ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第22回門下発表会でした。~講評、演奏会告知と最近のことについて~

こんにちは。ファゴット奏者のとのむぅです。秋すっ飛ばして一気に寒くなってきましたがみなさまいかがお過ごしですか?

楽器のジョイントがゆるみ、リードのワイヤーがスカスカになり、冬を感じていませんか?僕は感じています。

 

さてまずは演奏会のご案内です。プライベートでゴルフを、仕事上ではオケやら室内楽やらよくご一緒するホルンの越取さんから「とのむら、木五やろうよ」と一言言われたのを僕が真に受けたため、メンバーをそれぞれ集めて開催されます。笑

今回は文化庁AFFの助成を受けた公演となります。なんと千葉、神奈川、滋賀の3公演に加えて、千葉公演では同日に0歳から入場可能な子ども向け公演も行います。なんと滋賀公演は開催決定からすぐに予約で埋まってしまったのですが・・・神奈川公演、千葉両公演はまだまだお席ございます。

 

Ensemble Lord 1stコンサート

・千葉公演 目前に迫ってしまいました!

2021年12月1日(水)19:00開演

千葉市美浜文化ホール 音楽ホール(JR検見川浜駅より徒歩8分)

入場料:1500円(全席自由)

・神奈川公演

2021年12月10日(金)19:00開演

ミューザ川崎 市民交流室(JR川崎駅より徒歩3分)

入場料:2000円(全席自由)

オンライン配信チケット:1000円(2週間のアーカイブつき)

・滋賀公演※完売しました!!

2021年12月12日(日)14:30開演

奏美ホール(上栄町駅より徒歩2分)

入場料:1500円(全席自由)

プログラム

3つの船乗りの歌/M.アーノルド

きらきら星変奏曲/W.A.モーツァルト

パストラーレ/D.ミヨー

バレエ「くるみ割り人形」より行進曲、中国の踊り、ロシアの踊り/P.チャイコフスキー

五重奏曲作品96「アメリカ」/A.ドヴォルザーク

出演:Ensemble Lord

フルート 宮本夢加 オーボエ 寺脇万葉 クラリネット 浜崎歩 ホルン 越取浩一 ファゴット 殿村和也

チケットのお申込み先はこちら https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScj38kznm2Dd6-ohrW5wfb88xy_MUn6AdqoVEHNLd0q4bwIPA/viewform?usp=sf_link

オンライン配信チケットのお申込みはこちら https://twitcasting.tv/c:ens_lord/shopcart/112569

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0歳からの木管五重奏コンサート ※こちらも目前に迫ってしまいました!

2021年12月1日(水)15:00開演(14:30開場)

千葉市美浜文化ホール 音楽ホール(JR検見川浜駅より徒歩8分)

入場料:500円(全席自由)

プログラム

サウンドオブミュージックメドレー/R.ロジャース

バレエ音楽くるみ割り人形」より/P.チャイコフスキー

クリスマス・メドレー ほか

出演:Ensemble Lord

フルート 宮本夢加 オーボエ 寺脇万葉 クラリネット 浜崎歩 ホルン 越取浩一 ファゴット 殿村和也

チケットのお申込み先はこちら https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScj38kznm2Dd6-ohrW5wfb88xy_MUn6AdqoVEHNLd0q4bwIPA/viewform?usp=sf_link

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今回このAFFのために非常に苦労したのですが、大変なのは通ってからも一緒ですね・・・なれないことに毎日四苦八苦しております。これも音楽家の仕事、なんだろうなぁ・・・。それについては、また気が向いたら別の記事で。

 

さて、11月13日に第22回門下発表会が行われました。今回はソロ20人、アンサンブル5組で25曲でした。最近の傾向としては若干少ないくらいでしょうか。それでももりだくさん、聴きどころ満載の発表会となりました。

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これで全員ではないのだから、やっぱり大所帯ですよね~一体どうしてこうなったんだか(いつも言ってるけど)

前回、前々回くらいから音大生がちょこちょこ参加してくれるようになり、今回は4人も参加してくれ、カルテットも演奏してくれました。やはり締まりますね。音大生たちからみてもこれだけ多くのアマチュア奏者と接する機会は多くないでしょうから、交流も生まれていて主催としては嬉しい限りです。対面での打ち上げができないのが悲しいところですが・・・(毎回、オンラインでは開催しています!)

なかなか新規の生徒が増えづらいご時世ではありますが、なんとかかんとか開催できております。もちろん、次回もやります!

 

次回の発表会のご案内です。なんと地元である府中市の誇る府中の森芸術劇場ウィーンホールを予約しました。どう考えても今までで一番いい会場での開催となります。

 

春のひとときコンサート(第23回とのむら門下発表会)

2022年3月19日(土)お昼ごろ開演

府中の森芸術劇場ウィーンホール

参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン代1回分など含む)

ファゴットソロ 社会人15000円 学生10000円

アンサンブル ひとり6000円(編成などによって変動あり)

ファゴット、アンサンブルどちらも僕のレッスンを1回以上受ければどなたでも出演できます。ですので普段ほかの先生に習っている方(もちろん先生に許可をもらってくださいね)も出演可能ですし、現在どなたにも習ってない方は選曲からサポート致します。

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さてここからは先日行われた発表会において、各演奏への講評となります。出演者以外には興味のない内容となりますことをご容赦ください。

