ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第24回門下発表会でした。講評と次回のこと

こんにちは。今回今までで一番遅くなってしまったかもしれません・・・?出演者各位とってもお待たせしました。

7/23に小岩アーバンプラザホールにて、第24回の門下発表会が行われました。某感染症の影響が今までの中でも大きく、出演者が減ったりもある中でみんなよく頑張りました。

 

 

うーんこう見ると本当に少ない。もちろん途中で帰った人やこのあと到着した子もいるのですが・・・。

参加者、もう少し積極的に増やしにかかろうと思います。ファゴットがいっぱいいるのではやっぱり楽しい。

 

毎回書いていますが、僕の門下発表会のコンセプトは「ソロの曲を練習してレッスン受けて人前で演奏するのが一番はやく上達する」です。上達がコンセプトですので、本当に皆さん気楽に参加してくれていると思います。曲は基本的にやりたい曲をやってくれて構いません。伴奏ピアニストは達人ぞろいですので、ちょっとくらい間違えても合わせてくださいます。

上達したい人、ファゴット仲間がほしい人、僕のレッスンを受けるキッカケがほしい人、ぜひご参加ください。アンサンブルでのエントリーも歓迎致します。

僕のレッスンを1回以上受ければどなたでもご参加頂けます。またプロのピアニストがきっちり伴奏してくださいます。

 

次回発表会のご案内です。

 

秋のひとときコンサート(第25回とのむら門下発表会)

2022年11月19日(土)午後開演(終演夜予定)

立川サロンスタジオFIX(JR立川駅徒歩3分)

参加費

ファゴットソロ 社会人15000円、学生10000円(ピアニスト謝礼、レッスン代1回分ふくむ)

アンサンブル お1人6000円(人数などで多少の変動あり)

お申込みやお問い合わせはこちらへどうぞ

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

ここからは第24回発表会の参加者への講評となります。

出演者以外の方には面白くもない内容となりますので読み飛ばし下さい。

講評ブログ以外にも更新できるようがんばります・・・

 

1.ファゴット協奏曲/シュターミッツ

初参加のプレッシャーを感じない堂々とした演奏でした。とにかく運指改善で最初はお互い頭がいっぱいでしたが、本番ではきちんと中身のともなった演奏ができていてよかったです。一皮も二皮もむけた感覚があるんじゃないでしょうか。

また元々、音域問わずムラなく鳴らせる力があるので、広い音域を使う曲ですがいい音がよく響いていました。

とにかく形式ばった曲なので制限が多く感じだと思いますが、今回のノウハウは何の曲を演奏するのにも使えることなので、今後に活かしていってほしいなと思います。

課題としては積極性でしょうか。欲が足りない、とも言えます。僕がやりなさい、と言った表現に関してもまだまだ足りませんし、その上で自分でやりたい!と思ったことをもっと表現してほしかったかな。僕がいくらレッスンをしようと、ステージはあなたのものですから、あなたがやりたいことをやればいいのです。自分で演奏をつくるよろこびをもっと知っていってほしいですね。

さて今回学んだ技術や表現についてはまだまだ序の口です。まだまだ知ると面白いことがたくさんありますので、今後も期待していますね!

 

2.ファゴットソナタ/レントヘン

本番通して聴いていて気づきましたが、どう考えても今までで一番難しい曲でしたね・・・音域のこともありますが、表現の難しさがはんぱじゃなかったと思います。しかしそこは発表会参加キャリア(だいぶ多い方になってきましたよね)の力か、持ってる力でせいいっぱい表現できていたと思います。指回しで頭がいっぱいな若い子にはいい刺激になったんじゃないでしょうか。

完成度が高く、あまり改善点を述べるところはないのですが・・・やっぱり課題は音の伸びでしょうか。自宅でのレッスンだとどうしてもそこがカバーできないのですが、たまには少し広い場所で空間いっぱいに楽器を鳴らす経験をしてもいいかもしれませんね。録音だとマイクが近いので聴こえるのですがホール(僕は一番前にいましたがそれでも)だと音があまり飛んでいませんでした。

特筆すべき点は音程が良くなったこと。音域問わずキッチリ音程が取れる人、そういないのですが少なくとも今回の本番ではかなり良かったです。ピアノとぴったりハモれていました。

今後聴きたいのはやっぱりザ・王道曲でしょうか。次回すぐ、じゃなくてもいいですが、バロック・古典派あたりの少しテクニカルなもの、いいんじゃないでしょうか?

