ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

この時期に私がリサイタルを開催する、ということについて。想いと思考

こんにちは。ファゴット奏者のとのむぅです。

まず初めに、告知から。告知としてはかなり急なのですが、リサイタルを開催します。

 

殿村和也ファゴットリサイタル~ファゴット吹きのたからもの~
2020年9月6日(日)14:00開演
liveチケット 3000円(全席自由、限定30席予定)
web視聴チケット 2000円 
※web視聴チケットご購入の方は9/9 19時~9/20 19時の間アーカイブ配信もご視聴頂くことができます。
出演
殿村和也(ファゴット
大堀晴津子(ピアノ)
プログラム
ファゴットソナタ/ヒンデミット(live演奏、リアルタイム配信のみ)
ソナタイ短調/テレマンアーカイブ配信のみ)
無伴奏パルティータ/J.S.バッハ
トスカファンタジー/プッチーニ
パガニーニへのオマージュ/三浦真理(ファゴット版初演)
演奏会用小品/ピエルネ
ファゴットソナタ/ケックラン

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9月3日現在、ありがたいことに客席はほとんど満席(某ウィルス対策で大幅に席を減らしております)頂いておりまして、ご興味のある方はweb視聴チケットをご購入頂いてオンラインでご視聴いただければと思います。お申込みはこちら↓

【Web視聴チケット】9月6日 殿村和也ファゴットリサイタル | 音楽ダウンロードはドルチェ・クラシックチャンネル

ドルチェ楽器のweb視聴、それはそれは高画質・高音質でものすごく評判のいいもののようです。こちらのページから視聴テストもできるみたいですのでご確認いただければよく分かると思います↓

https://www.dolce.co.jp/onlineconcert/check/

お申込みお待ちしております。

 

とまぁこれで終わればただの告知・宣伝なわけですが、今、この世の中において私がリサイタルを開催する、ということについて、思考のメモというべきか議事録というべきか。

とにかく想いについて、綴っていきたくて、本番数日前の今日この記事を書いています。

 

まず僕にとってリサイタルの開催はどういうものなのか。

そもそもリサイタルに限らず、木管五重奏やらファゴットアンサンブルやらの自主公演(出演者自身で会場を取り各種事務作業をし広報活動をするコンサートのこと)について僕にとってはライフワークのようなもので、たぶん一生何かしら続けていく音楽活動になると思います。

「こんなメンバーで、こんなプログラムをやったら面白いし、絶対楽しんでもらえるはずだ」という考えは日々頭の中をめぐり、そのために自分の演奏を突き詰めたい、というのが僕にとっての音楽のへの原動力であり、この仕事を続けていく理由の一つであるわけです。

リサイタルは僕の中ではそのうちの1つで、やりたいプログラムが決まると開催を考え始め、場所を取り、共演者を決め、公演に至るわけです。

つまり「自主公演も打たずに何が音楽家か」というのが僕の信条なので、その自主公演にリサイタルが含まれるため、(今のところ)数年に一度の開催となっているわけです。

 

リサイタルが近づくと、いつも僕の思考を支配するもの。

それは「自身の死」についてです。今のところそんな予定はありませんし、重大な疾患などもありません。ですが「これが最期のリサイタルかもしれない」とか「コンサートまでに何かがあれば中止になってしまうのか」とか「これが終わったらどう生きていくんだろうか」とか、とめどもなく「自身の死」についての思考が流れては消えていき、ある意味で正気を失っていくような、そんな日々を過ごしています。

ただ決してネガティブな感情で考えているわけではない、というのは明言しておきたい。僕にとって音楽は仕事ですから、仕事を理由に死んでしまう、なんて悲しい人生送りたくはないのです。しかし僕にとって音楽は「仕事」ですが、音楽家にとって奏でる音楽は「生き様」のようなものです。その「生き様」をたくさんの方々に2時間弱聴いて頂くというリサイタルの準備期間は、それはそれは色々な想いが頭をめぐるわけです。

 

「自身の死」について考えることは、決してネガティブな感情ではないと、今は思うようになりました。「自身の死」について考えるということは、「自身の生」について考えること、だと思います。

 

今回のプログラムについても、少し触れておきましょうか。曲目解説については今の時代、いくらでも情報探せば出てきますので基本的に割愛していきます。紹介する順番はプログラム順とは関係ありません。

ヒンデミットファゴットソナタファゴット奏者にとって重要レパートリーの1つであるにも関わらず、意外にも演奏される機会の少ない作品です。僕はこの曲を初めて聴いたとき、ちっともいい曲だとは思いませんでした。2楽章の冒頭が、まぁ綺麗かな、くらいのイメージ。しかしこの作品、やればやるど、知れば知るほど面白く完成度が非常に高いものになっています。ファゴットの性能を「あますところなく」使い切るような曲で、今回のコンサートの1曲目に選びました。

