ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第19回発表会でした。講評とか運営のこととか

コロナ禍続いておりますがいかがお過ごしでしょうか、ファゴット奏者のとのむぅです。

仕事も少しずつ元に戻ってきつつありますが、私のような末端フリーランス奏者にオケの仕事がわんさか、ってわけにもいかず、まだまだ影響がある状態が続いております。それでも楽器に触る時間が増え、また人前で演奏できる機会がたくさんあること、とても幸せに思います。当たり前じゃないんだな、と思うことが大切のようです。

 

さて少しだけ出演情報を。

モーツァルトの時代に栄えた「ハルモニームジーク」と呼ばれる編成、木管八重奏(オーボエクラリネット、ホルン、ファゴットが2人ずつ)でのコンサートに出演します。客席では食事と飲み放題がつきます。またオンライン配信もありますので合わせてご検討いただければ幸いです。

ハルモニームジークvol.23
2020年12月9日(水)19:00開演(18:30開場)池袋オンリーユー(池袋駅西口徒歩6分)

魔笛/モーツァルト
八重奏曲/ベートーヴェン

来場チケット(食事・飲み放題付き)一般4000円 学生3000円 オンラインチケット:2000円

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来場チケットは下記フォームからお申込みください。

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オンラインチケットは下記のページからどうぞ。お申込みの際にメッセージ欄に「ファゴットの殿村から案内を受けました」とご記入頂ければ幸いです。

ハルモニームジーク vol.23 - TwitCasting

 

 

続いて、年明けになりますが・・・。数年前から結成しつつもメンバーの渡仏・渡独などでなかなか公演できずにいましたが、今回タイミングが合いコンサートをやることになりました。久しぶりの友人たちとどんな音がするか今からとっても楽しみです。

アンサンブルファルベ(管楽器メンバーによるコンサート)

2021年1月8日(金)19:00開演(18:30開場)

スペースDo(管楽器専門店ダク地下、新大久保駅より徒歩3分)

チケット:一般3000円、学生2500円、オンライン配信1500円

出演:菅野芽生(フルート)高田園子(オーボエ)米倉森(クラリネット)堀風翔(ホルン)殿村和也(ファゴット)紅谷麻美(ピアノ)

ディベルティメント/ルーセル(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.Pf)

オーボエファゴットとピアノのための三重奏曲/プーランク(Ob.Fg.Pf)

バラード、パストラーレとダンス/エヴァイゼン(Fl.Hn.Pf)

木管五重奏曲/キラール(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg)

六重奏曲/プーランク(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.Pf)

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チケットは同じく下記のフォームまで。

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配信チケットはこちらから。

アンサンブルファルベウィンズコンサート - TwitCasting

 

 

どちらも素晴らしいメンバーによるコンサートですので、ぜひ足をお運び/ご視聴ください。お待ちしております!

 

 

さて、先日第19回の門下発表会がありました。今回はディスタンスを取るため、また配信の都合もあり公共のホールをおさえて開催しました。ソロ14人、アンサンブル6組と全盛期ほどではないにしろたくさんの演奏をお届けしました。ゲストに静岡交響楽団ファゴット奏者の東実奈さんとサキソフォン奏者の田村哲さんをお招きし素晴らしい演奏を聴かせてくださいました。

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1000人近い収容人数のホールでの発表会開催は初めてで戸惑うことも多かったのですが、広いホールで吹く、ということも生徒たちにもいい刺激になったようでした。

今回の反省点として、ゲスト奏者を含めたプロの演奏(自分も含めて)が出演者、特に前後の出番の人にプレッシャーを与えている、という声を何人から頂きました。それを踏まえて、ゲスト奏者を招くことと僕自身の発表会での演奏は今後しないこととします。最後のゲストがこのお2人で僕はとっても幸せでした。

 

また「配信もするぞ」と言ってはいましたが電波状況が悪くまともなお届けができなかったこと、ここにお詫び申し上げます。視聴しようとしてくださった方は個別にご連絡(torakitsune.fox@gmail.com)頂ければ、全員の演奏が聴けるURLをお送り致します。申し訳ありませんでした。

 

今回はコロナ禍の中ということもありましたが、最近になって楽器への意欲を取り戻した人とコロナ禍でもオンラインレッスンなどで継続してきた人がいて、レッスンの進め方などがそれぞれいつもと少し異なったりもしました。以前できなくなった発表会で演奏予定だった曲を持ってきた人もいれば、新しい曲に挑んだ人もいて、長くやった成果を出すことの難しさ、というのも感じたようです。本当に今回は、いやいつも通りではあるのですが、面白い演奏がたくさん聴けました。幸せなことです。

 

次回発表会は来年3月を予定しております。ファゴットのソロか、アンサンブル(ファゴットを含まなくてもOKです)でのエントリーで、どちらも1回以上僕のレッスンを受けて頂ければどなたでも出演可能です。日程未定ですが決まり次第各所でアナウンスさせていただきます。

春のひとときコンサート(殿村門下発表会)

2021年3月20日(土)お昼ごろ開演

参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン1回分謝礼含む)

ファゴットソロ(社会人)15000円

ファゴットソロ(学生)10000円

アンサンブル(1人あたり)6000円

お申込みは下記フォームからどうぞ。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さてここから先は各演奏の講評となります。参加者以外の方が読んでもよく分からないものになってしまうこと、ご了承ください。

 

1.レチタティーヴォシチリアーノとロンド/ボザ

もう褒めなくていいでしょ、って思うかもしれないけど素晴らしかった。君がこの曲を演奏できたことについて、君自身はもちろんとして僕にも周りの子たちのもとてもいい刺激になりました。ハイEは出るに決まっていると思ってた。ハイトーンへの探求はここで終わりではないので、教えた指を使って日々研究を。色んなリードで試してみることも大事です。タンスマン、サンサーンス、ビッチ、すべてハイEの出し方は違ってきます。

やはり中~低音域の音程は重要な課題として残ります。基本的にファゴットの低音の音程は高いもの、そう思って警戒していきましょう。

レチタティーヴォはもっとアゴーギグが効くとよかった。またピアノとの絡み方ももっと頭に入れておくべきだったと思います。ピアニストとのアンサンブルに関してはもっと経験を積む必要がありそう。無条件でつけてもらえる、という状態はそろそろ卒業しないとやりたい曲は吹けないかも。

今回身につけた「練習の仕方」を今後すべての譜面に活かせますように。

 

 

2.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

緊張してるのかな、と心配してたけど、伸び伸びとしたいい音で演奏できていたと思います。音楽の運びなんかは今までのどの演奏より素晴らしかったです、欲が出てきて、鳥肌の立つ瞬間がたくさんありました。楽器もよく鳴るようになりました。

ピアノとのアンサンブルがすこしうまくいきませんでしたね。普段からどんな音がピアノから出てくるのか想像しながら練習をすることがとても大切です。合わせも聞けなかったので何とも言えませんでしたが・・・不安なら「もう1回お願いします」と食い下がってみるのも大切です。それでも、なにかあった後ちゃんと戻ってこれるのは、長くこの曲をやっただけのことはありますね。

我々の「ソロ」というのは音楽のジャンルとしては室内楽、つまりアンサンブルですから、合わせられないとせっかく練習したものがうまく聴かせられない結末になってしまいます、今回でよくわかったんじゃないかなと思います。

とはいえ「上達」が目的であるこの発表会としては、それでもいいんだと思います。よく練習したことは僕が一番わかってます。次は本番でそれを発揮できるように、また一緒に頑張っていきましょう!

 

3.4つの標識/シュテインメッツ

曲自体が「ん?」と思うほど不思議なつくりだったり、すごく美しかったりかっこよかったり、のコントラストが魅力だと思いますが、よく表現できていたと思います。また2人ともホールとの相性もあるかもしれませんがとっても楽器がよく鳴って遠くまで響いていました。レッスンで触れた「音程」のこともよくできていました。言ったか忘れてしまいましたが、ファゴットは大体において音程さえ取れていればよく響くしいい音色で吹けます。今回つかんだ奏法のコツを自分のものにできるよう今後も頑張っていってほしいと思います。

アンサンブルとしては、二重奏なのでそりゃ合います。というか、完璧に合わなくてもいいんですが、良くも悪くもよく合っていました。ただ二重奏ですから(しつこい?)もっと片方が目立ったり引っ込んだり、仕掛けたり反応したり、と不確定要素があったほうが僕好みではありました。仲はいいけど、本音で喋るほどではない、くらいの関係性のアンサンブルでした。そこは惜しいところですね。

コントラは、まだまだです。決して下手くそではありませんでしたしよく練習したのだとは思いますが印象としては荒くいい加減なところが多かったです。やかましい低音楽器、ではなく、低音特化のソロ楽器として丁寧に練習を積んでいきましょう。せっかく買ったんだから、達人を目指しましょう。

 

4.ファゴットソナタヘ短調/テレマン

レッスンで課題にした「欲」について、よく表現できていたと思います。またもともと持っているやさしい発音が曲によくマッチしていました。よく響くいい音で楽器を鳴らせていたとも思います。ただ音楽の盛り上がりがまだいびつ(急に大きくなったりしがち)でした。自然な流れを作るためには楽器を鳴らす技術がもっと高くならないとできません。「欲」のための「技術」、もっと磨いていきましょう。

2楽章の加速については色々な要因があります。合図、ピアニストとの絡み方、特定の短い音で転んでしまうなどです。いくらでも止められたと思いますから諦めずに冷静にやれればよかったのですが・・・それでも食らいつく根性と技術は見事ではあったのですが、その速さで音楽を乗せるだけの力はまだなかったですね。早くなってしまっても「いっちゃえ!」ではなく、頭の中に2割は冷静な司令塔を残し「まてまてまてまて」とできるようになるとよかったですね。ただ速いおかげか、バテが少なく済みましたね、それは怪我の功名とでも言いましょうか。

音程がいいのでピアノの左手の音とよく絡んでいました。その音程でもっと楽器が鳴るようになれば、素敵ですね。今後も頑張っていきましょう!次も楽しみにしてます。

 

5.ファゴットソナタ/グリンカ

なにせ当日の付け焼刃レッスンだったので、なかなか伝えられないことも多かったのですが・・・・安定感はさすがでした。この曲で「安定する」のは、なかなかできないことでと思います。また、やはり音程がいいのでよく響きピアノとも合っていました。

強弱がきちんとついているのですが、「強」のときのアクセントやスタカート(短い音)で奏法乱れが原因か良い音が鳴らなくて音楽の流れが止まることが多い印象でした。音楽のためにもっと技術を身につけていきましょう。

また、少し体の使い方が硬いような印象もありました。体は横に動かすのではなく上下、特に下方向への意識を持つと楽器がよく鳴ってくれますのでお試しください。

次回はもう少し長期的にと言いますか、じっくり取り組めるといいですね・・・早めに日程調整しましょう。でも今回のような歌う曲、とってもいい刺激になると思いますからぜひまた。お待ちしてます。

 

6.2つのヴァイオリンのための5つの小品/ショスタコーヴィチ

ピアニストの腕前によるところが大きいですが曲想が非常によく伝わってくる良い演奏でした。実は僕は「ショスタコーヴィチ」という作曲家にほとんどなじみがないのですが、今回の演奏を聴いてとても興味が湧きました。

さてまずは、楽譜のことです。どのようなものを使ったのか僕は見ていませんが、ステージに上がった瞬間から「音楽家」という役を演じる必要があるのでもっとしっかり準備をしてきましょう。譜面台に置いたらどうめくるのか、どうたたんで次の楽章にいくのか。地味なことですが、室内楽においてはとっても大切な要素だと思います。恩師の受け売りですが、僕の本番中譜面がガサガサなってしまったときに「舞台に上がったら、自分の味方は楽器と楽譜だけ」なんてお説教をされたことを思い出しました。

ヴァイオリンとクラリネットのお2人については、腰から上しか使わず演奏をしているのが気になりました。いやヴァイオリンは両手と首、クラリネットは両手と口しか使わないのですが、二人して完全に「棒立ち」なのが」気になりました。もちろん音楽にも影響が出てきます。膝は伸ばさずもっと全身を使った演奏方法を見つけると幅が広がっていくと思います。ヴァイオリンは大変よく理解して音を並べていますが「きまじめ」な印象が拭えません。もっと「やんちゃ」しましょう。今回の曲もそれが足りてない印象でした。クラリネットは息の長い曲で大変だったと思います。内声に入るとき、ただ小さく隠れるだけではなく一番いいところ(音程とか音色とかバランスとか色々と)にサッと入り込めるとアンサンブルの達人と呼べるようになるでしょう。

ピアニストは大変ブラボーでした。僕のお願いした「誰も出てこなきゃいいと思えるような前奏」というのは本番で見事に発揮されていて嬉しかったです。この手の編成ではピアニストがリーダーですから「俺がこんなかましてるのにお前らはなんでそんなつまらなそうに弾く(吹く)んだ?」なんて一声、あったでしょうか?なければ、言ってほしかったな、と思います。

ファゴットばかりでアウェイに感じたかもしれませんが、僕はアンサンブルにファゴットが含まない編成が入るのをすごくうれしく思っています。ぜひまたなにか挑戦しにきてください。

 

7.ファゴットソナタホ短調/テレマン

まず第一に音がよくホールに響いていました。遠鳴りする音、というのはすなわち「いい音」だと僕は思います。

音楽の流れも大変美しかったと思います。ふわふわとした雰囲気が続く曲ですが平坦にもならず聴いていて心地のいい演奏でした。2楽章は特にいやな音列が地味に続く、という曲ですがそれを苦にしておらず、よく練習したのが分かりました。

3楽章は難しい楽章でしたね。特に前半は体に音があまり入ってないような印象でした。「よくわからない」ものこそ時間をかけて何度も音を並べてみることが大事ですから、油断ないように準備するようにしましょう。レッスンで触れた発音についてもよく復習できていたと思います。

4楽章のテンポ感は自然で大変よかったです。他の楽章でもそうですがフレーズの語尾がいい加減なことが時折ありもったいない箇所がいくつかありました。ブレスの前は特に気を使いましょう。連符はよく回っていましたがレッスンでも言ったように息が入らない連符は聞いてるほうは「ふーん」という印象になりがちなので、難しいところこそ息遣いに注意して。せっかく回るのにもったいないですよ。

そろそろ少し厄介なフランスもの、挑戦してもいいかもね。また楽しみにしてます。

 

8.プルミエソロ/ブルドー

実はみんなからの評判が一番よかったのがこの曲でした。レッスンで教えなきゃいけないことが多くどうなるかと思いましたが5教えたところ10伝わっていた、という印象で今回ほんとうに素晴らしい演奏だったと思います。これだけ熱いブルドー、そうそう聴けるものじゃないです。

何がよかったかと言えば、思いと技術のかみ合わせがよかった、ということだと思います。どちらか片方が空回りすればこんな演奏はできませんので、いい練習をたくさんした結果ですね、この演奏は誇っていいので自信をつけてください。

よく練習した副産物として、連符がすごく丁寧です。丁寧でいいのですが、少し停滞して聴こえる箇所もありましたので、練習は練習として丁寧に、演奏自体は熱く。連符に息は入っているのですが流れがあまりなく、惜しかったです。

音程はもうひとつ課題、といったところでしょうか。しっかり意志をもって鳴らしているところは悪くないのですが、気持ちが入ってない音が軒並み音痴なので(普通わりと逆なのですが・・・)もう少し全体に気を遣って。しかし音程と(悪い意味での)丁寧さくらいしか指摘するところがない、と言ってもいいくらいいい演奏だったと思います。この調子でほかの曲も取り組んでみてください。

 

9.ドゥジエムソロ/ブルドー

楽器を変えてからあまり日が経っていないのを心配していましたがよく吹きこなしていました。まだまだ鳴るポイントを探せると思うのでもっと仲良くなれるように日々過ごしてみてくださいね。

丁寧によく練習したのが伝わる演奏でした。連符に音楽が乗っている、というのは(上記いくつかの講評を見ればわかると思いますが)なかなかできることじゃないし、意識して練習した成果だと思います。もちろん歌うところの音楽も素晴らしく、成長著しいな、と思いました。腕前についてもそうですが、なんというか大人になったのかな、という気がします。器用なだけの演奏は卒業できたと思います。

さて課題ですが、「やめグセ」です。ある種の完璧主義からくるこのクセがずいぶん深く根付いてしまいました、レッスンでも傾向があったのできっちり指摘すればよかったのですが・・・。克服の仕方は2つ。間違えても突っ切る練習をするか、ぜったいにミスのない演奏習慣をつけるようにするか。どちらも大切だと思います。それにしてもあれだけやめグセを発動しながら寄せてくれたピアニストにはしっかり感謝しましょう。おそらくやめグセさえなければもっと音が並んでいたはずなので・・・そこが悔やまれます。克服できるよう、定番レパートリーから未履修の曲を丁寧に丁寧に練習してみるのがいいですね。エチュード持ってくるのもいいかも。ミルデのスケールなんかどうですか?とてもいい効果が見込めると思います。お待ちしてます。

 

10.2つの幻想的小品/ニールセン

部の最後だったのもあって、音出し不足と緊張もあって出だしは不調でしたね。空気を読まずしっかり音出しをしてしまう度胸も大切です。そーいうのを僕は「舞台さばき」なんて読んだりしてます。

音楽の流れと色彩感が抜群でした。音域を広く使えない曲なので難しいところをよく表現できていました。ピアニストのかみ合わせもよく、安心して聴ける演奏でした。課題だった中・低音域の音程も非常に良くなりました。いつまでも難しいところなので探求していきましょう。

2楽章はよく練習できていましたが・・・・いわゆる「本番テンポ」へ慣れが足りなかったような気がします。スピード感についていけず、聴かせどころが今一つでした、非常に惜しい。それでもピアニストとズレないのはいい耳を持っているなぁ、と感心しながら聴いていました。いい耳を持っていても演奏中はなかなか発揮できないものなのですが、そこは大きな長所かもしれませんね。

レッスンでも言いましたが2楽章最後の表現は完璧でした、作曲家の意図通り、って感じ。オーボエ界ではそれなりに定番レパートリーのようで、名曲らしさが光っていました。次回もまた楽しみにしていますね。

 

11.田園風コンセール/トマジ

まず、聴いた印象以上に難しいこの曲を3人ともよく練習してきたな、と思いました。レッスンではまだ不安定だった箇所もずいぶんまとまって聴こえました。「アンサンブルなんぞしょせん個人技の集まり」と僕はいつも言っていますが、それを体現するような演奏でした。もちろんしっかりまとまってもいました。それは3人ともが普段から「まとまり」を意識して演奏しているからなのかな、と思ったのですが、どうでしょうか。

オーボエは「簡単そうに難しいところを吹く」という点においてピカイチだったと思います。それは誠意のある練習と勉強の賜物だと思いますので誇っていいのですが、レッスンで何か所も指摘したフレーズの歌い方については・・・。「このくらいでいいかな」ではなく「これじゃやりすぎかな」くらいやって、ようやくほんの少し伝わる程度、なんだと思います、誰でも最初は。もっと思い切った音楽表現を。テクニック面がピカイチ、歌い方が足りない、だと、どうしても「棒吹き」の印象が抜けません。もし音色ってやつにこだわりがあるのだとしたら、いったんそれを捨てて音楽に特化したところにこだわってみませんか?

クラリネットはこのアンサンブルの要でした、大変すばらしい演奏でした。オーボエファゴットも突然好きにやりたがるところがあるのをうまく仲介している印象でした、アンサンブルの達人、と言ったところ。旋律を取るところも大変美しい歌心をお持ちなのですが、旋律を吹く時に少し線の細い音になってしまうクセがあるようで、それがダブルリード相手だとすこし厄介なのでもっと太い音を意識してみると周りがやりやすくなると思いました。

ファゴットはソロも大変ななかこの難しい曲をよく練習してきたと思います。というか、ソロで掴んだことをこちらにもずいぶんよく落とし込んでいて良かった。アンサンブルになると線の細い音がよくコントロールできているのですが、そればかりではなく時には太い音でオーボエクラリネットを支えるようなシーンがあるともっとよかった。アンサンブルのときこそ楽器の性能が問われるのでもっとポテンシャルを生かせるように。

半年以上取り組んできた3人だと思いますので、同じメンバーでまた別の曲、というのもいいんじゃないでしょうか。次回も楽しみにしてますね!

