ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第16回門下発表会でした。講評その他

当ブログは門下発表会の講評専用ブログです。

 

 

・・・・嘘です。本当にすみませんでした。笑

こんにちは、ファゴット奏者のとのむぅです。ほんと、こればっかりでごめんなさい。一応記事のネタは溜めてるので近々公開予定です(下書きに溜まっている)

 

 

 先日、ノナカアンナホールにて門下発表会が行われました。僕の生徒たちによるファゴットのソロ演奏、レッスンを受けてくれたアンサンブル団体の演奏による会です。

今回はここ1~2年において歴史的な(?)人数の少なさと全体時間の短さでした。

嘘でしょ、って言われるけど、本当です、ほんの5時間くらい。

この盛況っぷり、慣れてる子たちからすれば当たり前だけど初めましての人は一体どんな風に思うんでしょうね・・・。笑

でも僕はファゴット吹きがたくさんいるコミュニティが大好きなので、今後も1日中つづく発表会、やっていきたいと思っております。

 

 

 

今回はゲストとして、僕が行き先々で出会った最高に才能と腕前を持ったファゴット専攻の音大生を3人呼び、一緒にカルテットを演奏しました。近年音大生のレベルは劇的にあがっており、僕らが学生の頃では考えられないレベルの子たちがゴロゴロしていますが、今回呼んだ東京藝大の栗木典子さん、東京音大の竹村果南さん、昭和音大の古江那菜さんは特に素晴らしく、一緒に演奏していてとても楽しかったです。

近いうちにまた、一緒にお仕事ができればいいなぁと思ってます。うちの会に来てくださって本当にありがとうございました。

 

 

うちの発表会は、普段僕のところへレッスンに通ってる生徒たちのほかに、発表会前に1度だけレッスンに来て出演している人もいます。それぞれ取り組み方は違いますがそれぞれの生活の中で自身のファゴットに向き合いつづけ、素晴らしく成長していきます。

基本的なコンセプトは「レッスンを受けてソロ曲を人前で吹けば手っ取り早く上手くなるのでは?」というものですので、本当にどなたでも歓迎します。興味のある方は次回以降ぜひ、ご参加くださいね。ご連絡はこちら↓から。

発表会参加・お問い合わせフォーム

とりあえずレッスンに来てみたい!という方はこちら↓から。どっちでもいいんだけどね。

レッスンお問い合わせフォーム

 

さて、ここから先は出演者以外の方にはあまり興味のない記事になるかと思います。と、前振りをしているのですが、なんと出演者以外の方で最後まで読み切る方も少なくないんですね・・・この間聞いてビックリしました。ありがたいような、申し訳ないような。もっといろいろな方に読んで楽しい記事を載せていけるように頑張ります。はい。

では、恒例となりました各演奏ごとの講評を書いていきたいと思います。

 

 

1.演奏会用独奏曲/ピエルネ

前回はちょっと遠慮がちだった?コンビ芸も、今回はとっても面白かったと思います。人間関係をアンサンブルに反映するのも技術なのかもしれませんね。もっとやりあいたければ、必要な技術をみがいていきましょう。2人の噛み合いに関しては申し分なく、たくさん合わせをした成果は出ていたと思います。

ダイナミクスもよく表現できていました。それだけの幅があればオケやアンサンブルでもじゅうぶんに通用することでしょう。そういった意味で、安心して聴ける演奏でした。今後はその音量操作に加えて、音色の操作が出せるととてもいいと思います。具体的にはアタックの変化、ビブラート等の細かい表現がついていくとより豊かな演奏がでることでしょう。

また、アーティキュレーションについては課題が残る演奏でした。タンギングすると停滞し、スラーだと転ぶ傾向に少しずつですがあります。例えば基本的な音型(スケールやアルペジオ)を色々なアーティキュレーションで練習してみて、それを安定させていくような練習を積んでもいいかもしれません。また舌のつきかたをもう少し優しくしてみる、スラーの頭に小さなテヌートをつけるクセを身に付けるなど、技術面だけではなく表現面であらめてみるのもいいかもしれません。

