ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第33回門下発表会でした。色々再開していきます

こんにちは。台風過ぎ去ってちょっと秋っぽくなってきたかな?

過ぎ去ったのは台風じゃなくて猛暑という災害でしょうか。

僕も個人的に生活環境が変わって、少しずつ慣れてきました。みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 

さて、少し前の話になってしまいましたが第33回門下発表会でした。

 

 

大曲揃い、というよりは名曲揃いなプログラム。

それぞれ技術的な課題を持ちながら作品に挑んできました。

今回使った会場が立川にあるピアノサロンなのですが、ファゴットとピアノで演奏するには非常にちょうどよく、みんな気持ちよく演奏している印象でした。やっぱり小サロンみたいなところとファゴットはよく合いますね!

実は僕はここでちゃんと演奏したことがないので、ミニコンサートなにか計画してみようかな・・・?

 

ところで私事ではあるのですが、生活環境が今年から変わっています。

その関係で、少し遠慮がちだったリード販売を本腰いれて再開していこうと思っています。

まずは在庫の確保と、リードに困っている方が目に留まる工夫を色々と考えておりますので続報をお待ちください。

レッスンに来た方には格安で販売もしておりますのでご興味がありましたら合わせてご検討くださいね。

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さて、次回発表会のお知らせです。うちの門下発表会はファゴットソロもしくはアンサンブルでのエントリーでどなたでもご参加頂けます。

参加条件としては僕のレッスンを1回以上受けること。普段レッスンを受けていない方はレッスン回数をご相談頂けますし、普段他の先生にならっている方でも、先生の許可を取った上でご参加頂けます(かならず許可をお取りください!)

年3回開催しておりますのでご自身の都合の良い時期をお選びできるのも最大の特徴化と思います。ぜひご検討ください。

 

第34回とのむら門下発表会

11月24日(月祝)午後開演

都内23区内某所

参加費(会場代、プロ伴奏ピアニスト謝礼、レッスン代1回込み)

ファゴットソロ(社会人)15000円

ファゴットソロ(学生)10000円

アンサンブル おひとり6000円(人数などで多少増減する場合があります)

ご興味ある方は下記フォームからご連絡ください。レッスンのみや選曲のご相談もお待ちしております。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

 

さて、ここからは恒例の演奏講評記事となります。

演奏にご参加頂いた方以外にはよくわからない内容になりますこと、ご了承ください。

 

 

1.ロマンス/エルガー

名曲への挑戦だったと思います。(実は)リズムが難解なこの曲、それをレガートで表現するのは本当に難しかったと思いますが、準備の成果かばっちり表現できていて良かったと思います。

基本的に音程も非常によく、心地よく聴ける演奏になっていました。会場も良かったですしいい音がよく響いていました。

元々持っている優しい発音と曲の相性がよくうまくハマっていたのですがその一方で、アーティキュレーションが曖昧な部分が多く、すこし日本的というかお経的というか、そういった印象も見受けられました。舌はついているのでしょうが区切りが見えない、ということが多かったようです。やはり言語の違いがありますので、柔らかくなりすぎない工夫は必要だと思います。

アーティキュレーションにも起因しますがすこし迫力不足も否めないでしょう。聴いている人が「あ、ここが盛り上がってるんだな!」と認識できる箇所は絶対に必要ですし、それでこそ静かなところが映えるというものです。空間いっぱい楽器を鳴らす癖をつけましょう。狭い部屋で心地よく聴こえる程度の鳴りでは物足りないことでしょう。

アゴーギグについてはもう少し研究・経験していきましょう!

 

2.ファゴット協奏曲より第3楽章/ウェーバー

テンポ感は「ロンド」と思えばありといえばありのテンポ、でしょうか。計画的で良かったと思います。このくらいのテンポ感で綺麗に指と舌が動くようになれば、この先早くしていくのはそこまで難しくはないはずです。

ただ、テンポ感はともかくレッジェーロ感をもっと出して欲しかったというのが全体的な印象です。ファゴットの魅力の一つでもありますしウェーバーもそれを想定してこの作品を書いたのではないでしょうか。

アーティキュレーションの表現は非常に良かったと思います。フレーズの性格がはっきり出ていて、変化に富んだ演奏になっていました。むろん強弱の変化は足りないと言えば足りないのですが・・・わりと協奏曲は大きく吹く場所だらけになるので、ある意味このくらいがリアリティのある演奏と言えるかもしれません。

低音域の音程はもう少し頑張りましょう。もちろん低音が綺麗に音程が取れるリードでこの曲の演奏は困難でしょうから、今のセッティングだと完全に音程が高いということを頭に入れて演奏する必要があります。低音の音程の高さは耳と感覚が慣れてしまいがちなので、オーケストラや室内楽でも注意が必要です。

今回の演奏で一番素晴らしかったのは、はっきり言えば遅いと言えるこのテンポ感できちんとこの作品を楽しんで演奏できていた(ように見えた)ことだと思います。もちろん綺麗に音が並ばなければ楽しくは吹けませんし、それ以上に音の羅列を楽しめる演奏になっていたこと、本当に素晴らしいことだと思います!

 

3.ファゴットソナタヘ短調/テレマン

全体的によくまとまった演奏だったと思います。「まとまった」というのはいい意味で、です。演奏表現を大きくしようとすると散らかった演奏になるのが前から気になっていたのですが、今回そんなことはなく、非常に高水準のテレマンだったと思います。もちろん技術的にある程度余裕があることも要因でしょう。いい傾向ですね。

あまりレッスンで多くは触れられませんでしたが、今以上に通奏低音との音楽的な関わりへの意識が欲しかった。むろん現代やロマン派でもそうですが、この時代はそれ以上にソロパートと通奏低音パートの音楽的な関わりが強いです。「音楽的に対等」なんて言い方をしますから、ソロパートを軸に音楽をなぞると半分しか理解できません。通奏低音パートへの意識はあったと思いますが、まだ不十分に思えます。

「まとまっていた」ことの代償でしょうが、無欲な演奏に感じました。良くも悪くも、ですが・・・。「人と違ったことをやってやろう」と思う必要は全くありませんが、フレージングへのこだわりだったり、ハッとする強音や弱音が少しあったりするとメリハリはつくことでしょう。CDのような演奏、というイメージだとわかりやすいでしょうか。

全体的に音程が良かったと思います。少しぶら下がる傾向→上げようとしすぎて高くなる傾向があったのですが、今回は良かったと思います。

 

4.ソナチネ/タンスマン

やはり難曲。ある種シンプルな難曲として鎮座する名作に真正面から挑戦し乗り越えてきたこと、素直にすごいなと思います。そんなに時間をかけられないでしょうに・・・。

目標が「コンサート」ですから、価値のある演奏という意味ではもう一回りのテンポアップは必須でしょう。また長いフレージングの中でアーティキュレーションを表現していくこと、もっと突き詰めていってほしいと思います。ハッとするアクセントやスタカート、強弱の変化はやはり人の心を動かす演奏には必要不可欠です。

今回の演奏はある種の優等生であり模範的ではあったのですが、あまり「模範的なタンスマン」というものを聴衆は求めない事でしょう。今回のような演奏ができることは大変すばらしいですし成長だと思うので、もう一歩踏み込んだ演奏を目指しましょう。

1楽章から2楽章ですが、完全なアタッカです。1楽章最後のEから2楽章頭の和音に解決がありますので、1楽章終わりに見た目を含めて「終わった感」を出さないようにしましょう。

中音域と低音域の音程感も少し気になりました。基本的に高めに来てしまうようです。特に長い音のとき和音の中でどんな存在であるのか、という意識はオーケストラや室内楽でも必要不可欠でしょう。

安定感のある演奏から意欲的な演奏を目指すことは非常に苦しいものですが、もう少し頑張ってみてください。2楽章頭と最後は同じようで強弱が少し違うといいかもしれません。無理のない範囲で、ですが・・・。

3楽章のE連打は発音がクリアにできるように(できるリードを用意)しましょう。ハイEは文句なし。ただハイEが文句なしで出ることは嬉しいですが、お客様にはほとんど伝わらないものです。ハイEは6割くらいだけど他がうまくいくリードを使う、くらいの意識付けでいいでしょう。

 

5.ロマンス/エルガー

変化に富んだ演奏であり、かつ落ち着きのある演奏だったと思います。問題だったリズムもおおよそ解決しており、強弱の表現もよく出来ていて非常にいい演奏でした。聴衆目線で「聴きどころ」がはっきりとわかる演奏ができており、ある種の難曲であるこの曲を非常によく捉えることができています。

楽器の鳴らし方が悪い意味でオケ中のようだったのは技術的に少し気になりました。どうしても練習環境や合奏で楽器に触る環境の問題でそうなってしまっていくのですが・・・一人で個室にこもって練習するとき、その空間でどのくらい鳴っていればいいのか、という意識付けが必要だと思います。3畳や5畳の部屋でちょうどいい鳴りで身体が慣れてしまわないこと。広い空間で吹くときのイメージを落とし込みましょう。

僕の4人目の師匠の受け売りですが「本番会場の空間ごと自宅(練習場所)に持ってくるイメージ」を持つと良いと思います。

フレージングが少し短絡的だったり、ちょっとしたアゴーギグがやりすぎたり軽すぎたり、というのは少し傾向としてありました。自分の演奏を客観視できること、そして客観視したときのための感性を養っていきましょう。

 

6.ファゴットソナタ/ハールストン

各種指摘が直前だったので不安定になった個所については仕方ないと思いますので、ご自身に落とし込めるといいですね。わりと技術的な指摘が多かったと思うので他の曲にも活きるでしょう。

フレーズ開始のスタカート(1楽章のアウフタクトがわかりやすいでしょうか)が短く小さすぎるのでほとんど聴こえません。基本的に広い空間だと短い音というのは小さく聴こえるものですので意識的に調整するクセをつけましょう。

フレーズの捉え方として、フレーズの「結論」だけが頭でっかちに大きく、それに至る「経緯」が見えてこない事が多いです。具体的に言うとクレッシェンドが見えず到達点のフォルテだけが際立ってしまいがち、ということです。どちらかというと経緯のほうが大切だとは思いませんか?

リード、いいなと思いました。楽器とリードがうまく嚙み合っているのでよく響いていました。やはり自分で作ったリード(が良い)と言うのは良いものなんでしょうね。

抒情的な部分はもっと欲が見えてよかったと思います。ちょっと抑圧されすぎている印象です。今のリードと音色ならもっと攻めた演奏をしても聴けるでしょう。

全体を通して、フレーズ終わりへの意識が足りないです。捨てるような音の切りがくせになっていますので、もっと大切に終わりを迎える習慣づけをしましょう。

第32回門下発表会でした。若い人が減ってきた!?

こんにちは。ファゴット奏者の殿村和也です。

少し本番から日が空いてしまいましたが第32回門下発表会が終了しました

 

男性陣が美白・・・っ!?ではなく白飛びしてしまいました。難しいですね、写真。

非常にレベルと精度が高く、平均的に優等生な演奏の多い回だったな~と思っております。

あとタイトルにもありますが学生さんがほぼいません。これは寂しいですねぇ。

大昔の回で、休憩時間中にレポートを書いていた子がいたのを思い出します。

 

人が減ろうと老人だらけになろうと僕がこの仕事をやっている限り続けていくつもりですのでご興味ある方はどうぞ。

次回のご案内です。

 

第33回殿村門下発表会(夏のひとときコンサート)

2025年7月27日(日)午後以降開演

立川市某所にて

・参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン代1回分込み)

ファゴットソロ(社会人)15000円

ファゴットソロ(学生)10000円

アンサンブルお1人6000円(人数によって多少増減します)

 

ファゴット吹きの方なら僕のレッスンを1回以上(1回分は参加費に含まれています)受けてくださればどなたでもご参加頂けます。

アンサンブル団体のエントリーも同様です。ファゴットを含まなくても構いません。

エントリーは下記フォームからどうぞ。〆切は特に設けておりませんが、ピアニストへのご依頼やご準備もあると思いますので6月末くらいまでとさせて頂いております。

お待ちしております~!

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

 

さて、ここからは第32回に参加した方への講評記事となります。

演奏を聴かずに講評だけ読む方もけっこういらっしゃるようで・・・。はてさて。

 

 

1.演奏会用独奏曲/ピエルネ

ピエルネ作品の軽さ、オシャレさなどの魅力たっぷりの演奏となっておりました。少し前からの演奏の印象でもあるのですが、発音や音程などにおいて非常に安定しており、いいリードを吹いて(つくられて)いるようですね!

