ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第29回門下発表会でした。次回はちょっとトクベツ。

こんにちは。春通り越して初夏みたいな気候が続きますね。

衣替えのタイミングがイマイチよく分かりません。

みなさまいかがお過ごしですか?

 

僕は近ごろ、新しい仕事の場を作るために少しずつ準備を進めています。

近いうちにお知らせできるんじゃないでしょうか。続報お待ちください。

 

さて先日、第29回となる門下発表会がありました。

 

驚異の打ち上げ参加率。それはまぁともかく、今回も変わらずハイレベルでした。

ハイレベルであること、レッスンを受けて演奏するんだから当然と言えば当然と思うかもしれませんが・・・

人も入れ替わるし調子の上振れ下振れもあるし、そもそも楽器の上達なんて砂漠をさ迷い歩くようなもの。

レッスンで道筋は示せても、必ず前進できるというものでもないですからね。

それでも僕は、それぞれの領域できっちりやることやってくる生徒たちを毎回誇らしく思っています。えっへん。

 

次回が第30回。以前の記事でもちょこっと書いたように、次回はしっかり演奏会として開催します。

チラシを作り集客も管理し、レッスン回数などの敷居も少し上げて格式を少し上げた開催となります。

これが好評になれば40回、50回と同じようなことをやる予定です。果たしてどうなるjかな。

チラシができ次第、きちんとこのブログでも告知を載せますので続報お待ちください。

 

というわけで出演者の公募は第31回以降となります。2024年11月、日付未定です。ご興味ある方は下記フォームまでどうぞ。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さてここからは恒例の講評記事となります。

出演者やお客様以外には意味のない内容となりますこと、ご了承ください。

 

1.ファゴットソナタヘ短調/テレマン

色々と吹っ切り乗り越えた演奏ができていてホッとしました。リードの問題もだいぶ解決したのかな?会場が助けてくれた?だいぶいい感じでした。

リードとは関係なく、中音域(解放F~5度上のCくらいまで)の音程感がちょっと課題かもしれません。基本的に高めにきてしまっています。それには色んな要因があるけど、たぶん運指と奏法が合っていないことから来るものだと思います。ハーフホールやフリックで出す音は口先や息ではなくまずは運指から取ること。そこに息圧やほんの少しのアンブシェアで音程を取るようにしましょう。どうしても逆になってしまうと高いほうで落ち着いて耳も慣れて来てしまいます

1楽章はもう少しゆっくりでもよかったかも。踊れないテンポになってしまうとまずいけど、フレーズ繋ぐのが少し難しいテンポになってしまったかな。アゴーギグがもう少しつくだけでも違うかも。2楽章は音の濃淡がもっとあるとよかったかも。出す音抜く音の操作というか、そこらへんやっぱりバロックなので大事だったりします。通奏低音とどうアンサンブルしているか、を考えるといいでしょう。3楽章も通奏低音の運びを意識できるとよりよかったかも。どうしてもメロディだけ追ってしまいがちなので、自分で吹いてるソロに通奏低音パートを吹いて合わせてみる(逆もいいね)とかしてみるとよかったかもしれません。4楽章のテンポ感とっても良かったと思います、Vivace感とても出ていました。アゴーギグのつけかたも絶妙で聴いていてまったく飽きのこない演奏になっていたと思います。

全体的によくまとまり安定していて、それでも飽きのこない名演だったと思います。バロック音楽の経験値もう少し積めるともっと楽しくなると思うので引き続き楽しんでみて。

 

2.ファゴットソナタ/ヒンデミット

完成度と自由度の高い名演だったと思います。ポテンシャル発揮しましたね!細かい傷を減らすには、練習のときに目を閉じて本番想定で吹いてみる、という訓練をしてみること。そこで起きた傷は本番必ず起きるので注意深く練習してみると対策が取れます。やってみるといいかもしれません。

強弱のメリハリがついていたのは良かったと思います。ただディクレッシェンドのとき、弱奏に安定感がないのが気になりました。やっぱり小さい音って難しいので、ただ絞るだけだと音程はぜったいにどこかいくので、音程を両立できない強弱はいったん封印するつもりで演奏したほうがいいです。それについてはフォルテでも一緒かも。ハモらない音はいくら鳴らしてもいくら絞っても邪魔にしかならないんですよね・・・。意識しましょう。

懸念していたピアノとのアンサンブルはうまくいっていたと思います。ピアニストの腕前もありますが、よく聴けていたと思います。フレーズの受け渡しの時に気が使えるともっとよかったです。

全体的にはやりたいことがよく見える演奏で非常に素敵でした。小さくみえて大きな傷(=音程感)が改善できればもっとよかったし、そこを重点的に気にする人ももちろんいますので大事にしていって。

 

3.サラバンドとコルテージュ/ディティー

非常によくまとまったいい演奏だったと思います。以前演奏を聴いたときの粗削りなところはなくなり、また積極的かつ効果的に表現をすることができるようになったと思います。端的に言うとすごく上手くなりました!別人クラスです。

