ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第19回発表会でした。講評とか運営のこととか

コロナ禍続いておりますがいかがお過ごしでしょうか、ファゴット奏者のとのむぅです。

仕事も少しずつ元に戻ってきつつありますが、私のような末端フリーランス奏者にオケの仕事がわんさか、ってわけにもいかず、まだまだ影響がある状態が続いております。それでも楽器に触る時間が増え、また人前で演奏できる機会がたくさんあること、とても幸せに思います。当たり前じゃないんだな、と思うことが大切のようです。

 

さて少しだけ出演情報を。

モーツァルトの時代に栄えた「ハルモニームジーク」と呼ばれる編成、木管八重奏(オーボエクラリネット、ホルン、ファゴットが2人ずつ)でのコンサートに出演します。客席では食事と飲み放題がつきます。またオンライン配信もありますので合わせてご検討いただければ幸いです。

ハルモニームジークvol.23
2020年12月9日(水)19:00開演(18:30開場)池袋オンリーユー(池袋駅西口徒歩6分)

魔笛/モーツァルト
八重奏曲/ベートーヴェン

来場チケット(食事・飲み放題付き)一般4000円 学生3000円 オンラインチケット:2000円

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来場チケットは下記フォームからお申込みください。

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オンラインチケットは下記のページからどうぞ。お申込みの際にメッセージ欄に「ファゴットの殿村から案内を受けました」とご記入頂ければ幸いです。

ハルモニームジーク vol.23 - TwitCasting

 

 

続いて、年明けになりますが・・・。数年前から結成しつつもメンバーの渡仏・渡独などでなかなか公演できずにいましたが、今回タイミングが合いコンサートをやることになりました。久しぶりの友人たちとどんな音がするか今からとっても楽しみです。

アンサンブルファルベ(管楽器メンバーによるコンサート)

2021年1月8日(金)19:00開演(18:30開場)

スペースDo(管楽器専門店ダク地下、新大久保駅より徒歩3分)

チケット:一般3000円、学生2500円、オンライン配信1500円

出演:菅野芽生(フルート)高田園子(オーボエ)米倉森(クラリネット)堀風翔(ホルン)殿村和也(ファゴット)紅谷麻美(ピアノ)

ディベルティメント/ルーセル(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.Pf)

オーボエファゴットとピアノのための三重奏曲/プーランク(Ob.Fg.Pf)

バラード、パストラーレとダンス/エヴァイゼン(Fl.Hn.Pf)

木管五重奏曲/キラール(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg)

六重奏曲/プーランク(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.Pf)

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チケットは同じく下記のフォームまで。

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配信チケットはこちらから。

アンサンブルファルベウィンズコンサート - TwitCasting

 

 

どちらも素晴らしいメンバーによるコンサートですので、ぜひ足をお運び/ご視聴ください。お待ちしております!

 

 

さて、先日第19回の門下発表会がありました。今回はディスタンスを取るため、また配信の都合もあり公共のホールをおさえて開催しました。ソロ14人、アンサンブル6組と全盛期ほどではないにしろたくさんの演奏をお届けしました。ゲストに静岡交響楽団ファゴット奏者の東実奈さんとサキソフォン奏者の田村哲さんをお招きし素晴らしい演奏を聴かせてくださいました。

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1000人近い収容人数のホールでの発表会開催は初めてで戸惑うことも多かったのですが、広いホールで吹く、ということも生徒たちにもいい刺激になったようでした。

今回の反省点として、ゲスト奏者を含めたプロの演奏(自分も含めて)が出演者、特に前後の出番の人にプレッシャーを与えている、という声を何人から頂きました。それを踏まえて、ゲスト奏者を招くことと僕自身の発表会での演奏は今後しないこととします。最後のゲストがこのお2人で僕はとっても幸せでした。

 

また「配信もするぞ」と言ってはいましたが電波状況が悪くまともなお届けができなかったこと、ここにお詫び申し上げます。視聴しようとしてくださった方は個別にご連絡(torakitsune.fox@gmail.com)頂ければ、全員の演奏が聴けるURLをお送り致します。申し訳ありませんでした。

 

今回はコロナ禍の中ということもありましたが、最近になって楽器への意欲を取り戻した人とコロナ禍でもオンラインレッスンなどで継続してきた人がいて、レッスンの進め方などがそれぞれいつもと少し異なったりもしました。以前できなくなった発表会で演奏予定だった曲を持ってきた人もいれば、新しい曲に挑んだ人もいて、長くやった成果を出すことの難しさ、というのも感じたようです。本当に今回は、いやいつも通りではあるのですが、面白い演奏がたくさん聴けました。幸せなことです。