 

2.ファゴットソナタ/グリンカ

うちの会でソロは久しぶりでしたね。いつも出してあげられるといいのだけど・・・。音出しの時に「ヘッケル?」と思うくらい艶と響きのある音色でした。楽器のポテンシャルをよく生かせていると思います。広い会場でどうなるか、ということも考えていければモーレンハウレルという楽器の世間的なイメージも向上していくんじゃないかと思います。

さて一方で、「いい音色」というのはすぐに飽きがきます。またシーンごとに「いい音色」というのは違いますので、場面がコロコロ変わるドラマチックなこの曲においては音色の操作がないと面白みに欠けてしまうかもしれません。ダイナミクスもそうですが、音色の操作。もっともっと豊かな表現を目指していきましょう。

 

3.ファゴットソナタemoll/テレマン

全体として安心して聴ける演奏だったと思います。表現の難しい調性と曲調であるこの曲で安心して聴ける演奏ができたことは大変立派な事であり、技術・表現ともに地力が高まったというのは確かでしょう。いい練習時間を過ごしたのが伝わってきます。

安定感がある一方、少しずつ停滞する演奏になっています。停滞の原因はたくさんありますが、音楽がおさまる箇所は上手ですが進んでいく箇所があまり得意でないようで、結果として停滞した印象に繋がっています。装飾音符などを入れるとそれがより顕著になっていきます。まず基本の音符で全体の流れを理解し、前にいくところ、落ち着くところ、を少しオーバーに表現できるようになってから装飾を入れまとめていく、という作業が必要かもしれません。カデンツァの含まれた作品に取り組むといいのかもしれません。

またタンギングが「止める」一辺倒なのも少し気になりました。触るだけのタンギングを使い分けていけると色が1色増えるような印象を受け、面白みが増すかと思います。

難しいところはよくさらいました。そこはあまり心配していなかったけど、よくさらったであろうところには音楽的な前進も感じられたので、もしかしたら難しくないところももっと「だらだらと」音を出す時間が必要だったのかも。

 

4.三重奏曲/ベートーヴェン

難曲をよくまとめていた演奏だと思います。ピアノに集合する、という意味で、ピアニストの素晴らしさが引き立つ演奏に聴こえたのは、よかったのか、悪かったのか・・・。笑

まずフルートの最初の合図、あれでは絶対に入れません。なんとか進んでくれたのはピアノ・ファゴットが大いに甘やかしてくれた結果です。動画で自分の合図を見直してみてください。そこに合図の得意不得意は関係なく、「共演する」ということがどういう行為なのかよく考える必要があります。それは基本的な曲のさらい方やフレーズへの取り組み方にも言える事かもしれません。誰と何の曲を演奏するか、は問題ではなく、その曲にどう取り組むか、そしてそれによって共演者とどんな思いを共有できるか、というのが問題なのだと思います。合図はその入り口に過ぎません。

ファゴットはこの曲をよく理解した音色とフレーズ感で演奏できていました。大変難しい曲ですからそれ自体、とっても立派な事だと思います。曲への愛情を感じました。短調の部分、もっと急激な変化が見えてもよかったかな。音色や音量だけでは限界があるので、アーティキュレーションをもっとシンプルに変えていってもよかったでしょう。

それにしても何回聴いてもピアノがうますぎる。笑

 

5.ファゴットソナタfmollより/テレマン

明らかに苦手であろうバロック作品を1回のレッスンでよくここまで仕上げました。まるで別人で、MVPもちょっと考えたくらい。もっと珍しいレパートリーならありえたかも。

楽器のポテンシャルも生きてました。自覚があるか分かりませんが、弱奏が大変魅力的でした。これは前の楽器ではできない領域だと思います。弱奏は素晴らしいので、もっと強奏に楽器のポテンシャルを生かしていきましょう。もっとドカンと鳴らしても大丈夫な楽器です。曲調のため、使用シーンは限られていたとは思いますが・・・。