 

12.サマーミュージック/バーバー

アンサンブルなんてしょせんは個人技の集まり。5人それぞれがいいパフォーマンスを発揮できればそれでもういい演奏。と通算2回のレッスンで言っているのを見事に体現してくれました。それぞれがきちんとレベルアップしてくればアンサンブルとして成長します。合わせはそのかみ合わせの確認作業、に集中することができますから、「合って聴こえる」箇所を増やすことに時間を使えるわけですね。合わせも有意義な時間だったんだろうな、と想像できます。

5人の和やかな性格のためか、長くやったためか分かりませんが結束感も感じられました。「木5を長く継続する」というのは思ってる以上に難しいことなので、もし今後も、ということであれば未来永劫一緒にやっていってほしいものです。

曲の頭から後ろにかけて、だんだん5人とも楽器が鳴るようになっています。じっくり音出しができる環境ではないのですが、曲間でしっかり音出しをすればもう少し頭からみんな楽器が鳴ったのかな、という気がします。舞台さばき、とでも申しましょうか。本番直前の音出しだけではなく、もう少し(いい意味で)ふてぶてしく自分のパフォーマンス発揮を意識できるといいですね。そうすれば緊張も少しは和らぐはず。

とにかく木5ってやつはみんなの憧れ編成なのだから、この団体を基準に、くらいに思って皆さんには取り組んで頂きたい。

 

16.ソナチネ/クレメンティ

まずは礼をしましょう。演奏前と後に礼。立派な演奏家はみんなステージのふるまいも素敵なものですから、そこから真似してみることは大事なことです。

実はこの曲は僕が音大受験で弾いた曲でした。こんなにしっかり弾けなかったのはよく覚えていますが・・・。笑

僕はピアノは完全に専門外なのでコメントはあまり多くできませんが、指の力がしっかり鍵盤に伝わった良い演奏だったと思います。ミスが起きるところについては、おそらく家で(学校で?)練習しているときにミスを通り過ぎて弾いているところだと思います。ミスは偶然ではなく必然で起きるので、間違えたらこれ幸いとその箇所を責めて練習するのが大切です。それができたら、今度は少し前からミスした箇所を通り過ぎる練習をしましょう。その「通り過ぎる練習」が不足していたような印象があります。参考になれば嬉しいです。

 

17.ワイセンボーン1巻より1番、2番

東さんのお弟子さん、ということは忘れて、僕がレッスンで聴いたらこんなコメントをすると思います。

1番

ブレスの回数が多い。僕個人としてはこの曲はブレス無しで吹き切るもの。mpでpocoadagioの2拍子であればそこまで非現実的な息の長さではないはずです。特に中~低音域であんなに音量を出しては持つはずもないですので、息の管理をきっちりと。また息がまっすぐ入らず音ごとに揺れてしまうので、ロングトーンのような息をしっかり入れて指を動かす、というレガートの基本をもっと忠実に。もし息を途中で取るのであれば多くて1回か2回、決まった場所でブレスを取る練習をする必要があると思います。

2番

E→Fisの動きをもっとしつこく練習して。ハーフホールの音は音程が上がりがちで、ちゃんと理由があります。ハーフホールがきちんと空いてないと口を閉めないとオクターブ下が出てしまう=口を閉めてなんとかひねり出す→音程が上がる、ということです。まずは指がしっかり動くことを確認して。E→Fisの運指はどこまで上達しても苦労しますから、今のうちに丁寧に練習しておきましょう。5小節目以降でミスが生じるのはamollのスケール練習がまだ足りてない証拠なので、まずはそちらから。ピアノのほうでも触れましたがミスというのは偶然ではなく必然で起きるものなので、見過ごさず丁寧に練習するクセをつけましょう。

なんて厳しいことばかり書いてしまいましたが、基本的にいい息がたくさん楽器に入っていてホール中に良い音がたくさん響いていました。その音の良さは僕の弟子たちは誰も真似できないくらい素晴らしいものでした。

次お会いするときがあったらまた素敵な演奏を聴かせてください。大人ばかりのなか不安も多かったと思いますが、参加してくれてありがとう。

 

18.2つのファゴットのためのロマンス/ブルッフ

本番のときくらい、きっちり練習したうえで合わせ・レッスンに挑みましょう、もう少し完成した状態でこそ言いたいことはたくさんありました。そこはアンサンブルもソロも一緒ですね。

「全然ちがう演奏がなぜか合う」ということについてお2人は最高の相性といえると思いますし、それこそがファゴット2本の魅力だと僕は考えますので、聴いていて幸せな気持ちになれる演奏でした。課題だったトリルもきれいに入っていてよかったと思います。中音域に対して高音域の鳴りが弱い傾向が2人ともあるので、高音域を太い音で、というのを今後ぜひ身につけていってほしいですね。もっと華やかな演奏ができるとよかった。ピアニストとの絡み方が2人ともとてもよかった。3人で演奏している感、というのは合わせも少ない中よく出ていたと思います。

細かい音はもっと丁寧に並べてほしかった。インテンポに無理やりはめる、というよりは時間を使っていいから息をしっかり入れて並べるだけで印象がずいぶん違ってきます。2本で演奏する箇所なら合っても聴こえます。

再現部直前~再現部が世界で一番うまい演奏だったと思います。(この譜面は2回しか演奏されていませんが)

お2人の演奏、今後も楽しみにしてます。もちろんそれぞれのソロも!

 

19.5つの民謡風小品より1.2.5楽章/シューマン

大ブランク明けでよく演奏しました。練習に関しても、ブランク明けの焦りもあったのか今までより質も量も多く感じましたがどうだったのでしょうか。課題である表現幅も今までと比べてすごく大きくなったと思います。「楽器を鳴らす」いうことについて、今回ずいぶん理解できたと思います。

安定感やピアニストとの噛み合い方は昔から上手でしたが今回のようなピアノ主体の作品でこそその力はよく発揮されていて、安心して聴ける演奏でした。

とは言え、いつか挑むであろう大曲に向けて今の成長ペース、ちょっと心配になります。確実に上手にはなっていますが、等しく自身の理想も高くなっているでしょうから・・・腕前のほうを追いつかせるのは今のペースだと苦労するような気がします。

楽器を触る習慣を増やすというのも含めて、直前に1時間だけでも練習してレッスンに来る、というのを月1回でも続けていく、というのが今できる最善プランだと思いますが、どうでしょうか?ミルデのコンチェルトスタディか、本番機会がなくてもバッハの無伴奏作品は一通り、よく効いてきますよ。

 

20.ファゴットソナタより第1楽章/シュレック

半年以上越しのシュレック、思いを感じる演奏でした。美しい曲想がよく表現できていました。技術的にも安定した演奏だったのでピアニストともよく合っていました。

しかし何といっても鳴りが足りない。きれいな音だけでは音楽の表現はできませんから、もっと楽器が鳴る方法を模索して。素敵な表現ですが幅が狭いのでピアノの音が厚いと埋もれてしまうのが残念でした。楽器の鳴りというのは簡単に得られるものではないですし、慣れも必要です。コントロールも難しくなるでしょう。しかしやはりそれがないとこれ以上の上達は見込めませんのでぜひ挑戦してみて。やり方が分からなければいつでもレッスンしますのでご連絡くださいね。

これは現実でも妄想でもいいのですが、客席にいる全員があなたのファゴットを心待ちにしていて、それに(練習や合わせなどの準備を含めて)あなたが答えようとするような、そんな姿勢に欠けているのかもしれません。最低でも僕は楽しみにしていますしあなたのファゴットが好きな人だってたくさんいるはずですから、その人たちのためにもっと。技術や表現もそうですが、もしかしたら衣装も。もしご自分のテンションを高める結果につながるのであれば気にしてみてください。次回も楽しみにしてます!

 

21.ロマンス/ブルッフ

いい演奏でした。いつも少し力んでしまうところがありますが、今回はきっちり力が演奏に乗っていました。「ない力は抜けない」と僕はよくみんなに言うのですが、力が乗っているからこそ抜ける力があって、メリハリの利いたいい演奏でした。何より熱い思いを感じました。もしかしたら大きいホールでこそ発揮されるタイプの音質なのかもしれませんね。臆せず今のような楽器の鳴りを大切にしてください。

課題があるとすればもっとピアノ(オーケストラ)とのアンサンブルが関係性としてはっきり出てきてほしかったと思いました。ピアニストはよく合わせてくれていましたが、それに応える力がまだなかったか、余力がなかったか、どちらかでした。また全体としてもっと弱奏があってもよかった。小さい音、というよりは暗い音とか沈んだ音とか静かな音とか、色んな呼び名があると思いますがその手の音の引き出しがもっと増えるといいですね。

とにかく文句なしのMVPでした。この曲をこれだけ熱く演奏できるのは今、僕の弟子の中では君くらいのものでしょう。

 

22.三重奏曲/ドゥビエンヌ

はるばる東京(神奈川)までようこそ。Bチューニングは正解だったと思います。レッスンでしつこく指摘した終止の形やタンギングの種類についてはよくできていたと思います。あれだけの指摘でよく理解したな、と感心しながら聴いていました。レッスンの最後で(僕が吹いて)伝えたスピード感についてもずいぶん良くなっていました。3人とも耳と反応がよく僕も教えて本番聴いてすごく楽しかったです。

フルートは音も音楽も素晴らしいのですが、真正面からぶつかるばかりではなく、ひねくれたり仲間に音楽でケンカを売ったりふざけたり誘惑したり、とにかく正直すぎるのでもっと引き出しを増やすといいですね。それでこそ必要になってくる技術がたくさんあると思います。

クラリネットは抜群の伸びしろを見せてくれました。たぶん(楽器の特性上)苦手とする古典の音楽をよくあそこまで理解して演奏できたな、と思います、そこらの音大生よりよっぽど分かって吹いていました。ぜひ新天地でベートーヴェンモーツァルト交響曲をオーケストラで体験してみてください。ドゥビエンヌで殿村にあれこれ言われたのはこーいうことか!と気付きがたくさんあるはず。

ファゴットは相も変わらずと言いますか、好きな奏者と並ぶと本当にいい音を出しますね、それは君の最大の長所であり、今回特に光っていました。が、ここでも「やめグセ」が目立ちました。本当によく練習してきたので食らいつけばもっと吹けたと思うのにやめちゃうから・・・。非常に惜しかったです。ファゴットはソロ楽器ですから、アンサンブルにおいても伴奏系よりも旋律を取るときが本業です。伴奏や合わせるのがうまいのはよくわかったしそれが楽しいのは分かるから、他楽器を食うような腕前を、「好きな奏者」のためにもっと身につけよう。そのためにやるべきことは僕が言わなくてもわかってるはず、ですよね?

MVPでもいいな、と思いましたが期待値がそもそも高かったので・・・でも悩みました。この発表会でも稀にみる良いアンサンブルだったと思います。

 

23.ファゴットソナタより第1楽章/シュレック

第5部は「卒業式」なんて言いましたが、その名に恥じぬ演奏だったと思います。とにかく楽器がよく鳴って、会場いっぱいに響いていました。音列の関係で楽器を鳴らしづらいこの曲でこれができれば、鳴らす技術的に「歌う曲」で困ることはしばらくないんじゃないでしょうか。非常に高水準の演奏でした。

音楽表現も見事でした。「シュレックソナタは名曲だ」と誰もが思ったでしょう。しかしここまで水準が高いと、細かいアンサンブルのズレが気になってきてしまいます。和音が動く瞬間、テンポの変わり目、細かい音の前後が軒並みピアニストとズレてしまうのが非常に惜しかった。余裕がないのもわかりますが、特にソナタものはもっとアンサンブルを意識した練習を。どんな音がピアノから鳴るのか想像しながら練習するだけでだいぶ変わります。合わせが少ない中、よくやったとは思うのですが。ピアノ譜とにらめっこしながら録音を聴いてみると自分がどうアンサンブルを壊してしまったかがわかると思いますのでぜひやってみて。

あと君のいいところは音程の良さです。それは初心者の頃から徹底した運指の丁寧さと練習の誠実さによるところですから、誇っていいと思います。普段オケでどうなのか僕は分かりませんが・・・

まだまだ楽器人生は始まったばかりです。先も長いですから、また一緒に頑張りましょう!バロック系の作品、今やったらぜんぜん世界が違って見えると思いますよ。

 

24.ファゴット協奏曲第1楽章/モーツァルト

これだけのモーツァルト、そこらの音大生でも演奏できません。まして並のアマチュア奏者ではまず不可能な領域で演奏していたこと、僕が認めます。本当に素晴らしかった。君が「別にレッスンが厳しいと感じなかった」くらいですから、モーツァルトの難しさというのは僕が君に普段から言ってることの集大成でしかなかった、とも言えるかもしれません。

レッスンで触れたモーツァルト特有の難しさ、トリルやタンギングなどの技術面はずいぶん高い水準でクリアしていたと思います。モーツァルトの1楽章でよく課題になりがちなスピード感もピアニストのサポートもあってずいぶんよかったと思います。2楽章はまだ違った難しさがありますからいつか挑戦してみてもいいですね。

課題があるとするならカデンツァですね。かなり具体的に指示をしたつもりですが・・・いびつな箇所が多かったです。今後はレチタティーヴォカデンツァを含んだ曲に挑戦し、伴奏のない音楽でしっかり聴かせる技術を身につけるといいでしょう。

 

 

25.ファゴットソナタ/サンサーンス

これだけのサンサーンスを吹けるアマチュア奏者が世界にいったい何人いるのでしょうか。僕は君しか知りません。誇張でも何でもなくそう思いますし、僕は誇りに思います。緊張も気負いもあったと思いますが全く感じさせない演奏でした。ハイEも見事でした。

まず言わなきゃいけないのは楽器のキーの音。ちょっと常識の範囲内を越える大きさで鳴っていますからきっちりメンテナンスをしましょう。きれいな音楽だったのに勿体なかった。

奏法についてあまり触れてこなかったですが、全体的に少し重心が高い印象があります。体の使い方、音程感、音色のイメージなど、もう少し低くダークに取るとよりホールで響く音がするでしょう。

ピアニストとのアンサンブルも抜群でした。この曲は意外にもそれが難しいのですが・・・(前の本番からの)ピアニストの違いにもよく対応していたと思います。ただよく聴いている弊害で2楽章、だんだん停滞した印象もありました。聴いて寄せる、だけではなく、自ら運ぶようなアンサンブルも身につけるとオケや室内楽で生きてくると思います。

 

 

講評は以上です。半年越しの挑戦も多く、今回かなりレベルが高かったような気がします。

繰り返しご案内になりますが、次回発表会は来年3月を予定しております。ファゴットのソロか、アンサンブル(ファゴットを含まなくてもOKです)でのエントリーで、どちらも1回以上僕のレッスンを受けて頂ければどなたでも出演可能です。日程未定ですが決まり次第各所でアナウンスさせていただきます。

春のひとときコンサート(殿村門下発表会)

2021年3月20日(土)お昼ごろ開演

参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン1回分謝礼含む)

ファゴットソロ(社会人)15000円

ファゴットソロ(学生)10000円

アンサンブル(1人あたり)6000円

お申込みは下記フォームからどうぞ。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

お待ちしてます~!

この時期に私がリサイタルを開催する、ということについて。想いと思考

こんにちは。ファゴット奏者のとのむぅです。

まず初めに、告知から。告知としてはかなり急なのですが、リサイタルを開催します。

 

殿村和也ファゴットリサイタル~ファゴット吹きのたからもの~
2020年9月6日(日)14:00開演
liveチケット 3000円(全席自由、限定30席予定)
web視聴チケット 2000円 
※web視聴チケットご購入の方は9/9 19時~9/20 19時の間アーカイブ配信もご視聴頂くことができます。
出演
殿村和也(ファゴット
大堀晴津子(ピアノ)
プログラム
ファゴットソナタ/ヒンデミット(live演奏、リアルタイム配信のみ)
ソナタイ短調/テレマンアーカイブ配信のみ)
無伴奏パルティータ/J.S.バッハ
トスカファンタジー/プッチーニ
パガニーニへのオマージュ/三浦真理(ファゴット版初演)
演奏会用小品/ピエルネ
ファゴットソナタ/ケックラン

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9月3日現在、ありがたいことに客席はほとんど満席(某ウィルス対策で大幅に席を減らしております)頂いておりまして、ご興味のある方はweb視聴チケットをご購入頂いてオンラインでご視聴いただければと思います。お申込みはこちら↓

【Web視聴チケット】9月6日 殿村和也ファゴットリサイタル | 音楽ダウンロードはドルチェ・クラシックチャンネル

ドルチェ楽器のweb視聴、それはそれは高画質・高音質でものすごく評判のいいもののようです。こちらのページから視聴テストもできるみたいですのでご確認いただければよく分かると思います↓

https://www.dolce.co.jp/onlineconcert/check/

お申込みお待ちしております。

 

とまぁこれで終わればただの告知・宣伝なわけですが、今、この世の中において私がリサイタルを開催する、ということについて、思考のメモというべきか議事録というべきか。

とにかく想いについて、綴っていきたくて、本番数日前の今日この記事を書いています。

 

まず僕にとってリサイタルの開催はどういうものなのか。

そもそもリサイタルに限らず、木管五重奏やらファゴットアンサンブルやらの自主公演(出演者自身で会場を取り各種事務作業をし広報活動をするコンサートのこと)について僕にとってはライフワークのようなもので、たぶん一生何かしら続けていく音楽活動になると思います。

「こんなメンバーで、こんなプログラムをやったら面白いし、絶対楽しんでもらえるはずだ」という考えは日々頭の中をめぐり、そのために自分の演奏を突き詰めたい、というのが僕にとっての音楽のへの原動力であり、この仕事を続けていく理由の一つであるわけです。

リサイタルは僕の中ではそのうちの1つで、やりたいプログラムが決まると開催を考え始め、場所を取り、共演者を決め、公演に至るわけです。

つまり「自主公演も打たずに何が音楽家か」というのが僕の信条なので、その自主公演にリサイタルが含まれるため、(今のところ)数年に一度の開催となっているわけです。

 

リサイタルが近づくと、いつも僕の思考を支配するもの。

それは「自身の死」についてです。今のところそんな予定はありませんし、重大な疾患などもありません。ですが「これが最期のリサイタルかもしれない」とか「コンサートまでに何かがあれば中止になってしまうのか」とか「これが終わったらどう生きていくんだろうか」とか、とめどもなく「自身の死」についての思考が流れては消えていき、ある意味で正気を失っていくような、そんな日々を過ごしています。

ただ決してネガティブな感情で考えているわけではない、というのは明言しておきたい。僕にとって音楽は仕事ですから、仕事を理由に死んでしまう、なんて悲しい人生送りたくはないのです。しかし僕にとって音楽は「仕事」ですが、音楽家にとって奏でる音楽は「生き様」のようなものです。その「生き様」をたくさんの方々に2時間弱聴いて頂くというリサイタルの準備期間は、それはそれは色々な想いが頭をめぐるわけです。

 

「自身の死」について考えることは、決してネガティブな感情ではないと、今は思うようになりました。「自身の死」について考えるということは、「自身の生」について考えること、だと思います。

 

今回のプログラムについても、少し触れておきましょうか。曲目解説については今の時代、いくらでも情報探せば出てきますので基本的に割愛していきます。紹介する順番はプログラム順とは関係ありません。

ヒンデミットファゴットソナタファゴット奏者にとって重要レパートリーの1つであるにも関わらず、意外にも演奏される機会の少ない作品です。僕はこの曲を初めて聴いたとき、ちっともいい曲だとは思いませんでした。2楽章の冒頭が、まぁ綺麗かな、くらいのイメージ。しかしこの作品、やればやるど、知れば知るほど面白く完成度が非常に高いものになっています。ファゴットの性能を「あますところなく」使い切るような曲で、今回のコンサートの1曲目に選びました。

ピエルネの演奏会用小品もやはり重要レパートリーの1つだと思います。ファゴットの作品としては(珍しく?)聴き映えもしますしピアノパートも見せ場が多いのですが、僕はヒンデミットと同じく、あまりこの曲が好きではありませんでした。ですが各所でこの曲に触れるたび魅力に気が付くことができ、去年夏に聴いたとあるファゴット奏者(https://kaspar2019.blog.ss-blog.jp/)のリサイタルで聴き、次はこれをやろう、と決めたのでした。

メイン曲として取り上げたケックランのファゴットソナタ。もうそれはそれは難しい作品です。いいえ指や舌ではなくて。16歳でファゴットに触れ始め18歳から本格的な勉強をし24歳で音大を卒業し、今年33歳になる僕が「そろそろケックランがいい感じに演奏できるんじゃないか」という慢心から取り上げた次第であります。さてどんな風に聴こえるでしょうか・・・?ケックランは天文学者を志すが20歳で病気になり、療養中に独学で学び始めた和声学をもとに音楽家としての活動を始め、ピアノや声楽を中心にたくさんの作品を世に残した作曲家です。またオーケストラ編曲家としての顔も持っていたようで、ピアノの作品にもオーケストラのような色彩感が表れているなと個人的には思うのです。美しい作品に自分のファゴットが追い付かない。非常に悔しくもあり、また、これほど探求していくのが面白い作品がほかにあるだろうか・・・?と、面白くてしょうがない、という思いもあり、ケックランに取り組む時間は僕にとって「たからもの」のようなものだったりするわけです。

 

三浦真理さん作曲の「パガニーニへのオマージュ」は、元々フルートとピアノ用に書かれた作品です。ファゴット版の楽譜が今年の冬発売します。(詳しくはこちら→https://www.gakufu.co.jp/ )

 そのファゴット版初演を今回のリサイタルでさせて頂きます。三浦真理さんには、フルートアンサンブル曲である「思い出は銀の笛」を僕がはじめて聴いたとき、これはファゴットでやっても絶対面白いはずだ!と思い、数年前に演奏する機会があり許諾のため連絡させて頂いて以来、色々な面でお世話になっています。出版されてないものも多いですが、実は三浦真理さんはファゴットアンサンブル作品もたくさん書かれているため憧れの存在だったため、まさか(ファゴット版)初演をさせて頂ける機会があるとは・・・!演奏者として、これほど嬉しいこと、なかなかないものです。

トスカファンタジーはサックス用に出版されている楽譜を演奏します。僕は歌劇というジャンルの魅力に取りつかれて音楽家の道を志したのですが、このトスカという作品はとにかく儚く悲しい話ですがそんなところも含めて大好きなのです。とある場所でこのトスカファンタジーに触れ、これはファゴットでやったろう、と思ったわけです。今回のプログラム、なんというか変化球を投げるような表現が多く(ヒンデミット、ケックラン等)この曲は僕が全力ストレートをたくさん投げます。しかし僕はたぶん、奏者としては軟投派なため、どう聴こえることやら・・・。

J.S.バッハ作曲の無伴奏パルティータはフルートのための作品ですが、ファゴット演奏用の楽譜も出版されています。数年前のリサイタルで「バッハの無伴奏」は取り上げたのですが、それはそれは体力的にきつく、二度とやるもんか、と思っていたのですが、おっかしいなぁ・・・。きつかったのですが、やはりというべきか、お客様の一部に「バッハが一番よかったよ」とお声かけ頂いたのは取り上げた理由の一つではあります。また「ファゴットリサイタル」である以上、少しくらいは(実はプログラム中最も長尺がこの曲だったりしますが)まじりっけなしのファゴットの音を聴いてもらおうじゃないか、と思うところもあります。

 

書き終わってみればプログラムについてばっかりの記事でした。でもなかなか曲への想いについて語れることは少ないので、いい機会かな、と思って。

 

もともとあまり日本語が上手くない人間が、しかも「想いと思考」なんてタイトルにしてしまったものだから、読みづらく荒い文章だなと自分でも思うのですが。書き留めて頭の中を整理する、ということには成功しました。自己満足で申し訳ありません。

 

重ねてのご案内になりますが、web視聴チケットに関してはまだまだ受け付けています。web視聴チケットでしたら当日ご都合悪い方も、9/9の19時~9/20の19時の期間はアーカイブ配信(動画視聴)でご視聴頂くことができます。ご興味ある方はぜひよろしくお願い致します。お申込みはこちらから↓

dolce-classic-ch.com

 