 

1.ファゴット協奏曲イ短調RV498第1楽章/ヴィヴァルディ

初参加お疲れさまでした。実際どうだったかは分かりませんが雰囲気に呑まれていない(ように見えた)のは大変立派なことかと思います。それは本番強さとも呼べる、長所となって活きてくることでしょう。

音の濃淡について、レッスンではそれなりに時間がかかりましたが本番前くらいにはよく出来ていました。またレッスンで触れた中低音の音程・音色についてもとてもよくなっていました、この感覚を忘れずに練習を続けていってほしいところです。それが難しいことなのですが・・・。まずは運指、次にいい響きに慣れること(=100%演奏できるテンポでしか練習しないこと)が大切でしょう。それがわかってようやく技術的に次の段階へ進むことができます。

音の濃淡はクリアしたので、さらにもっと強弱があるとよかった。音量は少しずつ変わってはいますが音色やらスピード感が伴わないことが多く、表現力にやや欠ける演奏でした、そこは今後の課題としていけばまだまだ上手くなると思いますので、一緒に頑張っていきましょう。ぜひ自分の演奏を聴いてレベルアップを実感してくださいね。録音はポジティブに聴くのが一番。

 

2.ファゴットソナタト短調より第1楽章/ドゥビエンヌ

まず間の取り方、非常にうまくいっていました、よくイメージし、おそらくその練習もしたのでしょう。何度も発表会というステージに立ってきた事も活きているのかもしれません、聴いていてバテてる印象のある箇所がありませんでした。それがこの曲でできたことはすごいことです。今後挑戦する曲でもぜひ活かしていってください。

技術的にあまり言う事はありません。レッスンで言ったことについてほぼ完ぺきに理解し演奏できていました。今回やったような楽器の鳴らし方をぜひ今後も意識していってくださいね。音楽的にもレッスンで言ったことはクリアできていましたし、いわゆる「表現と技術」のバランスに優れた演奏だったと言えます。そこのバランスって本来けっこう難しいものです。

さて課題はやっぱり、欲、でしょうか。こう吹きたい!こんな音を出したい!という意思が自分発信から出てこないので、少し物足りない演奏に聴こえてしまいます。ファゴット演奏にうたごころ、なんてものはあってもなくてもいいのですが、ここはもっと大きい音のほうがいい、ここはもっと薄く吹きたい、ここはもっと・・・・のような意志がレッスンの時からあれば、そのための表現方法や技術が教えてあげられたんですよね。正解はないのだから、もっと自分で決めてみてほしかったかな。難しいことかもしれないけど、せっかく技術的に伸びてきたのだから少し意識してみましょう。

 

3.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

久しぶりの参加お疲れ様でした。ソロのステージって異様な空間だけど、楽しんでくれていれば幸いです。

安定した演奏で、聴いていて不安なところが一切ありませんでした。特筆すべきはピアニストとのアンサンブル力で、他の出演者の誰よりもそこは上手でした。タイミングや音程だけではなく、音楽的にも綺麗に乗って、時には先行して、というのが見事でした。いい耳と、それを活かす技術とソルフェージュ力があるからできることです。

課題についてはまず音量、というよりは鳴り。弱奏や綺麗なところはそれでもいいですしとても美しい音が出せているのですが・・・・ぜんぶその音色だとやりたいことは伝わらないし、いくらいい音でもずっと同じでは聴いている方も飽きてしまいます。美人は3日で飽きるのと一緒です(僕はそうは思いませんが)

時にはハッとするような強い音があってもいい。その音色が多少なりとも自分で「汚いな」と思う音でも、曲のシーンにあっていれば聴いている方は気になりません。

時には多少音程が悪くてもいいから耳を澄まさないと聴こえないような小さな音があってもいい。音程が、と思うかもしれないけどピアノが鳴っていないシーンならそんな音も使いどころがあります。

自分の音、というのは大事にしてほしいけど、まず曲があって、その曲の魅力のために自分の音があって。自分が演奏する前に、聴いている人がいるのがステージなので、聴いている人のために曲の魅力を活かす、そのために自分がどんな音を出すのか考える事が大事です。絶対的な「良い音」なんて存在しません。

 

4.三重奏曲/オーリック

難しい曲を非常に高いレベルで演奏できていました。レッスンでも言いましたが楽譜の指示があまり良くないのでどう活かすかが難しい作品ですが、本番では魅力たっぷり演奏できていました。変化に富んだ演奏なのでいっときも飽きることのなく聴ける演奏でした。3人での「決めごと」も非常に効率よく発揮できていていい合わせができていたと思います。もし僕から言うことがあるとすれば「決めごと」以外の気まぐれのようなものがもっと見たかった、せっかく同じリード楽器が3本も揃っているのですから、もっと適当でいい箇所があったのかも?

