ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第28回門下発表会でした。講評と次回のことと、大事な告知があります。

こんにちは。秋すっ飛ばして冬来ましたね。1個前の記事は真夏だったのに不思議ですね。

何度も言ってますがいくつか書きかけの記事はあるので、僕がその気になるのを末永くお待ちください・・・。

 

さて先日、第28回の門下発表会が開催されました。

 

今回はソロ12人、アンサンブル2組の参加でした。

とにかくハイレベルな会でした。元々うまい子たちもそうですが、レッスンに来る回数が多い子が増えてきた、というのも理由になってくるでしょうか。

1回のレッスンで出演する子もいますしそれでいいとは思っていますが、やはり2回3回4回と重ねていくうちに本人の理解度も上がり、演奏の質も上がっていくのは当然のことなのでしょう。

 

この回は「上達」を目的とした発表会です。1人ないし少人数で演奏する場を作り、それに向けて練習をしレッスンを受けて披露すれば必ず技術的向上が見られる、というのがコンセプト。なので続けていけばいくほど平均レベルの向上は当然と言えば当然、でしょうか。嬉しいことです。

 

次回も決まっています。ピアノ伴奏つきのファゴットソロ、もしくはアンサンブル(ファゴットを含まなくても可)でのエントリーお待ちしております。下記概要です。

 

春のひとときコンサート(第29回とのむら門下発表会)

2024年3月23日(土)お昼以降開演、夜終演

立川サロンスタジオFIX(各線立川駅より徒歩3分)

参加費(会場代、伴奏者謝礼、レッスン代1回分込み)

ファゴットソロ 社会人15000円、学生10000円

アンサンブル ひとり6000円(編成によって多少の変動あり)

エントリーは直接ご連絡頂くか、下記フォームまで。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

これが大事な告知。ほとんどまだ何も決まっていませんが・・・

次々回の発表会も決まっています。ただし次々回は第30回を記念として、いつもと違ったスタイルでの開催を計画しています。

いつものような公募は行いませんので、次々回以降の参加を考えている方はその次、来年11月以降のお知らせをお待ちください。次々回への参加はこちらからお声掛けさせて頂いています。

第30回となる次々回開催は、いつものような発表会形式ではなく演奏会形式を取り、入場無料ではありますがチラシや(電子)チケットを作り集客をするつもりです。このブログや各種SNSでももちろんお知らせしますので、気になる方はぜひ聴きに来て頂ければ幸いです。

日付は2024年7月28日(日)、午前中リハーサル、午後以降本番予定です。会場は

国立オリンピック記念青少年総合センター カルチャー棟 小ホールを予定しています。

きちんと告知しますので、続報をお待ちください。

 

 

さてここからは、第28回参加者向けの講評記事となります。関係者以外の方は次の記事をご期待ください。いちおう書き進めてはいるのです・・・・

 

1.演奏会用独奏曲/ピエルネ

初参加者は一番最初、と決めているための出演順でした。じっくり準備を進めただけあって非常に完成度の高い演奏となりました。本番の演奏中、非常によく集中できている印象で、聴いている方も引き込まれている人が多かったように思います。

流れやフレーズを作るのがうまくなったので、今回の経験はオケ中でソロや旋律を吹くときに活きるのではないでしょうか。フレーズに到達点を作り、そこに向けての流れと到達した後の流れを考える。これだけなのですが、それがなかなか難しいですね。今回は非常によく表現できていました。

改善点なんて挙げることもないのですが・・・強いていえば表現に関して、「やっているつもり」の点が多いこと。見ていれば何をしたいのかはよく分かりますが、音に現れていないことも多々ありました。やはり楽器の音は物理現象。具体的な変化を作ることを意識づけていきいましょう。特にフォルテやクレッシェンドを作るとき、息を入れるだけにならないよう、しっかりリードが振動しそれがボーカル、楽器に伝わって音の変化になっていく感覚をもって練習しましょう。

小さいことだけど長めの休符の時、はやくリードくわえると聞いている方も「あれ?」となるのでやめた方がいいかな。緊張していて間が持たない気持ちはわかるのですが・・・

次回以降の参加も楽しみにしていますね!