ほんと、あと数日かぁ・・・。


第18回門下発表会でした。講評と発表会開催への想いについて

お久しぶりです。

第17回が抜けてるぞ、とか、久しぶりの発表会ですね、とか、このブログまだあったんですね、とか、色々言われそうですが・・・。

第17回は間際まで開催の方向で動いていましたがやむなく中止となりました。ある意味、それを忘れないためにも今回の発表会は第18回としました。

第18回の発表会は某ウィルス対策として、リスクを最低限にするため会場にお客様は入れずオンライン配信(これについては後述)を行い、またピアニストも呼ばず無伴奏もしくはエチュードのみ、またアンサンブルのエントリーはお断りし、稀にみる小規模開催となりました。参加者は7名。また僕の親しい同業を何人かお招きし、演奏もして頂きいました(ゲスト、という扱いにはできませんでしたが・・・)

参加者の中には某ウィルス禍以前と変わらないペースで練習を続けている人も多く、緊急事態宣言後、すぐにレッスン開始(できうる限りの感染拡大対策は行っています)し、着々と力をつけていることに僕は先生として感動を覚えるばかりでした。僕は練習は本番のためにすればいい、レッスンはその成果をより実践的に仕上げるもの、という考えを持っているのですが、生徒たちの方がよっぽど意識も行動もハイレベルでした。脱帽。

 

このブログでも何度か書いているとは思いますし公言もしているのですが、この門下発表会は「普段オケや吹奏楽などで練習している楽譜よりもずっと難しく、しかもすべての音が客席にダイレクトに聴こえる(いわゆる)ソロ曲を演奏する機会を作ればいっぱい練習するし手っ取り早く上手になるはず」というコンセプトのもと行われており、ほとんどの人があらゆる演奏機会を失ってしまった今、どうなってしまうのか、と思ってはいたのですが・・・。僕自身がアレコレ考える以前に、ある人は日々練習を重ねレベルアップするため、ある人はブランクを取り戻すため、「来るべき日」に向けて力をつける手段として存在していければいい、と、そう身に沁みました。

できうる限りの対策を取ったうえで、次回以降また、開催していければいいなと思っております。日時場所など未定ですが、決まり次第このブログでもご案内していこうと思います。

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ここからは第18回発表会の講評記事となりますので、出演者以外の方は読み飛ばしを推奨いたします。

 

1.無伴奏パルティータよりアルマンド/J.S.バッハ

技術的な成長をすごく感じました、無伴奏曲を聴いていて安心できる、というのはすごいことだと思います。

出だしつまづくことが多かったのは、ある種無伴奏特有の概念なのですがピアノ合わせがないため、練習にリアリティがなく本番を想定したイメージトレーニングが足りなかったためだと思います。慣れてからは安定感抜群だったので、そこは今後の課題としていきましょう。

音の濃淡もよく表現できていたと思います。誰もが苦戦するところをよく表現できていたのですが、その分、と言いますか、本来そちらの方が簡単はなずなのですが全体の抑揚そのものが足りませんでした、山をいくつか設定し、そこまでしっかり音量の変化を持っていく、等の工夫があればもっとよかったのではないでしょうか。落ち着いた演奏ではあるのですが、心が震える、という領域には一歩、届かない印象でした。技術的には、普段からもっとフォルテ、フォルテ、フォルテ、で音を出しましょう。きれいな音はフォルテがあってこそ活きるものです。

 

2.無伴奏チェロ組曲第1番よりアルマンドジーグ/J.S.バッハ

文句なしMVP。アルマンド、最後のレッスンより本番の方が良かったと思います。

流れを作るのがとにかく上手く、「そうそうこーいう曲なのよこれ」と思って聴ける演奏でした。また楽器のポテンシャルが高い故に難しい音の濃淡もよく表現できていました。その楽器でそれだけ淡い音がコントロールできれば、人と(ピアニストと)演奏した時より表現の幅が広がるはず。感覚として忘れないでいてほしいと思います。

あまりレッスンで触れる余裕がなかったこともありましたが、もう少しアゴーギグがあってもよかった。表現についてはそこが唯一気になるところでした。

技術的には、音楽のピークかつ中音域以上において、気を抜くと音程が許容できる範囲以上にぶら下がってしまうこと。ぶら下がったフォルテはある意味気持ちいいものですが度を越えてしまうと・・・・。フォルテで音程がぶら下がる傾向は楽器がよく鳴っている証拠でもある(と書いてしまうとどうかと思いますが、少なくとも逆はあまりないです)のですが、そこから先はいかに自分を冷静にコントロールできるか、という領域なのかもしれません。

ジーグは色々と届かず。それを差し引いても今回いちばんいい演奏でした。今回をいい踏み台にできますように!

 

3.ワイセンボーン2巻より44番

何度でも言いますが本当によくこんなややこしい曲を持ってきました。少人数ながら色んな(メーカーの)楽器や技術の人が集まった回ですが、ダイナミクスレンジの広さが本当にずば抜けていました。発音と楽器の鳴りを合わせるのがとても上手くなったと思います。

以前はもっと荒い演奏が目立つところがありましたが、ある意味こんな状況下だからこそ自分のファゴットによく向き合えたためかいい意味で落ち着いた印象も感じました。また音程もすごくよくなってきました、次オケに乗る機会があったら、きっと自分の進歩に気付くはず。

色々褒めましたが今回の演奏で一番いいなと思ったのは、テンポ変化だったり曲想の変わるところでの雰囲気づくりの旨さです。つくりたい世界観を1音目(もしくはその直前のブレス)でしっかり見せてくれるので、変奏をより楽しめる演奏になっていたなと思いました。

この繊細さや表現力、ぜひキープして!次回も楽しみにしています。

 

4.無伴奏パルティータよりアルマンド/J.S.バッハ

今回は枠が余ることが想定できたため、数人ファゴット以外の方にもお声かけしました。結果この人だけ出演となりました。でもすごく楽しんで準備してきてくれたようで、また紹介した先生のとの相性もすごくよかったんじゃないかなと思います、ぜひ今後もたまにでいいから通って成長していってほしい。

演奏自体の講評は先生から聞いてもらえればいいと思います、が、僕なりに少し。

バロック作品のキモはバスの音です。楽器の性質上難しいのかもしれませんが、もっとバスの音による音楽の支配が欲しかった。それがないので、悪い意味でフワフワした印象になってしまいます。音楽の流れ自体はよく作られているからこそそこが惜しかったなぁ、と思いました。

次回はアンサンブルでぜひ!またご案内します。

 

5.無伴奏チェロ組曲第3番よりブーレ1/J.S.バッハ

オンラインレッスン1回のみでよく仕上げてきた、と思います。対面でなくこの手の曲のアレコレを伝えるのも難しければ受け取るのも難しかったと思うのですが、そこは持ち前のセンスと勤勉さが良く発揮されていたなと思います、さすが。

ハツラツとした曲なので出だしの印象が抜群にいいのですが、ブレス明けがすべて元気いっぱい出てきてしまうので、ブレスを取る、発音の準備をする、柔らかく発音する、の3ステップの技術を今一度見直して。またよく鳴るいい(新しい?)リードは気持ちいいですが、音程が下方向に散ることも多いです、そこは冷静に見直して。

ある意味、ブーレ2も取り組んでいれば1に活かせることが多かった気もしますね・・・・。次回は繊細な表現とダイナミックな表現、どちらもあるような曲に挑戦できれば、幅が広がっていいんじゃないかと思います。

とはいえこの状況下、よく挑戦してくれました。ありがとう。

 

6.無伴奏パルティータよりアルマンド/J.S.バッハ

満を持して登場、という印象、なのは僕が組んだ曲順のせいでしょうか。笑

別の人への講評にも書いていますが、出だしのトラブル多発は、ピアノ合わせのない無伴奏本番にありがちで、本番へのイメージが足りないまま本番に来てしまうとありがちです。目をつぶり本番会場をイメージし吹き始める、というイメージトレーニングは、この手の曲を演奏するうえで絶対に必要なことかなと思います。

この曲が(全員違う調で!)3人いる中、もっともよく理解し噛み砕き洗練された演奏だったと思います。聴きどころも多く表現力もとっても豊かでした。特に高音域の伸びの良さが素晴らしかったと思います、宝物にしていってください。

アゴーギグも大変すばらしかったのですが、伸び縮みで表現するなら少し縮み過ぎで、伸びがもっとあってもよかったかもしれません。もしくは伸び方に問題がありました。それゆえ慌てて聴こえてしまう箇所が少しあったのが惜しかったのですが、それは攻めた演奏だったのでもう一息練りがあればうまく昇華されていたんじゃないかなと思います。

いつもと少し様相の違う門下発表会ではありましたが、今後もよかったらぜひエントリーしてください!お待ちしてます。

 

0.ワイセンボーン2巻より25番

オンライン参加。

大変精度の高い演奏だったと思います。ブレスの差し込み方なんかも大変うまく、よく練習したと思います。そして親指の使い方がよくないとここまで綺麗なオクターブ跳躍もできないですから、丁寧な練習の成果ですね。

元々音楽的な内容が薄い曲だかこそ、強弱の表現はもっとこだわっても良かった。変わってないとまでは言いませんが、pの表現に限界のあるパッセージですからもっとfを強く。多少荒くても良かったかもしれません。最後2小節はfで終わる、というのも、ちょっと伝わってこなかった。そこが惜しいところでした。

こんなご時世になるとは、と誰もが思ってるところでしょうが、色々苦労も多いかと思いますが、この会は僕がこの仕事を続けてる限りやり続けますので、今度は直接演奏を聴けるの、楽しみにしてます!

 

0.ワイセンボーン1巻よりes-moll

オンライン参加2人目。

録音での参加なのに多方面で後日話題になりまくったのはこの演奏でした。本人以外のために先に言っておくとこの彼は「エチュードで参加しますが、曲はレッスンの進み具合で決めます!」と、ある意味すごくストイックにレッスンに通い続け、(よりにもよって)この曲になった、という事情です。

嫌な調性であることはもちろん、アンダンテで付点のリズムを演奏し続ける、というのは体にちゃんとリズムが入っていないと難しく、また慣れない音列も多く音程が取り辛く、そして最後に出てくる突然のシャープ系でより絶望する、という嫌な曲のはずなのに・・・いい意味でどの難しさも感じさせない名演でした、このクオリティでこの曲が吹けるアマチュア奏者が世の中に一体何人いるでしょうか(言い過ぎ?)

褒めるのは誰でもできるので、先生らしいことを言いましょうか。付点のリズムにおいてフリックキーは生命線です。ほとんどうまくいっていますがオケ中だともっと難しい音列も多く、テンポが速いこともあります。フリックを逃すことのないよう、もっと4親指の練習に時間を使ってほしかった。また高音域はもっと的確に狙えるように。口が閉まると上のGesはあたりづらくなってしまいます。あと最後の1段は本当にうまかったと思います、この感覚を忘れる事のないように!

 

 

※「オンライン参加」について

今回、無観客でオンライン配信の予定だったのだが、会場からオンライン配信NGとのお達しがあったため、録った録音をリアルタイムでアップロードしていき、そのアップロード先のドライブを観客希望の人と共有する、という形を取りました。オンライン参加の2人は本番の数日前まで参加する予定だったしレッスンも受けていたのだが諸々の事情で参加が叶わなくなってしまったため、当日みんなの本番が終わるまでに録音を送ってもらい、ドライブ上において参加する、という形式を取ることができました。

 

僕がレッスンでビブラートとハイトーンの出し方を教えたがらない理由

どうでもいいけどタイトルを〇〇つの理由にすると怪しいブログみたいですよね。笑 伝える人いるかな。

 

お久しぶりです、ファゴット奏者のとのむぅです。ブログの更新怠っていてすみません。実は下書きくらいまではいくつか書いてるんですがなかなかまとめるのが得意ではなくて。

気長にお待ちください。

 

さてタイトルについて。僕はファゴットの個人レッスンについて、ビブラートについてほとんど触れません。触れるとしたら「そのビブラートはかけない方がいい」という指示が殆どです。もちろん人や演奏によるのですが・・・。定期的に通ってくれてる人に時にはビブラート禁止令まで出したりします。これはビブラートによって本来の音色や音程を見失っている場合、期間付きで設けるもので、正直な話、僕の前以外でいくらかけてようと知りようがないので、あとは本人次第、といったところでしょうか。

ビブラートは奏法として大変効果が高いものですし、表現力(特に強弱の幅について)に乏しいファゴットを演奏する者にとっては本来ぜったいに必要なものですし、きちんと使っている子に「かけない方がいい」なんて言い方は絶対にしませんし、僕自身、ビブラートのかかった演奏は好きですし僕自身もたくさん用います。

そういえば僕のことを直接知らず、かつTwitter等でも関わりのない方でこのブログを読んでくださってる方(そんな方がいるのでしょうか)がいたら説得力に欠けるでしょうか・・・?

宣伝になってしまいますが、2月半ばごろからYouTubeに毎日投稿を始めました。「まいにちファゴット」と称して1分程度の演奏動画を毎日投稿してます。途切れたら「ほぼまいにちファゴット」に変わります。笑 いつまで続くか分かりませんけど、もし興味があればいろいろ聴いてみてください。

こんな感じです。個人的にはお気に入り。

youtu.be

チャンネルこちら↓

https://www.youtube.com/channel/UCb2c8vaSridkXUdPTn91J1Q

さて上の動画を聴いてもらえれば分かると思いますが僕はビブラートをしっかり多用します。生徒さんにお手本を聴かせる時も同様です。

それでもレッスンで、あまりビブラートの使用を勧めることはしません。これには大したことではありませんが、僕なりには理由があるんです。

 

僕は高校1年生の秋ごろ、部活でファゴットをはじめました。万年銅賞でもなければ強豪でもないような、そんな部活だったのでほとんどの楽器に「講師のセンセイ」がたまに来る環境の中、なぜかファゴットには来てもらえませんでした。僕はファゴット初日、わりと本気で、リードを糸の方から吹いてみるくらい、「ファゴットの吹きかた」が分からなかったんですよね。他の楽器経験すらほとんどなかった僕は楽譜も読めず、奏法は独学、何か月たっても周りが驚くほど成長せず、それでもがむしゃらに練習をする高校生でした。

その後そんな僕を見かねた顧問の先生がOBの方を呼んでくださったり、最終的にはひょんな事からこの道に進むきっかけとなる1人目の師匠である太田茂先生に出会い、1年後には音楽大学を受験します。その話はまたそのうちに。

つまり僕にとってファゴットは独学ではちっとも上達しなかったんですね。レッスンに通うようになって師匠に「僕はこんなことまで君に教えなきゃいけないのか・・・」とぼやかれるくらいに何も知らないまま1年以上独学で演奏していました。どのくらい下手だったか、というのは言葉で説明できるものではないですが・・・。部活顧問の先生が県内で有名な上手な中学生を紹介してくれて、その中学生が僕の演奏を聴いて「えっ恥ずかしくないんですかそんな演奏で?」と半笑で言ってくれるくらい、下手でした。ちなみにその中学生とは大人になり再会し、彼はその時の非礼を詫びてくれ、今ではいい友人となっています。独学時代の僕は、とにかく、下手だったんです。

 

ところで僕は近ごろ、「ファゴットの生徒がやたらと沢山いる人」という評価を思った以上に多くに人に頂いています。同時に「なぜそんなに生徒がいるのか」という質問も受けます。僕のレッスンは何も特殊じゃないと思うのですが、一つ気づいたのは

「僕は誰よりも下手だったから、なぜ「できない」かがよく分かる」

からだと思います。だからレッスンに来た方の悩みもすぐわかるし、解決策も与えることができます。

だから「褒めてほしい」「レッスンで楽しく吹きたい」という方には、もしかしたら合わないのかもしれません。色々な方がレッスンに来てくださっていますが、全員が何度も来てくださるわけでは、もちろんないわけですから。当たり前のことだと思ってます。

 

僕は誰よりも下手だったけど、決して勤勉な学生でもありませんでした。だから練習も好きじゃなかったし、今も人より練習時間は少ないと思います。

だから練習時間を取れなかった生徒さんを叱るような事も絶対にしません。昔の僕は「下手だし練習もたくさんしない人」だったわけですからね。

 

そんな僕でもやり方は間違っていたのでしょうがビブラートはかけることができたんですよね。もちろん独学ですから「それらしいもの」だったわけで、レッスンで厳しく指導を受けて今の状態なわけですが。

またハイトーン(春祭冒頭のCより上)の吹きかたも教え方がよく分かりません。僕は大学時代、曲がうまく吹けてないくせにハイEだけはポンッと出す人でした。僕はその昔ハイトーンだけは得意だったんですね、あまり名誉なことではありませんが・・・・

ビブラートは「これは絶対にビブラートを用いる必要がある」時以外教えようとしません。もちろん生徒さんが望めば教えますが・・・。ハイトーンももちろん教えますが、運指とリードやボーカルの事を伝えてそれきり(実際それでみんな出るんですけど)

 

だから僕は、自分は昔、何もかもできなかったので、そのおかげで生徒さんが「なぜできないか」が手に取るようにわかります。だから解決策がすぐ浮かびますが、ビブラートとハイトーンは「すぐできてしまった」ので悩んだ経験が少ないため教えるのがあまり得意ではない、というわけです。もちろん、得意ではありませんが、ノウハウはありますから、大丈夫です、たぶん。気になる方はレッスンを受けてみてご判断ください。笑

 

 

うーん伝わるんでしょうか、この文章。ブログって難しいですね。

この記事を読んで僕のレッスンに興味が沸いた方、下記のフォームからぜひお気軽にご連絡くださいね。

レッスンお問い合わせフォーム

 

また近いうちに更新できたらいいな。

第16回門下発表会でした。講評その他

当ブログは門下発表会の講評専用ブログです。

 

 

・・・・嘘です。本当にすみませんでした。笑

こんにちは、ファゴット奏者のとのむぅです。ほんと、こればっかりでごめんなさい。一応記事のネタは溜めてるので近々公開予定です(下書きに溜まっている)

 

 

 先日、ノナカアンナホールにて門下発表会が行われました。僕の生徒たちによるファゴットのソロ演奏、レッスンを受けてくれたアンサンブル団体の演奏による会です。

今回はここ1~2年において歴史的な(?)人数の少なさと全体時間の短さでした。

嘘でしょ、って言われるけど、本当です、ほんの5時間くらい。

この盛況っぷり、慣れてる子たちからすれば当たり前だけど初めましての人は一体どんな風に思うんでしょうね・・・。笑

でも僕はファゴット吹きがたくさんいるコミュニティが大好きなので、今後も1日中つづく発表会、やっていきたいと思っております。

 

 

 

今回はゲストとして、僕が行き先々で出会った最高に才能と腕前を持ったファゴット専攻の音大生を3人呼び、一緒にカルテットを演奏しました。近年音大生のレベルは劇的にあがっており、僕らが学生の頃では考えられないレベルの子たちがゴロゴロしていますが、今回呼んだ東京藝大の栗木典子さん、東京音大の竹村果南さん、昭和音大の古江那菜さんは特に素晴らしく、一緒に演奏していてとても楽しかったです。

近いうちにまた、一緒にお仕事ができればいいなぁと思ってます。うちの会に来てくださって本当にありがとうございました。

 

 

うちの発表会は、普段僕のところへレッスンに通ってる生徒たちのほかに、発表会前に1度だけレッスンに来て出演している人もいます。それぞれ取り組み方は違いますがそれぞれの生活の中で自身のファゴットに向き合いつづけ、素晴らしく成長していきます。

基本的なコンセプトは「レッスンを受けてソロ曲を人前で吹けば手っ取り早く上手くなるのでは?」というものですので、本当にどなたでも歓迎します。興味のある方は次回以降ぜひ、ご参加くださいね。ご連絡はこちら↓から。

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とりあえずレッスンに来てみたい!という方はこちら↓から。どっちでもいいんだけどね。

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さて、ここから先は出演者以外の方にはあまり興味のない記事になるかと思います。と、前振りをしているのですが、なんと出演者以外の方で最後まで読み切る方も少なくないんですね・・・この間聞いてビックリしました。ありがたいような、申し訳ないような。もっといろいろな方に読んで楽しい記事を載せていけるように頑張ります。はい。

では、恒例となりました各演奏ごとの講評を書いていきたいと思います。

 

 

1.演奏会用独奏曲/ピエルネ

前回はちょっと遠慮がちだった?コンビ芸も、今回はとっても面白かったと思います。人間関係をアンサンブルに反映するのも技術なのかもしれませんね。もっとやりあいたければ、必要な技術をみがいていきましょう。2人の噛み合いに関しては申し分なく、たくさん合わせをした成果は出ていたと思います。

ダイナミクスもよく表現できていました。それだけの幅があればオケやアンサンブルでもじゅうぶんに通用することでしょう。そういった意味で、安心して聴ける演奏でした。今後はその音量操作に加えて、音色の操作が出せるととてもいいと思います。具体的にはアタックの変化、ビブラート等の細かい表現がついていくとより豊かな演奏がでることでしょう。

また、アーティキュレーションについては課題が残る演奏でした。タンギングすると停滞し、スラーだと転ぶ傾向に少しずつですがあります。例えば基本的な音型(スケールやアルペジオ)を色々なアーティキュレーションで練習してみて、それを安定させていくような練習を積んでもいいかもしれません。また舌のつきかたをもう少し優しくしてみる、スラーの頭に小さなテヌートをつけるクセを身に付けるなど、技術面だけではなく表現面であらめてみるのもいいかもしれません。

 

2.ファゴットソナタ/グリンカ

うちの会でソロは久しぶりでしたね。いつも出してあげられるといいのだけど・・・。音出しの時に「ヘッケル?」と思うくらい艶と響きのある音色でした。楽器のポテンシャルをよく生かせていると思います。広い会場でどうなるか、ということも考えていければモーレンハウレルという楽器の世間的なイメージも向上していくんじゃないかと思います。

さて一方で、「いい音色」というのはすぐに飽きがきます。またシーンごとに「いい音色」というのは違いますので、場面がコロコロ変わるドラマチックなこの曲においては音色の操作がないと面白みに欠けてしまうかもしれません。ダイナミクスもそうですが、音色の操作。もっともっと豊かな表現を目指していきましょう。

 