オーボエはテクニック面もそうですが低音から高音まで(少なくとも聴いている方への)ストレスのない鳴らし方が非常にうまいなと思いました。きっとオケでもいい仕事をされていることでしょうが・・・僕はオーボエはもっとわがままでいいし、自分がいい音を出すために周りを踏み台にする、くらいの強さがあっていいんじゃないかと思っています。おそらく共演者のお2人は演奏しやすかったと思いますしそれは素晴らしいことなのですが・・・

クラリネットは発音の使い分けが非常に上手いですね。発音があいまいだとダブルリード族は非常に困るのですが、そういったシーンがほぼなく、そのお陰でいいアンサンブルを作るキッカケがたくさんありました。またバランス感覚にも優れているため「うるさい」とも「聴こえない」とも思うシーンがありませんでした、これもやっぱりすごいこと。課題はソリスティックなところ。いいアンサンブルとはけっきょくのところ、うまい個人の集合体ですから、見せ場がもっと魅力的であってほしかった。決して台無しにはしていないのですが、クラリネットはもっと圧倒的であってほしい。僕個人の好みではありますが。

ファゴットはいい意味で「最近よく見る音大生」のような演奏ができていました。非常に高水準なテクニック、よく響く音色・音質を持ち、周りをしっかり聴き、時には先行し、見せ場はきっちり歌える、いわゆる「非常に上手い」ファゴットでした。トリオダンシュは木五と違ってファゴットは低音に徹する、というより3パートのうち1パート、という箇所が多く技術力を問われるのですが、難なくクリアできていてしっかり練習してきたんだな、と思いました。僕から与える課題は特にありませんが、技術も表現もそのもう一歩先があるはずで、最終的に狙ったのが「安定感」な印象があるので、そこは「攻め」であってほしかったな。やっぱりダンシュですから。「合うのが前提」であるトリオダンシュを「合わせにいく」では、やっぱりちょっと勿体ないかな。全体が高水準であるから、なおさら。

 

5.ラプソディ/オズボーン

唯一の無伴奏でしたが、緊張を感じない演奏ができていました。その舞台度胸はやっぱりさすがです。レッスンで指摘した強弱やらテンポ感やら、ひたすら情報量の多い楽譜を忠実に再現できた演奏だったと思います。また弱奏も素晴らしかった、息遣いとリードの鳴らし方がきっちり計算できていないとここまで安定しては吹けないはず。またこの曲特有の間の取り方がすごくうまくて、演奏者もそうでしょうが聴いている側もその間が心地よかったんですよね。

もう一歩踏み込んだレッスンをすればよかった、と中盤まで聴いていて思っていました。すこし「ラプソディ」である事が、欠けた演奏でした。もともとラプソディという言葉に対した意味はありませんが・・・先人が「狂」という字を当てはめただけに、やはり常軌を逸した箇所がないと面白みにかけてしまいます。それでこそ弱奏が生きるので、そこが非常に勿体なかった。たまに頑張るのですが、技術的になにか気になるとすぐ消極的なところに落ち着こうとしてしまうクセがあるのかな。

それでも技術的にはここ1年くらい、非常に上手になりました。前ならもっとこじんまりした演奏になっていたと思いますが、魅力的なところがたくさんありました。演奏に積極性を感じるようになったこと、先生(のひとり)としてすごくうれしく思います。

 

6.コンチェルティーノ/ビッチュ

MVPでした、いなかったけど。レッスンで呆れてしまった前半部分は、「こーいう箇所が得意なひと」のような完成度だったし、理想の高さを感じる演奏でした。ピアニストとのアンサンブルも非常にうまくいっていて、曲をよく理解しているな、と思いました。少し前の君ならそれはありえなかったので、いい成長の仕方をしたなと思います。

もちろん中盤・後半はさらい方について意識が変わったことが2回目のレッスンでも言いましたが大きな進歩でした。ただ指をさらって音を追うだけじゃなくて音楽的な表現力をともなっていて、ここまでうまくなるとははっきり言って想像してなかった、そして本番でそれが発揮できることもすごい・・・!

難しい曲の難しい箇所に限らず、どんな楽譜もその意識で譜読み・練習ができると周りの見る目も変わることでしょう。「なんとなくセンスで吹く」というのが上手い人というのは譜読みからそれができているんですよね。まずはその力を付けてそれが当たり前になること。いつか若い子に「センスがありますね」と言わせて「いやこれはセンスじゃない」と言えたら素敵ですね。

それでもやはり前半部のような箇所は苦手なのでしょうから、ヒンデミットシューマンなどのいわゆる「綺麗な曲」に挑戦できるといいかもしれませんね。

 

7.ソナチネ/タンスマン

難曲をよく演奏しました!ピアニストのエラーもありましたが、ノンストップなこの曲をしっかり動揺せず演奏できたのはいい練習ができていたからだと思います。リズムを出しフレーズを繋ぎ、ついでに(!)指と舌も忙しい、というこの曲を魅力的に演奏できていました。フレーズを意識した成果か、ブレスの取り方もよかった。聴いている方も演奏者のブレスって無意識でけっこう聴いているもので、いいブレスはそのお陰で心地よさも産むんですよね。

さて課題があるとすれば音色でしょうか。いやもちろん決して変な音を吹いているわけではないのですが、音色に変化がない。楽器の音が非常にいい音で吹いていて気持ちいいのですが、そこに操作がないので聴いていると音量や発音が変わっていても一辺倒に聴こえてしまう。ビブラートなどでうまく操作はしていますが・・・もっと何かやれたんじゃないかな。キャパシティの広い楽器なので逆に難しい部分なのですが、研究してみるといいかもしれません。