いわゆる「やりたいこと」もしっかり表現できており、演奏から意思を感じました。作品の傾向や尺から考えても「やってやるぞーーー!!」みたいな演奏よりこのくらい脱力の効いた演奏の方がやっぱりこの曲は映えますね!

安定感がある一方で、発音や音色が一辺倒になりがち。強弱がないわけでもなくアゴーギグもいい感じに効いているのですが濃淡がない。フレーズ内のディレクションがあまり感じられないので、良くも悪くも「ちょっと眠い」演奏になる傾向にあります。

安定感のない演奏は悪い意味で眠れない演奏になりますが・・・ここまで安定してきたならもっと攻めていいし、こだわりはもっと強くて良かったと思いました。

ひとフレーズ内におさめるところ、向かうところ、決めるところフワッとするところなど決めて、そのためのテクニックを練習すると演奏の幅が広がると思いますので試してみましょう。目の前で生の人間が演奏する魅力がそこにあるはず。

 

2.ファゴット協奏曲より第2楽章/ウェーバー

2楽章のみでステージに立つの、思った以上のプレッシャーではなかったでしょうか。

大変優美な演奏でした。一瞬線が細いかな?と思っていましたが会場を上手く響かせることができていました。やはり箱は大切ですね。

フレーズの入り方や納め方にこだわりを感じるので細かなミスが全然気になりませんでした。大変すばらしいと思います。

途中、分かりやすい短調がありますね。もう少し感情的でよかったと思います。それ含めて「優美」という印象。良くも悪くも、ですが。音色があまり変わらないのであれば発音とダイナミクスの幅を変化をつけてみるといいでしょう。

オケと決めどころももう少し意識できるとよかったでしょうか。やっぱりオーケストラありきの協奏曲。普段オケ側にいる我々ですから、なおさら感じてほしかったところです。

カデンツァは薄味でしたが、そのまま3楽章が聴きたい!と思わせる出来でした。2で終わるならもう少し派手でもよかったかもしれませんね。3楽章もいつか!

 

3.ファゴット協奏曲イ短調/ヴィヴァルディ

いぶし銀な魅力のこの曲の魅力をしっかり引き出した演奏だったと思います。ホ短調のような派手さはなく、もう一つのイ短調のような軽快さもないこの曲ですがいいんですよね。演奏したご本人が一番よく分かっていることでしょう。

フレーズの運びにきちんとドラマがあって聴いていて飽きない演奏になっていました。ただフレーズが目的地に向かうときはとてもよく考えられているのですが、おさめるところに神経を使えてない箇所がときおり見られ、そこがとても惜しかったと思います。どう収まるのか、それとも次に向かうのか。細部にまで血液を巡らせた演奏を心がけてみてください。

ダイナミクスの変化にも富んでいたのですが、もっと薄い音と濃い音の変化がつくと良かったですね。具体的にはちょっと強すぎる音やちょっと弱すぎる音をたまにでいいので用いるとメリハリがついて良いと思いました。お試しください。

技術的に言うことはほとんとないです。このクオリティで演奏できればバロック作品の魅力をきちんと伝えられる奏者でいられると思います!

 

4.ファゴットソナタホ短調/テレマン

こだわりを感じる演奏でした。会場の響きと相まって吹いてて気持ちよかったんじゃないかな?聴いている側も非常に心地よい演奏となっていました。

テンポ感もよく楽章ごとのメリハリがついていてよかったですね!そのテンポで吹くの地味に難しいと思うのでよくやりました。いい練習ができていたんだなと思います。

(大した高さでもないのですが)ハイトーンの時に締まりきった音がしてしまうのが惜しいところです。リードが出にくいのなら仕方ありませんが、そもそもそこら辺が出にくい低音寄りのリードをこの曲では吹くべきではないので・・・ファルセットのような音を出せるように練習・リード探しをしてみましょう。

気になったのはフレーズの終わり。やっぱり音の切れ目に神経を使えていなくて、今回のようなよく響く会場だとより顕著に聴こえます。普段の練習環境にもよるのですが、静かな場所で自分のフレーズ終わりの音に気を使った練習を心がけましょう。ロングトーンやスケールでも気にかけて練習することは可能だと思うので習慣づけてみて。

 

5.演奏会用独奏曲/ルネ

和声感のある演奏だと思いました。ピアノが弾ける人特有のものかもしれません、非常に魅力的でした。

これは性格かもしれませんが、聴いてる人が「おっ」と思うような強い音や弱い音がたまにでいいので使えると、もっと人の心をつかめる演奏になると思います。

上記と近いですが、少し手元で音が鳴っている印象があります。あまり多くない機会かもしれませんが広い会場(オーケストラ本番の日でリハーサル終了後、誰もいないステージとかオススメです)で自分のいいと思う音を吹いてみて会場に響いた音を自分で聴いてみるといいですね。どんな音が会場に長く響いてくれるのか、そんな意識を持つといいかもしません。楽器の性能が大きいのかもしれませんが・・・奏者としてもできることはあるはず。

身体の使い方も少し気になりました。腰から下が一切動かないのは健全な状態とは言えません。テンポに合わせて縦に動くのは絶対に悪影響が出ますが、もう少し重心を下げて全身を使うイメージを持つと良いと思います。

 

6.演奏会用独奏曲/ピエルネ

ダイナミクスの使い方が上手い演奏だったと思います。ピアノ伴奏とのバランス感覚も良く、いいアンサンブルができていました。

直立不動なのはやっぱり気になりますね。動けばいいというものではありませんし、なんなら体を動かすことはデメリットの方が多いのですが・・・まるで座ってオーケストラの中で演奏しているかのような動きなのは気になります。足の踏み場なんて変えてもいいのですから、もう少し全身を使うイメージを持つと豊かに楽器が響いてくれるようになります。

技術的にはほとんど言うことはないです。足りないのはアゴーギグ。よく言えばテンポとリズムに正確なのですが・・・聴いていてワクワク感が足りません。特にピアノ伴奏がいなくなるところで完全インテンポなところが多すぎる。少し速くなるのはいいのですがその分時間を使う場所もないと人の記憶には残ってくれません。次ソロ曲に挑戦するときはぜひ長いカデンツァのある曲か、アゴーギグがたくさん含まれている曲を!

ボザの作品各種、モーツァルトの協奏曲、シューマン作品各種、なんかおすすめです。

 

7.ファゴットソナタホ短調/テレマン

念願かなっての出演と曲、よかったですね。合計したらけっこうな時間をかけただけあって曲への理解とイメージはよくできていたと思います。

細かいミスが多いのは確かですが聴いている側はそこまで気にならない印象でした。ミスがあっても音楽が流れが止まっていないのはとってもいいことだと思います。ミスの原因は・・・いわゆる基礎力というやつでしょう。基礎のレッスン、いつでもやるから受けにおいで。

悪い意味で優等生な演奏を目指している印象があります。音楽の流れは自然でいいのですが、フレーズの頂点の設定が甘く、音楽を点でとらえている傾向にあります。頂点が甘いので収まることもできない、という感じかな。音楽は「時間の芸術」なんて呼び名があるもの。常に時間は流れているので先へ先へ考えられるような演奏ができるようになりましょう。

とはいえ間違いなく上達しているのも確か。じっくり楽器を練習する時間は減っていくかもしれませんが、だからこそ考えながら練習できるようになっていくはず。

 

8.ファンタジー/ボザ

圧巻。フレーズの端々にこだわりを感じる演奏でした。昔から指摘してきた欠点である効率の悪いビブラートも減ってきました。特別意識がないなら、歳とって無駄なことする体力がなくなってきた、というのもあると思います。その気持ちよくわかります。

低音の豊かさが際立っていました、会場との相性もあるかな?低音が豊かだとピアノとよくハモるんですよね。ある程度ハイトーンへの意識のあるリードでこれは素晴らしいこと。

前半もったいなかったのは無音の時間の使い方。練習がシステマチックになると陥ることが多いんだけど、間の使い方というのは今回みたいな曲をやるととっても大事になってきます。フレーズをおさめる、ブレスをする、発音をする。この3つ以外にも気を遣えるともっと素晴らしい演奏だったと思います。

後半はもう少し軽快だとよかったかな・・・。テンポの影響もありますが、今回くらいのテンポ感でも軽快さは出せたと思います。オシャレさというか、軽さというか、皮肉じみたかんじ、というか。わかるかな。

毎回楽しませてもらってます。次回も楽しみにしてます!

第31回門下発表会の講評と、第30回のご報告。次回のことも。

こんにちは。記事の更新がとっても久しぶりになってしまいました。

門下発表会の第30回として、記念回を開催しました。

チラシを作り集客管理をし、またレッスン回数の最低ラインも増やし当日しっかりリハーサルも行って挑みました。


当日は100名以上のお客様にご来場いただき、盛大に開催することができました。

またチラシに名前が載ったり集客をきちんとしたりと、生徒たちも特別な思いで挑めていたようです。

またゲストには僕の師である太田茂先生をお招きし演奏して頂きました。生徒たちもたくさん刺激を受けたようです・・・!

普段より遥かに大変でしたが・・・節目としては面白いと思いましたので第40回も同じように開催しようと思っています。ご期待ください。

 

そして先日11月23日、第31回門下発表会が開催されました。

30回記念回の反動か人数がいつもより少なかったのですが、密度の濃い時間にはなりました。

久しぶりの楽器店開催ということで試奏会も開催し、おすすめの楽器やボーカルの試奏も行いました。

 

コンセプトは「上達」であること。

間違いなく僕の生徒たちはみるみる上達しており、成果をあげていく一方で、楽器が上手くなる、ということは今までの環境に満足できなくなる、ということでもあるのかもしれません。

僕は生徒たちを教えていてある種のジレンマを感じます。

この音で吹くと、もしかしたら今のオケでは浮くかもしれない。でも今の自分の感覚を信じて。

そう言ってあげることしかできないの、なかなか歯がゆいですね。

 

さて、第32回門下発表会のご案内です。

ファゴット吹きならどなたでもご参加頂けます。またアンサンブルのエントリーでしたらファゴット以外の楽器でも歓迎します。ファゴットを含まない編成でも構いません。

いずれも1回以上僕のレッスンを受けて頂きます(参加費に1回分のレッスン代を含んでおります)

選曲のことももちろん相談に乗りますし、基礎のレッスンも並行して行うことも可能ですのでエントリーお待ちしております。下記詳細です。

春のひとときコンサート(第32回とのむら門下発表会)

2025年3月29日(土)お昼ごろ開演(終演時間未定)

ミュージックスクール「ダ・カーポ」地下(新大久保駅より徒歩3分)

参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン代1回分込み)

ファゴットソロ(社会人):15000円

ファゴットソロ(学生):10000円

アンサンブル:おひとり6000円程度(人数などにより多少の変動あり)

エントリーは直接ご連絡頂くか、下記フォームからお申込みください。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

ご連絡お待ちしております♪

 

ここからは第31回門下発表会参加者に向けた講評記事となっております。

 

1.ファゴットソナタ/グリンカ
レッスンで色々こねくりまわした成果か、非常に魅力的な演奏になっていたと思います。
フレーズの歌い方やアゴーギグの使い方も効果的でした。
音程感も良くはなっていますがもう一息。ご自身の楽器がいい音で鳴る音程を見つけるように練習をしてみるといいと思います。
自分でrit.をかける経験、あまりないとは思うのですがもう少し効果的かつ計画的にかけられると室内楽ではいいと思うので色々試してみて。
ちょっと身体の使い方が硬い感じがするので、特に下半身を柔らかく使えるといいと思います。具体的に言うと膝を曲げてみたり少し足を開いたり、でしょうか。するともう少しいい意味で力が抜けるかも。
色んなところで高水準な演奏が出来ていると思うので、もっとこだわりを持って理想を上げていきましょう!

