ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第16回門下発表会でした。講評その他

当ブログは門下発表会の講評専用ブログです。

 

 

・・・・嘘です。本当にすみませんでした。笑

こんにちは、ファゴット奏者のとのむぅです。ほんと、こればっかりでごめんなさい。一応記事のネタは溜めてるので近々公開予定です(下書きに溜まっている)

 

 

 先日、ノナカアンナホールにて門下発表会が行われました。僕の生徒たちによるファゴットのソロ演奏、レッスンを受けてくれたアンサンブル団体の演奏による会です。

今回はここ1~2年において歴史的な(?)人数の少なさと全体時間の短さでした。

嘘でしょ、って言われるけど、本当です、ほんの5時間くらい。

この盛況っぷり、慣れてる子たちからすれば当たり前だけど初めましての人は一体どんな風に思うんでしょうね・・・。笑

でも僕はファゴット吹きがたくさんいるコミュニティが大好きなので、今後も1日中つづく発表会、やっていきたいと思っております。

 

 

 

今回はゲストとして、僕が行き先々で出会った最高に才能と腕前を持ったファゴット専攻の音大生を3人呼び、一緒にカルテットを演奏しました。近年音大生のレベルは劇的にあがっており、僕らが学生の頃では考えられないレベルの子たちがゴロゴロしていますが、今回呼んだ東京藝大の栗木典子さん、東京音大の竹村果南さん、昭和音大の古江那菜さんは特に素晴らしく、一緒に演奏していてとても楽しかったです。

近いうちにまた、一緒にお仕事ができればいいなぁと思ってます。うちの会に来てくださって本当にありがとうございました。

 

 

うちの発表会は、普段僕のところへレッスンに通ってる生徒たちのほかに、発表会前に1度だけレッスンに来て出演している人もいます。それぞれ取り組み方は違いますがそれぞれの生活の中で自身のファゴットに向き合いつづけ、素晴らしく成長していきます。

基本的なコンセプトは「レッスンを受けてソロ曲を人前で吹けば手っ取り早く上手くなるのでは?」というものですので、本当にどなたでも歓迎します。興味のある方は次回以降ぜひ、ご参加くださいね。ご連絡はこちら↓から。

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とりあえずレッスンに来てみたい!という方はこちら↓から。どっちでもいいんだけどね。

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さて、ここから先は出演者以外の方にはあまり興味のない記事になるかと思います。と、前振りをしているのですが、なんと出演者以外の方で最後まで読み切る方も少なくないんですね・・・この間聞いてビックリしました。ありがたいような、申し訳ないような。もっといろいろな方に読んで楽しい記事を載せていけるように頑張ります。はい。

では、恒例となりました各演奏ごとの講評を書いていきたいと思います。

 

 

1.演奏会用独奏曲/ピエルネ

前回はちょっと遠慮がちだった?コンビ芸も、今回はとっても面白かったと思います。人間関係をアンサンブルに反映するのも技術なのかもしれませんね。もっとやりあいたければ、必要な技術をみがいていきましょう。2人の噛み合いに関しては申し分なく、たくさん合わせをした成果は出ていたと思います。

ダイナミクスもよく表現できていました。それだけの幅があればオケやアンサンブルでもじゅうぶんに通用することでしょう。そういった意味で、安心して聴ける演奏でした。今後はその音量操作に加えて、音色の操作が出せるととてもいいと思います。具体的にはアタックの変化、ビブラート等の細かい表現がついていくとより豊かな演奏がでることでしょう。

また、アーティキュレーションについては課題が残る演奏でした。タンギングすると停滞し、スラーだと転ぶ傾向に少しずつですがあります。例えば基本的な音型(スケールやアルペジオ)を色々なアーティキュレーションで練習してみて、それを安定させていくような練習を積んでもいいかもしれません。また舌のつきかたをもう少し優しくしてみる、スラーの頭に小さなテヌートをつけるクセを身に付けるなど、技術面だけではなく表現面であらめてみるのもいいかもしれません。

 

2.ファゴットソナタ/グリンカ

うちの会でソロは久しぶりでしたね。いつも出してあげられるといいのだけど・・・。音出しの時に「ヘッケル?」と思うくらい艶と響きのある音色でした。楽器のポテンシャルをよく生かせていると思います。広い会場でどうなるか、ということも考えていければモーレンハウレルという楽器の世間的なイメージも向上していくんじゃないかと思います。

さて一方で、「いい音色」というのはすぐに飽きがきます。またシーンごとに「いい音色」というのは違いますので、場面がコロコロ変わるドラマチックなこの曲においては音色の操作がないと面白みに欠けてしまうかもしれません。ダイナミクスもそうですが、音色の操作。もっともっと豊かな表現を目指していきましょう。

 

3.ファゴットソナタemoll/テレマン

全体として安心して聴ける演奏だったと思います。表現の難しい調性と曲調であるこの曲で安心して聴ける演奏ができたことは大変立派な事であり、技術・表現ともに地力が高まったというのは確かでしょう。いい練習時間を過ごしたのが伝わってきます。

安定感がある一方、少しずつ停滞する演奏になっています。停滞の原因はたくさんありますが、音楽がおさまる箇所は上手ですが進んでいく箇所があまり得意でないようで、結果として停滞した印象に繋がっています。装飾音符などを入れるとそれがより顕著になっていきます。まず基本の音符で全体の流れを理解し、前にいくところ、落ち着くところ、を少しオーバーに表現できるようになってから装飾を入れまとめていく、という作業が必要かもしれません。カデンツァの含まれた作品に取り組むといいのかもしれません。

またタンギングが「止める」一辺倒なのも少し気になりました。触るだけのタンギングを使い分けていけると色が1色増えるような印象を受け、面白みが増すかと思います。

難しいところはよくさらいました。そこはあまり心配していなかったけど、よくさらったであろうところには音楽的な前進も感じられたので、もしかしたら難しくないところももっと「だらだらと」音を出す時間が必要だったのかも。

 

4.三重奏曲/ベートーヴェン

難曲をよくまとめていた演奏だと思います。ピアノに集合する、という意味で、ピアニストの素晴らしさが引き立つ演奏に聴こえたのは、よかったのか、悪かったのか・・・。笑

まずフルートの最初の合図、あれでは絶対に入れません。なんとか進んでくれたのはピアノ・ファゴットが大いに甘やかしてくれた結果です。動画で自分の合図を見直してみてください。そこに合図の得意不得意は関係なく、「共演する」ということがどういう行為なのかよく考える必要があります。それは基本的な曲のさらい方やフレーズへの取り組み方にも言える事かもしれません。誰と何の曲を演奏するか、は問題ではなく、その曲にどう取り組むか、そしてそれによって共演者とどんな思いを共有できるか、というのが問題なのだと思います。合図はその入り口に過ぎません。

ファゴットはこの曲をよく理解した音色とフレーズ感で演奏できていました。大変難しい曲ですからそれ自体、とっても立派な事だと思います。曲への愛情を感じました。短調の部分、もっと急激な変化が見えてもよかったかな。音色や音量だけでは限界があるので、アーティキュレーションをもっとシンプルに変えていってもよかったでしょう。

それにしても何回聴いてもピアノがうますぎる。笑

 

5.ファゴットソナタfmollより/テレマン

明らかに苦手であろうバロック作品を1回のレッスンでよくここまで仕上げました。まるで別人で、MVPもちょっと考えたくらい。もっと珍しいレパートリーならありえたかも。

楽器のポテンシャルも生きてました。自覚があるか分かりませんが、弱奏が大変魅力的でした。これは前の楽器ではできない領域だと思います。弱奏は素晴らしいので、もっと強奏に楽器のポテンシャルを生かしていきましょう。もっとドカンと鳴らしても大丈夫な楽器です。曲調のため、使用シーンは限られていたとは思いますが・・・。

またブレス前のフレーズ処理が雑になる癖があります。もちろんバテによるところは大きいと思いますが・・・もうひといき踏ん張って。その0.01秒を放り投げて休んでも何も変わりません。大変惜しい要素でした。

装飾はとってもいい感じに入っていたと思います。1回のレッスンでしたから触れることができませんでしたが、装飾は入れて終わりではなく、入れることで音楽の表現を豊かにする必要があります。派手な装飾を入れても息が入り楽器が鳴っていないと逆効果になってしまったりします。

得るものは多かったと思います。ぜひまたバロック作品、挑戦してみて。ヴィヴァルディは比較的波長が合うと思うし、ドゥビエンヌだとテレマン以上に苦手意識を持つかと思います。お好きなものを。

 

6.抒情組曲/ダンヒル

時代が時代(3年くらい前?)ならMVPものでした。なにせレッスンのたびに成長著しく、毎回僕がとても楽しかったです。僕がしばしばレッスンで言う「表現のために技術を」というやつが、まさに実現できていました。この曲を演奏するための技術がきちんと身に付いているからこそできる演奏でした。

伸びた音の扱いとその処理があまり行き届いていませんでした。今回の演奏ではそこまで気になるほどではないですが、もし合奏やアンサンブルになると、隣人や指揮者にかなり指摘されてしまうかもしれません。基本的には音は舌で止めます。音の処理というのは、舌で止める直前の音の動きによって作ります。おそらく、舌で止める前に無意識で息が止まったり遅くなったり早まったりしてしまうため行き届かなくなってしまいます。まずは無機質でいいので止めてみること。そこから処理を考えていくと、うまくいくのではないでしょうか。

また、曲ごとにたくさんのものを得ていますから、曲と同時進行でレッスンのたび1曲ずつでいいのでエチュードを持ってくるのがいいかもしれません。それほど難しいものではなくていいので、挑戦してみましょう。(きちんと)譜面を読んだ数、というのはとても大事です。

 

7.ファゴットソナタemoll/テレマン

この曲のしっとりした雰囲気をよく表現した演奏でした。レッスン時に問題だった装飾もすごく丁寧に扱えていて、バロック作品の演奏について、ずいぶん理解できてきたのではないでしょうか。すごいことです。

ビブラートも大変いいものを持っていると思います。特にクレッシェンド時、そのビブラートはとても効果的ですからもっと磨いていきましょう。ただし膨らませるビブラートは上手なのですが、フレーズをおさめるときにも同じものを使ってしまうと、聴いている側には「?」となってしまいます。幅の広いビブラートをお持ちなので、少し幅の狭めの繊細なビブラートを習得すると表現の幅がより広がっていくと思います。

似た話になってしまいますが音色の操作がもっとあるといいでしょう。柔らかくともしっかり鳴った音、硬いが小さな音、ほんの少しですが曲の表現にはとても重要なものとなってきます。まずはイメージからでいいので、使いこなせるようになりましょう。

 

8.ファゴットソナタ/ハールストン

すっかり定着しました「友情出演」。しかし、いつもこのくらい安心して聴きたいものです。笑

安心して聴ける、ということ以上に、深みと味わいのある演奏でした。特に低音の音色が曲にすごくあっていてよかったと思います。前回の発表会で全体に言った「ファゴットでいい音楽をするとピアニストがこたえてくれる」という瞬間がたくさんありました。

低音の響きに対して中音域が少し、潰れたような印象の音になっていました。リードもあるかと思いますが、意識と操作がどうにかなる範囲だと思いますので、同じリードが生きてるうちにお試しください。逆に中音域がいい音の出るリードで、今回みたいな低音域が出せる意識と操作もあると思いますからぜひお試しください。僕も基本的に演奏はリードと楽器頼りですが、最後は人間だより、だと思います。

 

9.プルミエソロ/ブルドー

ビブラートを封じた部分の音色は比較的よくなっていた、とは思うのですが、やはりその分消極的になってしまうようです。封じるのであれば、ビブラートなしで大きな表現をする練習をぜひしましょう。そのうえで正しいビブラートを習得して使えるようになっていくと表現の幅が倍増します。

やはり客観性に欠けます。「こう吹く」ではなくて、「こう響く」「こう聴こえる」というところに意識を持っていきましょう。どう響けば、どう聴こえればいいのか、というのは、美意識や人生経験から研ぎ澄まされていくものだと思います。おそらく必要なのは一種の冷静さで、全力で吹かない、というのも大切なのかもしれません。

恩のある元男性のトランぺッターが言うに「20代は女子の方が上手い。男子はどうしても力でねじ伏せようとするが楽器はそうできていない。30代になって体力が衰えてくるとようやく体の使い方を考えだして上手くなる(意訳)」とのこと。とはいえ体の使い方は今からよく考えていった方がいいかも。音楽の趣味の問題、だけではなさそう。

技術的には、ほとんどの音が速い息で吹かれていて音色の変化が見受けられません。絶対的な「いい音」なんて存在しませんから、色んな音が出せるように。速い息の音、それほど使用シーンは多くありません。

指だけ回るような演奏にならないように。人の心に響く演奏を心掛けましょう。

 

10.三重奏曲/プーランク

ある意味、室内楽としては理想形だった、と言えます。それぞれがきっちり音楽を考え持ち寄り最大限のパフォーマンスを勝手にやり、リハーサルでそれを調整し噛み合わせてパパっと本番に挑む。そしてそれが人の心に届く。ハードルの高い、またピアニストとしては技術的に難易度の高い曲を、本当に3人ともいい形で取り組んでくれました。第一声で「この曲はこのくらいやってくれなきゃね」とは言いましたが、ここまでやるとは正直思ってませんでした。まぎれもなく歴代最高峰のプーランクで、これを越える演奏が出てくるのは、本当にいつになるやら。

この曲をうちの会でやる以上、それはもうファゴット吹きが「僕の仲間でイチオシのオーボエをみんな見てください」という事でしょう。ファゴット吹きにとって、音楽的に身近な上手いオーボエ奏者というのは本当に特別な存在ですよね。

ピアノは本当によくさらってきました。きちんとヤンチャしてくれましたし、ロマンチックな音も持ち合わせているのなら、ぜひそれを最初(の合わせ、レッスン等)でやって・・!共演者の二人がそれに応えたくなっちゃう性格なのは、君が一番よく知ってるはずなのだから。うちの会でピアニストを基本的にプロに依頼するのは、ピアニストの格が上で、引っ張り上げてもらうことは単旋律楽器の奏者としてはとても大事な経験だと考えるからです。ぜひ、いつでも格上でいてくれるようなピアニストになって。

オーボエファゴットは、基本的な音の傾向がここまで違う(最初のソロのキャラクターの違いが、それはそれでとてもいいのですが)のに綺麗に噛み合わせて大変面白かった、いや、違うからこそよかったのか。しかしもっと影響し合う部分があってもよかった。音色やフレーズは共有するけれど、なんというか、楽器の鳴りが2人で違いすぎて聴いていて肩透かしを食らってしまう瞬間が何度かありました。いい奏者と共演するメリットは、自分にない音を引き出してもらうことにあると思うので、ある意味、好みとは違う領域に挑戦するいい機会だったのだと思うのですが・・・。お互い(3人で)引き出し合う感じが見られれば、MVPだった、と思います。個人技の成長がテーマの発表会だからね。演奏としては最高峰だったと思います。

 

11.組曲/ロンゴ

今回のMVP。一体何あったっていうんでしょうね。笑

派手な曲ではないのですが、それが気にならないくらい、色んな音色が聴こえてくる演奏でした。問題だったアーティキュレーションの表現やリズム感・音程感も改善するどころか、そこからいいアプローチができていて、伸びしろの大きさを感じました。ブランク明けて間もなく、ということなので、いい意味でリセットされて体の使い方がよくなったのかもしれません。今回演奏した時の感覚的なところを忘れないようにすれば今後よりレベルアップができるでしょう。

課題があるとすれば、ピアノとの絡み方があまり良くなかった。この音型のピアノに対して、ファゴットはこう演奏する!というイメージのようなものがちょっと薄かった、のかな。合わせも多くはないので、そこもやはり個人の領域でもっと考えるべきだったと思います。ピアニストに「あの、私はもっとこう弾いてほしいんです!そうしたら私はこう吹きます!」と言えるくらい。実は前回の発表会(いなかったけど)で多かった「ファゴットがピアニストの音を引き出すような演奏」というのが見られるとより良かったかなぁ、と思うところです。ピアノは弾けるんだっけ。弾いてみるのも、いいかもしれません。弾けなければファゴットで吹いてみるのもけっこう違ってきますよ。

なので次回もよかったらオケものではなくピアノオリジナル作品がいいかと思います。バロックではなく。和声的なところならヒンデミット、リズムならタンスマン(組曲)やフランセ(2つの小品)あたりが効いてくる、というか、今のままだと事故るくらいうまくいかないかも。笑 挑戦、という意味では、そのあたりはとてもいいでしょう。

 

12.ファゴット小協奏曲/ダビッド

コンチェルティーノ特有の軽さとこの曲のもつ明るさや優雅さ、とてもよく表現できていたと思います。技術的にも安定していて、うんうん、とうなずきながら聴ける演奏でした。サロンコンサートを聴いているような安心感でした。流れも自然で、必要な表情もよくついています。

が、逆に言うとそれだけに特化した演奏だった、ともいえるかもしれません。聴いた印象ほど難しくはないこの曲、もっと「聴かせる」ことにこだわってほしいポイントを逃してしまっていました。心がギュッとなるようなピアニッシモ、ゾクッとくるようなフォルティッシモ、みたいな箇所がなかったことが、残念でした。それは曲の軽さとは関係なくなくてはならないものだと思います。僕らファゴット吹きには伝わっても、それ以外の人には果たしてどうだったでしょうか・・・。もっともっと表現力を。

また速くなってからは、技術的にはいいのですがフレーズがとても短くなってしまっています。あまりフレーズについてしっかりレッスンで触れてきたことがないとは思うのですが・・・。「技術がよいが音楽がまだまだ」と評されるの、いやだと思いますから、次の機会にはそこらへんみっちりやりましょう。たぶん楽譜を見る目が変わってくると思いますし、本当に必要な技術が足りてないことにもきっと気づけるはず。


13.パパゲーノの歌/モーツァルト

直接も言いましたが、きっちり音出しをしましょう。本番(実際の演奏開始)までの時間の使い方をもっと考えて。今回、到着がバタバタしてしまっていたので大変だったとは思うのですが・・・・そんな時にこそ考えなくてはならないことです。ほんとうに時間がなければ、ステージで堂々と長々と音出しをするようなふてぶてしさがあっていいのです。ここは演奏会ではなく発表会。お客様より演奏者が大切なのです。

しかし課題だった音のツボや音程に関して、すごく良くなりました。習得しつつあるのはレッスンでも感じていましたが、最後のレッスンから本番まででもずいぶん良くなったようですし何より本番でそれを発揮できたことは素晴らしいことです。度胸もついてきたのでしょうか。

曲の持つ雰囲気のようなものも伝わってきてよかったです。ひょうきんで明るい曲調をよく表現できていました。朗々と歌い上げるような部分はもっと迫力があってもよかったですが、この曲でそれをやるのはなかなか難しいですね・・・。

次回はぜひ、技術的に「えっこんなの私には吹けない!」というものに挑戦しましょう。いえいえ、吹けますから、大丈夫ですよ。シュターミッツの協奏曲の1楽章、ぜひ聴いてみてください。

 

14.ファゴット協奏曲/シュターミッツ

世にも珍しいシュターミッツ全楽章。聴いてるほうはどうなるかと思いましたが、君の演奏がよかったためまったく飽きることがなく聴けました。いい曲じゃん。

僕の教えた事とは関係なく、力の入れ方、抜き方が上手くなったと思います。年齢とともに力まかせが効かなくなってきて、覚えるべくして覚える技術なんでしょうね、同世代なので僕もとてもよく分かります。シュターミッツとしても、君史上としても、本当に稀に見る名演だったと思います。やはりソロ曲にたくさん取り組むと楽器はうまくなる。

さて課題があるとすれば音色でしょうか。いや元々いい音吹いてるのですが、もっと操作が欲しい。いや操作も上手いと思いますが、「明るい」「暗い」「大きい」「小さい」はとても上手いですが、それだけで完結してしまっています。例えば「苦しい」「気持ちいい」「しっとり」「からっと」「ずっしり」「かろやか」なんて表現を取り入れていくと、もっともっと表情が豊かになります。そしてまた必要な技術が増えていきます。楽器、どこまでも上手くなれますね。

僕から見ても反則みたいに上手い新しい子が増えていく中、君がきっちり長男の貫禄を見せつけてくれると、本当にうれしく思います。手前味噌ながら、この会の存在の素晴らしさを感じずにはいられない。

 

15.協奏曲"不死鳥"/コレット

16.テキーラ/リオ

今回のゲスト枠としてお呼びした、音大生3人と僕とで四重奏を演奏しました。

3人とも、本当にそれぞれ抜群の才能を感じる子たちで今後が本当に楽しみです。僕が当時のまま今大学4年生だったら、こんなレベル高い中楽器なんて続けようと思えないくらい、凄まじい限りです。若い子たちに刺激を受けて、大変にありがたい時間でした。

3人とも本当にありがとうございました。今度はオケ等でぜひご一緒しましょう。

 

17.オーケストラ難曲集より/エールベルガー

自分で演奏しました。曲名表記に不安あり。笑 でもいい譜面でした。反省点多々ありますが、ちょっとでも「おっ」と思ってくれるところがあれば嬉しいところです。この2曲以外にもあと4曲ほどあります、が、譜面が手に入りにくいようなので興味のある人は言ってくれれば見せますよ。

余談ですがやっぱりベートーヴェンは4番が一番いい曲だと思います。とりあえず聞く分には。

 

18.2本のファゴットのためのソナタ/モーツァルト

色んな意味でハードルは高いよ、と脅しておいたはず。笑

良くも悪くも2人が全然違うタイプのファゴット吹きなのだから、もっともっと影響しあってほしかった。同じような音を出す必要も同じ方向を向いて演奏する必要もないけど、「あなたがそうすならわたしはこう」という語らいが見えなかった。個人戦×2、という印象でした。音程もリズムもあってはいるのですが。それは2人の関係性がどうこう、というよりはそれぞれの持つアンサンブルへの意識の問題なのだとは思いますが・・・。

「もっと殴り合え」と言った箇所に関しては、よかったと思います。その音楽的な「殴り合い」が「語り合い」だったり「口喧嘩」だったり「仲直り」だったり「一方的な蹂躙」であったり、色んな形に変化していくと、僕たち(僕と相棒)のようになっていくんじゃないかな。リスペクトしてくれているかどうかは、知らないけれど。笑

とはいえ、体力的にもきついし音楽的にも技術的にも実はとても難しいこの曲を本当によく演奏していました。楽曲の完成度としては相当高かったと思います、そのぶんデュエットとしてもっと面白ければ、最高だったのだけど。

 

19.ロマンス/エルガー

いやー聴かせるのが難しい曲ですねこれは。味と深みのあるいい演奏でした。持ってる音色にもピッタリで、ある意味プーランクよりずっとハマり役、という印象でした。

音楽の流れもレッスンの時よりずっとよく、気まぐれでアンニュイなところはよく表現できていました。が、恐らくオケだと合わせられないような箇所も多かったかなと思います。ピアニストは見事につけてくれていましたが、そういった箇所は音楽的な流れも止まってしまっているので惜しかった。でも、僕もあんなにピッタリつけてくれたらあのくらいやってしまうかもしれない。笑 やってから、あ、これは、ちょっとないな、と反省するような感覚。聴いていると、それ自体は悪くは感じないのですが、いちおうこれは講評なのでね。

と、技術的には、音色が一辺倒なのが気になります。この手の曲をよく聴かせるには、いつもの音とは違う音色を押し入れから引っ張ってくることも必要だと思います。そーいう挑戦がそろそろあってもいいのではないでしょうか。リードの方向性、咥える位置や角度、運指の選択、もちろん息の入れ方や唇の締め方や緩め方。必要な材料は持ってると思うので、もっともっと色んな音を出そう。みんなの思う「君の音」なんて、どうでもいいのだから、曲の表情によってもっと色んなことに挑戦してみて。それでこそ、今持ってる音も映えるというものだ。

 

20.クリスマスパストラーレ/ジョリヴェ

パストーレ、って何でしょうね。ごめんなさい。

そういえばこの曲は発表会では初登場、ですか。はじめて聴く人も多かったのかな。原曲ハープだから、とピアノでは敬遠しがちですが、これはこれで、アリだと思うくらい本当にいい曲ですよね。

前日の合わせ・レッスンで大変だったと思いますが、逆に前日だったことでよかったこともあった気がします。

まず2人の持つ音の特徴がとても相性がいい、というのが今回の演奏の良さだったと思います。フルートは中低音の太い音、ファゴットは線の細い音で歌う力に優れていると思いますが、その2つがハマる瞬間がとっても心地よかった。

2人で一つの線を描くシーンの多いこの曲をやるには、合わせが足りなかった、という事なのか。もう一息でした。でも2人どころかオケなんかだと100人で一つの線を描いたりしますから、今回の経験をぜひ今後に生かして。「繋いでいく」というより「紡いでいく」ということなのかもしれません。

アンサンブルを1曲演奏する、なんて、うまいメンツをそろえるだけで7割は成功です。あとの3割なんて、大した問題じゃぁないんですけどね。そのための人徳と腕前なのだと思いますよ。

 

21.木管五重奏曲「アメリカ」/ドヴォルザーク

奇跡の連続。笑 本当によくズレずに最後まで。

5人それぞれの平均をいくと、そこまで深い付き合いじゃないはずなのですが・・・。「合わせが楽しい」と5人口をそろえて言っていたことも考えると、今回あったのは音楽ではなくて、5人とも、1人より人と演奏してる時の方が腕前が発揮されるタイプ、なんだと思います。そういう意味で、相性がよかった。他人に影響されすぎるのも、実は考え物だったりするのですが・・・・・今回はうまくハマりました。という意味でも、奇跡。

課題は言うまでもなく、1人1人がもっともっともっと上手くなること。本当に、失礼な言い方ですが唯一キッチリ吹いてくれるホルンが調子悪そうでどうなるかと思った・・・。5人全員がきちんとやるべきことをやって実力を上げて再結集したら、今回の5倍は楽しい。それは絶対。そして本来楽器というのは、それを目的に上手くなるべきだと、僕は思いますよ。上手くなるのに時間はそれほど必要ではないですから、ぜひまた近いうちに同じメンバーで。

1個前の講評でも書いていますがアンサンブル本番の準備なんて人事で7割が完結しているのです。「うまいのを集めりゃうまい、そしてそれが楽しいしそれ以上なんてない」と皆に言ってきましたが、ごくまれに例外的にこーいうこともある。あるから、楽しいんだよなぁ。

 

22.5つの民謡風小品より/シューマン

MVP悩みました!定義が「伸びしろ」で選んでいますので外しました(レッスンの時がうますぎた?)が、曲の良さを引き出す、という意味では一番でした。ピアニストとの噛み合いも抜群です。かっちり合わせてくれるピアノですが、ファゴット側からのアプローチも素晴らしく、アンサンブル部門!って感じでした。

この曲もそうですしピエルネやロンゴ辺りもそうなのですが、レパートリーとしては定番でも僕はやらないし勧めもしない曲たち、皆がいい演奏してくれることで僕が考えをあらためる事になってます。私事ですがいまリサイタルの選曲中で、この曲が入ってきています。どうなるかは分かりませんが・・・。

技術的にも音楽的にも非常に完成度が高く、何よりも音色の操作が2人ともとてもうまかったと思います。これだけの事ができるなら、今はこのクオリティでたくさんのレパートリーに挑んでいくことが大切だと思います。フランスものだとまたアプローチが違ってくるし、バロックや古典だと新しく覚えなきゃいけないことも多いです。どこまでレベルが上がっていくのか、今後ともすごく楽しみにしています。

 

23.朗唱、シチリアーノとロンド/ボザ

もう1曲が大変だったのがよく分かって、しまいました。笑 気持ちは分かりますが、複数個乗り番をかかえる、というときに大事なのは「こっちが大変だから仕方ないね」ではなく、平均点勝負をすることです。今自分はどっちがどのくらいやばいのか見極めて準備の時間割を決めること。楽器が違えばなおさらです。この曲だってソロではなく、ピアニストのデュエットなのだから。

音楽でやんちゃをするセンスと技術的な材料は持っているようです。それはもっと即興的に、日常的に使っていかないと磨かれませんから、今度は最初からそれを聴かせて。気まぐれな性質の作品なら、なおさら重要なことになってきます。