 

次回発表会は来年3月を予定しております。ファゴットのソロか、アンサンブル(ファゴットを含まなくてもOKです)でのエントリーで、どちらも1回以上僕のレッスンを受けて頂ければどなたでも出演可能です。日程未定ですが決まり次第各所でアナウンスさせていただきます。

春のひとときコンサート(殿村門下発表会)

2021年3月20日(土)お昼ごろ開演

参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン1回分謝礼含む)

ファゴットソロ(社会人)15000円

ファゴットソロ(学生)10000円

アンサンブル(1人あたり)6000円

お申込みは下記フォームからどうぞ。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さてここから先は各演奏の講評となります。参加者以外の方が読んでもよく分からないものになってしまうこと、ご了承ください。

 

1.レチタティーヴォシチリアーノとロンド/ボザ

もう褒めなくていいでしょ、って思うかもしれないけど素晴らしかった。君がこの曲を演奏できたことについて、君自身はもちろんとして僕にも周りの子たちのもとてもいい刺激になりました。ハイEは出るに決まっていると思ってた。ハイトーンへの探求はここで終わりではないので、教えた指を使って日々研究を。色んなリードで試してみることも大事です。タンスマン、サンサーンス、ビッチ、すべてハイEの出し方は違ってきます。

やはり中~低音域の音程は重要な課題として残ります。基本的にファゴットの低音の音程は高いもの、そう思って警戒していきましょう。

レチタティーヴォはもっとアゴーギグが効くとよかった。またピアノとの絡み方ももっと頭に入れておくべきだったと思います。ピアニストとのアンサンブルに関してはもっと経験を積む必要がありそう。無条件でつけてもらえる、という状態はそろそろ卒業しないとやりたい曲は吹けないかも。

今回身につけた「練習の仕方」を今後すべての譜面に活かせますように。

 

 

2.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

緊張してるのかな、と心配してたけど、伸び伸びとしたいい音で演奏できていたと思います。音楽の運びなんかは今までのどの演奏より素晴らしかったです、欲が出てきて、鳥肌の立つ瞬間がたくさんありました。楽器もよく鳴るようになりました。

ピアノとのアンサンブルがすこしうまくいきませんでしたね。普段からどんな音がピアノから出てくるのか想像しながら練習をすることがとても大切です。合わせも聞けなかったので何とも言えませんでしたが・・・不安なら「もう1回お願いします」と食い下がってみるのも大切です。それでも、なにかあった後ちゃんと戻ってこれるのは、長くこの曲をやっただけのことはありますね。

我々の「ソロ」というのは音楽のジャンルとしては室内楽、つまりアンサンブルですから、合わせられないとせっかく練習したものがうまく聴かせられない結末になってしまいます、今回でよくわかったんじゃないかなと思います。

とはいえ「上達」が目的であるこの発表会としては、それでもいいんだと思います。よく練習したことは僕が一番わかってます。次は本番でそれを発揮できるように、また一緒に頑張っていきましょう!

 

3.4つの標識/シュテインメッツ

曲自体が「ん?」と思うほど不思議なつくりだったり、すごく美しかったりかっこよかったり、のコントラストが魅力だと思いますが、よく表現できていたと思います。また2人ともホールとの相性もあるかもしれませんがとっても楽器がよく鳴って遠くまで響いていました。レッスンで触れた「音程」のこともよくできていました。言ったか忘れてしまいましたが、ファゴットは大体において音程さえ取れていればよく響くしいい音色で吹けます。今回つかんだ奏法のコツを自分のものにできるよう今後も頑張っていってほしいと思います。

アンサンブルとしては、二重奏なのでそりゃ合います。というか、完璧に合わなくてもいいんですが、良くも悪くもよく合っていました。ただ二重奏ですから(しつこい?)もっと片方が目立ったり引っ込んだり、仕掛けたり反応したり、と不確定要素があったほうが僕好みではありました。仲はいいけど、本音で喋るほどではない、くらいの関係性のアンサンブルでした。そこは惜しいところですね。

コントラは、まだまだです。決して下手くそではありませんでしたしよく練習したのだとは思いますが印象としては荒くいい加減なところが多かったです。やかましい低音楽器、ではなく、低音特化のソロ楽器として丁寧に練習を積んでいきましょう。せっかく買ったんだから、達人を目指しましょう。

 

