ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第25回門下発表会でした。講評と次回のことと

こんにちは。ファゴット奏者のとのむぅです。恒例の発表会報告・講評記事です。

2022年11月19日に第25回門下発表会が行われました。

 

 

なんだかこじんまりとしてしまいました。今回は参加人数が少ない回となりました。

その分なのか何なのか、曲と演奏内容の濃い回でした。謎の偏りもあり、シューマンバロックだらけでした。なんでやねん。

少ない分スケジュールにもゆとりがあり、奏者同士やお客様との交流時間も多かったと思いますがどうでしょうか。

 

会場のゆとりもあったので、講師演奏、という名目でミニコンサートもやりました。モーツァルトの協奏曲、カリヴォダのサロン風小品を演奏し、コントラファゴットでバッハの無伴奏も演奏しました。コントラファゴットでソロ、ありですね・・・ちょっとレパートリー研究してみましょうか。

 

生徒たちに関しては始めましてのメンバーもおらず、非常にレベルの高い回になりました。絶対評価でうまい集団である必要はないのですが・・・今回は非常に上手かったですね。それぞれが毎回きちんとレベルアップした結果なので当然と言えば当然ですね。教えている僕も鼻が高いです。

 

 

この会はとにかく人前で自分の音を聴いてもらう。そのために練習してレッスンも受ければ、最短距離で上手くなる!というのがコンセプトの発表会です。知り合いがいなくても終演する頃には何人もファゴット吹きの仲間ができているはず・・・!ファゴットを吹いている方か、アンサンブル団体であれば僕のレッスンを受けどなたでもご参加頂けます。

次回発表会は2023年3月12日(日)@立川某所です。

参加費(レッスン代1回分、ピアニスト謝礼、会場代など込み)

ファゴットソロ(社会人)15000円

ファゴットソロ(学生)10000円

アンサンブル参加 ひとり6000円(人数などによって変動あり)

始めましての方も歓迎します。エントリーお待ちしております!〆切はレッスンや準備が間に合うのであれば特にありません。下記フォームからご連絡ください。

 

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さて、これからは恒例の講評記事となります。

演奏参加者以外の方には意味のない記事となりますので読み飛ばし推奨です。

 

1.3つのロマンス/シューマン

最後のレッスンがオンラインということもあり僕もご自身も不安だったと思いますが、堂々と演奏できていました。懸念していた伴奏との噛み合い方も悪くなく、きちんとシューマンという作曲家に向き合えていたと思います。

フレーズの取り方もよくできていました。このフレーズ取りというものがこの曲は本当に難しく、また色々な要素で理想と現実で悩むことが多いのですがよく折り合いをつけ演奏できていました。この手の曲の「練習」ってなかなか難しいのですが、取組と初回レッスンが早かったのもありきちんと準備できていました。

気になるのは鳴りと音程でしょうか。出るところはよく出ていますが、やや安定感に欠け、発音・伸ばし共に雑なところが多いのが気になりました。以外にもテクニックに向き合うことの多い曲だったのでそこに気がいかないのは仕方のないことですが・・・少し勿体なかったかな。

今回とは逆に、パッと見難しそうな曲をゆっくりじっくり挑む方が今後はレベルアップが見込めるかもしれません。ドゥビエンヌとかブルドーとか、比較的古いフランスものなんか美しい旋律もあるのでいいかもしれません。バロック物も手かな。

 

2.ファゴット協奏曲ホ短調/ヴィヴァルディ

圧巻の演奏でした。フレーズの取り方、入り方と収め方もよく理解して演奏できていました。繊細な表現が本当に上手になったなと思います、これ毎回言っている気もしますが毎回レベルアップしています、すごいことです。ダイナミクスのレンジも広く、表現的にも飽きがこない演奏ができていました。

いわゆる連符を演奏するとき、体が固まっているのか口がしまっているのかリードを無理矢理鳴らしてしまっているのか、原因は本番の演奏だけでは特定できませんでしたが、固く無機質な音が出てしまう傾向にあるのが勿体なかったかな。指や舌を忙しく動かしていても和音の動きは一定ですから、もう少し流れでとらえられるとよかった。

また遅い楽章に関してはもっともっとアゴーギグをつけて。ピアニストに乗っかることも大事ですが、少し強引でもこちらの音楽に巻き込むくらいのことをすると、初めて室内楽ピアニストは本領を発揮してくれますよ!