3.ファゴットソナタemoll/テレマン

全体として安心して聴ける演奏だったと思います。表現の難しい調性と曲調であるこの曲で安心して聴ける演奏ができたことは大変立派な事であり、技術・表現ともに地力が高まったというのは確かでしょう。いい練習時間を過ごしたのが伝わってきます。

安定感がある一方、少しずつ停滞する演奏になっています。停滞の原因はたくさんありますが、音楽がおさまる箇所は上手ですが進んでいく箇所があまり得意でないようで、結果として停滞した印象に繋がっています。装飾音符などを入れるとそれがより顕著になっていきます。まず基本の音符で全体の流れを理解し、前にいくところ、落ち着くところ、を少しオーバーに表現できるようになってから装飾を入れまとめていく、という作業が必要かもしれません。カデンツァの含まれた作品に取り組むといいのかもしれません。

またタンギングが「止める」一辺倒なのも少し気になりました。触るだけのタンギングを使い分けていけると色が1色増えるような印象を受け、面白みが増すかと思います。

難しいところはよくさらいました。そこはあまり心配していなかったけど、よくさらったであろうところには音楽的な前進も感じられたので、もしかしたら難しくないところももっと「だらだらと」音を出す時間が必要だったのかも。

 

4.三重奏曲/ベートーヴェン

難曲をよくまとめていた演奏だと思います。ピアノに集合する、という意味で、ピアニストの素晴らしさが引き立つ演奏に聴こえたのは、よかったのか、悪かったのか・・・。笑

まずフルートの最初の合図、あれでは絶対に入れません。なんとか進んでくれたのはピアノ・ファゴットが大いに甘やかしてくれた結果です。動画で自分の合図を見直してみてください。そこに合図の得意不得意は関係なく、「共演する」ということがどういう行為なのかよく考える必要があります。それは基本的な曲のさらい方やフレーズへの取り組み方にも言える事かもしれません。誰と何の曲を演奏するか、は問題ではなく、その曲にどう取り組むか、そしてそれによって共演者とどんな思いを共有できるか、というのが問題なのだと思います。合図はその入り口に過ぎません。

ファゴットはこの曲をよく理解した音色とフレーズ感で演奏できていました。大変難しい曲ですからそれ自体、とっても立派な事だと思います。曲への愛情を感じました。短調の部分、もっと急激な変化が見えてもよかったかな。音色や音量だけでは限界があるので、アーティキュレーションをもっとシンプルに変えていってもよかったでしょう。

それにしても何回聴いてもピアノがうますぎる。笑

 

5.ファゴットソナタfmollより/テレマン

明らかに苦手であろうバロック作品を1回のレッスンでよくここまで仕上げました。まるで別人で、MVPもちょっと考えたくらい。もっと珍しいレパートリーならありえたかも。

楽器のポテンシャルも生きてました。自覚があるか分かりませんが、弱奏が大変魅力的でした。これは前の楽器ではできない領域だと思います。弱奏は素晴らしいので、もっと強奏に楽器のポテンシャルを生かしていきましょう。もっとドカンと鳴らしても大丈夫な楽器です。曲調のため、使用シーンは限られていたとは思いますが・・・。

またブレス前のフレーズ処理が雑になる癖があります。もちろんバテによるところは大きいと思いますが・・・もうひといき踏ん張って。その0.01秒を放り投げて休んでも何も変わりません。大変惜しい要素でした。

装飾はとってもいい感じに入っていたと思います。1回のレッスンでしたから触れることができませんでしたが、装飾は入れて終わりではなく、入れることで音楽の表現を豊かにする必要があります。派手な装飾を入れても息が入り楽器が鳴っていないと逆効果になってしまったりします。

得るものは多かったと思います。ぜひまたバロック作品、挑戦してみて。ヴィヴァルディは比較的波長が合うと思うし、ドゥビエンヌだとテレマン以上に苦手意識を持つかと思います。お好きなものを。

 

6.抒情組曲/ダンヒル

時代が時代(3年くらい前?)ならMVPものでした。なにせレッスンのたびに成長著しく、毎回僕がとても楽しかったです。僕がしばしばレッスンで言う「表現のために技術を」というやつが、まさに実現できていました。この曲を演奏するための技術がきちんと身に付いているからこそできる演奏でした。

伸びた音の扱いとその処理があまり行き届いていませんでした。今回の演奏ではそこまで気になるほどではないですが、もし合奏やアンサンブルになると、隣人や指揮者にかなり指摘されてしまうかもしれません。基本的には音は舌で止めます。音の処理というのは、舌で止める直前の音の動きによって作ります。おそらく、舌で止める前に無意識で息が止まったり遅くなったり早まったりしてしまうため行き届かなくなってしまいます。まずは無機質でいいので止めてみること。そこから処理を考えていくと、うまくいくのではないでしょうか。

また、曲ごとにたくさんのものを得ていますから、曲と同時進行でレッスンのたび1曲ずつでいいのでエチュードを持ってくるのがいいかもしれません。それほど難しいものではなくていいので、挑戦してみましょう。(きちんと)譜面を読んだ数、というのはとても大事です。

 

7.ファゴットソナタemoll/テレマン

この曲のしっとりした雰囲気をよく表現した演奏でした。レッスン時に問題だった装飾もすごく丁寧に扱えていて、バロック作品の演奏について、ずいぶん理解できてきたのではないでしょうか。すごいことです。

ビブラートも大変いいものを持っていると思います。特にクレッシェンド時、そのビブラートはとても効果的ですからもっと磨いていきましょう。ただし膨らませるビブラートは上手なのですが、フレーズをおさめるときにも同じものを使ってしまうと、聴いている側には「?」となってしまいます。幅の広いビブラートをお持ちなので、少し幅の狭めの繊細なビブラートを習得すると表現の幅がより広がっていくと思います。

似た話になってしまいますが音色の操作がもっとあるといいでしょう。柔らかくともしっかり鳴った音、硬いが小さな音、ほんの少しですが曲の表現にはとても重要なものとなってきます。まずはイメージからでいいので、使いこなせるようになりましょう。

 

8.ファゴットソナタ/ハールストン

すっかり定着しました「友情出演」。しかし、いつもこのくらい安心して聴きたいものです。笑

安心して聴ける、ということ以上に、深みと味わいのある演奏でした。特に低音の音色が曲にすごくあっていてよかったと思います。前回の発表会で全体に言った「ファゴットでいい音楽をするとピアニストがこたえてくれる」という瞬間がたくさんありました。

低音の響きに対して中音域が少し、潰れたような印象の音になっていました。リードもあるかと思いますが、意識と操作がどうにかなる範囲だと思いますので、同じリードが生きてるうちにお試しください。逆に中音域がいい音の出るリードで、今回みたいな低音域が出せる意識と操作もあると思いますからぜひお試しください。僕も基本的に演奏はリードと楽器頼りですが、最後は人間だより、だと思います。

 

9.プルミエソロ/ブルドー

ビブラートを封じた部分の音色は比較的よくなっていた、とは思うのですが、やはりその分消極的になってしまうようです。封じるのであれば、ビブラートなしで大きな表現をする練習をぜひしましょう。そのうえで正しいビブラートを習得して使えるようになっていくと表現の幅が倍増します。

やはり客観性に欠けます。「こう吹く」ではなくて、「こう響く」「こう聴こえる」というところに意識を持っていきましょう。どう響けば、どう聴こえればいいのか、というのは、美意識や人生経験から研ぎ澄まされていくものだと思います。おそらく必要なのは一種の冷静さで、全力で吹かない、というのも大切なのかもしれません。

恩のある元男性のトランぺッターが言うに「20代は女子の方が上手い。男子はどうしても力でねじ伏せようとするが楽器はそうできていない。30代になって体力が衰えてくるとようやく体の使い方を考えだして上手くなる(意訳)」とのこと。とはいえ体の使い方は今からよく考えていった方がいいかも。音楽の趣味の問題、だけではなさそう。

技術的には、ほとんどの音が速い息で吹かれていて音色の変化が見受けられません。絶対的な「いい音」なんて存在しませんから、色んな音が出せるように。速い息の音、それほど使用シーンは多くありません。

指だけ回るような演奏にならないように。人の心に響く演奏を心掛けましょう。

 

10.三重奏曲/プーランク

ある意味、室内楽としては理想形だった、と言えます。それぞれがきっちり音楽を考え持ち寄り最大限のパフォーマンスを勝手にやり、リハーサルでそれを調整し噛み合わせてパパっと本番に挑む。そしてそれが人の心に届く。ハードルの高い、またピアニストとしては技術的に難易度の高い曲を、本当に3人ともいい形で取り組んでくれました。第一声で「この曲はこのくらいやってくれなきゃね」とは言いましたが、ここまでやるとは正直思ってませんでした。まぎれもなく歴代最高峰のプーランクで、これを越える演奏が出てくるのは、本当にいつになるやら。

この曲をうちの会でやる以上、それはもうファゴット吹きが「僕の仲間でイチオシのオーボエをみんな見てください」という事でしょう。ファゴット吹きにとって、音楽的に身近な上手いオーボエ奏者というのは本当に特別な存在ですよね。

ピアノは本当によくさらってきました。きちんとヤンチャしてくれましたし、ロマンチックな音も持ち合わせているのなら、ぜひそれを最初(の合わせ、レッスン等)でやって・・!共演者の二人がそれに応えたくなっちゃう性格なのは、君が一番よく知ってるはずなのだから。うちの会でピアニストを基本的にプロに依頼するのは、ピアニストの格が上で、引っ張り上げてもらうことは単旋律楽器の奏者としてはとても大事な経験だと考えるからです。ぜひ、いつでも格上でいてくれるようなピアニストになって。

オーボエファゴットは、基本的な音の傾向がここまで違う(最初のソロのキャラクターの違いが、それはそれでとてもいいのですが)のに綺麗に噛み合わせて大変面白かった、いや、違うからこそよかったのか。しかしもっと影響し合う部分があってもよかった。音色やフレーズは共有するけれど、なんというか、楽器の鳴りが2人で違いすぎて聴いていて肩透かしを食らってしまう瞬間が何度かありました。いい奏者と共演するメリットは、自分にない音を引き出してもらうことにあると思うので、ある意味、好みとは違う領域に挑戦するいい機会だったのだと思うのですが・・・。お互い(3人で)引き出し合う感じが見られれば、MVPだった、と思います。個人技の成長がテーマの発表会だからね。演奏としては最高峰だったと思います。

 

11.組曲/ロンゴ

今回のMVP。一体何あったっていうんでしょうね。笑

派手な曲ではないのですが、それが気にならないくらい、色んな音色が聴こえてくる演奏でした。問題だったアーティキュレーションの表現やリズム感・音程感も改善するどころか、そこからいいアプローチができていて、伸びしろの大きさを感じました。ブランク明けて間もなく、ということなので、いい意味でリセットされて体の使い方がよくなったのかもしれません。今回演奏した時の感覚的なところを忘れないようにすれば今後よりレベルアップができるでしょう。

課題があるとすれば、ピアノとの絡み方があまり良くなかった。この音型のピアノに対して、ファゴットはこう演奏する!というイメージのようなものがちょっと薄かった、のかな。合わせも多くはないので、そこもやはり個人の領域でもっと考えるべきだったと思います。ピアニストに「あの、私はもっとこう弾いてほしいんです!そうしたら私はこう吹きます!」と言えるくらい。実は前回の発表会(いなかったけど)で多かった「ファゴットがピアニストの音を引き出すような演奏」というのが見られるとより良かったかなぁ、と思うところです。ピアノは弾けるんだっけ。弾いてみるのも、いいかもしれません。弾けなければファゴットで吹いてみるのもけっこう違ってきますよ。

なので次回もよかったらオケものではなくピアノオリジナル作品がいいかと思います。バロックではなく。和声的なところならヒンデミット、リズムならタンスマン(組曲)やフランセ(2つの小品)あたりが効いてくる、というか、今のままだと事故るくらいうまくいかないかも。笑 挑戦、という意味では、そのあたりはとてもいいでしょう。

 

12.ファゴット小協奏曲/ダビッド

コンチェルティーノ特有の軽さとこの曲のもつ明るさや優雅さ、とてもよく表現できていたと思います。技術的にも安定していて、うんうん、とうなずきながら聴ける演奏でした。サロンコンサートを聴いているような安心感でした。流れも自然で、必要な表情もよくついています。

が、逆に言うとそれだけに特化した演奏だった、ともいえるかもしれません。聴いた印象ほど難しくはないこの曲、もっと「聴かせる」ことにこだわってほしいポイントを逃してしまっていました。心がギュッとなるようなピアニッシモ、ゾクッとくるようなフォルティッシモ、みたいな箇所がなかったことが、残念でした。それは曲の軽さとは関係なくなくてはならないものだと思います。僕らファゴット吹きには伝わっても、それ以外の人には果たしてどうだったでしょうか・・・。もっともっと表現力を。

また速くなってからは、技術的にはいいのですがフレーズがとても短くなってしまっています。あまりフレーズについてしっかりレッスンで触れてきたことがないとは思うのですが・・・。「技術がよいが音楽がまだまだ」と評されるの、いやだと思いますから、次の機会にはそこらへんみっちりやりましょう。たぶん楽譜を見る目が変わってくると思いますし、本当に必要な技術が足りてないことにもきっと気づけるはず。


13.パパゲーノの歌/モーツァルト

直接も言いましたが、きっちり音出しをしましょう。本番(実際の演奏開始)までの時間の使い方をもっと考えて。今回、到着がバタバタしてしまっていたので大変だったとは思うのですが・・・・そんな時にこそ考えなくてはならないことです。ほんとうに時間がなければ、ステージで堂々と長々と音出しをするようなふてぶてしさがあっていいのです。ここは演奏会ではなく発表会。お客様より演奏者が大切なのです。

しかし課題だった音のツボや音程に関して、すごく良くなりました。習得しつつあるのはレッスンでも感じていましたが、最後のレッスンから本番まででもずいぶん良くなったようですし何より本番でそれを発揮できたことは素晴らしいことです。度胸もついてきたのでしょうか。

曲の持つ雰囲気のようなものも伝わってきてよかったです。ひょうきんで明るい曲調をよく表現できていました。朗々と歌い上げるような部分はもっと迫力があってもよかったですが、この曲でそれをやるのはなかなか難しいですね・・・。

次回はぜひ、技術的に「えっこんなの私には吹けない!」というものに挑戦しましょう。いえいえ、吹けますから、大丈夫ですよ。シュターミッツの協奏曲の1楽章、ぜひ聴いてみてください。

 

14.ファゴット協奏曲/シュターミッツ

世にも珍しいシュターミッツ全楽章。聴いてるほうはどうなるかと思いましたが、君の演奏がよかったためまったく飽きることがなく聴けました。いい曲じゃん。

僕の教えた事とは関係なく、力の入れ方、抜き方が上手くなったと思います。年齢とともに力まかせが効かなくなってきて、覚えるべくして覚える技術なんでしょうね、同世代なので僕もとてもよく分かります。シュターミッツとしても、君史上としても、本当に稀に見る名演だったと思います。やはりソロ曲にたくさん取り組むと楽器はうまくなる。

さて課題があるとすれば音色でしょうか。いや元々いい音吹いてるのですが、もっと操作が欲しい。いや操作も上手いと思いますが、「明るい」「暗い」「大きい」「小さい」はとても上手いですが、それだけで完結してしまっています。例えば「苦しい」「気持ちいい」「しっとり」「からっと」「ずっしり」「かろやか」なんて表現を取り入れていくと、もっともっと表情が豊かになります。そしてまた必要な技術が増えていきます。楽器、どこまでも上手くなれますね。

僕から見ても反則みたいに上手い新しい子が増えていく中、君がきっちり長男の貫禄を見せつけてくれると、本当にうれしく思います。手前味噌ながら、この会の存在の素晴らしさを感じずにはいられない。

 

15.協奏曲"不死鳥"/コレット

16.テキーラ/リオ

今回のゲスト枠としてお呼びした、音大生3人と僕とで四重奏を演奏しました。

3人とも、本当にそれぞれ抜群の才能を感じる子たちで今後が本当に楽しみです。僕が当時のまま今大学4年生だったら、こんなレベル高い中楽器なんて続けようと思えないくらい、凄まじい限りです。若い子たちに刺激を受けて、大変にありがたい時間でした。

3人とも本当にありがとうございました。今度はオケ等でぜひご一緒しましょう。

 

17.オーケストラ難曲集より/エールベルガー

自分で演奏しました。曲名表記に不安あり。笑 でもいい譜面でした。反省点多々ありますが、ちょっとでも「おっ」と思ってくれるところがあれば嬉しいところです。この2曲以外にもあと4曲ほどあります、が、譜面が手に入りにくいようなので興味のある人は言ってくれれば見せますよ。

余談ですがやっぱりベートーヴェンは4番が一番いい曲だと思います。とりあえず聞く分には。

 

18.2本のファゴットのためのソナタ/モーツァルト

色んな意味でハードルは高いよ、と脅しておいたはず。笑

良くも悪くも2人が全然違うタイプのファゴット吹きなのだから、もっともっと影響しあってほしかった。同じような音を出す必要も同じ方向を向いて演奏する必要もないけど、「あなたがそうすならわたしはこう」という語らいが見えなかった。個人戦×2、という印象でした。音程もリズムもあってはいるのですが。それは2人の関係性がどうこう、というよりはそれぞれの持つアンサンブルへの意識の問題なのだとは思いますが・・・。

「もっと殴り合え」と言った箇所に関しては、よかったと思います。その音楽的な「殴り合い」が「語り合い」だったり「口喧嘩」だったり「仲直り」だったり「一方的な蹂躙」であったり、色んな形に変化していくと、僕たち(僕と相棒)のようになっていくんじゃないかな。リスペクトしてくれているかどうかは、知らないけれど。笑

とはいえ、体力的にもきついし音楽的にも技術的にも実はとても難しいこの曲を本当によく演奏していました。楽曲の完成度としては相当高かったと思います、そのぶんデュエットとしてもっと面白ければ、最高だったのだけど。

 

19.ロマンス/エルガー

いやー聴かせるのが難しい曲ですねこれは。味と深みのあるいい演奏でした。持ってる音色にもピッタリで、ある意味プーランクよりずっとハマり役、という印象でした。

音楽の流れもレッスンの時よりずっとよく、気まぐれでアンニュイなところはよく表現できていました。が、恐らくオケだと合わせられないような箇所も多かったかなと思います。ピアニストは見事につけてくれていましたが、そういった箇所は音楽的な流れも止まってしまっているので惜しかった。でも、僕もあんなにピッタリつけてくれたらあのくらいやってしまうかもしれない。笑 やってから、あ、これは、ちょっとないな、と反省するような感覚。聴いていると、それ自体は悪くは感じないのですが、いちおうこれは講評なのでね。

と、技術的には、音色が一辺倒なのが気になります。この手の曲をよく聴かせるには、いつもの音とは違う音色を押し入れから引っ張ってくることも必要だと思います。そーいう挑戦がそろそろあってもいいのではないでしょうか。リードの方向性、咥える位置や角度、運指の選択、もちろん息の入れ方や唇の締め方や緩め方。必要な材料は持ってると思うので、もっともっと色んな音を出そう。みんなの思う「君の音」なんて、どうでもいいのだから、曲の表情によってもっと色んなことに挑戦してみて。それでこそ、今持ってる音も映えるというものだ。

 

20.クリスマスパストラーレ/ジョリヴェ

パストーレ、って何でしょうね。ごめんなさい。

そういえばこの曲は発表会では初登場、ですか。はじめて聴く人も多かったのかな。原曲ハープだから、とピアノでは敬遠しがちですが、これはこれで、アリだと思うくらい本当にいい曲ですよね。

前日の合わせ・レッスンで大変だったと思いますが、逆に前日だったことでよかったこともあった気がします。

まず2人の持つ音の特徴がとても相性がいい、というのが今回の演奏の良さだったと思います。フルートは中低音の太い音、ファゴットは線の細い音で歌う力に優れていると思いますが、その2つがハマる瞬間がとっても心地よかった。

2人で一つの線を描くシーンの多いこの曲をやるには、合わせが足りなかった、という事なのか。もう一息でした。でも2人どころかオケなんかだと100人で一つの線を描いたりしますから、今回の経験をぜひ今後に生かして。「繋いでいく」というより「紡いでいく」ということなのかもしれません。

アンサンブルを1曲演奏する、なんて、うまいメンツをそろえるだけで7割は成功です。あとの3割なんて、大した問題じゃぁないんですけどね。そのための人徳と腕前なのだと思いますよ。

 

21.木管五重奏曲「アメリカ」/ドヴォルザーク

奇跡の連続。笑 本当によくズレずに最後まで。

5人それぞれの平均をいくと、そこまで深い付き合いじゃないはずなのですが・・・。「合わせが楽しい」と5人口をそろえて言っていたことも考えると、今回あったのは音楽ではなくて、5人とも、1人より人と演奏してる時の方が腕前が発揮されるタイプ、なんだと思います。そういう意味で、相性がよかった。他人に影響されすぎるのも、実は考え物だったりするのですが・・・・・今回はうまくハマりました。という意味でも、奇跡。

課題は言うまでもなく、1人1人がもっともっともっと上手くなること。本当に、失礼な言い方ですが唯一キッチリ吹いてくれるホルンが調子悪そうでどうなるかと思った・・・。5人全員がきちんとやるべきことをやって実力を上げて再結集したら、今回の5倍は楽しい。それは絶対。そして本来楽器というのは、それを目的に上手くなるべきだと、僕は思いますよ。上手くなるのに時間はそれほど必要ではないですから、ぜひまた近いうちに同じメンバーで。

1個前の講評でも書いていますがアンサンブル本番の準備なんて人事で7割が完結しているのです。「うまいのを集めりゃうまい、そしてそれが楽しいしそれ以上なんてない」と皆に言ってきましたが、ごくまれに例外的にこーいうこともある。あるから、楽しいんだよなぁ。

 

22.5つの民謡風小品より/シューマン

MVP悩みました!定義が「伸びしろ」で選んでいますので外しました(レッスンの時がうますぎた?)が、曲の良さを引き出す、という意味では一番でした。ピアニストとの噛み合いも抜群です。かっちり合わせてくれるピアノですが、ファゴット側からのアプローチも素晴らしく、アンサンブル部門!って感じでした。

