ファゴットの吹きかた

ファゴットの吹きかたとはなんぞや、と日々葛藤するブログです。

第22回門下発表会でした。~講評、演奏会告知と最近のことについて~

こんにちは。ファゴット奏者のとのむぅです。秋すっ飛ばして一気に寒くなってきましたがみなさまいかがお過ごしですか?

楽器のジョイントがゆるみ、リードのワイヤーがスカスカになり、冬を感じていませんか?僕は感じています。

 

さてまずは演奏会のご案内です。プライベートでゴルフを、仕事上ではオケやら室内楽やらよくご一緒するホルンの越取さんから「とのむら、木五やろうよ」と一言言われたのを僕が真に受けたため、メンバーをそれぞれ集めて開催されます。笑

今回は文化庁AFFの助成を受けた公演となります。なんと千葉、神奈川、滋賀の3公演に加えて、千葉公演では同日に0歳から入場可能な子ども向け公演も行います。なんと滋賀公演は開催決定からすぐに予約で埋まってしまったのですが・・・神奈川公演、千葉両公演はまだまだお席ございます。

 

Ensemble Lord 1stコンサート

・千葉公演 目前に迫ってしまいました!

2021年12月1日(水)19:00開演

千葉市美浜文化ホール 音楽ホール(JR検見川浜駅より徒歩8分)

入場料:1500円(全席自由)

・神奈川公演

2021年12月10日(金)19:00開演

ミューザ川崎 市民交流室(JR川崎駅より徒歩3分)

入場料:2000円(全席自由)

オンライン配信チケット:1000円(2週間のアーカイブつき)

・滋賀公演※完売しました!!

2021年12月12日(日)14:30開演

奏美ホール(上栄町駅より徒歩2分)

入場料:1500円(全席自由)

プログラム

3つの船乗りの歌/M.アーノルド

きらきら星変奏曲/W.A.モーツァルト

パストラーレ/D.ミヨー

バレエ「くるみ割り人形」より行進曲、中国の踊り、ロシアの踊り/P.チャイコフスキー

五重奏曲作品96「アメリカ」/A.ドヴォルザーク

出演:Ensemble Lord

フルート 宮本夢加 オーボエ 寺脇万葉 クラリネット 浜崎歩 ホルン 越取浩一 ファゴット 殿村和也

チケットのお申込み先はこちら https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScj38kznm2Dd6-ohrW5wfb88xy_MUn6AdqoVEHNLd0q4bwIPA/viewform?usp=sf_link

オンライン配信チケットのお申込みはこちら https://twitcasting.tv/c:ens_lord/shopcart/112569

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0歳からの木管五重奏コンサート ※こちらも目前に迫ってしまいました!

2021年12月1日(水)15:00開演(14:30開場)

千葉市美浜文化ホール 音楽ホール(JR検見川浜駅より徒歩8分)

入場料:500円(全席自由)

プログラム

サウンドオブミュージックメドレー/R.ロジャース

バレエ音楽くるみ割り人形」より/P.チャイコフスキー

クリスマス・メドレー ほか

出演:Ensemble Lord

フルート 宮本夢加 オーボエ 寺脇万葉 クラリネット 浜崎歩 ホルン 越取浩一 ファゴット 殿村和也

チケットのお申込み先はこちら https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScj38kznm2Dd6-ohrW5wfb88xy_MUn6AdqoVEHNLd0q4bwIPA/viewform?usp=sf_link

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今回このAFFのために非常に苦労したのですが、大変なのは通ってからも一緒ですね・・・なれないことに毎日四苦八苦しております。これも音楽家の仕事、なんだろうなぁ・・・。それについては、また気が向いたら別の記事で。

 

さて、11月13日に第22回門下発表会が行われました。今回はソロ20人、アンサンブル5組で25曲でした。最近の傾向としては若干少ないくらいでしょうか。それでももりだくさん、聴きどころ満載の発表会となりました。

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これで全員ではないのだから、やっぱり大所帯ですよね~一体どうしてこうなったんだか(いつも言ってるけど)

前回、前々回くらいから音大生がちょこちょこ参加してくれるようになり、今回は4人も参加してくれ、カルテットも演奏してくれました。やはり締まりますね。音大生たちからみてもこれだけ多くのアマチュア奏者と接する機会は多くないでしょうから、交流も生まれていて主催としては嬉しい限りです。対面での打ち上げができないのが悲しいところですが・・・(毎回、オンラインでは開催しています!)

