ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第14回発表会でした。総評と演奏ごとの講評とか。

4月ですか。本当にただの発表会のためのブログになりつつあるのはよくないですね・・・。

全く更新していなくても過去記事を見てレッスンのお問い合わせを頂くことも頻繁にあり、大変にありがたいことです。記事のネタは溜まってるんですよね。

「今更聞けないファゴットの正しい運指と替え指、トリルの指について」

「音程とリズム」

「上手い演奏と好きな演奏」

コントラファゴット入門」

あたりが候補でしょうか。気長にお待ちください。

 

さて、タイトルにもある通り、門下発表会が3月24日、新宿のドルチェ楽器にて行われました。Facebookの通知で気づいたんですが、2年前に行われた発表会も、今とそう変わらない人数でした。今後どんな風になっていくか分かりませんが・・・変革なくして継続はない、と思うので気が付いたことはどんどん試していきながら続けていきたいと思っています。

打ち上げで生徒に「この回はいつまでやってますか?何十年後かに今回で60回目だよ、とか言いたいんですけど」なんて嬉しいことを言われて、「俺が死ぬまでやるよ」と言っておきました。むしろ死んでからも継続していくようなシステムを作れたらいいなぁ。笑

最近はどこに行っても門下生の話をされます。何度でも言いますが、僕はあくまで演奏者という肩書を捨てるつもりもありませんから、指導者としての力を認められる事は光栄ではありますが本意ではないんですよね。僕がレッスンで教えてあげることができるのは僕が演奏者としてしてきた創意工夫から生まれた事だから、演奏者であることをやめたとき僕は指導者としての道もなくなる、と考えています。ので、今回も吹きました、ソロとゲストを呼んでのアンサンブル。いつもながら時間は使えず苦労も多かったのですが・・・

 

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今回のゲストには今所属しているオケの同僚である、オーボエ奏者の炭崎友絵さん、クラリネット奏者の浜崎歩さんをお呼びし、オーリックのトリオを演奏しました。このお2人は去年の4月から入団したメンバーなのですが、どのお仕事でもいつもほれぼれする演奏をされていて、一緒にアンサンブルができたら最高だ!と思い声をかけさせて頂きました。オーリックやりたい!すごい!と生徒たちからも反響が大きく、僕自身すごく楽しく演奏させてもらえました。お2人とも本当にありがとうございました・・・!

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さて講評に入る前に、次回発表会のご案内をしておきます。この門下発表会は、僕の個人レッスンを(1回以上)受けた方によるファゴットソロ演奏と僕のアンサンブルレッスンを(1回以上)受けた団体によるアンサンブル演奏の2枠存在し、レッスンさえ受けた頂ければどなたでも参加できるものとなっています。コンセプトは「とにかく練習してレッスン受けて人前で曲を吹けば最短ルートでうまくなるはず」というもので、本番の演奏がどうだったか、という事よりもそれによってどのくらい成長できるか、というところに重きを置いています。伴奏はプロのピアニストに弾いて頂くことができます。近頃は門下生同士の交流も盛んで、ファゴット吹きの仲間がたくさんできる会となっています。

日時は2019年7月21日(日)お昼ごろ開演~18時ごろ終演予定、その後打ち上げあり

場所は新宿のドルチェ楽器東京です。大変吹きやすく響きの良いホールとなっています。

参加費はファゴットソロ参加が14000円(学生10000円)、アンサンブル参加が1人6000円(人数によって変動あり?)です。どちらもレッスン1回無料となっています。ソロ参加の方にはピアニストへの謝礼も含まれています。

もし2回目以降のレッスンが必要であれば、通常通りですが1回1時間程度5000円(学生4000円)でお受けしていますのでそこは御相談ください。最近は1回だけで物足りなくなり2~3回受ける参加者が増えています。

参加〆切などは特にありませんが、ピアニストへの依頼の関係上5月半ばごろには確定しておきたいと考えております。

参加申し込み、ご不明点などのお問い合わせ、ご相談などは

発表会参加・お問い合わせフォーム

こちらまで。どうぞお気軽にご参加ください。お待ちしております。

 

ここからは参加者以外にはあまり面白くない内容になるかと思いますが・・・今回の講評を書き綴っていきたいと思います。学がないものですから、文章と呼べるほどのものではなく、書きなぐったようなところがありますがご容赦ください。

 

まずは今回の総評です。全体として、「レベルの高い発表会」になった印象でした。元々うまい子はうまい会ではあったのですが、全体の水準が上がり、個々がきちんと課題を乗り越えるようになってきた、と思います。それだけではなくて、僕が与えた課題を材料に自ら生み出されるものを全員が本番で発揮できるようになってきました。

レッスンというのは、基本的には足し算です。やってきた内容に大して、足すと良くなるものを足してそれを定着させる。定着してきたら次のレッスンでまた新しいものを、という繰り返しなのですが、今回の参加者たちは足し算という領域を越えていました。与えた課題を材料に別人のように化け、また新しい課題で化け、と、「そんなこと教えてないけど最高だな!!」という演奏を本番たくさん聴くことができました。本当に先生冥利に尽きる時間でした。

 

では曲ごとに。

 

1.無伴奏チェロ組曲第3番より「ブーレⅠ」/バッハ

初参加・10数年ぶりの本番お疲れさまでした。おそらくテクニック的には簡単な曲だったと思うのですが、ブランク明けということもあり奏法上の悪いクセを一掃するにはちょうど良かったのではないでしょうか。

かなり細かく運指やアーティキュレーションについて指摘してきましたね。どちらも遵守したうえで丁寧に練習してきたんだろうな、と感じる演奏でした。その丁寧さは、どれだけ上達しても必要なものかと思います。緊張しても発揮できる力というものは、そういった時間の過ごし方から生まれてきますから、今後も忘れず、演奏を楽しんでいってくださると嬉しいです。またエチュード頑張りましょう!