この曲もそうですしピエルネやロンゴ辺りもそうなのですが、レパートリーとしては定番でも僕はやらないし勧めもしない曲たち、皆がいい演奏してくれることで僕が考えをあらためる事になってます。私事ですがいまリサイタルの選曲中で、この曲が入ってきています。どうなるかは分かりませんが・・・。

技術的にも音楽的にも非常に完成度が高く、何よりも音色の操作が2人ともとてもうまかったと思います。これだけの事ができるなら、今はこのクオリティでたくさんのレパートリーに挑んでいくことが大切だと思います。フランスものだとまたアプローチが違ってくるし、バロックや古典だと新しく覚えなきゃいけないことも多いです。どこまでレベルが上がっていくのか、今後ともすごく楽しみにしています。

 

23.朗唱、シチリアーノとロンド/ボザ

もう1曲が大変だったのがよく分かって、しまいました。笑 気持ちは分かりますが、複数個乗り番をかかえる、というときに大事なのは「こっちが大変だから仕方ないね」ではなく、平均点勝負をすることです。今自分はどっちがどのくらいやばいのか見極めて準備の時間割を決めること。楽器が違えばなおさらです。この曲だってソロではなく、ピアニストのデュエットなのだから。

音楽でやんちゃをするセンスと技術的な材料は持っているようです。それはもっと即興的に、日常的に使っていかないと磨かれませんから、今度は最初からそれを聴かせて。気まぐれな性質の作品なら、なおさら重要なことになってきます。

ハイトーンは、出なければ「残念!」としか思いません、が、ちょっと苦手意識が強くなってますね。まず、今はCより上の音を綺麗に出そうと思わないこと。出れば御の字、その先はまだまだあなたには早いようです。汚くとも安定して出るようになって、それが複数本のリードでこなせるようになって、綺麗に出すのはそこからです。高望みが時期尚早なのです。

また、フォルテもピアノも音色の変化が見受けられないのも気になります。小さな音!ではなく柔らかい、かすれた、悲しい、苦しい、など、大きさではなく色や形を意識するとより音楽表現が豊かになると思います。

 

24.ファゴット小協奏曲/ベルヴァルド

バテましたね。分かってはいたけど、省エネで言って、かつバテて、というのは聴いている方には惜しい、という印象を感じずにはいられません。ところでその省エネは本当に省エネできているんでしょうか・・・?もっと攻めていた方が意外とバテなかったのかもしれません。体力面についてはいろいろな考え方がありますが、疲れても吹ける、という技術は、疲れることから逃げていては身に付かないのかもしれません。疲れないように疲れないように、という対策が、逆に自分の首を絞めていることもありそうです。もっといろいろ試してみて。

音色、というか楽器の鳴らし方がいい意味でソリスティックになりました。これは大変素晴らしいことで、大きなホールでもきっと美しく音が響くようになったでしょう。フレージングもよく考えられていてよかったと思います。

中音域の音程について、もう少しきちんと向き合いましょう。音程を取ることで楽器はもっときちんと鳴ってくれます。表現のために音程を犠牲にしないようにしましょう。

レッスンの時は曲との相性が悪すぎてどうなるかと思いましたが終わってみればハマり役に聴こえてきたのは、きっと大きな成長を遂げたという事なのでしょう。似た傾向?の曲にクルーセルなんかもありますのでどこかで挑戦してみてくれると嬉しいです。

 

 

講評、これで終わりです。

今回は初めましてのファゴット参加者がいなかったのがあるのか、いい意味で安心して聴ける演奏が多かった印象でした。別にレベルの高い会を目指しているわけではないのですけれど、続けていくとやはりみんな本当に上手になっていきますね。本番を聴いていて一番楽しいのはやはり僕なんだろうなぁ。

参加者の皆様、本当にお疲れさまでした。また皆さんの演奏を聴けるのを楽しみにしていますね。

第15回門下発表会でした。講評とか合宿開催のご案内とか。

こんにちは。「ブログちゃんと更新して」といよいよ生徒に怒られ始めているとのむぅです。暑くなってきましたが、みなさんどうお過ごしでしょうか。僕は暑さに弱いので完全にへばっています。温暖化・・・

 

さて、先日、僕の生徒の門下発表会がありました。早いもので今回で第15回だったんですね。今回は全体的にレベルが高く、会場中が唸るような演奏がたくさんありました。また「初心者」と思われていた顔触れが全くそれを思わせないレベルの演奏を披露してくれたことも、全体のレベルの高さを印象付けてくれました。毎回のように個人がレベルアップしていくと、当然全体のレベルも上がってきますよね。当然と言えば当然なのですが。

今回はサンサーンスソナタを演奏した2人がソロ部門、ピアニストを連れて参戦したピエルネをアンサンブル部門のMVPに選びました。サンサーンス組は最後のレッスンでも曲の美しさと難解さにやられており、課題を多く残していたのですが・・・本番はそれを乗り越え余りあるような演奏を披露してくれました。ピエルネは「息の合った2人」という領域で他の追随を許さない演奏でした。最近ではMVPを意識した演奏をする子もいるようですが・・・たぶん狙って取れるものではなく、それぞれが精一杯演奏に向き合い、それがうまくいった結果でしかないのかな、と思います。

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それにしても、一人残らずレッスンの大きな成果を感じた発表会でした。出演者が僕のところにレッスンにくる回数は1回~5回くらいと幅があるのですが、回数に見合った成果が出ているようにも思えました。やはり「きっちりレッスンにきてソロ曲を本番で吹けば飛躍的に楽器がうまくなるはず」というこの発表会のコンセプトは間違ってはいないようですね。曲をさらうことで得た技術や練習方法を普段の合奏等にも活かせれば幸いです。

 

さて少しご案内を。僕の主宰するファゴットアンサンブルイベント団体「トッポの会。」では毎年合宿を開催しています。僕ともう1人の講師である松本静香さんの個人レッスンとその成果発表会、アンサンブルの練習とレッスンによる発表会を中心とした合宿で、全国から毎年10人以上のファゴット吹きが集まり楽しくやっています。今年は8月10日(土)~8月12日(月祝)の3日間で、静岡県で開催されますので、興味のある方はぜひご参加ください。応募締め切りは7月いっぱいまで、と少し急なご案内で申し訳ないのですが・・・。

詳細のご案内とお問い合わせ・参加申し込み窓口についてはトッポの会。のTwitterアカウントをご覧ください↓

https://twitter.com/toppo_bassoon

 

また次回の門下発表会のご案内です。

2019年11月17日(日)お昼ごろ開演

ノナカ・アンナホール(渋谷駅より徒歩5分)

参加費(レッスン代1回分、ピアニスト謝礼込み)

 ファゴットソロ(学生)10000円

 ファゴットソロ(社会人)14000円

 アンサンブル(1人)6000円

ファゴットソロ、もしくはアンサンブル(他楽器可)団体でお申込みください。レッスンを1回以上受けてくださればどなたでも出演できる発表会です。ご応募は↓から。お待ちしております。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さて、ここから先は演奏ごとの講評となります。参加者の方以外には関係のない記事となってしまいますことをご了承ください。

 

1.ファゴット協奏曲第1楽章/シュターミッツ

初参加お疲れ様でした。曲選びのとき「様式を学びたい」と言ってこの曲を選びましたね。この曲で学んだフレーズ管理はどんな曲でも生かせる要素なのでぜひ今後の演奏に役立てていってくださいね。

課題だったトリル周りもよく練習してきました。必要なコントラストもきちんとついており、まれにみるハイクオリティのシュターミッツだったと思います。

さてそのコントラストについてですが、音量やタンギング等による変化はたくさんついていますが、それでも、どういうわけか全体的に同じ調子に聴こえてしまいます。厄介な音型でもあなたの持っているいい音色で演奏できているのですが、悪く言えばいつでも同じ「いい音」で演奏してしまう傾向にあるようです。太くてよく鳴るいい音を持っていますが、それだけでは聴いている人に音楽の変化を伝えきることはできません。音色の変化について、もっと研究していきましょう。とある音楽家が「いい音を出すにはいいメロディをたくさん奏でることだ」と言っていますから、今後いろいろなレパートリーに挑戦していくことで得られることもあるのかもしれません。

あ、初参加あるあるですが、礼はピアニストと合わせてしましょう。ピアニストが立ち上がるのを待ってから。地味ですが共演者への礼儀として、とても大切な事です。

 

2.ファゴット協奏曲2.3楽章/ロッシーニ

技術的・音楽的に、課題である安定感はついてきたんだと思います。ロッシーニというある種独特な世界観を持つ音楽をよくとらえて演奏していました。また音色の操作とダイナミクスの変化が良く噛みあっていて、コントラストのついた演奏になっていました。

さて、それでも今回の演奏は心に響く演奏にはほんの一歩及びませんでした。いつもよく練習してきますし、練習の仕方もそこまで間違ってないと思います。では何が問題なのでしょうか。おそらく「客観性」の欠如だと思います。今のあなたのしかける音楽は、少し極端だったとしても間違っていない事が多いのですが、聴いている側には心地よく伝わりません。今後は聴いている側にどう伝わるか、ということに重きを置いて演奏しましょう。そのための技術と感性はもう持ち合わせているはず。

さて3楽章のテンポ感についてですが、レッスンで「転んでいるよ」と伝えた場所が少しずつ悪さをして速くなっています。逆にそこに気を付けていれば後半もどうにかなったでしょう。ピアニストは素晴らしく合わせてくださっているので、「これはまずい」と思ったら大胆に調整するくらいの度胸はあってもよかった。CDで聞くようなテンポ感を実演するのはあまり現実的ではありません。「やりたいテンポでやる」というのが必ずしも聴いている側にとって心地いいテンポ、とは限りません。この手の難しい曲をやるのであればなおさら。

また強奏が基本的に乱暴です。これも「聴いていてどうかな」という意識から改善していけると思います。あなたのファゴットで人を心地よくしてあげられるようになりましょう。

 

3.ディベルティメント/ハイドン

ある種、人前で挑戦するにはハードルの高い作品ですね。1楽章の最初のテンポ感は悪くなかったのですが・・・2拍子としてのカウントが足りてないのでどんどん遅くなっていきました。全楽章を通して、レッスンでさんざん指摘した「語尾」の処理ができていませんでした。趣味の問題、という領域を越えて、古典派作品には「やってはいけない処理」というものがあります。せっかく人にならって木管五重奏を演奏しているのですから、「うーん」と思った指摘を自分の納得いくようにかみ砕く、くらいの気概が欲しいものです。

また1人1人が楽器の鳴りについてもっと敏感であることが大切です。5つも違う楽器が集まっているので、バラバラな鳴りに気づかず進みがちです。常に「どう聴こえているか」「あの人はどう吹いているのか」ということに神経を使いましょう。違う楽器の人の意見こそ、自分にとって最適な指摘であることはよくあることです。長い付き合いであれば、なおさらです。

 

4.バロックスケッチ/スモーリー

小編成の演奏時、チューニングは必要がなければ省略したほうが聴いている方は心地がよかったりもします。どこかでお試しください。

バランスが悪いです。レッスンでも指摘したファゴットのよく悪くも「いい音」に対してヴァイオリンの鳴りが悪い。ファゴットコントラストがほとんどないし、ヴァイオリンは弓の音が聴こえてきません。何もかも違う2つの楽器なのですから、鳴りの違いにはもっと敏感でいないといけません。基本的にはヴァイオリンの旋律とファゴット通奏低音で構成されている作品なので、バランスが悪いと聴いている側はどこに耳を傾ければいいのか分からなくなってしまいます。もっと自分たちの演奏を客観的にとらえましょう。「仲がいい二人の二重奏」というのはある種、すごく高いハードルが用意されてしまいます。「仲がいいのに合わないの?」と言われてしまわないように、1人1人がもっと技術的に足りないものを得られますように。アンサンブルなんてしょせん個人技次第です。

繰り返し後に装飾を入れるのはいいと思います。が、「なんかごにょごにょとやったようだ」と思われるような装飾は逆効果です。入れた装飾はすべて一瞬の超絶技巧です。付け焼刃にならないように。

ファゴットはやはり独学の限界を感じます。おそらくあなたより技術的に格下であろう子たちが立派に演奏しているのを聴いて、なにか思うところもあったのではないでしょうか。楽器はうまく吹くのが一番面白いです。ご連絡お待ちしてます。

それにしてもこの曲、よく見つけてきましたね。何人かの知人に聞きましたがこの曲を知ってる人は1人もいませんでした。曲に対して想いはあったんだと思います。僕にはそれは伝わってきますが、他のお客様にはどうだったのでしょうか。想いを形にするのが技術です。

 

5.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

聴き映えのする作品、ということを差し引いても名演でした。力任せだった部分がなくなりました。色彩感もとってもよく出ていて、聴いていて心地よかったです。低音~中音はかなり良いのですが、五線の上あたりから、少しピッチが不安定なようです。楽器のハンデがあるとは思いますが・・・もう少し気を使いましょう。

速いパッセージのとき、最初と最後はいいのですが真ん中の音がすっ飛ばされて聴こえる事が多いです。運指が簡単な部分こそ丁寧に練習しましょう。和声を決定づけている音を特に丁寧に。そうすることで見えてくるフレーズの歌い方もあるはず。

中間部、オブリガードに回るところのバランス感覚は本当に素晴らしかったと思います。オケだとバランスを取るのに必死ですが、ピアノと1:1だとそういった箇所もたくさん歌えていいですね。

少しコントラスト不足でした。弱奏部はじゅうぶん綺麗だったのですが、強奏部はもっと荒い音があってもよかったのかも。荒い音を力任せではなく出す、というのを今後身に付けていくといいのかも。

 

6.ファゴットソナタ/ヒンデミット

息の合った二重奏、に聴こえました。本番は。笑 ここまでくるためにしてきた技術的な問題のクリア、というのが、アンサンブルをやる上で共演者に見せることができるたった一つの誠意なんだと思います。簡単じゃないですね、人と合わせるということは。

楽器の性能の活かし方がよく分かってきたようです。もっと楽に吹けるリードでも楽器はじゅうぶんに鳴ってくれますから、試してみましょう。リードを選ばずに済むのがいい楽器の特徴です。

「絶対にキメて!」と言った音程箇所、まぁなんとかなっていました。キメるためにはその前をきっちりと。よく理解し取り組んでいました。

それにしても難しい曲ですね。よく理解し取り組んでいますが、もっと音楽的にアンサンブル的に攻めた箇所が聴きたかったです。合わせる事、理解することに精一杯、という印象でした。そこまでいければアンサンブル部門MVP確定でした。

とにかくピアニストというものは音楽家としてぜったいに格上です。格上の共演者を生かす、ということに執着するというのはオケでも同じなはずですから、今後合奏への取り組み方も変わってくるのではないでしょうか。

 

 7.ファゴット協奏曲1楽章/ウェーバー

初参加お疲れさまでした。ファゴットだらけのおかしな環境の中、ステージさばきが堂々としていてとてもよかったですね。

ある種お手本のような、正統派の演奏だったと言えます。基本的な楽器の鳴らし方はかなり定着してきました。作品の魅力もじゅうぶんに引き出せています、とんでもなく難しいパッセージが少しずつできるようになっていく感覚、自分でもずいぶん面白かったのではないでしょうか。本番でできたかどうかは、まぁ、ともかく。笑

さて、一方で、良くも悪くも優等生すぎる演奏だった、とも言えます。聴いている方がいい意味でドキドキハラハラするようなシーンは1か所もありませんでした。それは安定している、とも言えますが、仕掛けが少ない、とも言えます。もっと自分で思う音楽を外に出して。レッスンで出してくれれば、それが素敵なのかおかしいのか、きちんと教えてあげられます。どこまで守りに入った演奏でも、ミスは必ずおきますから、それなら攻めの姿勢を取りましょう。ダイナミクスのレンジも、まだまだ十分とは言えません。まだまだ始まったばかりです、もっとファゴットを面白く吹けるようにまた一緒に頑張りましょう。

 

8.ファゴット協奏曲2.3楽章/ウェーバー

以前からそうですが、音楽への取り組み方が僕はとても好きです。守りに入るようなシーンがなく、聴いていて飽きのこない演奏ができる、というところはあなたの最高の長所です。大切に育てていきましょう。

さて基礎的な話になりますが、ビブラート(震え?)が少しおかしいようです。まず小刻み過ぎること。あまり効果的に響いてはくれません。まず真っすぐ丁寧に音を出し、その加工としてビブラートを用いる、ということに執着すると、もしかしたらしばらくビブラート禁止で練習するといいかもしれません。本来持っている楽器のいい響きがかなり殺されてしまっています。せっかく面白い音楽を出そうとしているのに、自分で遮ってしまっています。これはもったいない。ちょっとリードも合わないのかも。響きが下がりすぎる割にキャパの狭いリードになってしまっているようです。

また、水が詰まったまま演奏するクセは大変に良くないです。ボーカルの水だけ抜いても無意味ですから、きちんとトーンホールから抜きましょう。本番前にきちんとスワブを通すのも大事な事です。水が水を呼びますから、習慣が大事です。

3楽章はよく練習してきました。技術的に不安を感じる箇所は少なく、この曲でそこに至れたのは凄いことです。が、コントラストはほとんど伝わってきませんでした。連符へのコントラストは後付けしようとすると結局付けません。必ず遅くさらっている時から丁寧に仕掛けをしていくのです。指と舌が動くことに満足しないで。とてももったいない演奏になってしまいました。

 

9.ファゴット協奏曲1楽章/ウェーバー

レッスン不足はこちらにも責任がありましたが・・・。その割に、自分でよく考え練習したのだと思います。初めて会った時から指摘していた単純な練習方法についてはもう心配しなくても良さそうです。曲についてもよく理解しよく考え演奏できていたと思います。細かいミスがあまり気にならない演奏でした。

音が出てから音程を探るクセがあるようです。聴いている方にはかなり印象が悪いので気をつけましょう。出た音をただ伸ばす、というのも大切なことです。

ウェーバーの必修事項である速いタンギングは残念ながら身に付かなかったようです。なんとか追いついてはいるのですが、残念ながら「ヴィルティオーゾ」には聴こえないタンギングを最後まで用いてしまいました。この辺は準備不足が出てしまいましたね・・・。

ところで、ソロの時とアンサンブルの時で音の質が全然違いますね。ジャンルの問題もあるようですが、アンサンブルで真価を発揮するタイプのようです。それはとても素敵な事なのですが、アンサンブルをよりうまく(楽しく)やるには個人技を身に付けるほかありません。もっとあなたの音を光る手段を模索して。センスでねじ伏せてしまわないで。

 

10.ファゴット協奏曲/ウェーバー

ドレスが良く似合っていますね。さすがに着慣れてきた、というところでしょうか。

伸びやかな音がこの曲をより輝かせていました。技術的な安定感がきちんと音楽への表現へと生かされていて、大変好印象な演奏です。

歌う箇所についてもよくできていますが、おそらくまだ自分の中で飲み込めてないフレージングがあり、精度が高い演奏だからこそそれが目立ってしまう印象でした。2楽章を中心に、もっと研究というか音を体に入れるような作業があるとよかったのでしょうか。

いつもながらと言いますか、さすが、といいますか、とにかく安定した印象であるのですが、ある意味で惰性のようなものを感じる箇所も少なくありませんでした。7人連続、ということは関係なく、どこか「なあなあ」な部分があったのではないでしょうか。よく知った作品だからこそ丁寧な、あなたのファゴットで聴きたいものです。「はいどうぞ」だけではなく、「どうだ!」「どうでしょうか?」「要ります?」みたいなアプローチがあったらもっと面白かったな。

 

11.ファゴット協奏曲1楽章/ウェーバー

直接話しましたが、とにかくステージ上での笑顔が素敵でした。実は僕もソロのステージってどうにも嬉しくってしょうがなくなってしまうので、心情がよく分かります。ある種の開き直りでもあるのだけど。笑 メンタル面をすごく心配していたのですが、とても演奏者向きの性格をしていると思います。大事な長所です。

「雑なところをなくせ」と、とにかくレッスンで指摘し続けてきました。30点の音を出すな、雑に練習するな、違う、そうじゃない、など、引き算のレッスンが多かったこと、少し僕も反省しているのですが・・・。でもどうやら効果はあったようで、恐らく本番のような演奏をレッスンでしていればいい具合に足し算のレッスンが始まったと思います。悪い癖がたくさん抜けてよかった。

しかしながら、この曲で習得すべき「速いタンギング」はまだまだ安定しませんでした。止めるタンギングだけでは速度は出ません。そのための練習の仕方も教えたはずなのですが・・・定着しなかったようです。そこが残念でした。どの曲でも使えるアプローチだと思いますので、また別の作品で習得できるように頑張りましょう。

 

12.ファゴット協奏曲1楽章/ウェーバー

色々なウェーバーをさんざん聴いたあとの演奏、プレッシャーはあったと思いますが、ステージ慣れによるものなのか、堂々としていて素晴らしかった。楽器のポテンシャルも生きてきて、いよいよ「上級者たち」の入り口に立った印象でした。この曲は難解な箇所が常に重要箇所で、目をつぶっていては曲の魅力が一切発揮されないのですが・・・。難解な箇所、本当によく練習しました。どのくらい時間をかけたかは知りませんが、いい時間を過ごしたことと思います。

課題としてはタンギングの種類が一辺倒であること。決して痛いタンギングを用いているわけではないのですが、元々音量の変化に乏しい楽器なので、タンギングの種類での印象操作がとっても大切になってきます。発音の強さ、弱さに実際の音量を掛け合わせてようやく変化が聴いている人に伝わります。強いタンギングを覚えると共に、実体がないくらい柔らかいタンギングも覚えればもっと豊かな音楽表現がのぞめるでしょう。

この曲に必要な「速いタンギング」はじゅうぶんに習得できています。理論上、これでもうどんな作品でも吹けます(さらえます)から今後が楽しみですね。

 

13.ファゴット協奏曲2.3楽章/ウェーバー

誰が聴いても分かるコントラストの変化がとにかく魅力的な演奏でした。少し粗削りではありますが、そこまで変化をつけていても決して過剰にならない、というのは素晴らしい感覚を持っているからです。2楽章、3楽章ともにその感覚がいかんなく発揮された演奏でした。