 

2.ファゴット小協奏曲/ダビッド

レッスンの最後の最後までアーティキュレーションの話になってしまったこと、申し訳なくは思ってます、がしっかり伝わった、と僕は思っていますがどうだったかな。演奏とは再現であること。再現とは楽譜情報の引き出しであること。それでも人や場所が違えば出てくるのが「個性」であること。理解してくれたら嬉しいです。

表現への欲求はいつも通り素晴らしく、旋律を美しく歌うことができていました。音量などの変化も素晴らしいのですが、譜面を横方向に見てしまうクセがついてきたようで(楽譜通り、に僕がかなり言及したせいだとは思うのですが)ピアノとのアンサンブルはややイマイチでした。タイミングはあっているけど、和音の進行への意識付けがなかったこと、すこし残念でした。

やっぱり必要なのは客観性。自分の演奏がどう聴こえているか、同時に聴く側に回れないのは演奏者が抱える一生のジレンマですが・・・想像することはできます。録音をとってみるのもいいでしょう。君の考えるちょっとしたフレーズのこだわりとか、僕はとっても素敵だと思うけど、聴いている人はもっと大きな問題を「惜しいな」と思って聴いています。そこに気付くことができれば・・・。

演奏の技術は大したものです。技術はいくらあってもいいですが、何のための技術なのか、よく考えて練習しましょう。

 

3.ファゴット大協奏曲より第2.3楽章/フンメル

どこまでいっても大曲。細かいフレーズのことにかなり言及してきましたが、僕の言ったことをよく噛み砕いて理解してくださったのが演奏を聴いていてよくわかりました。「僕の言う通り吹きなさい」なんて一生誰にも言うつもりないけど、伝わっているのがわかると嬉しいものです。僕はかなり細かく言いましたが、「言う通り」ではなくご自身の頭で考えて演奏しているのが伝わってきて、とってもいい2楽章だったと思います。このレベルでこの曲の2楽章が吹ける人、そうはいないでしょう・・・!

3楽章、もう本当にこれはどうしようもないかもしれませんが疾走感がもっと欲しかった。もちろんテンポを上げようということではなく、ハツラツとした感じといいますか、ちょっと元気がなく優しい印象で終始いってしまったのが勿体なかったでしょうか。技術的には言うこと何もないです。よく練習してあるし見事な超絶技巧でございました。フレーズの取り方は2楽章同様とってもよかったのですが・・・。逆に疾走感への意識があればもっとテンポゆっくりでも良かったくらい。古典派の曲はそこが本当に難しいですね、ロッシーニしかりモーツァルトしかり。

それにしてもフンメルを吹き切れたこと、本当に凄いことです。自分への自信にしていってくださいね。

 

4.5つの小品/イベール

ほんと、これぞトリオダンシュ、と言える演奏だったと思います。レッスンの時も話したけど、トリオダンシュって「フルートとホルン見つからないからこの3人で」みたいな気持ちでやるものではないですね。この3人で(楽器で)遊ぼう、くらいの気持ちが一番。作品への愛で取り組んでもいいですね、それくらい魅力的な作品がたくさんありますから。

レッスンでかなり言及したそれぞれのバランスや個人個人のダイナミクスについては非常によく考えられていました。楽譜情報の違いもそうですが、楽器ごとの差も考えて今回のように演奏できると違う楽器のアンサンブルは面白みが増しますね。また声部の違う楽器3本なので本来あまり気にならないはずの音程が、今回けっこう気になりました。チューナーで真ん中を取る、というより楽器が美しく響く音程感、それぞれ探ってみるといいかもしれません。