4.ファゴットソナタヘ短調/テレマン

レッスンで課題にした「欲」について、よく表現できていたと思います。またもともと持っているやさしい発音が曲によくマッチしていました。よく響くいい音で楽器を鳴らせていたとも思います。ただ音楽の盛り上がりがまだいびつ(急に大きくなったりしがち)でした。自然な流れを作るためには楽器を鳴らす技術がもっと高くならないとできません。「欲」のための「技術」、もっと磨いていきましょう。

2楽章の加速については色々な要因があります。合図、ピアニストとの絡み方、特定の短い音で転んでしまうなどです。いくらでも止められたと思いますから諦めずに冷静にやれればよかったのですが・・・それでも食らいつく根性と技術は見事ではあったのですが、その速さで音楽を乗せるだけの力はまだなかったですね。早くなってしまっても「いっちゃえ!」ではなく、頭の中に2割は冷静な司令塔を残し「まてまてまてまて」とできるようになるとよかったですね。ただ速いおかげか、バテが少なく済みましたね、それは怪我の功名とでも言いましょうか。

音程がいいのでピアノの左手の音とよく絡んでいました。その音程でもっと楽器が鳴るようになれば、素敵ですね。今後も頑張っていきましょう!次も楽しみにしてます。

 

5.ファゴットソナタ/グリンカ

なにせ当日の付け焼刃レッスンだったので、なかなか伝えられないことも多かったのですが・・・・安定感はさすがでした。この曲で「安定する」のは、なかなかできないことでと思います。また、やはり音程がいいのでよく響きピアノとも合っていました。

強弱がきちんとついているのですが、「強」のときのアクセントやスタカート(短い音)で奏法乱れが原因か良い音が鳴らなくて音楽の流れが止まることが多い印象でした。音楽のためにもっと技術を身につけていきましょう。

また、少し体の使い方が硬いような印象もありました。体は横に動かすのではなく上下、特に下方向への意識を持つと楽器がよく鳴ってくれますのでお試しください。

次回はもう少し長期的にと言いますか、じっくり取り組めるといいですね・・・早めに日程調整しましょう。でも今回のような歌う曲、とってもいい刺激になると思いますからぜひまた。お待ちしてます。

 

6.2つのヴァイオリンのための5つの小品/ショスタコーヴィチ

ピアニストの腕前によるところが大きいですが曲想が非常によく伝わってくる良い演奏でした。実は僕は「ショスタコーヴィチ」という作曲家にほとんどなじみがないのですが、今回の演奏を聴いてとても興味が湧きました。

さてまずは、楽譜のことです。どのようなものを使ったのか僕は見ていませんが、ステージに上がった瞬間から「音楽家」という役を演じる必要があるのでもっとしっかり準備をしてきましょう。譜面台に置いたらどうめくるのか、どうたたんで次の楽章にいくのか。地味なことですが、室内楽においてはとっても大切な要素だと思います。恩師の受け売りですが、僕の本番中譜面がガサガサなってしまったときに「舞台に上がったら、自分の味方は楽器と楽譜だけ」なんてお説教をされたことを思い出しました。

ヴァイオリンとクラリネットのお2人については、腰から上しか使わず演奏をしているのが気になりました。いやヴァイオリンは両手と首、クラリネットは両手と口しか使わないのですが、二人して完全に「棒立ち」なのが」気になりました。もちろん音楽にも影響が出てきます。膝は伸ばさずもっと全身を使った演奏方法を見つけると幅が広がっていくと思います。ヴァイオリンは大変よく理解して音を並べていますが「きまじめ」な印象が拭えません。もっと「やんちゃ」しましょう。今回の曲もそれが足りてない印象でした。クラリネットは息の長い曲で大変だったと思います。内声に入るとき、ただ小さく隠れるだけではなく一番いいところ(音程とか音色とかバランスとか色々と)にサッと入り込めるとアンサンブルの達人と呼べるようになるでしょう。

ピアニストは大変ブラボーでした。僕のお願いした「誰も出てこなきゃいいと思えるような前奏」というのは本番で見事に発揮されていて嬉しかったです。この手の編成ではピアニストがリーダーですから「俺がこんなかましてるのにお前らはなんでそんなつまらなそうに弾く(吹く)んだ?」なんて一声、あったでしょうか?なければ、言ってほしかったな、と思います。

ファゴットばかりでアウェイに感じたかもしれませんが、僕はアンサンブルにファゴットが含まない編成が入るのをすごくうれしく思っています。ぜひまたなにか挑戦しにきてください。

 