2楽章のカデンツァは少し遅い方に仕掛けを作りすぎです。伸び縮み、という言葉がありますが、伸びっぱなしでは魅力的でないので、縮む方ももっと。

3楽章もコントラストは見事でしたが、簡単な指ほど転び鳴らない、トリルがやたら大きく前後が小さく聴こえてしまうなど、客観性に欠ける箇所が少なくない演奏になってしまっていました。技術的には克服できていたので、より丁寧な練習を心掛けましょう。結局のところ積み上げた分しか人の心は動かせないものです。

弱い方のダイナミクスで音程がブレないのは素晴らしいので、強い方のダイナミクスでも音程をもっと気にしましょう。油断が見えます。

 

14.ファゴット協奏曲1楽章/シュターミッツ

脱・初心者、と褒めるのが失礼なくらい立派な演奏でした。この曲をあのクオリティで吹けるようなレベルのファゴット吹き、そうたくさんはいませんから、ぜひ自信を持ってくださいね。

古典派特有の「ルール」みたいなことと技術面を中心にレッスンしました。どちらもかなりハイレベルにクリアしていますが、発音が「すごく強い」か「ほぼ前の音とつながっている」のどちらかになってしまいます。楽器のコントロールがまだ難しいとは思うのですが、自分の発音する音が音楽に適しているかよく聴きながら練習するようにしましょう。

コントラストも十分についていますが、弱い方がもっと広くなるといいと思います、特に合奏においては楽器のポテンシャルが悪い方に発揮されがちな状態です。今は目指す「いい音」を、楽器の鳴りだけでなく溶ける音を意識するといいと思います。

運指が複雑な箇所(音域が上がってくると特に)で少しぼろが出るようです。ギリギリそれらしい音は出るのですが、おそらく指を間違ったままなんとかしている、という印象の箇所が少なくありません。この曲はまだその手の音域が多くはないのですが・・・オケだとそうもいかないでしょう。Fより高い音を出し慣れていきましょう。スケールの3オクターヴ目もぜひ少しずつ慣れていきましょう。

 

15.ファゴットソナタト短調より1楽章/ドゥビエンヌ

もっとも心配なメンツの1人だったのですが・・・。予想外にハイクオリティでビックリしました。ピアニストのリアクションももっともです。

コントラストがハッキリついていてよかった。音質を損なわない強弱、というのは簡単ではないのですが、この曲を練習するうちに身に付いたようです。難しい箇所もよく練習したのがわかる名演でした。それがバテているはずの後半でも安定感を失わないのはいい練習をしたからだと思います。今回つかんだ日に日に「できるようになっていく」快感を忘れず、今後出会う譜面すべてに今回のような時間の使い方ができるように。

一方で、仕掛けとしての強弱はよくできているのですが、フレーズとしての強弱といいますか、音楽の濃淡みたいなものが見えづらい傾向にありました。安定しているけど、悪く言うと単調な演奏に聴こえてしまいます。そこまでレッスンで立ち入る余裕がなかったのは確かですが・・・。単純に短調の部分は暗く、長調の部分は明るく、といった具合に、音符から伝わる音楽をより映えさせるような工夫がもっとできるとよかった。でもこれは壮大な高望みであると思うので、そんな高望みができるレベルの演奏だった、と思います。この演奏が自信になりますように。

 

16.ファゴットソナタ1楽章/グリンカ

グリンカソナタ、うちの発表会では人気が高くよく演奏されていますが、歴代最高のクオリティだったんじゃないか、と思います。技術的、音楽的に本当に高いレベルの演奏でした。何よりこの曲特有の美しさ、妖艶さみたいなものがよく発揮されていました。コントラストが心地よくついており、決して過剰ではなく、聴いていてうっとりするグリンカソナタでした。

レッスンで課題とした後押し(による聞こえ遅れ)もかなり改善されていると思います。今の吹き方で合奏にのぞめば変な指摘は受けずに済むのではないでしょうか。一方で、ピアニストと1:1の室内楽としては少し魅力に欠けました。合わせ1回でピアニストとの対話まで持って行くのは難しいとは思うのですが・・・まだ「人見知り」という印象が抜けません。ピアノによく乗っかってはいますが、自ら運ぶようなアンサンブルは聴こえてきませんでした。例えばこの手の曲なら、正面と言うよりは斜め前を向き、視線ひとつでピアニストの顔を見れるような向きで吹くといいのかもしれません(僕は基本的に何の曲でもその立ち位置で演奏します、ピアノを聴くのがあまり得意でないので)

また音色が、強奏時に少し開きすぎてしまうようです。まとまった強い良い音を持つとその音は1500人のホールの端までよく飛んでいきます。ぜひ意識してみてください。

 

17.ファゴットソナタ2楽章/グリンカ

譜面としては世界初演、でしょうか。ファゴットとしての音源のない作品であることを感じさせない、よく理解した演奏でした。よく読みこんでいる、と言えばいいでしょうか。

他楽器の作品ということもあり音域が低く歌いづらい箇所も多かったと思いますが、その不自由をあまり感じない演奏でした。技術的にも一皮むけたように思えます、やはり美しい旋律というのは人を成長させますね。

ビブラートの使い方も大変よかったと思います。楽器の響きを殺さない今のようなビブラートならどんなシーンでも使えると思いますので、それに頼ったフレーズの作り方も今後ぜひ試していきましょう。

一方で強奏時、楽器のキャパシティを越えるところまで鳴らしてしまうこともあるようです。楽章単位で1~2音、ならアリかなとは思いますが・・・。今回のような小さなホールならいいのですが、もう100~200席増えてくると逆に響きが死にあまりよく聞えなくなってしまうので、多用は厳禁です。気を付けて。

 

18.ファゴット協奏曲/モーツァルト

自分の演奏です。この作品を演奏するのは一体何回目なんだ、と思いながらも、生徒の前でやったことはないな、と思い取り上げました。「どれだけ運営に追われても自分も必ず1曲吹く」というルールのもと、毎回1曲やっているのですが・・・。この作品ほど精神的・肉体的に体調を問われる曲もないもので。笑 正直、すごくキツかった。

しかしひとたび「しっし~」と吹いてみると息が入る入る。慣れ親しんたピアニストのサポートもあり、正直とても気持ちよく演奏ができました。結局土壇場で我々は音楽とファゴットに救われるんですね。

(うまくいけば)1か月後にまた演奏機会があるのですが、ホールの規模がもう少し大きくなるので、それを意識した鳴りを作れればいいなと思います。

 

19.ファゴットソナタ/プレヴィン

ゲストによる演奏です。

圧倒的ななにかを見せてくれぃ、とお願いしたようなしてないような。ハマり役といいますか、期待以上の面白いものを聴かせてくださいました。皆にもいい刺激になったようです。

次回のゲスト枠は少し趣向を変えてみる予定です。皆さんお楽しみに。

 

20.ソナタ第3番/ヴィヴァルディ

これまたゲストによる演奏です。

バロック作品のレッスンで「バスの進行うんぬん」と口を酸っぱくして言ってきているので、該当者には刺さる演奏だったことでしょう。それにしても難しい曲だ・・・

 

21.ポルトゲーザ/ビュッセル

一皮むけた、という印象です。僕の少ない語彙力で表現するのであれば「上手い」から「抜群」というところでしょうか。ころころと場面の変わる曲ですが、丁寧にそれに対処し、色彩感がある演奏でした。

テンポがフリーな箇所になるとカウントが雑になる癖があるようです、指が回ってはいるのですが聞き取れない音が何個かずつあるため慌てた印象になってしまいます。逆にテンポがあるところは基本的に丁寧に吹けているので、もしかしたらカデンツァの類に弱いのかもしれません。無伴奏作品、とまでは言いませんが、バロック時代の作品に取り組むといいのかも。

音楽的な時間の使い方もすごくうまくなりました。強引にインテンポで音符を入れ込むのではなく、たっぷり時間を使う、という事を覚えたので今後より難解な作品にも挑戦できそうです。

恐らくセッティングの問題ですが、最低音域はもっとしっかり鳴らせないと作曲家の意図通りに音が出ません。前半をこのくらい軽く吹けるリードで、低い音域もしっかりコントロールする技術を身につけましょう。ヒントはリードをくわえる位置の調整にあると思います。

 

22.演奏会用独奏曲/ピエルネ

アンサンブル部門MVP、という異例のチョイスでした。あまりこのパータンは無いのですが・・・。「仲が良いふたりのアンサンブル」というのは、そのふたりのことをよく知らない人からすると、ある種内輪ネタといいますか、別に「だからなんだ」という風になりがちなのですが。息があった、というより、分かり合った上で仕掛け合う、という箇所がたくさんあって大変面白かったです。

ファゴットへの課題はきちんとクリアされ、それにこたえる形でピアノの演奏も洗練されていて素晴らしい演奏でした。僕はあまりピエルネが好きではないのですが、ちょっと好きになりました。なるほどピアニストとの対話次第では面白い曲になりうるな、と思えるようになりました、ありがとう。

さて、ピアノという偉大な楽器と対話がたくさん見えて素晴らしかったのですが、恐らく自分でも思うところはあると思いますがコントロールがまだまだ足りていません。特に後半のテンポ感についてはお互いがお互いを煽ってしまい肝心な部分でやりたいことが仕掛けにくくなっていました。6拍子というのは魔物ですね。もっと丁寧なカウントがあるとよかったのかもしれません。もちろん、もっと馬力が欲しいシーンはたくさんありました。馬力というよりは響きでカバーしてはいるのですが・・・もっとパワーも欲しいですね、研究しましょう。

それにしても名演ピエルネでした。つぎピエルネをやる人へのいいプレッシャーとなることでしょう。

 

23.古都三景/髙島圭子

今回の特別企画、フォックス製ファゴットによる四重奏でした。原曲はトロンボーン四重奏のこの曲ですがファゴットでも大変いいサウンドとなりました。

フォックス同士、ということで特に楽だった部分が、いい意味で音色のすり合わせが必要なかったところでしょうか。またファゴットアンサンブルにおいて最も難しいバランス作りも弱奏の得意なメンバーがうまくやることで比較的取りやすかったと思います。今度はコントラ入れてやれたらいいですね。

 

24.ポップスイート/フッケンポール

こちらはシュライバー製ファゴットによる四重奏。こちらはユーフォニアム・チューバ四重奏の作品のようです。今回の特別企画が「シュライバーとフォックスの聴き比べ」だったわけですが・・・皆さんにはどう聴こえたのでしょうか。僕には「けっきょくどんな楽器も使い様」という結論しか出ませんでした。笑

それぞれに答えがあっていいような気がします。それはそうと、この四重奏メンバーはアンサンブルで真価を発揮するタイプばかりのようです、ソロの時にもっとそーいう音が出ないかな・・・と、先生としては嬉しいようなさみしいような。

 

25.悲愴三重奏曲/グリンカ

ハードルの高い作品だったと思います。演奏クオリティは歴代アンサンブルエントリーの中でもトップクラスだったのではないでしょうか。アンサンブルなんて結局、うまいメンツですり合わせさえすれば必然的に名演になる、という僕の持論はまさにこーいうことを言いますね。笑

さて間違いなく名演である一方で、僕の心にはあまり深くは刺さりませんでした。まず音色の傾向が2人で全然違うこと。クラリネットは浅く明るいのですがファゴットは深く暗い。良し悪しではなく、2人とも常に同じ位置で演奏しているので交わることが最後までありませんでした。それゆえに、聴いていて飽きがくる演奏になってしまいました。「ここでこーいう音(色)を出したい!」という音楽をやる上で最も基本的な欲のようなものがあまり2人ともないように思えます。僕は音色より音質やコントラストが大事だと考える人間ですが、その僕が音色について指摘する、というのはけっこう深刻な領域なんだと思います。クラリネットはもっと深い音を、ファゴットはもっと明るい音をシーンによって出せばもっと人の心に響く演奏になっていた、と思います。他の精度が高いだけに、惜しかった。

タイミングやテンポ感については完璧に近かったと思います。それだけに、惜しかったなぁ。

 

26.ファゴットソナタヘ短調3.4楽章/テレマン

まさかのトラブルに心を揺さぶられなかったのがまずとても立派でした。度胸と言うのは天賦の才ですね。

ブランク明けを思わせない名演でした。バスの進行をよく理解した上で曲の流れをよく表現できていました。コントラストや音色の操作も抜群で震えるシーンがたくさんありました。懸念されていたバテに関しても、まぁなんとかぎりぎり、吹ききれましたね。しかしこの曲にはよりキツい1~2楽章が本来ある、と思うとゾッとします・・・

さて、足りないものがあるとすれば自主性と欲でしょうか。「私はこうします!」というより「こう習ってきました!」という演奏でした。門下発表会、ですからある意味正しいのだけど、僕はもっとみんなに好き勝手やってほしいと思っている人間です。(それも付き合いが浅いのでイマイチ伝わらなかったかもしれませんね)よく言えばお手本(それもこれ以上ない高精度の)のような、悪く言えば聴いたことのあるような演奏、でした。音楽をするというのは個を磨く行為だと思います。次の目標は「個性」ですね。また楽しみにしていますね。

 

27.ファゴットソナタ/メルチ

まず基本的な音色・音質がとても良くなりました。音域問わず楽器がきちんと鳴っていて、結果として音程がちゃんと取れるのでピアノとよく共鳴していました。バロック作品特有の、バス主体による進行もよく理解しフレーズを組み立てていました。やりたいことがきちんと伝わる演奏、というのは思いのほか難しいものです。もう現役時代よりはあらゆる点で上手く演奏できているでしょう。ブランク明け、という注意書きは剥がしても良さそうです。

さて、聴いている方にも準備というものがあります。チューニングして構えて吹くまでが早すぎます。ピアニストがビックリするほどでもないですが、心地よい間というのが取れるともっとよかったです。特にアウフタクトが大切な楽章から始まるのですから、最初がとても肝心なのです。そこらへんはステージさばきみたいなものですね、プロのステージを見てみるといいと思います。逆に聴く側に準備をさせないまま始めてしまう、という仕掛けもあるくらいです、それはそれで、面白いですよね。

アンサンブルに取り組むための技術的な準備は、じゅうぶんだと思います。楽しみにしていますね!

 

28.ファゴットとピアノための組曲/タンスマン

ゲスト奏者内友人枠、の演奏でした。笑 もはやN島枠、と呼んでもいい気がします。

曲の始まりのクオリティが高く、それだけに速い部分が惜しかったですね・・・。一見すると技術的にはなんとか吹けてしまうこの作品ですが、合わせるとなると一大事です。メンタルのコントロールやアンサンブルの経験はもちろんですが、「なんとか吹ける」という領域を脱していたらもっと結果は違ったのかもしれません。リズムで某先生に絶対に怒鳴られないような余裕を持てるところまで持って行けば、あるいは、といったところです。言葉とリズムの曲ですから「何を言ってるのかキッチリ伝える」ことでアンサンブルは飛躍的にやりやすくなります、自分もピアニストも。それにしてもこの曲は作品としての完成度が高いだけに、ほんとうに難しいですね。

 

29.六重奏曲/ファラン

この編成をやるには少し会場が小さかった気もしますね・・・。配置に関してはよかったと思います。

さて、レッスン時は指摘によってみるみる変化があり本番の演奏をすごく期待していたのですが・・・1週間でかなり忘れてしまったようです。要因はそれぞれ色々あるとは思いますが、レッスンで受けた指摘や合わせ時に決めたことをきちんと自分が分かるように譜面へ書き込むようにしましょう。譜面を見たわけではないですが、よく丸を書いて終わり、という書き込みを見かけますが、あれは5分後には何のマークだったか忘れます。必ず具体的に、どういった注意をすればいいのか書き込みましょう。言葉でもよし、記号でもよし。そういったことを怠ると、いくら合わせしたりレッスンを受けても本番に活かすことはできません。僕はファゴットの生徒に、楽譜にただ丸を書くのを禁止していますよ。

さて5つ、いや6つ違う楽器がそろうアンサンブルというのは難しいものです。ある意味でバランスが悪くて当然、合わないのは必然なのですが・・・本当にそうでは合わせやレッスンの意味がなくなってしまいます。同じフレーズを担当している他のパートの人とのフレージングのすり合わせ、バランスが悪いんじゃないかと疑い提案すること、もちろん音程やリズム、音の長さや処理などを統一するのに同族アンサンブルと比べたらものすごく苦労します。時にはクラリネットのようなオーボエの音、ホルンのようなファゴットの音、フルートのようなピアノの音が聴こえないといけないかもしれません。その苦労があまり見られませんでした。好きに吹いて(弾いて)いるだけでは魅力的な演奏はできません。

元々木管五重奏というのは、「木管」なんて呼称はつかずに「管楽」という呼称でした。ダンツィやライヒャの時代に旋律を担当する管楽器といえばこの5本だったわけで、現代では金管五重奏に対して木管五重奏、と呼称するようになった、という歴史があります。つまり、元々は管楽器を5つ集めた、と言うだけに過ぎない編成なのです。苦労無しには合いません。でもその苦労そのものが面白く、魅力的なので、レッスンでできる限りのことはお伝えしたつもりだったのですが・・・。僕は少し寂しかったです。

とはいえ、個人の領域では6人ともかなり高い水準で演奏できていますから、今後は他の楽器とのアンサンブルの仕方をよく考えるとより楽しく演奏できるでしょう。

 

30.民謡風小品より/シューマン

(ようやく?)安定感が少しずつ出てきた、と思います。良い部分に関して、「おっいいぞ」というより「うん、さすが」という感情で聴けるようになりました。また、楽器のポテンシャルが活きてくるようになったのは大きな進歩です。音程もかなりいい方だと思います。

1曲目で伴奏に切り替わるときにピアニストから拍子感を受け取れなかったのが残念でした。ズレてしまった、というより、きちんとバトンタッチできなかった、のだと思います。逆にそのバトンタッチシーン以外はあまりピアニストに気を遣わず吹ける楽章ですから、そこだけきっちり体に入れておくべきでした。

技術的には、もっと広い空間を意識して演奏するといいですね。視線や気遣いの範囲が自分の半径30cmくらいだけのように見えます。大きくない会場だったからこそ、自分の音がどう響いているか聴きながら吹くだけで音の伸びが違ったかもしれません。

譜面づら以上に難しい作品なのだと思います。うまく聴かせるのが難しい曲、をわりといつも選んでしまうので、一度めいっぱい聴き映えのする作品を選ぶといいかもしれませんね。ピエルネ、ギャロン、ブルドーあたりでしょうか。

ファゴットに(公でも私でも)すがって生きるの、悪くないですよ。

 

31.ファゴットソナタ/サンサーンス

抜群の出来でした。サンサーンスの呪いによく負けなかったなぁ、と素直に関心しています。

フレーズの末尾が「言い切り」になってしまうクセがあるようです。先に繋がっていくのか、きちんと収めるのか、言い切るのか。この3択だけでいいのできちんと考えるようにしましょう。それだけで幅が生まれてくると思います。

技術的にはかなり完成度が高かったと思います。この曲に負けずに技術で完成させる、というのは簡単なことではありませんからそれだけで大変立派です。逆に言うと、もっと音楽のことに執着して時間を使ってほしかった。当日のコンディションによるところもあるとは思いますが、もっと丁寧に組み立てられる部分もたくさんあったんじゃないかな。この大曲を全楽章演奏する、ということに、ある意味でもっとこだわってほしかった、というのが僕の正直な気持ちです。

さて付き合いも浅いので言い切れる部分ではありませんが、レッスン時に感じた事ですが、人から受けた指摘を家に持ち帰る癖があるんじゃないでしょうか。その場で変わろうとするのではなく、持ち帰り噛み砕いてから自分の糧とする、というのを前提にレッスンを受けてはいないでしょうか。もちろん、持ち帰るのは大切です、噛み砕いて呑みこむのも大事ですが、その場で変わろうとする、という力もとっても大切です。なぜなら僕らはその場での変化を見ながら与える情報を変えていますし、オケのリハーサル等ではその場での変化が一番重要です。もっと言われたことを大胆にその場で試し実践してみることです。ひと言でいうなら、レッスンでもっと恥をかきましょう。カッコよすぎるのも考え物です。

 

32.デュエッティーノ/ボザ

僕と、出身大学の学生による二重奏です。

仕掛けを大げさに仕掛けることで聴いてる人を「だます」というのをテーマに演奏しました。この子は若いのに本当によく分かってよく聴いて吹きます。すごいことだ。

 

33.2つの小品/フランセ

MVP!にしようと思ったんだけど。繰り返し後、あのテンポ感でテクニックが整っていたら間違いなくMVPでした。発想は大好きだし面白くてしょうがなかったけど、「よい子はマネしないでね」という意味でMVP避け。

練習時間は推察できませんが、練習時間の使い方がまたちょっとうまくなったんじゃないかなと思います。音楽の仕掛けとテクニックを両立して練習できるようになっています。レッスン時に課題だったビブラートの幅もだいぶ改善され、まっすぐ息が入るようになりました。しかし真っすぐな息に慣れていないためか、音程をさぐってしまうようになってしまったので、もう一皮むける必要があるのかも。ビブラートというメッキがなくなっても、自分に100点をつけてあげられる音質を目指しましょう。

音楽の流れは大変面白く、この曲の魅力はすべて客席に伝わったと思います。速い方の1回目、2回目への布石なのはわかりますがスピード感も死んでしまったのが少し残念でした。同じテンポの中にもスピード感の有無を調整できるといいですね。

それにしてもレッスン時「ここ難しいね~」と言ったところが本番できちんとできていること、いつもながら本当に尊敬します。本当に丁寧なさらい方に関しては門下内随一、さすがといったところです。

 

34.タンゴ組曲より/ピアソラポルカインスイング/フォアート

ファゴット四重奏、3団体目。メーカー違いはそこまで重要ではないみたい。

さて同じ楽器が4本も揃うとどうなるか。メンバー同士によるレベルの違いが明確に出ます。他人がどうこう、はともかく、自分がどうだったか、よく考えましょう。それぞれがきちんと準備し練習してきたのはよく分かるのですが、それで出てしまう残酷なほどの腕前の差、というのは、オケをやってれば今までも経験済、ですよね。

他のアンサンブル団体にも書いていますが、アンサンブルをよくする方法なんてしょせん、個人個人がうまくなること以上に手っ取り早い手段はありません。個性、という言葉がありますが、レベルが拮抗してはじめて個性と言うのは見えてきます。僕もアンサンブルのレッスンでは個人に立ち入れる領域が限られてきますから、あえて講評では個人技について少し容赦なく触れてみました。