1楽章はテンポ感、というかスピード感がもっとあって良かったかな?丁寧ではあったけど少し退屈に感じてしまうテンポ感かも。他楽章との対比もあるしオープニングだし、飛ばしていってもよかったかも。2.3楽章は箇所箇所でいい攻め具合が聴けて愉快でした。地味だけど個人技もそれぞれ光っていました。4楽章はアンサンブルが丁寧な分、積極性に欠けてしまう場所がちょこちょこ。テンポの変化があるあたりが特に・・・。スタミナ問題がなんとかなっていたのでそれだけでも及第点ではあるのですが。4楽章→5楽章への切り替えが非常によかったと思います。テンポ感は今のまま、シンプルな旋律ラインを彩る要素がもっと色々見え隠れするとよかった。隠れるのは3人ともうまいのだけど・・・

オーボエは音量や音色の操作が自由自在なのが本当に素晴らしいのですが、自由自在である、ということはちょっと間違えれば逸脱してしまう、ということ。いったん少し不自由(=ダイナミクスや音程の変化が少ない)なセッティングを試し、今と同じことをしてみる、という工夫を試してみてもいいかも。

クラリネットは間を受け持つのは達人級でそれはそれで大事にしてほしい技術ですが、やっぱり木管アンサンブルは1人1人がスターであってほしい。オーボエファゴットを従えてクラリネットが主役に、というときにどうしても負けてしまうのが惜しかった。まずは主張し慣れるところから。「やりすぎ」って怒られるのを心の奥底で喜べるような奏者に。

ファゴットはアンサンブルで聴くとここ数年での上達を本当に感じました。見劣りしないのは当然として、なにかと忙しい曲ですがいろいろな役割をいい具合にこなせていました。アーティキュレーションの差をもっと音楽に活かせるようになるとより魅力的な演奏ができるようになるでしょう。例えば短い音も鋭いのかコンパクトなのかで違ってくるし、レガートの旋律はいい意味で機械的に取っていくのか歌いながら取るのかでやっぱり違ってきます。色々試して遊んでみるといいですよ。

非常にいい3人だと思います。やってもやっても面白いのがトリオダンシュ。またの参加をお待ちしています~!

 

5.無伴奏パルティータ/J.S.バッハ

今回これ吹きました。丁寧にコンパクトに、がコンセプト。どうだったかな。

 

 

6.狂詩曲/オズボーン

なめるな危険オズボーン、ってところですか。安定感と再現性の高さはさすがの一言。何よりキツいところをコンパクトにまとめて崩壊しないスタミナとリスク配分がお見事でした。この曲が吹ける用のリード、ってあると思うんだけどその準備ができればもっと違ったのかな・・・。

とは言えレッスンで言った通り、死ぬほど指定の細かいこの曲、短期間でよくすべての要素を拾ってきたな、とも思います。ある種、この曲は要素を拾いつくして傷を減らしてスタミナ配分するだけの曲だとも思うから、その点は完璧に近かったと思います。この曲知らない人にこの曲の良さは伝わっても難しさってなかなか伝わらない気がする・・・。

改善点があるとすればダイナミクス、特に小さい方がもっと聴きたかった。ピアニッシモ、というより細くて消え入りそうな音、みたいなものがほとんど聴けなかったのでそこは残念。この曲のピアニッシモはその手の音が欲しいよね。難しいことは重々承知していますけれど。

ある意味で無伴奏の面白いところが詰まった曲だったと思います。楽しめていれば何より!アーノルドだのなんだの、バッハ以外の無伴奏いろいろあるので探してみて、懲りずにまたやってみてくださいね。

7.ファゴット協奏曲第1楽章/ウェーバー

いい意味で無駄を美しく省いた非常に練度の高いウェーバーだった、と思います。雑に済ませてしまっていたテクニックを丁寧にやるとここまで純度の高い連符が並ぶんですね。自分でも録音で確認してみてください。ウェーバーにおいてみんなが取り組む、技術的な指標は完全にクリアしていると思います。素晴らしいことです。

