズレはありません。「試奏して買ったのに家に帰ってみたらイマイチだった」なんて経験が皆さんあるでしょうが、個人から直接買えばないでしょう。

僕自身もリードを作って販売しております。1本2000円と送料で即日お送りします。注文のフォームを貼り付けておきますのでいつでもご注文くださいませ。

ファゴット完成リード注文フォーム

 

最後に各リード調達方法のメリット・デメリットをまとめておきましょう。

 

・楽器店で試奏して購入

メリット 幅広いラインナップ、個体を自分で選べる

デメリット 1本あたりの単価が高い、いつもと違う環境(響き)で選ぶため意外とあたりが選べない、交通費と時間がかかる

 

・楽器店へ注文(通販)

メリット 幅広いラインナップ、時間がかからない、交通費がかからない、在庫さえあれば即日発送してもらえる

デメリット 個体を選べない、1本あたりの単価が高い

 

・レッスンの先生から購入

メリット 先生の指導方針に沿ったリードが手に入る、単価が安い(ことが多い)、目の前で好みに調整してもらえる

デメリット 特になし(頼みづらい、合わないけど断りづらい、など?)

 

・製作者へ注文(通販)

メリット 1本1本が手直しされてくるのでハズレがない、交通費がかからない、1本あたりの単価が比較的に安い(楽器店に比べて)

デメリット 好みのリードかどうかが届くまで判別しづらい、在庫次第で発送時期が読めない

 

あくまで個人的見解ですが・・・

昔(10年くらい?)と比べて、今はいいリードを作れる人が本当にたくさんいます。楽器店でも取り扱いしきれないくらい、たくさんの種類のリードが世に存在しています。そんな隠れた名リードがもっともっと世に広まっていけばいいな、と思ってこの記事を書くに至りました。

楽器を快適に吹けるリードが安定して供給される世の中になることを祈りつつ、今日も僕はリードを削ることにしましょう。

 

ちょこっと演奏会告知です。

 

とりおっぽぷらす クリスマスコンサート

2017年12月19日(火)18時半開場19時開演

スタジオヴィルティオージ(JR新大久保・大久保駅徒歩5分)

入場料2000円(限定50席)

 

吹奏楽のための第2組曲より「マーチ」/ホルスト

歌劇「フィガロの結婚」より序曲/モーツァルト

きらきら星変奏曲/モーツァルト

交響曲第1番より第4楽章/ブラームス

クリスマスメドレー        ほか

 

ファゴット五重奏を中心に、クリスマスらしい曲からクラシック音楽のアレンジ作品まで幅広く演奏いたします。日がせまっていますが、まだお席ありますので興味のある方はぜひぜひお越しくださいませ。

ご予約は

お問い合わせフォーム

からどうぞ。ご連絡おまちしております〜!

 

f:id:torakitsune:20171215221955j:plain

第10回門下発表会でした。〜講評とかいろいろ〜

こんにちは。すっかり間があくようになり、このブログの存在を忘れられている方も多いかと思います・・・。笑

文章をかくのはあまり得意ではないため、なかなかきっかけがないと書くに至りませんね。もうちょっと頑張ります。ネタはたくさんあるんですが。

 

さて、11/5に門下発表会がありました。

年3回というすさまじいペースで行われているファゴットの発表会は日本中探してもここしかないよ、とよく言われます、そうかもしれませんね。もしあったら教えてください、主催者の方とお酒を飲みに行きたいです。笑

基本的にファゴットの方とアンサンブルで参加希望の方はどなたでも出演できる会ですので、興味がある方はこちら↓まで。

発表会参加・お問い合わせフォーム

実は最近の開催では、ほぼ毎回ブログを見て参加希望をしてくれる人がいます。

「興味はあるけど曲なんてやったことないし自分がソロなんてとんでもない」と思った方、たぶんそれが普通です。それでもだいたい2〜3回目の参加ではウェーバーのコンチェルトを普通に演奏してしまうくらいにはみんなレベルアップします。