また「難しい曲だ!」と自分で思っていた以上にレッスンで思わせてしまったのか、少し消極的な印象もみられました。やはりステージの上では攻めの姿勢は欲しいものですから、そのための練習ができるとよりよかったかもしれませんね。

とにかく、それでもここまでタンスマンをきっちり吹けるアマチュア奏者、世界中探してもそう何人もいないんじゃないかな。本当にそう思います。


8.三重奏曲より第1楽章/ベートーヴェン

演奏機会の多さと曲の深みが釣り合わないな、といつ聞いても思いますねこの曲は・・・まぁとにかく、今回してた演奏は大変すばらしく、曲の魅力を最大限引き出しにかかっていたと思います。

ピアノの鳴りはスタジオでは気になりましたが予想通り会場では大丈夫でしたね。技術的にもよりさらいこんであってとってもクオリティが高かったです。「間奏で他楽器が出てこなくてもいいくらい~」とお願いした意味、よく理解してくれていました。でもね、本当にお客様にそう思ってもらっていいんですよ、まだまだやれたんじゃないかな・・・?それでこそこちらも燃えるというもの。また管楽器や弦楽器との共演機会があったら今度は食うつもりでやってみてくださいね。

ファゴットは昔に比べて非常に楽器がよく鳴らせるようになりました。鳴らせるようになると、とうぜん鳴らさないこともできるようになるので幅が広がり、結果として色んな音色が出せるようになってきました。それが強弱との組み合わせで幅広いダイナミクスを聴かせられるようになります。ただ「鳴らした音」のクオリティは決して悪くないのですが不慣れ感があり、その理由はちょっとした力みにもあるのかな。フォルテで息漏れが起きるのも理由の一つです。息漏れ自体にそこまで大きな害はないのですが・・・まずはフォルテのときに息漏れをなくすようにしてみると力みが改善され、フォルテもより鳴ってくることでしょう。音程もよくなるかな。

フルートはレッスンのとき、素直、というよりは実直、という感じで、どうかな、もっと色々言ったほうがいいかな、と思っていたんですが少ない言葉でどんどん飲み込んでいって、本番では色彩豊かな演奏ができていました。一番指摘したスタカートの加減については今回とてもうまくいっていました!今回(いちおう)ベートーヴェンなのでハマっていましたがこれがオケでドビュッシーとかフランクとかブラームスとかになるとどうなんでしょうか・・・?聴いてみたことがないのでなんとも言えませんが、色々なスタカートが扱えると素敵ですね。少なくともファゴット吹きに愛されるタイプのフルーティストかと思われます。ぜひまた何か吹きに来てくださいね。今回の相方が空いてなければいいファゴット吹きいくらでも紹介しますよ!

 

9.木管五重奏曲より変ロ長調/ダンツィ

「アンサンブルは個人技の集まり、それ以上の何物でもない、リハーサルなんてあんまりキッチリやるもんじゃない」という僕の持論はどこ行っても言うようにしているのですが。リハーサル回数の多いアマチュアの方で本当にたまに現れる「総合力でうまくいっているアンサンブル」というものがあります。今回のアンサンブルがそれにあたります。相性だとかバランスだとかが上手くハマった、というのもあるのでしょうが、音を出すたびに寄り添って行ったことと、それぞれがきっちり自分のパートを練習し曲の勉強をしてきたことが「総合力」として現れた演奏だったんじゃいかな、と思います。

フルートは前団体と同じことを言いますが実直そのもの、ですね。まっすぐ吹くことに関しては素晴らしいです。しかしそれだけでいいのは1人で吹く時だけで、アンサンブルの時はどこかに寄り添う必要があったり、他の誰かを圧倒する必要があったりするわけです。もっと変化に富んだ演奏を心がけましょう。またレッスンでも言いましたがフレーズの語尾を(音価以上に)長く大きく伸ばすクセがありますのでこれも古典派では絶対NGです、やめましょう。

オーボエは勝手に(ではないんでしょうけど)うまくなっていってるのでそこまで言う事はありませんが、全体の音楽の流れをもっと引っ張れる奏者になれるといいですね。少なくとも今回のメンバーはそれを望んでいたような感もありますし、オーボエというのはフルートの影になったり表に出たり全体引っ張ったりと色々な顔をしなくてはいけないので大変だとは思うのですが・・・。課題はリーダーシップ。そのための(鳴らす)テクニック、でしょうか。

クラリネットに関しては毎回僕から言うことは殆ど何もないですね・・・いつも素晴らしいと思います。ご自身の音から発信してる情報を、周りのメンバーがきちんと理解しているか、ということにもっと興味を持って、分かってないな、と思ったらなるべく声をかけてみましょう。そのコミュニケーション込みでアンサンブルです。

ホルンは木五向きの柔らかい音色がとってもいいですね。この曲ではそこまでホルンの爆発力に頼る部分も多くないし曲にハマってるな、という印象で聴くことができました。課題があるとすれば音の方向性でしょうか。この音はどこの小節のどの音まで向かっているのか。向かった後はしばらくそのままなのか、すぐおさまっていくのか。おさまったあとはどうなるのか、など、方向性はどこのどんな音にも必ずあります。「方向性がない方向性」というのもあります。なんのこっちゃ。もうちょっと新しい曲でのお話です。