 

2.ファゴット協奏曲より第1楽章/ウェーバー

「身の丈に合わない曲」なんてとんでもない。身の丈に合う曲なんて一生出会えません、曲はいつだって僕らの遥か頭上にあるものです。特にこの曲は。

ウェーバーの協奏曲に挑む、という意味で必要な技術はじゅうぶんに身に付いたと思います。クオリティで言えば近年うちの会で演奏された中でもかなり高水準だったと思います。今回の演奏を誇りに思い、自信を持って今後も色んな作品に挑めるといいですね。極論、今回のような練習ができればどんな曲でも演奏できます。

楽器のポテンシャルも活かせるようになってきました。とにかく響きが豊かな楽器ですから鳴らすもの苦労したと思いますが十分に鳴っていました。速く柔らかいタンギングが身に付いたので、今度はそれをいつでも取り出せるようになるといいです。ウェーバー限定でできても意味がないのです。

「アリア」の部分、良くはなりました。しかしこの手の箇所というのは得意不得意があるものですが、自分ではどのような取り組みをしたのでしょうか。楽器の練習だけでは得られないものが必要なフレーズですから、その手の壁は必ず今後もぶつかります。魅力的な演奏は魅力的な人間から生まれてきます。いい景色を見て、いいものを食べて、いい人と出会って、いい演奏をしましょう。今後も楽しみにしています!

 

3.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

いい楽器の鳴りが生まれてきました。しかし、リードだけがバリっと鳴るのとは違う、豊かな響きをもっと意識していくといいと思います。自分で「いい音だな」と思える音色の中でダイナミクスを操作しましょう。

フレーズの語尾がもっと洗練されるといいと思います。膨らみは上手なのでおさまりを丁寧に。「いちおう並んでいる音」は並んで聴こえません、丁寧に並べた音だけが並んで聴こえるものです、器用さに任せて連符が乱暴になってしまわないように。

ピアノとのアンサンブルが安定してきました。たくさんアンサンブル曲に挑戦してきた副産物でしょうか。聴く余裕も感じられます。逆に言うと、聴いて合わせる、以上のアンサンブルは感じられません。ちょっと踏み込んだり揺さぶったり、みたいなコミュニケーションができるともっと面白いと思います。

とはいえ、場数を踏んできたことによる大きな成長を感じる演奏でした。自信もっていいと思います。

 

 4.ファゴット小協奏曲/ダビッド

初めてのソロ曲、お疲れさまでした。オケやアンサンブルとは違った面白さが味わえたでしょうか?

冒頭の発音、とても綺麗でした。フレーズの方向性等もよく理解し発揮できています。楽譜の版による違い、どんなふうに吹くかな、と楽しみにしていましたがやりたいことがきちんと伝わってきてどうしようね、とだけレッスンで言ってよかった、自分で決めた事というのは愛着がわくからうまくいくものです。

フレーズの語尾が意志薄弱、というより意識が抜けることが多いようです。語尾までもっと考えて吹けたらより良かったと思います。また音色がとても綺麗なのですが、綺麗なことで気づきづらいのですが開いた音が多く、おそらく大きなホールだと散ってしまうかもしれません。もう少しクローズドな音色でかつ楽器がきちんと鳴るような意識をするといいかもしれません。逆に、思いっきり開いた聴いている方がハッとするようなフォルテが何か所かあるとより面白かったかと思います。

速いところの安定感は素晴らしかった。この曲はとにかく安定しないと聴けたものではないので、前半のフレージングやコントラストも含めてこの曲の難しいところはきっちり乗り越えた演奏と言って良いと思います。総じて優等生と言える演奏で聴いていて安心できました。もう少し「やんちゃ」な仕掛けが多いと面白いと思います。今後も好きな曲に挑戦していってくださいね。

 

5.ファゴットソナタ/シュレック

友人枠での参加だったので、本番で初めて演奏を聴きました。リードと楽器の相性が良くないように聞こえました。パッと吹いていい音がするリードではなく、機能性(音色の操作、音程の操作、鳴りの良し悪し)でリードを選びあとは自身でコントロールしていく、というのがいいのではないでしょうか。

この曲で難しいフレージングにおいては「おかしなところもない」し「ぐっとくるところもない」という印象でしょうか。もっと山を作り、人の心を揺さぶる演奏ができると素敵かなぁ、と思います。ドレスとてもよく似合ってました!