毎回言ってますが「手っ取り早くうまくなるには人前でソロ曲演奏するのがいちばん手っ取り早いでしょ」というヌルいコンセプトのもと行われている会ですので、興味をもったらとにかくお問い合わせください。初心者でも吹ける曲からプロでも手が出ない曲までレパートリーはたくさんあるんですよ〜。

 

f:id:torakitsune:20171107210821j:plain

 

さて、ここからは曲ごとの講評となります。個人名は書きませんがプログラム順ですし出演者やお客様には誰のことかわかるようになっています。なのでそれ以外の方にはあまり興味のない内容になってしまいますのでここでこの記事は終わりだと思ってください。内容が少なくて申し訳ありません。次の記事を気長にお待ちくださいませ・・・。

 

 

1.無伴奏チェロ組曲第3番より「ブレー1」/バッハ

ファゴット、というより音楽を初めて半年、僕のところにレッスンにくるようになって1ヶ月ちょっとの子の演奏でした。初心者はだいたい1番手を任せる(音出ししたあとすぐ吹ける)んですよね。本番とつぜん吹けなかった箇所というのは偶然ではなく、練度が低かった場所が傷として本番でパックリ開きます。これから先もそういった悔しさをたくさん感じると思いますが、それへの向き合い方は一緒に覚えていきましょう。

演奏自体は十分でした。これからに「も」期待の一言ですが、ステージでの振る舞いが一番気になりました。ステージに上がりチューニング、ピアニストに目配せして演奏開始、演奏終わったら拍手をくださる方へ誠意をもって礼をする、という美しい一連の流れがゼロでした。いえいえ、初心者だから当たり前ですが、今はそーいうところをから見直していくのが一番大事だと思います。人の演奏みてたから、もう分かるよね。

 

2.演奏会用独奏曲/ピエルネ

ピアニストが連れてきてくれた高校3年生の演奏でした。先生は僕の大学の先輩でありスーパースターであるとあるお方で、その教えがたくさん見えるとっても素敵なピエルネでした。

緊張しているとおもうのだけど、まったく感じさせない演奏と振る舞い、とっても立派でした。先生のようなかっこいいファゴット吹きになっていってほしいなと思います。ファゴットの曲に興味があったら次回以降もよかったら出演してほしいです。

 

3.ブルレスク/ボザ

数日前に言った「稀に見る安定感」が本番ではさらにレベルアップしていました。安定感のある演奏というのはある種彼女のテーマのようなもので、技術とセンスは抜群、でも本番でこけちゃう、という傾向があったので今回の演奏で得た自信は今後の糧となる事でしょう。自覚があるかは分かりませんが楽器の鳴らし方もとっても上手になっています。もう音が小さいなんて誰にも言われない(言われたらその人を発表会に呼んでください♡)でしょう。「遅いとこがへただね♡」と言いましたが、それは速いとこからの比較でそう聞こえるだけで、ちゃんとレベルアップしていますのでその方向性でいきましょう。衣装が黒でしたが、それも結構似合ってました。カラードレスだからいい、ってわけでもないのかもね。

悪い事はぜったい言いませんから1ヶ月1曲だけ、エチュードやってみませんか?何度でも言うよ俺は。笑

 

4.ファゴットソナタ/グリンカ

友人枠代表の演奏でした。いつもこの子が演奏した曲をみーーんなやりたがる、ってくらい、アマチュアながらハードルを上げにきてくれます。

たぶんいろんな人にいろんな事を言われたのでしょうが、僕はもっと君らしいこってりとしたグリンカを期待していたので、ちょっと驚きました。もっと攻める部分が聞きたかった気もします。でも貫禄たっぷりでした!次回の曲、お待ちしてます!