ハイトーンは、出なければ「残念!」としか思いません、が、ちょっと苦手意識が強くなってますね。まず、今はCより上の音を綺麗に出そうと思わないこと。出れば御の字、その先はまだまだあなたには早いようです。汚くとも安定して出るようになって、それが複数本のリードでこなせるようになって、綺麗に出すのはそこからです。高望みが時期尚早なのです。

また、フォルテもピアノも音色の変化が見受けられないのも気になります。小さな音!ではなく柔らかい、かすれた、悲しい、苦しい、など、大きさではなく色や形を意識するとより音楽表現が豊かになると思います。

 

24.ファゴット小協奏曲/ベルヴァルド

バテましたね。分かってはいたけど、省エネで言って、かつバテて、というのは聴いている方には惜しい、という印象を感じずにはいられません。ところでその省エネは本当に省エネできているんでしょうか・・・?もっと攻めていた方が意外とバテなかったのかもしれません。体力面についてはいろいろな考え方がありますが、疲れても吹ける、という技術は、疲れることから逃げていては身に付かないのかもしれません。疲れないように疲れないように、という対策が、逆に自分の首を絞めていることもありそうです。もっといろいろ試してみて。

音色、というか楽器の鳴らし方がいい意味でソリスティックになりました。これは大変素晴らしいことで、大きなホールでもきっと美しく音が響くようになったでしょう。フレージングもよく考えられていてよかったと思います。

中音域の音程について、もう少しきちんと向き合いましょう。音程を取ることで楽器はもっときちんと鳴ってくれます。表現のために音程を犠牲にしないようにしましょう。

レッスンの時は曲との相性が悪すぎてどうなるかと思いましたが終わってみればハマり役に聴こえてきたのは、きっと大きな成長を遂げたという事なのでしょう。似た傾向?の曲にクルーセルなんかもありますのでどこかで挑戦してみてくれると嬉しいです。

 

 

講評、これで終わりです。

今回は初めましてのファゴット参加者がいなかったのがあるのか、いい意味で安心して聴ける演奏が多かった印象でした。別にレベルの高い会を目指しているわけではないのですけれど、続けていくとやはりみんな本当に上手になっていきますね。本番を聴いていて一番楽しいのはやはり僕なんだろうなぁ。

参加者の皆様、本当にお疲れさまでした。また皆さんの演奏を聴けるのを楽しみにしていますね。

第15回門下発表会でした。講評とか合宿開催のご案内とか。

こんにちは。「ブログちゃんと更新して」といよいよ生徒に怒られ始めているとのむぅです。暑くなってきましたが、みなさんどうお過ごしでしょうか。僕は暑さに弱いので完全にへばっています。温暖化・・・

 

さて、先日、僕の生徒の門下発表会がありました。早いもので今回で第15回だったんですね。今回は全体的にレベルが高く、会場中が唸るような演奏がたくさんありました。また「初心者」と思われていた顔触れが全くそれを思わせないレベルの演奏を披露してくれたことも、全体のレベルの高さを印象付けてくれました。毎回のように個人がレベルアップしていくと、当然全体のレベルも上がってきますよね。当然と言えば当然なのですが。

今回はサンサーンスソナタを演奏した2人がソロ部門、ピアニストを連れて参戦したピエルネをアンサンブル部門のMVPに選びました。サンサーンス組は最後のレッスンでも曲の美しさと難解さにやられており、課題を多く残していたのですが・・・本番はそれを乗り越え余りあるような演奏を披露してくれました。ピエルネは「息の合った2人」という領域で他の追随を許さない演奏でした。最近ではMVPを意識した演奏をする子もいるようですが・・・たぶん狙って取れるものではなく、それぞれが精一杯演奏に向き合い、それがうまくいった結果でしかないのかな、と思います。

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それにしても、一人残らずレッスンの大きな成果を感じた発表会でした。出演者が僕のところにレッスンにくる回数は1回~5回くらいと幅があるのですが、回数に見合った成果が出ているようにも思えました。やはり「きっちりレッスンにきてソロ曲を本番で吹けば飛躍的に楽器がうまくなるはず」というこの発表会のコンセプトは間違ってはいないようですね。曲をさらうことで得た技術や練習方法を普段の合奏等にも活かせれば幸いです。

 

さて少しご案内を。僕の主宰するファゴットアンサンブルイベント団体「トッポの会。」では毎年合宿を開催しています。僕ともう1人の講師である松本静香さんの個人レッスンとその成果発表会、アンサンブルの練習とレッスンによる発表会を中心とした合宿で、全国から毎年10人以上のファゴット吹きが集まり楽しくやっています。今年は8月10日(土)~8月12日(月祝)の3日間で、静岡県で開催されますので、興味のある方はぜひご参加ください。応募締め切りは7月いっぱいまで、と少し急なご案内で申し訳ないのですが・・・。

詳細のご案内とお問い合わせ・参加申し込み窓口についてはトッポの会。のTwitterアカウントをご覧ください↓

https://twitter.com/toppo_bassoon

 

また次回の門下発表会のご案内です。

2019年11月17日(日)お昼ごろ開演

ノナカ・アンナホール(渋谷駅より徒歩5分)

参加費(レッスン代1回分、ピアニスト謝礼込み)

 ファゴットソロ(学生)10000円

 ファゴットソロ(社会人)14000円

 アンサンブル(1人)6000円

ファゴットソロ、もしくはアンサンブル(他楽器可)団体でお申込みください。レッスンを1回以上受けてくださればどなたでも出演できる発表会です。ご応募は↓から。お待ちしております。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さて、ここから先は演奏ごとの講評となります。参加者の方以外には関係のない記事となってしまいますことをご了承ください。

 

1.ファゴット協奏曲第1楽章/シュターミッツ

初参加お疲れ様でした。曲選びのとき「様式を学びたい」と言ってこの曲を選びましたね。この曲で学んだフレーズ管理はどんな曲でも生かせる要素なのでぜひ今後の演奏に役立てていってくださいね。

課題だったトリル周りもよく練習してきました。必要なコントラストもきちんとついており、まれにみるハイクオリティのシュターミッツだったと思います。

さてそのコントラストについてですが、音量やタンギング等による変化はたくさんついていますが、それでも、どういうわけか全体的に同じ調子に聴こえてしまいます。厄介な音型でもあなたの持っているいい音色で演奏できているのですが、悪く言えばいつでも同じ「いい音」で演奏してしまう傾向にあるようです。太くてよく鳴るいい音を持っていますが、それだけでは聴いている人に音楽の変化を伝えきることはできません。音色の変化について、もっと研究していきましょう。とある音楽家が「いい音を出すにはいいメロディをたくさん奏でることだ」と言っていますから、今後いろいろなレパートリーに挑戦していくことで得られることもあるのかもしれません。

あ、初参加あるあるですが、礼はピアニストと合わせてしましょう。ピアニストが立ち上がるのを待ってから。地味ですが共演者への礼儀として、とても大切な事です。

 

2.ファゴット協奏曲2.3楽章/ロッシーニ

技術的・音楽的に、課題である安定感はついてきたんだと思います。ロッシーニというある種独特な世界観を持つ音楽をよくとらえて演奏していました。また音色の操作とダイナミクスの変化が良く噛みあっていて、コントラストのついた演奏になっていました。

さて、それでも今回の演奏は心に響く演奏にはほんの一歩及びませんでした。いつもよく練習してきますし、練習の仕方もそこまで間違ってないと思います。では何が問題なのでしょうか。おそらく「客観性」の欠如だと思います。今のあなたのしかける音楽は、少し極端だったとしても間違っていない事が多いのですが、聴いている側には心地よく伝わりません。今後は聴いている側にどう伝わるか、ということに重きを置いて演奏しましょう。そのための技術と感性はもう持ち合わせているはず。

さて3楽章のテンポ感についてですが、レッスンで「転んでいるよ」と伝えた場所が少しずつ悪さをして速くなっています。逆にそこに気を付けていれば後半もどうにかなったでしょう。ピアニストは素晴らしく合わせてくださっているので、「これはまずい」と思ったら大胆に調整するくらいの度胸はあってもよかった。CDで聞くようなテンポ感を実演するのはあまり現実的ではありません。「やりたいテンポでやる」というのが必ずしも聴いている側にとって心地いいテンポ、とは限りません。この手の難しい曲をやるのであればなおさら。

また強奏が基本的に乱暴です。これも「聴いていてどうかな」という意識から改善していけると思います。あなたのファゴットで人を心地よくしてあげられるようになりましょう。

 

3.ディベルティメント/ハイドン

ある種、人前で挑戦するにはハードルの高い作品ですね。1楽章の最初のテンポ感は悪くなかったのですが・・・2拍子としてのカウントが足りてないのでどんどん遅くなっていきました。全楽章を通して、レッスンでさんざん指摘した「語尾」の処理ができていませんでした。趣味の問題、という領域を越えて、古典派作品には「やってはいけない処理」というものがあります。せっかく人にならって木管五重奏を演奏しているのですから、「うーん」と思った指摘を自分の納得いくようにかみ砕く、くらいの気概が欲しいものです。

また1人1人が楽器の鳴りについてもっと敏感であることが大切です。5つも違う楽器が集まっているので、バラバラな鳴りに気づかず進みがちです。常に「どう聴こえているか」「あの人はどう吹いているのか」ということに神経を使いましょう。違う楽器の人の意見こそ、自分にとって最適な指摘であることはよくあることです。長い付き合いであれば、なおさらです。

 

4.バロックスケッチ/スモーリー

小編成の演奏時、チューニングは必要がなければ省略したほうが聴いている方は心地がよかったりもします。どこかでお試しください。

バランスが悪いです。レッスンでも指摘したファゴットのよく悪くも「いい音」に対してヴァイオリンの鳴りが悪い。ファゴットコントラストがほとんどないし、ヴァイオリンは弓の音が聴こえてきません。何もかも違う2つの楽器なのですから、鳴りの違いにはもっと敏感でいないといけません。基本的にはヴァイオリンの旋律とファゴット通奏低音で構成されている作品なので、バランスが悪いと聴いている側はどこに耳を傾ければいいのか分からなくなってしまいます。もっと自分たちの演奏を客観的にとらえましょう。「仲がいい二人の二重奏」というのはある種、すごく高いハードルが用意されてしまいます。「仲がいいのに合わないの?」と言われてしまわないように、1人1人がもっと技術的に足りないものを得られますように。アンサンブルなんてしょせん個人技次第です。

繰り返し後に装飾を入れるのはいいと思います。が、「なんかごにょごにょとやったようだ」と思われるような装飾は逆効果です。入れた装飾はすべて一瞬の超絶技巧です。付け焼刃にならないように。

ファゴットはやはり独学の限界を感じます。おそらくあなたより技術的に格下であろう子たちが立派に演奏しているのを聴いて、なにか思うところもあったのではないでしょうか。楽器はうまく吹くのが一番面白いです。ご連絡お待ちしてます。

それにしてもこの曲、よく見つけてきましたね。何人かの知人に聞きましたがこの曲を知ってる人は1人もいませんでした。曲に対して想いはあったんだと思います。僕にはそれは伝わってきますが、他のお客様にはどうだったのでしょうか。想いを形にするのが技術です。

 

5.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

聴き映えのする作品、ということを差し引いても名演でした。力任せだった部分がなくなりました。色彩感もとってもよく出ていて、聴いていて心地よかったです。低音~中音はかなり良いのですが、五線の上あたりから、少しピッチが不安定なようです。楽器のハンデがあるとは思いますが・・・もう少し気を使いましょう。

速いパッセージのとき、最初と最後はいいのですが真ん中の音がすっ飛ばされて聴こえる事が多いです。運指が簡単な部分こそ丁寧に練習しましょう。和声を決定づけている音を特に丁寧に。そうすることで見えてくるフレーズの歌い方もあるはず。

中間部、オブリガードに回るところのバランス感覚は本当に素晴らしかったと思います。オケだとバランスを取るのに必死ですが、ピアノと1:1だとそういった箇所もたくさん歌えていいですね。

少しコントラスト不足でした。弱奏部はじゅうぶん綺麗だったのですが、強奏部はもっと荒い音があってもよかったのかも。荒い音を力任せではなく出す、というのを今後身に付けていくといいのかも。

 

6.ファゴットソナタ/ヒンデミット

息の合った二重奏、に聴こえました。本番は。笑 ここまでくるためにしてきた技術的な問題のクリア、というのが、アンサンブルをやる上で共演者に見せることができるたった一つの誠意なんだと思います。簡単じゃないですね、人と合わせるということは。

楽器の性能の活かし方がよく分かってきたようです。もっと楽に吹けるリードでも楽器はじゅうぶんに鳴ってくれますから、試してみましょう。リードを選ばずに済むのがいい楽器の特徴です。

「絶対にキメて!」と言った音程箇所、まぁなんとかなっていました。キメるためにはその前をきっちりと。よく理解し取り組んでいました。

それにしても難しい曲ですね。よく理解し取り組んでいますが、もっと音楽的にアンサンブル的に攻めた箇所が聴きたかったです。合わせる事、理解することに精一杯、という印象でした。そこまでいければアンサンブル部門MVP確定でした。

とにかくピアニストというものは音楽家としてぜったいに格上です。格上の共演者を生かす、ということに執着するというのはオケでも同じなはずですから、今後合奏への取り組み方も変わってくるのではないでしょうか。

 

 7.ファゴット協奏曲1楽章/ウェーバー

初参加お疲れさまでした。ファゴットだらけのおかしな環境の中、ステージさばきが堂々としていてとてもよかったですね。

ある種お手本のような、正統派の演奏だったと言えます。基本的な楽器の鳴らし方はかなり定着してきました。作品の魅力もじゅうぶんに引き出せています、とんでもなく難しいパッセージが少しずつできるようになっていく感覚、自分でもずいぶん面白かったのではないでしょうか。本番でできたかどうかは、まぁ、ともかく。笑

さて、一方で、良くも悪くも優等生すぎる演奏だった、とも言えます。聴いている方がいい意味でドキドキハラハラするようなシーンは1か所もありませんでした。それは安定している、とも言えますが、仕掛けが少ない、とも言えます。もっと自分で思う音楽を外に出して。レッスンで出してくれれば、それが素敵なのかおかしいのか、きちんと教えてあげられます。どこまで守りに入った演奏でも、ミスは必ずおきますから、それなら攻めの姿勢を取りましょう。ダイナミクスのレンジも、まだまだ十分とは言えません。まだまだ始まったばかりです、もっとファゴットを面白く吹けるようにまた一緒に頑張りましょう。

 

8.ファゴット協奏曲2.3楽章/ウェーバー

以前からそうですが、音楽への取り組み方が僕はとても好きです。守りに入るようなシーンがなく、聴いていて飽きのこない演奏ができる、というところはあなたの最高の長所です。大切に育てていきましょう。

さて基礎的な話になりますが、ビブラート(震え?)が少しおかしいようです。まず小刻み過ぎること。あまり効果的に響いてはくれません。まず真っすぐ丁寧に音を出し、その加工としてビブラートを用いる、ということに執着すると、もしかしたらしばらくビブラート禁止で練習するといいかもしれません。本来持っている楽器のいい響きがかなり殺されてしまっています。せっかく面白い音楽を出そうとしているのに、自分で遮ってしまっています。これはもったいない。ちょっとリードも合わないのかも。響きが下がりすぎる割にキャパの狭いリードになってしまっているようです。

また、水が詰まったまま演奏するクセは大変に良くないです。ボーカルの水だけ抜いても無意味ですから、きちんとトーンホールから抜きましょう。本番前にきちんとスワブを通すのも大事な事です。水が水を呼びますから、習慣が大事です。

3楽章はよく練習してきました。技術的に不安を感じる箇所は少なく、この曲でそこに至れたのは凄いことです。が、コントラストはほとんど伝わってきませんでした。連符へのコントラストは後付けしようとすると結局付けません。必ず遅くさらっている時から丁寧に仕掛けをしていくのです。指と舌が動くことに満足しないで。とてももったいない演奏になってしまいました。

 

9.ファゴット協奏曲1楽章/ウェーバー

レッスン不足はこちらにも責任がありましたが・・・。その割に、自分でよく考え練習したのだと思います。初めて会った時から指摘していた単純な練習方法についてはもう心配しなくても良さそうです。曲についてもよく理解しよく考え演奏できていたと思います。細かいミスがあまり気にならない演奏でした。

音が出てから音程を探るクセがあるようです。聴いている方にはかなり印象が悪いので気をつけましょう。出た音をただ伸ばす、というのも大切なことです。

ウェーバーの必修事項である速いタンギングは残念ながら身に付かなかったようです。なんとか追いついてはいるのですが、残念ながら「ヴィルティオーゾ」には聴こえないタンギングを最後まで用いてしまいました。この辺は準備不足が出てしまいましたね・・・。

ところで、ソロの時とアンサンブルの時で音の質が全然違いますね。ジャンルの問題もあるようですが、アンサンブルで真価を発揮するタイプのようです。それはとても素敵な事なのですが、アンサンブルをよりうまく(楽しく)やるには個人技を身に付けるほかありません。もっとあなたの音を光る手段を模索して。センスでねじ伏せてしまわないで。

 

10.ファゴット協奏曲/ウェーバー

ドレスが良く似合っていますね。さすがに着慣れてきた、というところでしょうか。

伸びやかな音がこの曲をより輝かせていました。技術的な安定感がきちんと音楽への表現へと生かされていて、大変好印象な演奏です。

歌う箇所についてもよくできていますが、おそらくまだ自分の中で飲み込めてないフレージングがあり、精度が高い演奏だからこそそれが目立ってしまう印象でした。2楽章を中心に、もっと研究というか音を体に入れるような作業があるとよかったのでしょうか。

いつもながらと言いますか、さすが、といいますか、とにかく安定した印象であるのですが、ある意味で惰性のようなものを感じる箇所も少なくありませんでした。7人連続、ということは関係なく、どこか「なあなあ」な部分があったのではないでしょうか。よく知った作品だからこそ丁寧な、あなたのファゴットで聴きたいものです。「はいどうぞ」だけではなく、「どうだ!」「どうでしょうか?」「要ります?」みたいなアプローチがあったらもっと面白かったな。

 

11.ファゴット協奏曲1楽章/ウェーバー

直接話しましたが、とにかくステージ上での笑顔が素敵でした。実は僕もソロのステージってどうにも嬉しくってしょうがなくなってしまうので、心情がよく分かります。ある種の開き直りでもあるのだけど。笑 メンタル面をすごく心配していたのですが、とても演奏者向きの性格をしていると思います。大事な長所です。

「雑なところをなくせ」と、とにかくレッスンで指摘し続けてきました。30点の音を出すな、雑に練習するな、違う、そうじゃない、など、引き算のレッスンが多かったこと、少し僕も反省しているのですが・・・。でもどうやら効果はあったようで、恐らく本番のような演奏をレッスンでしていればいい具合に足し算のレッスンが始まったと思います。悪い癖がたくさん抜けてよかった。

しかしながら、この曲で習得すべき「速いタンギング」はまだまだ安定しませんでした。止めるタンギングだけでは速度は出ません。そのための練習の仕方も教えたはずなのですが・・・定着しなかったようです。そこが残念でした。どの曲でも使えるアプローチだと思いますので、また別の作品で習得できるように頑張りましょう。

 

12.ファゴット協奏曲1楽章/ウェーバー

色々なウェーバーをさんざん聴いたあとの演奏、プレッシャーはあったと思いますが、ステージ慣れによるものなのか、堂々としていて素晴らしかった。楽器のポテンシャルも生きてきて、いよいよ「上級者たち」の入り口に立った印象でした。この曲は難解な箇所が常に重要箇所で、目をつぶっていては曲の魅力が一切発揮されないのですが・・・。難解な箇所、本当によく練習しました。どのくらい時間をかけたかは知りませんが、いい時間を過ごしたことと思います。

課題としてはタンギングの種類が一辺倒であること。決して痛いタンギングを用いているわけではないのですが、元々音量の変化に乏しい楽器なので、タンギングの種類での印象操作がとっても大切になってきます。発音の強さ、弱さに実際の音量を掛け合わせてようやく変化が聴いている人に伝わります。強いタンギングを覚えると共に、実体がないくらい柔らかいタンギングも覚えればもっと豊かな音楽表現がのぞめるでしょう。

この曲に必要な「速いタンギング」はじゅうぶんに習得できています。理論上、これでもうどんな作品でも吹けます(さらえます)から今後が楽しみですね。

 

13.ファゴット協奏曲2.3楽章/ウェーバー

誰が聴いても分かるコントラストの変化がとにかく魅力的な演奏でした。少し粗削りではありますが、そこまで変化をつけていても決して過剰にならない、というのは素晴らしい感覚を持っているからです。2楽章、3楽章ともにその感覚がいかんなく発揮された演奏でした。

2楽章のカデンツァは少し遅い方に仕掛けを作りすぎです。伸び縮み、という言葉がありますが、伸びっぱなしでは魅力的でないので、縮む方ももっと。

3楽章もコントラストは見事でしたが、簡単な指ほど転び鳴らない、トリルがやたら大きく前後が小さく聴こえてしまうなど、客観性に欠ける箇所が少なくない演奏になってしまっていました。技術的には克服できていたので、より丁寧な練習を心掛けましょう。結局のところ積み上げた分しか人の心は動かせないものです。

弱い方のダイナミクスで音程がブレないのは素晴らしいので、強い方のダイナミクスでも音程をもっと気にしましょう。油断が見えます。

 

14.ファゴット協奏曲1楽章/シュターミッツ

脱・初心者、と褒めるのが失礼なくらい立派な演奏でした。この曲をあのクオリティで吹けるようなレベルのファゴット吹き、そうたくさんはいませんから、ぜひ自信を持ってくださいね。

古典派特有の「ルール」みたいなことと技術面を中心にレッスンしました。どちらもかなりハイレベルにクリアしていますが、発音が「すごく強い」か「ほぼ前の音とつながっている」のどちらかになってしまいます。楽器のコントロールがまだ難しいとは思うのですが、自分の発音する音が音楽に適しているかよく聴きながら練習するようにしましょう。

コントラストも十分についていますが、弱い方がもっと広くなるといいと思います、特に合奏においては楽器のポテンシャルが悪い方に発揮されがちな状態です。今は目指す「いい音」を、楽器の鳴りだけでなく溶ける音を意識するといいと思います。

運指が複雑な箇所(音域が上がってくると特に)で少しぼろが出るようです。ギリギリそれらしい音は出るのですが、おそらく指を間違ったままなんとかしている、という印象の箇所が少なくありません。この曲はまだその手の音域が多くはないのですが・・・オケだとそうもいかないでしょう。Fより高い音を出し慣れていきましょう。スケールの3オクターヴ目もぜひ少しずつ慣れていきましょう。

 

15.ファゴットソナタト短調より1楽章/ドゥビエンヌ

もっとも心配なメンツの1人だったのですが・・・。予想外にハイクオリティでビックリしました。ピアニストのリアクションももっともです。

コントラストがハッキリついていてよかった。音質を損なわない強弱、というのは簡単ではないのですが、この曲を練習するうちに身に付いたようです。難しい箇所もよく練習したのがわかる名演でした。それがバテているはずの後半でも安定感を失わないのはいい練習をしたからだと思います。今回つかんだ日に日に「できるようになっていく」快感を忘れず、今後出会う譜面すべてに今回のような時間の使い方ができるように。

一方で、仕掛けとしての強弱はよくできているのですが、フレーズとしての強弱といいますか、音楽の濃淡みたいなものが見えづらい傾向にありました。安定しているけど、悪く言うと単調な演奏に聴こえてしまいます。そこまでレッスンで立ち入る余裕がなかったのは確かですが・・・。単純に短調の部分は暗く、長調の部分は明るく、といった具合に、音符から伝わる音楽をより映えさせるような工夫がもっとできるとよかった。でもこれは壮大な高望みであると思うので、そんな高望みができるレベルの演奏だった、と思います。この演奏が自信になりますように。

 

16.ファゴットソナタ1楽章/グリンカ

グリンカソナタ、うちの発表会では人気が高くよく演奏されていますが、歴代最高のクオリティだったんじゃないか、と思います。技術的、音楽的に本当に高いレベルの演奏でした。何よりこの曲特有の美しさ、妖艶さみたいなものがよく発揮されていました。コントラストが心地よくついており、決して過剰ではなく、聴いていてうっとりするグリンカソナタでした。

レッスンで課題とした後押し(による聞こえ遅れ)もかなり改善されていると思います。今の吹き方で合奏にのぞめば変な指摘は受けずに済むのではないでしょうか。一方で、ピアニストと1:1の室内楽としては少し魅力に欠けました。合わせ1回でピアニストとの対話まで持って行くのは難しいとは思うのですが・・・まだ「人見知り」という印象が抜けません。ピアノによく乗っかってはいますが、自ら運ぶようなアンサンブルは聴こえてきませんでした。例えばこの手の曲なら、正面と言うよりは斜め前を向き、視線ひとつでピアニストの顔を見れるような向きで吹くといいのかもしれません(僕は基本的に何の曲でもその立ち位置で演奏します、ピアノを聴くのがあまり得意でないので)

また音色が、強奏時に少し開きすぎてしまうようです。まとまった強い良い音を持つとその音は1500人のホールの端までよく飛んでいきます。ぜひ意識してみてください。

 

17.ファゴットソナタ2楽章/グリンカ

譜面としては世界初演、でしょうか。ファゴットとしての音源のない作品であることを感じさせない、よく理解した演奏でした。よく読みこんでいる、と言えばいいでしょうか。

他楽器の作品ということもあり音域が低く歌いづらい箇所も多かったと思いますが、その不自由をあまり感じない演奏でした。技術的にも一皮むけたように思えます、やはり美しい旋律というのは人を成長させますね。

ビブラートの使い方も大変よかったと思います。楽器の響きを殺さない今のようなビブラートならどんなシーンでも使えると思いますので、それに頼ったフレーズの作り方も今後ぜひ試していきましょう。

一方で強奏時、楽器のキャパシティを越えるところまで鳴らしてしまうこともあるようです。楽章単位で1~2音、ならアリかなとは思いますが・・・。今回のような小さなホールならいいのですが、もう100~200席増えてくると逆に響きが死にあまりよく聞えなくなってしまうので、多用は厳禁です。気を付けて。

 

18.ファゴット協奏曲/モーツァルト

自分の演奏です。この作品を演奏するのは一体何回目なんだ、と思いながらも、生徒の前でやったことはないな、と思い取り上げました。「どれだけ運営に追われても自分も必ず1曲吹く」というルールのもと、毎回1曲やっているのですが・・・。この作品ほど精神的・肉体的に体調を問われる曲もないもので。笑 正直、すごくキツかった。

しかしひとたび「しっし~」と吹いてみると息が入る入る。慣れ親しんたピアニストのサポートもあり、正直とても気持ちよく演奏ができました。結局土壇場で我々は音楽とファゴットに救われるんですね。

(うまくいけば)1か月後にまた演奏機会があるのですが、ホールの規模がもう少し大きくなるので、それを意識した鳴りを作れればいいなと思います。

 

19.ファゴットソナタ/プレヴィン

ゲストによる演奏です。

圧倒的ななにかを見せてくれぃ、とお願いしたようなしてないような。ハマり役といいますか、期待以上の面白いものを聴かせてくださいました。皆にもいい刺激になったようです。

次回のゲスト枠は少し趣向を変えてみる予定です。皆さんお楽しみに。

 

20.ソナタ第3番/ヴィヴァルディ

これまたゲストによる演奏です。

バロック作品のレッスンで「バスの進行うんぬん」と口を酸っぱくして言ってきているので、該当者には刺さる演奏だったことでしょう。それにしても難しい曲だ・・・

 

21.ポルトゲーザ/ビュッセル

一皮むけた、という印象です。僕の少ない語彙力で表現するのであれば「上手い」から「抜群」というところでしょうか。ころころと場面の変わる曲ですが、丁寧にそれに対処し、色彩感がある演奏でした。

テンポがフリーな箇所になるとカウントが雑になる癖があるようです、指が回ってはいるのですが聞き取れない音が何個かずつあるため慌てた印象になってしまいます。逆にテンポがあるところは基本的に丁寧に吹けているので、もしかしたらカデンツァの類に弱いのかもしれません。無伴奏作品、とまでは言いませんが、バロック時代の作品に取り組むといいのかも。

音楽的な時間の使い方もすごくうまくなりました。強引にインテンポで音符を入れ込むのではなく、たっぷり時間を使う、という事を覚えたので今後より難解な作品にも挑戦できそうです。