 

6.ファゴット協奏曲より第1楽章/モーツァルト

今までで一番厳しいレッスンだったと思います。この曲はそういう曲だ、と思いながらも、どうかなぁ、腐ってしまわないかな、と心配でしたが、本番とても素晴らしかった。最後のレッスンから数日間、とてもいい時間を過ごしたことかと思います。今回の演奏を自信に変えて今後も色んな曲に挑んでいくといいと思います。極論、これ以上難しい曲はないはず。

トリルの処理はまだまだ甘かったと思います。ごまかして乗り切る、というトリルは効果的に聴こえることは永遠にないかと思います。ごまかせるのは器用さなので素晴らしいのですが、それにかまけているとこの手の作品が吹けません。

音楽の方向性を、足し算(ここを膨らませよう、ここをおさめよう、ここを前に行こう、等等)で考えるのは得意なんだと思います。これからは引き算(この長い音はデカすぎやしないか、このトリルは綺麗に入っているのだろうか、ここのアーティキュレーションはこれでよいのだろうか、等等)で考えられるようになるといいと思います。演奏の上手い下手は印象で決まるものなので、「これはちょっと変」と思われる箇所が頻繁にあると印象はあまりよくありません。

カデンツァ、代表的なものに触れて原則が学べたんじゃないかなと思います。名人芸を見せる箇所ですから、もっともっと洗練されてほしかったところですが、カデンツァ以外にたくさん時間を使った、と思えばこのくらい吹ければよかったのかな、と思います。最終的にカデンツァに力を注ぐことができれば、もっと良かったのかなぁ。とはいえ大曲であり難曲であるこの曲を、この曲らしく演奏できたこと、本当にすごいことです。オーソドックスをもう少し学べるといいですね。バロックもの(ドゥビエンヌとかどうですか?)が効果的かもしれません。

 

7.演奏会用独奏曲/ピエルネ

2日連続本番、お疲れさまでした。カットの有無、実は心配していたのですが全く問題にしていなくてよかった。自覚があるかは分かりませんが、いい度胸を持っています、武器にしていきましょう。

楽器がよく鳴らせています。コントラストも十分についていました。最初にこの曲をレッスンで見たときから考えるとものすごい進歩です。が、大切にしてほしい「長い音」がすべておざなりでした。ピアノとファゴットのために書かれた作品ですから、伸ばす音がピアノの和音の中に響く、という箇所がとても大切なのですがそういった曲の魅力はあまり出せていないようでした。まずは音価通りきちんと吹き、その音価に方向性を置きましょう。方向性のために音価を変えてはいけません。

後半の難所、よく丁寧に練習できていたと思います。今後も綺麗に並ばない!ここは無理だ!と思った箇所は丁寧に練習し向き合っていってください。

素晴らしいのは、タンギングの連続で楽器が鳴りづらくなりそうな箇所がとてもよく鳴っていて、それはなかなかできる事じゃないと思いますので、自信を持っていいと思います。

まだまだファゴット人生は始まったばかりです。これから色んな作品に触れて色んな経験をして、素敵な音を奏でていってください。人の演奏もたくさん聴いたと思います。やってみたい曲があったら、教えてくださいね。

 

8.ファゴットソナタヘ短調/テレマン

コントラストのついた素晴らしい演奏だったと思います。音程を損なわずに強弱を豊かにつけられること、素晴らしい長所だと思いますのでぜひそれを生かしていい演奏をしていってください。

速い楽章のときにリズムが乱暴になってしまう傾向にあるようです。速い楽章、といっても、アレグロや3拍子のヴィヴァーチェしかでてきませんし、「速い」ことに大した意味のない音楽ですから、もっと冷静にリズムを取っていかないといびつな演奏になってしまいます。いくつかある難所は丁寧に練習したと思います。音のつぶはとても綺麗に表現できているのですが、連符にも音楽の流れがあります。それを加味した練習がもっとできればよかったと思います。単なる指回しになってしまわないように。結果として、音楽の流れがあった方が指も舌もよく動くものです。

ブレスの調整を含めたスタミナ配分はうまくっているようでした。楽章感をたっぷり空ける、というものよくできていました。この曲以上にスタミナ面でキツい曲、というのは・・・まぁたくさんあるのですが、今後キツい曲だな、と思ったら今回実践したノウハウを生かしていけば乗り切れるんじゃないかなと思います。

そろそろウェーバーに挑戦してほしいな、と思いますが・・・いかがでしょうか。

 

9.ロマンス/エルガー

音楽を聴いていて鳥肌が立つ、という感覚、最近なかなか無かったのですが、3か所くらい鳥肌の立つことのある演奏でした。長い音から始まる音楽の作り方、本当に見事でした。強弱のコントロールも心得ていて、聴いていて心に響くのに安定感もある演奏であったと思います。安心して聴けるエルガー、というのはなかなか難しいことだと思います。

中高音(上のG~)の安定感が技術的にもっと身に付くといいのかもしれません。結局のところファゴットは、その音域からが勝負ですからごまかせるものではないですね。レッスンで課題にした中音以下の響きや音程は素晴らしく、何よりそのいい響きのまま十分なコントラストがついていました。多少のブランクなんてものともしない、「大人」な演奏でした。エルガーはそうでなくては。