 

5.オーボエソナタより第1.2楽章/テレマン

友人枠とアンサンブル枠の間のような存在、いつも出演についていろいろ起きるよね・・・笑

通奏低音を吹かせてもらったので、演奏についてもちょっと口出しさせてもらったのだけど、とても魅力的になっていて驚きました!それだけ人から吸収する力を持っているのなら、もっとひとの演奏に興味を持ってひとの演奏に反応できるともっともっと素敵な演奏ができるようになると思います。

技術的には音の処理がもうひとつ、というところでしょうか。でも安定感のあるとてもいい演奏でした。なんか通奏低音やたら褒められたよ。笑

メンバー見つけるのも課していたはずなので、次回のエントリーを楽しみにしてますね。

 

6.ヴェニスの謝肉祭/ジュナン

ゲストひとりめ!本人にはもう言ってあるのですが、僕がゲストに求めてる演奏をすべてかなえてくれて、それをはるかに越える演奏でした。ほんと心から尊敬しています。お弟子さんつれてぜひまた来てください。僕も負けずに頑張ります。

 

7.ファゴット協奏曲より第1楽章/ウェーバー

ウェーバー7連発、ひとりめ。今回はO先生のレッスンなしでの参戦だったということで、曲についてたくさん情報を与える必要があって彼女の根本的なところにあまり触れてあげることができず、そこが自分としてはすこし悔しかった。次回は2〜3回きますか・・・?そこらへんは、O先生のレッスンとバランス取りましょう。苦手なはずなのにたくさんたくさん攻める演奏をみせてくれて、僕はとっても嬉しかった。ロマンチックにもっと磨きをかければファゴットも人間も魅力的になっていくことでしょう。今後も期待してます!

 

8.ファゴット協奏曲より第1楽章/ウェーバー

ウェーバー7連発ひとりめ、初心者ふたりめ。笑 自分としてはどうだったんでしょうか。レッスンで出来てたことが出来ない、というのは当たり前として、そんなことはどうでもよくて、出来てなかったことがたくさんできるようになっていたことが僕はとっても嬉しかった。フルートと二足のわらじを勧めた身としては、君がこんなに立派にウェーバーを吹ききったことは誇りに思います。自分でも、自信を持ってほしいです。紹介したオケからも評判がいいのはそういった音楽への誠実さが周りにいい影響を与えるからなんだと思います。発表会への参戦は今後どうなるかわからないと思うのだけど、たぶんずっとやってることだから、また来てね。フルートでもいいよ。笑

 

9.ファゴット協奏曲より第1.2楽章/ウェーバー

O門下生による友人枠での出演でした。門下入りしたてとのことですが、門下特有のきらきらした音楽がたくさん見えて懐かしい(?)気持ちになりました。

たぶん自身で課題をたくさんもって練習をしていると思うので僕から言うことはあまりないのだけど、言われる課題を乗り越えるのも大事ですが自分の好みを押し通すのも大事です。O門下生で活躍している先輩たちも先生に言われたことを越えて色んな技術や表現に挑戦していますので、君もそうあってほしいと僕は思います〜。

同門として誇らしい堂々とした演奏でした!

 

10.ファゴット協奏曲より第1楽章/ウェーバー

ウェーバー7連発、というのをもっとも恐れていたのは多分この人です。でも恐れて終わりではなく、慣れない仕事も大変だっただろうに本当によく練習してきたと思います。ウェーバー内ではMVPだ!と思って終演後に言うか悩んだのですが、ウェーバー組は等しくみんな頑張っていたので誰かひとりを持ち上げるのもな、と思ったので言いませんでした。毎回、ほんとよく伸びます。楽器の扱いにも慣れてきたと思うので、そのよく鳴る音を大切にしていってほしい。次回もとっても楽しみです。課題は「ロマンチック」かな。

 

11.ファゴット協奏曲より第1楽章/ウェーバー

ウェーバー7連発を、たぶんもっとも楽しんでいたのはこの人でしょう。笑 高いハードルをくぐったり乗り越えたりがどうやら得意なようなので、今後ともハードルはきっちり設置させていただきますね。笑 

まー本番いろいろあったのはさておき、ウェーバーで必要な技術や表現はじゅうぶん身についたと思います。そーいう意味ではウェーバー組の中でもっとも伸びたと言えます。とはいえ、そーいう技術は元々結構あったので、問題はそこではないかも。