もうこれ以上準備することはなかった、ともし思うなら、一度でいいから僕のところへレッスンに来てください。4人とも、練習方法も奏法も簡単に改善され別人のような音を出す素質がまだまだまだまだあります。連絡先はどこかから入手してください。

アンサンブルとして言うことはあまりありません。聴いていてつまらない演奏なんてことは決してないし、1人1人がちゃんと輝いてはいましたが、それぞれの伸びしろを思うと「もったいない!」という気持ちでいっぱいになりました。

 

35.ファゴットソナタヘ短調3.4楽章/テレマン

もう初心者なんて誰も言いませんね、アンサンブルも無事こなせていました。念のため言っておくと、楽器をうまく吹くためのステップはここからが長いです。人並みに無難に吹ける、というところから、うまく吹ける、というところは近いようですごく遠く、地味なことの連続に思えるかもしれませんが、あなたはここまでも地味な事の連続に堪えてきていますから、きっと大丈夫だと思います。

さて今回の演奏ですが、技術的音楽的によく練習・研究してきました。ところどころ不安定な音程はありながらも、この曲を流れを止めずに吹けるのはなかなか立派な事です。ステージさばきも本当に良くなりました。最初は「礼をする!」というところからだったもんね。

今後の課題はよりたくさんの譜面を読んでいくことに尽きるとは思いますが、もう技術的に、吹けない曲は理論上ないということになりますから、今後ソロ曲は自分で探し選びましょう。もちろん相談には乗りますが最低でも候補は自分で見つけてきましょう。これだけたくさん演奏を聴けば「これならできる」「いつかこれをやりたい」って曲も出てきているはずですから。

 

36.3つのロマンス/シューマン

直接も言いましたがブレス!あれほど計画的に、と言ったのに・・・。悪癖は簡単には抜けないようです。息継ぎというのは生命活動ですから、かなり意識的に操作しないと改善されません。逆に言うと、意識的な操作がないと管楽器奏者としてはいつまでも未熟なままで、それでもファゴットという楽器、他の木管に比べると足りなくもなりづらいし余ったりもしない楽器ですから、この手の曲に挑むときくらいしか改善するチャンスがないのです・・・・。実にもったいないことをしました。

と、ブレスのことはさておき。サンサーンス組がいなければこれまたMVP候補でした。この曲独特の色彩感がすごくよく出ていて、僕はアマチュアファゴット吹きでここまできちんとこの曲を吹ける子を他に見たことがないです、大変立派でした。

バテてくると音程が下に行くクセがあるようです。普通逆(その結果本当にばてて音が出せなくなる)なのですが、下に行く人の方が気になりづらい反面、改善も難しいです。ばてた状態でも頭だけは冷静に、今の自分の音の傾向とその対策を練る、ということをしましょう。それは合わせの時にしか試せないかもしれませんね。

と、キツイ曲はぜひ楽章間をたっっっぷり時間を取りましょう。なにしたらいいか分からないのであれば、詰まってもいない水を抜きましょう。まだまだソロのステージ慣れはしてないと思いますが、楽章間をもっと時間空けていればやりたいことがもっとできたかもしれません。

3楽章の前半、ぜひ何度も録音を聴いてみてください、本当にいい演奏です。

 

37.ファゴットソナタ/サンサーンス

サンサーンスの呪いからの解放、おめでとう、トリの名に恥じない、立派な演奏ができて正直僕がホッとしました。

よくやったね、と言ったら、「たくさん練習しました」とこたえた君はとても立派で、たくさんの練習が成果になる、というのは凄いことなんです、特にこの曲では。こんな立派なサンサーンスが流れるうちの発表会はやはりすごいのかもしれません。

あまり改善点、課題等はありません。今できる最高レベルの演奏ができたんじゃないかなと思います。これ以上のサンサーンス、となると、楽器に合ったリードの供給、抜本的な奏法の改善、人生経験、が必要になってくるでしょう。

2楽章ではピアニストに流されてしまいました。「ちがう!ぼくはこう吹くんです!」という攻め方があってよかった、その余裕が欲しかった。流されるのも時には良いですが、早い楽章はそれでは自分の首を絞めてしまいます。惜しかったね。

ハイEは見事でした。あの指はやはり最強だ。

 

 

 

いつもながら講評記事、時間かかるなぁ。笑 でもこれを楽しみにしてくれてる子もたくさんいるので、今後も続けます。

通常記事も頑張ってアップします。お楽しみに。ここまで読んでくださってありがとうございました。

第14回発表会でした。総評と演奏ごとの講評とか。

4月ですか。本当にただの発表会のためのブログになりつつあるのはよくないですね・・・。

全く更新していなくても過去記事を見てレッスンのお問い合わせを頂くことも頻繁にあり、大変にありがたいことです。記事のネタは溜まってるんですよね。

「今更聞けないファゴットの正しい運指と替え指、トリルの指について」

「音程とリズム」

「上手い演奏と好きな演奏」

コントラファゴット入門」

あたりが候補でしょうか。気長にお待ちください。

 

さて、タイトルにもある通り、門下発表会が3月24日、新宿のドルチェ楽器にて行われました。Facebookの通知で気づいたんですが、2年前に行われた発表会も、今とそう変わらない人数でした。今後どんな風になっていくか分かりませんが・・・変革なくして継続はない、と思うので気が付いたことはどんどん試していきながら続けていきたいと思っています。

打ち上げで生徒に「この回はいつまでやってますか?何十年後かに今回で60回目だよ、とか言いたいんですけど」なんて嬉しいことを言われて、「俺が死ぬまでやるよ」と言っておきました。むしろ死んでからも継続していくようなシステムを作れたらいいなぁ。笑

最近はどこに行っても門下生の話をされます。何度でも言いますが、僕はあくまで演奏者という肩書を捨てるつもりもありませんから、指導者としての力を認められる事は光栄ではありますが本意ではないんですよね。僕がレッスンで教えてあげることができるのは僕が演奏者としてしてきた創意工夫から生まれた事だから、演奏者であることをやめたとき僕は指導者としての道もなくなる、と考えています。ので、今回も吹きました、ソロとゲストを呼んでのアンサンブル。いつもながら時間は使えず苦労も多かったのですが・・・

 

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今回のゲストには今所属しているオケの同僚である、オーボエ奏者の炭崎友絵さん、クラリネット奏者の浜崎歩さんをお呼びし、オーリックのトリオを演奏しました。このお2人は去年の4月から入団したメンバーなのですが、どのお仕事でもいつもほれぼれする演奏をされていて、一緒にアンサンブルができたら最高だ!と思い声をかけさせて頂きました。オーリックやりたい!すごい!と生徒たちからも反響が大きく、僕自身すごく楽しく演奏させてもらえました。お2人とも本当にありがとうございました・・・!

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さて講評に入る前に、次回発表会のご案内をしておきます。この門下発表会は、僕の個人レッスンを(1回以上)受けた方によるファゴットソロ演奏と僕のアンサンブルレッスンを(1回以上)受けた団体によるアンサンブル演奏の2枠存在し、レッスンさえ受けた頂ければどなたでも参加できるものとなっています。コンセプトは「とにかく練習してレッスン受けて人前で曲を吹けば最短ルートでうまくなるはず」というもので、本番の演奏がどうだったか、という事よりもそれによってどのくらい成長できるか、というところに重きを置いています。伴奏はプロのピアニストに弾いて頂くことができます。近頃は門下生同士の交流も盛んで、ファゴット吹きの仲間がたくさんできる会となっています。

日時は2019年7月21日(日)お昼ごろ開演~18時ごろ終演予定、その後打ち上げあり

場所は新宿のドルチェ楽器東京です。大変吹きやすく響きの良いホールとなっています。

参加費はファゴットソロ参加が14000円(学生10000円)、アンサンブル参加が1人6000円(人数によって変動あり?)です。どちらもレッスン1回無料となっています。ソロ参加の方にはピアニストへの謝礼も含まれています。

もし2回目以降のレッスンが必要であれば、通常通りですが1回1時間程度5000円(学生4000円)でお受けしていますのでそこは御相談ください。最近は1回だけで物足りなくなり2~3回受ける参加者が増えています。

参加〆切などは特にありませんが、ピアニストへの依頼の関係上5月半ばごろには確定しておきたいと考えております。

参加申し込み、ご不明点などのお問い合わせ、ご相談などは

発表会参加・お問い合わせフォーム

こちらまで。どうぞお気軽にご参加ください。お待ちしております。

 

ここからは参加者以外にはあまり面白くない内容になるかと思いますが・・・今回の講評を書き綴っていきたいと思います。学がないものですから、文章と呼べるほどのものではなく、書きなぐったようなところがありますがご容赦ください。

 

まずは今回の総評です。全体として、「レベルの高い発表会」になった印象でした。元々うまい子はうまい会ではあったのですが、全体の水準が上がり、個々がきちんと課題を乗り越えるようになってきた、と思います。それだけではなくて、僕が与えた課題を材料に自ら生み出されるものを全員が本番で発揮できるようになってきました。

レッスンというのは、基本的には足し算です。やってきた内容に大して、足すと良くなるものを足してそれを定着させる。定着してきたら次のレッスンでまた新しいものを、という繰り返しなのですが、今回の参加者たちは足し算という領域を越えていました。与えた課題を材料に別人のように化け、また新しい課題で化け、と、「そんなこと教えてないけど最高だな!!」という演奏を本番たくさん聴くことができました。本当に先生冥利に尽きる時間でした。

 

では曲ごとに。

 

1.無伴奏チェロ組曲第3番より「ブーレⅠ」/バッハ

初参加・10数年ぶりの本番お疲れさまでした。おそらくテクニック的には簡単な曲だったと思うのですが、ブランク明けということもあり奏法上の悪いクセを一掃するにはちょうど良かったのではないでしょうか。

かなり細かく運指やアーティキュレーションについて指摘してきましたね。どちらも遵守したうえで丁寧に練習してきたんだろうな、と感じる演奏でした。その丁寧さは、どれだけ上達しても必要なものかと思います。緊張しても発揮できる力というものは、そういった時間の過ごし方から生まれてきますから、今後も忘れず、演奏を楽しんでいってくださると嬉しいです。またエチュード頑張りましょう!

 

2.ファゴット協奏曲より第1楽章/ウェーバー

「身の丈に合わない曲」なんてとんでもない。身の丈に合う曲なんて一生出会えません、曲はいつだって僕らの遥か頭上にあるものです。特にこの曲は。

ウェーバーの協奏曲に挑む、という意味で必要な技術はじゅうぶんに身に付いたと思います。クオリティで言えば近年うちの会で演奏された中でもかなり高水準だったと思います。今回の演奏を誇りに思い、自信を持って今後も色んな作品に挑めるといいですね。極論、今回のような練習ができればどんな曲でも演奏できます。

楽器のポテンシャルも活かせるようになってきました。とにかく響きが豊かな楽器ですから鳴らすもの苦労したと思いますが十分に鳴っていました。速く柔らかいタンギングが身に付いたので、今度はそれをいつでも取り出せるようになるといいです。ウェーバー限定でできても意味がないのです。

「アリア」の部分、良くはなりました。しかしこの手の箇所というのは得意不得意があるものですが、自分ではどのような取り組みをしたのでしょうか。楽器の練習だけでは得られないものが必要なフレーズですから、その手の壁は必ず今後もぶつかります。魅力的な演奏は魅力的な人間から生まれてきます。いい景色を見て、いいものを食べて、いい人と出会って、いい演奏をしましょう。今後も楽しみにしています!

 

3.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

いい楽器の鳴りが生まれてきました。しかし、リードだけがバリっと鳴るのとは違う、豊かな響きをもっと意識していくといいと思います。自分で「いい音だな」と思える音色の中でダイナミクスを操作しましょう。

フレーズの語尾がもっと洗練されるといいと思います。膨らみは上手なのでおさまりを丁寧に。「いちおう並んでいる音」は並んで聴こえません、丁寧に並べた音だけが並んで聴こえるものです、器用さに任せて連符が乱暴になってしまわないように。

ピアノとのアンサンブルが安定してきました。たくさんアンサンブル曲に挑戦してきた副産物でしょうか。聴く余裕も感じられます。逆に言うと、聴いて合わせる、以上のアンサンブルは感じられません。ちょっと踏み込んだり揺さぶったり、みたいなコミュニケーションができるともっと面白いと思います。

とはいえ、場数を踏んできたことによる大きな成長を感じる演奏でした。自信もっていいと思います。

 

 4.ファゴット小協奏曲/ダビッド

初めてのソロ曲、お疲れさまでした。オケやアンサンブルとは違った面白さが味わえたでしょうか?

冒頭の発音、とても綺麗でした。フレーズの方向性等もよく理解し発揮できています。楽譜の版による違い、どんなふうに吹くかな、と楽しみにしていましたがやりたいことがきちんと伝わってきてどうしようね、とだけレッスンで言ってよかった、自分で決めた事というのは愛着がわくからうまくいくものです。

フレーズの語尾が意志薄弱、というより意識が抜けることが多いようです。語尾までもっと考えて吹けたらより良かったと思います。また音色がとても綺麗なのですが、綺麗なことで気づきづらいのですが開いた音が多く、おそらく大きなホールだと散ってしまうかもしれません。もう少しクローズドな音色でかつ楽器がきちんと鳴るような意識をするといいかもしれません。逆に、思いっきり開いた聴いている方がハッとするようなフォルテが何か所かあるとより面白かったかと思います。

速いところの安定感は素晴らしかった。この曲はとにかく安定しないと聴けたものではないので、前半のフレージングやコントラストも含めてこの曲の難しいところはきっちり乗り越えた演奏と言って良いと思います。総じて優等生と言える演奏で聴いていて安心できました。もう少し「やんちゃ」な仕掛けが多いと面白いと思います。今後も好きな曲に挑戦していってくださいね。

 

5.ファゴットソナタ/シュレック

友人枠での参加だったので、本番で初めて演奏を聴きました。リードと楽器の相性が良くないように聞こえました。パッと吹いていい音がするリードではなく、機能性(音色の操作、音程の操作、鳴りの良し悪し)でリードを選びあとは自身でコントロールしていく、というのがいいのではないでしょうか。

この曲で難しいフレージングにおいては「おかしなところもない」し「ぐっとくるところもない」という印象でしょうか。もっと山を作り、人の心を揺さぶる演奏ができると素敵かなぁ、と思います。ドレスとてもよく似合ってました!

 

6.ファゴット協奏曲より第1楽章/モーツァルト

今までで一番厳しいレッスンだったと思います。この曲はそういう曲だ、と思いながらも、どうかなぁ、腐ってしまわないかな、と心配でしたが、本番とても素晴らしかった。最後のレッスンから数日間、とてもいい時間を過ごしたことかと思います。今回の演奏を自信に変えて今後も色んな曲に挑んでいくといいと思います。極論、これ以上難しい曲はないはず。

トリルの処理はまだまだ甘かったと思います。ごまかして乗り切る、というトリルは効果的に聴こえることは永遠にないかと思います。ごまかせるのは器用さなので素晴らしいのですが、それにかまけているとこの手の作品が吹けません。

音楽の方向性を、足し算(ここを膨らませよう、ここをおさめよう、ここを前に行こう、等等)で考えるのは得意なんだと思います。これからは引き算(この長い音はデカすぎやしないか、このトリルは綺麗に入っているのだろうか、ここのアーティキュレーションはこれでよいのだろうか、等等)で考えられるようになるといいと思います。演奏の上手い下手は印象で決まるものなので、「これはちょっと変」と思われる箇所が頻繁にあると印象はあまりよくありません。

カデンツァ、代表的なものに触れて原則が学べたんじゃないかなと思います。名人芸を見せる箇所ですから、もっともっと洗練されてほしかったところですが、カデンツァ以外にたくさん時間を使った、と思えばこのくらい吹ければよかったのかな、と思います。最終的にカデンツァに力を注ぐことができれば、もっと良かったのかなぁ。とはいえ大曲であり難曲であるこの曲を、この曲らしく演奏できたこと、本当にすごいことです。オーソドックスをもう少し学べるといいですね。バロックもの(ドゥビエンヌとかどうですか?)が効果的かもしれません。

 

7.演奏会用独奏曲/ピエルネ

2日連続本番、お疲れさまでした。カットの有無、実は心配していたのですが全く問題にしていなくてよかった。自覚があるかは分かりませんが、いい度胸を持っています、武器にしていきましょう。

楽器がよく鳴らせています。コントラストも十分についていました。最初にこの曲をレッスンで見たときから考えるとものすごい進歩です。が、大切にしてほしい「長い音」がすべておざなりでした。ピアノとファゴットのために書かれた作品ですから、伸ばす音がピアノの和音の中に響く、という箇所がとても大切なのですがそういった曲の魅力はあまり出せていないようでした。まずは音価通りきちんと吹き、その音価に方向性を置きましょう。方向性のために音価を変えてはいけません。

後半の難所、よく丁寧に練習できていたと思います。今後も綺麗に並ばない!ここは無理だ!と思った箇所は丁寧に練習し向き合っていってください。

素晴らしいのは、タンギングの連続で楽器が鳴りづらくなりそうな箇所がとてもよく鳴っていて、それはなかなかできる事じゃないと思いますので、自信を持っていいと思います。

まだまだファゴット人生は始まったばかりです。これから色んな作品に触れて色んな経験をして、素敵な音を奏でていってください。人の演奏もたくさん聴いたと思います。やってみたい曲があったら、教えてくださいね。

 

8.ファゴットソナタヘ短調/テレマン

コントラストのついた素晴らしい演奏だったと思います。音程を損なわずに強弱を豊かにつけられること、素晴らしい長所だと思いますのでぜひそれを生かしていい演奏をしていってください。

速い楽章のときにリズムが乱暴になってしまう傾向にあるようです。速い楽章、といっても、アレグロや3拍子のヴィヴァーチェしかでてきませんし、「速い」ことに大した意味のない音楽ですから、もっと冷静にリズムを取っていかないといびつな演奏になってしまいます。いくつかある難所は丁寧に練習したと思います。音のつぶはとても綺麗に表現できているのですが、連符にも音楽の流れがあります。それを加味した練習がもっとできればよかったと思います。単なる指回しになってしまわないように。結果として、音楽の流れがあった方が指も舌もよく動くものです。

ブレスの調整を含めたスタミナ配分はうまくっているようでした。楽章感をたっぷり空ける、というものよくできていました。この曲以上にスタミナ面でキツい曲、というのは・・・まぁたくさんあるのですが、今後キツい曲だな、と思ったら今回実践したノウハウを生かしていけば乗り切れるんじゃないかなと思います。

そろそろウェーバーに挑戦してほしいな、と思いますが・・・いかがでしょうか。

 

9.ロマンス/エルガー

音楽を聴いていて鳥肌が立つ、という感覚、最近なかなか無かったのですが、3か所くらい鳥肌の立つことのある演奏でした。長い音から始まる音楽の作り方、本当に見事でした。強弱のコントロールも心得ていて、聴いていて心に響くのに安定感もある演奏であったと思います。安心して聴けるエルガー、というのはなかなか難しいことだと思います。

中高音(上のG~)の安定感が技術的にもっと身に付くといいのかもしれません。結局のところファゴットは、その音域からが勝負ですからごまかせるものではないですね。レッスンで課題にした中音以下の響きや音程は素晴らしく、何よりそのいい響きのまま十分なコントラストがついていました。多少のブランクなんてものともしない、「大人」な演奏でした。エルガーはそうでなくては。

そういえばいつも選曲が渋かった気がします。次の参加がいつになってしまうか分かりませんが、いわゆる「あざとい系の曲」に挑戦してほしいなぁ、タンスマン、グリンカ、ギャロン、あたり。いかがでしょうか。

10.シシリエンヌ/フォーレ

初めてのソロ曲、どんな気分でしたか?合奏と比べた段違いの達成感、得られましたでしょうか。

持ち前の柔らかくも太い音色がよく生かされた演奏でした。課題かなぁと思ったコントラストも十分についていて、決して技術的に難しい曲に挑戦したわけではないにしろ大きな成長を感じました。人の演奏たくさん聴いてやりたい曲もたくたんできたかと思いますので、ぜひまた挑戦してくださいね。

いい音色を持っているから、だと思います。その音色をキープするために低音域の音程が高くなってしまったり、強奏時に響きが十分に得られない事が多いようです。音色というのは可変でなくてはいけませんので、ちょっと汚いかな、と思うような強い音も出せるといいかもしれません、この曲で使うシーンはあまりないかもしれませんが・・・。

 

11.幻想小曲集/シューマン

もう友人枠代表ですね。渋みのある素晴らしい演奏でした。もちろんきちんと指は回っているのですが、ほんの少し不安な箇所で必ずと言っていいほどピアニストと僅かにズレます。技術的に不安のないところでも油断せず最後まで丁寧に音を並べる練習をするといいのではないでしょうか。細かい音符と同じくらい、それ以外の箇所の密度が上がるとさらなるレベルアップが可能かと思います。

楽器の構える角度が良くなさそうでした。唇に対して垂直である必要があるのですが、すこし下唇側に傾いている印象です。ストラップやバランサーの問題かもしれませんので見つめなおしてみるといいでしょう。

また次回も楽しみにしていますね!

 

12.ファゴットソナタホ短調/テレマン

やはり君は音楽に対して技術の使い方が抜群に上手いですね。ほしいところにほしい分だけ息を入れる、というのはなかなかに難しく、心地よい演奏になりました。ダイナミクスによるコントラストは抜群ですから、もっとテンポによるアゴーギグが自在になると表現の幅が増えてくると思います。また強奏時のビブラートがもっと幅広く使えると使える色が増えて良くなります。

君に限らずですが、本番前の追い込みは素晴らしいです。もちろんそれも大切なのですが、計画的に、つまり焦りのない状態で丁寧にいい意味でダラダラと音を並べそこに音楽を乗せて行く、という時間は良い演奏には必要不可欠な練習です。2楽章や4楽章のほとんどが、そこまで難しくもないけど丁寧に並べるにはちょっと嫌な運指という曲に対して、もっと丁寧な練習を心掛けてほしかった。ミスが多い、というより、音が入ってない感じが聴こえてきてしまうんですよね。うまいところはうまいのですが・・・。結果的に、難しいところはたくさん練習したためか丁寧に聴こえて、そうでもない箇所が雑に聴こえるようになっています。もっと練習は平たく等しく。その「ダラダラ音を並べる」時間に音楽的なこと(フレージングや強弱、アーティキュレーションなど)が自ら生まれてくるような、そんな奏者になってほしいと僕は思います。

やりたい曲はきっと溜まっていると思うので、また次の参加を楽しみにしていますね!