 

3.幻想小曲集より/シューマン

楽章抜粋したとはいえ、大曲でしたね!地力がきっちり及んでいて、とにかく技術的にも音楽的にも丁寧で整った演奏でした。前回まなんだ楽器の鳴らし方もしっかり定着し、レッスン再開したときと比べたら別人のようです。楽器の力もあるかな。

さて丁寧で整った演奏だったのは間違いなくいいところですが、技術的に不安なところで舌と指(それぞれがズレないのは立派ですが・・・)が遅く動きテンポが止まりそうになるクセがあるみたい。ピアニストは上手く合わせてくれていますが、音楽の流れ次第でかなりもったいなく聴こえますので、気を付けましょう。どこまで準備しても不安なところというのはあって、人によって不安なところで起きるクセって違うんですよね。君の場合は遅くなる、停滞する、というクセがあるみたい。ちなみに僕は転ぶクセがあります。クセを理解すれば対策が取れるので、今後に活かしていってほしい。

前回も今回ももりもり歌う曲でしたから、次は「歌わない曲」なんてどうですか?フランスものがだいたいそうなります。ディティーユ(ハイトーンはオクターブ下げてもいいですね)やケックランの3つの小品、指さらう気があるなら朗唱、ボザのシチリアーノとロンドなんかもいいかも。そこでまた一皮むける事でしょう!

 

4.演奏会用独奏曲/ピエルネ

表現にくせがあるこの曲、大変だったと思いますがよく理解し演奏できていました。昔と比べて本当に楽器がよく鳴るようになって表現幅が広がっていることもその理由でしょうか。技術は正義。

しかし楽器が鳴るようになるとどうしても「鳴りムラ」というものが生まれてきます。この曲は中低音域を気持ちよくならせる曲なのでそういったリードを選びがちですが・・・残念ながらテノール以上、アルト音域とでもいいましょうか、そのあたりがかなり細く聴こえていました。とくにレガート系の演奏時でしょうか。やはりファゴットの音はそこの音域が真骨頂。低音が気持ちよく鳴るリードで上の音域は確かにキツいので分かるのですが・・・やはりそこは技術。テクニックです、リードの欠点は絶対ありますから、そこを補うための技術を磨きましょう。鳴らす、というより響かせる、というイメージでしょうか・・・?

後半のリズムはとってもよかったですね。6拍子特有のユルい感じがよく表現できていました。きちんと体にリズムが入ってよかったです、しつこく言った甲斐がありました。

今回本当に、一皮も二皮も剥けたと思います。やっぱりレッスンを受けて楽器を練習して人前で吹く、というプロセスは大事ですね。次回も楽しみにしています!もうどんな難しい曲でも吹けるよ。

 

5.ディベルティメント/モーツァルト

完全アウェイな中参加ほんとうにありがとう。僕としては大歓迎ですが、参加する側はちょっとだけ嫌ですよねきっと。

レッスンでは形式やフレージング、バランスのことばっかりであんまり面白くなかったかな、と後から反省していたのですが、本番ここまできっちりまとめてくるとは・・・!フレージングが全員で言った通り取れるようになるのはいいリハーサルをしたから。バランスがここまでちゃんと取れるようになっているのは地力(技術)があるから。細かい粗はともかく、ここまできっちりモーツァルトをアンサンブルで吹けるクラリネットアンサンブルはそう多くはないはず。

楽章間はもっと空けましょう。スワブ通すなり汗でも拭くなり、もっと自由なものです。聴いている方も一息つきたいものですから。短い曲だけど、楽章でかなり雰囲気変わるのでもう少し間がほしかったかな。別に水が溜まってなくても汗かいてなくてもいいので何かして時間を空けるともっと聴きやすい演奏だったかな。

僕の持論ですが「いいアンサンブルはいい個人技の集合体」なので、これ以上の演奏を目指すならもうそれぞれが練習してレッスンに通うしかないでしょう。アンサンブルとしてはこれ以上の誉め言葉はないはず。

 