またブレス前のフレーズ処理が雑になる癖があります。もちろんバテによるところは大きいと思いますが・・・もうひといき踏ん張って。その0.01秒を放り投げて休んでも何も変わりません。大変惜しい要素でした。

装飾はとってもいい感じに入っていたと思います。1回のレッスンでしたから触れることができませんでしたが、装飾は入れて終わりではなく、入れることで音楽の表現を豊かにする必要があります。派手な装飾を入れても息が入り楽器が鳴っていないと逆効果になってしまったりします。

得るものは多かったと思います。ぜひまたバロック作品、挑戦してみて。ヴィヴァルディは比較的波長が合うと思うし、ドゥビエンヌだとテレマン以上に苦手意識を持つかと思います。お好きなものを。

 

6.抒情組曲/ダンヒル

時代が時代(3年くらい前?)ならMVPものでした。なにせレッスンのたびに成長著しく、毎回僕がとても楽しかったです。僕がしばしばレッスンで言う「表現のために技術を」というやつが、まさに実現できていました。この曲を演奏するための技術がきちんと身に付いているからこそできる演奏でした。

伸びた音の扱いとその処理があまり行き届いていませんでした。今回の演奏ではそこまで気になるほどではないですが、もし合奏やアンサンブルになると、隣人や指揮者にかなり指摘されてしまうかもしれません。基本的には音は舌で止めます。音の処理というのは、舌で止める直前の音の動きによって作ります。おそらく、舌で止める前に無意識で息が止まったり遅くなったり早まったりしてしまうため行き届かなくなってしまいます。まずは無機質でいいので止めてみること。そこから処理を考えていくと、うまくいくのではないでしょうか。

また、曲ごとにたくさんのものを得ていますから、曲と同時進行でレッスンのたび1曲ずつでいいのでエチュードを持ってくるのがいいかもしれません。それほど難しいものではなくていいので、挑戦してみましょう。(きちんと)譜面を読んだ数、というのはとても大事です。

 

7.ファゴットソナタemoll/テレマン

この曲のしっとりした雰囲気をよく表現した演奏でした。レッスン時に問題だった装飾もすごく丁寧に扱えていて、バロック作品の演奏について、ずいぶん理解できてきたのではないでしょうか。すごいことです。

ビブラートも大変いいものを持っていると思います。特にクレッシェンド時、そのビブラートはとても効果的ですからもっと磨いていきましょう。ただし膨らませるビブラートは上手なのですが、フレーズをおさめるときにも同じものを使ってしまうと、聴いている側には「?」となってしまいます。幅の広いビブラートをお持ちなので、少し幅の狭めの繊細なビブラートを習得すると表現の幅がより広がっていくと思います。

似た話になってしまいますが音色の操作がもっとあるといいでしょう。柔らかくともしっかり鳴った音、硬いが小さな音、ほんの少しですが曲の表現にはとても重要なものとなってきます。まずはイメージからでいいので、使いこなせるようになりましょう。

 

8.ファゴットソナタ/ハールストン

すっかり定着しました「友情出演」。しかし、いつもこのくらい安心して聴きたいものです。笑

安心して聴ける、ということ以上に、深みと味わいのある演奏でした。特に低音の音色が曲にすごくあっていてよかったと思います。前回の発表会で全体に言った「ファゴットでいい音楽をするとピアニストがこたえてくれる」という瞬間がたくさんありました。

低音の響きに対して中音域が少し、潰れたような印象の音になっていました。リードもあるかと思いますが、意識と操作がどうにかなる範囲だと思いますので、同じリードが生きてるうちにお試しください。逆に中音域がいい音の出るリードで、今回みたいな低音域が出せる意識と操作もあると思いますからぜひお試しください。僕も基本的に演奏はリードと楽器頼りですが、最後は人間だより、だと思います。

 