 

2.協奏曲より第1楽章/ウェーバー
テーマ、とってもいいですね!リズムやフレーズの取り方がとても良かったと思います。長調短調、の変化は音量ばかりではなく音色で変化がつけられるとなおよかったですね。
16分音符のタンギングは・・・まだまだ習得、とは言えませんね。長年の習慣もあるかと思いますが、もっとじっくり取り組めば変わっていくと思うのでゆっくりレガートタンギングで練習してみて。舌がリードに触りすぎないように。
全体的に少しこぢんまりというか、迫力に欠ける印象がありました。もっと大胆に演奏する意識を持ちましょう。空間を広く使うようなイメージでしょうか、どうしても狭いところで練習するので難しいのですが・・・やはりコンチェルトですから、1000人ホールの規模感で演奏するのが合う曲なんですよね。
ブランク等々ありつつ色々思い出せたと思いますので今後も楽しみにしていますね。

3.ファゴットソナタ/ハールストン
音楽的中身の伴った上で安定したとっても素晴らしい演奏だった。さすがと言うべきか。
ちょっと音程が気になるかな?楽器がよく鳴る音程は理解できていると思うけど、ピアノと一緒に鳴ると少し気になるところがありました。上のCとか特にぶら下がりすぎないようには気をつけて。中・低音はもう少し下がればもちろん言うことナシ。
ピアノとのアンサンブルもばっちりでしたが、少し保守的というか合わせにいっていくところがあるのでもう少しやり取り楽しめるといいですね。合わせの前に自分でもっとシミュレーションして、シミュレーションとのギャップを埋めるような時間にできると効率的かなと思います。
安定感の裏返しかもしれないけど、音色の変化には乏しかったかな。たぶんこれは理想の問題。もっと豊かな変化をつけるには音色のイメージがもっとないとだめでしょう。音量や音程、ビブラートなんか以外の「音色」の操作みたいなものを意識しましょう。

 

4.幻想/ベルノー
言うことそんなにないけど・・・。言うまでもなく素晴らしく、こんな難しい曲がプログラムに並ぶこと自体すごいことだなと主催としては思います。ありがとう。
演奏の傾向としてはすこし保守的。アラールのために書かれたこの曲、もっと「ヴィトゥオーゾ」に聴きたかった場所がたくさんありました。コンクールで吹いたらそこそこ高得点だとは思うけどコンサートとしては惜しいな~という印象が終始ありました。もちろん安定して吹けるのも凄いことではありますが。
ピアノとの合わせも上手くいっていてよかったですね!実はそこまで複雑には噛み合わない曲ですが、大事なところピッタリ合っていてよかったですね、取組期間が長かったのもよかったかな。
それと楽器がかなり音色や響きを守ってくれる傾向にあるので、ソロを演奏するならもう少し響きの強いリードを吹けると思うので試してみて。オケ映えしそうな音はありましたがちょっと物足りないかな?
そろそろ歌う曲ききたいですね。また楽しみにしてます。

 

5.ソナタ第5番/ヴィヴァルディ
繰り返しもしながらよく吹き切りました!長い曲吹く力はかなり持っているようです。素晴らしいことです。
シンプルなようで非常に複雑なフレーズが多い曲です。なんとかモノにしようとしているのは感じましたがもう一歩、というところでしょうか。どうしても演奏中、今鳴らしている音のことばかり考えてしまいますが先へ先へ意識を向けていきましょう。
装飾は・・・非常に面白いものも入っていましたが入れて満足なところが多いのがもったいない。効果的に、音楽やフレーズを強化するものになるような工夫を。トークで言うなら面白いことは言っているけど活舌やタイミングが悪く聴き取ってもらえない、という感じでしょうか。
遅い楽章のフレーズ終わりや節目、音の処理に配慮して。音程がブレるのは仕方ないけど、無神経にならないように。気をつけているところは気をつけられているのですが、気を抜いてる箇所がけっこうあるみたい。特に3楽章かな。
タンギングを伴う指回しがもっと丁寧だといいですね。スラーが基本(であり一番難解)ではあるんだけど、例えば慣れた音階なんかをレガートタンギングや短いタンギングで練習する習慣をつけるといいかも?舌と指のリンクがちょっと浅いように思えます。

 

6.協奏曲ホ短調/ヴィヴァルディ
フレーズをとらえるのが意外と難しい曲ですが、よく理解し表現できていました。小節を丁寧にまたいでいるのでちゃんと4拍子に聴こえてきますね。
音の処理が甘いときがあるので気をつけて。特にブレスの前がいつも投げ捨ててしまうので特に注意を。
ほかの人にも言ったことだけど、長調短調とかフォルテ・ピアノを音量ではなく音色の変化で聴かせられるといいですね。よく表現しているけど、あまり劇的ではないので意識が大事なのだと思います。
2楽章のアゴーギグがもう少しうまくできるとよかったですね。前に行くアゴーギグが多いわりに後ろ向き(要するに遅くするほうの)アゴーギグが少ないので少しせわしなく聞こえてしまいます。よく言ういますが、遅いと速いをトータルでプラスマイナスゼロになるようにする、ってことですね。
聴いている人が憧れるいい演奏だったと思います!自分でも楽しく演奏できたんじゃないかな。また楽しみにしていますね!

第29回門下発表会でした。次回はちょっとトクベツ。

こんにちは。春通り越して初夏みたいな気候が続きますね。

衣替えのタイミングがイマイチよく分かりません。

みなさまいかがお過ごしですか?

 

僕は近ごろ、新しい仕事の場を作るために少しずつ準備を進めています。

近いうちにお知らせできるんじゃないでしょうか。続報お待ちください。

 

さて先日、第29回となる門下発表会がありました。

 

驚異の打ち上げ参加率。それはまぁともかく、今回も変わらずハイレベルでした。

ハイレベルであること、レッスンを受けて演奏するんだから当然と言えば当然と思うかもしれませんが・・・

人も入れ替わるし調子の上振れ下振れもあるし、そもそも楽器の上達なんて砂漠をさ迷い歩くようなもの。

レッスンで道筋は示せても、必ず前進できるというものでもないですからね。

それでも僕は、それぞれの領域できっちりやることやってくる生徒たちを毎回誇らしく思っています。えっへん。

 

次回が第30回。以前の記事でもちょこっと書いたように、次回はしっかり演奏会として開催します。

チラシを作り集客も管理し、レッスン回数などの敷居も少し上げて格式を少し上げた開催となります。

これが好評になれば40回、50回と同じようなことをやる予定です。果たしてどうなるjかな。

チラシができ次第、きちんとこのブログでも告知を載せますので続報お待ちください。

 

というわけで出演者の公募は第31回以降となります。2024年11月、日付未定です。ご興味ある方は下記フォームまでどうぞ。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さてここからは恒例の講評記事となります。

出演者やお客様以外には意味のない内容となりますこと、ご了承ください。

 

1.ファゴットソナタヘ短調/テレマン

色々と吹っ切り乗り越えた演奏ができていてホッとしました。リードの問題もだいぶ解決したのかな?会場が助けてくれた?だいぶいい感じでした。

リードとは関係なく、中音域(解放F~5度上のCくらいまで)の音程感がちょっと課題かもしれません。基本的に高めにきてしまっています。それには色んな要因があるけど、たぶん運指と奏法が合っていないことから来るものだと思います。ハーフホールやフリックで出す音は口先や息ではなくまずは運指から取ること。そこに息圧やほんの少しのアンブシェアで音程を取るようにしましょう。どうしても逆になってしまうと高いほうで落ち着いて耳も慣れて来てしまいます

1楽章はもう少しゆっくりでもよかったかも。踊れないテンポになってしまうとまずいけど、フレーズ繋ぐのが少し難しいテンポになってしまったかな。アゴーギグがもう少しつくだけでも違うかも。2楽章は音の濃淡がもっとあるとよかったかも。出す音抜く音の操作というか、そこらへんやっぱりバロックなので大事だったりします。通奏低音とどうアンサンブルしているか、を考えるといいでしょう。3楽章も通奏低音の運びを意識できるとよりよかったかも。どうしてもメロディだけ追ってしまいがちなので、自分で吹いてるソロに通奏低音パートを吹いて合わせてみる(逆もいいね)とかしてみるとよかったかもしれません。4楽章のテンポ感とっても良かったと思います、Vivace感とても出ていました。アゴーギグのつけかたも絶妙で聴いていてまったく飽きのこない演奏になっていたと思います。

全体的によくまとまり安定していて、それでも飽きのこない名演だったと思います。バロック音楽の経験値もう少し積めるともっと楽しくなると思うので引き続き楽しんでみて。

 

2.ファゴットソナタ/ヒンデミット

完成度と自由度の高い名演だったと思います。ポテンシャル発揮しましたね!細かい傷を減らすには、練習のときに目を閉じて本番想定で吹いてみる、という訓練をしてみること。そこで起きた傷は本番必ず起きるので注意深く練習してみると対策が取れます。やってみるといいかもしれません。

強弱のメリハリがついていたのは良かったと思います。ただディクレッシェンドのとき、弱奏に安定感がないのが気になりました。やっぱり小さい音って難しいので、ただ絞るだけだと音程はぜったいにどこかいくので、音程を両立できない強弱はいったん封印するつもりで演奏したほうがいいです。それについてはフォルテでも一緒かも。ハモらない音はいくら鳴らしてもいくら絞っても邪魔にしかならないんですよね・・・。意識しましょう。

懸念していたピアノとのアンサンブルはうまくいっていたと思います。ピアニストの腕前もありますが、よく聴けていたと思います。フレーズの受け渡しの時に気が使えるともっとよかったです。

全体的にはやりたいことがよく見える演奏で非常に素敵でした。小さくみえて大きな傷(=音程感)が改善できればもっとよかったし、そこを重点的に気にする人ももちろんいますので大事にしていって。

 

3.サラバンドとコルテージュ/ディティー

非常によくまとまったいい演奏だったと思います。以前演奏を聴いたときの粗削りなところはなくなり、また積極的かつ効果的に表現をすることができるようになったと思います。端的に言うとすごく上手くなりました!別人クラスです。

ハイトーンへの意識があるのである程度しょうがないとは思うのですが・・・ここまでいい演奏ができるのであれば弱奏時もっと色々仕掛けられるといいですね。もちろんきちんと強弱はあるのですが、弱奏となると色が急になくなってしまうのがもったいない。普段合奏でどのくらいで吹いてるか分かりませんが、繊細な音楽表現をもっと身につけると更に良くなると思いますので色々と試してみて。

後半のリズムもレッスンの時に比べるとだいぶ良くなりました。難しいリズムが多い曲ですが、今回くらい正確にやりつつ、さらに遊びも入れられるようになると更に面白くなるでしょう。ボザやらフランセやらタンスマンやら、今やると色々発見があるかもしれませんね。

あとはピアニストとのアンサンブルももう一歩レベルが上がるといいですね!ピッタリ合ってはいますが、「共演」にはもうちょっと足りてない感じ。いいアンサンブルって乗っかるだけじゃないんですよね。

ハイFの敗因は気負いです。いい音でバシーンと決めようとすると出ないので、そこだけスッと冷静になるとうまくいきますのでリベンジする機会があればぜひ試してみて。

 

4.ムーンライト伝説

我ながら三重奏としてはかなり効果的なアレンジだと思うんだけど、そのぶん個々の技術によるところが大きく、難しくも感じたと思いますがファゴットアンサンブルって今回みたいに吹ければ可能性無限大だなーと思うんですがどうでしょうか。

楽器の鳴り方にかなり差がある3人なんだけど、そこは仲も良く合奏いっしょにやってるだけあって、いい意味で気になりませんでした。バランスよく聴こえてました。

最後のオクターブ下ソロ、聴いたら分かると思うけど出だしがイマイチなのよね。吹いてる方はたぶん気にしてないんだけど、聴けば一発でわかるはず。いわゆるソロ回しのコツは、出だしできっちり聞いている人の視線を自分に向けること。アウフタクトで優しい発音しよう、なんて思うと今回みたいになってしまいます(クラシックではそれでもいい事の方もあるけど)いい学びになったんじゃないでしょうか。

惜しかったのは、いわゆるキメどころがことごとく誰かに傷があること・・・。力むことと鳴らしにいくことは違う、というかもしかしたら全く逆のことなので、気持ちや感情ではなく技術でキメにいけるプレイヤーに育ってください。

 

5.三重奏/ヴィヴァルディ

久しぶりのアンサンブル参戦。お2人の拘りが本番でたくさん感じられるステージで、僕も楽しく演奏させてもらいました。1楽章はもう少し疾走感があればよかったかもしれません。どのくらい運ぶか僕も悩みながら演奏はしていましたが・・・。1楽章と3楽章にもっとテンポ的にも雰囲気的にも差が出せればよりよかったと思います。

フルートはもっとわがままでいいシーンが多く、オーボエはもっと歯切れよく鋭くていいシーンが多かったです。が、それも個性かと言われればそこまで。そのくらいこの手の編成は好きにやっていいんじゃないかなーと思います。

名曲、ハイドンのロンドントリオなんかもありますし、レパートリー増やしてもいいかもしれませんね!