前回やれていた「1音1音のクオリティ」をちょっと忘れつつあります。そりゃまぁ、できるようになったことなんてすぐ忘れてしまうのが人間なので、それでいいのですが、また思い出していきましょう。楽器のコントロールももっと必要ですね。楽器屋さんでリードを片っ端から試奏してみることです。時間制限や本数制限なんてあってないようなものです(たぶん)

報告おつかれさま。笑

 

12.ファゴット協奏曲より第1楽章/ウェーバー

プログラムの通しナンバー、2人連続12.になってましたね・・・。笑

今回いちばん予測不能で、選曲は無茶だし伸び代はレッスン毎にばらつきが多くて。10人に1人くらいいる、「楽器で音を読む」病が深刻だったのだけど、本番までにかなり克服できたんじゃないかなと思います。

講評としては「よく健闘した 」といったところ。熱意と誠実さが形になったからこその演奏でした。練習してできるようになる、ということがどーいうことなのか、分かってきたことが何よりの収穫です。

とはいえ、名曲の魅力を聴いてる人に伝えるには足りないところが多かったのもまた事実。背伸びは一旦置いといて、もっと地を這うような練習を続けていつかこの曲のリベンジをしましょう!

 

12.ファゴット協奏曲/ウェーバー

ゲストとして、7連発の最後をつとめるのは結構な重責があったと思います。もちろん君に言うような指摘を俺が持ち合わせるわけもないのだけど、もうちょっとこの曲についての深い理解があってもいいんじゃないかな、という印象はありました。といっても君はまだまだ若いので、たぶん次にどこかで聴くウェーバーは遥か高みにいることかと思いますので、僕も負けないように頑張ります。

次回おやすみとのことですが、次次回以降もまた来てね。だんだん忙しくなってきて毎回というわけにはいかなくなるだろうけれど、この会はずっとある(ようにがんばる)ので出れるときに、またきてほしい。いつまでもみんなの憧れでいてほしいな。

 

13.エアボーン/ショッカー

友人枠フルート、もはや不動のポジションとなりつつある。

参加者から「木五やりたい」という声がよく上がるのだけど、フルートどうしよう、と言われて「この子は?」というと「おそれおおいです」とよく言われます。

いやでも確かに、フルートを吹いてるときの貫禄はプロ顔負けです。相方ありきなのかもしれないけど、本当に君のフルートは素晴らしい。楽器をこえて見習うべきものをいつもたくさん勉強させてもらっています。

また面白いもの聴かせにきてください!木五も、よかったらぜひに!

 

14.無伴奏チェロ組曲第1番よりメヌエット、ジーグ/バッハ

楽章替えを指示したときからは別人のようでした。君のファゴットへの誠実さは見習うところが多く、他の子のレッスン時に一番名前が出る存在です。自分で課題はわかっていると思うのでここで多くは語りませんが、この壮大な曲をしっかり演奏しきったことをぜひ誇りに思ってほしい。誰でも挑戦できる領域ではなかったと思います。

鼻抜けについてはこの曲やるにあたってしょうがないと思う(僕もはじめての鼻抜けはこれだった)のでとりあえずあまり気にせず。今後起きるようならまた考えましょう。

ちなみに開演前までは君がMVPかな、と思ってました。思いの外いい演奏する子が多すぎた。

 

15.ファゴット協奏曲より第1楽章/ダンツィ

準MVP。こんな地味な曲でそんないい演奏ができる子、他にいないんじゃないのかな。

安定感や本番強さはもちろん、古典派を「聴かせる」ワザを身につけられたんじゃないかなと思います。常々僕が「審査がある」と言ってるモーツァルト、君ならやりたいときにいつでもやってくれてだいじょうぶです。門下内にファンの多い君ですが、今後とも面白いものみせてほしいです。本業で忙しい中、本当によく頑張りました!