また少し気になっていた音程もだいぶ改善されています。フリックだのハーフだのを中心とした細かいテクニックの改善に由来するものだと思います。地味だけどとっても大事なことなので抜け落ちてしまわないように。←これが一番難しかったりします

今回、非常にオーソドックスなスタイルで演奏できていたと思います。星の数ほど音源や演奏のあるこの曲、実は型破りなものがたくさん存在します。いま色々聴いてみると発見が多いかもしれません。「あれもこれもやればよかった」とまで思えれば今回の演奏がうまくいった証拠です。

それからピアノとのアンサンブルが非常にお上手でした。普段からピアノの音を想像して演奏いていなかったらこうはならないと思うので、この意識は他の曲でも持っていてください。オケや室内楽でも同様です。

 

8.プルミエソロ/ブルドー

冒頭、めちゃくちゃ良かったと思います。準備やコンディションに不足があっても、この曲の冒頭があそこまで美しく吹けることはこだわりを持っていい練習ができていた証拠です。まず誇りましょう!僕も鼻が高いですこれは。

テクニカルについて僕がここであれこれ言う必要はないと思います。最後のレッスンで言ったような、地味だけど確実に根付いていく練習を今後は心がけていきましょう。それでも動かないときは動かない。身体や脳、心のリフレッシュをするだけで急に動くようになる、なんてこともあります。練習量でねじ伏せる、みたいな時期はもう過ぎ去ったのかもしれないね。量ではなく質。何より本番時期を見据えてじっくり積み重ねていくこと。

楽器が「上手い」ということは、大好きだったり大尊敬してる仲間にできる唯一の恩返し、と僕は考えています。自分が「上手い」ことで仲間を幸せにできること、ってこれ以上ない喜びなのよ。だからそのために「テクニックを積み上げる」質のいい時間は絶対に必要。でもそれと同じくらい、今回みたいな冒頭が吹けるちからも「上手い」演奏には必要不可欠なものだと僕は思います。今後に期待しましょう!

 

9.ファゴット協奏曲イ短調第1楽章/ヴィヴァルディ

派手さが売りのこの曲、君はどうなるか、と思っていたけど、ちゃんと派手に演奏できていた、と思います。音がデカいとか小さいとか指や舌が動く、ということより「派手さを演出する」ということがどれだけ難しいか。今回、そこにこだわりの見えるいい演奏だったと思います。

「別に難しくも別段早くもないけど積み重なっていて難しい」タイプの曲。本番はなんとか間に合ったけど、この手の曲をサッと攻略できるようなることが、激ムズ曲を時間かけて演奏できるようになることよりも大事なことだと僕は考えています。この曲の難しいところくらいの難易度の難所(変な日本語だな)がじっさい合奏なんかで一番多いからね。サッと攻略してほしかった理由は他にもあるので後述。

音の濃淡が良く表現できていたので、あとはその濃淡のままフレーズ(=到達点)がもっと見えると良かった。ソリストが忙しいことをしている間も和声は動いているし、そこに意識を向ける余裕がなかったのもちょっと勿体なかった。それからヴィヴァルディの協奏曲、曲の終わりは通奏低音吹いた方がいいですね、これは発見でした。

1楽章の攻略に時間がかかりすぎてしまった問題点として、やっぱりヴィヴァルディの協奏曲は全楽章セットで聴きたいね・・・!当然それ前提の曲構成になっているし、出来がよかったぶん、終わってしまうのが惜しかったです。そのうち2.3楽章に挑戦してもいいけど、ホ短調やら何やら他のものに挑戦するときはぜひ全楽章を。要領よく譜読みができる=上手い人、とも言えるものね。

 

10.ソナタ第3番より1.2楽章/ヴィヴァルディ

まず全体として、流れがスムーズで非常に良かったと思います。テンポ的にも和声感的にも通奏低音にうまく乗れているので、聴いていて心地のいい演奏でした。技術的にはやっぱり音程が下から過ぎるのがね・・・いっそ下のまま取っていればいいんだけど持ち上げちゃう分、音色のイメージとして暗く聴こえてしまうのが勿体ない。ちょっと明るすぎるかな?くらいのリードがあっているのかも。