 

6.ソナタ/グリンカ

うーん、意外と難しいですねこの曲は。絶対に独りよがりになってはいけないのですが、なかなかに・・・。吹くだけで気持ちいい曲ですから、そこでいかに理性的に聞き手のために演奏できるか、なんだと思います。技術的に難しい箇所なんてほんの数か所ですからね。

ピアノに埋もれがちの曲なのですがそこは問題なく、いい音が会場に響いていたと思います。また以前に比べて音程の改善が見られます。割と吹きやすい調であることもあるかもしれませんが。

和声をもっと感じるといいのかもしれません。緊張がどこにあって、解決がどこにあるのか。いまの和音はドミナントなのかトニックなのか。シンプルですが、それだけ頭に入るだけでずいぶん印象の違う演奏になったかもしれません。

ピアノとのアンサンブルはずいぶん意識できていました。しかし意識しすぎて少し後手に回ることが多かったようにも思います。聴いて吹く、のではなく、自分の思うタイミングを提示して結果として出る音が合う、という状態がアンサンブルです。自身のソルフェージュ(イメージとも言える)をいい意味でもっと信用して演奏するとうまくアンサンブルできるかもしれません。

もっといい意識でこの曲にのぞんでほしかったなぁ、と先生は思います。僕はこの曲大好きなのだけど、どうなんでしょうか。

 

7.2つのファゴットのための協奏曲1楽章/ヴァンハル

夫婦共演いいですね!いい意味で仲良く演奏できていたと思います。演奏においては殴り合いもいいもので、いろんな夫婦関係が垣間見えた演奏でとっても楽しかったです。

1stに関しては基礎的な問題はけっこうありそうなのでじっくり見てあげる必要はありそうです。特にアンブシェアと指遣いに関して、ちょっと色々ありそう。それはそれとしてしばらく演奏聴いてなかったけどよく練習してきたんだなと思います。いわゆる努力のできる天才型だと思いますので場数と経験を重ねていけばするするとうまくなっていくと思いますのでまた色々聴かせにきてくださいね。

2ndはレッスンで言ったように寄り添うだけがアンサンブルではないので、今回みたいに色々仕掛ける事もしてみましょう。パート振りとっても良かったと思います。お2人にとっていい演奏キャリアになったことでしょう。

2人共通で言えるのは、もう少しオケ(ピアノ)への意識があってもよかったかもしれません。シンプルな伴奏ではありますが2人で演奏しきれていない和声を担っているのでそこへの意識があればもう少し色彩豊かな演奏になったと思いますので次回また意識してみて。古典派の曲なら全部そうだと思います。

 

8.ファゴットソナタ/ヒンデミット

非常に取り回しのいいセッティング、という印象でした。非常に安定していたと思います。やはりセッティングは大事。特にこの手の繊細な表現をもとめられる曲だとなおさらです。

音程は平均点が大事、だと思うので、非常に音程のいい演奏だったと思います。逆に言うとキメどころはもう少しこだわってほしい気もしました。おおよそいい音程です。これは素晴らしいことです。また、ここまで取り回しがいいリードなら、もう少し強弱は攻めてよかった気もします。バランス難しいですね。

2楽章冒頭のブレスはうまく機能していたように聴こえます。色んな意見ありますが、最後に決めるのはご自身なので、これからもいいと思ったものを選んでいくといいと思います。

2周目以降ということもあって落ち着いたいい演奏ができていたと思います。重ねてになりますが、逆に言うともう少し攻めた場所は欲しかった、かなぁ・・・。フレーズ感も程よくあるのですが、深いこだわりは見えなかったようにも感じました。これも一つの「上手い」の形だとは思います。

次回は攻めた上で安定した演奏、期待しております。

 

9.ファゴット協奏曲2.3楽章/ウェーバー

ロマンスは技術と計算で作れる。という感じの演奏でした。褒めてます。細かく気になるところはありますが2楽章とってもよかったです。ピアノの音が入るとパッと色が出始めるのだとしたら、やっぱりファゴット吹きのサガですね。素晴らしいことだと思います。

指摘があるとすれば、とにかくフレーズが短い。フレーズをおさめる場所以外はぜんぶ繋ぎに行く、くらいでようやく普通に聴こえてくると思いますので、長いフレージングは意識できるようになりましょう。はいどうぞ、はいどうぞ、ってなぐあいに聞こえてしまいます。あとは細かい音程感でしょうか。高い音程に耳が慣れてしまわないように。音程が上ずっているけどいい音色が鳴っている、なんてことは発音体の構造上絶対にないです。

3楽章も軽妙、という日本語がぴったりの演奏でした。とってもいいイメージを持って練習できていたんじゃないかな。多少のタンギングもつれは気にならないくらいスピード感がありました。テクニックは元々あったけど、ひとかわ剥けた印象がありますが自分でどうでしょうか。こーいう演奏するためにそのテクニックはあるんだけど、理解できるでしょうか。

 

10.レチタティーボアレグロ/ギャロン

コスパ良し、を感じさせるいい演奏でした。この曲のいい演奏って難しいところを難しく聴こえさせないんですよね。まさにそういった演奏ができていました。低音域と中音域の響きがリードなのか会場なのかたまたまなのか分かりませんが非常に良く、ピアノとよく合っていました。ただLowCはどうあがいても音程上がるので、いつでも気を付けて。

アレグロ中間部の歌がとってもよかった。フレーズの作り方が本当に上手くなったなぁ。逆に言うとはじめてレッスンした頃から言い続けてることだからここまで時間かかるものなんだなぁ、と指導者としてしみじみ思います。細かいところの精度はもう少し丁寧に練習できたな、と思うけど、それはたぶん自分でも気付いているんでしょうね。

あんまり講評で言うことないかも。幅狭く速いビブラートが響きを阻害することがあるのはやっぱり悪癖だから多用しないように気を付けて。

 

11.ファゴットソナタ/レントヘン

気迫とこだわりを感じる演奏でした。会場と楽器の響きの相性なのか、かなり直で音が聴こえてくる印象でした。シーンによって善し悪しですが、そこら辺もコントロールできるとなおよいですね。いわゆるバランス感覚、というやつ。空間をどう響かせるか、が木管楽器を演奏する上で一番大事なセンスなのかも。磨いていきましょう。

音程が良かった。「音程が良い」ってやっぱりピアノと心地よく響く音程なんだな、と聴いていて再認識しました。今回の音程感覚を大事にしてほしい。合奏いくとまた鈍ると思うので、失わないように。

音程の話に近いけど、同じようなフレーズを色んな調とテンポで、ということがおおいこの曲において、シーンの切り替えがちゃんと伝わってきたのも素晴らしいと思いました。飽きずにきっちり音を頭に入れてきた成果だと思います。それは音程が良いことがもちろん条件なのだけど。それ込みで素晴らしいですね!

全体通してですが、すごくいい集中力で演奏できていたと思います。緊張してたとは思うけど、集中ってたぶん緊張の中にしか生まれないものだから今回みたいにいつも演奏できるといいですね!

第28回門下発表会でした。講評と次回のことと、大事な告知があります。

こんにちは。秋すっ飛ばして冬来ましたね。1個前の記事は真夏だったのに不思議ですね。

何度も言ってますがいくつか書きかけの記事はあるので、僕がその気になるのを末永くお待ちください・・・。

 

さて先日、第28回の門下発表会が開催されました。

 

今回はソロ12人、アンサンブル2組の参加でした。

とにかくハイレベルな会でした。元々うまい子たちもそうですが、レッスンに来る回数が多い子が増えてきた、というのも理由になってくるでしょうか。

1回のレッスンで出演する子もいますしそれでいいとは思っていますが、やはり2回3回4回と重ねていくうちに本人の理解度も上がり、演奏の質も上がっていくのは当然のことなのでしょう。

 

この回は「上達」を目的とした発表会です。1人ないし少人数で演奏する場を作り、それに向けて練習をしレッスンを受けて披露すれば必ず技術的向上が見られる、というのがコンセプト。なので続けていけばいくほど平均レベルの向上は当然と言えば当然、でしょうか。嬉しいことです。

 

次回も決まっています。ピアノ伴奏つきのファゴットソロ、もしくはアンサンブル(ファゴットを含まなくても可)でのエントリーお待ちしております。下記概要です。

 

春のひとときコンサート(第29回とのむら門下発表会)

2024年3月23日(土)お昼以降開演、夜終演

立川サロンスタジオFIX(各線立川駅より徒歩3分)

参加費(会場代、伴奏者謝礼、レッスン代1回分込み)

ファゴットソロ 社会人15000円、学生10000円

アンサンブル ひとり6000円(編成によって多少の変動あり)

エントリーは直接ご連絡頂くか、下記フォームまで。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

これが大事な告知。ほとんどまだ何も決まっていませんが・・・

次々回の発表会も決まっています。ただし次々回は第30回を記念として、いつもと違ったスタイルでの開催を計画しています。

いつものような公募は行いませんので、次々回以降の参加を考えている方はその次、来年11月以降のお知らせをお待ちください。次々回への参加はこちらからお声掛けさせて頂いています。

第30回となる次々回開催は、いつものような発表会形式ではなく演奏会形式を取り、入場無料ではありますがチラシや(電子)チケットを作り集客をするつもりです。このブログや各種SNSでももちろんお知らせしますので、気になる方はぜひ聴きに来て頂ければ幸いです。

日付は2024年7月28日(日)、午前中リハーサル、午後以降本番予定です。会場は

国立オリンピック記念青少年総合センター カルチャー棟 小ホールを予定しています。

きちんと告知しますので、続報をお待ちください。

 

 

さてここからは、第28回参加者向けの講評記事となります。関係者以外の方は次の記事をご期待ください。いちおう書き進めてはいるのです・・・・

 

1.演奏会用独奏曲/ピエルネ

初参加者は一番最初、と決めているための出演順でした。じっくり準備を進めただけあって非常に完成度の高い演奏となりました。本番の演奏中、非常によく集中できている印象で、聴いている方も引き込まれている人が多かったように思います。

流れやフレーズを作るのがうまくなったので、今回の経験はオケ中でソロや旋律を吹くときに活きるのではないでしょうか。フレーズに到達点を作り、そこに向けての流れと到達した後の流れを考える。これだけなのですが、それがなかなか難しいですね。今回は非常によく表現できていました。

改善点なんて挙げることもないのですが・・・強いていえば表現に関して、「やっているつもり」の点が多いこと。見ていれば何をしたいのかはよく分かりますが、音に現れていないことも多々ありました。やはり楽器の音は物理現象。具体的な変化を作ることを意識づけていきいましょう。特にフォルテやクレッシェンドを作るとき、息を入れるだけにならないよう、しっかりリードが振動しそれがボーカル、楽器に伝わって音の変化になっていく感覚をもって練習しましょう。

小さいことだけど長めの休符の時、はやくリードくわえると聞いている方も「あれ?」となるのでやめた方がいいかな。緊張していて間が持たない気持ちはわかるのですが・・・

次回以降の参加も楽しみにしていますね!

 

2.ファゴット小協奏曲/ダビッド

レッスンの最後の最後までアーティキュレーションの話になってしまったこと、申し訳なくは思ってます、がしっかり伝わった、と僕は思っていますがどうだったかな。演奏とは再現であること。再現とは楽譜情報の引き出しであること。それでも人や場所が違えば出てくるのが「個性」であること。理解してくれたら嬉しいです。

表現への欲求はいつも通り素晴らしく、旋律を美しく歌うことができていました。音量などの変化も素晴らしいのですが、譜面を横方向に見てしまうクセがついてきたようで(楽譜通り、に僕がかなり言及したせいだとは思うのですが)ピアノとのアンサンブルはややイマイチでした。タイミングはあっているけど、和音の進行への意識付けがなかったこと、すこし残念でした。

やっぱり必要なのは客観性。自分の演奏がどう聴こえているか、同時に聴く側に回れないのは演奏者が抱える一生のジレンマですが・・・想像することはできます。録音をとってみるのもいいでしょう。君の考えるちょっとしたフレーズのこだわりとか、僕はとっても素敵だと思うけど、聴いている人はもっと大きな問題を「惜しいな」と思って聴いています。そこに気付くことができれば・・・。

演奏の技術は大したものです。技術はいくらあってもいいですが、何のための技術なのか、よく考えて練習しましょう。

 

3.ファゴット大協奏曲より第2.3楽章/フンメル

どこまでいっても大曲。細かいフレーズのことにかなり言及してきましたが、僕の言ったことをよく噛み砕いて理解してくださったのが演奏を聴いていてよくわかりました。「僕の言う通り吹きなさい」なんて一生誰にも言うつもりないけど、伝わっているのがわかると嬉しいものです。僕はかなり細かく言いましたが、「言う通り」ではなくご自身の頭で考えて演奏しているのが伝わってきて、とってもいい2楽章だったと思います。このレベルでこの曲の2楽章が吹ける人、そうはいないでしょう・・・!