ピエルネの演奏会用小品もやはり重要レパートリーの1つだと思います。ファゴットの作品としては(珍しく?)聴き映えもしますしピアノパートも見せ場が多いのですが、僕はヒンデミットと同じく、あまりこの曲が好きではありませんでした。ですが各所でこの曲に触れるたび魅力に気が付くことができ、去年夏に聴いたとあるファゴット奏者(https://kaspar2019.blog.ss-blog.jp/)のリサイタルで聴き、次はこれをやろう、と決めたのでした。

メイン曲として取り上げたケックランのファゴットソナタ。もうそれはそれは難しい作品です。いいえ指や舌ではなくて。16歳でファゴットに触れ始め18歳から本格的な勉強をし24歳で音大を卒業し、今年33歳になる僕が「そろそろケックランがいい感じに演奏できるんじゃないか」という慢心から取り上げた次第であります。さてどんな風に聴こえるでしょうか・・・?ケックランは天文学者を志すが20歳で病気になり、療養中に独学で学び始めた和声学をもとに音楽家としての活動を始め、ピアノや声楽を中心にたくさんの作品を世に残した作曲家です。またオーケストラ編曲家としての顔も持っていたようで、ピアノの作品にもオーケストラのような色彩感が表れているなと個人的には思うのです。美しい作品に自分のファゴットが追い付かない。非常に悔しくもあり、また、これほど探求していくのが面白い作品がほかにあるだろうか・・・?と、面白くてしょうがない、という思いもあり、ケックランに取り組む時間は僕にとって「たからもの」のようなものだったりするわけです。

 

三浦真理さん作曲の「パガニーニへのオマージュ」は、元々フルートとピアノ用に書かれた作品です。ファゴット版の楽譜が今年の冬発売します。(詳しくはこちら→https://www.gakufu.co.jp/ )

 そのファゴット版初演を今回のリサイタルでさせて頂きます。三浦真理さんには、フルートアンサンブル曲である「思い出は銀の笛」を僕がはじめて聴いたとき、これはファゴットでやっても絶対面白いはずだ!と思い、数年前に演奏する機会があり許諾のため連絡させて頂いて以来、色々な面でお世話になっています。出版されてないものも多いですが、実は三浦真理さんはファゴットアンサンブル作品もたくさん書かれているため憧れの存在だったため、まさか(ファゴット版)初演をさせて頂ける機会があるとは・・・!演奏者として、これほど嬉しいこと、なかなかないものです。

トスカファンタジーはサックス用に出版されている楽譜を演奏します。僕は歌劇というジャンルの魅力に取りつかれて音楽家の道を志したのですが、このトスカという作品はとにかく儚く悲しい話ですがそんなところも含めて大好きなのです。とある場所でこのトスカファンタジーに触れ、これはファゴットでやったろう、と思ったわけです。今回のプログラム、なんというか変化球を投げるような表現が多く(ヒンデミット、ケックラン等)この曲は僕が全力ストレートをたくさん投げます。しかし僕はたぶん、奏者としては軟投派なため、どう聴こえることやら・・・。

J.S.バッハ作曲の無伴奏パルティータはフルートのための作品ですが、ファゴット演奏用の楽譜も出版されています。数年前のリサイタルで「バッハの無伴奏」は取り上げたのですが、それはそれは体力的にきつく、二度とやるもんか、と思っていたのですが、おっかしいなぁ・・・。きつかったのですが、やはりというべきか、お客様の一部に「バッハが一番よかったよ」とお声かけ頂いたのは取り上げた理由の一つではあります。また「ファゴットリサイタル」である以上、少しくらいは(実はプログラム中最も長尺がこの曲だったりしますが)まじりっけなしのファゴットの音を聴いてもらおうじゃないか、と思うところもあります。

 

書き終わってみればプログラムについてばっかりの記事でした。でもなかなか曲への想いについて語れることは少ないので、いい機会かな、と思って。

 

もともとあまり日本語が上手くない人間が、しかも「想いと思考」なんてタイトルにしてしまったものだから、読みづらく荒い文章だなと自分でも思うのですが。書き留めて頭の中を整理する、ということには成功しました。自己満足で申し訳ありません。

 

重ねてのご案内になりますが、web視聴チケットに関してはまだまだ受け付けています。web視聴チケットでしたら当日ご都合悪い方も、9/9の19時~9/20の19時の期間はアーカイブ配信(動画視聴)でご視聴頂くことができます。ご興味ある方はぜひよろしくお願い致します。お申込みはこちらから↓

dolce-classic-ch.com

 

ほんと、あと数日かぁ・・・。