9.プルミエソロ/ブルドー

ビブラートを封じた部分の音色は比較的よくなっていた、とは思うのですが、やはりその分消極的になってしまうようです。封じるのであれば、ビブラートなしで大きな表現をする練習をぜひしましょう。そのうえで正しいビブラートを習得して使えるようになっていくと表現の幅が倍増します。

やはり客観性に欠けます。「こう吹く」ではなくて、「こう響く」「こう聴こえる」というところに意識を持っていきましょう。どう響けば、どう聴こえればいいのか、というのは、美意識や人生経験から研ぎ澄まされていくものだと思います。おそらく必要なのは一種の冷静さで、全力で吹かない、というのも大切なのかもしれません。

恩のある元男性のトランぺッターが言うに「20代は女子の方が上手い。男子はどうしても力でねじ伏せようとするが楽器はそうできていない。30代になって体力が衰えてくるとようやく体の使い方を考えだして上手くなる(意訳)」とのこと。とはいえ体の使い方は今からよく考えていった方がいいかも。音楽の趣味の問題、だけではなさそう。

技術的には、ほとんどの音が速い息で吹かれていて音色の変化が見受けられません。絶対的な「いい音」なんて存在しませんから、色んな音が出せるように。速い息の音、それほど使用シーンは多くありません。

指だけ回るような演奏にならないように。人の心に響く演奏を心掛けましょう。

 

10.三重奏曲/プーランク

ある意味、室内楽としては理想形だった、と言えます。それぞれがきっちり音楽を考え持ち寄り最大限のパフォーマンスを勝手にやり、リハーサルでそれを調整し噛み合わせてパパっと本番に挑む。そしてそれが人の心に届く。ハードルの高い、またピアニストとしては技術的に難易度の高い曲を、本当に3人ともいい形で取り組んでくれました。第一声で「この曲はこのくらいやってくれなきゃね」とは言いましたが、ここまでやるとは正直思ってませんでした。まぎれもなく歴代最高峰のプーランクで、これを越える演奏が出てくるのは、本当にいつになるやら。

この曲をうちの会でやる以上、それはもうファゴット吹きが「僕の仲間でイチオシのオーボエをみんな見てください」という事でしょう。ファゴット吹きにとって、音楽的に身近な上手いオーボエ奏者というのは本当に特別な存在ですよね。

ピアノは本当によくさらってきました。きちんとヤンチャしてくれましたし、ロマンチックな音も持ち合わせているのなら、ぜひそれを最初(の合わせ、レッスン等)でやって・・!共演者の二人がそれに応えたくなっちゃう性格なのは、君が一番よく知ってるはずなのだから。うちの会でピアニストを基本的にプロに依頼するのは、ピアニストの格が上で、引っ張り上げてもらうことは単旋律楽器の奏者としてはとても大事な経験だと考えるからです。ぜひ、いつでも格上でいてくれるようなピアニストになって。

オーボエファゴットは、基本的な音の傾向がここまで違う(最初のソロのキャラクターの違いが、それはそれでとてもいいのですが)のに綺麗に噛み合わせて大変面白かった、いや、違うからこそよかったのか。しかしもっと影響し合う部分があってもよかった。音色やフレーズは共有するけれど、なんというか、楽器の鳴りが2人で違いすぎて聴いていて肩透かしを食らってしまう瞬間が何度かありました。いい奏者と共演するメリットは、自分にない音を引き出してもらうことにあると思うので、ある意味、好みとは違う領域に挑戦するいい機会だったのだと思うのですが・・・。お互い(3人で)引き出し合う感じが見られれば、MVPだった、と思います。個人技の成長がテーマの発表会だからね。演奏としては最高峰だったと思います。

 

11.組曲/ロンゴ

今回のMVP。一体何あったっていうんでしょうね。笑

派手な曲ではないのですが、それが気にならないくらい、色んな音色が聴こえてくる演奏でした。問題だったアーティキュレーションの表現やリズム感・音程感も改善するどころか、そこからいいアプローチができていて、伸びしろの大きさを感じました。ブランク明けて間もなく、ということなので、いい意味でリセットされて体の使い方がよくなったのかもしれません。今回演奏した時の感覚的なところを忘れないようにすれば今後よりレベルアップができるでしょう。

