ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第20回門下発表会でした。講評と次回のご案内、近況など

こんにちは。ファゴット奏者のとのむぅです。今回、ちょっと遅くなってしまいました。

コロナ禍、まだまだ続いていきますね・・・。演奏家・音楽家としての在り方を考える毎日です。

また私事ですが引越しをしました。以前は小田急線沿いの川崎市民でしたが、新しい家は京王線沿いの府中市となりました。府中には当分住むと思いますし、僕は出身の千葉県では活動がないので地域に密着した仕事ができるといいなぁ、と思っています。ご用命お待ちしております。

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先日のファゴット三重奏の配信コンサート、ご視聴頂いたみなさまありがとうございました。24日いっぱいまでアーカイブご視聴頂けますのでお見逃しなく!

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お申込みはこちら→

https://twitcasting.tv/toppo_bassoon/shopcart/55081

 

そして4月14日に予定していましたハルモニームジークはコロナの影響で6月9日に延期となりました。同メンバー、同プログラムでお届けできますので合わせてぜひ!チラシは延期以前のものですが。

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重ねてのご案内ですが6月9日に延期となっております。

お席のご予約はこちら→お問い合わせフォーム

配信チケットはこちら→ハルモニームジーク vol.25 - TwitCasting

 

 

また、延期になってしまったアンサンブルファルベ(木管五重奏+ピアノ)による公演は7月18日に山梨公演、7月19日に東京公演を予定しておりますので追ってまた詳細ご案内いたします。

 

さて、先月のことになってしまいましたが3月20日に門下発表会が開催されました。

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感染症対策をしつつ、打ち上げはオンラインで、というのも、出演者の皆様もそろそろ慣れてきてしまいましたね。ありがたいやらむなしいやら・・・。

ここ数回の傾向として「色んなレベルの人がいる発表会」から「わりとレベルの高い発表会」みたいな雰囲気が出てきました。いや、言ってしまうのも悪いのですが、僕の生徒たちはどなたでも歓迎している以上上手い人ばかりではなく、むしろ奏法や環境に問題を抱えて来る人が多数派です。しかしそれぞれの立場で効率よく時間と労力を注ぎ、地力がキッチリ付いてきたからこそ、「レベルが高い」と言われるようになったのでしょう。

しかしこれはハードルが高い、ということではありません。うちの発表会のテーマは「とりあえずソロ曲を本番に向けて練習してレッスンさえ受ければ楽器はうまくなるはず」というものです。どうぞお気楽にご参加くださいませ。

自分の演奏に自信が持てない方、どうしてもうまく吹けないフレーズがある方、基礎から徹底的に見直したい方、楽器を再開し(はじめ)たいのにきっかけがつかめない方、レッスンのお申込みお待ちしておりますね。もちろん選曲の相談にも乗ります!

お申込み・お問合せはこちら→レッスンお問い合わせフォーム

 

そして相変わらずハイペースですが次回発表会のご案内です。

夏のひとときコンサート(第21回とのむら門下発表会)

2021年7月10日(土)お昼ごろ開演(終演時間未定)

カルッツかわささき アクトスタジオ(川崎駅より徒歩15分)

参加費

社会人ファゴットソロ 15000円(レッスン代1回分、ピアニスト謝礼、会場費など)

学生ファゴットソロ10000円(レッスン代1回分、ピアニスト謝礼、会場費など)

アンサンブル 6000円(1人あたり。人数により増減あり、レッスン代1回分、会場費など)

ファゴットのソロかアンサンブル(ファゴットを含んでも含まなくても可)ならどなたでも参加できます。知り合いが1人もいなくても心配することはありません。本番でしか会ってないはずなのに、不思議と必ずファゴット吹きの友達がたくさんできます。エントリーお待ちしております!

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さてここからは第20回の演奏講評となります。参加者以外の方からは面白くない記事なのでスルー推奨です。

ブログ更新滞ってしまい申し訳ありません。できたらまた近いうちに更新します!

 

総評としては、前述の通りハイレベルでした。真新しいメンツが多いわけではなくレベルが高い、ということは、レッスンに通い続けている出演者がきっちり腕前を上げているということに他ならないので、先生として鼻が高いです。また、技術としての表現力以上に表現に欲のある演奏が多く、聴いていてわくわくする時間を過ごすことができました。お客様からの評判も全体的に上々でしたので、この調子で頑張っていきましょう!