恐らくセッティングの問題ですが、最低音域はもっとしっかり鳴らせないと作曲家の意図通りに音が出ません。前半をこのくらい軽く吹けるリードで、低い音域もしっかりコントロールする技術を身につけましょう。ヒントはリードをくわえる位置の調整にあると思います。

 

22.演奏会用独奏曲/ピエルネ

アンサンブル部門MVP、という異例のチョイスでした。あまりこのパータンは無いのですが・・・。「仲が良いふたりのアンサンブル」というのは、そのふたりのことをよく知らない人からすると、ある種内輪ネタといいますか、別に「だからなんだ」という風になりがちなのですが。息があった、というより、分かり合った上で仕掛け合う、という箇所がたくさんあって大変面白かったです。

ファゴットへの課題はきちんとクリアされ、それにこたえる形でピアノの演奏も洗練されていて素晴らしい演奏でした。僕はあまりピエルネが好きではないのですが、ちょっと好きになりました。なるほどピアニストとの対話次第では面白い曲になりうるな、と思えるようになりました、ありがとう。

さて、ピアノという偉大な楽器と対話がたくさん見えて素晴らしかったのですが、恐らく自分でも思うところはあると思いますがコントロールがまだまだ足りていません。特に後半のテンポ感についてはお互いがお互いを煽ってしまい肝心な部分でやりたいことが仕掛けにくくなっていました。6拍子というのは魔物ですね。もっと丁寧なカウントがあるとよかったのかもしれません。もちろん、もっと馬力が欲しいシーンはたくさんありました。馬力というよりは響きでカバーしてはいるのですが・・・もっとパワーも欲しいですね、研究しましょう。

それにしても名演ピエルネでした。つぎピエルネをやる人へのいいプレッシャーとなることでしょう。

 

23.古都三景/髙島圭子

今回の特別企画、フォックス製ファゴットによる四重奏でした。原曲はトロンボーン四重奏のこの曲ですがファゴットでも大変いいサウンドとなりました。

フォックス同士、ということで特に楽だった部分が、いい意味で音色のすり合わせが必要なかったところでしょうか。またファゴットアンサンブルにおいて最も難しいバランス作りも弱奏の得意なメンバーがうまくやることで比較的取りやすかったと思います。今度はコントラ入れてやれたらいいですね。

 

24.ポップスイート/フッケンポール

こちらはシュライバー製ファゴットによる四重奏。こちらはユーフォニアム・チューバ四重奏の作品のようです。今回の特別企画が「シュライバーとフォックスの聴き比べ」だったわけですが・・・皆さんにはどう聴こえたのでしょうか。僕には「けっきょくどんな楽器も使い様」という結論しか出ませんでした。笑

それぞれに答えがあっていいような気がします。それはそうと、この四重奏メンバーはアンサンブルで真価を発揮するタイプばかりのようです、ソロの時にもっとそーいう音が出ないかな・・・と、先生としては嬉しいようなさみしいような。

 

25.悲愴三重奏曲/グリンカ

ハードルの高い作品だったと思います。演奏クオリティは歴代アンサンブルエントリーの中でもトップクラスだったのではないでしょうか。アンサンブルなんて結局、うまいメンツですり合わせさえすれば必然的に名演になる、という僕の持論はまさにこーいうことを言いますね。笑

さて間違いなく名演である一方で、僕の心にはあまり深くは刺さりませんでした。まず音色の傾向が2人で全然違うこと。クラリネットは浅く明るいのですがファゴットは深く暗い。良し悪しではなく、2人とも常に同じ位置で演奏しているので交わることが最後までありませんでした。それゆえに、聴いていて飽きがくる演奏になってしまいました。「ここでこーいう音(色)を出したい!」という音楽をやる上で最も基本的な欲のようなものがあまり2人ともないように思えます。僕は音色より音質やコントラストが大事だと考える人間ですが、その僕が音色について指摘する、というのはけっこう深刻な領域なんだと思います。クラリネットはもっと深い音を、ファゴットはもっと明るい音をシーンによって出せばもっと人の心に響く演奏になっていた、と思います。他の精度が高いだけに、惜しかった。

タイミングやテンポ感については完璧に近かったと思います。それだけに、惜しかったなぁ。

 

26.ファゴットソナタヘ短調3.4楽章/テレマン

まさかのトラブルに心を揺さぶられなかったのがまずとても立派でした。度胸と言うのは天賦の才ですね。

ブランク明けを思わせない名演でした。バスの進行をよく理解した上で曲の流れをよく表現できていました。コントラストや音色の操作も抜群で震えるシーンがたくさんありました。懸念されていたバテに関しても、まぁなんとかぎりぎり、吹ききれましたね。しかしこの曲にはよりキツい1~2楽章が本来ある、と思うとゾッとします・・・

さて、足りないものがあるとすれば自主性と欲でしょうか。「私はこうします!」というより「こう習ってきました!」という演奏でした。門下発表会、ですからある意味正しいのだけど、僕はもっとみんなに好き勝手やってほしいと思っている人間です。(それも付き合いが浅いのでイマイチ伝わらなかったかもしれませんね)よく言えばお手本(それもこれ以上ない高精度の)のような、悪く言えば聴いたことのあるような演奏、でした。音楽をするというのは個を磨く行為だと思います。次の目標は「個性」ですね。また楽しみにしていますね。

 

27.ファゴットソナタ/メルチ

まず基本的な音色・音質がとても良くなりました。音域問わず楽器がきちんと鳴っていて、結果として音程がちゃんと取れるのでピアノとよく共鳴していました。バロック作品特有の、バス主体による進行もよく理解しフレーズを組み立てていました。やりたいことがきちんと伝わる演奏、というのは思いのほか難しいものです。もう現役時代よりはあらゆる点で上手く演奏できているでしょう。ブランク明け、という注意書きは剥がしても良さそうです。

さて、聴いている方にも準備というものがあります。チューニングして構えて吹くまでが早すぎます。ピアニストがビックリするほどでもないですが、心地よい間というのが取れるともっとよかったです。特にアウフタクトが大切な楽章から始まるのですから、最初がとても肝心なのです。そこらへんはステージさばきみたいなものですね、プロのステージを見てみるといいと思います。逆に聴く側に準備をさせないまま始めてしまう、という仕掛けもあるくらいです、それはそれで、面白いですよね。

アンサンブルに取り組むための技術的な準備は、じゅうぶんだと思います。楽しみにしていますね!

 

28.ファゴットとピアノための組曲/タンスマン

ゲスト奏者内友人枠、の演奏でした。笑 もはやN島枠、と呼んでもいい気がします。

曲の始まりのクオリティが高く、それだけに速い部分が惜しかったですね・・・。一見すると技術的にはなんとか吹けてしまうこの作品ですが、合わせるとなると一大事です。メンタルのコントロールやアンサンブルの経験はもちろんですが、「なんとか吹ける」という領域を脱していたらもっと結果は違ったのかもしれません。リズムで某先生に絶対に怒鳴られないような余裕を持てるところまで持って行けば、あるいは、といったところです。言葉とリズムの曲ですから「何を言ってるのかキッチリ伝える」ことでアンサンブルは飛躍的にやりやすくなります、自分もピアニストも。それにしてもこの曲は作品としての完成度が高いだけに、ほんとうに難しいですね。

 

29.六重奏曲/ファラン

この編成をやるには少し会場が小さかった気もしますね・・・。配置に関してはよかったと思います。

さて、レッスン時は指摘によってみるみる変化があり本番の演奏をすごく期待していたのですが・・・1週間でかなり忘れてしまったようです。要因はそれぞれ色々あるとは思いますが、レッスンで受けた指摘や合わせ時に決めたことをきちんと自分が分かるように譜面へ書き込むようにしましょう。譜面を見たわけではないですが、よく丸を書いて終わり、という書き込みを見かけますが、あれは5分後には何のマークだったか忘れます。必ず具体的に、どういった注意をすればいいのか書き込みましょう。言葉でもよし、記号でもよし。そういったことを怠ると、いくら合わせしたりレッスンを受けても本番に活かすことはできません。僕はファゴットの生徒に、楽譜にただ丸を書くのを禁止していますよ。

さて5つ、いや6つ違う楽器がそろうアンサンブルというのは難しいものです。ある意味でバランスが悪くて当然、合わないのは必然なのですが・・・本当にそうでは合わせやレッスンの意味がなくなってしまいます。同じフレーズを担当している他のパートの人とのフレージングのすり合わせ、バランスが悪いんじゃないかと疑い提案すること、もちろん音程やリズム、音の長さや処理などを統一するのに同族アンサンブルと比べたらものすごく苦労します。時にはクラリネットのようなオーボエの音、ホルンのようなファゴットの音、フルートのようなピアノの音が聴こえないといけないかもしれません。その苦労があまり見られませんでした。好きに吹いて(弾いて)いるだけでは魅力的な演奏はできません。

元々木管五重奏というのは、「木管」なんて呼称はつかずに「管楽」という呼称でした。ダンツィやライヒャの時代に旋律を担当する管楽器といえばこの5本だったわけで、現代では金管五重奏に対して木管五重奏、と呼称するようになった、という歴史があります。つまり、元々は管楽器を5つ集めた、と言うだけに過ぎない編成なのです。苦労無しには合いません。でもその苦労そのものが面白く、魅力的なので、レッスンでできる限りのことはお伝えしたつもりだったのですが・・・。僕は少し寂しかったです。

とはいえ、個人の領域では6人ともかなり高い水準で演奏できていますから、今後は他の楽器とのアンサンブルの仕方をよく考えるとより楽しく演奏できるでしょう。

 

30.民謡風小品より/シューマン

(ようやく?)安定感が少しずつ出てきた、と思います。良い部分に関して、「おっいいぞ」というより「うん、さすが」という感情で聴けるようになりました。また、楽器のポテンシャルが活きてくるようになったのは大きな進歩です。音程もかなりいい方だと思います。

1曲目で伴奏に切り替わるときにピアニストから拍子感を受け取れなかったのが残念でした。ズレてしまった、というより、きちんとバトンタッチできなかった、のだと思います。逆にそのバトンタッチシーン以外はあまりピアニストに気を遣わず吹ける楽章ですから、そこだけきっちり体に入れておくべきでした。

技術的には、もっと広い空間を意識して演奏するといいですね。視線や気遣いの範囲が自分の半径30cmくらいだけのように見えます。大きくない会場だったからこそ、自分の音がどう響いているか聴きながら吹くだけで音の伸びが違ったかもしれません。

譜面づら以上に難しい作品なのだと思います。うまく聴かせるのが難しい曲、をわりといつも選んでしまうので、一度めいっぱい聴き映えのする作品を選ぶといいかもしれませんね。ピエルネ、ギャロン、ブルドーあたりでしょうか。

ファゴットに(公でも私でも)すがって生きるの、悪くないですよ。

 

31.ファゴットソナタ/サンサーンス

抜群の出来でした。サンサーンスの呪いによく負けなかったなぁ、と素直に関心しています。

フレーズの末尾が「言い切り」になってしまうクセがあるようです。先に繋がっていくのか、きちんと収めるのか、言い切るのか。この3択だけでいいのできちんと考えるようにしましょう。それだけで幅が生まれてくると思います。

技術的にはかなり完成度が高かったと思います。この曲に負けずに技術で完成させる、というのは簡単なことではありませんからそれだけで大変立派です。逆に言うと、もっと音楽のことに執着して時間を使ってほしかった。当日のコンディションによるところもあるとは思いますが、もっと丁寧に組み立てられる部分もたくさんあったんじゃないかな。この大曲を全楽章演奏する、ということに、ある意味でもっとこだわってほしかった、というのが僕の正直な気持ちです。

さて付き合いも浅いので言い切れる部分ではありませんが、レッスン時に感じた事ですが、人から受けた指摘を家に持ち帰る癖があるんじゃないでしょうか。その場で変わろうとするのではなく、持ち帰り噛み砕いてから自分の糧とする、というのを前提にレッスンを受けてはいないでしょうか。もちろん、持ち帰るのは大切です、噛み砕いて呑みこむのも大事ですが、その場で変わろうとする、という力もとっても大切です。なぜなら僕らはその場での変化を見ながら与える情報を変えていますし、オケのリハーサル等ではその場での変化が一番重要です。もっと言われたことを大胆にその場で試し実践してみることです。ひと言でいうなら、レッスンでもっと恥をかきましょう。カッコよすぎるのも考え物です。

 

32.デュエッティーノ/ボザ

僕と、出身大学の学生による二重奏です。

仕掛けを大げさに仕掛けることで聴いてる人を「だます」というのをテーマに演奏しました。この子は若いのに本当によく分かってよく聴いて吹きます。すごいことだ。

 

33.2つの小品/フランセ

MVP!にしようと思ったんだけど。繰り返し後、あのテンポ感でテクニックが整っていたら間違いなくMVPでした。発想は大好きだし面白くてしょうがなかったけど、「よい子はマネしないでね」という意味でMVP避け。

練習時間は推察できませんが、練習時間の使い方がまたちょっとうまくなったんじゃないかなと思います。音楽の仕掛けとテクニックを両立して練習できるようになっています。レッスン時に課題だったビブラートの幅もだいぶ改善され、まっすぐ息が入るようになりました。しかし真っすぐな息に慣れていないためか、音程をさぐってしまうようになってしまったので、もう一皮むける必要があるのかも。ビブラートというメッキがなくなっても、自分に100点をつけてあげられる音質を目指しましょう。

音楽の流れは大変面白く、この曲の魅力はすべて客席に伝わったと思います。速い方の1回目、2回目への布石なのはわかりますがスピード感も死んでしまったのが少し残念でした。同じテンポの中にもスピード感の有無を調整できるといいですね。

それにしてもレッスン時「ここ難しいね~」と言ったところが本番できちんとできていること、いつもながら本当に尊敬します。本当に丁寧なさらい方に関しては門下内随一、さすがといったところです。

 

34.タンゴ組曲より/ピアソラポルカインスイング/フォアート

ファゴット四重奏、3団体目。メーカー違いはそこまで重要ではないみたい。

さて同じ楽器が4本も揃うとどうなるか。メンバー同士によるレベルの違いが明確に出ます。他人がどうこう、はともかく、自分がどうだったか、よく考えましょう。それぞれがきちんと準備し練習してきたのはよく分かるのですが、それで出てしまう残酷なほどの腕前の差、というのは、オケをやってれば今までも経験済、ですよね。

他のアンサンブル団体にも書いていますが、アンサンブルをよくする方法なんてしょせん、個人個人がうまくなること以上に手っ取り早い手段はありません。個性、という言葉がありますが、レベルが拮抗してはじめて個性と言うのは見えてきます。僕もアンサンブルのレッスンでは個人に立ち入れる領域が限られてきますから、あえて講評では個人技について少し容赦なく触れてみました。

もうこれ以上準備することはなかった、ともし思うなら、一度でいいから僕のところへレッスンに来てください。4人とも、練習方法も奏法も簡単に改善され別人のような音を出す素質がまだまだまだまだあります。連絡先はどこかから入手してください。

アンサンブルとして言うことはあまりありません。聴いていてつまらない演奏なんてことは決してないし、1人1人がちゃんと輝いてはいましたが、それぞれの伸びしろを思うと「もったいない!」という気持ちでいっぱいになりました。

 

35.ファゴットソナタヘ短調3.4楽章/テレマン

もう初心者なんて誰も言いませんね、アンサンブルも無事こなせていました。念のため言っておくと、楽器をうまく吹くためのステップはここからが長いです。人並みに無難に吹ける、というところから、うまく吹ける、というところは近いようですごく遠く、地味なことの連続に思えるかもしれませんが、あなたはここまでも地味な事の連続に堪えてきていますから、きっと大丈夫だと思います。

さて今回の演奏ですが、技術的音楽的によく練習・研究してきました。ところどころ不安定な音程はありながらも、この曲を流れを止めずに吹けるのはなかなか立派な事です。ステージさばきも本当に良くなりました。最初は「礼をする!」というところからだったもんね。

今後の課題はよりたくさんの譜面を読んでいくことに尽きるとは思いますが、もう技術的に、吹けない曲は理論上ないということになりますから、今後ソロ曲は自分で探し選びましょう。もちろん相談には乗りますが最低でも候補は自分で見つけてきましょう。これだけたくさん演奏を聴けば「これならできる」「いつかこれをやりたい」って曲も出てきているはずですから。

 

36.3つのロマンス/シューマン

直接も言いましたがブレス!あれほど計画的に、と言ったのに・・・。悪癖は簡単には抜けないようです。息継ぎというのは生命活動ですから、かなり意識的に操作しないと改善されません。逆に言うと、意識的な操作がないと管楽器奏者としてはいつまでも未熟なままで、それでもファゴットという楽器、他の木管に比べると足りなくもなりづらいし余ったりもしない楽器ですから、この手の曲に挑むときくらいしか改善するチャンスがないのです・・・・。実にもったいないことをしました。

と、ブレスのことはさておき。サンサーンス組がいなければこれまたMVP候補でした。この曲独特の色彩感がすごくよく出ていて、僕はアマチュアファゴット吹きでここまできちんとこの曲を吹ける子を他に見たことがないです、大変立派でした。

バテてくると音程が下に行くクセがあるようです。普通逆(その結果本当にばてて音が出せなくなる)なのですが、下に行く人の方が気になりづらい反面、改善も難しいです。ばてた状態でも頭だけは冷静に、今の自分の音の傾向とその対策を練る、ということをしましょう。それは合わせの時にしか試せないかもしれませんね。

と、キツイ曲はぜひ楽章間をたっっっぷり時間を取りましょう。なにしたらいいか分からないのであれば、詰まってもいない水を抜きましょう。まだまだソロのステージ慣れはしてないと思いますが、楽章間をもっと時間空けていればやりたいことがもっとできたかもしれません。

3楽章の前半、ぜひ何度も録音を聴いてみてください、本当にいい演奏です。

 

37.ファゴットソナタ/サンサーンス

サンサーンスの呪いからの解放、おめでとう、トリの名に恥じない、立派な演奏ができて正直僕がホッとしました。

よくやったね、と言ったら、「たくさん練習しました」とこたえた君はとても立派で、たくさんの練習が成果になる、というのは凄いことなんです、特にこの曲では。こんな立派なサンサーンスが流れるうちの発表会はやはりすごいのかもしれません。

あまり改善点、課題等はありません。今できる最高レベルの演奏ができたんじゃないかなと思います。これ以上のサンサーンス、となると、楽器に合ったリードの供給、抜本的な奏法の改善、人生経験、が必要になってくるでしょう。

2楽章ではピアニストに流されてしまいました。「ちがう!ぼくはこう吹くんです!」という攻め方があってよかった、その余裕が欲しかった。流されるのも時には良いですが、早い楽章はそれでは自分の首を絞めてしまいます。惜しかったね。

ハイEは見事でした。あの指はやはり最強だ。

 

 

 

いつもながら講評記事、時間かかるなぁ。笑 でもこれを楽しみにしてくれてる子もたくさんいるので、今後も続けます。

通常記事も頑張ってアップします。お楽しみに。ここまで読んでくださってありがとうございました。

第14回発表会でした。総評と演奏ごとの講評とか。

4月ですか。本当にただの発表会のためのブログになりつつあるのはよくないですね・・・。

全く更新していなくても過去記事を見てレッスンのお問い合わせを頂くことも頻繁にあり、大変にありがたいことです。記事のネタは溜まってるんですよね。

「今更聞けないファゴットの正しい運指と替え指、トリルの指について」

「音程とリズム」

「上手い演奏と好きな演奏」

コントラファゴット入門」

あたりが候補でしょうか。気長にお待ちください。

 

さて、タイトルにもある通り、門下発表会が3月24日、新宿のドルチェ楽器にて行われました。Facebookの通知で気づいたんですが、2年前に行われた発表会も、今とそう変わらない人数でした。今後どんな風になっていくか分かりませんが・・・変革なくして継続はない、と思うので気が付いたことはどんどん試していきながら続けていきたいと思っています。

打ち上げで生徒に「この回はいつまでやってますか?何十年後かに今回で60回目だよ、とか言いたいんですけど」なんて嬉しいことを言われて、「俺が死ぬまでやるよ」と言っておきました。むしろ死んでからも継続していくようなシステムを作れたらいいなぁ。笑

最近はどこに行っても門下生の話をされます。何度でも言いますが、僕はあくまで演奏者という肩書を捨てるつもりもありませんから、指導者としての力を認められる事は光栄ではありますが本意ではないんですよね。僕がレッスンで教えてあげることができるのは僕が演奏者としてしてきた創意工夫から生まれた事だから、演奏者であることをやめたとき僕は指導者としての道もなくなる、と考えています。ので、今回も吹きました、ソロとゲストを呼んでのアンサンブル。いつもながら時間は使えず苦労も多かったのですが・・・

 

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今回のゲストには今所属しているオケの同僚である、オーボエ奏者の炭崎友絵さん、クラリネット奏者の浜崎歩さんをお呼びし、オーリックのトリオを演奏しました。このお2人は去年の4月から入団したメンバーなのですが、どのお仕事でもいつもほれぼれする演奏をされていて、一緒にアンサンブルができたら最高だ!と思い声をかけさせて頂きました。オーリックやりたい!すごい!と生徒たちからも反響が大きく、僕自身すごく楽しく演奏させてもらえました。お2人とも本当にありがとうございました・・・!

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さて講評に入る前に、次回発表会のご案内をしておきます。この門下発表会は、僕の個人レッスンを(1回以上)受けた方によるファゴットソロ演奏と僕のアンサンブルレッスンを(1回以上)受けた団体によるアンサンブル演奏の2枠存在し、レッスンさえ受けた頂ければどなたでも参加できるものとなっています。コンセプトは「とにかく練習してレッスン受けて人前で曲を吹けば最短ルートでうまくなるはず」というもので、本番の演奏がどうだったか、という事よりもそれによってどのくらい成長できるか、というところに重きを置いています。伴奏はプロのピアニストに弾いて頂くことができます。近頃は門下生同士の交流も盛んで、ファゴット吹きの仲間がたくさんできる会となっています。

日時は2019年7月21日(日)お昼ごろ開演~18時ごろ終演予定、その後打ち上げあり

場所は新宿のドルチェ楽器東京です。大変吹きやすく響きの良いホールとなっています。

参加費はファゴットソロ参加が14000円(学生10000円)、アンサンブル参加が1人6000円(人数によって変動あり?)です。どちらもレッスン1回無料となっています。ソロ参加の方にはピアニストへの謝礼も含まれています。

もし2回目以降のレッスンが必要であれば、通常通りですが1回1時間程度5000円(学生4000円)でお受けしていますのでそこは御相談ください。最近は1回だけで物足りなくなり2~3回受ける参加者が増えています。

参加〆切などは特にありませんが、ピアニストへの依頼の関係上5月半ばごろには確定しておきたいと考えております。

参加申し込み、ご不明点などのお問い合わせ、ご相談などは

発表会参加・お問い合わせフォーム

こちらまで。どうぞお気軽にご参加ください。お待ちしております。

 

ここからは参加者以外にはあまり面白くない内容になるかと思いますが・・・今回の講評を書き綴っていきたいと思います。学がないものですから、文章と呼べるほどのものではなく、書きなぐったようなところがありますがご容赦ください。

 

まずは今回の総評です。全体として、「レベルの高い発表会」になった印象でした。元々うまい子はうまい会ではあったのですが、全体の水準が上がり、個々がきちんと課題を乗り越えるようになってきた、と思います。それだけではなくて、僕が与えた課題を材料に自ら生み出されるものを全員が本番で発揮できるようになってきました。

レッスンというのは、基本的には足し算です。やってきた内容に大して、足すと良くなるものを足してそれを定着させる。定着してきたら次のレッスンでまた新しいものを、という繰り返しなのですが、今回の参加者たちは足し算という領域を越えていました。与えた課題を材料に別人のように化け、また新しい課題で化け、と、「そんなこと教えてないけど最高だな!!」という演奏を本番たくさん聴くことができました。本当に先生冥利に尽きる時間でした。

 

では曲ごとに。

 

1.無伴奏チェロ組曲第3番より「ブーレⅠ」/バッハ

初参加・10数年ぶりの本番お疲れさまでした。おそらくテクニック的には簡単な曲だったと思うのですが、ブランク明けということもあり奏法上の悪いクセを一掃するにはちょうど良かったのではないでしょうか。

かなり細かく運指やアーティキュレーションについて指摘してきましたね。どちらも遵守したうえで丁寧に練習してきたんだろうな、と感じる演奏でした。その丁寧さは、どれだけ上達しても必要なものかと思います。緊張しても発揮できる力というものは、そういった時間の過ごし方から生まれてきますから、今後も忘れず、演奏を楽しんでいってくださると嬉しいです。またエチュード頑張りましょう!

 

2.ファゴット協奏曲より第1楽章/ウェーバー

「身の丈に合わない曲」なんてとんでもない。身の丈に合う曲なんて一生出会えません、曲はいつだって僕らの遥か頭上にあるものです。特にこの曲は。

ウェーバーの協奏曲に挑む、という意味で必要な技術はじゅうぶんに身に付いたと思います。クオリティで言えば近年うちの会で演奏された中でもかなり高水準だったと思います。今回の演奏を誇りに思い、自信を持って今後も色んな作品に挑めるといいですね。極論、今回のような練習ができればどんな曲でも演奏できます。

楽器のポテンシャルも活かせるようになってきました。とにかく響きが豊かな楽器ですから鳴らすもの苦労したと思いますが十分に鳴っていました。速く柔らかいタンギングが身に付いたので、今度はそれをいつでも取り出せるようになるといいです。ウェーバー限定でできても意味がないのです。

「アリア」の部分、良くはなりました。しかしこの手の箇所というのは得意不得意があるものですが、自分ではどのような取り組みをしたのでしょうか。楽器の練習だけでは得られないものが必要なフレーズですから、その手の壁は必ず今後もぶつかります。魅力的な演奏は魅力的な人間から生まれてきます。いい景色を見て、いいものを食べて、いい人と出会って、いい演奏をしましょう。今後も楽しみにしています!

 

3.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

いい楽器の鳴りが生まれてきました。しかし、リードだけがバリっと鳴るのとは違う、豊かな響きをもっと意識していくといいと思います。自分で「いい音だな」と思える音色の中でダイナミクスを操作しましょう。

フレーズの語尾がもっと洗練されるといいと思います。膨らみは上手なのでおさまりを丁寧に。「いちおう並んでいる音」は並んで聴こえません、丁寧に並べた音だけが並んで聴こえるものです、器用さに任せて連符が乱暴になってしまわないように。

ピアノとのアンサンブルが安定してきました。たくさんアンサンブル曲に挑戦してきた副産物でしょうか。聴く余裕も感じられます。逆に言うと、聴いて合わせる、以上のアンサンブルは感じられません。ちょっと踏み込んだり揺さぶったり、みたいなコミュニケーションができるともっと面白いと思います。

とはいえ、場数を踏んできたことによる大きな成長を感じる演奏でした。自信もっていいと思います。

 

 4.ファゴット小協奏曲/ダビッド

初めてのソロ曲、お疲れさまでした。オケやアンサンブルとは違った面白さが味わえたでしょうか?

冒頭の発音、とても綺麗でした。フレーズの方向性等もよく理解し発揮できています。楽譜の版による違い、どんなふうに吹くかな、と楽しみにしていましたがやりたいことがきちんと伝わってきてどうしようね、とだけレッスンで言ってよかった、自分で決めた事というのは愛着がわくからうまくいくものです。

フレーズの語尾が意志薄弱、というより意識が抜けることが多いようです。語尾までもっと考えて吹けたらより良かったと思います。また音色がとても綺麗なのですが、綺麗なことで気づきづらいのですが開いた音が多く、おそらく大きなホールだと散ってしまうかもしれません。もう少しクローズドな音色でかつ楽器がきちんと鳴るような意識をするといいかもしれません。逆に、思いっきり開いた聴いている方がハッとするようなフォルテが何か所かあるとより面白かったかと思います。

速いところの安定感は素晴らしかった。この曲はとにかく安定しないと聴けたものではないので、前半のフレージングやコントラストも含めてこの曲の難しいところはきっちり乗り越えた演奏と言って良いと思います。総じて優等生と言える演奏で聴いていて安心できました。もう少し「やんちゃ」な仕掛けが多いと面白いと思います。今後も好きな曲に挑戦していってくださいね。

 

5.ファゴットソナタ/シュレック

友人枠での参加だったので、本番で初めて演奏を聴きました。リードと楽器の相性が良くないように聞こえました。パッと吹いていい音がするリードではなく、機能性(音色の操作、音程の操作、鳴りの良し悪し)でリードを選びあとは自身でコントロールしていく、というのがいいのではないでしょうか。

この曲で難しいフレージングにおいては「おかしなところもない」し「ぐっとくるところもない」という印象でしょうか。もっと山を作り、人の心を揺さぶる演奏ができると素敵かなぁ、と思います。ドレスとてもよく似合ってました!