6.ファゴット協奏曲ホ短調/ヴィヴァルディ

勢いと熱(字、似てますね)のこもった素晴らしい演奏だったと思います。攻めの姿勢で演奏できるファゴット奏者、そう多くはないのでぜひそのままの姿勢でいてほしいなと思います。以前は攻めてばかりでしたが、今回の演奏は引くところしっかり引いて、メリハリのついた演奏になっていました。

音符や音型に惑わされず、ディレクションがはっきり見えてくるだけでここまでフレーズは変わって聴こえるので、今後もぜひ意識していってほしい。

はっきり言ってソリストとして欠点を挙げるようなところはほぼない演奏だったと思うのですが・・・我々は演奏を聴いてもらった結果、けっきょく呼ばれる先はオケがほとんどです。そういった意味で、「オケでよく響く音」をもう少し意識した演奏を心がけるといいでしょう。具体的に言うと特定の音の音程や鳴りムラの改善、他人に溶けやすい音色への意識、とかでしょうか。ちょっと文章で説明できる類のことではないので難しいですが・・・。

これは好みですが、僕はもっとハっとするようなピアニッシモフォルティッシモが何か所かだけでもあったほうがいいかなとも思いました。出てくる回数としてはほんの少しでいいんだけど、やっぱりメリハリが足りなく聴こえがちだから、ファゴットって。

 

7.コンチェルトシュトゥック/ベルヴァルド

伸び伸びとしたいい演奏でした。ピアノとのアンサンブルのうまさが抜群だったと思います。難しい曲をものともしないテクニックもさすがでした。

レッスンでも言ったけどやっぱりフレーズが途切れて聴こえるのが気になる。これは1回理解すると自分の演奏も他人の演奏もどんどん気になることだと思うので、飲み込むまでなかなか難しいと思うのですが、レッスンでもわりとそこに触れてきたので、ちょっと活かしきれてなかったと思いました。基本的に何もしなければフレーズは途切れて聴こえる。途切れることと収めることは違うから、意識的に収めてるところ以外はぜんぶ途切れてると言っても言い過ぎではないかもしれません。ほんのちょっとしたところなのですが・・・。

あとはやっぱり溶ける音色・音程感を身につけましょう。自分の音が客観的にどう思われているか、というのはきょうびレッスンでもなかなか言ってもらえないものではあるのですが・・・オケの仕事、特にフリーランスとしていつも違う人と一緒に演奏する場合それがやっぱりキモになってきます。もちろん今回のステージはソロですが、ファゴットの場合はそこはあんまり大きく変わらないと僕は思うので。もちろんハイトーン用リードなんて使ってないよね・・・?溶ける音から、いつでも飛ぶ音に変化できるのが理想ですね。今は「ただきっちりといい音で鳴っているだけ」という感じがしました。

技術的、音楽的には言うこと何もないです。とっても素晴らしい演奏だった。アマチュアの生徒たちにもきっといい刺激になったことでしょう。

 

8.タンゴ組曲/ピアソラ

ホームともいえるファゴットアンサンブルとのやまでのゲスト演奏でした。

きちんとゲストとして人を呼んだのは久しぶりですがやっぱりいいものですね。生徒とゲストも少しは交流できたようで何より。

 

9.想い出は銀の笛/三浦真理

完成度が高く、またバランスの良さが引き立ちました。またコロコロと場面の変わる曲ですがうまく対応し曲の魅力が生かされた演奏でした。ファゴットアンサンブルの最大の敵「バランス」という部分も全く気になりませんでした。出るところ引くところ、はっきり理解して演奏できていました。

3人でそれぞれキャリアや地力も少しずつ異なるはずなのに、それがいい意味で聞こえない演奏だったのも好感が持てました。どうしても力のある人がねじ伏せる演奏になってしまいがちなのですが・・・それぞれがきちんと(演奏で)リスペクトしあえる関係性、素晴らしいと思います。

いっぽうで表現としては控えめな部分も多かった。もちろん控えめだからこそバランスがよく心地よく聴こえる箇所もあったのですが・・・いわゆる聴き映え曲ですから、もっとあざとく極端に魅せるところがあってもよかったかな。それも個性といえばそれまでですが。