なかなか新規の生徒が増えづらいご時世ではありますが、なんとかかんとか開催できております。もちろん、次回もやります!

 

次回の発表会のご案内です。なんと地元である府中市の誇る府中の森芸術劇場ウィーンホールを予約しました。どう考えても今までで一番いい会場での開催となります。

 

春のひとときコンサート(第23回とのむら門下発表会)

2022年3月19日(土)お昼ごろ開演

府中の森芸術劇場ウィーンホール

参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン代1回分など含む)

ファゴットソロ 社会人15000円 学生10000円

アンサンブル ひとり6000円(編成などによって変動あり)

ファゴット、アンサンブルどちらも僕のレッスンを1回以上受ければどなたでも出演できます。ですので普段ほかの先生に習っている方(もちろん先生に許可をもらってくださいね)も出演可能ですし、現在どなたにも習ってない方は選曲からサポート致します。

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さてここからは先日行われた発表会において、各演奏への講評となります。出演者以外には興味のない内容となりますことをご容赦ください。

 

1.ファゴット協奏曲イ短調RV498第1楽章/ヴィヴァルディ

初参加お疲れさまでした。実際どうだったかは分かりませんが雰囲気に呑まれていない(ように見えた)のは大変立派なことかと思います。それは本番強さとも呼べる、長所となって活きてくることでしょう。

音の濃淡について、レッスンではそれなりに時間がかかりましたが本番前くらいにはよく出来ていました。またレッスンで触れた中低音の音程・音色についてもとてもよくなっていました、この感覚を忘れずに練習を続けていってほしいところです。それが難しいことなのですが・・・。まずは運指、次にいい響きに慣れること(=100%演奏できるテンポでしか練習しないこと)が大切でしょう。それがわかってようやく技術的に次の段階へ進むことができます。

音の濃淡はクリアしたので、さらにもっと強弱があるとよかった。音量は少しずつ変わってはいますが音色やらスピード感が伴わないことが多く、表現力にやや欠ける演奏でした、そこは今後の課題としていけばまだまだ上手くなると思いますので、一緒に頑張っていきましょう。ぜひ自分の演奏を聴いてレベルアップを実感してくださいね。録音はポジティブに聴くのが一番。

 

2.ファゴットソナタト短調より第1楽章/ドゥビエンヌ

まず間の取り方、非常にうまくいっていました、よくイメージし、おそらくその練習もしたのでしょう。何度も発表会というステージに立ってきた事も活きているのかもしれません、聴いていてバテてる印象のある箇所がありませんでした。それがこの曲でできたことはすごいことです。今後挑戦する曲でもぜひ活かしていってください。

技術的にあまり言う事はありません。レッスンで言ったことについてほぼ完ぺきに理解し演奏できていました。今回やったような楽器の鳴らし方をぜひ今後も意識していってくださいね。音楽的にもレッスンで言ったことはクリアできていましたし、いわゆる「表現と技術」のバランスに優れた演奏だったと言えます。そこのバランスって本来けっこう難しいものです。

さて課題はやっぱり、欲、でしょうか。こう吹きたい!こんな音を出したい!という意思が自分発信から出てこないので、少し物足りない演奏に聴こえてしまいます。ファゴット演奏にうたごころ、なんてものはあってもなくてもいいのですが、ここはもっと大きい音のほうがいい、ここはもっと薄く吹きたい、ここはもっと・・・・のような意志がレッスンの時からあれば、そのための表現方法や技術が教えてあげられたんですよね。正解はないのだから、もっと自分で決めてみてほしかったかな。難しいことかもしれないけど、せっかく技術的に伸びてきたのだから少し意識してみましょう。

 