7.ファゴットソナタホ短調/テレマン

まず第一に音がよくホールに響いていました。遠鳴りする音、というのはすなわち「いい音」だと僕は思います。

音楽の流れも大変美しかったと思います。ふわふわとした雰囲気が続く曲ですが平坦にもならず聴いていて心地のいい演奏でした。2楽章は特にいやな音列が地味に続く、という曲ですがそれを苦にしておらず、よく練習したのが分かりました。

3楽章は難しい楽章でしたね。特に前半は体に音があまり入ってないような印象でした。「よくわからない」ものこそ時間をかけて何度も音を並べてみることが大事ですから、油断ないように準備するようにしましょう。レッスンで触れた発音についてもよく復習できていたと思います。

4楽章のテンポ感は自然で大変よかったです。他の楽章でもそうですがフレーズの語尾がいい加減なことが時折ありもったいない箇所がいくつかありました。ブレスの前は特に気を使いましょう。連符はよく回っていましたがレッスンでも言ったように息が入らない連符は聞いてるほうは「ふーん」という印象になりがちなので、難しいところこそ息遣いに注意して。せっかく回るのにもったいないですよ。

そろそろ少し厄介なフランスもの、挑戦してもいいかもね。また楽しみにしてます。

 

8.プルミエソロ/ブルドー

実はみんなからの評判が一番よかったのがこの曲でした。レッスンで教えなきゃいけないことが多くどうなるかと思いましたが5教えたところ10伝わっていた、という印象で今回ほんとうに素晴らしい演奏だったと思います。これだけ熱いブルドー、そうそう聴けるものじゃないです。

何がよかったかと言えば、思いと技術のかみ合わせがよかった、ということだと思います。どちらか片方が空回りすればこんな演奏はできませんので、いい練習をたくさんした結果ですね、この演奏は誇っていいので自信をつけてください。

よく練習した副産物として、連符がすごく丁寧です。丁寧でいいのですが、少し停滞して聴こえる箇所もありましたので、練習は練習として丁寧に、演奏自体は熱く。連符に息は入っているのですが流れがあまりなく、惜しかったです。

音程はもうひとつ課題、といったところでしょうか。しっかり意志をもって鳴らしているところは悪くないのですが、気持ちが入ってない音が軒並み音痴なので(普通わりと逆なのですが・・・)もう少し全体に気を遣って。しかし音程と(悪い意味での)丁寧さくらいしか指摘するところがない、と言ってもいいくらいいい演奏だったと思います。この調子でほかの曲も取り組んでみてください。

 

9.ドゥジエムソロ/ブルドー

楽器を変えてからあまり日が経っていないのを心配していましたがよく吹きこなしていました。まだまだ鳴るポイントを探せると思うのでもっと仲良くなれるように日々過ごしてみてくださいね。

丁寧によく練習したのが伝わる演奏でした。連符に音楽が乗っている、というのは(上記いくつかの講評を見ればわかると思いますが)なかなかできることじゃないし、意識して練習した成果だと思います。もちろん歌うところの音楽も素晴らしく、成長著しいな、と思いました。腕前についてもそうですが、なんというか大人になったのかな、という気がします。器用なだけの演奏は卒業できたと思います。

さて課題ですが、「やめグセ」です。ある種の完璧主義からくるこのクセがずいぶん深く根付いてしまいました、レッスンでも傾向があったのできっちり指摘すればよかったのですが・・・。克服の仕方は2つ。間違えても突っ切る練習をするか、ぜったいにミスのない演奏習慣をつけるようにするか。どちらも大切だと思います。それにしてもあれだけやめグセを発動しながら寄せてくれたピアニストにはしっかり感謝しましょう。おそらくやめグセさえなければもっと音が並んでいたはずなので・・・そこが悔やまれます。克服できるよう、定番レパートリーから未履修の曲を丁寧に丁寧に練習してみるのがいいですね。エチュード持ってくるのもいいかも。ミルデのスケールなんかどうですか?とてもいい効果が見込めると思います。お待ちしてます。

 

10.2つの幻想的小品/ニールセン

部の最後だったのもあって、音出し不足と緊張もあって出だしは不調でしたね。空気を読まずしっかり音出しをしてしまう度胸も大切です。そーいうのを僕は「舞台さばき」なんて読んだりしてます。

音楽の流れと色彩感が抜群でした。音域を広く使えない曲なので難しいところをよく表現できていました。ピアニストのかみ合わせもよく、安心して聴ける演奏でした。課題だった中・低音域の音程も非常に良くなりました。いつまでも難しいところなので探求していきましょう。

2楽章はよく練習できていましたが・・・・いわゆる「本番テンポ」へ慣れが足りなかったような気がします。スピード感についていけず、聴かせどころが今一つでした、非常に惜しい。それでもピアニストとズレないのはいい耳を持っているなぁ、と感心しながら聴いていました。いい耳を持っていても演奏中はなかなか発揮できないものなのですが、そこは大きな長所かもしれませんね。