そういえばいつも選曲が渋かった気がします。次の参加がいつになってしまうか分かりませんが、いわゆる「あざとい系の曲」に挑戦してほしいなぁ、タンスマン、グリンカ、ギャロン、あたり。いかがでしょうか。

10.シシリエンヌ/フォーレ

初めてのソロ曲、どんな気分でしたか?合奏と比べた段違いの達成感、得られましたでしょうか。

持ち前の柔らかくも太い音色がよく生かされた演奏でした。課題かなぁと思ったコントラストも十分についていて、決して技術的に難しい曲に挑戦したわけではないにしろ大きな成長を感じました。人の演奏たくさん聴いてやりたい曲もたくたんできたかと思いますので、ぜひまた挑戦してくださいね。

いい音色を持っているから、だと思います。その音色をキープするために低音域の音程が高くなってしまったり、強奏時に響きが十分に得られない事が多いようです。音色というのは可変でなくてはいけませんので、ちょっと汚いかな、と思うような強い音も出せるといいかもしれません、この曲で使うシーンはあまりないかもしれませんが・・・。

 

11.幻想小曲集/シューマン

もう友人枠代表ですね。渋みのある素晴らしい演奏でした。もちろんきちんと指は回っているのですが、ほんの少し不安な箇所で必ずと言っていいほどピアニストと僅かにズレます。技術的に不安のないところでも油断せず最後まで丁寧に音を並べる練習をするといいのではないでしょうか。細かい音符と同じくらい、それ以外の箇所の密度が上がるとさらなるレベルアップが可能かと思います。

楽器の構える角度が良くなさそうでした。唇に対して垂直である必要があるのですが、すこし下唇側に傾いている印象です。ストラップやバランサーの問題かもしれませんので見つめなおしてみるといいでしょう。

また次回も楽しみにしていますね!

 

12.ファゴットソナタホ短調/テレマン

やはり君は音楽に対して技術の使い方が抜群に上手いですね。ほしいところにほしい分だけ息を入れる、というのはなかなかに難しく、心地よい演奏になりました。ダイナミクスによるコントラストは抜群ですから、もっとテンポによるアゴーギグが自在になると表現の幅が増えてくると思います。また強奏時のビブラートがもっと幅広く使えると使える色が増えて良くなります。

君に限らずですが、本番前の追い込みは素晴らしいです。もちろんそれも大切なのですが、計画的に、つまり焦りのない状態で丁寧にいい意味でダラダラと音を並べそこに音楽を乗せて行く、という時間は良い演奏には必要不可欠な練習です。2楽章や4楽章のほとんどが、そこまで難しくもないけど丁寧に並べるにはちょっと嫌な運指という曲に対して、もっと丁寧な練習を心掛けてほしかった。ミスが多い、というより、音が入ってない感じが聴こえてきてしまうんですよね。うまいところはうまいのですが・・・。結果的に、難しいところはたくさん練習したためか丁寧に聴こえて、そうでもない箇所が雑に聴こえるようになっています。もっと練習は平たく等しく。その「ダラダラ音を並べる」時間に音楽的なこと(フレージングや強弱、アーティキュレーションなど)が自ら生まれてくるような、そんな奏者になってほしいと僕は思います。

やりたい曲はきっと溜まっていると思うので、また次の参加を楽しみにしていますね!

 

13.ソナタより第3.4楽章/ラフマニノフ

ピアニストにたくさん救われましたね。それにしても今回の演奏は僕が褒める必要がないくらい、皆が君を誉めていました。圧倒的なクオリティでしたしピアノをよく聞き自身の悪いリズムともきちんと向き合ってきたのでしょう。

元々、技術的なことよりも音楽性のことに向き合ってきたと思います。いま少し逆転していて、技術が音楽に追いついていません。つまり大きなクレシェンドをかけると音程がどこかへいく、口を締めて高音にいってしまうためすぐにバテが来てしまう、音の後押しが多すぎる、など、悪癖が増えてきてしまっています。今後もなるべく多くの譜面が読んでいきましょう。

またフレーズの語尾が長い音だと音程が下がる(まれに上がる)事が多く、意識が必要です。もっ客観的に自分の演奏が見つめられるように。そのためには、もっと他人の演奏を聴く必要はあるかもしれませんね。

とはいえ大ブラボ―でした。難曲をよくここまで魅力たっぷりに演奏してくれました。

 

14.ユーモレスク/グリエール

「ちょっとこのままだと曲の魅力もくそもない」という話を最後のレッスンでして終わってしまったので、どんな風に完成するかな、と不安だったのですが・・・本番に限って(というのはどうなんでしょうね)完成度の非常に高い演奏でした。前回の曲から比べると相当に難しい曲だったと思いますが、その曲を完成度高く仕上げられたのは素晴らしいことです。

フレーズの切れ目がうまく表現できないことが多いようです。フレーズの入りと切りは舞台に出る人の入退場によく似ています。バッと出てきてバッといなくなるのか、そっと入ってきてバッといなくなるのか。色んなパターンがあるかと思いますが、フレーズも同様です。特に切れ目というのは相当に意識と工夫をしないと雑になりがちですので、今後の課題にしていきましょう。

ブランク空けて半年以上経ちましたでしょうか。ぼちぼちアンサンブルや合奏への参加の報告を楽しみにしたいところですが、まだまだ自力に不安があると思いますから、またエチュード読んで持ってきてくださいね!