 

1.ファゴット協奏曲より第1楽章/シュターミッツ

初参加、トップバッターお疲れさまでした。音程・音色ともに安定感があり、また2人の先生から厳しく叩き込まれた(はず)の様式やフレージングもよく理解して演奏していたと思います。難しいところもよく練習してきて、「シュターミッツを履修した」と言っていい演奏でした(これはなかなか難しいことなのです)

さて、音程と音色の安定感、いい意味でも悪い意味でもありました。よく言えば安心して聴いていられる演奏でしたが、悪く言うと平坦だったとも言えます。音色にも音程にも「良い」「悪い」はなく、曲のその場その場でどう「したい」か、が大切なことです。誰かの演奏の真似でもいいから、まずは「したい」を見つけ試してみる事が大切ですので、今後はそれを意識して練習していってほしいです。「したい」が見つかってようやく「しよう」と思い、そしてほしい技術のために練習やレッスンが楽しくなるのです。

今度はなるべく人の演奏もたくさん聴いて行ってください。ヒントがたくさんあるはず。

よかったらウェーバー、ぜひ挑戦してみて!

 

2.ファゴットソナタより第1.3楽章/シュレック

レッスンで指摘した楽器の鳴りについて、非常によくなったと思います。安定感と音程・音色の良さは以前からありますが曲のシーンごとに色んな音色が聴こえて飽きのこない良い演奏でした。手持ちの絵の具(=鳴りのコントロール)が少し増えただけでこんなに化けるとは、と、たぶん自分でも気付いているんじゃないかな。

楽器の鳴りについてはまだまだ入口に立ったに過ぎないので、習慣的にコントロールしていけるといいでしょう。ずっと課題だったダイナミクスが広がってきて今気になることは音楽表現の問題です。もともと発音の操作もうまく、鳴りが出てきて、今度身につけるべきことは「アゴーギグ」と「フレージング」です。「速くする」「遅くする」といった操作だけではなく、アゴーギグの範囲内での微妙な操作で、実際に操作しているダイナミクス以上に表現幅を感じる演奏を目指していきましょう。またフレージングももっと自分発信で表現していきましょう。山を作ることと同じくらい谷を作ることが大切で、そのための鳴り、と思えばもっと磨きたくなるはず・・・。

アゴーギグもフレージングも、あらゆるフレーズで試行錯誤した経験でしか身に付きません。今手元にある譜面だけでもいいので、ちょこっと見直して考えて吹いてみると得るものがあるかもしれません。

いつもいい演奏聴かせてくれますが、ぼちぼちいわゆる「派手な曲」が聴きたいですね!タンスマンやボザあたり、挑戦してみるのはどうでしょう?

 

3.無伴奏組曲第3番より/J.S.バッハ

圧巻、でした。相当しつこくレッスンもしましたが、よく嚙み砕き飲み込めた演奏になっていて、「憧れの無伴奏」と思える演奏でした。楽器による響きも十分得られていて、会場中に音が広がっていました。やはり我々の楽器が世界一ですね!

とにかくブレス管理が見事でした。今回つかんだ感覚は決して忘れず、大切にしてくださいね。

キツい曲でしたが、フレーズ終わりがちょっとアッサリしすぎていることが多い印象でした。ブレスに時間使っていいので、体の中のテンポ感でしっかり拍通り伸ばしましょう。実にうまく書かれている曲なのでそれだけでうまくいきます。またフレーズおさめをゆっくりにするのは上手いのですが、盛り上がりで加速していく、という部分がもっとあってよかった。速い楽章だと難しいですが、今回速いのは最後の楽章だけだったので、前半もっとその手の表現が聴きたかった。

ブーレは八分音符の表現に音の長い・短いによる表現がもっとあるとよかった。全部短いのではちょっと芸がないかな・・・。

無伴奏曲による傷(ミスや音程不良・バテなど)は付き物ですし目立ちがちですが、後に引きずることなく演奏できていたのが大変に好印象でした。

大変な時期にお疲れさまでした。この発表会はずっと続きますし、僕はいつでもレッスンやりますのでまたお待ちしてます!