3.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

久しぶりの参加お疲れ様でした。ソロのステージって異様な空間だけど、楽しんでくれていれば幸いです。

安定した演奏で、聴いていて不安なところが一切ありませんでした。特筆すべきはピアニストとのアンサンブル力で、他の出演者の誰よりもそこは上手でした。タイミングや音程だけではなく、音楽的にも綺麗に乗って、時には先行して、というのが見事でした。いい耳と、それを活かす技術とソルフェージュ力があるからできることです。

課題についてはまず音量、というよりは鳴り。弱奏や綺麗なところはそれでもいいですしとても美しい音が出せているのですが・・・・ぜんぶその音色だとやりたいことは伝わらないし、いくらいい音でもずっと同じでは聴いている方も飽きてしまいます。美人は3日で飽きるのと一緒です(僕はそうは思いませんが)

時にはハッとするような強い音があってもいい。その音色が多少なりとも自分で「汚いな」と思う音でも、曲のシーンにあっていれば聴いている方は気になりません。

時には多少音程が悪くてもいいから耳を澄まさないと聴こえないような小さな音があってもいい。音程が、と思うかもしれないけどピアノが鳴っていないシーンならそんな音も使いどころがあります。

自分の音、というのは大事にしてほしいけど、まず曲があって、その曲の魅力のために自分の音があって。自分が演奏する前に、聴いている人がいるのがステージなので、聴いている人のために曲の魅力を活かす、そのために自分がどんな音を出すのか考える事が大事です。絶対的な「良い音」なんて存在しません。

 

4.三重奏曲/オーリック

難しい曲を非常に高いレベルで演奏できていました。レッスンでも言いましたが楽譜の指示があまり良くないのでどう活かすかが難しい作品ですが、本番では魅力たっぷり演奏できていました。変化に富んだ演奏なのでいっときも飽きることのなく聴ける演奏でした。3人での「決めごと」も非常に効率よく発揮できていていい合わせができていたと思います。もし僕から言うことがあるとすれば「決めごと」以外の気まぐれのようなものがもっと見たかった、せっかく同じリード楽器が3本も揃っているのですから、もっと適当でいい箇所があったのかも?

オーボエはテクニック面もそうですが低音から高音まで(少なくとも聴いている方への)ストレスのない鳴らし方が非常にうまいなと思いました。きっとオケでもいい仕事をされていることでしょうが・・・僕はオーボエはもっとわがままでいいし、自分がいい音を出すために周りを踏み台にする、くらいの強さがあっていいんじゃないかと思っています。おそらく共演者のお2人は演奏しやすかったと思いますしそれは素晴らしいことなのですが・・・

クラリネットは発音の使い分けが非常に上手いですね。発音があいまいだとダブルリード族は非常に困るのですが、そういったシーンがほぼなく、そのお陰でいいアンサンブルを作るキッカケがたくさんありました。またバランス感覚にも優れているため「うるさい」とも「聴こえない」とも思うシーンがありませんでした、これもやっぱりすごいこと。課題はソリスティックなところ。いいアンサンブルとはけっきょくのところ、うまい個人の集合体ですから、見せ場がもっと魅力的であってほしかった。決して台無しにはしていないのですが、クラリネットはもっと圧倒的であってほしい。僕個人の好みではありますが。

ファゴットはいい意味で「最近よく見る音大生」のような演奏ができていました。非常に高水準なテクニック、よく響く音色・音質を持ち、周りをしっかり聴き、時には先行し、見せ場はきっちり歌える、いわゆる「非常に上手い」ファゴットでした。トリオダンシュは木五と違ってファゴットは低音に徹する、というより3パートのうち1パート、という箇所が多く技術力を問われるのですが、難なくクリアできていてしっかり練習してきたんだな、と思いました。僕から与える課題は特にありませんが、技術も表現もそのもう一歩先があるはずで、最終的に狙ったのが「安定感」な印象があるので、そこは「攻め」であってほしかったな。やっぱりダンシュですから。「合うのが前提」であるトリオダンシュを「合わせにいく」では、やっぱりちょっと勿体ないかな。全体が高水準であるから、なおさら。