課題があるとすれば、ピアノとの絡み方があまり良くなかった。この音型のピアノに対して、ファゴットはこう演奏する!というイメージのようなものがちょっと薄かった、のかな。合わせも多くはないので、そこもやはり個人の領域でもっと考えるべきだったと思います。ピアニストに「あの、私はもっとこう弾いてほしいんです!そうしたら私はこう吹きます!」と言えるくらい。実は前回の発表会(いなかったけど)で多かった「ファゴットがピアニストの音を引き出すような演奏」というのが見られるとより良かったかなぁ、と思うところです。ピアノは弾けるんだっけ。弾いてみるのも、いいかもしれません。弾けなければファゴットで吹いてみるのもけっこう違ってきますよ。

なので次回もよかったらオケものではなくピアノオリジナル作品がいいかと思います。バロックではなく。和声的なところならヒンデミット、リズムならタンスマン(組曲)やフランセ(2つの小品)あたりが効いてくる、というか、今のままだと事故るくらいうまくいかないかも。笑 挑戦、という意味では、そのあたりはとてもいいでしょう。

 

12.ファゴット小協奏曲/ダビッド

コンチェルティーノ特有の軽さとこの曲のもつ明るさや優雅さ、とてもよく表現できていたと思います。技術的にも安定していて、うんうん、とうなずきながら聴ける演奏でした。サロンコンサートを聴いているような安心感でした。流れも自然で、必要な表情もよくついています。

が、逆に言うとそれだけに特化した演奏だった、ともいえるかもしれません。聴いた印象ほど難しくはないこの曲、もっと「聴かせる」ことにこだわってほしいポイントを逃してしまっていました。心がギュッとなるようなピアニッシモ、ゾクッとくるようなフォルティッシモ、みたいな箇所がなかったことが、残念でした。それは曲の軽さとは関係なくなくてはならないものだと思います。僕らファゴット吹きには伝わっても、それ以外の人には果たしてどうだったでしょうか・・・。もっともっと表現力を。

また速くなってからは、技術的にはいいのですがフレーズがとても短くなってしまっています。あまりフレーズについてしっかりレッスンで触れてきたことがないとは思うのですが・・・。「技術がよいが音楽がまだまだ」と評されるの、いやだと思いますから、次の機会にはそこらへんみっちりやりましょう。たぶん楽譜を見る目が変わってくると思いますし、本当に必要な技術が足りてないことにもきっと気づけるはず。


13.パパゲーノの歌/モーツァルト

直接も言いましたが、きっちり音出しをしましょう。本番(実際の演奏開始)までの時間の使い方をもっと考えて。今回、到着がバタバタしてしまっていたので大変だったとは思うのですが・・・・そんな時にこそ考えなくてはならないことです。ほんとうに時間がなければ、ステージで堂々と長々と音出しをするようなふてぶてしさがあっていいのです。ここは演奏会ではなく発表会。お客様より演奏者が大切なのです。

しかし課題だった音のツボや音程に関して、すごく良くなりました。習得しつつあるのはレッスンでも感じていましたが、最後のレッスンから本番まででもずいぶん良くなったようですし何より本番でそれを発揮できたことは素晴らしいことです。度胸もついてきたのでしょうか。

曲の持つ雰囲気のようなものも伝わってきてよかったです。ひょうきんで明るい曲調をよく表現できていました。朗々と歌い上げるような部分はもっと迫力があってもよかったですが、この曲でそれをやるのはなかなか難しいですね・・・。

次回はぜひ、技術的に「えっこんなの私には吹けない!」というものに挑戦しましょう。いえいえ、吹けますから、大丈夫ですよ。シュターミッツの協奏曲の1楽章、ぜひ聴いてみてください。

 