 

16.プルミエソロ/ブルドー

いやーほんと、本番で突然発揮される表現力、脱帽でした。その気まぐれぐあい、まったく誰に似たんだか。笑

練習時間の使い方、本番で使える表現力と技術、楽器の鳴らし方、どれをとってもやはり門下トップクラス、という地位をこれだけ急激にレベルアップしている子達の中で保てるのはすごいと思う。準MVPでした。ちょっと相手が悪かった。笑

とはいえ、「指は回るから」はそろそろ言えなくなってきてる気がします。音を並べるということ、今一度みなおしてみてほしい。たぶん練習ペースは今のままでいいから、曲決めと準備の始めをもっと早くすれば解決することかな、と思います。

いやそれにしても、いい演奏だった。次回ブルドー祭りあるのでは。

 

17.ディベルティメントNo.1/モーツァルト

トリオダンシュでの参戦でした。日常から仲のいい3人であるのが演奏にもちゃんとあらわれていて、アンサンブルの憧れをかきたてる演奏だったと思います。レッスン時に言いまくったフレーズの最後の処理もすごく良くなっていました。たくさん合わせをしただけあって安心して聞けました。

さて一方で、トリオダンシュって合って聴こえて当たり前なんですよね。「まぁズレてはいない」くらいで満足してしまうと、魅力半減です。違う楽器なのに同属楽器である三重奏のアンサンブルのハードルはもっと高いです。もっといい音がします。アンサンブルは個人技です。もっともっと他人の演奏に興味を持っていきましょう。次回のエントリーもお待ちしてます!

 

18.ロマンス/エルガー

2曲抱えてこのクオリティ、さすがでした。ピアニストへの反応の仕方がピカイチです。ファゴット吹き、なぜかみんな他人に影響されて洗練されていきます。そーいう意味で今回、ピアニストと2曲やれたことはとってもよかったのかもしれないね。表現の難しい曲のはずなのに、ちゃんと伝わりました。これは誰にでもできることではないので、自信をもってほしいです。

一方で問題は技術面ですね。楽器の鳴らし方、そろそろ壁を越えていい頃だと思います。オーバーブローをなくすこと、ビブラートを取ったらどんな音がするか試すこと、リードや楽器を見直してみること、いろいろ入り口はあると思うのでぜひ試してみてください。

 

19.ロマンス/ブルッフ

いやー、もう、直接言ったんだけどさ、好きでした。俺にはできない、でも俺の大好きなブルッフのロマンスだった。次回ブルッフやりたい、っていう声が結構あがっていて、「そうだろうそうだろう、俺の大好きなファゴット奏者はすごいだろう」となぜか俺が威張ってます。へへん。大阪と東京、もっと近くならないかなぁ、いろんな意味で。東西の壁を僕たちでぶっ壊していきましょう。

 

20.ファゴットとオブリガードチェンバロのための二重奏曲より第1.3楽章/シャフラート

最年長の演奏、大変にご立派でした!僕のようなワカモノには想像もつきませんが、そのお歳でそこまでレベルアップできること、本当に尊敬します。僕のふたりめの師(あの高名なK先生のことですが)は今でもレベルアップしようとしていますが、それに近いものを感じました。ちょっとおふたりを引き合わせてみたくもあります。笑

またぜひ、素敵な師匠のもと腕を磨いて挑戦しにきてほしいです!今後ともよろしくお願いいたします。

 

21.オーボエ協奏曲ニ短調/アルビノーニ

MVPだ!と思いながら聴いてました。友人枠にMVPは設けませんが、曲への理解、そのための技術、安定感、ピアニストへの共鳴の仕方など、あらゆる部分でハイクオリティでした。ファゴットの生徒たちに見習わせたい部分がとってもたくさんありました。

失礼ながら前回のアンサンブルのときはそうでもなかったので、レベルアップしたのか、思い入れがあったのか、そもそもソロ向きなのかは分かりませんが、今後ともエントリーしていってほしいです。今回のような向き合い方をアンサンブルでもしてみてくれたら、たぶんその団体は素晴らしい演奏になることでしょう。