ハイトーンへの意識があるのである程度しょうがないとは思うのですが・・・ここまでいい演奏ができるのであれば弱奏時もっと色々仕掛けられるといいですね。もちろんきちんと強弱はあるのですが、弱奏となると色が急になくなってしまうのがもったいない。普段合奏でどのくらいで吹いてるか分かりませんが、繊細な音楽表現をもっと身につけると更に良くなると思いますので色々と試してみて。

後半のリズムもレッスンの時に比べるとだいぶ良くなりました。難しいリズムが多い曲ですが、今回くらい正確にやりつつ、さらに遊びも入れられるようになると更に面白くなるでしょう。ボザやらフランセやらタンスマンやら、今やると色々発見があるかもしれませんね。

あとはピアニストとのアンサンブルももう一歩レベルが上がるといいですね!ピッタリ合ってはいますが、「共演」にはもうちょっと足りてない感じ。いいアンサンブルって乗っかるだけじゃないんですよね。

ハイFの敗因は気負いです。いい音でバシーンと決めようとすると出ないので、そこだけスッと冷静になるとうまくいきますのでリベンジする機会があればぜひ試してみて。

 

4.ムーンライト伝説

我ながら三重奏としてはかなり効果的なアレンジだと思うんだけど、そのぶん個々の技術によるところが大きく、難しくも感じたと思いますがファゴットアンサンブルって今回みたいに吹ければ可能性無限大だなーと思うんですがどうでしょうか。

楽器の鳴り方にかなり差がある3人なんだけど、そこは仲も良く合奏いっしょにやってるだけあって、いい意味で気になりませんでした。バランスよく聴こえてました。

最後のオクターブ下ソロ、聴いたら分かると思うけど出だしがイマイチなのよね。吹いてる方はたぶん気にしてないんだけど、聴けば一発でわかるはず。いわゆるソロ回しのコツは、出だしできっちり聞いている人の視線を自分に向けること。アウフタクトで優しい発音しよう、なんて思うと今回みたいになってしまいます(クラシックではそれでもいい事の方もあるけど)いい学びになったんじゃないでしょうか。

惜しかったのは、いわゆるキメどころがことごとく誰かに傷があること・・・。力むことと鳴らしにいくことは違う、というかもしかしたら全く逆のことなので、気持ちや感情ではなく技術でキメにいけるプレイヤーに育ってください。

 

5.三重奏/ヴィヴァルディ

久しぶりのアンサンブル参戦。お2人の拘りが本番でたくさん感じられるステージで、僕も楽しく演奏させてもらいました。1楽章はもう少し疾走感があればよかったかもしれません。どのくらい運ぶか僕も悩みながら演奏はしていましたが・・・。1楽章と3楽章にもっとテンポ的にも雰囲気的にも差が出せればよりよかったと思います。

フルートはもっとわがままでいいシーンが多く、オーボエはもっと歯切れよく鋭くていいシーンが多かったです。が、それも個性かと言われればそこまで。そのくらいこの手の編成は好きにやっていいんじゃないかなーと思います。

名曲、ハイドンのロンドントリオなんかもありますし、レパートリー増やしてもいいかもしれませんね!

 

6.ソナタ/グリンカ

うーん、意外と難しいですねこの曲は。絶対に独りよがりになってはいけないのですが、なかなかに・・・。吹くだけで気持ちいい曲ですから、そこでいかに理性的に聞き手のために演奏できるか、なんだと思います。技術的に難しい箇所なんてほんの数か所ですからね。

ピアノに埋もれがちの曲なのですがそこは問題なく、いい音が会場に響いていたと思います。また以前に比べて音程の改善が見られます。割と吹きやすい調であることもあるかもしれませんが。

和声をもっと感じるといいのかもしれません。緊張がどこにあって、解決がどこにあるのか。いまの和音はドミナントなのかトニックなのか。シンプルですが、それだけ頭に入るだけでずいぶん印象の違う演奏になったかもしれません。

ピアノとのアンサンブルはずいぶん意識できていました。しかし意識しすぎて少し後手に回ることが多かったようにも思います。聴いて吹く、のではなく、自分の思うタイミングを提示して結果として出る音が合う、という状態がアンサンブルです。自身のソルフェージュ(イメージとも言える)をいい意味でもっと信用して演奏するとうまくアンサンブルできるかもしれません。

もっといい意識でこの曲にのぞんでほしかったなぁ、と先生は思います。僕はこの曲大好きなのだけど、どうなんでしょうか。

 

7.2つのファゴットのための協奏曲1楽章/ヴァンハル

夫婦共演いいですね!いい意味で仲良く演奏できていたと思います。演奏においては殴り合いもいいもので、いろんな夫婦関係が垣間見えた演奏でとっても楽しかったです。

1stに関しては基礎的な問題はけっこうありそうなのでじっくり見てあげる必要はありそうです。特にアンブシェアと指遣いに関して、ちょっと色々ありそう。それはそれとしてしばらく演奏聴いてなかったけどよく練習してきたんだなと思います。いわゆる努力のできる天才型だと思いますので場数と経験を重ねていけばするするとうまくなっていくと思いますのでまた色々聴かせにきてくださいね。