 

15.ファゴット協奏曲イ短調/ヴィヴァルディ

バランスのいい演奏でした。普段は「やりすぎ」か「やらなすぎ」が多い印象ですが、今回は全体を通して心地よい表現が多かったです。つまらない演奏だったかというとそうでもなく、コントラストがよくついていてとても楽しめました。

強弱が音量以外(音色とかアタックとか)でうまく表現できていてよかったです。つけてきた装飾等等のアイディアもよく表現できています。

簡単な運指による速いパッセージが入りきらない事が多いようです。「ここはできるから」と目をつぶってきたと思うのですが、最終的に他と等しく時間を使ってあげないと聴いている方には雑な箇所に聴こえてしまいます。難しい箇所をきっちりさらう、ということは覚えたと思うので、全体のクオリティをそろえる、という作業を覚えるとより良い演奏が目指せると思います。

それにしても、今までと比べて別人のようにいい演奏だったと思います。今回得た自信を普段の演奏活動にもぜひ生かしていってくださいね。次回はロマン派作品なんか良さそうですね。シューマングリンカウェーバーあたり。ぜひ聴いてみてください。

 

16.ファゴットとピアノのための組曲より第1.2楽章/ロンゴ

大変な環境下、よく頑張りました。環境的にバタバタすると練習が雑になっていくものですが、そんな印象はなくメリハリのついた時間を過ごせたのかと思います。今回得た感覚を忘れずにいれば、計画的にやれば今後も続けていけるんじゃないかなぁ、と思います。

曲の魅力をよく理解し、そのための技術を取得し演奏する。そこまでのレベルであればかなり高水準の演奏だったと思います。ではその次の段階というと・・・。それを共演者であるピアニストと(瞬時に)共有し、共有した音楽を客席に伝えていくこと、です。ピアノの音符は頭に入っていたとは思いますが、共有する力が欠けていました。もちろん緊張のせいもあったのかなとは思います。この発表会はソロに挑戦する場ですが、最終的にはけっきょくのところ、ピアニストとのアンサンブルなのです。もっと共演者に影響を受けた演奏ができるようになれば面白くなるんじゃないかな、と思いました。

というわけなので、ピアニストと絡むことの多い作品に挑戦すると面白いかもしれません。シュレックシューマンの3つのロマンス、ヒンデミットソナタ、あたりは譜読みの負担も少なめなので面白いかもしれません。

 

17.パストラーレ/ミヨー

大変にハイレベルな演奏だったと思います。「ミヨーがMVPだと思ったんですけど!」と何人にも声をかけられました。トリオダンシュは合って当然のジャンル、という話はレッスンでしましたよね。その水準は大きく上回った名演だったと僕も思っています。即興性のようなものも感じ、よく聴き合った演奏でした。

欠けた部分を挙げるのであれば、個人個人のヴィルトゥオーゾがもっと欲しかった、というところでしょうか。オーボエは馬力不足、音色の良さに頼らない表現幅をもっと磨きましょう。クラリネットは強弱以外の色がもっと欲しい。強いけど優しい、弱いけど存在感のある、なんて表現を覚えたらもっと素敵になります。ファゴットはもっと安定感があった方が良いかもしれません、技術的なことではなくて、共演者に応えようとしてキャパシティを越えたものを表現しようとして1人になった時にパンクしてしまう、という箇所が何か所かありました。

アンサンブル、けっきょく個人技。もっと自分が光れば共演者のことも幸せにしてあげられて、結果として自分がもっと面白くなります。個人技が一回り成長したあたりで、同じメンバーの演奏が聴けたら嬉しいな。

 

18.三重奏曲/オーリック

ゲスト2名と主宰によるトリオダンシュでした。3回に1回くらいやっている、ファゴット以外のゲスト奏者を招いてのアンサンブルですが僕としてはこれが一番たのしくて、これをやりたいがためにみんなにアンサンブルをやるよう促してきました。

お2人とも本当にありがとう。またオケの現場でよろしく。

 

19.2つのファゴットのためのソナタ/モーツァルト

ファゴットの二重奏といえばコレ。という作品ですね。いろいろな演奏が世にあふれています。その一角としての今回の演奏ですが、この曲の魅力を大変よく表現しており、ニコニコしながら聴ける演奏でした。しかし縛りの多い古典派でありながら、「モーツァルト」という絶対的な世界観を表現するのはとても難しかったと思います。お疲れさまでした。

さて、では、この曲を聴いたこともない、モーツァルトの作品だ、とも知らない人が聴いたら今回の演奏はどう思うでしょうか?二重奏という性質上、旋律が聴こえない、なんて自体にはなかなかなりませんから、伴奏系がいかに魅力たっぷりに聴こえるか、が二重奏のミソだと思います。「伴奏が旋律に合わせる」というだけでは二重奏は成立しません。そもそも伴奏という概念は単旋律楽器1本ではほぼ成立しません。伴奏だと思って演奏してしまうと止まってしまって聴こえてしまいます。また旋律のパートの人も、もう1人に呼応した演奏でないとやはり面白みに欠けてしまいます。残念ながらあまりいい演奏が聴けないのがこの曲の残念なところです。