 

6.ファゴット協奏曲より第1楽章/モーツァルト

今までで一番厳しいレッスンだったと思います。この曲はそういう曲だ、と思いながらも、どうかなぁ、腐ってしまわないかな、と心配でしたが、本番とても素晴らしかった。最後のレッスンから数日間、とてもいい時間を過ごしたことかと思います。今回の演奏を自信に変えて今後も色んな曲に挑んでいくといいと思います。極論、これ以上難しい曲はないはず。

トリルの処理はまだまだ甘かったと思います。ごまかして乗り切る、というトリルは効果的に聴こえることは永遠にないかと思います。ごまかせるのは器用さなので素晴らしいのですが、それにかまけているとこの手の作品が吹けません。

音楽の方向性を、足し算(ここを膨らませよう、ここをおさめよう、ここを前に行こう、等等)で考えるのは得意なんだと思います。これからは引き算(この長い音はデカすぎやしないか、このトリルは綺麗に入っているのだろうか、ここのアーティキュレーションはこれでよいのだろうか、等等)で考えられるようになるといいと思います。演奏の上手い下手は印象で決まるものなので、「これはちょっと変」と思われる箇所が頻繁にあると印象はあまりよくありません。

カデンツァ、代表的なものに触れて原則が学べたんじゃないかなと思います。名人芸を見せる箇所ですから、もっともっと洗練されてほしかったところですが、カデンツァ以外にたくさん時間を使った、と思えばこのくらい吹ければよかったのかな、と思います。最終的にカデンツァに力を注ぐことができれば、もっと良かったのかなぁ。とはいえ大曲であり難曲であるこの曲を、この曲らしく演奏できたこと、本当にすごいことです。オーソドックスをもう少し学べるといいですね。バロックもの(ドゥビエンヌとかどうですか?)が効果的かもしれません。

 

7.演奏会用独奏曲/ピエルネ

2日連続本番、お疲れさまでした。カットの有無、実は心配していたのですが全く問題にしていなくてよかった。自覚があるかは分かりませんが、いい度胸を持っています、武器にしていきましょう。

楽器がよく鳴らせています。コントラストも十分についていました。最初にこの曲をレッスンで見たときから考えるとものすごい進歩です。が、大切にしてほしい「長い音」がすべておざなりでした。ピアノとファゴットのために書かれた作品ですから、伸ばす音がピアノの和音の中に響く、という箇所がとても大切なのですがそういった曲の魅力はあまり出せていないようでした。まずは音価通りきちんと吹き、その音価に方向性を置きましょう。方向性のために音価を変えてはいけません。

後半の難所、よく丁寧に練習できていたと思います。今後も綺麗に並ばない!ここは無理だ!と思った箇所は丁寧に練習し向き合っていってください。

素晴らしいのは、タンギングの連続で楽器が鳴りづらくなりそうな箇所がとてもよく鳴っていて、それはなかなかできる事じゃないと思いますので、自信を持っていいと思います。

まだまだファゴット人生は始まったばかりです。これから色んな作品に触れて色んな経験をして、素敵な音を奏でていってください。人の演奏もたくさん聴いたと思います。やってみたい曲があったら、教えてくださいね。

 

8.ファゴットソナタヘ短調/テレマン

コントラストのついた素晴らしい演奏だったと思います。音程を損なわずに強弱を豊かにつけられること、素晴らしい長所だと思いますのでぜひそれを生かしていい演奏をしていってください。

速い楽章のときにリズムが乱暴になってしまう傾向にあるようです。速い楽章、といっても、アレグロや3拍子のヴィヴァーチェしかでてきませんし、「速い」ことに大した意味のない音楽ですから、もっと冷静にリズムを取っていかないといびつな演奏になってしまいます。いくつかある難所は丁寧に練習したと思います。音のつぶはとても綺麗に表現できているのですが、連符にも音楽の流れがあります。それを加味した練習がもっとできればよかったと思います。単なる指回しになってしまわないように。結果として、音楽の流れがあった方が指も舌もよく動くものです。

ブレスの調整を含めたスタミナ配分はうまくっているようでした。楽章感をたっぷり空ける、というものよくできていました。この曲以上にスタミナ面でキツい曲、というのは・・・まぁたくさんあるのですが、今後キツい曲だな、と思ったら今回実践したノウハウを生かしていけば乗り切れるんじゃないかなと思います。

そろそろウェーバーに挑戦してほしいな、と思いますが・・・いかがでしょうか。

 

9.ロマンス/エルガー

音楽を聴いていて鳥肌が立つ、という感覚、最近なかなか無かったのですが、3か所くらい鳥肌の立つことのある演奏でした。長い音から始まる音楽の作り方、本当に見事でした。強弱のコントロールも心得ていて、聴いていて心に響くのに安定感もある演奏であったと思います。安心して聴けるエルガー、というのはなかなか難しいことだと思います。

中高音(上のG~)の安定感が技術的にもっと身に付くといいのかもしれません。結局のところファゴットは、その音域からが勝負ですからごまかせるものではないですね。レッスンで課題にした中音以下の響きや音程は素晴らしく、何よりそのいい響きのまま十分なコントラストがついていました。多少のブランクなんてものともしない、「大人」な演奏でした。エルガーはそうでなくては。

そういえばいつも選曲が渋かった気がします。次の参加がいつになってしまうか分かりませんが、いわゆる「あざとい系の曲」に挑戦してほしいなぁ、タンスマン、グリンカ、ギャロン、あたり。いかがでしょうか。

10.シシリエンヌ/フォーレ

初めてのソロ曲、どんな気分でしたか?合奏と比べた段違いの達成感、得られましたでしょうか。

持ち前の柔らかくも太い音色がよく生かされた演奏でした。課題かなぁと思ったコントラストも十分についていて、決して技術的に難しい曲に挑戦したわけではないにしろ大きな成長を感じました。人の演奏たくさん聴いてやりたい曲もたくたんできたかと思いますので、ぜひまた挑戦してくださいね。

いい音色を持っているから、だと思います。その音色をキープするために低音域の音程が高くなってしまったり、強奏時に響きが十分に得られない事が多いようです。音色というのは可変でなくてはいけませんので、ちょっと汚いかな、と思うような強い音も出せるといいかもしれません、この曲で使うシーンはあまりないかもしれませんが・・・。

 

11.幻想小曲集/シューマン

もう友人枠代表ですね。渋みのある素晴らしい演奏でした。もちろんきちんと指は回っているのですが、ほんの少し不安な箇所で必ずと言っていいほどピアニストと僅かにズレます。技術的に不安のないところでも油断せず最後まで丁寧に音を並べる練習をするといいのではないでしょうか。細かい音符と同じくらい、それ以外の箇所の密度が上がるとさらなるレベルアップが可能かと思います。

楽器の構える角度が良くなさそうでした。唇に対して垂直である必要があるのですが、すこし下唇側に傾いている印象です。ストラップやバランサーの問題かもしれませんので見つめなおしてみるといいでしょう。

また次回も楽しみにしていますね!

 

12.ファゴットソナタホ短調/テレマン

やはり君は音楽に対して技術の使い方が抜群に上手いですね。ほしいところにほしい分だけ息を入れる、というのはなかなかに難しく、心地よい演奏になりました。ダイナミクスによるコントラストは抜群ですから、もっとテンポによるアゴーギグが自在になると表現の幅が増えてくると思います。また強奏時のビブラートがもっと幅広く使えると使える色が増えて良くなります。

君に限らずですが、本番前の追い込みは素晴らしいです。もちろんそれも大切なのですが、計画的に、つまり焦りのない状態で丁寧にいい意味でダラダラと音を並べそこに音楽を乗せて行く、という時間は良い演奏には必要不可欠な練習です。2楽章や4楽章のほとんどが、そこまで難しくもないけど丁寧に並べるにはちょっと嫌な運指という曲に対して、もっと丁寧な練習を心掛けてほしかった。ミスが多い、というより、音が入ってない感じが聴こえてきてしまうんですよね。うまいところはうまいのですが・・・。結果的に、難しいところはたくさん練習したためか丁寧に聴こえて、そうでもない箇所が雑に聴こえるようになっています。もっと練習は平たく等しく。その「ダラダラ音を並べる」時間に音楽的なこと(フレージングや強弱、アーティキュレーションなど)が自ら生まれてくるような、そんな奏者になってほしいと僕は思います。

やりたい曲はきっと溜まっていると思うので、また次の参加を楽しみにしていますね!

 

13.ソナタより第3.4楽章/ラフマニノフ

ピアニストにたくさん救われましたね。それにしても今回の演奏は僕が褒める必要がないくらい、皆が君を誉めていました。圧倒的なクオリティでしたしピアノをよく聞き自身の悪いリズムともきちんと向き合ってきたのでしょう。

元々、技術的なことよりも音楽性のことに向き合ってきたと思います。いま少し逆転していて、技術が音楽に追いついていません。つまり大きなクレシェンドをかけると音程がどこかへいく、口を締めて高音にいってしまうためすぐにバテが来てしまう、音の後押しが多すぎる、など、悪癖が増えてきてしまっています。今後もなるべく多くの譜面が読んでいきましょう。

またフレーズの語尾が長い音だと音程が下がる(まれに上がる)事が多く、意識が必要です。もっ客観的に自分の演奏が見つめられるように。そのためには、もっと他人の演奏を聴く必要はあるかもしれませんね。

とはいえ大ブラボ―でした。難曲をよくここまで魅力たっぷりに演奏してくれました。

 

14.ユーモレスク/グリエール

「ちょっとこのままだと曲の魅力もくそもない」という話を最後のレッスンでして終わってしまったので、どんな風に完成するかな、と不安だったのですが・・・本番に限って(というのはどうなんでしょうね)完成度の非常に高い演奏でした。前回の曲から比べると相当に難しい曲だったと思いますが、その曲を完成度高く仕上げられたのは素晴らしいことです。

フレーズの切れ目がうまく表現できないことが多いようです。フレーズの入りと切りは舞台に出る人の入退場によく似ています。バッと出てきてバッといなくなるのか、そっと入ってきてバッといなくなるのか。色んなパターンがあるかと思いますが、フレーズも同様です。特に切れ目というのは相当に意識と工夫をしないと雑になりがちですので、今後の課題にしていきましょう。

ブランク空けて半年以上経ちましたでしょうか。ぼちぼちアンサンブルや合奏への参加の報告を楽しみにしたいところですが、まだまだ自力に不安があると思いますから、またエチュード読んで持ってきてくださいね!

 

15.ファゴット協奏曲イ短調/ヴィヴァルディ

バランスのいい演奏でした。普段は「やりすぎ」か「やらなすぎ」が多い印象ですが、今回は全体を通して心地よい表現が多かったです。つまらない演奏だったかというとそうでもなく、コントラストがよくついていてとても楽しめました。

強弱が音量以外(音色とかアタックとか)でうまく表現できていてよかったです。つけてきた装飾等等のアイディアもよく表現できています。

簡単な運指による速いパッセージが入りきらない事が多いようです。「ここはできるから」と目をつぶってきたと思うのですが、最終的に他と等しく時間を使ってあげないと聴いている方には雑な箇所に聴こえてしまいます。難しい箇所をきっちりさらう、ということは覚えたと思うので、全体のクオリティをそろえる、という作業を覚えるとより良い演奏が目指せると思います。

それにしても、今までと比べて別人のようにいい演奏だったと思います。今回得た自信を普段の演奏活動にもぜひ生かしていってくださいね。次回はロマン派作品なんか良さそうですね。シューマングリンカウェーバーあたり。ぜひ聴いてみてください。

 

16.ファゴットとピアノのための組曲より第1.2楽章/ロンゴ

大変な環境下、よく頑張りました。環境的にバタバタすると練習が雑になっていくものですが、そんな印象はなくメリハリのついた時間を過ごせたのかと思います。今回得た感覚を忘れずにいれば、計画的にやれば今後も続けていけるんじゃないかなぁ、と思います。

曲の魅力をよく理解し、そのための技術を取得し演奏する。そこまでのレベルであればかなり高水準の演奏だったと思います。ではその次の段階というと・・・。それを共演者であるピアニストと(瞬時に)共有し、共有した音楽を客席に伝えていくこと、です。ピアノの音符は頭に入っていたとは思いますが、共有する力が欠けていました。もちろん緊張のせいもあったのかなとは思います。この発表会はソロに挑戦する場ですが、最終的にはけっきょくのところ、ピアニストとのアンサンブルなのです。もっと共演者に影響を受けた演奏ができるようになれば面白くなるんじゃないかな、と思いました。

というわけなので、ピアニストと絡むことの多い作品に挑戦すると面白いかもしれません。シュレックシューマンの3つのロマンス、ヒンデミットソナタ、あたりは譜読みの負担も少なめなので面白いかもしれません。

 

17.パストラーレ/ミヨー

大変にハイレベルな演奏だったと思います。「ミヨーがMVPだと思ったんですけど!」と何人にも声をかけられました。トリオダンシュは合って当然のジャンル、という話はレッスンでしましたよね。その水準は大きく上回った名演だったと僕も思っています。即興性のようなものも感じ、よく聴き合った演奏でした。

欠けた部分を挙げるのであれば、個人個人のヴィルトゥオーゾがもっと欲しかった、というところでしょうか。オーボエは馬力不足、音色の良さに頼らない表現幅をもっと磨きましょう。クラリネットは強弱以外の色がもっと欲しい。強いけど優しい、弱いけど存在感のある、なんて表現を覚えたらもっと素敵になります。ファゴットはもっと安定感があった方が良いかもしれません、技術的なことではなくて、共演者に応えようとしてキャパシティを越えたものを表現しようとして1人になった時にパンクしてしまう、という箇所が何か所かありました。

アンサンブル、けっきょく個人技。もっと自分が光れば共演者のことも幸せにしてあげられて、結果として自分がもっと面白くなります。個人技が一回り成長したあたりで、同じメンバーの演奏が聴けたら嬉しいな。

 

18.三重奏曲/オーリック

ゲスト2名と主宰によるトリオダンシュでした。3回に1回くらいやっている、ファゴット以外のゲスト奏者を招いてのアンサンブルですが僕としてはこれが一番たのしくて、これをやりたいがためにみんなにアンサンブルをやるよう促してきました。

お2人とも本当にありがとう。またオケの現場でよろしく。

 

19.2つのファゴットのためのソナタ/モーツァルト

ファゴットの二重奏といえばコレ。という作品ですね。いろいろな演奏が世にあふれています。その一角としての今回の演奏ですが、この曲の魅力を大変よく表現しており、ニコニコしながら聴ける演奏でした。しかし縛りの多い古典派でありながら、「モーツァルト」という絶対的な世界観を表現するのはとても難しかったと思います。お疲れさまでした。

さて、では、この曲を聴いたこともない、モーツァルトの作品だ、とも知らない人が聴いたら今回の演奏はどう思うでしょうか?二重奏という性質上、旋律が聴こえない、なんて自体にはなかなかなりませんから、伴奏系がいかに魅力たっぷりに聴こえるか、が二重奏のミソだと思います。「伴奏が旋律に合わせる」というだけでは二重奏は成立しません。そもそも伴奏という概念は単旋律楽器1本ではほぼ成立しません。伴奏だと思って演奏してしまうと止まってしまって聴こえてしまいます。また旋律のパートの人も、もう1人に呼応した演奏でないとやはり面白みに欠けてしまいます。残念ながらあまりいい演奏が聴けないのがこの曲の残念なところです。

もっと挑戦があってよかったし、もっと詰める部分がそれぞれあったのではないでしょうか。人数の少ないアンサンブル、というものの難しさ、もっと楽しんでいきましょう。

 

20.4つの舞曲/ボール

初めて聴く作品でしたが、聴き映えのするいい曲だと思います。

テンポ感とアーティキュレーションはレッスンでかなりしつこく、強く伝えてきたつもりでしたが、1週間前だったということもあって、残念ながら大きく変化は感じることができませんでした。僕としては残念ながらそれ以上の言葉は無いのですが・・・。

3人とも、楽器を吹く技術はたくさん持っていると思います。音色も綺麗ですし、音程も悪くない、指や舌も十分に動きます。でもそんなことが聴きたいのではなくて。足りないのは、作品に対する誠意です。今回の作品に関してだけ言えば、極端な話、劣悪なDTMソフトへの打ち込みに劣ってしまう部分がたくさんある演奏でした。持っている技術で「なんとかしよう」という練習ではなくて、1つ1つの楽譜に対して真剣に向き合わなければ、今以上、楽器の演奏は面白くなりません。「このくらいのテンポなら吹けるかな」と思うメトロノームの数字を半分にして、テンポ以外の情報を1つも落とさず吹く練習(レッスンで、ではなく、個人の練習という領域で)から始める、ということを僕はファゴットの生徒たちに徹底させています。ぜひそういった時間を楽器にあてて、作品に対する誠意を見せてほしいものです。ぜひ同じメンバーで、前と違う!という演奏を今度聴かせてくれれば幸いです。

 

21.五重奏曲より第1楽章/カプレ

色彩感ゆたかな演奏でした。モチーフの少ない曲(楽章)ですからそれそのものが難しかったと思います。バランスが良かったのは管楽器4人ともにいい楽器の鳴りがあるからですね、素晴らしいことです。

しかしホルンを欠いた木管アンサンブルですから、フォルテを聴かせることに苦労が感じられました。楽器はよく鳴っていますから、音色や発音による変化がもっと出ると奥行きのある演奏になったかな、と思います。

ピアノはもっとコントラストをつけることを意識して。音数の多さがダイナミクスに直結してしまうとアンサンブルでは共演者が苦労してしまいます。レッスンでも言いましたが「管楽器なんて出てこなくていいや」と思わせるような音を出してもらってこそ、アンサンブルが面白くなるというものです。そのへんの気持ちはファゴットやフルートを吹く君だからよく分かってるはずですね。

テンポ感が良すぎて、アゴーギグが感じにくい演奏になっているのも気になりました。レッスンでも触れましたが、もっと書いてある発想記号を大げさに出していきましょう。変わってないな、と思ったら気づいた人がすぐ口に出さないと、ただ慣れるだけの合わせになってしまいます。

 

22.木管五重奏曲/タファネル

名演でした。木管五重奏といえばこう、という印象通りの演奏ができるメンバーだったと思います。

木管五重奏は同じ管楽器とはいえ発音帯が全く違う5つの楽器がそろっていますから、他人の演奏と自分の演奏のギャップに気づき修正していくことが必要不可欠となります。レッスンで指摘した、フルートはアタックの弱さ、逆にオーボエはアタックの強さ、ホルンのフォルティッシモ等、もっと気にして本番までに修正していってほしかったです。クセというのは色にもなりますから、いいこともありますが、基本的には毒です。持っていていいので、必要ないときにきちんとしまえるようになるといいです。木管五重奏は異文化交流ですから個人のクセを出しっぱなしではうまくいきません。

逆に個が光る事もたくさんあり、ぐっとくるシーンも少なくなかったので、個を出し入れできると「みんな全然ちがう演奏してるのにまとまっている!」という演奏に近づけます。そんな演奏、聴いたことありますか?なければもっといろんな演奏会に足を運んでみてください。若手プロの木管五重奏とか、色々(よくも悪くも)あっておすすめです。

 

23.ラプソディ/オズボーン

自分の演奏です。いい意味で無伴奏の作品らしく、狂詩曲らしく、というのがコンセプトで演奏しました。まだ数か月この曲とは向き合わなきゃならんのでいいタイミングで本番で吹けたのでよかったでしょうか。

 

24.3つの二重奏曲より第1番/ベートーヴェン

2人のセンスがそれぞれ光る名演でした。二重奏としてはとても水準が高かったと思います。1楽章はもっと2拍子を感じて演奏すると軽やかでよかったかな。テンポ感、というよりは拍子感で。トリルや簡単な連符をもっと正確に大切に。別にできてないわけではない、でもうまくもない、という音の並びが多かったです。なんでもない並びを美しく、というのは古典派を演奏するうえでは必修科目です。

2楽章冒頭のトラブルも拍子感の共有がなされていなかったから起きたことのようです。先に出るクラリネットは装飾音符をきちんとリズムで吹けるように、ファゴットはそれを信じてきっちり入ること。どちらも大切なことです。立場上、ファゴットの方が古典・バロックの様式には強いのですから、ナビゲートしてあげると良かったのかも。

3楽章の難しい(?)連符も、並ぶのが目的で終わってしまう印象です。名人芸として聴きたかった。たぶん持ちうる一番いい音が並べばそれだけでいいんだと思います。和声感、色彩感なんかはとっても素敵な演奏でした。

連携は素晴らしく取れているけど、古典派という魔物にやられてしまった、という印象の演奏でした。

 

25.デュエッティーノ/ボザ

今回のアンサンブルMVP。曲の味を最も生かすことに成功した演奏でした。短い音の連打がすこし転んで聴こえてしまいます。「短い」というキャラクターを生かすためには転ばない工夫が必要不可欠ですから、単純なリズムを感覚的につかめるといいですね。

二重奏というジャンルはバランスを取る必要は殆どないのですが、それでも主役とそうでない側に分かれることが多く、その表現が難しいのですが今回の演奏は見事に吹き分けができていました。

遅い楽章に関しては、ふたりとも発音がもう何種類かあるとよかったと思います。柔らかい発音+鳴る音、強い発音+鳴らない音、なんて組み合わせを使うと音色・ダイナミクスのバリエーションが増えて面白くなります。要練習です。

アクセントの付け方が2人で揃うともっとよかったですね。二重奏ですから、アクセントの種類は違ってもいいかもしれませんが、温度が違うところが多く、結果としてかみ合って聴こえなくなってしまいました。すり合わせがもっとうまくなるといいですね。

 

26.無伴奏チェロ組曲第3番より「ブーレ1.2」/バッハ

前日のレッスンであれだけ乱されて(?)よく1日でまとめました。本当にその一言に尽きるのですが。「こう吹こう」と決めたものがそう聴こえる、という当たり前であるべきことがファゴットはすごく難しいのですが、うまく演奏できていました。つまり表現したいことに技術が追い付いている、ということです。素晴らしいことなのですが逆に言うと、技術が先行し表現したいことがまだまだ足りていない、という状態とも言えます。無伴奏作品というのは自由がききますから、無機質なものが一切許されない世界です。もっともっと楽譜のすみからすみまで、音を出すたびに自分のやりたいことで満たされていくような練習ができるといいですね。

技術的には、もっと薄いところがあってもよかった気がします。全部いいい音、とも言えますが。ブーレのみで始まり終わるのですから、コントラストをもっともっとつけないと面白みに欠けてしまうかもしれません。

次回はぜひ、ピアノ有りの作品を!名ピアニストと共演するチャンスでもあるのです。

 

27.タンゴの歴史より「ナイトクラブ」/ピアソラ

ファゴットの新しい可能性を見た、という印象の演奏でした。力任せな部分がなく、大変好印象な演奏でした。軽やかな箇所は光っていましたが、もっと歌うところはしっかり歌いコントラストがついているとより良かったかなと思います。おそらく軽いセッティングで演奏したのだと思いますしそれは間違っていないので、軽いセッティングで楽器をしっかり鳴らすテクニックを身につけましょう。

6拍子のテンポに無理を感じました。いい意味でマイペースにできるように。ピアニストを無視する、というのも大切なテクニックです。それにしても、悪いコンディションの中よくあれだけの演奏ができましたね。それが君の底力です、誇りに思っていい。

グリッサンドポルタメント?)はもっと後ろに寄せて。それっぽく、という部分でもう少しこだわりが欲しかった。

そのうちほかの楽章もぜひ挑戦してください~

 

28.2つのファゴットのための協奏曲/ヨンセン

「合わない」なんて印象は感じませんでした。もちろんいい意味で、です。むしろもっと個が聴きたい、合わせないで!というシーンの方が多かったです。ファゴット2本というのはもっと勝手にやるものです。普段の習性から苦手とする部分かと思いますが・・・「勝手な人」を演じられるとうまくいくかもしれませんね。いい意味で合わない場所を増やせるともっとよかった。

トリルをもっと技術的にしっかりさらいましょう。うまくいってないトリルにもっと向き合って。やたら速い連符だと思って。

持っているタンギングが2人でよく似ているんだと思います。つまりそれぞれが新しい種類のタンギングを覚えれば個としてもっと光れるかもしれません。

2楽章はもっともっと長いフレージングが取れると良かった。フレージングをつなぐ、ということは、山をきっちり作りその前後に仕組みを構築する、ということです。つなげている、という意識だけでは伝わりません。特にこの楽章はそれが難しいところですから、仕組みをもっと明確にしたほうが良かった。

それにしても、ファゴット2本、というのは良いものですね。このジャンルもっともっと探求していきましょう。

 

29.ソナチネ/タンスマン

長く準備をしただけのことはありました。元々「そこそこ」には吹けたと思いますが、あれこれ言った甲斐のある面白い演奏に仕上がっていて嬉しかった。

君はとてもきれいな音を持っています。つまり、とげのある音は意識しないと出てきません。タンスマンを演奏するには、少々綺麗過ぎました。もっとおどろおどろしい何かがうごめいているような箇所があるとよかった。それでこそ2楽章が光るというもの。

また、ピアニストとのアンサンブルがもっとうまくいくとよかったですね。個人としてリズムを取る事も大事ですが、かみ合わないとやはり意味がないものです。レッスンで「そこ速いよ」と言った箇所は本番も速かったのですが、僕が「速い」「遅い」とだけ言うときはだいたい、共演者がいる場合かみ合わなくなるよ、という意味合いです。タンスマンはリズムを喋る音楽です、もう少しリズムを表現できるとよかったですね。

 

30.コンチェルティーノ/ビッチュ

この曲がこのレベルで演奏されてしまうのだから恐ろしい発表会になりました。あまり言うことはありません。感情的になるべき部分(なってはいるのですが)の長い音が抜けてしまう事が多かったです。長い音、抜けるのか向かうのか、決めておかないとだいたい抜けてしまいます。ビブラートが途中で止まってしまうからそう聴こえるのかも。

カデンツァの装飾音符、イコールアクセント、にはなってほしくなかった。本当に聴こえたい音符がどこなのか、考えて練習しましょう。

楽器の鳴らし方がうまくなった、と思います。ツボをとらえられるようになった、といいますか。「音程が高い」という状態はツボを間違ってとらえてるときに起こる状態です。基本的にはね。つまり、音程も良くなりました。大いなる進歩です。

 

31.テーマとバリエーション/ドヴァリョーナス

おかえりなさい。自分で分かってるとは思いますが、悪癖が抜けて技術的にも一皮むけて楽器にも慣れてフレーズ感も磨かれてきました。昔の録音と自分の音を聴き比べてみると一目瞭然かと思います。一体何があった?