ファゴットは個人レッスンの方でも触れたのであまり言う事はないですね。ただ周りに仲間がいると力をより発揮するタイプみたいです、人と吹くのが好きなのがよく伝わってきました。人と吹くのが好きなら、もっと上手くなりましょう。人のために上手くなると、自分ももっと楽しめます。間違いなくそうです、僕はそう思って頑張っていたらいつのまにか音大に入りプロになっていました。

木五で総合力の演奏、なんて、いやいや珍しいことだ。

 

10.ダンスホール組曲/キーティング

講評なんてないです。笑 アマチュア中心のうちの発表会で音大生が四重奏をやることになるなんて、僕からするとなかなか感慨深いのですが・・・その話はまたそのうちに。

質も魅力も十分でした。レッスンでいった「おふざけ」も思った以上に発揮されていて聴いていてとっても楽しめました。ちゃんとお金の取れる演奏でしたよ!自分の学生時代を思うと大学2年~4年が半分くらい初めましてで四重奏、なんてケンカでもしそうだなと思ってましたが、そこはリーダーの力もあってか上手くいっていたようでよかった。

 

11.ソナタ第3番/A.ヴィヴァルディ

久しぶりに自身も演奏しました。以下自分用のメモ。

ある種の発見があって音楽の表現を考えたり実践するのが面白くてしょうがなかった、ソロという分野がこんなに面白いんだなと気付けたの、やはりバロックもののソナタだからだからだろうか。6曲あるのだしぜんぶ自分で吹いておきたいなー。

同時にある種の衰えも感じて、やっぱり年3回僕も吹かなきゃいけないなーと思った。生徒たちにレパートリーの紹介という意味も含めて。

自分が吹かなくなった理由は以前ブログにも書きましたので割愛。吹くようになった理由は音大生が増えてきて色々な意味でみんな気にならなくなったかな、と思うから。僕としては運営しながらなので大変なんだけど、それでもやっぱり貴重な本番なのでどうしたもんか、と思っていたのですが。何人かに「講師演奏なのだしアンコールで演奏してはどうか」というお言葉を頂き、確かにそれなら、とも思ったのだけど、僕はこの発表会を、お客様のために演奏する「コンサート」の体裁を保ちたいと思っていて、そういった意味では最後を飾るのは生徒の演奏であってほしい、と思うんですよね。たまにアンコール企画しちゃったりした会もありますが・・・

とにかく自身の演奏は大事だ、皆に還元できることも増えるから、これからはうまいこと挟み込んでいこうと思います。短い曲ちょろっと吹くという手段もあるのだし。

 

12.ファゴット大協奏曲より第1楽章/フンメル

しっかりとした自分の意思を感じる演奏でした。レッスンで言った「習ってきたんでしょ感」は払拭されていて、本番の演奏で僕はようやく君がどういう子なのか分かった気がします。短い期間で、それもこの難曲で、ちゃんとそれができたことがまず素晴らしい。もうこれは時代だし老人くさい言い方だけど僕が学生の時代に、2年生でこの曲をここまできっちり吹ける子なんて1人もいなかったと思うのでなおさらそう思います。

この曲で難しいのはテンポ感。疾走感は欲しいけど、そのせいで速い跳躍や連符での表現が浅くなってしまうのは本末転倒で、さてどんなテンポで吹こうか、どう操作していこうか、と悩む必要のある曲で、そこが少し浅かったかな。もちろん疾走感と音楽表現を両立できている箇所もあったけど、全部というわけには・・・。具体的には、おそらくそもそものテンポが少し速い。テンポが速いことと疾走感があるのは似ているけど、音楽表現としては全く違う要素なので、少し基本テンポを落とし、アゴーギグをつけつつもっと表現重視の演奏をしてほしかった。そのうえで今回のような疾走感があれば、どんなコンクールでも負けない演奏になったことでしょう。

テンポと技術と音楽表現とスピード感。すべて大事なことですから、そこは練習量とは別のこととして、1人の音楽家としての「選択」としてよく考えてみるといいですね。

あ、「憧れのフンメル」にちゃんと聴こえたと思います。これ帰り際に直接言うの忘れてました。

 

13.ファゴットソナタ/ハールストン

会うたび君の成長に驚かされます。正直、僕の話どのくらい聞いてるのかな、と思うときもあるのですが、数日で噛み砕いてそれを越えたものを表現してくるの、(1人目の)師としてとっても嬉しく思います。誰に何を習おうと、それをしっかり自分で考え噛み砕き音楽家としての糧としていければ、みるみる力をつけていけることでしょう。意志の強さと柔軟さが君の武器だと思いますので大事に育てていってくださいね。

今回の演奏については、音色の変化・使い分けが大変見事でした。レッスンで言った発音も含めて、目まぐるしく変わる曲の雰囲気にしっかり対応できていました。(君の環境だとそうでもないのかもしれませんが)ファゴットの音大生は楽譜にまみれる学生時代だと思いますが、すべて今回取り組んだようなことを忘れずにやっていけるといいですね!