2ndはレッスンで言ったように寄り添うだけがアンサンブルではないので、今回みたいに色々仕掛ける事もしてみましょう。パート振りとっても良かったと思います。お2人にとっていい演奏キャリアになったことでしょう。

2人共通で言えるのは、もう少しオケ(ピアノ)への意識があってもよかったかもしれません。シンプルな伴奏ではありますが2人で演奏しきれていない和声を担っているのでそこへの意識があればもう少し色彩豊かな演奏になったと思いますので次回また意識してみて。古典派の曲なら全部そうだと思います。

 

8.ファゴットソナタ/ヒンデミット

非常に取り回しのいいセッティング、という印象でした。非常に安定していたと思います。やはりセッティングは大事。特にこの手の繊細な表現をもとめられる曲だとなおさらです。

音程は平均点が大事、だと思うので、非常に音程のいい演奏だったと思います。逆に言うとキメどころはもう少しこだわってほしい気もしました。おおよそいい音程です。これは素晴らしいことです。また、ここまで取り回しがいいリードなら、もう少し強弱は攻めてよかった気もします。バランス難しいですね。

2楽章冒頭のブレスはうまく機能していたように聴こえます。色んな意見ありますが、最後に決めるのはご自身なので、これからもいいと思ったものを選んでいくといいと思います。

2周目以降ということもあって落ち着いたいい演奏ができていたと思います。重ねてになりますが、逆に言うともう少し攻めた場所は欲しかった、かなぁ・・・。フレーズ感も程よくあるのですが、深いこだわりは見えなかったようにも感じました。これも一つの「上手い」の形だとは思います。

次回は攻めた上で安定した演奏、期待しております。

 

9.ファゴット協奏曲2.3楽章/ウェーバー

ロマンスは技術と計算で作れる。という感じの演奏でした。褒めてます。細かく気になるところはありますが2楽章とってもよかったです。ピアノの音が入るとパッと色が出始めるのだとしたら、やっぱりファゴット吹きのサガですね。素晴らしいことだと思います。

指摘があるとすれば、とにかくフレーズが短い。フレーズをおさめる場所以外はぜんぶ繋ぎに行く、くらいでようやく普通に聴こえてくると思いますので、長いフレージングは意識できるようになりましょう。はいどうぞ、はいどうぞ、ってなぐあいに聞こえてしまいます。あとは細かい音程感でしょうか。高い音程に耳が慣れてしまわないように。音程が上ずっているけどいい音色が鳴っている、なんてことは発音体の構造上絶対にないです。

3楽章も軽妙、という日本語がぴったりの演奏でした。とってもいいイメージを持って練習できていたんじゃないかな。多少のタンギングもつれは気にならないくらいスピード感がありました。テクニックは元々あったけど、ひとかわ剥けた印象がありますが自分でどうでしょうか。こーいう演奏するためにそのテクニックはあるんだけど、理解できるでしょうか。

 

10.レチタティーボアレグロ/ギャロン

コスパ良し、を感じさせるいい演奏でした。この曲のいい演奏って難しいところを難しく聴こえさせないんですよね。まさにそういった演奏ができていました。低音域と中音域の響きがリードなのか会場なのかたまたまなのか分かりませんが非常に良く、ピアノとよく合っていました。ただLowCはどうあがいても音程上がるので、いつでも気を付けて。

アレグロ中間部の歌がとってもよかった。フレーズの作り方が本当に上手くなったなぁ。逆に言うとはじめてレッスンした頃から言い続けてることだからここまで時間かかるものなんだなぁ、と指導者としてしみじみ思います。細かいところの精度はもう少し丁寧に練習できたな、と思うけど、それはたぶん自分でも気付いているんでしょうね。

あんまり講評で言うことないかも。幅狭く速いビブラートが響きを阻害することがあるのはやっぱり悪癖だから多用しないように気を付けて。

 

11.ファゴットソナタ/レントヘン

気迫とこだわりを感じる演奏でした。会場と楽器の響きの相性なのか、かなり直で音が聴こえてくる印象でした。シーンによって善し悪しですが、そこら辺もコントロールできるとなおよいですね。いわゆるバランス感覚、というやつ。空間をどう響かせるか、が木管楽器を演奏する上で一番大事なセンスなのかも。磨いていきましょう。

音程が良かった。「音程が良い」ってやっぱりピアノと心地よく響く音程なんだな、と聴いていて再認識しました。今回の音程感覚を大事にしてほしい。合奏いくとまた鈍ると思うので、失わないように。

音程の話に近いけど、同じようなフレーズを色んな調とテンポで、ということがおおいこの曲において、シーンの切り替えがちゃんと伝わってきたのも素晴らしいと思いました。飽きずにきっちり音を頭に入れてきた成果だと思います。それは音程が良いことがもちろん条件なのだけど。それ込みで素晴らしいですね!

全体通してですが、すごくいい集中力で演奏できていたと思います。緊張してたとは思うけど、集中ってたぶん緊張の中にしか生まれないものだから今回みたいにいつも演奏できるといいですね!