 

4.ファゴット協奏曲ホ短調/ヴィヴァルディ

1年以上越しのヴィヴァルディ、よく準備してありました。良くも悪くも派手な曲なので相性どうかな、と思いましたが、音楽的にも綺麗に組み立てされていて好印象でした。

レッスンで話題になった拍子感については、もう一つだったかな。そもそもテンポを上げずにこの曲を拍子通り吹くのは至難の業ですね・・・。

オケ(ピアノ)の音がないところでもファゴットの調子が変わらないのがちょっと気になりました。いるときはとりあえずうまく乗っかればいいのですが、1人だと止まって聴こえてしまいます。そんなところを工夫できるととてもよかった。

また短い音の鳴りが弱いのが気になります。バロック作品、短い=弱い、という工夫をすることは多いのですが、それはそれでいいので「短くて強い音=強く聴こえる音」というのも奏法として身に付くと幅が広がるでしょう。

君は大変ハイレベルな演奏ができる人ですが、たぶんバロックの作品が得意なタイプではないので、それを踏まえてまたやるか、いったん違うところにいくか・・・。いずれにせよ、今後の演奏も楽しみにしています。

 

5.ファゴットソナタ/グリンカ

派手でセクシーなこの曲、どんな風に仕上げてくるかな、と楽しみにしていました。複雑なところもうまくピアニストとアンサンブルできていましたが、レッスンの時のほうが積極的だったかな、という印象がありました。リードなのか何なのか。「うまい」とされてる人たちはやっぱり空間いっぱいに音を広げます。狭いところで吹くことが多いのは仕方ないので、もっと広い空間を意識した音を意識して普段から吹くといいでしょう。

課題だった楽器の鳴りもずいぶんよくなってきました、最初グリンカをやる、と聞いたとき、そこをどうにかしてやらなきゃ、と思っていましたが曲の力かリードの力か分かりませんがクリアできていました。しかし広い空間になるとやっぱりまだまだですので、前述の通りです。

長い曲なので、集中力というか没頭する力が必要ですね。君はいい意味でも悪い意味でも書いてある音を並べにいく、という印象になりがちなので、もっと音楽そのものに没頭できるといいです。例えば同じ曲を同じようなレベルの人と交互に吹いたとき、自分の演奏をよく聴かせるにはどう工夫すればいいのか、そんなことを考えていくといいのかもしれません。「うまい」って何なんでしょうね。もっともっと愛されるファゴット吹きに育ってほしい。

 

6.7音のシランダ/ヴィラロボス

繊細な表現がとてもうまく、この曲の魅力的なところをよく表現できていました。意識して繊細な表現をしていたと思うのですが、この表現ができるリードを用いてフォルテで温かい音が出るとなおよかったのかな、と思います。音色というのはイメージからくるものです。もっともっと楽器のポテンシャルを生かせるよう基礎的なところに執着していきましょう。

また、ピアニストとのアンサンブルがうまくいっていて素晴らしかったです。この曲でそれができるのは音が頭に入っている証拠です。楽器を触っているとは別の時間の使い方が良かったのかもしれません。

ちょっと低音の音程が上がりがちです。オケではないのでそこまでシビアではありませんが、工夫できるといいですね。リードのくわえる位置を低音で少し調整(たぶん浅いほうに)するといいでしょう。

どんな曲でも「さすが、うまいね!」という評価を更に越えてくるのがとにかく素晴らしい。その曲への誠実さ、大切にしていってくださいね。次回も楽しみにしてます!

 

7.ファゴット協奏曲より第1楽章/ウェーバー

ウェーバーは原点回帰することの多い曲ですね、僕も覚えがあります。とにかくレッスン前とは楽器の鳴りが別人のようで、そのお陰でできた表現がたくさんあったんじゃないかと思います、それだけでこの発表会のコンセプトである「ソロ曲練習してうまくなる」というところはクリアでしょう。もちろん、それだけじゃつまらないよね。

やりたい表現が明確で、それに伴う技術もしっかり持っているので聴いていて安心できる演奏でした。丁寧に練習したこともよく伝わってきて好感の持てる演奏でした。ここまで丁寧なウェーバーってそう聴けるものじゃないですね。

さて、いい鳴りを手に入れた君にとって今後気にしていきたいのは「鳴った音」のクオリティアップです。例えば冒頭の音はもっと豊かに響くフォルテがいいし、低音はもっとコントロールが取れるといいし。挙げればキリがないけど、鳴った音をもっと使いこなせるための技術を磨きましょう。ほしいな、と思う音を出すことに執着してほしい。

この曲は「ダサい」と「歌」の使い分けが難しいけど、「歌」の部分がもっと大きな表現でもよかったかな。ここは好みが分かれるところですが・・・。

今後もレベルアップに期待してます。自身がレベルアップすることは、大好きな共演者にできるたった一つの誠意なのだから。

 