 

14.コンチェルティーノ/ダビッド

正直、曲も曲だしこんなに伸びしろが残されてるとは思わなかった。もっとレッスン時間取ればよかった、と思うくらい。それは基礎的な力がしっかりしてるのも関係しています、普段の訓練と習ってる先生のお力の賜物ですね。しかし基礎があっても普通ここまで変わるものではないのだから、なにか特別な、光るものを持っているんだと思います。たぶん自分なりに気付きや手ごたえはあると思うのでそれをぜひ大切にしていってほしいものです。あまり僕から言うことはありません。

一つ課題を与えるとするなら、アゴーギグの操作が非常に上手なのですが前進するアゴーギグが多すぎる。縮んだゴムが元に戻るように、そのぶん緩む場所も作ったほうがいい、それは速い部分も同様です。速い楽章で緩む方のアゴーギグってすごく難しいのですが・・・それを身につければまた一皮むけてくるんじゃないかな。

たぶん君の武器はまじめな顔でふまじめなができること。あ、演奏の話ですよ。

 

15.ファゴットソナタ/サンサーンス

いっや難しいですねこの曲は本当に。吹いてる方は何回やっても後悔ばかりが残るんだけど、聴いてる方は意外と面白く聴けるもので。そーいうものです、この曲は。そのうち後悔が少しずつ薄くなって、「あ、少し分かることが増えたけど、分からなくてできないことがもっと増えた」と思うようになります。たぶん。

1楽章は音色の操作が見事でした。音量以上の音楽変化が聴こえてくるのは音色によるところが大きく非常に効果的でした。レッスンでも言った通りビブラートの操作がもっとあればより変化が生まれて、(技術的、でなく音楽的)ダイナミクスレンジが一級品になると思いますのでぜひ扱えるようになってみて。

2楽章の完成度はやっぱり高いですね、どう考えてもこの楽章に時間割くもんね・・・。足りないのはスピード感と2拍子感。テンポはこのままでももっとできたことがあるかもしれませんね。ピアニスト置いて行ってでももっと仕掛けてよかった。ちょっと周りを気にしすぎるところがあるみたい。たまにはついてこないことを前提に突き進んでみる勇気も大事よ。

3楽章はちょっと健全過ぎですね。これだけ音色操作が上手なのにどうして薄いほうをもっと使わないのか。現世じゃなくていいんですよね、この楽章は。そういう意味では2楽章のあともっと時間取っても良かったかもしれない。きれいだし安定してるんだけど、震えるような音楽表現が残念ながらほとんど見受けられなかった。こだわりは感じるのだけど。こだわりよりまず、曲の魅力です、本当に。

薄い音の操作、もっと身につけましょう。絶対評価での「良い音」なんてくそくらえ、ですよ。

 

16.ドルフィンズバラード/一瀬恒星

レッスンでも思ったけど安心して聴けるようになった。これはすなわち上達ということです。「自分で考える」ことには僕に会う前から長けていた君なので、とにかくソロを吹く時の安定感が身に付いたのは本当に良かった。また、いい息がしっかりリードに入ったまっすぐな音もいま非常に魅力的です。中低音域が多い曲だったのもあるだろうけど、音の取りこぼしが一つも起きないのがいいですね、これも安定感の一つでしょうか。

新しい作品なのもあって音楽表現はちょっと難しかったしレッスンでも苦労しましたが本番はよく表現できていたと思います。山場がどこなのかしっかり計算された演奏ができています。

課題は積極性、かな。安定してきたのだから当たり前といえば当たり前なのだけど、もっと攻めた場所があっていいし欲があっていいし。しみじみと「いいねぇ」という演奏ができていますが、震えるほどか、と言われると・・・。印象に残る演奏、って聴いていてあると思うのだけど、やっぱりそういった演奏というのは積極性があるのよね。計算して吹いてしまう君だからこそ、どこか感覚的、積極的にいく部分を作らないと平坦に聴こえてしまいます。そこに挑むからこそ必要になってくる技術というものもあるのです。

 

17.演奏会用独奏曲/ピエルネ

ピアニスト含めて、いつも君の演奏への心配は最後まであって、本番を聴くとほんとんど杞憂で終わる。これもうパターンにするの、やめませんか。笑

心配だったリズム、タンギング、楽器の鳴り、音程、ほとんどにおいて本番でクリアできていました。本番強さ、というのは確かにあるね・・・。僕は本番強さの実態は本番前の練習にあると思うのですが。

とにかくその一夜漬けのような本番強さは、まぁ、武器として取っておくとして。もっと基礎的な部分に真剣に向き合っていきましょう。曲もいいです、ぜひやってください、やってなきゃここまでは上手くなってないはずなのだけど。しかしまずは場数が必要です。楽譜をきちんと読んで技術的にしっかりクリアして、それを当たり前にしていく。その繰り返しで安定感をもっと身につけましょう・・・!

とにかく次のレッスンは近いうち、やったことある曲でいいのでエチュードを。僕がここまで「基礎!!!」って言うのかなり珍しいんですからね。

 

18.アルペジオーネソナタ/シューベルト

まぁたくさんレッスンやったよね。僕ちょっと飽きてたんだけど、いい意味で飽きずに毎回ちゃんと言ったことクリアしてくるの立派だなと思っていました。ダイナミクスに音色変化が伴うようになって、君は音楽表現技術に関してかなり高いレベルに達していると思います。あとは魅力的に聴かせるための選択する美的感覚と客観性よね。それでも僕が「それは変だからやめなさい」と言うシーンは確実に減っていますからよく努力できていると思います。