14.ファゴット協奏曲/シュターミッツ

世にも珍しいシュターミッツ全楽章。聴いてるほうはどうなるかと思いましたが、君の演奏がよかったためまったく飽きることがなく聴けました。いい曲じゃん。

僕の教えた事とは関係なく、力の入れ方、抜き方が上手くなったと思います。年齢とともに力まかせが効かなくなってきて、覚えるべくして覚える技術なんでしょうね、同世代なので僕もとてもよく分かります。シュターミッツとしても、君史上としても、本当に稀に見る名演だったと思います。やはりソロ曲にたくさん取り組むと楽器はうまくなる。

さて課題があるとすれば音色でしょうか。いや元々いい音吹いてるのですが、もっと操作が欲しい。いや操作も上手いと思いますが、「明るい」「暗い」「大きい」「小さい」はとても上手いですが、それだけで完結してしまっています。例えば「苦しい」「気持ちいい」「しっとり」「からっと」「ずっしり」「かろやか」なんて表現を取り入れていくと、もっともっと表情が豊かになります。そしてまた必要な技術が増えていきます。楽器、どこまでも上手くなれますね。

僕から見ても反則みたいに上手い新しい子が増えていく中、君がきっちり長男の貫禄を見せつけてくれると、本当にうれしく思います。手前味噌ながら、この会の存在の素晴らしさを感じずにはいられない。

 

15.協奏曲"不死鳥"/コレット

16.テキーラ/リオ

今回のゲスト枠としてお呼びした、音大生3人と僕とで四重奏を演奏しました。

3人とも、本当にそれぞれ抜群の才能を感じる子たちで今後が本当に楽しみです。僕が当時のまま今大学4年生だったら、こんなレベル高い中楽器なんて続けようと思えないくらい、凄まじい限りです。若い子たちに刺激を受けて、大変にありがたい時間でした。

3人とも本当にありがとうございました。今度はオケ等でぜひご一緒しましょう。

 

17.オーケストラ難曲集より/エールベルガー

自分で演奏しました。曲名表記に不安あり。笑 でもいい譜面でした。反省点多々ありますが、ちょっとでも「おっ」と思ってくれるところがあれば嬉しいところです。この2曲以外にもあと4曲ほどあります、が、譜面が手に入りにくいようなので興味のある人は言ってくれれば見せますよ。

余談ですがやっぱりベートーヴェンは4番が一番いい曲だと思います。とりあえず聞く分には。

 

18.2本のファゴットのためのソナタ/モーツァルト

色んな意味でハードルは高いよ、と脅しておいたはず。笑

良くも悪くも2人が全然違うタイプのファゴット吹きなのだから、もっともっと影響しあってほしかった。同じような音を出す必要も同じ方向を向いて演奏する必要もないけど、「あなたがそうすならわたしはこう」という語らいが見えなかった。個人戦×2、という印象でした。音程もリズムもあってはいるのですが。それは2人の関係性がどうこう、というよりはそれぞれの持つアンサンブルへの意識の問題なのだとは思いますが・・・。

「もっと殴り合え」と言った箇所に関しては、よかったと思います。その音楽的な「殴り合い」が「語り合い」だったり「口喧嘩」だったり「仲直り」だったり「一方的な蹂躙」であったり、色んな形に変化していくと、僕たち(僕と相棒)のようになっていくんじゃないかな。リスペクトしてくれているかどうかは、知らないけれど。笑

とはいえ、体力的にもきついし音楽的にも技術的にも実はとても難しいこの曲を本当によく演奏していました。楽曲の完成度としては相当高かったと思います、そのぶんデュエットとしてもっと面白ければ、最高だったのだけど。

 