 

5.ラプソディ/オズボーン

唯一の無伴奏でしたが、緊張を感じない演奏ができていました。その舞台度胸はやっぱりさすがです。レッスンで指摘した強弱やらテンポ感やら、ひたすら情報量の多い楽譜を忠実に再現できた演奏だったと思います。また弱奏も素晴らしかった、息遣いとリードの鳴らし方がきっちり計算できていないとここまで安定しては吹けないはず。またこの曲特有の間の取り方がすごくうまくて、演奏者もそうでしょうが聴いている側もその間が心地よかったんですよね。

もう一歩踏み込んだレッスンをすればよかった、と中盤まで聴いていて思っていました。すこし「ラプソディ」である事が、欠けた演奏でした。もともとラプソディという言葉に対した意味はありませんが・・・先人が「狂」という字を当てはめただけに、やはり常軌を逸した箇所がないと面白みにかけてしまいます。それでこそ弱奏が生きるので、そこが非常に勿体なかった。たまに頑張るのですが、技術的になにか気になるとすぐ消極的なところに落ち着こうとしてしまうクセがあるのかな。

それでも技術的にはここ1年くらい、非常に上手になりました。前ならもっとこじんまりした演奏になっていたと思いますが、魅力的なところがたくさんありました。演奏に積極性を感じるようになったこと、先生(のひとり)としてすごくうれしく思います。

 

6.コンチェルティーノ/ビッチュ

MVPでした、いなかったけど。レッスンで呆れてしまった前半部分は、「こーいう箇所が得意なひと」のような完成度だったし、理想の高さを感じる演奏でした。ピアニストとのアンサンブルも非常にうまくいっていて、曲をよく理解しているな、と思いました。少し前の君ならそれはありえなかったので、いい成長の仕方をしたなと思います。

もちろん中盤・後半はさらい方について意識が変わったことが2回目のレッスンでも言いましたが大きな進歩でした。ただ指をさらって音を追うだけじゃなくて音楽的な表現力をともなっていて、ここまでうまくなるとははっきり言って想像してなかった、そして本番でそれが発揮できることもすごい・・・!

難しい曲の難しい箇所に限らず、どんな楽譜もその意識で譜読み・練習ができると周りの見る目も変わることでしょう。「なんとなくセンスで吹く」というのが上手い人というのは譜読みからそれができているんですよね。まずはその力を付けてそれが当たり前になること。いつか若い子に「センスがありますね」と言わせて「いやこれはセンスじゃない」と言えたら素敵ですね。

それでもやはり前半部のような箇所は苦手なのでしょうから、ヒンデミットシューマンなどのいわゆる「綺麗な曲」に挑戦できるといいかもしれませんね。

 

7.ソナチネ/タンスマン

難曲をよく演奏しました!ピアニストのエラーもありましたが、ノンストップなこの曲をしっかり動揺せず演奏できたのはいい練習ができていたからだと思います。リズムを出しフレーズを繋ぎ、ついでに(!)指と舌も忙しい、というこの曲を魅力的に演奏できていました。フレーズを意識した成果か、ブレスの取り方もよかった。聴いている方も演奏者のブレスって無意識でけっこう聴いているもので、いいブレスはそのお陰で心地よさも産むんですよね。

さて課題があるとすれば音色でしょうか。いやもちろん決して変な音を吹いているわけではないのですが、音色に変化がない。楽器の音が非常にいい音で吹いていて気持ちいいのですが、そこに操作がないので聴いていると音量や発音が変わっていても一辺倒に聴こえてしまう。ビブラートなどでうまく操作はしていますが・・・もっと何かやれたんじゃないかな。キャパシティの広い楽器なので逆に難しい部分なのですが、研究してみるといいかもしれません。

また「難しい曲だ!」と自分で思っていた以上にレッスンで思わせてしまったのか、少し消極的な印象もみられました。やはりステージの上では攻めの姿勢は欲しいものですから、そのための練習ができるとよりよかったかもしれませんね。