 

13.ソナタより第3.4楽章/ラフマニノフ

ピアニストにたくさん救われましたね。それにしても今回の演奏は僕が褒める必要がないくらい、皆が君を誉めていました。圧倒的なクオリティでしたしピアノをよく聞き自身の悪いリズムともきちんと向き合ってきたのでしょう。

元々、技術的なことよりも音楽性のことに向き合ってきたと思います。いま少し逆転していて、技術が音楽に追いついていません。つまり大きなクレシェンドをかけると音程がどこかへいく、口を締めて高音にいってしまうためすぐにバテが来てしまう、音の後押しが多すぎる、など、悪癖が増えてきてしまっています。今後もなるべく多くの譜面が読んでいきましょう。

またフレーズの語尾が長い音だと音程が下がる(まれに上がる)事が多く、意識が必要です。もっ客観的に自分の演奏が見つめられるように。そのためには、もっと他人の演奏を聴く必要はあるかもしれませんね。

とはいえ大ブラボ―でした。難曲をよくここまで魅力たっぷりに演奏してくれました。

 

14.ユーモレスク/グリエール

「ちょっとこのままだと曲の魅力もくそもない」という話を最後のレッスンでして終わってしまったので、どんな風に完成するかな、と不安だったのですが・・・本番に限って(というのはどうなんでしょうね)完成度の非常に高い演奏でした。前回の曲から比べると相当に難しい曲だったと思いますが、その曲を完成度高く仕上げられたのは素晴らしいことです。

フレーズの切れ目がうまく表現できないことが多いようです。フレーズの入りと切りは舞台に出る人の入退場によく似ています。バッと出てきてバッといなくなるのか、そっと入ってきてバッといなくなるのか。色んなパターンがあるかと思いますが、フレーズも同様です。特に切れ目というのは相当に意識と工夫をしないと雑になりがちですので、今後の課題にしていきましょう。

ブランク空けて半年以上経ちましたでしょうか。ぼちぼちアンサンブルや合奏への参加の報告を楽しみにしたいところですが、まだまだ自力に不安があると思いますから、またエチュード読んで持ってきてくださいね!

 

15.ファゴット協奏曲イ短調/ヴィヴァルディ

バランスのいい演奏でした。普段は「やりすぎ」か「やらなすぎ」が多い印象ですが、今回は全体を通して心地よい表現が多かったです。つまらない演奏だったかというとそうでもなく、コントラストがよくついていてとても楽しめました。

強弱が音量以外(音色とかアタックとか)でうまく表現できていてよかったです。つけてきた装飾等等のアイディアもよく表現できています。

簡単な運指による速いパッセージが入りきらない事が多いようです。「ここはできるから」と目をつぶってきたと思うのですが、最終的に他と等しく時間を使ってあげないと聴いている方には雑な箇所に聴こえてしまいます。難しい箇所をきっちりさらう、ということは覚えたと思うので、全体のクオリティをそろえる、という作業を覚えるとより良い演奏が目指せると思います。

それにしても、今までと比べて別人のようにいい演奏だったと思います。今回得た自信を普段の演奏活動にもぜひ生かしていってくださいね。次回はロマン派作品なんか良さそうですね。シューマングリンカウェーバーあたり。ぜひ聴いてみてください。

 

16.ファゴットとピアノのための組曲より第1.2楽章/ロンゴ

大変な環境下、よく頑張りました。環境的にバタバタすると練習が雑になっていくものですが、そんな印象はなくメリハリのついた時間を過ごせたのかと思います。今回得た感覚を忘れずにいれば、計画的にやれば今後も続けていけるんじゃないかなぁ、と思います。

曲の魅力をよく理解し、そのための技術を取得し演奏する。そこまでのレベルであればかなり高水準の演奏だったと思います。ではその次の段階というと・・・。それを共演者であるピアニストと(瞬時に)共有し、共有した音楽を客席に伝えていくこと、です。ピアノの音符は頭に入っていたとは思いますが、共有する力が欠けていました。もちろん緊張のせいもあったのかなとは思います。この発表会はソロに挑戦する場ですが、最終的にはけっきょくのところ、ピアニストとのアンサンブルなのです。もっと共演者に影響を受けた演奏ができるようになれば面白くなるんじゃないかな、と思いました。

というわけなので、ピアニストと絡むことの多い作品に挑戦すると面白いかもしれません。シュレックシューマンの3つのロマンス、ヒンデミットソナタ、あたりは譜読みの負担も少なめなので面白いかもしれません。

 

17.パストラーレ/ミヨー

大変にハイレベルな演奏だったと思います。「ミヨーがMVPだと思ったんですけど!」と何人にも声をかけられました。トリオダンシュは合って当然のジャンル、という話はレッスンでしましたよね。その水準は大きく上回った名演だったと僕も思っています。即興性のようなものも感じ、よく聴き合った演奏でした。

欠けた部分を挙げるのであれば、個人個人のヴィルトゥオーゾがもっと欲しかった、というところでしょうか。オーボエは馬力不足、音色の良さに頼らない表現幅をもっと磨きましょう。クラリネットは強弱以外の色がもっと欲しい。強いけど優しい、弱いけど存在感のある、なんて表現を覚えたらもっと素敵になります。ファゴットはもっと安定感があった方が良いかもしれません、技術的なことではなくて、共演者に応えようとしてキャパシティを越えたものを表現しようとして1人になった時にパンクしてしまう、という箇所が何か所かありました。

アンサンブル、けっきょく個人技。もっと自分が光れば共演者のことも幸せにしてあげられて、結果として自分がもっと面白くなります。個人技が一回り成長したあたりで、同じメンバーの演奏が聴けたら嬉しいな。

 

18.三重奏曲/オーリック

ゲスト2名と主宰によるトリオダンシュでした。3回に1回くらいやっている、ファゴット以外のゲスト奏者を招いてのアンサンブルですが僕としてはこれが一番たのしくて、これをやりたいがためにみんなにアンサンブルをやるよう促してきました。

お2人とも本当にありがとう。またオケの現場でよろしく。

 

19.2つのファゴットのためのソナタ/モーツァルト

ファゴットの二重奏といえばコレ。という作品ですね。いろいろな演奏が世にあふれています。その一角としての今回の演奏ですが、この曲の魅力を大変よく表現しており、ニコニコしながら聴ける演奏でした。しかし縛りの多い古典派でありながら、「モーツァルト」という絶対的な世界観を表現するのはとても難しかったと思います。お疲れさまでした。

さて、では、この曲を聴いたこともない、モーツァルトの作品だ、とも知らない人が聴いたら今回の演奏はどう思うでしょうか?二重奏という性質上、旋律が聴こえない、なんて自体にはなかなかなりませんから、伴奏系がいかに魅力たっぷりに聴こえるか、が二重奏のミソだと思います。「伴奏が旋律に合わせる」というだけでは二重奏は成立しません。そもそも伴奏という概念は単旋律楽器1本ではほぼ成立しません。伴奏だと思って演奏してしまうと止まってしまって聴こえてしまいます。また旋律のパートの人も、もう1人に呼応した演奏でないとやはり面白みに欠けてしまいます。残念ながらあまりいい演奏が聴けないのがこの曲の残念なところです。

もっと挑戦があってよかったし、もっと詰める部分がそれぞれあったのではないでしょうか。人数の少ないアンサンブル、というものの難しさ、もっと楽しんでいきましょう。

 

20.4つの舞曲/ボール

初めて聴く作品でしたが、聴き映えのするいい曲だと思います。

テンポ感とアーティキュレーションはレッスンでかなりしつこく、強く伝えてきたつもりでしたが、1週間前だったということもあって、残念ながら大きく変化は感じることができませんでした。僕としては残念ながらそれ以上の言葉は無いのですが・・・。

3人とも、楽器を吹く技術はたくさん持っていると思います。音色も綺麗ですし、音程も悪くない、指や舌も十分に動きます。でもそんなことが聴きたいのではなくて。足りないのは、作品に対する誠意です。今回の作品に関してだけ言えば、極端な話、劣悪なDTMソフトへの打ち込みに劣ってしまう部分がたくさんある演奏でした。持っている技術で「なんとかしよう」という練習ではなくて、1つ1つの楽譜に対して真剣に向き合わなければ、今以上、楽器の演奏は面白くなりません。「このくらいのテンポなら吹けるかな」と思うメトロノームの数字を半分にして、テンポ以外の情報を1つも落とさず吹く練習(レッスンで、ではなく、個人の練習という領域で)から始める、ということを僕はファゴットの生徒たちに徹底させています。ぜひそういった時間を楽器にあてて、作品に対する誠意を見せてほしいものです。ぜひ同じメンバーで、前と違う!という演奏を今度聴かせてくれれば幸いです。

 

21.五重奏曲より第1楽章/カプレ

色彩感ゆたかな演奏でした。モチーフの少ない曲(楽章)ですからそれそのものが難しかったと思います。バランスが良かったのは管楽器4人ともにいい楽器の鳴りがあるからですね、素晴らしいことです。

しかしホルンを欠いた木管アンサンブルですから、フォルテを聴かせることに苦労が感じられました。楽器はよく鳴っていますから、音色や発音による変化がもっと出ると奥行きのある演奏になったかな、と思います。

ピアノはもっとコントラストをつけることを意識して。音数の多さがダイナミクスに直結してしまうとアンサンブルでは共演者が苦労してしまいます。レッスンでも言いましたが「管楽器なんて出てこなくていいや」と思わせるような音を出してもらってこそ、アンサンブルが面白くなるというものです。そのへんの気持ちはファゴットやフルートを吹く君だからよく分かってるはずですね。

テンポ感が良すぎて、アゴーギグが感じにくい演奏になっているのも気になりました。レッスンでも触れましたが、もっと書いてある発想記号を大げさに出していきましょう。変わってないな、と思ったら気づいた人がすぐ口に出さないと、ただ慣れるだけの合わせになってしまいます。

 

22.木管五重奏曲/タファネル

名演でした。木管五重奏といえばこう、という印象通りの演奏ができるメンバーだったと思います。

木管五重奏は同じ管楽器とはいえ発音帯が全く違う5つの楽器がそろっていますから、他人の演奏と自分の演奏のギャップに気づき修正していくことが必要不可欠となります。レッスンで指摘した、フルートはアタックの弱さ、逆にオーボエはアタックの強さ、ホルンのフォルティッシモ等、もっと気にして本番までに修正していってほしかったです。クセというのは色にもなりますから、いいこともありますが、基本的には毒です。持っていていいので、必要ないときにきちんとしまえるようになるといいです。木管五重奏は異文化交流ですから個人のクセを出しっぱなしではうまくいきません。

逆に個が光る事もたくさんあり、ぐっとくるシーンも少なくなかったので、個を出し入れできると「みんな全然ちがう演奏してるのにまとまっている!」という演奏に近づけます。そんな演奏、聴いたことありますか?なければもっといろんな演奏会に足を運んでみてください。若手プロの木管五重奏とか、色々(よくも悪くも)あっておすすめです。

 

23.ラプソディ/オズボーン

自分の演奏です。いい意味で無伴奏の作品らしく、狂詩曲らしく、というのがコンセプトで演奏しました。まだ数か月この曲とは向き合わなきゃならんのでいいタイミングで本番で吹けたのでよかったでしょうか。

 

24.3つの二重奏曲より第1番/ベートーヴェン

2人のセンスがそれぞれ光る名演でした。二重奏としてはとても水準が高かったと思います。1楽章はもっと2拍子を感じて演奏すると軽やかでよかったかな。テンポ感、というよりは拍子感で。トリルや簡単な連符をもっと正確に大切に。別にできてないわけではない、でもうまくもない、という音の並びが多かったです。なんでもない並びを美しく、というのは古典派を演奏するうえでは必修科目です。

2楽章冒頭のトラブルも拍子感の共有がなされていなかったから起きたことのようです。先に出るクラリネットは装飾音符をきちんとリズムで吹けるように、ファゴットはそれを信じてきっちり入ること。どちらも大切なことです。立場上、ファゴットの方が古典・バロックの様式には強いのですから、ナビゲートしてあげると良かったのかも。

3楽章の難しい(?)連符も、並ぶのが目的で終わってしまう印象です。名人芸として聴きたかった。たぶん持ちうる一番いい音が並べばそれだけでいいんだと思います。和声感、色彩感なんかはとっても素敵な演奏でした。

連携は素晴らしく取れているけど、古典派という魔物にやられてしまった、という印象の演奏でした。

 

25.デュエッティーノ/ボザ

今回のアンサンブルMVP。曲の味を最も生かすことに成功した演奏でした。短い音の連打がすこし転んで聴こえてしまいます。「短い」というキャラクターを生かすためには転ばない工夫が必要不可欠ですから、単純なリズムを感覚的につかめるといいですね。

二重奏というジャンルはバランスを取る必要は殆どないのですが、それでも主役とそうでない側に分かれることが多く、その表現が難しいのですが今回の演奏は見事に吹き分けができていました。

遅い楽章に関しては、ふたりとも発音がもう何種類かあるとよかったと思います。柔らかい発音+鳴る音、強い発音+鳴らない音、なんて組み合わせを使うと音色・ダイナミクスのバリエーションが増えて面白くなります。要練習です。

アクセントの付け方が2人で揃うともっとよかったですね。二重奏ですから、アクセントの種類は違ってもいいかもしれませんが、温度が違うところが多く、結果としてかみ合って聴こえなくなってしまいました。すり合わせがもっとうまくなるといいですね。

 

26.無伴奏チェロ組曲第3番より「ブーレ1.2」/バッハ

前日のレッスンであれだけ乱されて(?)よく1日でまとめました。本当にその一言に尽きるのですが。「こう吹こう」と決めたものがそう聴こえる、という当たり前であるべきことがファゴットはすごく難しいのですが、うまく演奏できていました。つまり表現したいことに技術が追い付いている、ということです。素晴らしいことなのですが逆に言うと、技術が先行し表現したいことがまだまだ足りていない、という状態とも言えます。無伴奏作品というのは自由がききますから、無機質なものが一切許されない世界です。もっともっと楽譜のすみからすみまで、音を出すたびに自分のやりたいことで満たされていくような練習ができるといいですね。

技術的には、もっと薄いところがあってもよかった気がします。全部いいい音、とも言えますが。ブーレのみで始まり終わるのですから、コントラストをもっともっとつけないと面白みに欠けてしまうかもしれません。

次回はぜひ、ピアノ有りの作品を!名ピアニストと共演するチャンスでもあるのです。

 

27.タンゴの歴史より「ナイトクラブ」/ピアソラ

ファゴットの新しい可能性を見た、という印象の演奏でした。力任せな部分がなく、大変好印象な演奏でした。軽やかな箇所は光っていましたが、もっと歌うところはしっかり歌いコントラストがついているとより良かったかなと思います。おそらく軽いセッティングで演奏したのだと思いますしそれは間違っていないので、軽いセッティングで楽器をしっかり鳴らすテクニックを身につけましょう。

6拍子のテンポに無理を感じました。いい意味でマイペースにできるように。ピアニストを無視する、というのも大切なテクニックです。それにしても、悪いコンディションの中よくあれだけの演奏ができましたね。それが君の底力です、誇りに思っていい。

グリッサンドポルタメント?)はもっと後ろに寄せて。それっぽく、という部分でもう少しこだわりが欲しかった。

そのうちほかの楽章もぜひ挑戦してください~

 

28.2つのファゴットのための協奏曲/ヨンセン

「合わない」なんて印象は感じませんでした。もちろんいい意味で、です。むしろもっと個が聴きたい、合わせないで!というシーンの方が多かったです。ファゴット2本というのはもっと勝手にやるものです。普段の習性から苦手とする部分かと思いますが・・・「勝手な人」を演じられるとうまくいくかもしれませんね。いい意味で合わない場所を増やせるともっとよかった。

トリルをもっと技術的にしっかりさらいましょう。うまくいってないトリルにもっと向き合って。やたら速い連符だと思って。

持っているタンギングが2人でよく似ているんだと思います。つまりそれぞれが新しい種類のタンギングを覚えれば個としてもっと光れるかもしれません。

2楽章はもっともっと長いフレージングが取れると良かった。フレージングをつなぐ、ということは、山をきっちり作りその前後に仕組みを構築する、ということです。つなげている、という意識だけでは伝わりません。特にこの楽章はそれが難しいところですから、仕組みをもっと明確にしたほうが良かった。

それにしても、ファゴット2本、というのは良いものですね。このジャンルもっともっと探求していきましょう。

 

29.ソナチネ/タンスマン

長く準備をしただけのことはありました。元々「そこそこ」には吹けたと思いますが、あれこれ言った甲斐のある面白い演奏に仕上がっていて嬉しかった。

君はとてもきれいな音を持っています。つまり、とげのある音は意識しないと出てきません。タンスマンを演奏するには、少々綺麗過ぎました。もっとおどろおどろしい何かがうごめいているような箇所があるとよかった。それでこそ2楽章が光るというもの。

また、ピアニストとのアンサンブルがもっとうまくいくとよかったですね。個人としてリズムを取る事も大事ですが、かみ合わないとやはり意味がないものです。レッスンで「そこ速いよ」と言った箇所は本番も速かったのですが、僕が「速い」「遅い」とだけ言うときはだいたい、共演者がいる場合かみ合わなくなるよ、という意味合いです。タンスマンはリズムを喋る音楽です、もう少しリズムを表現できるとよかったですね。

 

30.コンチェルティーノ/ビッチュ

この曲がこのレベルで演奏されてしまうのだから恐ろしい発表会になりました。あまり言うことはありません。感情的になるべき部分(なってはいるのですが)の長い音が抜けてしまう事が多かったです。長い音、抜けるのか向かうのか、決めておかないとだいたい抜けてしまいます。ビブラートが途中で止まってしまうからそう聴こえるのかも。

カデンツァの装飾音符、イコールアクセント、にはなってほしくなかった。本当に聴こえたい音符がどこなのか、考えて練習しましょう。

楽器の鳴らし方がうまくなった、と思います。ツボをとらえられるようになった、といいますか。「音程が高い」という状態はツボを間違ってとらえてるときに起こる状態です。基本的にはね。つまり、音程も良くなりました。大いなる進歩です。

 

31.テーマとバリエーション/ドヴァリョーナス

おかえりなさい。自分で分かってるとは思いますが、悪癖が抜けて技術的にも一皮むけて楽器にも慣れてフレーズ感も磨かれてきました。昔の録音と自分の音を聴き比べてみると一目瞭然かと思います。一体何があった?

長い音(所謂四分音符以上の音)の処理をもう少し考えましょう。向かうのか抜けるのかかすれていくのか。意思がない音が1つでもあるとそのフレーズ全体が台無しになってしまいます。

楽器の鳴らし方を覚えたことと、変な編成の吹奏楽から離れたからだと思いますが、無理に鳴らさずともしっかり聴こえる音、というのを習得しています。宝物ですので、どうか大切に。たぶん自分で「この音はいいおとだ」と思って吹いてれば、きちんとその音は客席まで飛んでいきます。この感覚を忘れないように。長調の曲がもっと救われた感が出るとよかったですね。色彩感覚がもっと身に付くといいです。

 

32.ファゴット協奏曲ホ短調/ヴィヴァルディ

今回のMVPです。ここ最近異様にレベルが上がっている会ではありますが、MVP選出の感覚はいつも変わらず、録音で振り返ってもやっぱり名演なのです。

僕がレッスンでお伝えしている事なんて、曲のもつ魅力のほんの一部なんだと思いますから、教えた事が足し算で発揮される事より、化学反応みたいに新しいものが生まれてくることが一番うれしく思います。今回の演奏は、そういった演奏にしっかりとした技術が乗ったものでした。

きちんとフレーズの山を谷を表現できています。山を大きくしすぎるとリード・楽器のキャパシティを越えて鳴らそうとし逆に鳴らなくなる、という箇所が見受けられます。いつでも頭の7割はクールに、どのくらい息を入れればいいか計算しながら練習をしましょう。

3楽章、本当にびっくりしました。よく考えよく練習されていました。普段のレッスンと発表会の流れでこんなに化けてくれる人がいるなら、僕はこの会をいつまでも開催したいものです。

 

33.プレリュードとスケルツォ/ジャンジャン

この曲がこのレベルで演奏されてしまうのだから恐ろしい発表会になりました。2回目。

いつもそうですが、ピアニストとの絡み方が本当に上手です。よく聴いていて、その中にきちんと入れています。なのでいつでもピアノとのバランスが良いです。感覚的なものですから、大切な才能として伸ばしていってください。

フレーズの引き際が早すぎることが多いようです。特に長い音で終わるとき、減衰が早すぎないように。もっともっとキープした方がうまく聴こえます。リードがFの仕様だったのだと思いますが、それにしても、低音域が溶けない音色になってしまっていました。どんなリードでもコントロールは効くはずですから、低音が吹きづらいリードで低音をうまくふく訓練を積みましょう。

「うまく」という表現は便利ですね。もっと「うまいこと」やりましょう。ちょっと正面から勝負しすぎなのかもしれません。ハイFは見事でした。

 

34.ファゴット協奏曲より第1楽章/ウェーバー

トリにする、という采配は大正解でした。たぶんトリでなかったら、こんなにうまいこといかなかったでしょう。そのクソ度胸は天性のものです、武器にしていきましょう。

それにしても、ピアニストに3~5回、命を救われた演奏です。次会った時、もう一度お礼を言っておきましょう。

僕も褒めましたし皆にも褒められたと思いますが、ウェーバー1楽章の完成度としては4割程度かと思います。大切な部分はきちんと乗り越えていますが傷が多すぎたのも確かですから、慢心せずこれからも頑張っていきましょう。慢心せず、とも言いましたが、「ウェーバーがなんとかなったのだから」と思えばどんな譜面でもなんとかなります。今後は「傷のない本番」を目指していきましょう。