19.ロマンス/エルガー

いやー聴かせるのが難しい曲ですねこれは。味と深みのあるいい演奏でした。持ってる音色にもピッタリで、ある意味プーランクよりずっとハマり役、という印象でした。

音楽の流れもレッスンの時よりずっとよく、気まぐれでアンニュイなところはよく表現できていました。が、恐らくオケだと合わせられないような箇所も多かったかなと思います。ピアニストは見事につけてくれていましたが、そういった箇所は音楽的な流れも止まってしまっているので惜しかった。でも、僕もあんなにピッタリつけてくれたらあのくらいやってしまうかもしれない。笑 やってから、あ、これは、ちょっとないな、と反省するような感覚。聴いていると、それ自体は悪くは感じないのですが、いちおうこれは講評なのでね。

と、技術的には、音色が一辺倒なのが気になります。この手の曲をよく聴かせるには、いつもの音とは違う音色を押し入れから引っ張ってくることも必要だと思います。そーいう挑戦がそろそろあってもいいのではないでしょうか。リードの方向性、咥える位置や角度、運指の選択、もちろん息の入れ方や唇の締め方や緩め方。必要な材料は持ってると思うので、もっともっと色んな音を出そう。みんなの思う「君の音」なんて、どうでもいいのだから、曲の表情によってもっと色んなことに挑戦してみて。それでこそ、今持ってる音も映えるというものだ。

 

20.クリスマスパストラーレ/ジョリヴェ

パストーレ、って何でしょうね。ごめんなさい。

そういえばこの曲は発表会では初登場、ですか。はじめて聴く人も多かったのかな。原曲ハープだから、とピアノでは敬遠しがちですが、これはこれで、アリだと思うくらい本当にいい曲ですよね。

前日の合わせ・レッスンで大変だったと思いますが、逆に前日だったことでよかったこともあった気がします。

まず2人の持つ音の特徴がとても相性がいい、というのが今回の演奏の良さだったと思います。フルートは中低音の太い音、ファゴットは線の細い音で歌う力に優れていると思いますが、その2つがハマる瞬間がとっても心地よかった。

2人で一つの線を描くシーンの多いこの曲をやるには、合わせが足りなかった、という事なのか。もう一息でした。でも2人どころかオケなんかだと100人で一つの線を描いたりしますから、今回の経験をぜひ今後に生かして。「繋いでいく」というより「紡いでいく」ということなのかもしれません。

アンサンブルを1曲演奏する、なんて、うまいメンツをそろえるだけで7割は成功です。あとの3割なんて、大した問題じゃぁないんですけどね。そのための人徳と腕前なのだと思いますよ。

 

21.木管五重奏曲「アメリカ」/ドヴォルザーク

奇跡の連続。笑 本当によくズレずに最後まで。

5人それぞれの平均をいくと、そこまで深い付き合いじゃないはずなのですが・・・。「合わせが楽しい」と5人口をそろえて言っていたことも考えると、今回あったのは音楽ではなくて、5人とも、1人より人と演奏してる時の方が腕前が発揮されるタイプ、なんだと思います。そういう意味で、相性がよかった。他人に影響されすぎるのも、実は考え物だったりするのですが・・・・・今回はうまくハマりました。という意味でも、奇跡。

課題は言うまでもなく、1人1人がもっともっともっと上手くなること。本当に、失礼な言い方ですが唯一キッチリ吹いてくれるホルンが調子悪そうでどうなるかと思った・・・。5人全員がきちんとやるべきことをやって実力を上げて再結集したら、今回の5倍は楽しい。それは絶対。そして本来楽器というのは、それを目的に上手くなるべきだと、僕は思いますよ。上手くなるのに時間はそれほど必要ではないですから、ぜひまた近いうちに同じメンバーで。

1個前の講評でも書いていますがアンサンブル本番の準備なんて人事で7割が完結しているのです。「うまいのを集めりゃうまい、そしてそれが楽しいしそれ以上なんてない」と皆に言ってきましたが、ごくまれに例外的にこーいうこともある。あるから、楽しいんだよなぁ。

 

22.5つの民謡風小品より/シューマン

MVP悩みました!定義が「伸びしろ」で選んでいますので外しました(レッスンの時がうますぎた?)が、曲の良さを引き出す、という意味では一番でした。ピアニストとの噛み合いも抜群です。かっちり合わせてくれるピアノですが、ファゴット側からのアプローチも素晴らしく、アンサンブル部門!って感じでした。