3楽章、もう本当にこれはどうしようもないかもしれませんが疾走感がもっと欲しかった。もちろんテンポを上げようということではなく、ハツラツとした感じといいますか、ちょっと元気がなく優しい印象で終始いってしまったのが勿体なかったでしょうか。技術的には言うこと何もないです。よく練習してあるし見事な超絶技巧でございました。フレーズの取り方は2楽章同様とってもよかったのですが・・・。逆に疾走感への意識があればもっとテンポゆっくりでも良かったくらい。古典派の曲はそこが本当に難しいですね、ロッシーニしかりモーツァルトしかり。

それにしてもフンメルを吹き切れたこと、本当に凄いことです。自分への自信にしていってくださいね。

 

4.5つの小品/イベール

ほんと、これぞトリオダンシュ、と言える演奏だったと思います。レッスンの時も話したけど、トリオダンシュって「フルートとホルン見つからないからこの3人で」みたいな気持ちでやるものではないですね。この3人で(楽器で)遊ぼう、くらいの気持ちが一番。作品への愛で取り組んでもいいですね、それくらい魅力的な作品がたくさんありますから。

レッスンでかなり言及したそれぞれのバランスや個人個人のダイナミクスについては非常によく考えられていました。楽譜情報の違いもそうですが、楽器ごとの差も考えて今回のように演奏できると違う楽器のアンサンブルは面白みが増しますね。また声部の違う楽器3本なので本来あまり気にならないはずの音程が、今回けっこう気になりました。チューナーで真ん中を取る、というより楽器が美しく響く音程感、それぞれ探ってみるといいかもしれません。

1楽章はテンポ感、というかスピード感がもっとあって良かったかな?丁寧ではあったけど少し退屈に感じてしまうテンポ感かも。他楽章との対比もあるしオープニングだし、飛ばしていってもよかったかも。2.3楽章は箇所箇所でいい攻め具合が聴けて愉快でした。地味だけど個人技もそれぞれ光っていました。4楽章はアンサンブルが丁寧な分、積極性に欠けてしまう場所がちょこちょこ。テンポの変化があるあたりが特に・・・。スタミナ問題がなんとかなっていたのでそれだけでも及第点ではあるのですが。4楽章→5楽章への切り替えが非常によかったと思います。テンポ感は今のまま、シンプルな旋律ラインを彩る要素がもっと色々見え隠れするとよかった。隠れるのは3人ともうまいのだけど・・・

オーボエは音量や音色の操作が自由自在なのが本当に素晴らしいのですが、自由自在である、ということはちょっと間違えれば逸脱してしまう、ということ。いったん少し不自由(=ダイナミクスや音程の変化が少ない)なセッティングを試し、今と同じことをしてみる、という工夫を試してみてもいいかも。

クラリネットは間を受け持つのは達人級でそれはそれで大事にしてほしい技術ですが、やっぱり木管アンサンブルは1人1人がスターであってほしい。オーボエファゴットを従えてクラリネットが主役に、というときにどうしても負けてしまうのが惜しかった。まずは主張し慣れるところから。「やりすぎ」って怒られるのを心の奥底で喜べるような奏者に。

ファゴットはアンサンブルで聴くとここ数年での上達を本当に感じました。見劣りしないのは当然として、なにかと忙しい曲ですがいろいろな役割をいい具合にこなせていました。アーティキュレーションの差をもっと音楽に活かせるようになるとより魅力的な演奏ができるようになるでしょう。例えば短い音も鋭いのかコンパクトなのかで違ってくるし、レガートの旋律はいい意味で機械的に取っていくのか歌いながら取るのかでやっぱり違ってきます。色々試して遊んでみるといいですよ。

非常にいい3人だと思います。やってもやっても面白いのがトリオダンシュ。またの参加をお待ちしています~!

 

5.無伴奏パルティータ/J.S.バッハ

今回これ吹きました。丁寧にコンパクトに、がコンセプト。どうだったかな。

 

 

6.狂詩曲/オズボーン

なめるな危険オズボーン、ってところですか。安定感と再現性の高さはさすがの一言。何よりキツいところをコンパクトにまとめて崩壊しないスタミナとリスク配分がお見事でした。この曲が吹ける用のリード、ってあると思うんだけどその準備ができればもっと違ったのかな・・・。

とは言えレッスンで言った通り、死ぬほど指定の細かいこの曲、短期間でよくすべての要素を拾ってきたな、とも思います。ある種、この曲は要素を拾いつくして傷を減らしてスタミナ配分するだけの曲だとも思うから、その点は完璧に近かったと思います。この曲知らない人にこの曲の良さは伝わっても難しさってなかなか伝わらない気がする・・・。

改善点があるとすればダイナミクス、特に小さい方がもっと聴きたかった。ピアニッシモ、というより細くて消え入りそうな音、みたいなものがほとんど聴けなかったのでそこは残念。この曲のピアニッシモはその手の音が欲しいよね。難しいことは重々承知していますけれど。

ある意味で無伴奏の面白いところが詰まった曲だったと思います。楽しめていれば何より!アーノルドだのなんだの、バッハ以外の無伴奏いろいろあるので探してみて、懲りずにまたやってみてくださいね。

7.ファゴット協奏曲第1楽章/ウェーバー

いい意味で無駄を美しく省いた非常に練度の高いウェーバーだった、と思います。雑に済ませてしまっていたテクニックを丁寧にやるとここまで純度の高い連符が並ぶんですね。自分でも録音で確認してみてください。ウェーバーにおいてみんなが取り組む、技術的な指標は完全にクリアしていると思います。素晴らしいことです。

また少し気になっていた音程もだいぶ改善されています。フリックだのハーフだのを中心とした細かいテクニックの改善に由来するものだと思います。地味だけどとっても大事なことなので抜け落ちてしまわないように。←これが一番難しかったりします

今回、非常にオーソドックスなスタイルで演奏できていたと思います。星の数ほど音源や演奏のあるこの曲、実は型破りなものがたくさん存在します。いま色々聴いてみると発見が多いかもしれません。「あれもこれもやればよかった」とまで思えれば今回の演奏がうまくいった証拠です。

それからピアノとのアンサンブルが非常にお上手でした。普段からピアノの音を想像して演奏いていなかったらこうはならないと思うので、この意識は他の曲でも持っていてください。オケや室内楽でも同様です。

 

8.プルミエソロ/ブルドー

冒頭、めちゃくちゃ良かったと思います。準備やコンディションに不足があっても、この曲の冒頭があそこまで美しく吹けることはこだわりを持っていい練習ができていた証拠です。まず誇りましょう!僕も鼻が高いですこれは。

テクニカルについて僕がここであれこれ言う必要はないと思います。最後のレッスンで言ったような、地味だけど確実に根付いていく練習を今後は心がけていきましょう。それでも動かないときは動かない。身体や脳、心のリフレッシュをするだけで急に動くようになる、なんてこともあります。練習量でねじ伏せる、みたいな時期はもう過ぎ去ったのかもしれないね。量ではなく質。何より本番時期を見据えてじっくり積み重ねていくこと。

楽器が「上手い」ということは、大好きだったり大尊敬してる仲間にできる唯一の恩返し、と僕は考えています。自分が「上手い」ことで仲間を幸せにできること、ってこれ以上ない喜びなのよ。だからそのために「テクニックを積み上げる」質のいい時間は絶対に必要。でもそれと同じくらい、今回みたいな冒頭が吹けるちからも「上手い」演奏には必要不可欠なものだと僕は思います。今後に期待しましょう!

 

9.ファゴット協奏曲イ短調第1楽章/ヴィヴァルディ

派手さが売りのこの曲、君はどうなるか、と思っていたけど、ちゃんと派手に演奏できていた、と思います。音がデカいとか小さいとか指や舌が動く、ということより「派手さを演出する」ということがどれだけ難しいか。今回、そこにこだわりの見えるいい演奏だったと思います。

「別に難しくも別段早くもないけど積み重なっていて難しい」タイプの曲。本番はなんとか間に合ったけど、この手の曲をサッと攻略できるようなることが、激ムズ曲を時間かけて演奏できるようになることよりも大事なことだと僕は考えています。この曲の難しいところくらいの難易度の難所(変な日本語だな)がじっさい合奏なんかで一番多いからね。サッと攻略してほしかった理由は他にもあるので後述。

音の濃淡が良く表現できていたので、あとはその濃淡のままフレーズ(=到達点)がもっと見えると良かった。ソリストが忙しいことをしている間も和声は動いているし、そこに意識を向ける余裕がなかったのもちょっと勿体なかった。それからヴィヴァルディの協奏曲、曲の終わりは通奏低音吹いた方がいいですね、これは発見でした。

1楽章の攻略に時間がかかりすぎてしまった問題点として、やっぱりヴィヴァルディの協奏曲は全楽章セットで聴きたいね・・・!当然それ前提の曲構成になっているし、出来がよかったぶん、終わってしまうのが惜しかったです。そのうち2.3楽章に挑戦してもいいけど、ホ短調やら何やら他のものに挑戦するときはぜひ全楽章を。要領よく譜読みができる=上手い人、とも言えるものね。

 

10.ソナタ第3番より1.2楽章/ヴィヴァルディ

まず全体として、流れがスムーズで非常に良かったと思います。テンポ的にも和声感的にも通奏低音にうまく乗れているので、聴いていて心地のいい演奏でした。技術的にはやっぱり音程が下から過ぎるのがね・・・いっそ下のまま取っていればいいんだけど持ち上げちゃう分、音色のイメージとして暗く聴こえてしまうのが勿体ない。ちょっと明るすぎるかな?くらいのリードがあっているのかも。

1楽章のテンポ感、僕はすごく好きなんだけど、3拍子がもっと見えると良かった。前述の通り流れがいいのであまり気にならないんだけど、拍子が見えればメリハリも効いてくるしフレーズも輪郭がハッキリしてきたはず。この辺はもう少しじっくりレッスンで見てあげられればよかったのかもしれません。2楽章も同様、4拍子の表現が甘いところが多く、ほとんど2拍子に聴こえてしまうのが惜しい。4拍子って基本なようで表現するのが非常に難しくて、シンプルなつくりであるバロック時代の作品は特に気を付けて演奏しないとどこに強拍がきているか分からなくなってしまうので注意が必要です。

繰り返し後の変化をきっちり楽しんでいる演奏なのも非常に好印象でした。精度がもっと高い方がいいのは確かですが、"遊んでいる感"が出ていました。しかし遊んでいる感はもっとあったほうが良くて、やり方としてはアーティキュレーションを少し誇張してみる、なんかが今回に関しては良かったかも。時間があったらおさらいしてみて。

 

11.ファゴットソナタヘ長調/ドゥビエンヌ

精度の高い演奏でした。特に素敵だなと思ったのが長調の表現。ちょっとしたスタカートの跳ね方とかスラーの切り方とか音程感とかで表現されているように聴こえました。短調はみんなこだわるのだけど長調がうまい子はなかなかいません。また全体としていい意味でコンパクトな表現幅だったのも良かったです。室内楽ですしフレンチバロックということで、あまり盛大な音楽にはならないので今回くらいの幅感が聴いていて非常に小気味よかったです。狙ってコンパクトに演奏していたのであれば大正解です。狙ってなかったのであれば・・・作品によりますね。またそれはレッスンで。

技術的にはスタカートの速いタンギングがとても上手かったと思います。変にテンポを上げてしまわなかったことも幸いしていい表現に落ち着いていました。

合わせも少なく当日もいきなりなので仕方ないと言えば仕方ないのですが・・・自分で気付いているとは思うけど、通奏低音への意識が抜けて練習してしまっている箇所は非常に勿体なかったですね(2楽章の冒頭はまさにその結果でしょう)いつだって共演者がそこにいる意識を。これは受け売りですが、普段の練習環境を空間ごと切り取って本番会場に持っていくイメージを持つといいです。そのつもりでいると普段の練習から頭の中にオケ(ピアノ)が鳴ってないとうまくいかないからね。

教え子の演奏聴いて自分も演奏したくなる、という数年に1回ある現象が僕にはあるのだけど、今回それでした。この曲、いいですね。僕もどこかでやります。

 

12.ファゴット協奏曲1楽章/シュターミッツ

ある種、たくさんの縛りがあるような曲に感じたと思います。本来はすごく自由でハツラツとした曲なのでしょうが・・・とにかく演奏の様式を分かりやすく学べる、ということで、僕としても不本意なのですがこの曲に関してはそんなレッスンをするようにしています。