1楽章のテンポ感、僕はすごく好きなんだけど、3拍子がもっと見えると良かった。前述の通り流れがいいのであまり気にならないんだけど、拍子が見えればメリハリも効いてくるしフレーズも輪郭がハッキリしてきたはず。この辺はもう少しじっくりレッスンで見てあげられればよかったのかもしれません。2楽章も同様、4拍子の表現が甘いところが多く、ほとんど2拍子に聴こえてしまうのが惜しい。4拍子って基本なようで表現するのが非常に難しくて、シンプルなつくりであるバロック時代の作品は特に気を付けて演奏しないとどこに強拍がきているか分からなくなってしまうので注意が必要です。

繰り返し後の変化をきっちり楽しんでいる演奏なのも非常に好印象でした。精度がもっと高い方がいいのは確かですが、"遊んでいる感"が出ていました。しかし遊んでいる感はもっとあったほうが良くて、やり方としてはアーティキュレーションを少し誇張してみる、なんかが今回に関しては良かったかも。時間があったらおさらいしてみて。

 

11.ファゴットソナタヘ長調/ドゥビエンヌ

精度の高い演奏でした。特に素敵だなと思ったのが長調の表現。ちょっとしたスタカートの跳ね方とかスラーの切り方とか音程感とかで表現されているように聴こえました。短調はみんなこだわるのだけど長調がうまい子はなかなかいません。また全体としていい意味でコンパクトな表現幅だったのも良かったです。室内楽ですしフレンチバロックということで、あまり盛大な音楽にはならないので今回くらいの幅感が聴いていて非常に小気味よかったです。狙ってコンパクトに演奏していたのであれば大正解です。狙ってなかったのであれば・・・作品によりますね。またそれはレッスンで。

技術的にはスタカートの速いタンギングがとても上手かったと思います。変にテンポを上げてしまわなかったことも幸いしていい表現に落ち着いていました。

合わせも少なく当日もいきなりなので仕方ないと言えば仕方ないのですが・・・自分で気付いているとは思うけど、通奏低音への意識が抜けて練習してしまっている箇所は非常に勿体なかったですね(2楽章の冒頭はまさにその結果でしょう)いつだって共演者がそこにいる意識を。これは受け売りですが、普段の練習環境を空間ごと切り取って本番会場に持っていくイメージを持つといいです。そのつもりでいると普段の練習から頭の中にオケ(ピアノ)が鳴ってないとうまくいかないからね。

教え子の演奏聴いて自分も演奏したくなる、という数年に1回ある現象が僕にはあるのだけど、今回それでした。この曲、いいですね。僕もどこかでやります。

 

12.ファゴット協奏曲1楽章/シュターミッツ

ある種、たくさんの縛りがあるような曲に感じたと思います。本来はすごく自由でハツラツとした曲なのでしょうが・・・とにかく演奏の様式を分かりやすく学べる、ということで、僕としても不本意なのですがこの曲に関してはそんなレッスンをするようにしています。

しかし性格なのか、様式そのものを楽しんでいる印象が本番はあり、縛りを感じさせない良い演奏ができていたと思います。この曲で得た学びはほぼすべての曲に使える要素なのでぜひ今手近にある譜面から活かして練習してみてください。

縛りにしばったレッスンをしたので仕方のないことですが・・・最初から最後まで音色的な変化がなかったのは少し残念でした。フォルテなのかピアノなのか、エスプレッシーヴォなのかドルチェなのか、レガートなのかレジェーロなのか。はっきり差をつけて演奏しようとすればおのずと音色(発音、音のディレクション、処理の仕方など)は変わっていくはずなので、その手の自発的な工夫が欲しかったなと思うところです。レッスンで触れられたのが強弱くらいだったのもちょっともったいなかったかなぁ・・・