レッスンでも言いましたが2楽章最後の表現は完璧でした、作曲家の意図通り、って感じ。オーボエ界ではそれなりに定番レパートリーのようで、名曲らしさが光っていました。次回もまた楽しみにしていますね。

 

11.田園風コンセール/トマジ

まず、聴いた印象以上に難しいこの曲を3人ともよく練習してきたな、と思いました。レッスンではまだ不安定だった箇所もずいぶんまとまって聴こえました。「アンサンブルなんぞしょせん個人技の集まり」と僕はいつも言っていますが、それを体現するような演奏でした。もちろんしっかりまとまってもいました。それは3人ともが普段から「まとまり」を意識して演奏しているからなのかな、と思ったのですが、どうでしょうか。

オーボエは「簡単そうに難しいところを吹く」という点においてピカイチだったと思います。それは誠意のある練習と勉強の賜物だと思いますので誇っていいのですが、レッスンで何か所も指摘したフレーズの歌い方については・・・。「このくらいでいいかな」ではなく「これじゃやりすぎかな」くらいやって、ようやくほんの少し伝わる程度、なんだと思います、誰でも最初は。もっと思い切った音楽表現を。テクニック面がピカイチ、歌い方が足りない、だと、どうしても「棒吹き」の印象が抜けません。もし音色ってやつにこだわりがあるのだとしたら、いったんそれを捨てて音楽に特化したところにこだわってみませんか?

クラリネットはこのアンサンブルの要でした、大変すばらしい演奏でした。オーボエファゴットも突然好きにやりたがるところがあるのをうまく仲介している印象でした、アンサンブルの達人、と言ったところ。旋律を取るところも大変美しい歌心をお持ちなのですが、旋律を吹く時に少し線の細い音になってしまうクセがあるようで、それがダブルリード相手だとすこし厄介なのでもっと太い音を意識してみると周りがやりやすくなると思いました。

ファゴットはソロも大変ななかこの難しい曲をよく練習してきたと思います。というか、ソロで掴んだことをこちらにもずいぶんよく落とし込んでいて良かった。アンサンブルになると線の細い音がよくコントロールできているのですが、そればかりではなく時には太い音でオーボエクラリネットを支えるようなシーンがあるともっとよかった。アンサンブルのときこそ楽器の性能が問われるのでもっとポテンシャルを生かせるように。

半年以上取り組んできた3人だと思いますので、同じメンバーでまた別の曲、というのもいいんじゃないでしょうか。次回も楽しみにしてますね!

 

12.サマーミュージック/バーバー

アンサンブルなんてしょせんは個人技の集まり。5人それぞれがいいパフォーマンスを発揮できればそれでもういい演奏。と通算2回のレッスンで言っているのを見事に体現してくれました。それぞれがきちんとレベルアップしてくればアンサンブルとして成長します。合わせはそのかみ合わせの確認作業、に集中することができますから、「合って聴こえる」箇所を増やすことに時間を使えるわけですね。合わせも有意義な時間だったんだろうな、と想像できます。

5人の和やかな性格のためか、長くやったためか分かりませんが結束感も感じられました。「木5を長く継続する」というのは思ってる以上に難しいことなので、もし今後も、ということであれば未来永劫一緒にやっていってほしいものです。

曲の頭から後ろにかけて、だんだん5人とも楽器が鳴るようになっています。じっくり音出しができる環境ではないのですが、曲間でしっかり音出しをすればもう少し頭からみんな楽器が鳴ったのかな、という気がします。舞台さばき、とでも申しましょうか。本番直前の音出しだけではなく、もう少し(いい意味で)ふてぶてしく自分のパフォーマンス発揮を意識できるといいですね。そうすれば緊張も少しは和らぐはず。

とにかく木5ってやつはみんなの憧れ編成なのだから、この団体を基準に、くらいに思って皆さんには取り組んで頂きたい。

 

16.ソナチネ/クレメンティ

まずは礼をしましょう。演奏前と後に礼。立派な演奏家はみんなステージのふるまいも素敵なものですから、そこから真似してみることは大事なことです。

実はこの曲は僕が音大受験で弾いた曲でした。こんなにしっかり弾けなかったのはよく覚えていますが・・・。笑

僕はピアノは完全に専門外なのでコメントはあまり多くできませんが、指の力がしっかり鍵盤に伝わった良い演奏だったと思います。ミスが起きるところについては、おそらく家で(学校で?)練習しているときにミスを通り過ぎて弾いているところだと思います。ミスは偶然ではなく必然で起きるので、間違えたらこれ幸いとその箇所を責めて練習するのが大切です。それができたら、今度は少し前からミスした箇所を通り過ぎる練習をしましょう。その「通り過ぎる練習」が不足していたような印象があります。参考になれば嬉しいです。