もっと挑戦があってよかったし、もっと詰める部分がそれぞれあったのではないでしょうか。人数の少ないアンサンブル、というものの難しさ、もっと楽しんでいきましょう。

 

20.4つの舞曲/ボール

初めて聴く作品でしたが、聴き映えのするいい曲だと思います。

テンポ感とアーティキュレーションはレッスンでかなりしつこく、強く伝えてきたつもりでしたが、1週間前だったということもあって、残念ながら大きく変化は感じることができませんでした。僕としては残念ながらそれ以上の言葉は無いのですが・・・。

3人とも、楽器を吹く技術はたくさん持っていると思います。音色も綺麗ですし、音程も悪くない、指や舌も十分に動きます。でもそんなことが聴きたいのではなくて。足りないのは、作品に対する誠意です。今回の作品に関してだけ言えば、極端な話、劣悪なDTMソフトへの打ち込みに劣ってしまう部分がたくさんある演奏でした。持っている技術で「なんとかしよう」という練習ではなくて、1つ1つの楽譜に対して真剣に向き合わなければ、今以上、楽器の演奏は面白くなりません。「このくらいのテンポなら吹けるかな」と思うメトロノームの数字を半分にして、テンポ以外の情報を1つも落とさず吹く練習(レッスンで、ではなく、個人の練習という領域で)から始める、ということを僕はファゴットの生徒たちに徹底させています。ぜひそういった時間を楽器にあてて、作品に対する誠意を見せてほしいものです。ぜひ同じメンバーで、前と違う!という演奏を今度聴かせてくれれば幸いです。

 

21.五重奏曲より第1楽章/カプレ

色彩感ゆたかな演奏でした。モチーフの少ない曲(楽章)ですからそれそのものが難しかったと思います。バランスが良かったのは管楽器4人ともにいい楽器の鳴りがあるからですね、素晴らしいことです。

しかしホルンを欠いた木管アンサンブルですから、フォルテを聴かせることに苦労が感じられました。楽器はよく鳴っていますから、音色や発音による変化がもっと出ると奥行きのある演奏になったかな、と思います。

ピアノはもっとコントラストをつけることを意識して。音数の多さがダイナミクスに直結してしまうとアンサンブルでは共演者が苦労してしまいます。レッスンでも言いましたが「管楽器なんて出てこなくていいや」と思わせるような音を出してもらってこそ、アンサンブルが面白くなるというものです。そのへんの気持ちはファゴットやフルートを吹く君だからよく分かってるはずですね。

テンポ感が良すぎて、アゴーギグが感じにくい演奏になっているのも気になりました。レッスンでも触れましたが、もっと書いてある発想記号を大げさに出していきましょう。変わってないな、と思ったら気づいた人がすぐ口に出さないと、ただ慣れるだけの合わせになってしまいます。

 

22.木管五重奏曲/タファネル

名演でした。木管五重奏といえばこう、という印象通りの演奏ができるメンバーだったと思います。

木管五重奏は同じ管楽器とはいえ発音帯が全く違う5つの楽器がそろっていますから、他人の演奏と自分の演奏のギャップに気づき修正していくことが必要不可欠となります。レッスンで指摘した、フルートはアタックの弱さ、逆にオーボエはアタックの強さ、ホルンのフォルティッシモ等、もっと気にして本番までに修正していってほしかったです。クセというのは色にもなりますから、いいこともありますが、基本的には毒です。持っていていいので、必要ないときにきちんとしまえるようになるといいです。木管五重奏は異文化交流ですから個人のクセを出しっぱなしではうまくいきません。

逆に個が光る事もたくさんあり、ぐっとくるシーンも少なくなかったので、個を出し入れできると「みんな全然ちがう演奏してるのにまとまっている!」という演奏に近づけます。そんな演奏、聴いたことありますか?なければもっといろんな演奏会に足を運んでみてください。若手プロの木管五重奏とか、色々(よくも悪くも)あっておすすめです。

 

23.ラプソディ/オズボーン

自分の演奏です。いい意味で無伴奏の作品らしく、狂詩曲らしく、というのがコンセプトで演奏しました。まだ数か月この曲とは向き合わなきゃならんのでいいタイミングで本番で吹けたのでよかったでしょうか。

 

24.3つの二重奏曲より第1番/ベートーヴェン

2人のセンスがそれぞれ光る名演でした。二重奏としてはとても水準が高かったと思います。1楽章はもっと2拍子を感じて演奏すると軽やかでよかったかな。テンポ感、というよりは拍子感で。トリルや簡単な連符をもっと正確に大切に。別にできてないわけではない、でもうまくもない、という音の並びが多かったです。なんでもない並びを美しく、というのは古典派を演奏するうえでは必修科目です。