長い音(所謂四分音符以上の音)の処理をもう少し考えましょう。向かうのか抜けるのかかすれていくのか。意思がない音が1つでもあるとそのフレーズ全体が台無しになってしまいます。

楽器の鳴らし方を覚えたことと、変な編成の吹奏楽から離れたからだと思いますが、無理に鳴らさずともしっかり聴こえる音、というのを習得しています。宝物ですので、どうか大切に。たぶん自分で「この音はいいおとだ」と思って吹いてれば、きちんとその音は客席まで飛んでいきます。この感覚を忘れないように。長調の曲がもっと救われた感が出るとよかったですね。色彩感覚がもっと身に付くといいです。

 

32.ファゴット協奏曲ホ短調/ヴィヴァルディ

今回のMVPです。ここ最近異様にレベルが上がっている会ではありますが、MVP選出の感覚はいつも変わらず、録音で振り返ってもやっぱり名演なのです。

僕がレッスンでお伝えしている事なんて、曲のもつ魅力のほんの一部なんだと思いますから、教えた事が足し算で発揮される事より、化学反応みたいに新しいものが生まれてくることが一番うれしく思います。今回の演奏は、そういった演奏にしっかりとした技術が乗ったものでした。

きちんとフレーズの山を谷を表現できています。山を大きくしすぎるとリード・楽器のキャパシティを越えて鳴らそうとし逆に鳴らなくなる、という箇所が見受けられます。いつでも頭の7割はクールに、どのくらい息を入れればいいか計算しながら練習をしましょう。

3楽章、本当にびっくりしました。よく考えよく練習されていました。普段のレッスンと発表会の流れでこんなに化けてくれる人がいるなら、僕はこの会をいつまでも開催したいものです。

 

33.プレリュードとスケルツォ/ジャンジャン

この曲がこのレベルで演奏されてしまうのだから恐ろしい発表会になりました。2回目。

いつもそうですが、ピアニストとの絡み方が本当に上手です。よく聴いていて、その中にきちんと入れています。なのでいつでもピアノとのバランスが良いです。感覚的なものですから、大切な才能として伸ばしていってください。

フレーズの引き際が早すぎることが多いようです。特に長い音で終わるとき、減衰が早すぎないように。もっともっとキープした方がうまく聴こえます。リードがFの仕様だったのだと思いますが、それにしても、低音域が溶けない音色になってしまっていました。どんなリードでもコントロールは効くはずですから、低音が吹きづらいリードで低音をうまくふく訓練を積みましょう。

「うまく」という表現は便利ですね。もっと「うまいこと」やりましょう。ちょっと正面から勝負しすぎなのかもしれません。ハイFは見事でした。

 

34.ファゴット協奏曲より第1楽章/ウェーバー

トリにする、という采配は大正解でした。たぶんトリでなかったら、こんなにうまいこといかなかったでしょう。そのクソ度胸は天性のものです、武器にしていきましょう。

それにしても、ピアニストに3~5回、命を救われた演奏です。次会った時、もう一度お礼を言っておきましょう。

僕も褒めましたし皆にも褒められたと思いますが、ウェーバー1楽章の完成度としては4割程度かと思います。大切な部分はきちんと乗り越えていますが傷が多すぎたのも確かですから、慢心せずこれからも頑張っていきましょう。慢心せず、とも言いましたが、「ウェーバーがなんとかなったのだから」と思えばどんな譜面でもなんとかなります。今後は「傷のない本番」を目指していきましょう。

 

 

第13回発表会でした。総括と各奏者・団体への講評とか、次回のこととか。

こんにちは。またまたお久しぶりの投稿になってしまいました。

「ブログ」って名称はいいですね。「web日記」だったら日記の体裁を保ててないのでもうやめてしまっているかもしれません。笑

 

先日、年3回行われている僕の生徒たちの発表会が行われました。

生徒たちによるファゴットソロ演奏と、僕のレッスンを受けたアンサンブル団体による演奏を中心とした発表会です。初期のころはソロばっかりだったのですが、ここ最近はアンサンブル団体が増えてきてバリエーション豊かなプログラムとなってきました。

11時に開演し19時に終演。すごく長いようですが僕としては教えたことをどうやって消化して本番にのぞむのか、とても楽しみな時間です。出演者同士も終演後に互いの演奏を認め合う、とても素敵なコミュニティになってきました。認め合ううちにアンサンブル団体が結成されたり。

今回はドルチェ楽器東京のサロンをお借りしました。なかなか使うことのできない会場を使えるようになったのも、これだけたくさんの人に参加してもらっているからだと思っています。出演者のみなさま、本当にお疲れさまでした。

 

発表会そのものが「レッスン受けて人前で演奏すれば誰でも手っ取り早くうまくなるからやってみよう」というコンセプトです。レベルは初心者から音大生顔負けな子まで様々です。それぞれ色んな環境で楽器に取り組んでいますが、一人残らず別人のようにレベルアップしていきます。そういったコミュニティを築き上げることができたこと、とても嬉しく思っています。今後もとても楽しみ。

 

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第13回発表会の集合写真です。50人越えの出演者たち。

 

さて、次回発表会のお知らせです。

2019年3月24日(日)お昼ごろ開演

アーティストサロン"dolce"東京(新宿駅西口より徒歩5分)

以下の出演者、募集しております。

ファゴットソロ演奏

ファゴットのソロを演奏して頂きます。僕のレッスンを1回以上受けて頂ければどなたでも演奏参加して頂けます。参加費にレッスン1回分を含んでおります。

・アンサンブル演奏

2重奏~8重奏程度のアンサンブルでの演奏をして頂きます。僕のアンサンブルレッスンを1回受けて頂ければどなたでも演奏参加できます。こちらも参加費にレッスン1回分を含んでいます。

参加費はファゴットソロが14000円(学生10000円)、アンサンブルはひとり6000円(出演人数によって割引あります)です。

詳しくは

発表会参加・お問い合わせフォーム

までご連絡ください。参加申し込みもこちらから。お待ちしております。

 

さてここからは、恒例といいますか、各演奏の講評となります。

出演者以外には興味のない記事になるかと思います、が、意外と出演者以外でも講評まで読む方がけっこういるようです。なんだか恐れ多いような・・・。

 

1.ファゴットソナタ1.3楽章/シュレック

忙しい日程のなかお疲れ様でした。以前までの君を知っている子たちが口々に「とてもうまく(よく)なった」と言っています。僕もそう思います。

細かいテクニックであるとか音楽であるとか、日々レッスンで伝えていることが身についているのも確かですが、人の印象が変わるほどの変化がようやく(?)訪れたようです。それはきちんと向き合ってきたからこその大きな成果なので、自信を持ってほしいです。

力まかせな部分はまだ抜けないようです。「こう吹きたい」が先行すると音程だのリズムだのがよそへ行ってしまう傾向はまだまだ改善する必要があります。「こう吹きたい」と吹くのではなく、物理現象として自分の音がどう変わっているか気にしながら練習するようにしてください。楽器の演奏というのは心のうち5割くらいは冷静でいないとできません。今回印象が変わったのは、冷静であったからではなく適切な吹き方をなんとか習得できたから、です。冷静ささえ身に付ければもっと化けるんじゃないかなと思います。

レッスンでかなり厳しく言ったリズムのことは、付け焼刃ではありながらもよくなりました。これも「こう吹いているつもり」ではなく「こう聴こえている」のを大切に。

ピアノとの絡みがかなり複雑ま曲でしたが、ピアニストのおかげもありますが大きなズレは感じませんでした。以前までなら、もっとズレていたでしょう・・・。「きれいな曲」というのは大変なものですね。次はもう少し、聞き映えといいますか、テクニックを音楽が両立するような選曲ができるといいかもしれませんね。その辺はまたレッスンで。次はピアノともっと深く絡み合う曲が面白そうですね。ソナタものをぜひもう1曲。そろそろ若い子にあこがれてもらいましょう。

 

2.ファゴット協奏曲1楽章/シュターミッツ

初参加お疲れ様でした。

練習量でねじ伏せる!というよりは、なにかと考えて練習する必要のあるこの曲を選ぶとみんなとてもよく成長します。単純な奏法もものすごくよくなりました。小さな音、大きな音、をきちんとコントロールするテクニックがついたので、忘れないよう日々の練習で今自分はフォルテなのかピアノなのか、考えながら吹くようにしましょう。

トリルはもうひとつ、といったところでした。「なんとかごまかす」ところまでは練習出来ているのですが、旋律としてきれいに入れるのはもう少し訓練が必要でした。ここまでトリルがたくさん出てくる曲もなかなかないものですが・・・。

少し発音があいまいな箇所が時折見受けられます。きれいな発音とあいまいな発音は似ているようでけっこう違います。特に古典ものはハッキリ発音しないといけないところがたくさんあります。ハッキリ発音、柔らかい発音、がしっかり使い分けられるように。その2種類とスラ―を組み合わせるだけでずいぶんと色彩感が出てくるものです。

難所はよく練習しました!本番で危なげなくできたことはいい練習時間を過ごしたということです。その感覚を忘れず、今後に生かしていってください。

さてカデンツァ。楽器のトラブルについてあまり世話してあげられなかったことは申し訳ありませんでした。それにしても、出ないものは出ません。カデンツァであっても音楽は続いていますから、吹きなおすのではなくそのまま先にいくしかありません。それは初めてのソロ舞台ですから分からなくてもしょうがないので、今後は同じことがあっても出なければ先へ。と言っても、何度も何度も取り組む姿は決して格好の悪いものではなかったんだけどね。性格がよく出ています。あ、もちろんそれについては、ピアニストの援護への感謝も忘れないように。

今後も楽しみにしています。早めに取り組めるのであれば、ウェーバーの協奏曲に挑戦しましょう!

 

3.無伴奏組曲より「ブーレ1.2」/バッハ

復帰戦お疲れさまでした。自分の演奏を人に聴いてもらう、という喜びはじゅうぶんに味わえたでしょうか?

状態のいいとは言えない楽器だとは思いますが、苦にせずきちんとコントロールして吹けていました。音程もリズムも決して悪くありませんでした。ただもっと音楽そのものに積極的でいてほしかったです。「明るい」「暗い」はよく伝わってきましたが、それ以外のなんというか、指向性といいますか、向かう、収める、みたいなものがもっとたくさん聴きたかった。そういったものを作りあげる余力はまだ感じました。

チューニングから演奏開始が早すぎます。聴いている人にも準備があります。チューニングを終えたら目をつぶり、演奏後の清々しい気持ちを想像して、目を開け、ピアニストに目配せをし演奏開始、くらいの間があっていいものです。あれだけ丁寧に始まったアウフタクトがもったいないです・・・。

あとはソロの舞台というのは完全なる「非日常」です。それを楽しむには、やっぱり「おめかし」なのかな、と思います。いつも素敵なオシャレをしていると思いますが、非日常を楽しんで「私なんて」と思わず、気分の乗るオシャレをしてステージにあがってほしいものです。

今後も楽しみにしてます!オケや吹奏楽への参加がハードルが高ければ、ソロに加えて簡単な曲でいいのでアンサンブルに挑戦してもいいかもしれませんね!それはまた、相談しましょう。

 

4.チェロソナタ第2番より1.2楽章/ヴィヴァルディ

始めた会ったころからは別人、と、毎回言ってますが今回で完全体ですね。1年ちょっとですか、社会人でよくここまで成長できました。

難しい「はず」な箇所を難なく通り過ぎることができるようなる感覚、病みつきになりませんか?いい練習をすれば、それは無限に味わえます。だから楽器、やめられないんですね。

元々持っている音色がとても綺麗です。音程や音質もよくなってきたので、良くも悪くも「それで終わり」になりがちです。いい音色でいい音程、おかしな音もしない、でも起伏もない・・・といった印象があります。その音でもっと、音楽に流れを作りましょう。レッスンでも少しずつは提案してきたはず。「こうはならないように」は全部できていますが、「こうするとより良い」はすぐ忘れてしまうようです。

もう君のファゴットは下手ではありません。だからこそ、もっといい音楽が聴きたいですし、「もっといい音楽を奏でたい」という欲を持ってほしい。今回の演奏は、今までの悔しさがぜんぶ消し飛ぶほどよかったのですが、ここで満足せず、今回のクオリティを「最低ライン」に持っていけるように、また一緒に頑張りましょう。

「下手じゃない」で終わらず、「うまい」「かっこいい」「あこがれる」演奏を目指して。次回は、今回たくさん聴いた中で、好きな曲があればぜひそれに挑戦しましょう。

 

5.ファゴット協奏曲ホ短調より1楽章/ヴィヴァルディ

ほんと、最後のレッスンでどうしようかと思った。笑 決して練習していないわけじゃない、でも僕に会う前の悪い練習グセがどうしても抜けていなくて、今回いちばん心配していました。前奏がはじまって、「えっうそこのテンポはまずい」とさらに青ざめました。

君の持っている性質なのだろうけど、「なんとかする」力をすごく持っています。そこに適切な練習がほんの少し(日にちにしてほんの少し、密度はとても高かったのでしょう)乗っかって、今回の演奏にこぎつけた、という印象です。なぜその練習を最初からしなかったのか・・・!!と思いますが、みんなそうですし、僕も若いころそうだったので、仕方のないことなのでしょう。

とにかく最後のレッスンから比較して「本番いい演奏だった」自覚はお持ちでしょうか?持ってなかったら、捏造でいいので持ってください。直前ではありますが、とてもいい時間を過ごしたのだと思います。

「なんとかした」ことだけではなくて、曲のカッコよさはきちんと引き出せていたことに、とても驚きました。なるほど君はこの曲が大好きなんだな、というのもよく分かりました。今回のことで色んなことを掴んだと思います。単純にとてもうまくなったとも思います。今回みたいな練習を、次回は最初からしましょう!それが身につけば、ファゴットを吹くのがいまの10倍楽しくなるかと思います。今回のような練習を、曲だけではなく、(譜面の)数たくさんやることです。そのためにエチュードというのは無理なく効率よく練習ができる素材だと思いますので、時間見つけて練習しぜひレッスンに持ってきてください。

今後も楽しみにしています。そして、やっぱりウェーバーに挑戦してほしい!

 

6.木管五重奏曲/ニールセン

大曲、お疲れさまでした!前にも言った通り、僕は木管五重奏のレパートリーの中でもっともこの曲が好きです。大変さもよく分かっています。この木五の圧倒的にいいところは、単純に「聴こえてほしい音」がきちんと聴こえるバランス感覚です。アンサンブルを楽しむ術を5人ともよく知っていて、それは本当に素晴らしいことだと思います。それを生かしこの大曲の音楽をよく表現していました。

朝一で合わせをしてから来たのでしょうか?ホルンは調子が良くなさそうでした。木管五重奏の要はホルンです。朝一の合わせはホルン奏者の調子と相談して決めることです。また奏者自身も、自分の調子をととのえるためにもよく考えて時間を使うようにしましょう。そういったコミュニケーションもアンサンブルをやる上では重要なことです。

全員がそう、というわけではありませんが、個人でやれる練習や準備が足りてない箇所がいくつか見受けられました。合わせは楽しいですし大切ですが、以前にも書いている気もしますがアンサンブルというのはけっきょく個人技です。5人とも完璧に「楽譜通り」演奏できていれば合わせなんて確認で済むものです。これ以上のアンサンブルを望むのであれば、個人個人がもっと伸びる必要があります。それゆえMVPからは外しました。アンサンブルとしてクオリティが高いからこそ、個人が気になるものです。普通逆なんだけどね。

(ほぼ)同じメンバーで本番をこなしていくと生まれる無言のやり取りがもっとたくさんできるようになるといいですね!ヒンデミットとかダマーズなんか、その手のやりとりがないと成り立ちません。いかがでしょう?

 

7.プルミエソロ/ブルドー

バソンの演奏でした。「友人枠」で来て頂いたのですが、お仕事で何度もお世話になっている方のいつもと違う一面(?)を見れて僕はとても楽しかったです。

本当にバソンのお仕事できるんじゃないでしょうか・・・ぜひ出演情報お待ちしております。笑

 

8.ホルンとファゴットのための小協奏曲/ラハナー

実はアンサンブル部門MVP候補でした。

本来意外と溶けるのが難しいこの2本の楽器、確かに合わせの時は音色差が悪い意味で作用して三重奏としてはイマイチでしたが、本番は2人の音色がとてもよく寄り添うことができていて、音楽の方向性もレッスンで伝えたこともとてもよく理解し発揮してくれていました。本来はバランスが難しい編成だとも思いますが、ファゴットはしっかり鳴りホルンは優しい音色をうまくコントロールし聞こえたい音が聞こえたいように聞こえてくれていました。

ただ技巧的な部分でもっと音楽的であってほしかった。ホルンにその余力がなければファゴットがもっと先導してほしかったです。音楽のキャラクターはよく伝えていますが同じキャラクターの中にも方向性やおさめるところなんかがもっとたくさん見たい印象でした。

お2人がどのくらい仲がいいのかは存じ上げませんがとてもいいコンビでした。ピアニストへの乗っかり方も2人ともとても上手でした!この2人ならちょっとくらい破天荒な高音木管が一緒でも五重奏がうまくいきそうです。また一緒になにかやってください、待ってます。

 

9.ファゴットソナタヘ長調より1楽章/ドヴィエンヌ

音楽の組み立てがとてもうまくなりました。ちょっとくらい技術が不安定なところがあっても気にならないくらいよく組み立てられています。オケやアンサンブルでの君は僕はほとんど見たことがないけれど、どこでもそんな風に音楽の方向性を失わないように演奏していれば頼れるファゴット吹きでいられるでしょう。

よく楽器も鳴っていますが、「楽器のくせ」が悪い意味でよく出てしまっています。冒頭のCなんかは分かっていても不安定になりがちなようです。そこら辺はもう買い替え考えてもいいんでしょうね・・・そこは難しいところですが。これだけ日常で時間を使っている道具なのだから、お金をかける価値はありそうです。

技巧的な箇所に関して、もっと単純に楽器をもっと鳴らして音楽に方向性を持たせてほしく聞こえます。全くできてないわけではないのですが、よく回っている分もったいないですね。連符の頭だけ大きくて、後ろが小さい、ということが多いのは、ゆっくりさらっているときにそう吹いてしまっているからだと思います。速い音符こそ息をたっぷり入れるくせをつけましょう。

そろそろ歌う曲が聴きたいですねぇ。シューマンエルガー、フランスもので背伸びをするならタンスマンの組曲やボザのシチリアーノとロンドなんかも面白そう。今後も楽しみにしています!

 

10.ファゴットソナタ/シュレック

いやーーMVPをあげたかった!元々うたうのは上手でしたが、この曲を経てさらに上手になりました。分かりやすいようで絶妙に歌いづらい箇所の多いこの曲。ともすれば平坦な演奏になりがちなのですが・・・しっかりメリハリのついた演奏でした。

色彩感がとにかくずば抜けていました。ころころと色の変わる忙しい曲だから苦労したのだと思います。懸念されていたピアノとのアンサンブルも1日でほとんど解決して聞こえました。

総じて「きれい」な印象です。いい意味でもあるのですが、山が分かりづらくも聞こえます。どこか1か所に大きな山を設けるのではなく、中くらいの山をたくさん作ると人の心に多段的に届き感動するに至ります。山はもっとたくさんあっていい。小さい山はたくさんあるのですが・・・。

音の処理も抜群でした。「ここの処理を気を付ける!」という意思がよく伝わってきますしそういった箇所は本当に数晴らしかったです。が、音の処理(に気を付ける)箇所は小さく切り分ければ実はものすごくたくさんあって、気づけていない箇所も多いようです。処理があれば山ももっと生まれてくるかも。色彩感だけではなく、もっとシンプルな盛り上がりやおさめがあったほうが聴いていてワクワクする演奏になります。

そろそろフランスものが聴きたいなぁ。タンスマンとかケックランとか。曲に「届かない」感覚を味わったら化けるかも。結果として、届くことができれば、なおさら。

 

11.ファゴット協奏曲第1楽章/ロッシーニ

難曲を少ない時間でよく吹ききりました!この曲らしい奔放な雰囲気がよく出ている演奏だったと思います。

最近ほんとうにアゴーギグの使い方といいますか、そーいうのが本当に上手になりました。テクニックでねじ伏せているタイプの若い子たちにもとてもいい刺激になったんじゃないかなと思います。

音響などの影響もあるかと思いますが、高音域の響きや鳴りがもっと聴きたかった。楽に吹く部分はいいのだけど山場でその辺の音域に到達すると唐突に温度が下がって聞こえてしまいます。楽器が適切に鳴るポイントをもう一度確認し慣れ親しんでいくことが大切かと思います。

古典派独特の歯切れのいい速いタンギングがもっと身に付くといいですね。少しぼやけて聞こえてしまうことが多いようです。古典派が続いてしまうけど、次回とは言いませんがそろそろモーツァルトなんかも面白いんじゃないかなぁ。バロック作品もいいかもしれない。まだまだ「リベンジシリーズ」には早いかな。君が早いなら、誰も挑戦できない理屈になるんだけど。ファゴットにもレパートリーはたくさんあるから、未挑戦で大切な曲がまだたくさんですね。

それにしてもどこまで皆勤賞でいられるんでしょうか。笑 今後も楽しみです。

 

12.ファゴット協奏曲第2.3楽章/ロッシーニ

友人枠。でいいのか、ほんとうに。笑

それにしても「うまい子供」から「巨匠」へ日に日に近づいています。どうしたらそんな豊かな音がポンポン生まれるのか、と疑問に思ってる参加者がたくさんいることでしょう。

2楽章はもっと奔放というか、即興的なほうが僕の好みでした。聴いている人がニヤリとするような仕掛けがもっとたくさんあってもかっこいいんじゃないかなぁ。「教わってきた」感がないのが理想的。

3楽章はほんの一瞬の音の処理が気になるシーンがちょこちょこ見えました。実は3楽章は初めて聴いたんだけど、なんだか「忙しいフンメル」って感じですね。ほんと、とんでもない曲をとんでもないテンポで吹きますね。試験も頑張って!

 

13.演奏会用独奏曲/ピエルネ

数年ぶりの発表会、いかがでしたか?

曲調によく合った音色や発音ができています。難しいところも難なく吹けていますし強弱もよくついています。そもそも聴き映えのいいこの曲ですから、いい意味で吹いていて楽しいんだろうな、という好印象でした。

さて、それでも「素晴らしく感動した」という演奏には及びませんでした。それはどういった部分からくるのでしょうか。

例えばアーティキュレーションを中心とした楽譜に記載されている音楽への忠実さ、左手の親指や小指などの運指の正確さ、伴奏パートが頭にしっかり入っている上での精巧なアンサンブル、などという、ある種いちばんシンプルな部分がイマイチな印象でした。これは「曲を一生懸命練習すればよい」という要素ではなく、日常でどんなふうに楽器と向き合っているか、の姿勢がハッキリと音に出ます。いい加減な性格、とまでは言いませんが、楽できる部分は楽しよう、というところはありそうです。それは間違っていないのですが、運指や楽譜のことは「楽できる部分」ではありません。自覚はなくとも、習慣として向き合い方が良くないのだと思います。

まずは色んな譜面をレッスンに持ってきてください。合奏の譜面でも構いません。1曲でも多く楽譜にきちんと向き合っていけば、技術的にも持ってる音楽としても、挑戦できない曲はないくらいハイレベルな奏者になれると思います。

ウェーバーテレマンシューマン、ヴィヴァルディあたりの定番レパートリーに挑んでみましょう。その本番までに読んだ譜面の数と質で出来が決まると思います。来年の今頃には、大人たちを脅かす若手に育っていることを期待しています。

 

14.三重奏曲/プレヴィン

難曲をよく演奏しました!良くも悪くも、2人らしく生真面目な演奏に仕上がりました。それはつまらない演奏という意味ではなくとても丁寧な印象でした。雑にやると面白さがなくなる曲ですから、丁寧な印象はとてもいいことだと思います。

書いてあるリズムをそのリズムに聴こえさせる、という難しさをよく分かったうえで、工夫をたくさん垣間見ることのできる演奏でした。いい意味で音源などの先入観が強くないからこそできたことかもしれません。

さて、丁寧な一方、少し守りに入りすぎることが多く聞えました。合わせの複雑な箇所は守りに入ることも大切ですが、そのまま守りっぱなしなことが多く、聴いていてドキドキするようなポイントが少なくなってしまいました。少しずつズレてもいい、かっこよく!という意思が弱かった。僕もピアニストも色々言いましたから、消化しきれてないままの本番だったのかもしれません。ファゴットのソロはみんな、そこをうまく消化してくるのですが・・・相方がいる分、考えすぎてしまったのでしょうか。トリオというのは合わせるというよりは、攻め方を寄せ合うようなものです。もっと2人の内側からくる音楽がたくさん聴きたかった。相性が良すぎたのかもしれませんね。

丁寧なので、テンポ感もかなり後ろ目に聴こえてしまいました。もっと前にいく箇所を作り、丁寧な箇所も作り、という作業ができればよかったですね。発表会という性質上、ピアニストとたくさん合わせはできませんから個々からもっと発信してよかったかと思います。崩壊の危険性はゼロでしたが、その手の演奏というのは良いことばかりではないですね。2人とも、もっと攻めを覚えましょう。

 

15.演奏会用小品/ベルヴァルド

僕自身の演奏でした。

今回こそ本当に、自分の演奏はやめようかな、と思うほどに準備が間に合わない日々だったのですが・・・。そこは僕も経験を積んでいるようで、なんとかしました。なりました。なってましたか?

曲調は平和ですが技術的には平和ではないこの曲、みなさんぜひ挑戦してみてくださいね。

 

16.6つの三重奏曲より/ワイセンボーン

やはりファゴットアンサンブルといえばこの曲ですね。

よく知られた曲ですが、いい意味で先入観にとらわれず面白い仕掛けをたくさん楽しめる演奏でした。変に守りに入らず、それぞれが色々な挑戦をしていたことがとても好感触な演奏でした。

レッスンで「合って当然の同族アンサンブル」というお話をしましたが、当然、という領域以上によく合っていたと思います。同メーカー楽器というコンセプトが生きていたのだと思います。生きていた、とは思いますが・・・。もっと一致した何かが欲しかった。ヘッケルだけのアンサンブル、となると製造番号次第でずいぶん差が出てしまいますが、他社メーカーならその特性をもっと生かした何かが聞こえてほしかった。自分の楽器の良いところ、じっくり探してみましょう。

さて1楽章の事故について。偶然落ちた、と思っているのならそれは大きな間違いで、「数え」をおろそかにした結果の必然以外の何物でもないです。いつでも起きうる状態だったのはレッスンの時にも分かっていましたし、対策を取る必要についても説明しました。それでも起きたというのは、単純な準備不足です。ソロで落ちるのは、ピアニストはプロですからとやかく言いませんし勝手ですが、アンサンブルでやってしまうのは仲間の信用を著しく失う行為です。たまたま起きた事なら笑って許せるんですけどね・・。じゅうぶん反省しているかとは思いますが、偶然ではない、ということ、よく頭に入れておきましょう。

とはいえ、レッスン時に出来ていなかったことが危なげないレベルまで身に付いていたことも確かです。途中からはとてく安心して聴ける演奏でした。ファゴット吹きとしてはよく知っている曲でも、他の楽器の人は知らないことが多いですしウケも意外とよいこの曲の魅力、たくさん伝わったんじゃないかなと思います。まだまだ未開発なジャンルですから、またぜひファゴットアンサンブルに挑戦してみてくださいね。

 

17.ターフェルムジーク第1集第2曲/テレマン

バロックアンサンブル、というジャンルへの挑戦が僕はとっても嬉しかったです。普段音出しして遊んでいる事は聞いていましたのでどんな音がするか本当に楽しみでした。ファゴット通奏低音に使ってくれてありがとうございます。不便なことも多いのですが、奏者としては大切な演奏経験になったかと思います。

終始バランスに気を付けながら、というのは大変だったかと思います。成果はきちんと出ていて、会場の助けもあってか本番は聞こえてほしい音がよく聞こえていました。並びに関してはもう少し考えてみてもよかったかもしれません。聴こえづらいリコーダーを真ん中に置くと、単純に後ろに下がってしまうので余計に聴こえづらかったのかも・・・?アンサンブルのしやすさと聞こえの問題、バランスを取るのが難しいかとは思いますが。

バランスはよくなったのですが、即興性も含めて個々の音楽がもっとたくさん聴きたかったです。バロック時代の音楽は決して音を並べればいいだけのもではなく、むしろ古典派などと比べると感情的なものだと思います。単純なダイナミクスもそうですし、音の長さやアーティキュレーションなんかでもメリハリがつけられます。そういった工夫にまで手が届くとより素敵な演奏になったのではないでしょうか。次回また挑戦するときはそういったところにも工夫があるといいですね。なかなか大変なことも多いかと思いますが、また参加してくださるのを楽しみにしています。

 

18.アメリカーナトリオ/フェルナンデス

まずは面白い選曲をありがとう。この編成は以前取り組んだ事がありますが知らない曲でした。冒頭なんか一昔前の映画のオープニングみたいですよね。曲の雰囲気がよく出る演奏でした。レッスン時に指摘したバランスのことも改善され、合わせや個人の技術が難しい箇所も問題なくなっていたので、いい準備の時間を過ごされたようです。

個として一番伸びたのはクラリネットでしょうか。「アンサンブルは好きだけどどう吹けばいいか分からない」という印象でしたが、本番の演奏では一番負担の大きいトリオのクラリネットというパートをじゅうぶんに楽しめるところまで上達していました。アンサンブルは仲間と一緒にステージに立ちますが、結局のところ合わせる力も含めた個人技の見せ合いですから、それぞれの技術が伸びる以外に演奏をよくする手段はありません。難しいパートが多い楽器ですから、「自分がうまくなること」で他人とのアンサンブルをより楽しめるよう励んでいってください。