 

17.ワイセンボーン1巻より1番、2番

東さんのお弟子さん、ということは忘れて、僕がレッスンで聴いたらこんなコメントをすると思います。

1番

ブレスの回数が多い。僕個人としてはこの曲はブレス無しで吹き切るもの。mpでpocoadagioの2拍子であればそこまで非現実的な息の長さではないはずです。特に中~低音域であんなに音量を出しては持つはずもないですので、息の管理をきっちりと。また息がまっすぐ入らず音ごとに揺れてしまうので、ロングトーンのような息をしっかり入れて指を動かす、というレガートの基本をもっと忠実に。もし息を途中で取るのであれば多くて1回か2回、決まった場所でブレスを取る練習をする必要があると思います。

2番

E→Fisの動きをもっとしつこく練習して。ハーフホールの音は音程が上がりがちで、ちゃんと理由があります。ハーフホールがきちんと空いてないと口を閉めないとオクターブ下が出てしまう=口を閉めてなんとかひねり出す→音程が上がる、ということです。まずは指がしっかり動くことを確認して。E→Fisの運指はどこまで上達しても苦労しますから、今のうちに丁寧に練習しておきましょう。5小節目以降でミスが生じるのはamollのスケール練習がまだ足りてない証拠なので、まずはそちらから。ピアノのほうでも触れましたがミスというのは偶然ではなく必然で起きるものなので、見過ごさず丁寧に練習するクセをつけましょう。

なんて厳しいことばかり書いてしまいましたが、基本的にいい息がたくさん楽器に入っていてホール中に良い音がたくさん響いていました。その音の良さは僕の弟子たちは誰も真似できないくらい素晴らしいものでした。

次お会いするときがあったらまた素敵な演奏を聴かせてください。大人ばかりのなか不安も多かったと思いますが、参加してくれてありがとう。

 

18.2つのファゴットのためのロマンス/ブルッフ

本番のときくらい、きっちり練習したうえで合わせ・レッスンに挑みましょう、もう少し完成した状態でこそ言いたいことはたくさんありました。そこはアンサンブルもソロも一緒ですね。

「全然ちがう演奏がなぜか合う」ということについてお2人は最高の相性といえると思いますし、それこそがファゴット2本の魅力だと僕は考えますので、聴いていて幸せな気持ちになれる演奏でした。課題だったトリルもきれいに入っていてよかったと思います。中音域に対して高音域の鳴りが弱い傾向が2人ともあるので、高音域を太い音で、というのを今後ぜひ身につけていってほしいですね。もっと華やかな演奏ができるとよかった。ピアニストとの絡み方が2人ともとてもよかった。3人で演奏している感、というのは合わせも少ない中よく出ていたと思います。

細かい音はもっと丁寧に並べてほしかった。インテンポに無理やりはめる、というよりは時間を使っていいから息をしっかり入れて並べるだけで印象がずいぶん違ってきます。2本で演奏する箇所なら合っても聴こえます。

再現部直前~再現部が世界で一番うまい演奏だったと思います。(この譜面は2回しか演奏されていませんが)

お2人の演奏、今後も楽しみにしてます。もちろんそれぞれのソロも!

 

19.5つの民謡風小品より1.2.5楽章/シューマン

大ブランク明けでよく演奏しました。練習に関しても、ブランク明けの焦りもあったのか今までより質も量も多く感じましたがどうだったのでしょうか。課題である表現幅も今までと比べてすごく大きくなったと思います。「楽器を鳴らす」いうことについて、今回ずいぶん理解できたと思います。

安定感やピアニストとの噛み合い方は昔から上手でしたが今回のようなピアノ主体の作品でこそその力はよく発揮されていて、安心して聴ける演奏でした。

とは言え、いつか挑むであろう大曲に向けて今の成長ペース、ちょっと心配になります。確実に上手にはなっていますが、等しく自身の理想も高くなっているでしょうから・・・腕前のほうを追いつかせるのは今のペースだと苦労するような気がします。

楽器を触る習慣を増やすというのも含めて、直前に1時間だけでも練習してレッスンに来る、というのを月1回でも続けていく、というのが今できる最善プランだと思いますが、どうでしょうか?ミルデのコンチェルトスタディか、本番機会がなくてもバッハの無伴奏作品は一通り、よく効いてきますよ。