2楽章冒頭のトラブルも拍子感の共有がなされていなかったから起きたことのようです。先に出るクラリネットは装飾音符をきちんとリズムで吹けるように、ファゴットはそれを信じてきっちり入ること。どちらも大切なことです。立場上、ファゴットの方が古典・バロックの様式には強いのですから、ナビゲートしてあげると良かったのかも。

3楽章の難しい(?)連符も、並ぶのが目的で終わってしまう印象です。名人芸として聴きたかった。たぶん持ちうる一番いい音が並べばそれだけでいいんだと思います。和声感、色彩感なんかはとっても素敵な演奏でした。

連携は素晴らしく取れているけど、古典派という魔物にやられてしまった、という印象の演奏でした。

 

25.デュエッティーノ/ボザ

今回のアンサンブルMVP。曲の味を最も生かすことに成功した演奏でした。短い音の連打がすこし転んで聴こえてしまいます。「短い」というキャラクターを生かすためには転ばない工夫が必要不可欠ですから、単純なリズムを感覚的につかめるといいですね。

二重奏というジャンルはバランスを取る必要は殆どないのですが、それでも主役とそうでない側に分かれることが多く、その表現が難しいのですが今回の演奏は見事に吹き分けができていました。

遅い楽章に関しては、ふたりとも発音がもう何種類かあるとよかったと思います。柔らかい発音+鳴る音、強い発音+鳴らない音、なんて組み合わせを使うと音色・ダイナミクスのバリエーションが増えて面白くなります。要練習です。

アクセントの付け方が2人で揃うともっとよかったですね。二重奏ですから、アクセントの種類は違ってもいいかもしれませんが、温度が違うところが多く、結果としてかみ合って聴こえなくなってしまいました。すり合わせがもっとうまくなるといいですね。

 

26.無伴奏チェロ組曲第3番より「ブーレ1.2」/バッハ

前日のレッスンであれだけ乱されて(?)よく1日でまとめました。本当にその一言に尽きるのですが。「こう吹こう」と決めたものがそう聴こえる、という当たり前であるべきことがファゴットはすごく難しいのですが、うまく演奏できていました。つまり表現したいことに技術が追い付いている、ということです。素晴らしいことなのですが逆に言うと、技術が先行し表現したいことがまだまだ足りていない、という状態とも言えます。無伴奏作品というのは自由がききますから、無機質なものが一切許されない世界です。もっともっと楽譜のすみからすみまで、音を出すたびに自分のやりたいことで満たされていくような練習ができるといいですね。

技術的には、もっと薄いところがあってもよかった気がします。全部いいい音、とも言えますが。ブーレのみで始まり終わるのですから、コントラストをもっともっとつけないと面白みに欠けてしまうかもしれません。

次回はぜひ、ピアノ有りの作品を!名ピアニストと共演するチャンスでもあるのです。

 

27.タンゴの歴史より「ナイトクラブ」/ピアソラ

ファゴットの新しい可能性を見た、という印象の演奏でした。力任せな部分がなく、大変好印象な演奏でした。軽やかな箇所は光っていましたが、もっと歌うところはしっかり歌いコントラストがついているとより良かったかなと思います。おそらく軽いセッティングで演奏したのだと思いますしそれは間違っていないので、軽いセッティングで楽器をしっかり鳴らすテクニックを身につけましょう。

6拍子のテンポに無理を感じました。いい意味でマイペースにできるように。ピアニストを無視する、というのも大切なテクニックです。それにしても、悪いコンディションの中よくあれだけの演奏ができましたね。それが君の底力です、誇りに思っていい。

グリッサンドポルタメント?)はもっと後ろに寄せて。それっぽく、という部分でもう少しこだわりが欲しかった。

そのうちほかの楽章もぜひ挑戦してください~

 

28.2つのファゴットのための協奏曲/ヨンセン

「合わない」なんて印象は感じませんでした。もちろんいい意味で、です。むしろもっと個が聴きたい、合わせないで!というシーンの方が多かったです。ファゴット2本というのはもっと勝手にやるものです。普段の習性から苦手とする部分かと思いますが・・・「勝手な人」を演じられるとうまくいくかもしれませんね。いい意味で合わない場所を増やせるともっとよかった。

トリルをもっと技術的にしっかりさらいましょう。うまくいってないトリルにもっと向き合って。やたら速い連符だと思って。

持っているタンギングが2人でよく似ているんだと思います。つまりそれぞれが新しい種類のタンギングを覚えれば個としてもっと光れるかもしれません。

2楽章はもっともっと長いフレージングが取れると良かった。フレージングをつなぐ、ということは、山をきっちり作りその前後に仕組みを構築する、ということです。つなげている、という意識だけでは伝わりません。特にこの楽章はそれが難しいところですから、仕組みをもっと明確にしたほうが良かった。

それにしても、ファゴット2本、というのは良いものですね。このジャンルもっともっと探求していきましょう。

 

29.ソナチネ/タンスマン

長く準備をしただけのことはありました。元々「そこそこ」には吹けたと思いますが、あれこれ言った甲斐のある面白い演奏に仕上がっていて嬉しかった。

君はとてもきれいな音を持っています。つまり、とげのある音は意識しないと出てきません。タンスマンを演奏するには、少々綺麗過ぎました。もっとおどろおどろしい何かがうごめいているような箇所があるとよかった。それでこそ2楽章が光るというもの。