フルートが非常にうまく色彩感を出してくれました。拍子感やフレーズ感も素晴らしいのですが、長いフレーズで少し平坦になりがちのようです。もっと仕掛けを増やし、その仕掛けのための技術(発音や音量変化など)が身に付くようにするといいと思います。もともと持ってるセンスは素晴らしいので、もっと表現を大きくしかけるクセをつけると必要な技術がおのずと見えてくるかと思います。

ファゴットは長い音での鳴りと細かい音符での鳴りの差がとても気になります。長い音は鳴らしすぎず、細かい音符にたくさん息が入るよう練習しましょう。そのためには細かい音には丁寧な(ゆっくりなテンポでの)練習が必要不可欠なので、結果として長い音の扱いも上手くなるのではないでしょうか。

まだまだ伸びしろの多いメンバーかと思います。他の楽器を増やしてでもいいので、この3人の共演をまた楽しみにしています。名物トリオになりますように。

 

19.組曲「さんぽみち」/大石祥子

僕とゲストの杉田さん、ドルチェ楽器の渡邉さんとの三重奏でした。3人とも同門であり、同じ大学の出身者。僕と杉田さんは演奏の道、渡邉さんは楽器屋さんという道を選びましたがこうしてまた一緒に演奏ができたこと、僕ら自身とても幸せでした。客席にいた同門のNさんにもそれは伝わったようです。

こういった試みができるのも発表会運営の面白いところですよね。

 

20.パーティピース/スパーク

ユーフォニアム用の作品です。そのことが曲目解説(ひとこと欄)で説明されていてほしかったですね。

門下入りからもうすぐ2年ですか。だいぶ安定感が出てきました。テクニックはもちろんですがフレーズの歌い方はもう別人です。とても上手になりました。魅力的なメロディをきちんと魅力的に吹けるようになったこと、誇りに思って良いでしょう。

装飾音符の入れ方もとても自然で良いのですが、本来「不自然」である装飾音符を、どれもこれも自然に入れてしまうと平坦になってしまいます。「ここは少し特徴的に」とか、「ここは元の音符を重視して」とか、そういった変化がたくさん見えたら素敵だったなと思います。また、良くも悪くも正確に吹きたがる性格なようなので、裏目に出るとアゴーギグのない演奏になりがちです。ここは少し前、ここは少し収めて、みたいな計算がもっとたくさんあると、よりメロディの達人に近づけるでしょう。

上の話に近いですが、音色の操作ももっと見たかった。元々音色がすこし荒いためか綺麗に吹く方に意識が向いてしまい平坦になってしまいます。例えばどう吹いても荒い音の出ないリードでガツンと鳴らすような訓練をするとその逆も今以上にうまくなります。ぜひお試しを。

間違えたとき声を出すクセ、日常からなおさないとせっかくステージでオシャレしても無駄になってしまいます。気を付けて。

 

21.チェロソナタ第1番より1楽章/ヴィヴァルディ

復帰戦、お疲れさまでした!堂々としていてとてもよかったと思います。

拍手は最後まで浴びてから演奏準備に入りましょう。ひとりでステージに立つこと、そうそうないですが大切なことです。

演奏は思ってるようにできたのではないでしょうか?レッスンの時にも思いましたが、練習がとても丁寧で確実なものになっていると思います。そういった練習ができれば理論上どんな難しい曲にでも挑戦できます。挑戦はできます。

遅い楽章でしたが、もっとダイナミクスとしての山を聴きたかったです。大きい音、というより、「あぁここが盛り上がってるんだな」としっかり伝えることが大切です。あまり演奏されないレパートリーですからなおさらです。そこまで大きな会場ではないですが、会場いっぱいに自分の音が響き渡るような箇所がほしかったです。小さくまとまってしまわぬように。

「綺麗」なだけでは綺麗なものは綺麗に表現できません。メリハリあってこその音楽表現ですから、もっともっと表現のための技術を身に付けていきましょう。次はフォーゲルの協奏曲かシュターミッツの協奏曲、ミルデのアンダンテとロンド、あたりに挑戦してみると面白いかもしれません。古典派の軽快な音楽をぜひ楽しんでいただきたい。

 

22.2つの小品/フランセ

苦手なタイプの曲、という印象が全くなかったこと、誠意をもって取り組んだ結果で本当に素晴らしいことだと思います。「平坦にうたう」という事が少しは理解できたでしょうか。

楽器の鳴りのコントロールがもっとできるといいのかもしれません。一定の音だけとびぬけてしまう、ということが少しだけあります。この手の曲だとそれがとても浮いてしまうことがありますので、楽器をもっと自分の支配下におけるような訓練をしましょう。

紳士だのよっぱらいだのひょうきんだの、到底きみのキャラクターとは遠いものを僕もピアニストも押し付けてみましたが、きみなりに表現してくれたことがとても嬉しかったです。実際よくつかめていたと思います。その手のキャラクター表現のために我々は細かいテクニックを練習するのです。シーンごとのコントラストはとてもよくついていたので、同一フレーズ内でもっといろいろ変化があるといいですね。

とはいえとても難解な曲をよく理解して演奏しました。次は得意なやつ、びしっとやってほしいところです。

 

23.ファゴットと弦楽のためのディベルティスマン/フランセ

まずはメンバー集め、合わせの調整など、この曲をこの編成で演奏するに至ったこと、苦労が多かったと思います。お疲れさまでした。やはりこの曲は弦楽器とやってこそ、と思いました。ピアノで今後挑戦する人がいるかな・・・?

1stヴァイオリンとファゴットの絡み方は本当に見事でした。よくも(悪くも?)1stヴァイオリン中心にアンサンブルが進んでいくのは聴いていてとても安心できます。ファゴットは自分のことに集中できますからね。懸念されていたバランスも決して悪くはありませんでした。コントラバスが少し大きく聞こえてしまうのは会場のせいでしょうか(録音では分からないところですが)

さて一方で、2ndヴァイオリン、ヴィオラ、チェロはもっともっともっともっと主張が聴きたかったところです。皆さんの室内楽の経験値は知らないのですが、室内楽の弦楽器はもっと内声がゴリゴリ主張しないと立体感が出ません。ちょっとうるさいかな、というところで様子を見る、くらいでちょうどいいのではないでしょうか。ヴァイオリンやヴィオラに音量で消されるのはファゴットはあまり悪い気分はしません(弦楽器の音色の中に入って自分の音を響きかせるって本当に楽しいんです)から、もっと攻めるポイントがあってもよかったと思います。

ファゴットには四重奏(Fg.Vn.Va.Vc)や二重奏(Fg.Vc)、弦楽バックの協奏曲など、弦楽器とのレパートリーが実はたくさんあります。もしよければ、気に入った奏者に声をかけ別の曲にも挑戦してみて頂きたい。失礼ながらフルートやクラリネットとの室内楽のように主従関係がうまれず、いい意味で対等な音楽づくりにはファゴット相手は最適ですから。

 

24.ファゴット協奏曲第1楽章/フランセ、レシタティーヴォとアレグロ/ギャロン

今回のゲスト演奏でした。

うちの会に彼がゲストできてくれたこと、僕は本当にうれしく思いました。彼は僕の永遠のライバルなんです。たのしかったなぁ。

 

25.アンダンテとハンガリー風ロンド/ウェーバー

満を持して、といったところでしょうか?友人枠の演奏でした。

音色の操作が抜群にうまくなりました。以前は良くも悪くもいつも同じ(とてもいい)音色でコントラストをつけようとしていたのですが、今回は音色の操作が加わって立体的な音楽表現をたくさん感じることができました。年齢を重ねた、というのも大きいのでしょうか。

ダブル(トリプル)タンギングはじゅうぶんすぎるほど習得できたようです。習得して終わりのテクニックではなく、すぐ衰えるものですので合奏などで積極的に使うようにしておかないともったいないです。が、使うとシングルがどんどん衰えていくというジレンマ。ダブルを覚えた人すべてが陥ります。でもそれ自体を楽しめるようになると、面白いですね。

またハードル爆上げ役として演奏しにきてくださいね。

 

26.アリア作品7/ダマーズ

友人枠の演奏です。楽器の操作がとても上手になりました。曲が曲ですから少々分かりづらいのですが、楽器のポテンシャルの高さが(ようやく)見えてきました!すごいことだと思います。まだまだ未開発な楽器かと思いますので、今後も色んな面白いものをきかせてください。

「マイナーな曲を」とお願いしてきましたが、マイナーな曲は毎回誰かが持ち寄ってくるようになりましたので、逆に定番レパートリーに取り組んでもらうのも面白い気がします。誰かと同じ曲をぶつけても面白いですね(興味があれば曲がだいたい決まってきたころに情報を横流ししますよ)

次回も楽しみにしています。

 

27.ファゴット大協奏曲より第1楽章/フンメル

いつもレッスンでほぼ完成したところから磨いていく作業でしたが、今回はレッスンでは完璧に(!)未完成状態で、大曲ですからそのくらいでちょうどよかったのかもしれません。フンメルが大曲と呼ばれる難しさを、いい意味できちんと見せてくれる最高に僕好みの演奏でした。すこし力任せな部分はありますが、その「力」がないとできない部分の多い曲ですからむしろちょうどよかったとすら思います。

テンポの操作も見事でした。許容範囲ですし出すべき表現をきちんと出すうえで適切な操作を行っていました。何度でも繰り返し聴ける音源のようです。揺らぎによって生まれたピアニストとのズレに動揺しないメンタルがあればもっとよかった。ちょっとくらいのズレ、気になりませんし後から修正してくれますから自身は気にせず突っ走っていいのです。そこはもう少し合わせの経験を積む必要がありますね。

音色、というよりは響きの伸びがイマイチです。操作性重視のセッティングだったのかとは思いますが、小さな会場を埋め尽くすような響きの音は残念ながらほとんど感じられませんでした。難しい曲ですから、そこまで気はまわせなかったのかもしれませんが・・・そこはいわゆる基礎力というやつですから、最後にものをいうのは響きの量です。どうすればいいか、と言うと、「自分で思う最高にいい音」をいつでも並べるような練習、つまり、フンメルでやったような練習をいつでも行うことです。量ではなく質の問題として。

今回の演奏に至った自分の練習方法や音の掴み方を自信にして今後の演奏活動に活かしていってください。古典派意外と(?)よさそうだし、モーツァルトとかやってみたらどうでしょうか?さすがにレッスン1回じゃきついかもね。

 

28.幻想小曲集/シューマン

実は、なんていう必要もないくらいMVP候補でした。相手が悪かった。

殻を破った印象は全出演者中1番でした。今までできなかったレベルの音楽表現を習得しています。自覚がないのなら、今後の演奏活動で少しずつ自覚していく瞬間が訪れると思います。よく成長しました。

複雑なピアノとのアンサンブルもとても見事でした。ピアノ譜が頭に入ってないとそこまで丁寧には絡み合わないでしょう。ピアニストからこの日一番いい音が鳴って聴こえました。それを引き出したのは君のちからだと僕は思います。

さてこの曲の魅力の引き出し方、ピアニストのアンサンブル、これ以上ないクオリティを見せてくれましたが、足りなかったのは、君自身のファゴット演奏時代のこだわりでした。技術的に荒いわけではありませんが、鳴ってほしい音が鳴ってこない、発展してほしい音が発展してこない、ピアノの音に溶けたい音が溶けない、という箇所がそれなりに多くありました。曲の魅力を引き出すことと自分のファゴットの良さを引き出すこと、そのバランスをもっと取らないと、不自由の多いこの楽器で人の心に届く演奏はできません。本当にその点において、惜しかった。もっと自分のファゴットを、音を、愛してあげてほしい。

きつい曲もう十分やったし、楽しい曲やりませんか。ドイツ古典、ロマン派ものか、とにかく聴き映えのする作品を聴いてみたい。ダビッド、ベルヴァルド(やってみませんか?)、クルーセル、ブルドー、プレヴィン、あたり。ブラームスソナタも僕は好きなんだけど、あれはちょっと重いかな・・・

 

29.ホルン三重奏曲より第1楽章/ブラームス

レッスンでも言いましたが、本当にいいピアニストをつかまえました。いい奏者をつかまえる、いい奏者につかまえてもらう、どちらもそれだけで素晴らしいことだと思います。

ホルンはすこし手元で鳴ってる音を重視した吹き方に聴こえます。それが何によって起きてる事なのか僕には分からないのですが・・・間違いなくいい音が鳴っているのですが、ホールの響きが加わるといわゆる「うまいホルン」と差が出てしまうかもしれません。1m以上離れた距離で人に聴いてもらう。これだけで楽器を習うことにメリットはありますから、少し考えてみてもいいかもしれません。そこまで時間もお金もかからないですからね。でも厄介なこの曲をよく理解しいい流れを作ってくれていました。音の種類として、ブラームスにピッタリだったように思います。ただ、もしかしたらライネッケ(Ob.Hn.Pfのトリオ)なんかだと浮いてしまうかもしれません。難しいですね、金管楽器というやつは・・・。

ヴァイオリンからは「習い事」をどうしても感じてしまいます。いいメンバーに乗っかって弾くことは楽ですし気持ちのいいものですが、三重奏、という小さな編成でそれだけでは通用しませんし、周りは気持ちよくはなれません。多少強引でズレていてもいいから我を通す、という能力が絶対に必要です。それが苦手なのはわかりますが、その能力はファゴットコントラバスといった縁の下のナンチャラ楽器にも必要な能力ですから、楽器は関係ないのかもしれません。合奏とは得られる満足感も難しさも全く違う室内楽というジャンルに取り組むには、我を通すだけの力を身に付ける必要があります。3人で一緒に、という箇所で出てる音を一人でも鳴らせれば、それだけでひとまわりもふたまわりもよく聴こえると思います。鳴らせないわけじゃない、鳴らしにいけない、という印象です。合わせでどうにかする、というのは卒業し、まず自身が説得力を持つことです。

 

30.ソナタK292より「アンダンテ」/モーツァルト

ステージマナー、完璧でした。毎回指摘しているところですが、今回こうもビシッとするとは。奏者としての自信がついてきた、というのも影響している気がします。

「いっぱい練習してできるようになる」以外のことをたくさんたくさん学ぶことができましたね。曲の面白さに感謝しましょう。そうしてみんな、クラシック音楽にハマっていくんですね。

つねに綺麗な音のならぶ曲のようですが、実際はかなりビックリさせてくる音楽なのがモーツァルトです。コントラストはついていますが、音色が一辺倒なため、やろうとしていることの3~4割しか客席には聴こえてきませんでした。例えば「大きい」「小さい」のほかに、「豊か」「控えめ」のような要素がコントロールできるようになるといいですね。とはいえ、きれいに吹く「責任」のあるこの曲の魅力を今できる範囲で精一杯表現してくれたこと、僕はとても嬉しく思いました。

次はそろそろ、ウェーバーでしょうか。背伸びに思うかもしれませんが、今回すこし、技術的に楽をした分そろそろ頑張ってみてもいいかもね。きつければ、テレマンソナタfmollやブルドーのプルミエソロあたりもいいかもしれません。ちょっと聴いてみておいてくださいね。

 

31.Soft Swing Music/Voert

映像を見るとわかるかと思いますが、4人ともすごくいい顔しています。ファゴットアンサンブルって、ほんとに面白いですよね。

ちょろっと話しましたが「合って当然の同族アンサンブル」の魅力をこれ以上なく発揮した演奏だと思います。ちょっとしたプロの演奏でもこうはいきません。それは4人ともがファゴットアンサンブルを限りなく楽しんだから、だと思います。楽しんでいいんです、アンサンブルは楽しんでなんぼ、楽しみ方を磨いていく、そんな風に考えていってください。

コントラを用いない四重奏の課題は4thの低音ソロ時のバランスですね。聴こえない、というほどではないですが、そこに限ってバランスが少し悪かった。4thは鳴らすこともそうですが聴こえさせる吹き方、みたいなものができるとよかったですし、上3人は歌うけど響きの少ない音、みたいな操作ができればバランスが取れたかな。同族だからこそ、バランスというものはいつでもこだわっていてほしいものです。

日常的にめいっぱいファゴットアンサンブルを楽しんで、そのレベルで他編成のアンサンブルや合奏も楽しめれば、演奏活動は無限におもしろくなっていきますね。面白おかしく吹くための技術をそれぞれが磨いていけますように。コントラ入りのファゴットアンサンブルもぜひに。楽器はあるからね。

 

32.ファゴットソナタfmollより1.2楽章/テレマン

単純にファゴットがうまくなった、という話では圧倒的にMVPです。初めて会ったころからは別人のように上手になりました。今回覚えた楽器の鳴らし方はぜったいに忘れないで。よく響く音をコントロールする力は自分で思っている以上にハイレベルかと思います。

短調の曲らしい「泣き」の部分がもっと聞きたかった。自分の演奏で鳥肌が足りますか?鳥肌を感じるような音楽表現って、どんな風にするといいのでしょうか。決してバカでかい音や蚊の鳴くような小さな音をコントロールすることではありません。楽器のコントロールは身に付きましたから、それを面白い音楽に結びつける力を今後は身に着けていけるようになりましょう。

速い楽章では和声感が不足して聞こえました。和音はどのように動いているか、その中で自分の旋律はどう響くと気持ちいいのか、考えるか感じるか、してほしかった。通奏低音のパートはどのくらい吹いてみましたか?あまり吹いていないのではないでしょうか。「ちょっとここ吹いてみてよ」と声をかけられるファゴット吹きの友人が、もしいなければ作りましょう。ファゴット吹きは群れてこそです。とはいえ楽器の鳴りの良さと質のいい練習による安定したテクニックで安心して聴ける2楽章でした。「なんでか吹けちゃう」という状態までこれた自分の練習方法に自信を持ってほしい。それこそが僕の門下の真骨頂かと思います。

社会人になってから伸びる子が多い門下です。今後も無理しない程度に、面白い曲にたくさん挑戦していってくださいね。

 

33.ファゴット協奏曲2.3楽章/モーツァルト

セッティングが解決してよかった。そこについては、長いものには巻かれてみるものです。それのおかげ、と自分では思っているかもしれませんが、音をコントロールする技術と練習方法によるところが大きいと僕は思います。今後この発表会で君の2楽章以上のモーツァルトが聴けることがあるのでしょうか。ただトリルはもっとこだわって。終わりよければすべてよし、にならないのがクラシックですが、キメがイマイチだと台無しです。

音の響き方が抜群に良かったです。ただ君のいい音は練習して工夫して考えてようやく出てくるものです。理想を言えば、いつ吹いても今回の2楽章みたいな音が出てくるようになってほしい。音色の良しあしなんて曲によってまるで違うものですが、基本的に持ってる音が少し荒いのをもう少し気にして音出しをしてほしい。

3楽章はよくさらったな、と印象。そこはもう卒業しませんか。拍子感だのフレーズ感に問題があるわけじゃない。ただ「うまい」というより「さらってある」という印象です。以前の低いレベルにおいては、そこは君の長所だったのですが・・・。そのためには、今日だけ「さらってある」ではなくて、いつでも「うまい」という事が大切です。譜面の数をさらうこと。別に大して重要でない譜面を今回の本番並みのクオリティでさらうこと。その積み重ねに「安定感」のある「うまい」があると僕は思います。

つぎこの発表会に出るときは、「うまい演奏」を期待しています。

 

34.木管五重奏曲1.2.4楽章/ホルスト

名曲なのによく聴かせるのが難しい、というタイプの曲でしたね。それでもアンサンブル的な問題点はよく解決してあり、木管五重奏としては実はとてもハイクオリティな演奏だったと僕は思います。テンポの変化、ダイナミクス、基本的なバランス感覚、どれを取ってもかなりレベルが高かった。

しかし気になるのは個人としてのズレ。音色感であったり、向かいかた(クレッシェンドなどの量やペース)、同じ旋律の吹き方など、本来アンサンブルで一番楽しみたい部分にズレが多く、本来のクオリティの高さがそこに埋もれてしまう演奏になってしまっていました。ひとりひとりを取り出せばかなりレベルが高いのですが・・・。そういった意味ではもう一つの木管五重奏と真逆のタイプ、と言えるでしょうか。

特に今回のような会場(管楽器の演奏家のためにできている音響)だと、よく聞えるようにできていますから、出ている音が自分と客席で感じ方がまるで違います。それは本来会場など関係なくあるものですから、我流と習い事で一番ギャップがうまれてしまう部分です。想像力で補うことには限界がありますよね。

音楽の流れはオーボエが非常にうまく繋いでいました。オーボエを核とする木五は少なくないですが、集まるにはちょうどいい楽器ですからその方向でいいのかもしれません。逆に言うとオーボエが楽に吹ける環境をフルートやクラリネットは作りに行く必要があるかもしれません。

ホルンは聞こえてほしいところにガツンと聞こえてくれる大変いい仕事をしてくれますか、引いたときに存在感がなくなりすぎる傾向にあるようです。確かにそこにあるけどうるさくない、みたいな存在感が木管五重奏では必要不可欠かと思いますので研究してみると面白いかもしれません。

少しずつメンバーが変わりながらも継続してる木管五重奏があることをすごくうれしく思っていますので、今後もぜひ継続していってくださいね。

 

35.協奏組曲より2.4楽章/ヴォルフ=フェラーリ

テクニックとしての安定感がすごくついてきました。この安定感を一般的に「うまい」と呼ぶのだと思います。一番足りなかった部分ですから、身に付いて本当によかった。安定してくると気になってくるのが、ブレス明けの事故の多さ、休符や伸ばし時の拍感、ちょっと厄介な箇所の音程など、「ひびわれ」のような事故の多さです。以前のような「惜しい演奏」ではなくなったからこそこういったひびわれを減らす努力が大切なかと思います。そのためには日々向き合う譜面への取り組み方の改善、効率のいい演奏法の習得(=エチュードや基礎のレッスンにくること)が必要不可欠かと思います。すでにそれらには取り組んでいるかと思いますので、その線でいけば大丈夫です。

今回わりと速い楽章2つに取り組んでいましたが、技術的に忙しい箇所にももっとたくさんコントラストをつけようとしてほしかった。拍子感やフレーズ感はじゅうぶん見えるようになったのは進歩ですが、山や谷がハッキリ言ってまったく見えない演奏でした。確かに2楽章はピークの分かりにくい音楽ではあるのですが・・・。長さ、大きさ、音色の操作など、コントラストをつける方法はたくさんあります。

今後はそういったコントラストが必要不可欠な曲に取り組むと面白いかと思います。ウェーバーの1楽章、ヴィヴァルディやドゥビエンヌなどのバロック作品のメジャーどころも面白いかもしれませんね。

 

36.組曲/タンスマン

実はトリ候補でした。体調不良なども加味して避けまして、トリの前、という曲順にさせてもらいました。

打ち上げ以降、ほうぼうから「タンスマンの組曲を(いつか)やりたい」という声を聞きます。今回の演奏が名演であったことを僕が語る必要がないようです。皆の評判は正直なものです。

表現が思いのほか難しい曲ですが細かいところまでよく手が届いていたと思います。曲の面白い仕掛けをきちんと面白く演奏する、というのは難しいことなのですが、その点はまったく問題のない演奏でした。

安定感のある演奏である一方、すこし守りに入りすぎるシーンの多い印象でした。カデンツァのような箇所のテンポ変化はもっと積極的にほしかったし、クレッシェンドなどももっとゴリゴリかけてほしかった。技術的にそれができないわけではないですから、気持ちとして守りに入ったことが原因かと思います。守りに入ってもうまくいくわけではないですから、基本的には攻め続けるものなのだと思います。今後はぜひ攻めの姿勢で。

吹いててどう感じたかは分かりませんが、ホール映えのするいい音でした。ピアノともよく溶けていましたので、今回のようなサウンドを意識していくとちょうど良いでしょう。バロック作品なんかは、そういった音色感を意識して演奏すると面白くなると思いますので、次回ぜひバロック作品を。また楽しみにしています!

 

37.ファゴット協奏曲1楽章/ウェーバー

ほんと会うたびよく伸びるなと思います。トリを振ってから1~2か月、どれだけプレッシャーに感じたか。でもそれもぜんぶ僕の思惑通りで、きちんと吸収し力に変えてくるあたり、君の類まれなるセンスを感じます。ほんとうにすごいことです。僕との相性もいいんじゃないかなーと(僕は)思います。

あまりこういった表現は僕好みではないのですが、女性的な感性と男性的な感性を切り替えながらうまく使い分けられる力を持っています。今後は使い分けではなく、同時使用を心掛けると面白いかも。思い切りのいい演奏はこの曲にピッタリですが、どこか冷静な部分を残りしておくと安定するだけでなく、実はより情熱的に聞こえることもあるのです。例えば低音の不安定さはそれだけで解決したのではないでしょうか。

テノールのアリアのように」「バリトンのアリアのように」は大成功と言っていいと思います。ひいき目なしに、史上最高クオリティの1楽章でした。みんなそれぞれ面白いセンスを持っていますが、そんなセンスにあふれた天才たちが今回の君のウェーバーに嫉妬していたので、そんな君をトリにし僕の判断は正しかった(でも泣かれると動揺するよ別にいいけど)

長い音のうたいかたがあまり得意でないようです。オケなどでわき役としての長い音ではなく、ソリストとしての長い音の処理やビブラートのかけかた、研究してほしいところ。また、和音の動きを技術的に忙しいところでもっと表現、というより楽しんでほしかった。そこが本当に惜しくて、吹けているし楽器も鳴っているんだけどイマイチ届いてこないんです。和音の動きはオケが出す前にこちらがキッカケづくりをしているが多いので、オーケストラ全パートとアンサンブルを楽しめるような音並べができるとより面白い演奏になったと思います。

今回にあじをしめて、「よくみんなやる曲」テロに挑戦してほしいなぁ。シューマンテレマン、ヴィヴァルディ、ドゥビエンヌ、ブルドー、タンスマン・・・いくらでも曲の候補は出てくるね。その手の名曲で、ほんの少しの冷静さが発揮できると、また一皮むけるんじゃないかな。

 

 

2万文字越えですか。これを全部(過去記事まで)読む人種がいることを最近しってびっくりしています。僕はあまり日本語がうまくないので恥ずかしいのですが・・・。

みなさん本当にお疲れさまでした。こうしてみんなの演奏を振り返るのが毎回とても楽しくて、どうしても情報量ばかりが多くなってしまいます・・・・・。笑

次回もまた、たくさんのドラマを作りましょう。

基礎練のすすめ。大切なのは取捨選択!

こんばんは。世間は夏休みですね。我々音楽家毎日が夏休みのようなものであるのですが、やっぱりうらやましいなぁ・・・。

思えば音大に入ってからはやれ合宿だセミナーだコンクールだ仕事だ、という感じで夏休みらしい生活は高校生のときが最後だったような。でも社会人になってからの方が意識的に休日を作って人生を楽しめている気もします。

みなさんも素敵な夏をお過ごしくださいね。

 

さてさて、各所でいちばんよく聞かれる基礎練習のお話です。

まず、この記事の存在意義を怪しくしてしまいますが、「やるだけで絶対にうまくなる基礎練習」はありません。野球ならバットの振り方やボールの投げ方捕り方、サッカーならボールの蹴り方や走り方を教わる必要があるように、音楽には「やり方」があります。あなたにとっての「やり方」はレッスンに通う以外には手に入りません。これは大前提として、まず明記しておきたい。それはそれとして。

 

大切なのは、「今必要な基礎練習をきちんと見極めること」です。

毎日8時間練習できる人は、納得いくまで基礎練習をすべて行うといいと思います。でも個人練習なんて、やれて2~3時間でしょう?今抱えている譜面の練習もあるのに基礎練習ばかりにとらわれていては演奏家としての信用を失ってしまいます。

これから重要な順に基礎練習をおススメしていきますが、難なくこなせるようになったらほかの項目にもどんどん挑戦していくことです。いつまでもロングトーンや難なく吹ける調のスケールにとらわれていてもうまくはならないのです。

 

 

1.ロングトーン練習

前記事にもあるとおり、すべての基本となるのがロングトーンです。

初心者のうちは覚えている運指の音すべてをとにかくまっすぐ(音程や音量が揺れないように)伸ばせるようになることは大切なことです。演奏に必要な口周りの筋肉も育っていくと思います。音量は基本はメゾフォルテくらいの鳴らしやすいところで。すべての音で同じ音量が出せることが大切です。基本的に長さは問題ではありませんので、きちんと伸ばせたと思ったら次の音にいきましょう。

 

ロングトーンで気にする点は3か所。発音、伸ばしの音、音の処理です。どれか一つ欠けても正しいロングトーンにはなりません。

発音は基本的にはっきりと。舌をリードに付け息を作り、舌を離して発音します。発音から伸ばしの音に向かって音程や音量が変わらないように。最初から伸ばしたい音が鳴るよう意識しましょう。応用編として、柔らかい発音や通常より強い発音の練習があってもいいかもしれません。

伸ばしの音はとにかく揺れずにまっすぐに。吹きながらだと自分の音がどうなってるか分からなければ、携帯などでも構いませんから自分のロングトーンの音を録音して聴いてみましょう。大変に心が苦しい練習なので覚悟が必要です(?)