8.ファゴット協奏曲より第2.3楽章/ウェーバー

オンラインレッスン、合わせ、本番という不慣れな環境でしたがよく準備してきたと思います。2楽章、本当に美しかったです、澄んだ湖のような。レッスンで伝えたこともよく反映されていました、オンラインは成果が得られているか不安なのでこちらも不安ではあったのですが・・・。

ところでビブラートは我流でしょうか。いまかかっているものがあまり効果的ではなさそうです。こればっかりはオンラインで伝えるのは難しい気もしますが・・・機会があったらみっちりとやりましょう。

緊張によるところでしょうが、発音が不安定なことが多いようです。音は出るのですが、出だしの音程だったり音色がまちまちで、非常に勿体なかった。やはりもう少し基礎に立ち返ったようなレッスンが必要かもしれませんね。これだけ表現力があるとそこが非常に惜しく聴こえます。

3楽章もよく練習してあります。曲(楽譜)に書いてある仕掛けをうまく使って変化に富んだ演奏ができています。本来苦労するであろう速いタンギングも問題なくクリアできています。

全体を通して、もっと広い空間を意識した音色・鳴りが作れるといいですね。このご時世ですし狭い部屋で練習する時間が多いのは仕方のないことですが・・・広い部屋いっぱいに自分の音が響く感覚、機会があったらやってみてください。そーいう部屋で吹くとき、どんな音がいいのか、それを感覚的につかむことができればもっとレベルアップできると思います。

今後も楽しみにしてます!もうなんでも吹けますから、フランスものでもぜひ!

 

9.組曲/タンスマン

ある種の覚悟のようなものを感じました。演奏、というより、演奏の背景にある誠実な練習時間に対して。間違いなく背伸びと言える難曲を魅力たっぷりに演奏できていました。遅いところの音程や音色が以前は気になったのですが、今回そういった不安は一切感じませんでした。発音、伸ばし、切り、の基本がよくできていました。またピアニストとのアンサンブルも非常にうまかったです、聴くことや分析することもそうですが、合わせものである、という意識なしに練習していてはここまで合わせることはできないはずです。今回のような練習の仕方を忘れないように!

アゴーギグの付け方は改善の余地がありそうです。遅くするのは上手いのですが、そのぶん速くするところが必要で、遅い→インテンポ→遅い→インテンポ、の繰り返しで間延びした印象に聴こえる場所も少なくありませんでした。誠実に練習する、だけでは得られるものではないですね・・・。芸事の基本は「ものまね」です、もっといろいろな人の真似をしてみて。

技術的にあまり言うことはないです。厄介な譜面への挑み方も理解できたでしょうから、今後はやりたい曲をやりたいように。楽しみにしてます!

 

10.7音のシランダ/ヴィラロボス

音色の変化に富んだ演奏でした。様々なシーンが出てくるこの曲はそれが一番難しいのですが、キツいのでリードの選択肢は狭いし・・・というところです。しかしよく変化して聴こえていました。イメージする、ということの大切さがよく分かりましたね。

レッスンでも言いましたが気になるのは、音価の大きい音ほど楽器がよく鳴り、小さい音ほど鳴らない、というのはどこまでいっても付きまといますので、長い音ばかりで歌わないクセをつけましょう。動いている音をいかにして美しく聴かせるか、が大切なのです。

変化はよく感じる演奏でしたが、繊細な表現がもう少しできるといいですね。繊細=音量が小さい、ということではなく。印象の問題なのでもう少し場数が必要かもしれません。大きい音と小さい音だけではなく、フレーズをどんな印象に聴かせるか、そのためにどんなダイナミクスの変化と発音と時間の使い方をするのか。そんなところを感じて演奏できるようになるといいですね。

バロック作品なんかやるといいかもしれませんね。ファゴット協奏曲、ではなく・・・例えばヴィヴァルディのチェロソナタテレマンソナタ、バッハの無伴奏なんかもいいかもしれませんね。そういえば昔門下にはファッシュを愛してやまない男がいました。

 

11.オーボエ四重奏曲より第1楽章/モーツァルト

一番評価すべき点は、いい意味で合わせの回数がちゃんと演奏に反映されていたこと。いや僕は何回合わせをしてどのくらい集中していたのかは知りませんが、良くも悪くも色々あったでしょうに演奏そのものの安定感があったこと、これはいい合わせをたくさんできたからだと思います。ここは非常に評価できるところです。急な代打がいるにもかかわらず。これは素晴らしいことです。