フォルテの音色が硬いのもちょっと気になった。力任せではなく、もっと空間を意識できるといいですね。なるべく広いところで、部屋いっぱいに自分の音が響くような感覚を身につけるといいでしょう。

それでも難曲にして大曲をハイクオリティで演奏できていました。次回も楽しみにしてます!

 

3.ファゴットソナタヘ短調より/テレマン

補習だったか居残りだったかしりませんが、2回のレッスンの成果はキッチリでていて素晴らしかったと思います。気ままに旋律を気持ちよく歌う、ということに関して、僕の生徒たちで君の右に出るものはなかなかいませんが、それとクラシック音楽というものの相性が非常に難しいですね。僕もたぶん本来同タイプですので、気持ちはよくわかります。

今回のような曲への理解を自分の頭でできるようになると、ファゴットの演奏は今よりずーっと面白くなるし、練習時間も少なく済むかもしれません。

技術的、音楽的に、言うことはあまりありません。非常に高水準の演奏だったと思います。通奏低音(ここで言うとピアノの左手パート)をもっと意識した演奏ができるとよかったかな。ピアノはよく聴いているけど、全体を聴くのではなくとにかく通奏低音パートを。すべての流れはそのパートが握っています。時間が足りなかったから仕方ないけど、全楽章聴きたかったですね。

 

4.3つの小品/ボザ

小品という言葉の意味をちゃんと調べてみるといいかもしれません。ライトで、さらっと終わってしまう曲の事を言いますが、なんだか深刻な大曲に取り組んでいるような雰囲気があったのが惜しかったかな。具体的にどうすればいいのかは人によって違う気もしますが・・・簡単そうに、複雑なことなんて何一つありませんよ、みたいな顔ができると違ったかもね。

しっかり取り組んできているので、逆に和音の流れやアンサンブルの動きなんかは非常によく合っていました。レッスンのとき不安定だったところも本番うまくいっていてよかったと思います。

技術的に一人一人に言うこともそんなにないかな。各々よく考えて演奏しているし、今思っていることをそのまま続けていけばきちんとレベルアップできると思います。フルートには優雅さ、オーボエには華やかさ、クラリネットには安定感、ファゴットには積極性があれば言うことなし、というところでしょうか。

速い楽章はもっと軽快にできるとよかったかな。多少危ないところがあってもその方が聴いている印象はよかったはず。次取り組むときは意識してみて。

 

5.無伴奏組曲第2番より/J.S.バッハ

さすが君、というか、ここまで長く僕のレッスンを受けてきた成果とも言えるでしょうし、そのための君の地力とも言えるし。これほどよく理解し表現できているバッハをどこのアマチュア奏者ができるでしょうか・・・?自分の生徒をここまで褒めるのもどうかと思いますが、本当にすごいことです。細かいミスなんかまるで気にならないくらいいい流れが作れていました。ブレスの取り方も良かったと思います。

ここは全体のバランス次第ですが、速くなる方のアゴーギグがもっとあるとよりよかったかな。遅くする方はうまいのですが逆がないので少し間延びした印象になってしまうところもありました。強弱の幅があると良いように、速い遅いの幅の楽章によってはもっとあると素敵です。関連して、ブレス後の発音に非常に気を使えていてよいのですが、副作用として入りが丁寧すぎて時間がかかってしまうので停滞してしまう傾向にあるのも勿体なかったかな。

速い楽章が最後だけだったので、もっと快活だと良かったかな。発音なのかテンポなのかは人によってやり方は違ってきますが、何かしらもっと大きな変化があるとよかった。

もう無伴奏バッハの魅力には取りつかれたと思うので、たまにでいいのでまた挑戦してみて!