音の処理も、やはり基本的にははっきりと。「余韻を作れ」と指導されているかもしれませんが、音の余韻というのはホールでは残響が作ってくれますからハッキリ切れば美しく音は響いてくれます。応用として減衰するような音の切り方を練習することもあるでしょう。

 

ある程度慣れてきたら、自分の苦手な音域の練習に絞りましょう。中級者以上におすすめの練習です。

・低音(最低音B♭~1オクターブ上のB♭くらい)の音程が悪い、特に高いのは問題です。リードなどの問題もありますが、息のコントロールである程度音程は下げられますので意識して練習をしましょう。

・中音(最低音B♭の1オクターブ上B♭~さらに1オクターブ上B♭~5度上のFあたり)の音程が悪い、音量が鳴らない、音色が開く、などが考えられます。息や正しい運指で改善することが多いようです。改善した音の響きに慣れることが大切です。

・高音(ヘ音上線3本目のG~5度上のDあたり)はそもそも鳴らし慣れてないことがよくあります。まずは慣れること。慣れてきたら中音や低音との鳴りムラを減らすよう意識するといいと思います。音程も取り辛い箇所かと思います。

 

ロングトーンにおいての「音程」に関しては機械(チューナー)に頼るといいです。目をつぶってから正しいと思った音程で吹き、目を開いて確認し、その差異を認識します。音域内すべての音で差異がなくなったころには、結果としてしっかりと楽器が鳴っていることでしょう。それ以上の「いい音」があるでしょうか?もちろん、そのためにはリードや楽器・ボーカルの見直しがあることでしょう。

ロングトーンで鳴らせる音以上の音は実践では絶対に鳴りません。そういった意味で、「基礎の基礎」であると思います。

 

また応用として、ピアノ・ピアニッシモ・フォルテ・フォルティッシモなど、ダイナミクスを変えたりクレッシェンドなどをくわえた練習も効果的かと思います。

 

2.音階練習

先述のロングトーンで得た「いい音」を、最も基本的な音列パターンである音階で練習します。出ている音が「いい音」かどうかをしっかり見張るために、可能な限りゆっくりのテンポで練習しましょう。自分の音が聴けないような速さで音階練習をしても、指をごまかすのがほんの少しうまくなるだけで、基礎的な部分がうまくなったりはしません。

 

さて、練習する音階についてですが。結論から先に言うならば、必ず24調すべて練習しましょう。

もう十分に吹けるFdurやCdurをいつまでも練習するより、手も足もでないであろうHdurやesmollを練習するほうが遥かに効果的と言えます。特にシャープ系や短調、苦手ですよね?勉強でも苦手な科目から点数を伸ばせばすぐに成績が上がりますよね。そういうことです。目指すところは、Fdurと同じクオリティで24調すべてが鳴らせることです。それを目指して、僕自身、いまでも毎日音階練習を続けています。

24調に慣れてきたら、B♭-E(Es)までの調は3オクターブ目にも挑戦してみましょう。ハイトーンを吹く技術というのは、本当にある日突然、必要になってきます。音階で吹ければ実践でも吹けます。また、Eまで吹ける人のCとCまで吹ける人のCは安定感がまるで違います。そこらへんはきっと、金管楽器とも通ずるものがあるのではないでしょうか。

 

これは持論であり暴論であることは承知していますが、24調音階が並ばないこれを読んでいるあなたは、初心者なのだと、思います。あるいは読み書きのできない幼稚園児、車の免許のないタクシードライバー、包丁の握れない料理人、パソコンを持っていないユーチューバー、です。たとえに深い意味はありません。

ムッとしましたか?ごめんなさい。でも騙されたと思って、ぜひ24調、覚えてみてください。世界が変わりますから。

 

3.分散和音、インターバル、半音階

音階に余裕がうまれてきたら挑戦しましょう。

インターバルというのは、所謂ドミレファミソファラ、ドファレソミラファシ、ドソレラミシファド、なんてパターンの練習です。分散和音もインターバルも、もちろん24調ありますしパターンは無限大ですから、日替わりで1つずつ色んな調に挑戦していくのがいいかもしれません。ゆっくり確実に、慌てないで吹けるテンポの練習でも効果的だと思います。ここでももちろん、「いい音」であることが大前提!

半音階はダラダラと下から上まで駆け上がるより、オクターブであったり5度であったり、範囲を決めて少しずつ上げるなり下げるなりして練習するのが効果的なようです。

 

 

この他にも、タンギング(シングル、ダブル、トリプル)の練習も効果的かと思います。速さよりもクオリティにこだわりましょう。

 

 

基礎練習について、まじめに語ってみました。

我々ファゴット吹きは、どうしても出番の多い生き物です。つまり抱える譜面の量が多いのですから、基礎練習も大切ですがしっかり楽譜の練習をしましょう。楽譜の中にもロングトーンや音階、分散和音やインターバルがたくさん出てきますから、それをきちんと丁寧に練習していくのが、何より効果的な基礎練習になるのではないでしょうか。

 

たかが基礎。されど基礎。迷ったら、ぜひレッスンに来て相談してくださいね。

「私にはどんな練習が必要か」なんてご相談もお待ちしてます。

ご連絡はこちらから。 レッスンお問い合わせフォーム

 

脱・ロングトーン練習のすすめ。そのロングトーン、本当に必要ですか?

こんにちは。まさかの2日連続投稿!に、なるでしょうか?笑

いま私は、明日に迫った関西ファゴットフェスティバルの前日リハーサルに参加するべく大阪へ向かっています。関西ファゴットフェスティバルというのは、毎年行われているファゴット吹きが100人以上集まるイベントで、前半はゲストによる演奏(今年は千葉交響楽団の柿沼麻美さんが来ます)やプロ・アマ有志団体によるアンサンブルステージ、後半は100人の大合奏によるステージによる演奏会です。

今年で4年連続の参加中で、僕はこのイベントにたくさんのロマンを感じています。いつか、東京で....と、このことは今は置いておきましょう。でもチラシも置いておきましょう。

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さて、今日はロングトーン練習についての記事です。

まず先に言っておきたいのは、ロングトーン練習は絶対に必要な練習だと思います。特に初心者やブランク明けのリハビリ、高音域に慣れるための訓練、などに効果があると思いますし、何よりも曲中のロングトーンを上手く吹くのはとっても難しいことです。そのための訓練は必要だと思います。それは絶対にそうです。

 

 

が。

 

 

あなたは思い込んでいませんか?

ロングトーン練習さえしていれば音色が良くなる

ロングトーン練習さえしていれば上手くなる

ロングトーン練習さえしていればコンクールで金賞が取れる

ロングトーン練習さえしていれば音程が良くなる

ロングトーン練習さえしていれば指が回るようになる(!?)

 

すべて、間違いだと僕は考えます。ええすべてです。

 

ロングトーンの練習は、あくまで「音を長く伸ばすための練習」で、それ以上の効果も以下の効果もありません。

 

先述のとおり、音を長く伸ばすということはとても難しいことです。その練習は必要だと思います。でも時間は有限です。

いま目の前にある譜面、すべてきちんと音が並びますか?その音は納得のいく音ですか?

指揮者や指導者から、ほかに課題を与えられていませんか?

スケール練習は完璧ですか? ※これは持論ですが、スケール練習は24調全てが寝てても綺麗に回る(B♭〜Eまでは3オクターブで)ようになってようやく脱・初心者だと思います。テンポ不問で。それについてはまた別の記事で。

 

いや、いいんです、今あなたに必要な練習が、音を長く伸ばす訓練なら、それをぜひ納得のいくまで練習してください。でも。

特に吹奏楽出身者(もちろん偏見ではなく統計的に)に多いですが、ロングトーンで吹かせればプロみたいな豊かな音を出せるのに、譜面を吹かせると魅力9割減。譜面は読めないわ音は並ばないわで、レッスンで教えることが多すぎて終わりません。あまりにもテクニック的に不備が多いから普段どんな練習をしてるのかと聞くと、ロングトーンに1時間。残りの時間をスケールや曲の練習にあてている、と。

それは野球に例えるなら、3時間の練習のうち1時間ベースランニングにあてるようなもの。料理に例えるなら、1時間しかないのに40分かけて具材を切ることに集中するようなもの。サッカーなら2時間の練習で1時間パス練習し続けてるようなもの。

いやいや、時折そーいう日があってもいいと思います。それで成果が出てるならそれでいいと思います。あなたが本当にロングトーン練習に必要を感じるのならそれでいいんです。でもそれ、本当に意味がありますか?

その状態の子に「君は半年間ロングトーンの練習しなくていいから、代わりにスケールを全調2オクターブで覚えなさい。寝てても吹けるようになったら3オクターブ目をゆっくり覚えていきなさい」と言って、次のレッスンでは見違えるほど上手くなってます。

 

僕が思うに、ロングトーンの練習というのは基礎の中の基礎です。

ロングトーンでいい音作り(基礎の基礎)、ロングトーンで作ったいい音を最も単純な音列であるスケールで並べる訓練をする(基礎)、そのスケールを曲中で生かせる練習をする(実践)、という流れだと考えます。

そしてファゴットという楽器は、リードとボーカルと楽器が整ってさえいれば、ロングトーンの練習にそこまで苦労はしないはずなんです。何度でもいいますが、もし苦労しているならロングトーン練習をたくさんしてください。でも多分、その前にリードやボーカルを確認してみたほうがいいかも。

 

実は何年も前から考えていたことなのですが、こうして記事にしたのは色んな子を教えて確証を持ったからです。

「今のあなたは、ロングトーンがうますぎる、今それ以上はロングトーンは上手くならないから、スケールを練習しなさい。1週間で別人のように上手くなるから。」

この指示で別人クラスに上達した子が本当にたくさんいます。逆にレベルが上がっていくと、またロングトーンの練習が必要になって指示したりしますけれど。

 

 

ロングトーン練習は万能ではありません。限られた練習時間の中で「何も考えずとりあえずやればいい練習」だと思ってるなら、それは大きな間違いです。何も考えずとりあえずやればいい練習なんて一つもありませんから。

必要な基礎練習は人によって違います。今あなたにとって何が必要なのか、ちゃんと考えて選択すること。時間は有限なのですから。

ロングトーン練習の呪いから皆さんが解放されますように。

 

それでも自分のロングトーンに自信がないのなら、一度あなたのロングトーンを僕に聴かせてください。そのうえで、あなたに必要な基礎練習を一緒に考えていきましょう。お問い合わせは https://docs.google.com/forms/d/152E8ulw8F4t_WI4IiZTHX8oQyTcXz2cckPJVaPhpdyM

こちらから。お待ちしてます。

 

 

 

 

第12回門下発表会でした。講評、次回のこと、コンセプトなど。

こんにちは。一番最初に申し上げたいことは謝罪です。

このブログを見てレッスン依頼やリード注文の連絡をしてくださる人が結構いるし、記事を楽しみにしてくれている方も一定数いるのに、前回の更新が第11回発表会の講評記事でした・・・。

といっても恐ろしいことに(?)3か月半しか経ってないんですよね。いやでも3か月以上間の開くブログなんて、ブログとしての意味を成さないと思いますし、書きたいネタはたくさん溜まっているので近いうちにまた。

それにしても言いたいことを文章にするの、若いころに比べて苦手になったなぁ・・・。

 

というわけでタイトル通り、第12回の門下発表会が先週末に行われました。

ここまで回数をやっていると、わりと著名な奏者の方に存在を知られていたりすることも多いので、もうビビってる場合ではないと思い(?)今回のゲストは神奈川フィルの首席ファゴット奏者である鈴木一成さんに来て頂きました。

会場も日本ダブルリード株式会社様のサロンということで、会そのものが公なものになってきたなぁという気持ちです。

とはいえこの僕が取り仕切る会なので色々とゆるい部分も多いのも確かで、そこは常連出演者たちに助けられながらどうにかやっていけている、という感じでしょうか。

 

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毎回言ってる気がしますが、そもそものコンセプトが「難しいこと考えずにソロのレパートリーを人前で演奏すれば手っ取り早くうまくなるのでは」という気楽なものです。ファゴットの方はだれでも最初は「私がソロなんてとんでもない」と言って敬遠しがちですが、うちの会では楽器を初めて1年未満の初心者までもがきちんと1曲吹ききります。そして見違えるようなレベルアップをしていきますので、

「短期間でレベルアップ」「旋律をうまく吹けるようになりたい」「テクニックが欲しい」「ファゴット吹きの仲間が欲しい」「土日たくさん時間を取れないのでオケや吹奏楽は難しいけど楽器は吹きたい」という方にはおススメです。

最後の「土日に時間をあまりとれない人」というのは、発表会というのはとどのつまり、自分が練習さえできれば、あとはピアノ合わせに1時間程度と本番の日の予定だけ抑えれば演奏できますので、時間がない人にこそおススメの場所だと思います。レッスンは平日にも行っていますのでご都合よい時に来てくだされば。

 

というわけで、次回発表会のご案内です。興味のある方は下記のフォームからご連絡くださいね。

秋のひとときコンサート(第13回とのむら門下発表会)

2018年11月24日(土)お昼頃開演

アーティストサロン"dolce"(新宿駅西口より徒歩5分程度、ドルチェ楽器新宿店内)

参加内容

ファゴットソロを演奏する方(ピアノ伴奏あり、なしどちらでも)

・アンサンブルを演奏する方(編成自由)

です。普段ほかの先生に習っている方も歓迎(条件あり?)です、ご相談ください。

参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン1回分など)

ファゴットソロ(社会人)14000円

ファゴットソロ(学生)10000円

・アンサンブル 1人6000円

かけもちについてはご相談ください。

参加費にはレッスン1回分の料金を含んでいます。ふるってご参加ください!

参加〆切は特にありませんが、準備やレッスンのことなどを考えると10月末までにお申込みいただくとスムーズかもしれません。

皆様のご連絡お待ちしております。

申し込みフォームはこちら 

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さて、ここからは今回の発表会の演奏に対する講評記事です。

出演者以外の方には興味のない部分かもしれません。ご了承ください。

プログラム順です。演奏者については伏せていますが、問題があれば変更・削除しますのでご連絡頂ければと思います。

最後に総評を書いていますので興味があれば飛ばして読んでみてください。

 

1.無伴奏チェロ組曲1番より「ブーレ1.2」/バッハ

正直驚きました。技術的な進歩よりも、本来上級者でも難しいバッハの無伴奏を、自分なりにとても音楽的に演奏されていました。僕が教えた事を実施するのはある意味簡単なことかもしれませんが、それを越えて来てくれたのは、音楽的背景(人生経験?)の豊かさを感じます。さすがのひと言です。

1音1音をしっかり吹く、ということと音楽的な流れを作るということは逆のことのようで実は共通する部分が多く、そういった意味では前者はもう少しあってもよかったかもしれません。流れを作るための「この音!」みたいなものがもっと見たかった。それについては、僕の教えた事をもっと実施してくれてもよかったのかもしれません。

でもそんなこと、今後いくらでもできますので、初心者でもなんでも「自分のやりたい演奏」をきちんと伝えてくれたことが僕はとても嬉しかったです。今後も期待しています!

 

2.ファゴットソナタ/グリンカ

出演者の中で最もプレッシャーを感じていたのではないでしょうか。自分でどう感じているのかは分からないけど、「魅力的」であることと「派手」が大前提のこの曲、きっと苦手分野だった(魅力を伝えづらいタイプの曲に味付けがうまいタイプだと僕は評価しています)と思うのだけど、苦手をものともしない、魅力的で派手な演奏だったと思います。

レッスンで口をすっぱく「ピアノとのデュエット」という要素について触れたと思います。たしかによく聴いて演奏しているのですが、よく聴く(だけ)ということとデュエットをすることは似てるようで全然違います。そういう意味で「聴く」に徹してしまった部分が多く聞えました。それは間接的に自分の首を絞めることになっていたこともあったかと思います。テンポ感とか音程とかね。特にピアノの「左手」がよく聴けるのはさすがファゴット吹きといったところですが、「右手」もよく聴いてみよう。相手がオーボエクラリネットだったら今回みたいな寄り添い方はきっとしないはず。

でもとにかく、色彩感覚に優れた演奏だったと思います。場面転換の上手さや色の変え方はさすがでした。古株の貫禄は十分に見せてくれたと思います。次も同じ路線、というかしっかり歌う曲に挑戦してもいいかも。テクニックは十分あると思うので、テクニックの使い方に問題がありそうです。

 

3.ファゴット小協奏曲/ダビッド

脱・芸人は間違いないと思います。本番でちょろちょろあったことなんてひとつも気にならなくて、ロマン派のこの手の旋律が美しく吹けるのは才能と努力と感性があってこそだと思います。もっと誇りに思ってほしいところ。

音の処理、ということについてもう少し考えてみてほしい。音の処理というのは、フレーズの終わりの音をどうする、ではなくその音に向かう前の音をどう処理していくか、ということなんだと思います。最後の音だけで何かしようとする癖があるようです。

楽器とボーカルの鳴らし方はよく分かってきたんじゃないかなと思います。自分にとってのいい楽器を買うのは(信用があってローンを組めば)簡単なことですしそれはそれで素晴らしいと思いますが、今あるセッティングを信じていい音を作っていく、というのもやはり楽器演奏の醍醐味。そういったこだわりが少し演奏に見えてきて、聴いていて「うまいファゴット」以上に「君のファゴット」を愛して貰えるような、そんな風に成長していってると思います。

早い部分をさらうのも随分上手になりました。今回うまくいかなかった部分というのは、今後数をこなしていけば「何が難しかったんだっけ?」と思うくらいスムーズにいくようになると思います。ただ少し「諦めグセ」が気になります。生演奏が前提なのだから、何かあっても突き進む精神はぜったいに必要なことです。

 

4.3つの小品/ツェムリンスキー

楽曲に対する想い以上の「適性」はないな、と思わせる演奏でした。まだ若いですしハマり役、と言えるほど多分まだ個人で楽曲に取り組んではいないかとは思いますし僕も数回しか演奏を聴いていませんが、この曲が「ハマっている」と思わせる演奏でした。それは実力以上に演奏をうまく聴かせてくれます。何か月か前の「えっ私がソロなんて・・・」と言っていた頃より、ずっといい顔するようになりました。

1回のレッスンしかしてあげられなかったことをこんなに悔やんだ事は発表会創立以降はじめてかもしれません。技術的に音楽的に、もっと大きく僕に影響を受ければ君の思い通り吹けたんじゃないか、という箇所が数えきれないほどありました、それについてはこちらにも責任がありますね・・・次回はもっとじっくりやりましょう!

吹奏楽コンクールは「技術」と「表現」で採点しますが、僕はそのバランスがとても大事だと思っていて、どちらかに偏った演奏は必ずいい評価を得れません。そういった意味で、今回の演奏はそのバランスがずば抜けてよかったと思います。音楽表現のための技術を、自分なりにたくさん磨いた時間を過ごしたんだろうね。時間の使い方は大変にうまいと思います。

課題としては音色の操作でしょうか。まずは「厚い音」と「薄い音」の操作から覚えるといいかもしれません。「厚くて」「小さい」音、「薄くて」「大きい」音、という使い分けをすることで、今回みたいな時間の使い方をすればもっとやりたいことがスムーズにやれたんじゃないかなと思います。色彩感や和声感も気になる部分ですが、それは音色の操作ができれば気にならない要素なのかもしれません。

 

5.ファゴット協奏曲第1楽章/ロッシーニ

何度か言ってると思いますが、ステージのふるまいをいい加減に覚えましょう。君がそうだというわけではもちろんないですが、仮に普段横柄なひとだとしても「演奏家」を演じるてふるまうことで聴いている人の印象はずいぶん変わります。例えばチューニングにしても、馬鹿でかい音量を出してる人がほかにいるでしょうか。演奏前に「うげ」と思われたらもう聴いてもらえないですよ。

さて演奏ですが、各段にレベルアップしていると思います。自分では納得していないかもしれませんが、技術的には今までで一番安定していました。これがどれだけ大きな意味のある誉め言葉なのかは、きっと本人にしか伝わっていないと思いますが・・・。

表現としては、例えば「この音を大きく(小さく)!!」と思ったら、その音だけではなくその前後の音にもっともっと気を遣うことです。アーティキュレーションに関しても選択した以上、それを使った表現というものが必ずついてきます。最後の方でギリギリ理解したきたようですがもっと身に着ければ理想の演奏に近づくのではないでしょうか。

本番だけ何かしかけるようなことをもししているのなら、それは5年早いのですが、もしそうでないのなら、いや、仮にそうだとしても。もっと「1音1音大切に」演奏できるようにしましょう。もちろん本番で。逸脱した大きい音や限界に挑むような小さい音は使用回数に限度があります。0~3回でおさめてください。悪い意味で先のことしか見ていないためアウフタクトの音やフレーズ最後の音のへの想いが致命的に欠けている印象です。気を付けて練習していても、本番で意気込んで壊してしまっては台無しです。

今まででもっとも「丁寧に練習する」ということを意識してきたと思います。それを知っているからこそ、本番でもっとそれが見える演奏をしてほしかった。そう思います。

とはいえ難曲をよく演奏しました。次回はもう少し、手の届く曲の方がいいかもしれませんね。

 

ファゴットソナタホ短調より第1.2楽章/テレマン

演奏中、体調不良を思わせるようすは全くなかったです。それは高い集中力によるものだと思います。なんだかんだ言って演奏に最も大切な能力だと思います、素晴らしい!

さて技術的な成長は自分が一番感じてると思うのでここで語ることはなにもないです。安定した楽器の鳴らし方が身に着いたし、もともととても器用なので今後どんな曲も怖くないでしょう。遅い楽章でビート感まで遅くなってしまうのが残念でした。アゴーギグは伸びた分縮む必要があるのです。1楽章はすこし、伸びっぱなしでした。縮むのには勇気がいるよね。

2楽章もとてもよく安定し、提案した表現の仕方にもよく対応したと思います。なんだかんだ休みの少ないこの曲で最後まで集中して吹けたのはいい練習時間を過ごしたからなのでしょう。もっと自分の演奏を誇って、褒めてあげてほしい。気になるのはフレーズの始まり方。同じリズムや音が多いこの曲において、フレーズの始まりを常に意識しないと、いくらそのあと色んなことをしても棒吹きに聞こえてしまいがちです。

デートで大切なのは待ち合わせと別れ際。ですよ。

 

7.ファゴット協奏曲第1楽章/シュターミッツ

チューニングではもっと、自分の状態を確かめましょう。Aを吹いたことで今から吹くリードの調子を見るのです。ほかの音を吹いてもいいですが、それがイマイチなら感覚を修正すること。そういった準備を恥ずかしげなくチューニングの時にやるのも、本番を成功させる秘訣のひとつです。

さて、それにしても本当に成長しました。基本的に「身の丈ちょっと上くらい」の選曲をすすめていますが、身の丈の倍以上あるようなこの曲をよくモノにしました。これを吹けるようになるためにした練習方法を、今後に生かしていけばもう誰にも初心者なんて呼ばせないでしょう。

いつも言っている事ですが、音を発音するときに「ブレス」→「発音準備」→「発音」という過程を今一度定着させましょう。録音を聴けばフレーズの最初の音の発音が7割くらい失敗していることがわかると思いますが、それはその過程に起因するものだと思います。

いつか1~2年後、この曲にリベンジして誰よりもうまいシュターミッツを聴かせてほしい。自分で思っている以上に器用なので、思いのほかひょいと乗り越えてしまった要素をきちんと振り返るような練習時間をとれるともっとうまくなるんじゃないかな。

 

8.カプリオール組曲より/ウォーロック

9.ユーモレスク/ツェムリンスキー

打ち上げでも言いましたが・・・フルートの方の成長に驚きました。音色が良くなった、というと言葉が安っぽいですが、元々持っていた「いい音」をきちんと並べられるようになった、という印象です。なんだかんだ木五の顔はフルートだと思います。その調子で皆の憧れを目指していってほしいです。

オーボエが棒吹き気味、というのはもう再三言ってることですが・・・。例えばですが、実際にわざと「棒吹き」をしてみて、「そうじゃない」演奏を目指すと面白くなるんじゃないでしょうか。自分たちで合わせをするだけで本番を迎える普通のコンサートと違ってうちはいつでも僕のレッスンが間に入るので、さすがに同じことをそう何度も言いたくはないです。言ってほしいのなら言うけど。なにも「音量」や「音色」や「ビブラート」を操作することだけが「表現」ではないです。それをしたくないのなら、ほかのやり方を模索するべきです。

僕はアマチュアの方でも、たった1曲、たった1楽章、たった1フレーズ、たった1音ならプロに匹敵、いや越えることがたくさんあると思います。特にアンサンブルの団体にはその領域を目指してほしいと僕は思っています。

クラリネットは「棒吹き」も「引っ込み思案」も克服したと言っていいと思います。もともと小さいほうにバランスを取るのはとても上手なので、今後は全体のバランスを動かさないまま、その他4人(クラリネットと比べると大変強弱に不自由な楽器ばかりです)をいい意味で煽るような操作するような、そんな演奏を目指してほしいです。例えば誰よりも曲の仕組みを理解するためにスコアを熟読するとか見ながら吹くとか。そんな領域を目指していっていいと思います。

ホルンは会場でいきなりでバランスが取りにくく苦労したかと思います。5人の中で最もアンサンブルがうまかった、と言っていいと思います。別の人で述べていますがアンサンブルするというのは寄り添うだけではなくて、時に仕掛けたり守ったりすることも大事かと思いますが、無意識かもしれませんがそういった合わせ方がとてもお見事でした。ただし木五というのはソリスト集団である必要があります。うちの会では少数派かもしれませんが、木五を聴く時にホルンを一番楽しみに聴く、という人もいるかと思います。その人のために、もっともっと不意に出てくる「ホルンのソロ」が美しいといいなぁ。客席に人気投票アンケートを取ったら、ひとフレーズのソロだけで9割がホルンに入れるような、そんな音を聴かせてほしいです。

ファゴットはもともと、ソロよりアンサンブルで光るタイプのようです。技術的な底上げがあったのもあり今回さらに光っていました。他人に影響を受けながら吹く、というのは時にしんどいですが、楽隊である我々には適性と言えるのではないでしょうか。支え、強奏時の先導、自分が主役・そうでない時のバランス感覚、見事でした。弱奏時に人を救ったり頼ったり煽ったり、みたいなものが見えるともっといいかな。小さいほうのダイナミクスに余裕があればもっとできるのかもしれないですね。

全体としては(少しずつ人が変わったにしろ)継続していってる貴重な木五の一つです。このまま続けていくことで見えてくるものを大切に色んなレパートリーにいどんでいってほしいと思います。

 

10.3つの小品/ケックラン

もはや絶滅危惧種である友人枠。ほんと、いつも選曲がたまらない!

Fis-Hにたくさんの想いを感じました。想いは感じるのですが、それがもっと音に変わればうれしいなぁ。特に発展する前。ただの2本の音が並んでいて、なにか操作しているわけではないけど、意思がある、そんな2本を目指せるとよいですね。

僕らの師匠のケックラン、聴いてみたいですね・・

 

11.トリオソナタNo.1 RV/ヴィヴァルディ

異色トリオ。アンサンブル参加はファゴット抜きの編成も大歓迎です。ですが、なかなか集まりづらいのが現状なのですが・・・・定着してくれて嬉しいです。前回と同タイプの曲ですが、アレンジがいい方に変わってくれたのでとてもよかった。

レッスンから本番までドタバタの準備だったかと思いますが、それでも本番あそこまでいい演奏になったのはいい時間を過ごせたからでしょう。ただ音楽表現に関して、レッスンでお伝えして本番で実施したことは、今までのアンサンブルレッスンの中で教えたことがおそらく自分たちである程度応用できることばかりだったのではないでしょうか。

鍵盤楽器、管楽器、弦楽器、と3種類の楽器が集まれば違う角度からの意見が飛び交って当然で、そういった交わりがあまり見えなかったことが残念でした。安定したいい演奏、曲の魅力もきちんと表現できていますが、3人が曲の中で交流しているようには聴こえませんでした。そこがとっても残念。でも確実にレベルアップはしていると思います。そろそろMVP狙ってほしい!