オーボエはもうこれ以上褒めてもしょうがないですが本当に成長しました。一つ目標をもってレッスンに通う、ということの重要さと成果が自分が一番よくわかっているでしょう。さて、これから君は「上手なオーボエ吹き」の一角なわけですが、ここからが修羅の道です。上達があるとすればもうそれは重箱の隅のようなところばかりで、しかしその積み重ねでしか「上手い」という世界はもうありません。これからたくさんの場数を踏んで、また会ったとき「さすがだ」と僕や今回の演奏を聴いていた面々に言わせなきゃいけないので、これは大変なことです。

チェロの安定感は抜群でした、レッスンで触れた「ただの四分音符」にしっかり音楽があり、全体にいい効果をもたらしていました。いわゆるチェロ的な「いいところ」のない曲ではあるのですが・・・。高望みをするなら、室内楽ですから、もっと全体を運ぶような弾き方があるとよかったです、ヴァイオリンやオーボエが音楽の行き場を失っているときに先導するようなラインを低音側から引いてあげられるとなお素敵でした。もっと攻めた演奏が聴きたかったですね。

ヴィオラは急な代打でよく弾いてくれていました。まさにヴィオラの仕事らしく、上下の繋ぎとソロパートの間を埋める役を実に見事にこなされていました。リハーサルも何もあったものではなかったのでこれ以上は、というところですが・・・今度はぜひ正規エントリーでご参加くださいませ。楽しみにしております。

ヴァイオリンに関して、というか弦楽器に僕は明るくないのですが、まず目指すところとして、目の前にある楽譜から、取りこぼしをゼロにする、ということから始めましょう。難しい、弾けない、できない、ではなく、「ぜんぶ弾ける」を目指しましょう。もちろん、いい音で、ダイナミクス等々楽譜の指示を守ったうえで、です。もちろんできないでしょうから、テンポを落として。それでもできなければ、目の前の楽譜=乗りを減らすしかないですね。とにかくもっと、演奏そのものに没頭できるようなってほしい。演奏会に出ることは、誰でもできるのです。それだけじゃなくて。

 

12.さくらのうた/福田洋介

毎回言ってますが「同族楽器アンサンブルは合って当然、よくて当然」です。が、ダブルリードアンサンブルだけはそれが適用されないかもしれません、バランスやアレンジのこと、とても苦労したことでしょう。個々のレベルの高さ、誠実な準備、いいリハーサルで結果として本番でいい演奏ができてよかった。

オーボエはトップとしての仕事がもっとできるとよかった。少なくともオーボエパートはよく生かされたアレンジだったので、一番の花形としてもっと魅力的な音楽を奏でることと、周りを引っ張る力があればいいですね。経験どうこうより、技術面でもっと表現の幅が広がるといいですね。木五だとフルートがいますが、あの楽器並みの表現力があれば勝手に周りはついてきます。

イングリッシュホルンはメンバーですてきな表現をしていました、いわゆる特殊管ですし「音色ありき」の楽器でここまで攻めた表現ができるのはすごいことです。しかしレッスンでも言いましたが曲のアーティキュレーション、これは大前提です、アンサンブルなのでしつこくは言いませんでしたが、それを見落とした演奏に、先生としては本来何もかける言葉はないのです・・・。まずは遵守すること、そこから。気持ちは、よくわかるのですが。

ファゴット3人はそれぞれのパートでいい仕事はできています。が、旋律が来た時の楽器の鳴りが貧弱すぎる。もちろんファゴットにはオーボエのような立った音は出ませんし、メロディックな美しい曲ですから馬鹿でかい音を吹けということではないのですが、その場でとりあえず音を並べればいいかな、という印象に聴こえます。同じ楽器が3人いて、それぞれ違うところでメロディを吹くのだから、聴いている人は3人それぞれが違った意味でいいところを見せてほしいのに、3人そろって小さくまとまりにいくので・・・。競う必要はないけど、とりあえずメロディ吹こ、ではなくて、魅力的に聴こえるための努力と工夫をしましょう。他の人にも書いたけど、共演者を大切にするたった一つの方法が「うまくなること」です!努力はともかく工夫するための材料は教えてあるはずなんだけどなぁ・・・。

 

13.ファゴット協奏曲/コジェルフ

本当に久しぶりに演奏が聴けてよかった!制限の多いご時世ですが、しっかり自分のファゴットに向き合った時間を過ごしてきたことでしょう、それだけのレベルアップを感じました。