 

22.無伴奏チェロ組曲第3番より「ブレー1」/バッハ

直前の曲変えにビビらない度胸は門下トップです、間違いなく。いやそりゃぁビビってたんだとは思うのだけど、堂々としていて素敵でした。やれることをやれる範囲でやる、というのは同い年の大人として見習わないとな、と思うところです。

ただ、この会は基本的にソロを演奏する場なので、間に合わなかったから曲変えます、となってもほとんど誰にも迷惑をかけないです。でも、そんなことなんども繰り返すわけにはいかないから、今後は頑張りましょう。楽器は結構うまいです。必要な技術や鳴らし方も心得ているしセンスもあります。ただひたすら、譜面を読むのと練習が下手すぎるだけ。覚えましょう。誠実さや想いは音にして初めて伝わります。伝えてなんぼでしょう。

前お話したことだけど、とくに君の普段いる世界ではファゴットの世界代表になりがちです。誇りを持ってほしいし、魅力的なこの楽器をもっともっと広めていきましょう。さぁエチュードをさらうんだ。ゆっくりね。

 

23.アンダンテとロンド/ミルデ

ファゴット芸人卒業おめでとう!再入学しないように。

ウェーバーの頃にも感じてたし打ち上げで話したけど、君の音楽表現能力は本当にすごい。表現も技術のひとつだと思います。ただただ、それを伝えるための他の技術が乏しいのが悔しい!俺は聴いててなんだか悔しかったです、この才能がなんでこんなに残念に聴こえてしまうんだろう、と。笑

身につけましょう。音楽そのものの経験値が浅いことはもうハンデにはならないから、ファゴットの吹き方をもっと覚えましょう。エチュード月1曲(以上)、挑戦してみませんか?

 

24.ファゴットソナタ/ケックラン

こだわりと想いが強くなりがちなこの曲。そこに寄らずきちんと向き合ってきたことが伝わってくる、友人枠にもっとも求めたい要素がつまった演奏でした。打ち上げで「ケックラン、リベンジしていい?」と言ってくれました。本当はあなたにはもっといろんな曲吹いて聴かせてほしいんですけれど、60近い(そろそろ怒られそう笑)人にそんなまっすぐな想いを見せられたらだめですなんて(何度もは)言えませんでした。笑 ピアニストへの負荷の多い曲ですが、リベンジ楽しみにしていますね!

 

25.ファゴットソナタ/サンサーンス

この会でお願いしているゲストたちは、いつも僕の期待を遥かに越えてこたえてくれます。生徒たちに憧れのファゴット奏者をたくさん作ってほしい。本物の演奏を身近で聴かせてほしい。あたらしいレパートリーをじっくり聴いてみてほしい。など、いろんな気持ちをもってお願いしているのですが・・・

僕の持っているうちの発表会のゲストという概念を覆すくらい、ぶったまげるほど素晴らしいサンサーンスでした。生徒にこの曲は基本的にあまりやらせない(きつい審査をもうけています笑)のですが、その審査はますます厳しくなりました。笑

とても忙しい中、ほんとうにありがとう!いろいろと不備のある会ではありますが、ご都合ついたらまたぜひ吹きにきてください。

 

26.ファゴット協奏曲RV497より第1.2楽章/ヴィヴァルディ

自分の演奏です。笑

他のSNS媒体と重なってしまいますが、今回、はじめてプログム内で自分も演奏しました。

僕はファゴット奏者です。オーケストラや吹奏楽の演奏、室内楽での演奏派遣、リードの販売、ファゴットや合奏の指導などを中心に活動していますが、どうにも「教える仕事」に偏ったイメージを持たれている(ような気がする)ところがあります。楽器を教えるのをメインにするのがどうなのか、という話ではなく、僕自身の信条として「現役のプレイヤーであるからこそ教えてあげられる、みせてあげられるものがある」というものがあります。そーいう意味で、決意の演奏でした。