 

6.幻想小曲集/シューマン

そこに至る経緯はともかく、本番の結果としてよく考えられた演奏になっていたと思います。演奏に理性が伴っていて、以前までの演奏とはちょっと違った印象になっていてとてもよかったと思います。ピアニストとのアンサンブルも抜群でした。

スラーの切れ目で息が入らなくなるクセがあるようです。そもそもこの曲のスラーは弦楽器仕様のものでフレーズとは関係ないことが多いのでちょっともったいないことになっていたかな。アーティキュレーションに振り回されないように。大事な改善点だと思います。

演奏者として非常に大人になった、と、本番に関しては思いましたのでこの方向性がいいんじゃないかなと僕は思います。その上で自分のやりたいこと、曲に対する想いなんかがきちんと乗るようになれば先輩たちのような演奏に近づくんじゃないかな、と思いますよ。

それから少し音程が気になるかな。全部高いとか全部低い、ではなく、ピアノとあっていない箇所が多く耳につきました。運指や息の入れ方も大事ですが、音程をきちっと取らないとまずい音というのは箇所箇所にありますので、よく見直してみて。

 

7.ファゴット協奏曲より/ウェーバー

王道曲に挑戦、という覚悟がきっちり感じられる演奏だったと思います。見た目以上に難しい曲ですが、それを感じさせない状態まで仕上げられていました。

レッスンでもしばしば指摘していますが、ちょっと体が動きすぎかな・・・体は自然と動いていいですが、動かないと吹けない状態は必ず技術的なエラーを呼びます。また微々たるものではありますが、動いてしまうと音の出所も動きますので、聴いている側に少なからず影響を与えてしまいます。もしかしたら座って静止した状態の練習が効果的かもしれません、お試しください。

3楽章のめまぐるしい音楽の変化はなんとか形になっていました。ギリギリだったなーという印象もありますが、音にきちんと現れているのでよく練習したのだと思います。この曲で人をふるわせるには、まだあと1歩・・・いや3歩くらいあるかな、というところ。先は長いですね。3楽章はもしかしたら暗譜すると違ったかも。

強弱はまだまだ課題が残ります。大きな音というより豊かな音。ふだん狭い場所で吹いているなら広い場所へ。広い場所で、部屋の端まで自分の音が響いているか、確認しながら演奏するようにしてみましょう。

 

8.民謡風小品より/シューマン

ブレス後の発音、もっと気を遣いましょう。何事も第一印象が全てです。基礎だ基礎だと言うのは簡単ですが、今回の演奏はブレス後に出す音への神経の使い方がほとんどすべてイマイチでしたので、これはもう習慣の問題でしょう。カラオケだろうと自室だろうと、どこかで誰かが聴いているような意識を持つと悪い習慣はぬけていきますので考えるようにしてみてください。

曲自体の完成度は全出演者で一番でしたね、曲に対するキャリアもありますが準備の仕方が本当に上手いなと思います。各所にこだわりも感じます。こだわりが音楽を伴っているとなおよいのですが・・・!(ハイトーン回りとか。短く吹いたら出ないのは分かるけど・・・)

それから以前と比べて音程がよくなったなと思いました。リードの質もあるでしょうが、音程も先ほど申し上げた「習慣」ですので、音程のいいリードを吹いていれば良くなっていくものです。

音程の良さ、曲への理解度は素晴らしかったので、シーンによって音色の使い分けができるようになるといいですね!音色ってやつは、微妙な音程の操作、発音の仕方、音量の操作などなどいろいろな条件で決まりますが、まずはイメージでしょうか。目の前の曲をどんな音で吹きたいか。これは演奏者の原点ともいえるところでしょうから、もっと大切にしましょう!