長い曲をレッスン1回だったので伝えられることも限定的でしたが、よく噛みくだいていました、指摘した悪いクセもちゃんと抜けて、自然なフレーズが聴いていてとっても心地よかったです。聴いているほかの出演者やお客様からの評判も上々で、僕も1人目の先生として鼻が高い思いでした。

しかし君が真面目に練習し先生の言うことを聞いていても、かならず望む道に進めるわけではありません。音楽家という暮らしの面白さは言語化が難しいですが確かです。しかし今のままでは、どうかな・・・という印象も、僕は持ってしまいました。学校にいる以上、演奏に成績がつき、単位を取れば卒業はできるでしょう。ですが、それだけでは望む道には進めません。数多のプロ奏者たちの中で、君の演奏を聴きたい、君を呼びたい、君と一緒に演奏したい、と思ってもらえる演奏ができる人にならないと生きてはいけません。そのためにもっと色々な工夫をしましょう。変わったことをする必要はありません、自分で考えて動き、それが周りにどう映るのか、考えることからでしょう。

演奏としては、もっと気まぐれだったりふざけたり、時には豊かに歌ったり踊ったり、表現がもっと幅広く欲しいなという印象を受けました。「上手い」ではなく「好き」と思ってもらえる演奏を目指していってほしい。これからまた忙しくなったりもすると思いますが、タイミングが合えばぜひまた参加してくださいね。

 

14.プルミエソロ/ブルドー

良い演奏でした。上手くなった、なんて評価はもう君に対しては失礼で、この曲の魅力をしっかりを引き出した名演でした。傷も目立ちますが、気にならないくらい攻めの姿勢の音楽、すごく心に響きました。音色・音程の良さはもはや折り紙付き、ですね。今回出したような音と音楽、忘れずに。

さて気にならない、とは言いましたが傷は確かに多いですし、ここまで来ると君にとってそれが唯一にして最大の欠点と言えます。技術的に解決することはまだたくさんありますが、必要なのは音をもっと頭に入れること。楽器の練習だけではなく、心の中で(ある程度音程をつけて)曲を歌えるようになりましょう。それだけでずいぶんミスが減らせるようになります。もしかしたら、歌詞のある曲、つまり歌曲の類をファゴットで演奏したら掴めることがあるかもしれませんね。

またこれから楽器を触る時間は減るでしょうから、短い時間で、もしくは(例えば)週1日に詰め込んだ練習の仕方、といった、ある意味、毎日楽器にさわる僕には絶対に教えてあげられない領域のところと戦うことになります。やり方は本当に人によると思うので、自分のペースをつかんでいってほしい、そのうえで、時間をかけずレベルアップしていってほしい。もう君は「うまいひと」の1人です、何の曲を吹いてもどこのオケでどのパートを吹いてもそう思ってもらえるように、これからまた頑張っていきましょう!

 

15.演奏会用独奏曲/ピエルネ

名曲ピエルネ、と思わせる演奏でした。派手なだけではなく、憂いがあったりおどけてみたり、聴いていて飽きのこない演奏は見事でしたね。力の入れ方と抜き方がとてもうまくなりました。音の響き方もよく、広い空間でソロを吹くことにもいい意味で慣れが出てきましたね。

短い曲で難しいところも多くないですから、基礎的なところに立ち返りやすかったでしょうか。うまく力の抜けた弱奏やいい意味でナチュラルな強奏には技術的な進歩が見られました。一方で、ハッとするような弱奏や心を鷲掴みにするような強奏も見られませんでした。心地よく聴ける演奏でしたが曲の山場がどこなのかハッキリしない印象も見受けられましたので、もっと攻めたところがあってもよかったかもしれませんね。

名演だったのは確かなので、この調子で!今後はその自然な奏法からダイナミクスがもっと広がるように意識して練習してみてくださいね。

 

16.歌劇「どろぼうかささぎ」より/ロッシーニ

こちらも1年越し。しかし間でもレッスンに通い続けた成果が確実に出ていて、技術的に音楽的に飛躍的に伸びたと思います。楽器の鳴らし方とコントロールが抜群に上手になりました。歌曲の演奏は器楽とはまた違った難しさがあります。何でもないフレーズが楽器だとなんだかうまく決まらなかったりするのですが、非常にうまく表現できていました。

課題としてはタンギングでしょうか。単純に入れたい速度や性質で入らない、いわゆる「ろれつがまわっていない」タンギングがちょこちょこ見受けられました。指、息、と同じくらい舌の操作は自分から見えず感覚的なところが多く慣れが必要ですので、アーティキュレーションをもっとうまく表現するためにタンギングに意識を向けていきましょう。