最後の曲が顕著ですが、「ポップスっぽく」するとき、音色の操作もあるといいでしょう。クラシックで映える音とはやっぱりちょっと違うんですよね。荒く吹くわけじゃないんだけど、リズムの取り方とか発音とかもう少し工夫があるとよかったかな。これも必須だとは思いませんが、選択肢の一つとして。

 

10.ロマンス/エルガー

MVPを挙げるならこの人。表現に必要な技術をフル稼働できていました。楽器を吹く頻度が減ったからなのかもしれないけど、以前よりビブラートが効果的になりました。正しく使えるとビブラートってやつは本当に効果的ですね。僕ももっとちゃんとみんなに教えようかな・・・

技術という意味ではとにかく音程が良かった。合っている、というよりはシーンにあった音程が取れている、という印象。きちんと操作できているのもそうですが、伴奏に対してきちんと溶けてハモる音を作れているのが印象的でした。

一方でしっとりとした曲である分見せどころは難しいけど、ハッとするようなフォルテやピアノがなかったのは少しもったいなかったかな。表現がないわけではないけど・・・強弱のみではなく、色んな意味で攻めの姿勢が見たかった。この曲で攻めるってのもまたやり方が難しいとは思いますが。

歴代一番いい演奏だったんじゃないかな。やっぱり技術は正義、いい練習と準備は正義ですね。

 

11.ファゴット協奏曲ロ短調/ヴィヴァルディ

この会の目的である「とにかくソロの本番作ってレッスン受けて練習すれば上手くなるに決まっている」を体現するような演奏でした。最初のレッスンとは別人のような演奏で、ここまでレベルアップしていると普段のオケや室内楽にもいい影響があるんじゃないでしょうか、いや、だいぶ基礎に立ち返ったレッスンをやったのでそれがなきゃ困るのですが・・・

バロック特有の和声の動きや通奏低音との関わり方なんかをじゅうぶんに楽しめている演奏でした。聴き手を楽しませるのはまず演奏する側が楽しむこと、その10%でも聴き手に伝わればそれはもう大名演だと僕は思うんですよね。よく楽しめていたし、きちんと伝わってきました。

とくに技術的音楽的に大きな課題があるわけではなさそうです。よく練習できていました。この曲に使う技術はわりと限定的なものなので、これからも色んな曲(ソロ曲じゃなくてエチュードでも!)に挑戦してレッスンに持ってきてくれればまだまだスルスルと上手になっていくでしょう。今後も楽しみにしています。

 

12.イナのための歌/スパーク

少ない準備期間でよく頑張りました。安定感が出てきたのはもちろん言うまでもなく、初心者の頃からフレーズのことをうるさくいってきた甲斐があり、非常に美しい旋律を演奏できていました。休みを数えたり曲を覚えたり、という力もかなり身に付いてきたと思います。

技術的な課題としてはアルト音域(上のGあたり)の伸びがもっと欲しいかな。中音域の多い曲だったからリードには頼れないでしょうから、技術で出すしかなかったと思うけど、明らかに上の音域でトラブルが多かったのが勿体なかった。きちんと指がいくこと、力任せではなくきちんと倍音を取りにいければもうちょっといい演奏になったかな。

伴奏にはよく乗れていましたが、今後はその上、ピアニストが気持ちよく弾けるような演奏を心がけて。具体的にはどんな和音の上に今の旋律があるのかを常に気にしながら演奏したり、自分のフレージングをピアノパートがどう彩っているかをきちんと意識して練習をしていくこと。ピアニストを困らせるようなことはもうなくなったけど、まだまだ先がありますよ!

 

13.幻想小曲集/シューマン

期待に違わぬ名演でした。レッスンでこだわった身体のクセに関してはどうだったか、残念ながらステージと客席だと分かりませんが・・・

1曲目、ちょっとテンポ感が停滞してしまったのは残念でした。このテンポ感できちんと歌えているので立派なのですが・・・ここまで停滞するとアゴーギグはつけられず、結果強弱や音色だけで表現することになるので少々大変でしたね。

2曲目はコントラストがついていて大変良かったと思います。全体通して言えますが特にこの曲に関して、ビブラートの使い方がとってもうまくなりましたね!とりあえずかけているのではなく、きちんと音楽の変化にビブラートを乗せることができています。