 

20.ファゴットソナタより第1楽章/シュレック

半年以上越しのシュレック、思いを感じる演奏でした。美しい曲想がよく表現できていました。技術的にも安定した演奏だったのでピアニストともよく合っていました。

しかし何といっても鳴りが足りない。きれいな音だけでは音楽の表現はできませんから、もっと楽器が鳴る方法を模索して。素敵な表現ですが幅が狭いのでピアノの音が厚いと埋もれてしまうのが残念でした。楽器の鳴りというのは簡単に得られるものではないですし、慣れも必要です。コントロールも難しくなるでしょう。しかしやはりそれがないとこれ以上の上達は見込めませんのでぜひ挑戦してみて。やり方が分からなければいつでもレッスンしますのでご連絡くださいね。

これは現実でも妄想でもいいのですが、客席にいる全員があなたのファゴットを心待ちにしていて、それに(練習や合わせなどの準備を含めて)あなたが答えようとするような、そんな姿勢に欠けているのかもしれません。最低でも僕は楽しみにしていますしあなたのファゴットが好きな人だってたくさんいるはずですから、その人たちのためにもっと。技術や表現もそうですが、もしかしたら衣装も。もしご自分のテンションを高める結果につながるのであれば気にしてみてください。次回も楽しみにしてます!

 

21.ロマンス/ブルッフ

いい演奏でした。いつも少し力んでしまうところがありますが、今回はきっちり力が演奏に乗っていました。「ない力は抜けない」と僕はよくみんなに言うのですが、力が乗っているからこそ抜ける力があって、メリハリの利いたいい演奏でした。何より熱い思いを感じました。もしかしたら大きいホールでこそ発揮されるタイプの音質なのかもしれませんね。臆せず今のような楽器の鳴りを大切にしてください。

課題があるとすればもっとピアノ(オーケストラ)とのアンサンブルが関係性としてはっきり出てきてほしかったと思いました。ピアニストはよく合わせてくれていましたが、それに応える力がまだなかったか、余力がなかったか、どちらかでした。また全体としてもっと弱奏があってもよかった。小さい音、というよりは暗い音とか沈んだ音とか静かな音とか、色んな呼び名があると思いますがその手の音の引き出しがもっと増えるといいですね。

とにかく文句なしのMVPでした。この曲をこれだけ熱く演奏できるのは今、僕の弟子の中では君くらいのものでしょう。

 

22.三重奏曲/ドゥビエンヌ

はるばる東京(神奈川)までようこそ。Bチューニングは正解だったと思います。レッスンでしつこく指摘した終止の形やタンギングの種類についてはよくできていたと思います。あれだけの指摘でよく理解したな、と感心しながら聴いていました。レッスンの最後で(僕が吹いて)伝えたスピード感についてもずいぶん良くなっていました。3人とも耳と反応がよく僕も教えて本番聴いてすごく楽しかったです。

フルートは音も音楽も素晴らしいのですが、真正面からぶつかるばかりではなく、ひねくれたり仲間に音楽でケンカを売ったりふざけたり誘惑したり、とにかく正直すぎるのでもっと引き出しを増やすといいですね。それでこそ必要になってくる技術がたくさんあると思います。

クラリネットは抜群の伸びしろを見せてくれました。たぶん(楽器の特性上)苦手とする古典の音楽をよくあそこまで理解して演奏できたな、と思います、そこらの音大生よりよっぽど分かって吹いていました。ぜひ新天地でベートーヴェンモーツァルト交響曲をオーケストラで体験してみてください。ドゥビエンヌで殿村にあれこれ言われたのはこーいうことか!と気付きがたくさんあるはず。

ファゴットは相も変わらずと言いますか、好きな奏者と並ぶと本当にいい音を出しますね、それは君の最大の長所であり、今回特に光っていました。が、ここでも「やめグセ」が目立ちました。本当によく練習してきたので食らいつけばもっと吹けたと思うのにやめちゃうから・・・。非常に惜しかったです。ファゴットはソロ楽器ですから、アンサンブルにおいても伴奏系よりも旋律を取るときが本業です。伴奏や合わせるのがうまいのはよくわかったしそれが楽しいのは分かるから、他楽器を食うような腕前を、「好きな奏者」のためにもっと身につけよう。そのためにやるべきことは僕が言わなくてもわかってるはず、ですよね?