いつも僕も知らない曲を持ってきて、僕も勉強しながらレッスンを続けていきますが、そろそろ王道やら定番のレパートリーが聴きたいところでしょうか・・・?もちろん、演奏する曲はご自分で決めてくださっていいのですが。

 

17.ファゴット協奏曲より第1楽章/シュターミッツ

貫禄のある演奏だった、と言えます。やることと学びの多いこの曲をよく仕上げてきていました。また楽器がよく鳴っていて、(僕は前のほうにいたのでわかりませんが)おそらく会場の端まで良い音が響いていたことでしょう。しつこく教えた様式についてもうまく表現しており、誠実な取り組みを感じました。

課題はとしてはダイナミクスです。強弱自体はよくついていますが、意識的に音量操作を行うと、持ち前の音色やら音程の良さが失われてしまうことが多いです。逆に言うとダイナミクスの操作が行われていないときは非常にまとまっていてレベルが高いのですが・・・それでは音楽の表現もできません。つまり「ダイナミクスをつけずになんとなく音を並べる」箇所が多いのでそう感じるのも確かです。その場その場、どんな音を出したいかのイメージに必ずダイナミクスも加えるようにしましょう。そうすれば持ち前の誠実さでうまくいくよう工夫ができるでしょう。そうすることで生まれてくる課題もきっとあるはず。今後挑戦する曲は、何でもいいと思います、やることは何をやっても同じですので好みの曲を!

 

18.アンダンテとハンガリー風ロンド/ウェーバー

本番近いタイミングでのタンギング変更、どうかなと思いましたが・・・本当によくやりました、普通できません、君だからできたことです。せっかく覚えたトリプルタンギング、この曲でいいですから時々練習して忘れない・衰えないようにしましょう、ダブルタンギングへの意識も少し変わってくると思います。

タンギングのこともありますから反応の良いリードを使うのはいいのですが、そのコントロールがいまひとつでした。実は反応のいいリードほど扱いは難しく、また変化もしやすいので注意が必要です。しかしアンダンテでのピアニストのアンサンブルは抜群でした。ピアニストもとても弾きやすそうな印象でした、よく研究・練習したと思います。

ロンドもよく研究しました、2拍子感、というのをあえて出しに行くのは実は難しいことなのが今回よく分かったと思います。またコロコロ変わるシーンにもよく対応できていました。イメージがちゃんと音になっていました。

どんどん新しいことを覚えていきますね!力任せだった昔の印象はもうないです。次の演奏も楽しみにしていますね!

 

19.無言歌/メンデルスゾーン

非常に難しい選曲をしましたね。譜面は簡単、さてその表現はどうか、という曲は試されることが多く、苦労が絶えなかったと思いますがよく表現できていました。弱奏のとき、ただ弱く薄い音だけではなくその中に歌がもっと表現できるといいですね。アゴーギグももっとあってよかったかもしれません。決してうるさい印象にはしたくないので、難しいですが・・・・。

ピアニストのアンサンブルはかなり精度が高くよかったです、つけてもらっているのは確かですが、よくリードもできていました。

短調のところはもっとガラッと印象が変わると素敵でしたね、やり方は色々会ったと思いますが、合わせのこともあるのでなかなか難しいですね。やはりそこも聴いて分からない程度のテンポの変化やビブラートなど、ちょっとしたことで印象が変わっていたのでしょう。

しかしこの曲で得た経験は今後も生きていくことでしょう。そろそろフランスものの定番、ボザやフランセに手を出してもいいかもしれませんね、もちろん好きな曲を!

 

20.3つのロマンス/シューマン

本当に最後の最後まで心配していました、が、きちんとやるべきことをやってきて良かった、とにかくこの曲の期待に対してのハードル越えの難しいこと。ハイトーンがどうのこうの、以前に本当に厄介な曲です。

レッスンで伝える情報量が多く、毎回大丈夫かな、と思っていたのですが最終的にはきちんと飲み込めていましたね。音楽の流れも本番ではとても自然で、安心して聴いていられる演奏に仕上がっていました(この曲でそれはすごい!)ピアニストとのアンサンブルを意識する余裕はなかったですね。ピアニストにはよくお礼を言っておきましょう。

フォルテ、ピアノもきちんと表現できていましたが、それでもあまり変化を感じないのは音色が一定だからです。ハッとするようなフォルテ、息のつまるピアノ、そしてそれらから始まる強弱の変化から音楽の移り変わりを聞いている人に感じてもらえる演奏ができるといいですね。ちょっと汚いかな、と思うようなフォルテも、あっていいんです、ぜんぶ綺麗な音色じゃ飽きてしまうから。

また音階練習の成果はよく出てると思います。この曲に限ったものを徹底させましたが、ゆっくりでいいですから24調を2-3オクターブで同じように吹けるようになれば更なるレベルアップがのぞめます。ぜひ挑戦してみて!