3曲目も勢いがあってよかった。アウフタクトで音楽が始まるとき、もっとうまく運べた気もします、要研究ですね。

アルト音域の伸びがちょっと弱く、ピアノにかき消される箇所が少なくなかったです。力任せではなく、響きを意識した楽器の鳴らし方を研究すればもう一化けするでしょう。

 

14.ファゴット大協奏曲より/フンメル

大曲を堂々と演奏できていました。最後に課題となった生き生きとした感じもよく出せていました。技術の傷はどうしても起きるのがこの曲ですね・・・単純なテクニックの連続程難しいものはないですね。

それから前々から相談されていたところでもありますが、やっぱり拍に対してほんの少しだけ後ろ向きに取るクセがありますね。それでいい場所もありますが、それでは困る場所もあります。きっちり拍通り、と思いすぎているので、自分で時間を進めていく感覚があるといいかもしれません。自分に悪いクセがあって、それに気付けるのであればもう逆に意識していくしかありません。とにかく音楽を前向きにとらえるクセをつけること。転んでいる、と言われるくらいで演奏してようやく人並みなのかもしれません。程度問題ですが・・・

技術的にははっきりいって言うところがほとんどありません。気になるとすればアルト音域の響きが弱いこと。力任せではなく響きを意識した音色を意識しましょう。他の人にもこれ言っているのでもしかしたら使用楽器の傾向かもしれませんね。ボーカルを変えても変わるかもしれません。

 

15.ファゴット協奏曲より/シュターミッツ

復帰戦、お疲れ様でした。ブランクを感じない堂々とした演奏でした。この曲でとにかく苦戦する様式に関して、ほとんど言うことのない演奏でした。音程も響きもよく、きちんとコントラストもついていて飽きのこない演奏でした。この曲で飽きがこないのはすごい!

ちょっとしたアーティキュレーションの取り方で印象が変わるので難しいので、Fdurの速い楽章らしいハツラツとした雰囲気がもっとあればよかった。間延びした印象が多く、もっとマルカートな部分が多くて良かったですね。アーティキュレーションというのは楽譜通りやっておしまい、ではなく、どう表情をつけるかなので、もう一歩こだわりが欲しかった。

様式キッチリできていましたが、やっぱりフレーズの収まりがあんまり感じられなかったですね、それも間延びして聴こえる要因かもしれません。

奏法なんかに関しては殆ど言うことはないので、今の伸び伸びした音でもっといい音楽ができるようこれからも頑張りましょう。

 

16.ファゴットソナタ/グリンカ

うーんもうひと伸び!という印象です。よく表現できていますが、いってほしいところでちょっとだけ物足りなかったり、引いてほしいところで好ましくないビブラートがあったり・・・。良くも悪くも変化に富んだ演奏だったのですが、表現として非常に惜しいところがたくさんありました。基本的な傾向が間違っていないので、もう少し細部にこだわった演奏を。1音1音、一小節一小節、1フレーズ1フレーズでディレクションがはっきりしている演奏を意識し、そのための鳴らしたり引いたりするテクニックを身につけること。技術のための音楽、音楽のための技術。難しいですね。

また非常にいい音色なんですが、変化がありませんでした。もっと汚い音があってもいいし、もっと薄い音が聞きたいところもあった。音色というのは色々なことで印象付けられますが、発音が強いところから変われないのでそれが一番の要因に思われます。優しいアタックをもっと自在に使えるようになりましょう。音楽のための技術!

技術的には音程が非常に良くなったと思います。「音程が良い」というのは非常にポジティブなことですが、もしかしたら「いつもいい音程で」という意識が先行し過ぎているのかも・・・?それも難しいところですね、良いものは良いのですが・・・

まだまだ歌う曲のための技術が欲しいところですね!