 

12.演奏会用独奏曲/ピエルネ

前回のMVP演奏から今回にかけて「あれはまぐれか」と皮肉を言うのを実は楽しみにしていた(くらい前回が素晴らしかった、という意味です)のですが・・・本当にマグレじゃなくて、一皮向けたようです。人(この場合は先生にあたる人物)にいろいろ言われて、その通りやるのはある意味簡単ですが、自分なりに咀嚼して別のもっといいものに変えて演奏する、というやり方がしっかり身に着いたんだと思います。誰にでもできることではないし、そういった意味ではこの会にいる他門下勢(普段はほかの先生、発表会前は僕のところへ)より一枚上手かもしれません。素晴らしいことです。

さて気になるのは音色です。いやいい音です、いい音なんですが・・・同じいい音がずっと並ぶとやはり飽きます。それを飽きさせないように工夫して演奏できているので素晴らしいのですが、もう一皮むけるには、「いい音」の引き出しをもっと増やすことです。「私の音はこんな音」と決めつけるのではなく、役者さんのようにその「役」に適した音色をその都度作っていく必要がありそうです。

とはいえいつも通り、いやいつも以上にハイレベルな演奏だったと思います。レパートリーをただなぞるのではなく、その中できっちりと成長していけてるのは演奏への想いがなせる業ですね。

 

13.朗唱、シチリアーノとロンド/ボザ

いや本当に、MVPで良かったんじゃないかなって思わなくもないです。大変見事な演奏でした。レッスンとピアノ合わせを経てどんどん変わっていくさまが本当におもしろく、呑み込みの早さが素晴らしかった。反応がいいとピアニストがどんどんいい音を出してくださるので相乗効果でやるたび良くなっていきました。

ビブラートが大変美しいですしとても僕の好みです、もっと磨いていってほしいのですが、(むろん音によりますが)かかる前に比べて後ろが、音程が下がり気味に落ち着くことが多くクセのようです。惜しいところなので改善するといいかも。デッドな会場なら気になりませんが、2~3秒の残響があると気持ち悪く聞えてしまうかも。その弊害なのか、音の処理で音程がぶら下がることも多いです。音色の印象は「出だし、伸ばした音、処理」の3要素で決まります。要注意です。

コンサート向きな作品強さは間違いなくあるようです。今後は大曲と呼ばれる作品(ウェーバーモーツァルトの協奏曲、タンスマンやサンサーンスヒンデミットなどのソナタもの)に取り組んでいくことで、レパートリーが広がる以上にもっと根っこの部分が成長できるんじゃないかなと思います。

今後も楽しみにしています!年長者のハードルを爆上げしにきてくださいね。

 

14.バス・ナイチンゲール/シュルホフ

発表会史上初・コントラファゴットの演奏でした。前評判(?)通り本当にコントラファゴットの名手だなと思います。慣れない楽器でよくここまで作りこみました。

冒頭の2部音符2個目、Gesの音程は(楽器の特性ですが)異様に低いです。特に半音進行のときは気を付けないと、同じ音に聴こえかねません。もしかしたらGを低めに取るのも作戦かも・・?

色物、と言われても仕方のない選曲ですから、もっと「えげつなさ」を出す工夫があってよかったかもしれません。2楽章のテンポはもっと動いていいし、息を吸うためにぽっかりと穴をあけない工夫(テンポの操作、フレーズで)はもっと研究してほしかったです。アーティキュレーションは器楽作品の命ですから、そこにももっと意味を持たせてほしかった。

とはいえ、操作が難しい楽器でよくここまでこの曲の面白さを見せてくれたなと思います。今度僕もこの曲どこかで吹いてみようかな・・・。

 

15.ファゴットソナタホ短調第1.2楽章/テレマン

まず立ち姿から。なんだか立派になりました。「おっちょっとやるのかな?」と思わせる構えはなかなかできることじゃないです。前は「いかにも不安そう」だったので。精神的なところも大きいのかな。自信があったんだと思います。事実、自信に見合ったしっかりとした演奏でした。

少し音色が、下に向くというかこもりすぎてるのが気になります。それが前提だと少し口が閉まるともう音が出ないので、1楽章の最後のトラブルはそこに起因していると思います。2楽章のテンポ感、「おいおいそれで大丈夫か!?」と思ったらそのテンポで吹けるまで練習してきたんですね・・・良くも悪くも練習嫌いが多い門下の中で、本当によくやってきたんだと思います。

さて。ステージ上で自分と楽器以外に味方ってどれだけいるでしょうか。発表会に限って言えばピアニストは味方です。大いに助けてもらっていいと思いますが、もう1つだけあると思います。それが譜面です。僕は暗譜なんてものは一切必要のない行為(少なくと発表会においてピアノ伴奏で曲を吹くことに関して)だと思いますし譜面を見てることでできることが増える、とまで思っています。その譜面の管理、というか操作で起きた事故というものは、起きるべくして起こります。それ込みで練習し、それがスムーズにいくのも大切なことなんだ、と、たぶん本人が最も自覚していることでしょう。

ただ、落ちて戻ってこれなかったのは伴奏の形を覚えていないから、です。動揺したのもあると思いますが・・・ステージ慣れも影響しますしまだまだその領域は遠いかもしれませんが、あそこですっと戻ってこれるような曲への理解は本来必要なことなのかもしれません。

とはいえ、急成長を遂げた人の一人だと思います。自分の演奏に誇りを持って、今後ともいい演奏ができますように!

 

16.幻想小曲集より第1.2楽章/シューマン

出演者の中でもトップクラスに準備時間が少なかったと思いますが、それを感じさせないクオリティと楽曲に対する理解度でした。普段どれだけ楽器に誠実に向き合ってるかが音楽に現れていて僕好みの演奏でした。

「こう吹きたい」「こういった流れにしたい」という意思はよく伝わってきます。ただしやりすぎは厳禁です。リードと楽器のキャパシティを越えた息を入れてもいい音は鳴ってくれませんし、逆効果になることも多いです。何度か「息を入れる」のではなく「リードを鳴らす」のだ、という話をしてきていますが、それはよく理解し実行できていると思います。もうワンステップ先にある意識として、鳴らしたリードの振動をボーカルに押し込めるような感覚がつかめるともっといいかもしれません。それはつまり、リードをしっかり鳴らすが適切でない鳴らし方をしない、ということです。

小さい音、大きい音、どちらも自在に使いこなしていると思います。レベルアップのためには、小さいけど強い音、大きいけど優しい音、のような操作を覚えていけたらいいですね。それにはきっと、リードの鳴り方やビブラートのかけ方を計算していくといいのかもしれません。もちろんケースバイケースですが。

シューマンという作曲家がよくハマりますね。好きなのでしょうか。ハマる曲もいいですが、ハマらない曲、というのもいいものです。ヒンデミットやボザ、タンスマンの組曲などに挑戦すると面白いかもしれません。

 

17.木管五重奏曲より第1.3楽章/タファネル

今回のアンサンブルMVPでした。いやいやメンツ見れば当たり前でしょ、という常連組の声が聞こえてきそうですが、何をおっしゃる、アンサンブルというのはメンツが決まった時点で7割は完成しているんですよ。その行動力と人望でいいアンサンブルを作るのです。

各々に伝えた課題のようなものは見事に越えてきてくれました。長年寄り添った仲間同士のようにも見える演奏でした。普段からそれぞれ色んなことを考えて楽器を吹いてることがこの5人が集まることでいい形にまとまったのだと思います。

特にフルートのレベルアップには脱帽です。初めて参加する人はこのフルートの人が5部でファゴットを持ってフンメルのコンチェルトを演奏したことにぶったまげたことでしょう。この発表会を一番楽しんでいるのはこの木五のフルート吹きなんじゃないかな。

ファゴットはすこし低音のレスポンスが悪いように聞こえます。2楽章を外したのですから、もっと強い低音の鳴りやすいリードを選んだほうがよかったのかも。木五のファゴットに一番大切なのは馬力だと思います。いい音でも支える厚さがなければ馬力不足になりがち。馬力が足りないのはオーボエも同様でしたが、それは今後に期待するとしましょう。

何度でも言いますが2楽章のホルンソロが聴いてみたかった。尺のことは気にせず全楽章に挑戦してほしかったなぁ。クラリネットは今まで聴いたどんな演奏より光って見えました、ソロやトリオより、ある程度人数のいるアンサンブルで実力を発揮するタイプなんでしょうか。間違いなくこの木五の中枢だったと言えます。

「このメンツはずるい!」「このメンバーは面白そう!」とコミュニティ内で思わせるような木五の結成、ほかの参加者の皆様からもお待ちしております。

 

18.サラバンドとコルテージュ/ディティーユ(ゲスト演奏)

僕がなにか語るようなことがあるでしょうか。笑

ゲストの鈴木一成さんとは、日本で行われたIDRSのときにFOXプレイヤーのステージでご一緒したときに出会いました。とにかく圧倒的に自由で魅力的で、一瞬でファンになってしまい、いつかこの会に・・・!と思っていましたがまさかこんなに早く願いが叶うとは。本当にありがとうございました!生徒たちも大喜びでした。

 

19.ファゴットソナタ/サンサーンス

出来の悪い演奏でした!

・・・いや、私です、これ吹いたの。運営しながら自身もシビアな曲を演奏する、というのは自分で決めたことではあるのですが、やはりこの曲を納得できるクオリティで演奏するにはまだまだレベル不足ですね・・・。笑

とは言え色んな方から貴重なお褒めの言葉も頂き、自己評価と他人の評価というのはなかなかかみ合わないものです。

何度かお話してる気もしますが、ここまでたくさんの生徒のレッスンをしていると「レッスンプロ」「発表会運営の人」というレッテルを貼られてしまいそうで。もちろんオケや室内楽のお仕事もさせて頂いていますが、表に出ることもそう多くはないですし人の印象というのはなかなか思った通りに作ることができないものです。あくまで僕自身が現役のプレイヤーであること、だからこそ生徒たちに与えてあげられるものがあるということ、それをかなえるためには、と思った結果、自身も生徒たちと一緒に曲に挑戦する!ということになりました。

おかげ様でサンサーンスは今後も取り組むことになりましたので次は納得できるクオリティまで仕上げたいですね。

 

20.ファゴットソナタヘ短調より第1.2楽章/テレマン

いや本当に上手くなったね。っていつも言ってるのですが、ここまで毎回確実に根っこからうまくなる子がほかにいるでしょうか。1楽章の冒頭なんて、ちょっとした音大生よりうまいんじゃないかな。ダイナミクスの操作は元々得意でしたが、「使い方」がよく分かってきて、曲によくハマっていました。以前ならもっと逸脱してしまっていたと思います。

バロック作品ですので、もっと遊びがあってもよかった。そしてそれが自主的に生まれてくるともっとよかった。上手くなることも大切ですが、曲を楽しむ・楽しませることも大切です、こんどバロック作品に取り組むときは「ちょっとそれ装飾入れすぎ」と僕にツッコミを入れさせてくれることを期待してます。もともとそーいうのは好きでしょ?

フレーズの最後の音の処理が曖昧かつ、ワンパターンです。シーンによって全然違うはずなのに全く変化が見受けられませんでした。全体のクオリティが高く流れが出来上がってるからこそとっても気になりました。ほかの子にも書いた言葉ですが、デートで最も大切なのは待ち合わせと別れ際です。肝に銘じましょう。

以前にも指摘しましたが、音色も1種類しかないように聞こえます。厚い音薄い音、響く音響かない音、あたりが作れて選べればもっと可能性が広がると思います。今後にも期待してます。

 

21.チェロとコントラバスのための二重奏曲より第1.2楽章/ロッシーニ

ファゴットコントラバスという異色デュエットでした。この曲はファゴットのコミュニティならまず間違いなくコントラファゴットと一緒にやるかと思うのですが・・・それだけこの相方と共演することに意味があったのだと思います。

「音域の違い」や「弦と管の差」など、実際に存在する差異以上にズレが大きかったように思います。それはバランスであったり音色の操作で調節するもので、管楽器同士のとき以上に気を付けなければいけないのですが・・・もっとすり寄ってほしかった。二重奏は「合っていて当たり前」で差を楽しんだりシンクロ感を楽しむものだと思いますが・・・残念ながら今回は曲にすることに精一杯の印象、という印象でした。

ロッシーニという作曲家の作品はもっと美しく高揚感のあるものだと思います。そういったものを目指すには練度が全く足りなかったと言えます。思い入れを感じるだけにそれが残念でした。具体的にはコントラバスはフレーズ感や和声感、ファゴットには音色のコントロールやフレーズの終わりへの気遣いが足りないようです。

とはいえ、本来とても難しい作品をオリジナル以上に難しい編成でなんとか演奏まで持っていったことも事実ですし、確かな思い入れを感じました。きっと人の心に響く演奏というのはその向こう側にあると思います。今後も面白いものを聴かせてくれるのを楽しみにしています。

関係ないですが、僕がファゴット以外で唯一ほんのちょっと触れる楽器がコントラバスです。僕個人としては聴いていてとっても幸せな編成でした。

 

22.ファゴットソナタ/グリンカ

いやもう、MVPでよかったよね。本日2回目。初めてレッスンにこの曲を持ってきたときのがむしゃらな演奏から、よくここまで色っぽい演奏まで仕上げたなと思います。今回グリンカは2人いましたがそれぞれ違って本当に面白かった。

なにに影響を受けてここまで面白い演奏ができるようになったのかはよく分からないのですが、レッスンをしている印象ではだれよりも僕の音をよく聴いてるように思います。もしそれが影響しているなら、僕もプレイヤーとしてすごく嬉しいです。音と音のつながり方もいい意味で自然でとても美しい音の並びがたくさん聴けました。ただ上手いだけの子ではこうは吹けません、大変見事でした。特に主役に回らないときのピアノとのバランス感覚は抜群でした。

レッスンでも指摘した内容ですが、フレーズの後ろの音が膨らむクセがあります。それでいいときもありますが、いつもそれでは少し不自然が生まれてしまいますし、「膨らませる」のと「膨らんでしまう」のは少し意味が違います。改善点だと思います。また、おそらく自覚があると思いますが強奏時、横に広がってしまうような傾向があってそれを気にして不完全燃焼になる事が多いです。ボーカルやリードで解決することもあると思いますが、時には音色を気にせず責めたてるような箇所があってもいいのではないでしょうか。再現部に冒頭との違いがもっとあるほうが僕は好きでした。

グリンカは今後ともうちの発表会で憧れのレパートリーの一つになるでしょう!

 

23.三重奏曲より第1楽章/プーランク

みんなの憧れ、プーランクのトリオですね。合わせでふたりが初対面、というなんとも現代らしい形でつながったアンサンブルでしたね。

総評として、2人ともかなりハイレベルな演奏をするし、ピアノと3人で合ってないわけでもない。でもこの曲の「聴きたいレベル」がものすごい高いところにあるのでしょう、そこには届いていない印象でした。それだけ大曲に取り組んだ、ということだけで本来価値のあるものですが、二人の目指すところはもっと高いところにあったと思うので、少し厳しめに。

オーボエはまず、少人数で立つステージをもっと踏む必要がありますね。ステージに立つ、礼をする、チューニングをする、自分の休符で他人の音を聴く、演奏後に礼をしてステージを降りる、などの一連の流れがあまり美しくありませんでした。あまり(室内楽や単独のリサイタルなどの)演奏会にも足を運ばないのかな。もし足を運ぶ機会があるのなら、そういった部分からよく見てみて真似をしてみるといいです。ファゴットやピアノのソロ時は楽器をおろしてどんな顔で吹いてるか観察するくらいの余裕が必要です。シンプルに共演者も動揺します。事実、明らかにしてました。笑 ステージ上での所作、難しいものですね。基本的には、自然でいいのですが。

またアーティキュレーションについてレッスン時にもいくつか指摘もしました。演奏者は「表現者」ではなく「再現者」と考えましょう。プーランクという大作曲家の作品を再現させていただく、という立場である以上、譜面にある情報を見過ごすのは責任を果たしていないことになります。どうしても難しい!という場所があれば限定的に変更し共演者に説明し合わせてもらう必要があると思います。

一流の室内楽ピアニストとアンサンブル大好きファゴット吹きにピッタリ寄り添ってもらった経験はきっとこの先に大きく生きると思います。いつかあなたが、この経験を活かしてほかのだれかに寄り添ってあげられたら素敵なことですね。「会場全体を虜にして」とお願いしたフレーズ、全体とは言わないまでも6割くらいは虜にできたんじゃないでしょうか。とても僕の好きな演奏をするオーボエだったと思います。今後に期待します。次回以降もぜひ。

ファゴットは寄り添うことと自分が前に出ることの瞬発力が問われる曲でしたね。ポテンシャルの高さを感じました。音色と音量の操作がとにかく一流で大変い見事な演奏でした。逆に言うとそれが仇となって(操作がうますぎて気にならないと言えばならないのですが)フレーズ感がおろそかになる事が多いようです。某門下生の言葉を借りるなら「規格外に上手い」と僕も思います。そこからもっと楽しむ・楽しませるためにはとにかくフレーズ感を磨くことです。「こう吹く!」とこだわることだけではなく、ほかのパターンや可能性を見つけて取り込んでいくようなことを繰り返したらまた違う世界が見えるでしょう!

なんだか辛口になってしまい各方面から怒られそうでしたが、僕はこのトリオがものすごく好きなので同じメンバー(ピアニストのご都合が合うといいのですが!)でまた演奏してほしいと思っています。

 

24.3つのロマンス/シューマン

ロマンス3人衆の1人目。完成度の高いところからレッスンができるのでいつも色んなことを教えてあげられてこちらも楽しませてもらっています。2楽章があれだけ安定して吹ければ、第九の3楽章はへっちゃらでしょう!・・・いや、そうもいかないかな。成果のほどはいかに。「音量を絞りすぎない」という方法をいくつか取りましたが、結果として体力配分としてはうまくいったと思います。が、やはりフレーズの最後やワンポイント(エコーの部分とか)でもっと薄い音、弱い音が聴きたかった。

また、ちょっと指を回すポイントになるとテクニックにリソースがいくのか、流れのようなものが薄くなるのも気になりました。「指回しモード」みたいのが存在するのでしょうか。そこだけ音楽的に内容が薄くなるようです。音数が多い箇所ほど、大切に、大切に。

弱音時に音がフラつくようです。音程が変に上がらないのが立派ですが、むしろぶら下がることが多いような・・・。口は閉まっていないようですが、息の下の方(所謂お腹というやつ)の支えが弱くなるのかも。弱音時こそ気をつけて。

この手のゆっくり系、もう1曲どこかで取り組んでみてほしい。同じシューマンでもいいしケックランやディティーユなんかのフランスものでもいいかも。時間のないなか、本当にレベルアップした演奏を聴かせてくれました。

 

25.ロマンス/エルガー

ロマンス3人衆の2人目。楽曲に対する愛!というか思い入れを強く感じました。この曲を愛しいい演奏をしよう、ということはファゴット吹きとしてはとても大切なことだと思います。大切なレパートリーですよね。

音楽的な流れはとっても良かったです。テンポのゆらぎなんかも独特ではありますが不自然ではないし、曲のイメージ通りの演奏ができていたと思います。この曲を「イメージ通り吹く」というのは演奏した本人がどれだけ難しいことか分かっているはずなので、それはクリアしています。お見事でした。

さて、突然あらわれる指回しポイント。そこにアゴーギグを用いて丁寧に吹いてほしかった。ただの駆け上がりにするのではなく、その音の羅列に愛情をもっと持ってほしかった。フレーズの語尾で音程がぶら下がることも少し気になりました。コツとしては音程が上がることに気を付けながら、支えは失わずに、という意識を持つことでしょうか。

また、フレーズを作るとき、大きくなっていくときは音色の操作があるのですが、そこから収まるときに音色が変わりません。音量が変わってはいるのですが大きな印象の差を感じにくい演奏になってしまっています。語尾のこともありますし、フレーズの後ろの方をもっと大切に神経を使って練習するとより良くなるのではないでしょうか。

それにしても、今回は「ハマり役」な人が多かったけど、その中でも一番の「ハマり役」だったんじゃないかなぁ。この曲が似合うのはもう才能です!大切なレパートリーにしてください。結婚式で新郎として吹いてほしいなぁ。

 

26.ロマンス/ブルッフ

ロマンス3人衆の3人目。今回のMVP。この発表会では古参どころか創立メンバーみたいなもので、そんな彼をMVPにするのはちょっと手前味噌なところがあって恥ずかしいのですが・・・。笑 この曲は「ズルい」曲なようで、一部の子には永遠に(いい)演奏不可なんじゃないか、って思うくらいフレージングが難しく、それは演奏した本人が一番よくわかっていることでしょう。ただフレージングに関しては100点満点と言っていいと思います。長年の付き合いで、僕が伝えたいフレージングのことはよくよく理解してくれていて、とにかくそれが嬉しくてMVPに選びました。

元々テクニックに寄っていた君が、この曲をこれだけ魅力的に演奏できたことは大いに誇りに思ってほしい。楽曲にひとりで取り組むことがどれだけ奏者として成長するか、というのは君が見事に証明してくれていますね。

さて、リードが古いことはチューニングの時点でモロバレです。それは大いに気にすべきですし、この手の曲は表現も大切ですが音の響きも大切です。古いリードは響きを損なうものですから、いい演奏をしたければまずはそこから。吹きやすい、だけで演奏するようではこれ以上のレベルにはいけません。しっかりとね。いくらテクニックがあっても音色の汚いホルン、聴けたものではないでしょう?

強奏時に音程が下がることが多いようです。鳴ってさえいれば、多少上がっても気にはならないものですが下がるのは気になってしまいますね・・・。特にヘ音で五線より上にいったあたり、よくよく気を付けましょう。これもリードが影響しているでしょうね。

とはいっても、多少の傷は気にならないくらい見事な演奏でした。これだけ名手がそろってきた中でMVPなのは大いに誇ってください。次はだれがブルッフやるかな。審査をもうけようかな。笑

 

27.ファゴット大協奏曲より第2.3楽章/フンメル

木五の方でも書きましたが、2つの楽器を同じ日に、これだけのクオリティで演奏できるのはセンスと努力と、時間の使い方の上手さを大いに感じます。

まず2楽章、僕とピアニストにまったく違うことを言われて戸惑ったのでしょう。笑 ただおそらく、僕らが言った2つのことは真逆のようで繋がっていて、最終的に同じところにたどり着くものなんだと思います。音楽の指導なんてそんなものです。そういった意味で、もっと突き詰めることができた演奏だったのかもしれません。古典派である以上、2楽章を音楽用語でいうところの「ロマンチック」に演奏するわけにはいかない。でもこれだけ綺麗なものを淡々とは吹けない。そのせめぎあいから名演は生まれてくるんじゃないかなぁと思います。そういう意味で、もっとロマンチックで良かったのかも。こんなこと「先生」という立場からいうことじゃない気もしますが。笑

歌いこむ時・強奏時の音色が、横に広がってしまう傾向にあるようです。どうも管楽器というのは息を入れにいくと冷静さを欠いてしまう傾向にあるので、心は熱く、頭はクールに、が基本です。今自分の音がどんなふうに聴こえているか、それを考えながら楽器を鳴らせばきっと改善していくことなんだと思います。

3楽章の難解ポイント、もっと「時間」をうまく使った吹き方をするのがいいです。テクニックでねじ伏せるということができない曲ですから、時間の操作が大切です。やろうとしてるのは伝わってくるのだけど、やはり実践するのは難しいですね。ちょっと1レッスンでは伝えきれなかった部分もあったのかもしれないので、そこは僕の反省点です。

僕の一番大好きな曲をこの会ではじめて演奏してくれたこと、とても嬉しかったです。それが君で良かった。さらなるレベルアップを楽しみにしています。もちろんフルートも!

 

28.2本のファゴットのためのソナタ/モーツァルト

ファゴットの2重奏、っていいものですよね。普段オケでどれだけ考えて吹いてるかがちょっと一緒に吹けばすぐわかって、刺激しあえて、バランスを気にする必要も(あまり)なくて、ファゴットを吹くうえでトップクラスに自由度が高い編成だと思います。

まず2nd(1楽章冒頭のパート割で)ですが、めざましい進歩を見せました。アンサンブル参加でもこんなに上達するものだとは。相方の影響が大きいかと思います。格上と二重奏をやれる、ということの喜びはそういったところにあると思います。テクニック、楽器の鳴り、寄り添い、(いい意味で)勝手、すべてが1週間弱で別人のように上達しました。今回の感覚をぜひ忘れないでいてほしいです。いわゆる「ド伴奏」時の時に音色がもう少しまとまるとオケでもいい仕事ができるのではないでしょうか。音量がそれ以上小さくなる必要はないのですが

1st、もっと最終的に自分のわがままを通して吹いてもよかったかもしれないですね。寄り添いも勝手するのもとても高水準ですが、相手のために自分がもっと楽しく吹けるポイントを増やす、みたいなことがあってもいいかも。人間関係が先輩後輩で腕前に差があっても、本番は対等ですからもっと自由でいいのです。それが相方のためにもなるんじゃないかなと思います。カデンツァはもっと自由にやってよかった、恥ずかしそうに駆け抜けていくようなところがまだまだです。「面白いこと」をやるというのはそのクオリティが高いほど面白いものです。でも発想自体はとても好き。

1、3楽章、ちょっと前のめりすぎるテンポ感が気になりました。前進する場所があってもいいですが、テンポ的に落ち着く場所がもっと欲しかった。2楽章はもっともっと美しい旋律が聴きたかった!音がきれい、ではなく、流れがきれいな演奏を心掛けてほしい。モーツァルトのフレージングはシンプルなようでなかなか複雑です。もっと気にしてほしかったな。

二重奏というジャンルがこの会でもっと流行っていくといいなぁ。

 

29.ファゴットソナタヘ短調より第1.2楽章/テレマン

今気が付いた、プログラム記載がホ短調になってました・・・よね。失礼しました。毎回トリを任せる人には多大なるプレッシャーをかけてしまっていますが、今回は「いい演奏になってほしい」と僕が心から思ったからの選出でした。

子どもを育てながらの準備、僕が想像もできないような苦労が多かったと思います。なのにレッスンのたびにレベルアップしてきて本当に関心していました。出てくる音色がだんだん曲にハマってきているのは強いイメージがあってこそなんだと思います。ただ暗い音色になっているだけではなくて、きちんと長調長調の音色になっていました。派手な装飾も大変に僕好みでした。装飾に振り回されないように、とレッスンで何度も言いました。本番は振り回されてはいない演奏ができていましたが、影響はあるようです。派手な装飾を使って、音楽的な流れを文字通り「装飾」するためには、もう一つテクニック不足でしたね。でもそれを補って余りある気迫あふれる演奏でした。バテても吹ける、という領域、少し飛び込めたように見えます。それは上級者でもなかなかできることではないのです。

今回、きっと時間はたくさんかけられなくても進歩していくやり方を見つけられたのだと思います。そのやり方で、ひとつひとつ丁寧に練習していくことで楽器はうまくなっていきます。そこにたくさんの時間なんていらないのです。

あなたの演奏が、今後、きっと楽器を産休でおやすみする生徒たちの励みになると思います。ぜひ相談にのってやってくださいね。

次回も楽しみにしています!

 

 

総評として、今までは「レベルの高い新人」と「元々そこそこうまかった古参」が名演を残し、そうでないメンバーは必死に食らいついていく、という傾向にありましたが・・・今回、「そうではないメンバー」が「レベルの高い古参」と呼んでいいレベルに到達していて、間違いなく今までで一番レベルの高い発表会でした。初心者組の飛躍的なレベルアップも考えると、これほどレベルの高いアマチュアファゴット発表会はそうそうないんじゃないか、と思います。

もし新人やお客様で、「こんなレベルの高いところ私にはついていけない」と感じた方、今回参加した「ハイレベルな古参」たちの昔の演奏録音、こっそり送りますのできいてみてください。1年やそこらでこれだけレベルアップできるのですから、どうか自信を持って練習に励んでください。

 

いやそれにしてても、面白い会になりました。次回はどんな発表会になりますことやら。