また、ピアニストとのアンサンブルがもっとうまくいくとよかったですね。個人としてリズムを取る事も大事ですが、かみ合わないとやはり意味がないものです。レッスンで「そこ速いよ」と言った箇所は本番も速かったのですが、僕が「速い」「遅い」とだけ言うときはだいたい、共演者がいる場合かみ合わなくなるよ、という意味合いです。タンスマンはリズムを喋る音楽です、もう少しリズムを表現できるとよかったですね。

 

30.コンチェルティーノ/ビッチュ

この曲がこのレベルで演奏されてしまうのだから恐ろしい発表会になりました。あまり言うことはありません。感情的になるべき部分(なってはいるのですが)の長い音が抜けてしまう事が多かったです。長い音、抜けるのか向かうのか、決めておかないとだいたい抜けてしまいます。ビブラートが途中で止まってしまうからそう聴こえるのかも。

カデンツァの装飾音符、イコールアクセント、にはなってほしくなかった。本当に聴こえたい音符がどこなのか、考えて練習しましょう。

楽器の鳴らし方がうまくなった、と思います。ツボをとらえられるようになった、といいますか。「音程が高い」という状態はツボを間違ってとらえてるときに起こる状態です。基本的にはね。つまり、音程も良くなりました。大いなる進歩です。

 

31.テーマとバリエーション/ドヴァリョーナス

おかえりなさい。自分で分かってるとは思いますが、悪癖が抜けて技術的にも一皮むけて楽器にも慣れてフレーズ感も磨かれてきました。昔の録音と自分の音を聴き比べてみると一目瞭然かと思います。一体何があった?

長い音(所謂四分音符以上の音)の処理をもう少し考えましょう。向かうのか抜けるのかかすれていくのか。意思がない音が1つでもあるとそのフレーズ全体が台無しになってしまいます。

楽器の鳴らし方を覚えたことと、変な編成の吹奏楽から離れたからだと思いますが、無理に鳴らさずともしっかり聴こえる音、というのを習得しています。宝物ですので、どうか大切に。たぶん自分で「この音はいいおとだ」と思って吹いてれば、きちんとその音は客席まで飛んでいきます。この感覚を忘れないように。長調の曲がもっと救われた感が出るとよかったですね。色彩感覚がもっと身に付くといいです。

 

32.ファゴット協奏曲ホ短調/ヴィヴァルディ

今回のMVPです。ここ最近異様にレベルが上がっている会ではありますが、MVP選出の感覚はいつも変わらず、録音で振り返ってもやっぱり名演なのです。

僕がレッスンでお伝えしている事なんて、曲のもつ魅力のほんの一部なんだと思いますから、教えた事が足し算で発揮される事より、化学反応みたいに新しいものが生まれてくることが一番うれしく思います。今回の演奏は、そういった演奏にしっかりとした技術が乗ったものでした。

きちんとフレーズの山を谷を表現できています。山を大きくしすぎるとリード・楽器のキャパシティを越えて鳴らそうとし逆に鳴らなくなる、という箇所が見受けられます。いつでも頭の7割はクールに、どのくらい息を入れればいいか計算しながら練習をしましょう。

3楽章、本当にびっくりしました。よく考えよく練習されていました。普段のレッスンと発表会の流れでこんなに化けてくれる人がいるなら、僕はこの会をいつまでも開催したいものです。

 

33.プレリュードとスケルツォ/ジャンジャン

この曲がこのレベルで演奏されてしまうのだから恐ろしい発表会になりました。2回目。

いつもそうですが、ピアニストとの絡み方が本当に上手です。よく聴いていて、その中にきちんと入れています。なのでいつでもピアノとのバランスが良いです。感覚的なものですから、大切な才能として伸ばしていってください。

フレーズの引き際が早すぎることが多いようです。特に長い音で終わるとき、減衰が早すぎないように。もっともっとキープした方がうまく聴こえます。リードがFの仕様だったのだと思いますが、それにしても、低音域が溶けない音色になってしまっていました。どんなリードでもコントロールは効くはずですから、低音が吹きづらいリードで低音をうまくふく訓練を積みましょう。

「うまく」という表現は便利ですね。もっと「うまいこと」やりましょう。ちょっと正面から勝負しすぎなのかもしれません。ハイFは見事でした。

 

34.ファゴット協奏曲より第1楽章/ウェーバー

トリにする、という采配は大正解でした。たぶんトリでなかったら、こんなにうまいこといかなかったでしょう。そのクソ度胸は天性のものです、武器にしていきましょう。

それにしても、ピアニストに3~5回、命を救われた演奏です。次会った時、もう一度お礼を言っておきましょう。

僕も褒めましたし皆にも褒められたと思いますが、ウェーバー1楽章の完成度としては4割程度かと思います。大切な部分はきちんと乗り越えていますが傷が多すぎたのも確かですから、慢心せずこれからも頑張っていきましょう。慢心せず、とも言いましたが、「ウェーバーがなんとかなったのだから」と思えばどんな譜面でもなんとかなります。今後は「傷のない本番」を目指していきましょう。