とはいえ、地味難しいこの曲を高い精度で演奏できていたと思います。トリルへの苦手意識もだいぶ薄れたでしょうから、今度はウェーバーかダビッドか、ってところでしょうか。

 

13.演奏会用独奏曲/ピエルネ

フランスの風を感じる演奏でした。レッスンでも言ったけどあくまで純日本人の僕たちには「フランス風」が限界なのかもしれませんが・・・いやそれでも、確かに今回のピエルネは良かったと思います。MVPと言ってもいい。今回の演奏は、かつて僕があまり好きじゃなかったピエルネではなく、僕が大好きになったピエルネだったと思います。

表現過多に気を付けつつも、狙ったであろう表現幅がきちんと聴く側にも伝わっていました。いい想像力とバランス感覚だと思います。またピアノとのアンサンブルも精度が高く、ピアニストがいい顔して弾いてくださっていました。どこまでいっても二重奏、なんだよね。

しかしやっぱり難しいのは8分6拍子。レッスン時よりはだいぶ美しく取れるようになっていましたが、時折2の倍数がチラついてしまう・・・。やはり一朝一夕にはいきませんので、次またこの拍子に出会ったら今回のような意識をしてみて。

細かい傷はちっとも気にならない演奏でした。自分で気になるなら気を付けてみてほしいのは、ほとんどの傷が急いだブレス直後であるということ。ブレスの前後は自分でも理解できないようなミスが多発するので、普段の練習から警戒しておくこと。備えておけばだいぶ減ってきます。お試しください。

 

14.三重奏曲/プーランク

まさに満を持して、でしたね。トリを飾るにふさわしい演奏だったと思います。曲の魅力とピアニストの地力によるところも大きいとは言えますが・・・

僕が常々言っている「アンサンブルとはけっきょく個人技の集合体」であることをよく理解しているように見えました。それぞれが自分の頭できっちり考えて演奏し、リハーサルはそれのすり合わせ作業であるということ。すり合わせるだけで、別に考えを変える必要があるかは個人の判断に委ねられる、というのも生演奏のいいところです。3人がそれぞれ、自分の思うプーランクを演奏できていたと思います。細かい傷はあっても、あと10回リハーサルをしてもこれ以上の演奏にはならないです(良くも悪くも、後述します)

まずオーボエファゴットも、シンプルに以前と比べて楽器が上手くなりました。今回の演奏において胸を張っていい出来だったと思います。ピアノは抜群だったので何も言うことはないですが・・・とにかくピアニスト特有の「アンサンブルモード」のオンオフが切り替えられるようになるともっといいですね。下等な管楽器ども、ひれ伏せ!みたいな箇所がもっと何か所もあっても良かった。そこが三重奏のいいところで、二重奏だと弦や管は完全に力負けしてしまいますが三重奏だと意外といい勝負ができたりするし、そこが魅力だったりもします。もっと楽器の王様であってよかったと思います。

オーボエは「優等生」も「ヤンチャ」のどちらもこなせる、抜群に表現力豊かな演奏だったと思います。そこに「ひょうきんもの」や「みんなの憧れる超絶美少女」なんてキャラクターも、追加してみませんか。いつだって主役級であってほしい楽器、まだまだ表情の引き出しはあっていいものです。

ファゴットはとにかく「自分の頭で考えて吹く」がよく出来ていました。当たり前のことに思うかもしれないけど、すごく上手くてもこれができない人は多いので自分の長所だと思ってください。発音や表情の変化も豊かでピアノやオーボエに決して色彩感で負けていなかったです。力負け?そりゃしますよ。していいです。色味や響きで勝負しましょう。以前個人レッスンで言及しまくっていた細かいテクニック(運指とか息の入れ方とか)はだいぶ改善しましたが、もっとこだわれるはず。今回すごく丁寧に練習したと思うので、この経験を活かしつつ、テクニカルにもっとこだわっていきましょう。