しかし性格なのか、様式そのものを楽しんでいる印象が本番はあり、縛りを感じさせない良い演奏ができていたと思います。この曲で得た学びはほぼすべての曲に使える要素なのでぜひ今手近にある譜面から活かして練習してみてください。

縛りにしばったレッスンをしたので仕方のないことですが・・・最初から最後まで音色的な変化がなかったのは少し残念でした。フォルテなのかピアノなのか、エスプレッシーヴォなのかドルチェなのか、レガートなのかレジェーロなのか。はっきり差をつけて演奏しようとすればおのずと音色(発音、音のディレクション、処理の仕方など)は変わっていくはずなので、その手の自発的な工夫が欲しかったなと思うところです。レッスンで触れられたのが強弱くらいだったのもちょっともったいなかったかなぁ・・・

とはいえ、地味難しいこの曲を高い精度で演奏できていたと思います。トリルへの苦手意識もだいぶ薄れたでしょうから、今度はウェーバーかダビッドか、ってところでしょうか。

 

13.演奏会用独奏曲/ピエルネ

フランスの風を感じる演奏でした。レッスンでも言ったけどあくまで純日本人の僕たちには「フランス風」が限界なのかもしれませんが・・・いやそれでも、確かに今回のピエルネは良かったと思います。MVPと言ってもいい。今回の演奏は、かつて僕があまり好きじゃなかったピエルネではなく、僕が大好きになったピエルネだったと思います。

表現過多に気を付けつつも、狙ったであろう表現幅がきちんと聴く側にも伝わっていました。いい想像力とバランス感覚だと思います。またピアノとのアンサンブルも精度が高く、ピアニストがいい顔して弾いてくださっていました。どこまでいっても二重奏、なんだよね。

しかしやっぱり難しいのは8分6拍子。レッスン時よりはだいぶ美しく取れるようになっていましたが、時折2の倍数がチラついてしまう・・・。やはり一朝一夕にはいきませんので、次またこの拍子に出会ったら今回のような意識をしてみて。

細かい傷はちっとも気にならない演奏でした。自分で気になるなら気を付けてみてほしいのは、ほとんどの傷が急いだブレス直後であるということ。ブレスの前後は自分でも理解できないようなミスが多発するので、普段の練習から警戒しておくこと。備えておけばだいぶ減ってきます。お試しください。

 

14.三重奏曲/プーランク

まさに満を持して、でしたね。トリを飾るにふさわしい演奏だったと思います。曲の魅力とピアニストの地力によるところも大きいとは言えますが・・・

僕が常々言っている「アンサンブルとはけっきょく個人技の集合体」であることをよく理解しているように見えました。それぞれが自分の頭できっちり考えて演奏し、リハーサルはそれのすり合わせ作業であるということ。すり合わせるだけで、別に考えを変える必要があるかは個人の判断に委ねられる、というのも生演奏のいいところです。3人がそれぞれ、自分の思うプーランクを演奏できていたと思います。細かい傷はあっても、あと10回リハーサルをしてもこれ以上の演奏にはならないです(良くも悪くも、後述します)

まずオーボエファゴットも、シンプルに以前と比べて楽器が上手くなりました。今回の演奏において胸を張っていい出来だったと思います。ピアノは抜群だったので何も言うことはないですが・・・とにかくピアニスト特有の「アンサンブルモード」のオンオフが切り替えられるようになるともっといいですね。下等な管楽器ども、ひれ伏せ!みたいな箇所がもっと何か所もあっても良かった。そこが三重奏のいいところで、二重奏だと弦や管は完全に力負けしてしまいますが三重奏だと意外といい勝負ができたりするし、そこが魅力だったりもします。もっと楽器の王様であってよかったと思います。

オーボエは「優等生」も「ヤンチャ」のどちらもこなせる、抜群に表現力豊かな演奏だったと思います。そこに「ひょうきんもの」や「みんなの憧れる超絶美少女」なんてキャラクターも、追加してみませんか。いつだって主役級であってほしい楽器、まだまだ表情の引き出しはあっていいものです。

ファゴットはとにかく「自分の頭で考えて吹く」がよく出来ていました。当たり前のことに思うかもしれないけど、すごく上手くてもこれができない人は多いので自分の長所だと思ってください。発音や表情の変化も豊かでピアノやオーボエに決して色彩感で負けていなかったです。力負け?そりゃしますよ。していいです。色味や響きで勝負しましょう。以前個人レッスンで言及しまくっていた細かいテクニック(運指とか息の入れ方とか)はだいぶ改善しましたが、もっとこだわれるはず。今回すごく丁寧に練習したと思うので、この経験を活かしつつ、テクニカルにもっとこだわっていきましょう。

 

 

第27回門下発表会でした。講評と次回のこと

こんにちは!やはり年3回更新のブログとなっています。災害的に暑い日が続いていますがいかがお過ごしですか?

僕は最近は色々な出会いと経験により、演奏に対しての精神的な向き合い方が変わってきています。精神的なところ、ってあんまり気にしたことないんだけど変わるものですね。こうご期待(?)

 

それから最近、YouTubeでの活動を再開(?)しました。「ふぁごまみれ」という団体・チャンネル名で動画投稿をしています。よかったらチェックしてみてくださいね↓

ふぁごまみれ - YouTube

 

さて先日、第27回となる門下発表会が開催されました。

 


決して広い会場ではないのですが、ファゴットにとって心地いい響きに加えてピアノの音もよく、みんなのびのび演奏できていました。今回はアンサンブルのエントリーも数団体あり、それぞれ精度の高い演奏を聴かせてくれました。

ところで今回で第27回。次回は11月なので28回。30回という節目が見えてきました。来年7月開催予定の第30回の発表会は、ちょっとだけ趣向を変えたイベントにしようと考えています。近いうちに各種SNSでお知らせしますね。まずは次回のことから。

 

秋のひとときコンサート(第28回とのむら門下発表会)

2023年11月18日(土)午後開演(19時すぎ終演予定)

立川サロンスタジオFIX(JR立川駅より徒歩3分)

参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン代1回分など込み)

ファゴットソロ(社会人)15000円

ファゴットソロ(学生)10000円

アンサンブル参加 おひとり6000円(編成により多少の上限あり)

 

とにかく「上達」がテーマの発表会です。ファゴットを吹いている方もしくはアンサンブル団体(ファゴットを含まなくてもOKです)なら、僕のレッスンを1回以上受ければどなたでも出演できます。お問い合わせ・出演申し込みは下記フォームからどうぞ。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さてここからは第27回発表会の講評記事となります。

出演者や聴いていた方以外には意味のない内容になりますことご理解ください。

 

 

1.5つの小品より/ワイセンボーン

初出場、どうだったかな。見てる限りはすごく落ち着いて見えました。技術的にかなり色々詰め込んでいるので考えることは多かったと思うけど、発音、息の取り方や運指が正しく定着した演奏ができていたと思います。特にスタカートは理想的な奏法ができていると思います。あとは今の奏法を定着させながら、強弱を含めた表現力が増すといいですね。

あとは発表会とはいえ、何分間か人に自分の演奏を聴いてもらう場なのだから、礼の時は(演技でいいから)笑顔をつくること。ステージの上では「音楽家」の演技をしましょう。

まだまだこれからだと思うから、色んな人の演奏を聴いて得た刺激を忘れないように。

 

2.ファゴットソナタ/ヒンデミット

どんな音でこの名曲を奏でたいか、という意思が伝わってくる演奏でした。抑揚の付け方なんかとっても理想的で、またいつかに比べて音程も安定してきたように思えます。こだわりを感じる演奏でした。

その「こだわり」の中にピアニストとのアンサンブルが含まれていない(ように聴こえた)のが非常に残念でした。ソナタ室内楽であり二重奏であるので、自分の音とピアノの音がどう響くか、が演奏結果ですので、そこ含めてこだわれるとよかったですね。また楽器の傾向でしょうが、響きが多いのはいいのですがちょっと音色が一辺倒で、明るい音が多すぎるようにも思えました。暗い音がすべてではありませんが、曲が曲ですからね・・・。そういった意味ではマーチは雰囲気に合っていましたので、他をコントロールできるといいですね。

個人的には、セッティングは暗めに、明るいところは技術で変化をつける、方が効果的に思えますので、少し意識づけしてみてください。

 

3.ファゴットソナタ/ケックラン

あんまりほめ過ぎても良くないけど、このクオリティでケックランが吹ける人はそういないと思います。ピアニストとのアンサンブルも絶妙で、この曲の難しさが難しく聴こえない演奏でした。大変すばらしかったと思います。

曲想の変化はよく表現できていました。拍子の変化が目まぐるしい曲なので、そこを活かすともっと色が出たはずなので考えてみるといいですね。それから、いわゆる「音色の変化」は乏しかったです。後半やハイトーンを気持ちよく吹けるリードで1~2楽章を技術て吹く、という印象でしたが逆だともっと良かったかな?技術で楽器を鳴らし、薄いところはリードの適正で勝負。そうすればもっと変化を作る余裕ができたかも。

そのくらいかな。今回の演奏は誇っていいと思います。

 

4.ゲスト演奏

先ほども書きましたが、さいきん「ふぁごまみれ」という団体名で、鈴木多恵子さん、泉田章子さんとアンサンブル活動をしています。主にYouTubeでの活動を考えていますが、宣伝も兼ねて遊びにきてもらって2曲ほど演奏しました。チャンネルこちら↓

ふぁごまみれ - YouTube

 

5.2つのモノディ/ケックラン

ケックラン繋がりで、僕が演奏しました。ケックランの無伴奏作品で、つかみどころも聴きどころもないなぁ、と思いながらなんとかかんとか演奏しました。

 

6.二重奏曲より/ライナグル

理想的な二重奏の形、だと思いました。聴きあい支えあい、また刺激しあい煽りあい、のような。レッスンの時は支えあいと調和重視、という感じでしたが、指摘した通り、本番は駆け引きがたくさんあって、ライブ感のある非常にいいアンサンブルができていたと思います。

僕はファゴットで演奏する形態の中で、Fg二重奏が一番好きです。真髄と言ってもいい、と思っています。

シンプルで簡単な曲でこれができたので、もう少し内容の多い曲で今回のようなアンサンブルができるといいですね。そのために「技術」はあると思うので、これからも磨いていって、いつかまたお2人での演奏聞かせてください。

 

7.五重奏曲より/ニールセン

名曲にして大曲、の3分の1でしたが、いい演奏だったと思います。合わせ回数が少なくても1人1人キッチリやればできるものですね。いい意味で緊張感もあったでしょうし、みっちり練習するよりこのくらいの方がいいんじゃないか、と僕は思います。

とにかく5人とも音楽表現に積極的なので、それがうまくかみ合ったところがたくさんあって飽きのこない演奏でした。ニールセンは複雑すぎずシンプルすぎず、本当にやってて楽しい曲ですね。

フルートは曲のこともあってか、本来しづらいはずの調和ができていてよかったと思います。和音の上に乗るのが上手いので、他のメンバー思いのフルートですね。それはそれで素晴らしいので、シーンによってはもっとわがままで横柄で理不尽なところも見せてほしい。「俺に合わせないの?え?なんで?」くらいの立ち位置でちょうどいい、と思うけどどうでしょうか。

オーボエは自分でどう思うかは分からないけどちっとも見劣りしないクオリティでした。特に弱奏がうまく、これがオケでもできればどんな上手いオケにでも乗れると思います!が、フォルテの時は逆に力任せになりすぎかな。力では豊かな音は得られないので、フォルテは広い部屋に自分の音が響き渡るようなイメージを持つといいです。それは楽器が大きくなっても一緒です。

クラリネットはミスを引きずらないこと。言うほど周りは気にしてないし、引きずらないで次にいく、ということができるようになるといいですね。ミスが起きるのは攻めた結果だから本番中に恥じないで。「考えないようにする」は生物的に不可能なので、「ミスを取り返そうとしないこと」が肝心かも。

ホルンは木五百戦錬磨、って感じ(実際どうかは存じ上げませんが)。周りへの調和と自分の音の善し悪し、リソースの割き方が難しいと思うんだけどそのへんのさじ加減がよかった。個人的には木五のホルンはもっと勝手でいいと思うので、次回やる機会があったら、周りに対してどうこうはいったん置いといて、もっと自分がいい音で吹くことを重視してみて。

ファゴットは積極的でとってもよかったです。周りに調和しにいくことと我が道をいく(周りに振り回されない)ことのバランスを取るのがうまいね。しかしやっぱり木五のファゴットはとにかくパワーが大事。いい音だしよく鳴っているからオケだったら十分なんだと思うけど・・・。楽器の性能かもしれないし、リードのこともあるかもしれません。僕は木五の時はパワー全振りです。それでも足りないなって思うことばかりですが・・・