ピアニストとのアンサンブルも申し分ありません。ピアニストが上手いのも確かですが、ピアニストが上手く聴こえる演奏がちゃんとできているので、それが今回一番素晴らしいと思った点です。共演者を活かしてこそファゴット。そこから返ってくるもので更に力を貰えるのがファゴット。よく覚えておきましょう。

課題もあります。君は音楽表現の練習をすると技術練習が手薄になります。逆もしかり。両立しましょう。聴いている人の印象は残酷なもので、悪いほうにどうしても耳が引っ張られてしまいます。今回そこがすごく勿体なかった。難しいところをもっと丁寧に真摯に練習できていれば・・・。技術と表現のバランスを取る意識を持ちましょう。

 

19.ファゴット協奏曲第1楽章/ウェーバー

珍しいミスについては、もう直接お話したので割愛します、もう起きることでもないでしょうから。

今まで挑戦した曲と比べるとそこまで難しくもないこの曲だと思いますが、大曲というものには魔物が住んでいるのでしょうか。しかしとにかく、ウェーバーで覚えてほしいことはしっかり伝えられたと思うので、そこは大丈夫でしょう。もうわりと長くエチュードをやっていることもあり、楽譜の読み方に関してかなり力を持っていますね。この曲は楽譜を読む力があまり役に立たないのが悔しいのですが・・・

曲が進むごとに楽器が鳴るようになり安定感が増していきました。そんなに必要じゃない、と思うかもしれませんがもっと演奏前に音出しをした方がいいかもしれませんね。意外と木管楽器にも慣らし運転は必要なものです。そうもいかないときは、とにかく出だしは鳴らすことを中心に強く集中力を使うこと。ありがちですが「再現部からは特によかった」という評価は音出し不足から来ます。発表会ですから満足に音出しはできませんが・・・前半が鳴らないことが分かっているなら鳴らしにかかればいいのです。「息を入れる」だけでは楽器が鳴らないことは、もうお分かりですから説明は不要でしたでしょうか。

技術的にはじゅうぶん達した演奏でした。しかし付点への意識はやっぱり甘いままでした、とにかくそれが発揮されなかったのが残念でした。あれだけ言っているのでもう言及すべきでもないのかもしれませんが、講評としてはそれが一番です。リズムは言語に近い。イントネーションだとかアクセントの位置だとかが風習から自然に決まってくるものなので、少し大げさに、強引にでもとらえていかないとネイティブには聴こえないんですよね。

 

20.サロン風小品/カリヴォダ

レッスンで本当に心配だったけど、フィジカル強化に成功したのは素晴らしかったですね、コーチもよかったのかな。こうまで発揮されるなら、同タイプの子にはフィジカルの話はした方がいいのかな・・・。スポーツ経験のある男性だと、とりあえず楽器演奏に関してはあまり縁のない要素なのですが。僕も勉強になりました。

持ち前のソルフェージュ力がしっかりファゴットに伝わった演奏だったと思います。ピアノとの噛み合い方もそうですが、聴いていてうんうん、とうなずきながら聴ける演奏でした。場面転換もうまく、わくわくしながら聴けました。場面転換のうまさはリズム表現のうまさからくるのかな。

しかし欲しいのは音色の変化かなやっぱり。他の子への講評でも書いたけど、絶対評価としての「良い音」なんてどこにも使わないのでこの場面ではもっとこんな音を、という欲望がまずほしい。まずは欲望から。技術面は誰かが教えてくれるし自分でも気付けるだけの地力はあるでしょう。君の言う「練習」がもっとそこに割けるようになると、よりよい演奏ができるでしょう。

一番最後、もっと馬力が出ると良かった、惜しかった。

ハイトーン言う事なしです!お見事!

 

21.ファゴット三重奏のためのディベルティスマン/ボザ

難曲をきっちり演奏できていました。レッスン時なんとなくだった強弱についてもしっかり解決してきていて、とにかくこの曲を「らしく」演奏できていました。ボザは「らしく」ができていればだいたいいい演奏に聴こえる、良くも悪くもコストパフォーマンスに優れた曲が多いですね。ただ曲の強弱だけじゃなく、もっと音の濃淡などで変化が聴きたかった。とりあえず同じ拍感で音を並べる、が目標になっているように聴こえるシーンが多く、全体としては平坦に聴こえることが多かったのが勿体なかったですね。

1stは、「こう吹けばいいはず」と考えるのではなく、どう吹いたらより魅力的に聴こえるのか、を常に模索しないと伸びないですね。「これでいいでしょ」って心理が演奏から透けて見えるんですよね・・・それは箇所箇所に現れていて。そうではなくて、魅力的に聴かせる努力を。実際どうで、どんな経歴があるにしろ1stを張る以上いちばん魅力的である責任があるのではないかな。言うまでもなくパワーとテクニックはじゅうぶんあるので「魅力」をテーマにぜひファゴットを練習してみて。

2ndは出るところ引くところの操作がうまくいいつなぎ役ができていました。出るところはもっと出ててもよかったけど、引くところがうまいから、そこまで気にもならなかったかな。適材適所、という感じ。でもいいファゴットアンサンブルはパートが入れ替わっても面白いはずなので、1stや3rdだったらどうなっていたかな・・・?と考え、自分に足りないと思う技術を磨いていってくださいね。ソロでの参戦楽しみにしていますね!