とても苦手とする運営や事務作業を一人でこなさなければならない発表会、準備やコンディションが最低ラインな中ではじゅうぶんな演奏はむずかしい、と考え避けてきたんですよね。まぁ結果として演奏がどうだったかは、まぁその、おいといて。今後とも挑戦していきたいと思っています。

 

27.悲愴三重奏曲/グリンカ

まずはレッスンに行ってあげられなくてごめんなさい!立場や環境を越えたメンバーでのアンサンブル、どうにもいびつになりがちなのですが、そういった問題を感じさせない演奏でした。多機能な近代兵器のような楽器であるクラリネットファゴットが一緒に演奏するのはとても難しいことだと思います。

けっこうな長さのあるこの曲が、まったく長く聴こえませんでした。今後ともふたりのレパートリーを増やしにきてくれると嬉しいです。

 

28.ファゴットソナタ/ヒンデミット

いつも言うMVPとは、レッスン、ピアノ合わせ、本番への伸び代からはかるもので、結果としてうまい演奏をした人にあたえるものではないのですが、単純に参加者の中でもっともいい演奏だったのがこの人だと思います。

技術やセンスはもちろん、吸収力や対応力、ピアノへの共鳴の仕方、曲への向き合い方やさらい方のレベルの高さが満載の名演でした。もう誰が一番うまいのかわからなくなってきた。それでこそ発表会だよね。

ただ「ありがちないびつさ」が少し気になりました。具体的には指の動きと息が連動してしまうこと、フォルテが鳴りきらないことがあること、(おそらく)運指ミスによる音程のズレ、フレーズ語尾の処理がイマイチなど、バランスがいい反面悪いことろも「ありがち」な部分が多かった。それがオーソドックスなんだとは思うけど、そこらへん1つ1つ潰していくともっとファンが生まれるんじゃないだろうか。次回も楽しみにしています!

 

29.サロン用小品/カリヴォダ

友人枠、たぶんこの人のために作った枠なんだと思います。これが最後の出演になってしまう恐れもあるのだけど、たぶんそうはならないかな。こんな楽しいこと、やめられないよね?そうだよね?

「簡単そうに吹く」と、たぶんみんなに言われて「そんなわけないじゃん!」と答えてきたんだと思います。簡単そうに吹く、というのは、よく言えば堅実な練習による安定感からくるものです。わるく言えば難しいところはクリアしているものの、クリアしているだけで魅力的でない、という意味なんだと僕は思います。いい演奏って、難しいことをクリアしていれば生まれるものではなくて、欲だったり想いだったり知識だったり経験だったり、そういったところから生まれてくるんだと思います。

たぶん君はレッスン1回で曲吹いたらダメです。吹けてないままでいいから何回もレッスンにいって、もっと悩んで演奏して欲しい。そうしたらきっと、「簡単そうに吹く」ではなく「抜群の演奏でした」と言ってもらえるんじゃないかな。

オーボエ、辞めないでください。それが楽器の世界に引き戻した人間(たち)のたった一つのお願いです。

 

30.ファゴットソナタヘ短調/テレマン

MVPでした。もう俺が言うまでもなく、圧倒的な名演でした。

前日の合わせでできなかったこと、本番突然やるのはもう門下の遺伝子なんでしょうけれど、それによって生まれた歪みやミスが気づいてる部分以上にたっっっっっくさんありました。崩壊してもおかしくなかった。君の名演は、ピアニストがそれを慈愛の心で掬い上げてくれた生まれたものです。一種の奇跡なので、慢心せずこれからも頑張っていってほしい。

会にもソロ曲にも良くも悪くも場慣れしてひょうひょうと演奏をこなす子が増えてきた中、君みたいに一途な子がいるのは僕としてもとっても面白い。人の演奏もよく聴いていて学ぶこともきっとたくさんあったでしょう。そのふるえた心を忘れずに。あと彼女作りましょう。

 

 

ふー。1万文字弱の長文、読み返したら変な日本語たくさんあるのだろうけど、僕は物書きではない上に学がないので、どうかご容赦ください。