 

8.三重奏曲/ドニゼッティ

そもそも厄介な編成だな、と僕もやるたびに思います。はっきり言ってあまり調和する編成とは思えないし、レパートリーもあるようであまりないし・・・

出だしの和音、決めて欲しかった・・・音程もそうだけどバランスの悪さと音色の差が大きくて少し残念でした。3人だからこそ難しいのですが、まずは管楽器同士でうまくハマった和音の響きをもっと経験していくことからでしょうか。旋律的なところはお2人とも積極的で非常に良かっただけに、惜しかったですね。

 

フルートは楽器がよく鳴っていて大変すばらしかったと思います。周りがどう、は差し置いてまずは自分がいい音を、という楽器だと思いますから、いい仕事されていました。旋律の終わりが雑になる傾向にあるので、少し気を遣ってみるようにしてください。

ファゴットはこの手の曲はとにかく「ヴィルトゥオーゾ」でなくてはいけません。意味はよく調べてみてください。言葉の意味じゃなくて、イメージで。相手がフルートであれば、なおさらです。そういう意味でもやっぱり難しい編成ですね・・・。

 

9.三重奏曲/プーランク

この曲のいちばん難しいところは、曲の魅力に奏者の魅力が殺されるところだな、とやるたびに聴くたびに思いますね・・・。

まずオーボエファゴットお2人に共通する部分として、音程の「低い」に関して無頓着である印象があるところ。シンプルに音程が低いところが多いのと、フレーズの終わりのぶら下がりを気にせず吹いてしまうこと、どちらも頻繁に見受けられるので、支えを失ってしまわないように注意して。もちろん音程が上がってしまうと何もできなくなってしまう楽器ではあるのですが。

それぞれがよそを向いて表現をしたり、突然3人で調和しなきゃいけなかったり。その方向転換も難しい曲ですね。それぞれソロに関してはよく考えているし表現への意欲もあるのだけど、相手のソロに対して自分がどうするか、ソロから調和に向かうときにどうするか、が不足していて、結果としては少し散らかった印象の演奏になってしまっていました。また2人ともフレーズが短いことが多く、せっかくの歌心が分断されるところも多かったです。

「理想のプーランク」があると思いますから、それと自分たちがどう解離しているのか、聴き比べてみると色々発見があるかもしれません。

メジャーどころでフランセ、プレヴィン。マイナーどころだとラリエ、ミルデ、シュターミッツ。オリジナルに絞ってもこれだけレパートリーがあるのでぜひ色々やってみてくださいね。その上でプーランクに戻ってくると発見があるはず。

 

10.ファゴットソナタヘ短調/テレマン

レッスンからの伸び幅にビックリしました。いわゆる「一夜漬け」だとしてもここまで仕上がるなら立派なものです。表現に対しての積極性は初めて会った頃からあったと思いますが、それが今回は非常にいい形で表れていたと思います。「積極性」はいつだって空回りとの戦いなので、今回の演奏の感覚を忘れないようにするといいでしょう。

ここはおさめて、ここは向かって、ここは引いて・・・などなど、かなり口うるさく言いましたがそれは最低限の「様式」で、やればとりあえず形になる、みたいなところに限って指摘してきました。よく理解し表現できていたと思います。

あと後半になってもバレてる印象が音に出ていなかったのもすごいことです!体の使い方が上手いのでしょうか。素直に感心しました。

あとはバロック特有の自由さだったり即興性みたいなところまで踏み込めるとよかったですね。本番への一夜漬け、大変立派ですが、僕も頑張りますのでレッスンに向けた小さな一夜漬けにも期待してます!

 

11.コンチェルティーノ/ダビッド

第30回への展望はケックランと君のダビッドを聴いて、実現を決断しました。特筆すべきは音楽的な安定感。「おかしなことをしない」と「やりたいことをやる」の両立が安定して出せているので、旋律を奏でる、ということをよく感覚で理解できているのだと思います。それがあれば技術的なことは後から必ずついてくるので、今の感覚を忘れないで。ダビッドは理解しやすい音楽だから、それも助けてくれたと思います。

表現が素晴らしいと気になってくるのは技術。明るく突き抜けてくるような音だとか、ハッとするような鋭い発音だとか、息をのむような弱い発音だとか、表現のためのテクニックをもっと磨く意識を持って。基本はイメージから身に付く技術だと思うので、普段出さないような音も練習で出してみる習慣をつけるといいかもね。

速いところも安定していましたが、少しフレーズが止まりがちなので意識を変えてみて。休符の取り方とその前後の処理や準備でフレーズの切れ方はどうとでも変わってくると思います。

 

12.ファゴットソナタより/ハールストン

昔から音の線が細い印象がありましたが、今回の演奏の豊かなこと。大変な名演だったと思います。曲へのイメージと実現が確実になされていて、聴いていてまったく飽きのこない演奏ができていました。これだけ自分のやりたいことができれば、アンサンブルや合奏で人のやりたいことも理解できるようになると思うので、そこへのアプローチが面白くなってくるんじゃないでしょうか。この先とっても楽しみです。

レッスンでも触れましたがとにかく課題は音色の変化。表現幅が広がってくると、やはり音量や発音の差は限界があり、音色の変化が必要になってきます。「ちょっと汚いかな」と思ってしまう強い音も、「ちょっと抑え過ぎかな」と思ってしまう死んだ音も、時には有効かもしれません。「いい音」のイメージを捨てて、「この音楽にはこんな音を」のイメージを持てるようになればもっともっと音楽表現が楽しくなるはず。

僕の良く知らない曲で教えた子がいい演奏をすると、やってみてくなるね。どこかで機会があったら僕もハールストン、挑戦してみようと思います。

 

13.プルミエソロ/ブルドー

僕のレッスンって3種類あるんですよね。形にしてあげるレッスン、整えるレッスン、そして今回君にした散らかすレッスン。良くも悪くも刺激になったと思いますが、そのせいで本番いろいろ考えること多くなっちゃったかな・・・。笑 とにかくこの発表会は上達が目的なので、それでよかったとは思っています。

そもそも、テレマンやヴィヴァルディ、ウェーバーやダビッド、シュターミッツやドゥビエンヌを経ずにこの曲に挑戦しているのでそれなりに飛び級なチョイスだったようにも思えます。もちろん技術的に難しい曲ではないけど、やっぱりフランス人の作品はね、いい演奏しようと思うと難しいです。

色々反省もあると思うけど、今意識してほしいのは音色の変化。終始ダークな音で、この曲はそれでいいところが多いけど、やっぱり突き抜けた明るい音もどこかでは聴きたい。それじゃないと変化のない演奏になってしまうしダークさも活きないので。フォックスはきちんと響かせるとダークな音が出る楽器だから、もう一歩踏み込めるとよかったですね。

とはいえトリを任せただけのハイクオリティな演奏はできていたと思うので、次回も楽しみにしていますね!

第26回門下発表会でした。ちょっと色々始めます。

こんにちは。しっかり春らしくなってきましたね。今日通った道で綺麗に桜が咲いていました。

2年間勤めた洗足学園での仕事が年齢で契約終了となり、4月からはちょっと時間がありそうです。色々と新しく始めようと思っていますので、ここでもまたお知らせしますね。

 

先日、第26回の門下発表会がありました。

 

今回は15名のソロ演奏がありました。レベルアップはもちろんですが、お互いの演奏を聴き、本番後や休憩中に称えあったり感想を言いあったり。この手の交流がコミュニティの良さですよね。

もともと来るもの拒まずなのもあって初めまして同士が結構多いのですが、すぐ打ち解けて仲良くなれるのはファゴット吹き同士のいいところですよね。

やる曲を決め、練習をしレッスンを受け、ピアノ合わせを経て本番へ。人前で5分や10分演奏を聴いてもらう、という時間に向けて、みんな必死に練習するのもあって、終わったあと別人のように上手くなります。とにかく発表することと同じくらい、それぞれが「うまくなる」がコンセプトなのがうちの発表会です。

 

次回は2023年7月16日(日)立川市某所で開催されます。午後以降開演、夜までやっている予定です。

参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン代1回分込み)

ファゴットソロ(社会人)15000円

ファゴットソロ(学生)10000円

アンサンブル団体 ひとり6000円(人数によって多少の増減あり)

ファゴット吹きか、アンサンブル団体(ファゴットを含まなくてもOKです!)ならどなたでもご参加頂けますので、ご興味ある方は下記フォームからエントリーしてくださいね。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さて、恒例の講評記事となります。今回とってもレベルが高かったので、安心して聴いていられましたね!プログラム順に掲載します。

 

1.演奏会用独奏曲/ピエルネ

初参加お疲れ様でした。色んな曲とファゴット吹きと出会うことができてよかったですね。いい刺激になっていると主催してよかったなと思います。

演奏は、もちろん言うまでもなくとっても上手になりました。技術的にもそうですが、きっちりフレーズごとに吹き切ること、ちょっと間違えても先に進むこと、よく心がけて練習ができていたと思います。

ソナタものはピアノに埋もれがちなのですが、しっかり音も前に飛び、バランスが取れていてよかったです。いつもレッスンで言っている「いい音をしっかり鳴らす」ことができていると最低限よく聴こえる音が出てくるのだと思います。またピアニストとのアンサンブルも思った以上にうまくいっていて、いい耳とアンサンブル力を持っているなと思いました。

課題は表現力と、表現に対する欲でしょうか。みんなの演奏聴いていて気付いたと思うけど、「こう演奏したい」という欲から表現は生まれてくるし、そのための技術がほしくなるもの。漠然と「うまく吹けたいいな」と思うのではなく、表現への意欲が生まれてくるとより上手くなるきっかけがつかめるんじゃないかなと思います。またご参加お待ちしてますね!

 

2.民謡風小品より/シューマン

レッスンでも言ったけどとにかく音程が良くなりました。とくに上の音域を楽器の性能に任せて吹けるようになったことが自分でも感じていると思いますが一皮むけるキッカケになったと思います。今の感覚を忘れず、楽器の性能を活かしにいってください。

クセのある表現を強いられる曲ですが、よく表せていたと思います。やりたいことへの拘りみたいなものも感じられて、楽器の音が良くなると欲が出てくるんでしょうね、そこらへんもとっても良かったと思います。あとはそのこだわりを自分一人ではなく、ピアニストと共有して一緒に出していけるようになるといいですね。どこまでいっても室内楽なんですよね。

課題はやっぱり音色のこと。明確な変化がないので、合うところには合うけど合わないところにはとことん合わない。強弱や音程感、発音での表現が良くできているので非常にもったいないですね。「ここはこんな音を出したい、響かせたい」みたいなイメージがもっとあると変わっていくんじゃないでしょうか。音色は操作より前にイメージが大事だと思います。

 

3.アンダンテとハンガリー風ロンド/ウェーバー

難曲を見事に演奏していました。ここ1年くらい、技術的にというか1人の音楽家としてとっても大きく成長したように思えます。持ち前の技術と表現力をうまく曲に落とし込めるようになってきましたね。音程や音色のイメージもよく曲にハマっていました。またいつも思うことですが、ピアニストとのアンサンブルが上手い。耳がいいとかセンスがいいとかいうのもそうですが、共演者に対して真摯であることがきちんと演奏に現れていて、僕は今回の演奏でそこが一番いいところだったと思います。

曲への取り組み方がうまくなってきたので、基本的に今の感じいいと思います。課題があるとすれば、曲をうまくまとめられるようになった一方、まとめにいくと幅が小さくもなる、ということ。いい意味でもっとやりたいことはやっていいし、やってみて「あれ?」と感じる感性があってもいいはず。非常に高水準だったけれど、一方でちょっとずつ物足りなくもあったのも事実です。以前までのようにまとまりなさい!と言ったり、今のように取っ散らかりなさい!と言ったりするのは矛盾しているようですが、きちんと君が成長・変化している証拠でもあると思います。

 

4.朗唱、レチタティーヴォとロンド/ボザ

長らく取り組んできただけあって、抜群の安定感でした。昔から課題だった表現力の部分も、とっても成長したように思います。レチタティーヴォのようなものを吹く機会はあまり多くないでしょうけれど、今回くらい積極的な音楽表現、ぜひ続けてみて。音量だけではなく、発音やら音色やら何やら色々なところからアプローチをかけていけてよかったですね。

技術的に不安を感じたときに表現が消極的になるのは悪いクセ。不安なときこそ思いっきりいきましょう!