3rdはいい仕事してました、出るところでしっかり出て引くところでしっかり引く、はレッスン前と本番では別人のようでした。今回、引く面白さを知れたんじゃないかな。ファゴットアンサンブルは特に引くところが大事ですからね。欲しかったのはある種の積極性。例えば音楽の停滞が起きたときに下の音から運び出すような動きとか、ダイナミクスの変化を一番最初に起こして上2人を煽る、とか。合わせるのもつなぐのも上手だったけど、運ぶことを覚えれば立派な下吹きになれることでしょう。

 

22.ファゴット協奏曲第1楽章/ウェーバー

初参加かつ大曲への挑戦、それを感じさせない舞台度胸を感じました。じっさい緊張していたかはどうかは別の話として。いい意味でオーソドックスな奏者として、非常に成長しました。運指の強制や楽譜についてのことなど、はじめてやることが多かったと思いますがしっかり対応してきてくれたので教えるこっちも楽だったし、面白かったです。いくらでも教えてあげたくなるから、情報量多めで大変だったと思いますがよくついてきてくれました。身に付いた奏法はまだまだ入口ですので、よかったらこの先も一緒に頑張っていきましょう。

演奏について特に僕から言うことはありませんが、さっきも言ったようにオーソドックスなんですよね。これはこのままでもいいのですが・・・僕の好みとしては、もっと個性を前面に押し出してもいいと思う。個性がどういったところに発揮されてもいいのだけど、「ここはこうやって吹く!」という意思がもっとたくさんあっていい。ウェーバーはしばしば演奏されるレパートリーなぶん、サンプルも多いし選択肢も本来すごく広い曲なはずなのでもっと自由でもよかったかな、と思います。教えた分の奏法については本当に言うことありません、よくやってきました。楽器との相性の良さ、僕もちょっとわかる気がします。

しかしやはり響きの線が細いことは気になりますので、太く太く、と意識を持つといいかと思います。もしかしたらナントカボーカルの力もいつか必要になってくるかもしれませんね。次回の参加の楽しみにしてます!

 

23.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

非常に安定感があって、それでいて変化に富んだ演奏でした。もともと持っている太くていい音色が曲ともよくマッチしていました。発音の操作も非常にうまくなっていました。それだけの操作ができれば、オケの弱奏も発音さえやさしければけっこう大きく吹けたりします。印象の問題ですからね。

全体を通して課題は、薄い音の操作性とクオリティの向上ですね。太い音に対してしっかり薄い音を出す技術は持っているのですが、出すだけでは・・・。大きな音も出す技術だけあってもしょうがないように、薄い音にも操作性と質の高さが欲しくなります。レチタティーヴォの弱奏部、アレグロの冒頭、中間部など、薄い音のまま操作ができないと平坦になってしまうところが意外にもこの曲には多いんですね。全体的なクオリティが高いから、とにかくそこが気になりました。弱奏部の操作性、ちょっと気にして練習するようにしてみてくださいね。

 

24.ファゴット協奏曲ロ短調RV497/ヴィヴァルディ

パワフルかつ繊細で非常にハイクオリティの演奏でした!変化に富んだ場所も多く、曲の性格と自分で選んだ強弱やアーティキュレーションがしっかり生きた演奏になっていました。技術的に音楽を操作する力に長けているので、選択さえしっかりできていればあとは練習するだけ、に持っていけるんですよね、これは素晴らしいことです。端的にいえばそれを「うまい」と言うのだと思いますから。

課題があるとすればアゴーギグのバリエーションでしょうか。大きくて重い、小さくて軽い、この2択しか今持っていませんので、大きいけど軽い、小さいけど重い、という選択肢はもっと取り入れていってもいいでしょう。また重くした分どこかで軽く、軽くした分どこかを重く、というのはアゴーギグの基本ですが、けっこう重くしっぱなし軽くしっぱなしが気になるところが多かった。

とにかく僕はうちの会においては自分の意志で好きな演奏をしてほしいので、それがもし「先生の言う通り吹きたい」なのなら止めませんしそういう時期はあっていいと思うのですが、きっと自分でやりたいことがもっとあったのではないかな・・・?それがより発揮できていたら、僕はもっと嬉しかったかな。

何にせよ最高峰クオリティのヴィヴァルディ。良いもの聴かせてもらいました!

 

25.プルミエソロ/ブルドー

やはりトリには短かったか。いやそんなことを感じさせない圧巻の演奏でしたので僕はこれでよかったと思っています。意外と譜面の指摘がしつこい(わりに版によっていろいろある)この曲ですが、表記をうまくつかって表現ができていました。またダイナミクスと音色が綺麗にリンクしていてそれがとにかく魅力的でした。音量以上の変化を感じる演奏ですね、その感覚を忘れないように。

アウフタクトから始まる音楽が多いこの曲ですが、関係性の整理がもうひとつでした。うまくいっているところも多いですが、アウフタクトから1拍目、アウフタクトから1拍目。とにかく意識をしないと不格好なフレーズになってしまいます、そこはもっと神経質にとらえてほしかったかな。

しかしパッと見そんなに難しいこの曲を慢心せず丁寧にさらいこみ、音楽変化をしっかり計算し表現できた演奏でした。出会った頃の力任せな君はもうどこにもいませんね。トリに相応しい名演でした。次回も楽しみにしてます!