MVPでもいいな、と思いましたが期待値がそもそも高かったので・・・でも悩みました。この発表会でも稀にみる良いアンサンブルだったと思います。

 

23.ファゴットソナタより第1楽章/シュレック

第5部は「卒業式」なんて言いましたが、その名に恥じぬ演奏だったと思います。とにかく楽器がよく鳴って、会場いっぱいに響いていました。音列の関係で楽器を鳴らしづらいこの曲でこれができれば、鳴らす技術的に「歌う曲」で困ることはしばらくないんじゃないでしょうか。非常に高水準の演奏でした。

音楽表現も見事でした。「シュレックソナタは名曲だ」と誰もが思ったでしょう。しかしここまで水準が高いと、細かいアンサンブルのズレが気になってきてしまいます。和音が動く瞬間、テンポの変わり目、細かい音の前後が軒並みピアニストとズレてしまうのが非常に惜しかった。余裕がないのもわかりますが、特にソナタものはもっとアンサンブルを意識した練習を。どんな音がピアノから鳴るのか想像しながら練習するだけでだいぶ変わります。合わせが少ない中、よくやったとは思うのですが。ピアノ譜とにらめっこしながら録音を聴いてみると自分がどうアンサンブルを壊してしまったかがわかると思いますのでぜひやってみて。

あと君のいいところは音程の良さです。それは初心者の頃から徹底した運指の丁寧さと練習の誠実さによるところですから、誇っていいと思います。普段オケでどうなのか僕は分かりませんが・・・

まだまだ楽器人生は始まったばかりです。先も長いですから、また一緒に頑張りましょう!バロック系の作品、今やったらぜんぜん世界が違って見えると思いますよ。

 

24.ファゴット協奏曲第1楽章/モーツァルト

これだけのモーツァルト、そこらの音大生でも演奏できません。まして並のアマチュア奏者ではまず不可能な領域で演奏していたこと、僕が認めます。本当に素晴らしかった。君が「別にレッスンが厳しいと感じなかった」くらいですから、モーツァルトの難しさというのは僕が君に普段から言ってることの集大成でしかなかった、とも言えるかもしれません。

レッスンで触れたモーツァルト特有の難しさ、トリルやタンギングなどの技術面はずいぶん高い水準でクリアしていたと思います。モーツァルトの1楽章でよく課題になりがちなスピード感もピアニストのサポートもあってずいぶんよかったと思います。2楽章はまだ違った難しさがありますからいつか挑戦してみてもいいですね。

課題があるとするならカデンツァですね。かなり具体的に指示をしたつもりですが・・・いびつな箇所が多かったです。今後はレチタティーヴォカデンツァを含んだ曲に挑戦し、伴奏のない音楽でしっかり聴かせる技術を身につけるといいでしょう。

 

 

25.ファゴットソナタ/サンサーンス

これだけのサンサーンスを吹けるアマチュア奏者が世界にいったい何人いるのでしょうか。僕は君しか知りません。誇張でも何でもなくそう思いますし、僕は誇りに思います。緊張も気負いもあったと思いますが全く感じさせない演奏でした。ハイEも見事でした。

まず言わなきゃいけないのは楽器のキーの音。ちょっと常識の範囲内を越える大きさで鳴っていますからきっちりメンテナンスをしましょう。きれいな音楽だったのに勿体なかった。

奏法についてあまり触れてこなかったですが、全体的に少し重心が高い印象があります。体の使い方、音程感、音色のイメージなど、もう少し低くダークに取るとよりホールで響く音がするでしょう。

ピアニストとのアンサンブルも抜群でした。この曲は意外にもそれが難しいのですが・・・(前の本番からの)ピアニストの違いにもよく対応していたと思います。ただよく聴いている弊害で2楽章、だんだん停滞した印象もありました。聴いて寄せる、だけではなく、自ら運ぶようなアンサンブルも身につけるとオケや室内楽で生きてくると思います。

 

 

講評は以上です。半年越しの挑戦も多く、今回かなりレベルが高かったような気がします。

繰り返しご案内になりますが、次回発表会は来年3月を予定しております。ファゴットのソロか、アンサンブル(ファゴットを含まなくてもOKです)でのエントリーで、どちらも1回以上僕のレッスンを受けて頂ければどなたでも出演可能です。日程未定ですが決まり次第各所でアナウンスさせていただきます。

春のひとときコンサート(殿村門下発表会)

2021年3月20日(土)お昼ごろ開演

参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン1回分謝礼含む)

ファゴットソロ(社会人)15000円

ファゴットソロ(学生)10000円

アンサンブル(1人あたり)6000円

お申込みは下記フォームからどうぞ。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

お待ちしてます~!