シシリエンヌ、とっても素敵でした。ここ好きじゃないファゴット吹きいないと思うけど、とても素敵な演奏ができていました。それだけにハイEがね・・・。形にはなったけど、まだまだ。次いつハイトーンに挑戦するかわからないけど、音出しやリード試奏でのチャレンジをし続けてみましょう。指も忘れないように。

ロンドは余裕ありそうだったし、もっと攻めたテンポでもよかったですね。テンポも大事な音楽表現の選択肢だから、こだわっていきましょう。

苦手意識あるかもしれないけど、今度はバロックものに挑戦してみるのはどうでしょうか?また色々と発見があるんじゃないかな。

 

5.ロマンス/エルガー

復帰1曲目には重い選曲だったでしょう?僕に言われるまでもなく感じたと思いますが。笑 それでもきっちり仕上げてきたのはさすがですね。とにかく色んな譜面を「きっちり」演奏すること、その成功体験を積み重ねることが今は大事なんだと思います。その「きっちり」が自分でなかなか分からないのが君のファゴットの一番の問題点で、分かってさえしまえばとってもいい演奏ができるということ、今回の本番で理解してくれたら僕はとっても嬉しいです。

成功体験を積み重ねていきましょう。今は難しい譜面を吹く必要はないでしょう。

ピアノとはよくアンサンブルできていると思います。そこもこだわりがあったのでしょうが、テンポへの乗り方がほんの少しずつ遅く、またそれをごまかすためにちょっとずつ速くしていく、みたいなありがちなクセがなかなか抜けませんので、やっぱり自分自信でテンポとリズムを理解しかためることが大事だと思います。演奏自体の技術や表現力は言うことなしです。総じて難しい曲をよく演奏できていたので、スタートラインをもっと高くできるように。この場合のスタートラインというのは、オケで言うところの初合奏に当たるんでしょうね。

 

6.15の中級ソロより/arr.スパーク

初参加お疲れ様でした。奏法を中心とした基礎的なところをじっくり見ることが多く、曲に関してはあんまり触れることもありませんでしたが、本番はメリハリもありいい演奏ができていたと思います。レッスンで触れた奏法のところは、なおった分だけやはり良いですね。無駄もなくなるし、結果的に表現へ活きています。これから直す、というところもあると思いますので、引き続き気を付けていきましょう。

チューニングですが、オケだろうと室内楽だろうと、音質に気を遣いましょう。原則として、基準音より大きな音を出さない(基準音が聴こえなくなるので)こと。音程のチェックだけではなくて、基準音に対して自分の音がどう響いているか聞くこと。言い出せばキリがないですが、管楽器のチューニングはパフォーマンスでもあることをお忘れなく。ちょっと無神経な音でした。

僕は奏法や技術だけを見る、というのがあんまり得意でも好きでもないので・・・ぜひ次回はオリジナルやそれに準ずる曲を持ってきてほしいところです。

 

7.組曲/タンスマン

考え方色々あると思いますが、やっぱりステージ上なので、楽器を床に直置き、やめましょう。せっかくの素敵な衣装もステージ上のふるまいで台無しでした。大切なこと、ですよね。僕はシートストラップユーザーなので、いつもスタンドと一体です。

前の講評でも言った気がしますが、音程が良くなりましたね。チューナーで真ん中、とかつまらないことを言うつもりはなくて、ピアノの音程にピタリとハマるところが聴いていて非常に心地よく、とっても純正律してました。これぞオーケストラ楽器の真骨頂ですね。

フレーズの長さが天敵であるところですが・・・そこを苦にして居らず、タンスマンの魅力をよく表現できていました。一方で、聴かせる音と引く音の差があまりなく、フレーズ感はあるのに音楽の濃淡といいますか、メリハリは少なく聴こえてしまっていました。単純にフォルテはもっと出てもいいし、ピアノはもっと攻めてもよかったかもしれません。安定することと表現すること、両立ってとっても難しいのですが・・・表現に消極的になったらオシマイです、もっと色々仕掛けていきましょう!

 

8.ソナタヘ短調/テレマン

リズム、フレーズ感ともにとっても良かったです、分かりやすいようで意外にもつかみどころのない曲なのですが・・・よく表現できてしました。即興的なところも音楽の表現を活かすことができていて、直前レッスンが無駄にならずよかったです。聴いている限り、スタミナもなんとかなっていました。これ、本当にすごいことだと思います。

またピアノ、というより通奏低音パートとファゴットのパートがよくアンサンブルできていました。基本的には2声だけなのにこの濃度の高さ、バロックものはやっぱりいいですね。魅力を活かせていました。

安定感のある演奏だったのですが・・・ハッとするようなフォルテやピアノがなかったのが少し勿体なかったでしょうか。スタミナ管理の都合上仕方ない部分もあるのでしょうが、山場がハッキリ聴いてわかる、というのは予定調和が基本のクラシック音楽においては必須じゃないかな、と僕は考えています。楽章ごとに山場を1か所か2か所でいいので、決めておくとよりよかったと思います。

 

9.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

やりたいこと、が明確に見える演奏でした。そのためにしっかり準備できていたこともとってもよかったです。やはり「やりたいこと」のために技術というものはあるし、そのための練習方法はよく心得ているから、あとは場数かな、という感じがします。その場数というやつがなかなかに厄介で、踏むうちに荒くなったり、なぜだか技術的に衰えたり、色々あると思いますがそれ含めて成長なので今後も自分でよく考え練習していってほしいです。

安心して聴いていられる演奏だったか、というとやっぱり・・・。安定感はやっぱり以前までの方があった。それは演奏に欲が出てきた結果でもあるのですが、やっぱり安定感というのも一つ大事な要素だと思います。練習時の小さな傷を見落とさずきっちり楽器を通してソルフェージュをしていくことを怠らずに。難しいところを練習するだけが練習じゃない。またリズムに関してはかなり甘かったので、もっともっと厳しく。リズムは数学なので、レッスンでいくらでも言って差し上げますが、自分でもっと数えられるように。録音録って聞いてみるのもいいでしょう。

色んな楽譜をきっちり読む場数、たくさん踏んでいきましょう!

 

10.スケルツォ/ミロシニコフ

色々とハンデのある中、しっかり準備されてて素晴らしかったと思います。レッジェーロの表現というのは勇気が要るんですよね・・・一つ間違えば痩せた音になってしまうし、得意不得意もかなりあります。よく表現できていたと思いますが、やはりスケルツォという作品においては、もっともっとはっきり短く滑稽に音を並べてもよかったかもしれません。ただその分と言いますか、楽器は効率よく鳴っていて、ピアノが厚いところでもよく聴こえてきました。そこの塩梅は難しいところです。

途中の抒情的なところはさすがの表現力でした。ビブラートが少し浅く早いのが気になりますので、もう少し楽にコントロールする方法を探してみるといいかもしれません。

またリズムを活かそうとするとやはり拍感が乱れてしまうのも気になりました。要するに短く吹くと転んでしまうのですが、これも短い音を用いた音楽に慣れるとまた違ってくると思います。レッジェーロの音楽への経験値をもっと増やしていくといいかもしれませんね。

また演奏聴けるのを楽しみにしてます!

 

11.朗唱、レチタティーヴォとロンド/ボザ

音色の変化がとっても魅力的な演奏でした。音量だけじゃなく音色が変わることでファゴットの表現はどこまでも幅広くなりますね、あらためて思いました。甘い音、太い音、深い音、痩せた音などなど・・・言語化するのは簡単ですね。とにかく変化に富んだ演奏で聴いていてとても楽しめました。

中・低音域のピッチはちょっと気になったかな。基本的に高いことが多いです(普通のことなんだけど)それもハイトーン仕様と思うとやむをえませんが・・・そーいうリードでいかに下げるか、も慣れでしょうかね。低音はどうにもならなくても、中音域は気にすればもっとどうにかなったんじゃないかな。いい音程を吹くとピアノがうまく聴こえてくるんですよね。ハイEはなんとかなってよかった。直前で小さくしていくとうまくいかないので、そこはちょっと攻めすぎでしょうか。

連符の後ろの方が少し投げやりに聴こえがち。丁寧に処理するところ、先に向かうところ、パッと止めるところ、色々あっていい曲だったと思うので気を付けてみて。

それでも安定感はやっぱりさすがでした。練習の質と量のバランスがよかったんだと思います。その調子でやれるといいですね!この曲みたいに簡単じゃない曲が多いですが・・・

 

12.ファゴット協奏曲第1楽章/シュターミッツ

安定感抜群、かつ制約の多い曲ですがきちんと演奏できていました。また圧倒的に音抜けが良かったですね、きちんと楽器が響いている=いい音が出ている、ということだと思いますのでその方向性で鳴らしていきましょう。

緊張もあったんだろうけど、音を出していない短い休符とか伸ばしている時に拍感を見失うのは良くない傾向だと思います。特に伸ばしている間は、ただ数えてるだけではなくオケの音をきちんと聴いて乗っかる必要があります。すこしクレッシェンドなどをかける、などは簡単ですが・・・まずはきちんとカウントを取ることから。それは合わせどうこうではなく、自分の練習でやる習慣をつけましょう。

あとは全体的に優等生な演奏だったので、音量やら発音やらビブラートやら何やら、とにかくもっと変化をつけましょう。やっているつもりでも、伝わるにはもっと仕掛けないと。何事も、まずはきちんと人に伝えるところから。

色々言いましたが、精度の高いいい演奏だったと思います。他の人の演奏で色々刺激もあったかな?

 

13.シシリエンヌとアレグロジョコーゾ/グロヴレ

堂々としたいい演奏だったと思います。楽器を鳴らすのがうまいので、華のある音色がよく響いていました。音域が変わってもフォルテでもピアノでもそれが失われないのは素晴らしいことで、アンサンブルなんかだと周りを助けることでしょう。変なクセもなくなったのでぜひやってみて。

華のある音はいいのですが、音色の変化がほとんどないのは気になりました。大きい音と小さい音はあるのですが、それだけ、とも言えます。めいっぱい華のある音はいいのですが、そればかりでは飽きがくるし、強弱と音の長さだけで表現しきるほどファゴットはレンジが広くないので・・・。例えばピアノでも細い音と優しい音と甘い音、フォルテなら強い音キツい音太い音などなど・・・いうのは簡単ですが、とにかく「ここではこんな音色を出したい」とまず思うところから。そのために技術的に音の出し方を工夫していけば自ずと変化は生まれてくると思いますので、少し考えてみて。

とはいえミスも少なく精度が高く、基本的にはとても変化に富んだ演奏でした。

 

14.ファゴット協奏曲/ウェーバー

全楽章やると見えてくることがあるね。吹く側も聴く側も。

積極的に仕掛けていく、魅力的なウェーバーだったと思います。レッスンのときは単調でしたが本番は別人のようでした。また低音のタンギングがとてもうまいですね、ウェーバーやる上では大事な技術です。

1楽章は、箇所ごとのキャラクターの違いをもっともっと出していければよかったと思います。ちょっと滑稽なテーマ、甘々のアリア、迫力のある技巧ポイントなどなど。積極的にテンポの変化を使ってもよかったかもしれません。それはピアニストとの連携が必要になってきますが・・・2楽章はちょっと音程が気になったかな。積極的にいくときに一番気にするべきは音程。それを損なっては台無しになってしまうことも多々あります、今回はそこまでではありませんが。でも歌心のある演奏で、僕の伝えたいことはちゃんと伝わっていて嬉しかったです。3楽章は圧巻。1楽章と違ってキャラクターの違いが明確で、曲の魅力が抜群に活きた演奏でした。

やはりウェーバーは大曲ですね。

 

15.3つのロマンス/シューマン

やるもんじゃない、と(お互い)言いながらも、うちの発表会でこの曲史上最高の演奏だったと思います。そうそう更新されないでしょう。よく理解し、よく感じ演奏できていました。

技術的なことで言うと特定の音のビブラートのときに音程が下方向にブレるクセがあるのでそれが少しもったいない。また体力的なことと曲の難しさからだろうけど、少し守りに入った演奏には聴こえたかな。それゆえの完成度だとは思うのですが・・・もっと聴いている人を震えさせるようなフレーズがあってもよかったかも。そこらへんはお好みでしょうけれど・・・

あとこの手の曲だからこそ、強いアタックを使うべきところでちゃんと使ってほしかった。全部柔らかい発音なので、大事なところで変化に欠けることが(例えば2楽章の中間部とか)あるのも惜しかった。またバテからくるでしょうが音の処理が曖昧なところで明らかにエラーが起きているので録音で確認してみて。口離すのとブレスに集中しすぎず、音の処理にももっと神経を使ってみて。

でもそのくらいかな。とにかく完成度の高い演奏だったと思います。