環境も変わり大変かと思いますが、また演奏を聴けるのを楽しみにしています!

 

21.2本のファゴットによる協奏曲/ヴァンハル

ファゴット2本、って楽しいことがたくさんですね、聴いていてその気持ちがよく伝わってきました。本番へのブランクのせいで色々あったとは思いますが、練習して人前で音を出すことの面白さ、やりたいことができた時の気持ちよさ、できなかったときの悔しさなど、思い出せたことがたくさんありそうでよかった。

ところで2人ともすこし音程が下方向に来すぎる傾向にあるようです。ファゴットは性質上、楽器が鳴れば鳴るほど下に来やすいので、もう少し自分の音程をきちんと向き合って。そのためにはロングトーンで吹ける最高の音をスケールといういちばん基礎的な音形に落とし込む、と僕がレッスンでさんざん言ってきた基礎練習を積む必要があるでしょう。音程は感覚もありますが、楽器を正しく扱えば必ず良くなります、そこは怠けないように。

トリルや装飾の入れ方、この時代の音楽の様式、アーティキュレーションのことなどたくさん教えましたが、どんな曲でも生かせる技術ですしそこまでパターンも多くないので今回覚えたことを忘れないように。

そろそろ、それぞれのソロ曲が聴きたいですね!

 

22.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

冒頭の低音の響きとっても良かったです、楽器のポテンシャルがしっかり生きてきました。中~高音においても同じくらい発揮できるといいですね、唇によるコントロールと息圧をしっかり操作して。音楽的に言うことはほとんどありません、僕が教えたことをしっかり飲み込み自分のものにしていました。今後は自分発信で、「こう吹きたいんですがどうでしょうか」なんて言ってくれたら僕は嬉しいです、本来レッスンってそーいうもの。材料はもうたくさん持っているはずでしょ?

速い楽章になると楽器の鳴りが弱くなりやすいようです。いわゆる連符でもしっかりリードが振動している状態で練習すること、そのためにゆっくり練習を始めるのです。死んだ音で連符を並べても効果は薄いです。

ピアニストとのアンサンブルはうまくいっていました。よくかみ合っていますし音楽的にも同じ方向を向いています。そこまでできるなら、自分が先導したり相手に乗っかってみたり、の遊びがもっとあるといいですね。合わせは1回ですがイメージ次第でじゅうぶん可能なレベルですから、次回はそういったことができると素敵ですね。

 

23.ファゴット小協奏曲/ダビッド

最後を飾る演奏にふさわしいクオリティでした。なんとなくわかる通り、上手い人を最後にしているわけではなく、伸びしろが一番面白いことになりそうな人をいつも最後にするのですが・・・今回はいろんなところで面白い演奏が聴けたので、緊張しながらもいい刺激とプレッシャーになったのではないでしょうか。

基礎的な部分にかなりレッスン時間を使いましたが、抜群に楽器の鳴りと音程がよくなりました。そんなに難しいことを教えたわけではないのですが、これをきちんと継続していくのは難しいことです。とにかくフリックは押す、左手小指は端折らずきちんと操作する、そしてそのためにゆっくり練習する、ということを今後も徹底していきましょう。

演奏の傾向がいわゆる「優等生」なところがあります。もちろんいい意味でもそうなのですが、僕個人としてはもうちょっと「やんちゃ」な方が好きですし、気まぐれなことを仕掛けられるのも技術です、色々と試してみてほしい。「ここはこう吹こう」と決めても、練習のたびに気まぐれで「あれこっちでもいいのかも」なんてのを自分で気付き始めると、曲を人前で吹くのが面白くてしょうがなくなります、もっと色々と試してみて。

環境も変わりますが、楽器を吹く面白さは変わりません、これからは大人として、素敵なファゴットのたしなみ方ができますように。また演奏聴けるのを楽しみにしています!

 

 

 

長くなりましたが以上です。次の発表会も楽しみですね!