この曲もそうですしピエルネやロンゴ辺りもそうなのですが、レパートリーとしては定番でも僕はやらないし勧めもしない曲たち、皆がいい演奏してくれることで僕が考えをあらためる事になってます。私事ですがいまリサイタルの選曲中で、この曲が入ってきています。どうなるかは分かりませんが・・・。

技術的にも音楽的にも非常に完成度が高く、何よりも音色の操作が2人ともとてもうまかったと思います。これだけの事ができるなら、今はこのクオリティでたくさんのレパートリーに挑んでいくことが大切だと思います。フランスものだとまたアプローチが違ってくるし、バロックや古典だと新しく覚えなきゃいけないことも多いです。どこまでレベルが上がっていくのか、今後ともすごく楽しみにしています。

 

23.朗唱、シチリアーノとロンド/ボザ

もう1曲が大変だったのがよく分かって、しまいました。笑 気持ちは分かりますが、複数個乗り番をかかえる、というときに大事なのは「こっちが大変だから仕方ないね」ではなく、平均点勝負をすることです。今自分はどっちがどのくらいやばいのか見極めて準備の時間割を決めること。楽器が違えばなおさらです。この曲だってソロではなく、ピアニストのデュエットなのだから。

音楽でやんちゃをするセンスと技術的な材料は持っているようです。それはもっと即興的に、日常的に使っていかないと磨かれませんから、今度は最初からそれを聴かせて。気まぐれな性質の作品なら、なおさら重要なことになってきます。

ハイトーンは、出なければ「残念!」としか思いません、が、ちょっと苦手意識が強くなってますね。まず、今はCより上の音を綺麗に出そうと思わないこと。出れば御の字、その先はまだまだあなたには早いようです。汚くとも安定して出るようになって、それが複数本のリードでこなせるようになって、綺麗に出すのはそこからです。高望みが時期尚早なのです。

また、フォルテもピアノも音色の変化が見受けられないのも気になります。小さな音!ではなく柔らかい、かすれた、悲しい、苦しい、など、大きさではなく色や形を意識するとより音楽表現が豊かになると思います。

 

24.ファゴット小協奏曲/ベルヴァルド

バテましたね。分かってはいたけど、省エネで言って、かつバテて、というのは聴いている方には惜しい、という印象を感じずにはいられません。ところでその省エネは本当に省エネできているんでしょうか・・・?もっと攻めていた方が意外とバテなかったのかもしれません。体力面についてはいろいろな考え方がありますが、疲れても吹ける、という技術は、疲れることから逃げていては身に付かないのかもしれません。疲れないように疲れないように、という対策が、逆に自分の首を絞めていることもありそうです。もっといろいろ試してみて。

音色、というか楽器の鳴らし方がいい意味でソリスティックになりました。これは大変素晴らしいことで、大きなホールでもきっと美しく音が響くようになったでしょう。フレージングもよく考えられていてよかったと思います。

中音域の音程について、もう少しきちんと向き合いましょう。音程を取ることで楽器はもっときちんと鳴ってくれます。表現のために音程を犠牲にしないようにしましょう。

レッスンの時は曲との相性が悪すぎてどうなるかと思いましたが終わってみればハマり役に聴こえてきたのは、きっと大きな成長を遂げたという事なのでしょう。似た傾向?の曲にクルーセルなんかもありますのでどこかで挑戦してみてくれると嬉しいです。

 

 

講評、これで終わりです。

今回は初めましてのファゴット参加者がいなかったのがあるのか、いい意味で安心して聴ける演奏が多かった印象でした。別にレベルの高い会を目指しているわけではないのですけれど、続けていくとやはりみんな本当に上手になっていきますね。本番を聴いていて一番楽しいのはやはり僕なんだろうなぁ。

参加者の皆様、本当にお疲れさまでした。また皆さんの演奏を聴けるのを楽しみにしていますね。