 

17.2つの小品/フランセ

名曲の名演でございました。とにかく繊細な音楽が上手なのでハマり役、という感じでした。楽譜の強弱があってないようなものなので終始ふわふわした音楽が続く前半も、もっと濃い音薄い音の操作があってもよかったかな。運指であったり音程感であったりで操作するのでしょうが、薄い音=小さい音、という風に演奏してしまうと今以上上手にはなれません。いい音はじゅうぶん出ていますから、「いい音」から脱却してもいいので色んな音を出す工夫を普段からしてみるといいかもしれませんね。

後半もとってもよかった。やりたいことがハッキリしていて1音1音がしっかり粒で聴こえてきました。しかし後半もやっぱりもっと音色で音楽の操作ができるとよかった。強い音弱い音の変化は大変見事なのですがそれ以外の変化があまりないのが勿体なかった。だから細かいミスがとっても気になってしまう・・・もうちょっとハイトーンが楽に吹けるリードの方がよかったかな。中低音に寄っていた気がします。オケ吹くようなリードで吹ける曲じゃないよ?

ともかく稀に見る名演でした。これ聞いてこの曲やりたくなった子たくさんいるんじゃないかな。発表会においてそれって一番嬉しいことですよね。

 

18.ファゴットソナタ/ヒンデミット

だいぶ久しぶりの参加でしたね。「ソナタ」なのでピアノとのアンサンブル!と口を酸っぱくして言っていますが、けっきょく合わせてるのを聴くのって本番だけなので人によっていろいろなのですが、君はピアノと一緒に吹く能力が非常に高い。かけあいがちゃんとやり取りになっているし、音程も楽器の音程ではなくピアノの音から取れているのでよく溶けます。たぶん無意識なんでしょうが、そのためピアノと吹くといつもとは違った吹きかたになってしまうこともあるでしょう。共演者に合わせて吹くことと自分の吹きたい音を吹くこと、いつだってバランスが難しいですね。もっと自分の吹きたい音を吹いてもぜんぜんピアニストに迷惑かけないと思いますよ。

昔からの課題だった表情や音色の変化もたくさんあって、聞き映えの難しいヒンデミットソナタがきちんといい曲に聴こえていました。まだまだ表現の入り口に立ったところだと思いますが、大きな進歩だと思います。ピアノだけどハッキリ(2楽章後半冒頭部とか)、フォルテだけど柔らかく(2楽章後半最後の方とか)、みたいなことができるようになるともっともっと楽器を吹くのが面白くなると思いますよ!

 

19.ファゴットソナタ/ファッシュ

大人になったな、という印象です。逸脱しない、ピアニストを困らせない、その上できっちりと自分のわがままで演奏する、ということは実はすごく難しいのですがその点を非常に高い水準でできるようになりましたね。今回のように人とアンサンブルやオケをやればもっともっと人気者ファゴット吹きになるでしょう。

また低音から高音までの鳴りムラがいい意味でなかったですね。高音が力任せでなく美しく鳴っていました。体の使い方がうまくなったのかな。

楽章ごとの表情変化がとにかくうまかった。第一印象からきっちり変わって聴こえるので音量というよりは音色や表情で変化があるので飽きない演奏になっていました。ファッシュは名曲ですがちょびっと飽きるのがね・・・でも今回はそんなことなかったと思います。

テクニカルは言うまでもなく上手でしたし指だけじゃなくきちんと鳴っていましたが、もっとそこに表情があれば素敵だったかな。ちょっとだけ作業に聴こえるところがあった。それは逸脱せずきちんとピアノに合っているからそう聴こえる部分もあるのでしょうが・・・

 

20.3つのロマンス/シューマン

オオトリ。見た目の100倍難しいこの曲でしたが、説得力のある良い演奏でした。音量だけではない変化に富んだ演奏は若い子たちにいい刺激になったと思います。あと音程よくなりましたね。高音域だらけのこの曲で音程がきちんと取れるならもうオケで個人的な音程に困ることなんてないかもしれません。

またピアニストのアンサンブルが完璧でした。元々合わせをたくさんやれない環境なのでピアニスト頼りなところもあるのですが、だからこそ個々の準備が光るところで。ただ漫然と聴くだけではなく、ピアノとのやり取りを感じる演奏ができていました、これは本当に素晴らしい事だと思います。

2楽章は省エネの意識もあったんでしょうがちょっとサラサラいきすぎかもしれませんね。アゴーギグは前に運ぶところもあれば時間を使うところもないと偏って聴こえてしまいます。難しいフレージングはよく理解して演奏できていたと思います。

この曲をこのクオリティで演奏できたこと、ぜひ誇りに思って頂きたいとですね。今後も期待しております。

 

 

おしまい!