とにかく、それでもここまでタンスマンをきっちり吹けるアマチュア奏者、世界中探してもそう何人もいないんじゃないかな。本当にそう思います。


8.三重奏曲より第1楽章/ベートーヴェン

演奏機会の多さと曲の深みが釣り合わないな、といつ聞いても思いますねこの曲は・・・まぁとにかく、今回してた演奏は大変すばらしく、曲の魅力を最大限引き出しにかかっていたと思います。

ピアノの鳴りはスタジオでは気になりましたが予想通り会場では大丈夫でしたね。技術的にもよりさらいこんであってとってもクオリティが高かったです。「間奏で他楽器が出てこなくてもいいくらい~」とお願いした意味、よく理解してくれていました。でもね、本当にお客様にそう思ってもらっていいんですよ、まだまだやれたんじゃないかな・・・?それでこそこちらも燃えるというもの。また管楽器や弦楽器との共演機会があったら今度は食うつもりでやってみてくださいね。

ファゴットは昔に比べて非常に楽器がよく鳴らせるようになりました。鳴らせるようになると、とうぜん鳴らさないこともできるようになるので幅が広がり、結果として色んな音色が出せるようになってきました。それが強弱との組み合わせで幅広いダイナミクスを聴かせられるようになります。ただ「鳴らした音」のクオリティは決して悪くないのですが不慣れ感があり、その理由はちょっとした力みにもあるのかな。フォルテで息漏れが起きるのも理由の一つです。息漏れ自体にそこまで大きな害はないのですが・・・まずはフォルテのときに息漏れをなくすようにしてみると力みが改善され、フォルテもより鳴ってくることでしょう。音程もよくなるかな。

フルートはレッスンのとき、素直、というよりは実直、という感じで、どうかな、もっと色々言ったほうがいいかな、と思っていたんですが少ない言葉でどんどん飲み込んでいって、本番では色彩豊かな演奏ができていました。一番指摘したスタカートの加減については今回とてもうまくいっていました!今回(いちおう)ベートーヴェンなのでハマっていましたがこれがオケでドビュッシーとかフランクとかブラームスとかになるとどうなんでしょうか・・・?聴いてみたことがないのでなんとも言えませんが、色々なスタカートが扱えると素敵ですね。少なくともファゴット吹きに愛されるタイプのフルーティストかと思われます。ぜひまた何か吹きに来てくださいね。今回の相方が空いてなければいいファゴット吹きいくらでも紹介しますよ!

 

9.木管五重奏曲より変ロ長調/ダンツィ

「アンサンブルは個人技の集まり、それ以上の何物でもない、リハーサルなんてあんまりキッチリやるもんじゃない」という僕の持論はどこ行っても言うようにしているのですが。リハーサル回数の多いアマチュアの方で本当にたまに現れる「総合力でうまくいっているアンサンブル」というものがあります。今回のアンサンブルがそれにあたります。相性だとかバランスだとかが上手くハマった、というのもあるのでしょうが、音を出すたびに寄り添って行ったことと、それぞれがきっちり自分のパートを練習し曲の勉強をしてきたことが「総合力」として現れた演奏だったんじゃいかな、と思います。

フルートは前団体と同じことを言いますが実直そのもの、ですね。まっすぐ吹くことに関しては素晴らしいです。しかしそれだけでいいのは1人で吹く時だけで、アンサンブルの時はどこかに寄り添う必要があったり、他の誰かを圧倒する必要があったりするわけです。もっと変化に富んだ演奏を心がけましょう。またレッスンでも言いましたがフレーズの語尾を(音価以上に)長く大きく伸ばすクセがありますのでこれも古典派では絶対NGです、やめましょう。

オーボエは勝手に(ではないんでしょうけど)うまくなっていってるのでそこまで言う事はありませんが、全体の音楽の流れをもっと引っ張れる奏者になれるといいですね。少なくとも今回のメンバーはそれを望んでいたような感もありますし、オーボエというのはフルートの影になったり表に出たり全体引っ張ったりと色々な顔をしなくてはいけないので大変だとは思うのですが・・・。課題はリーダーシップ。そのための(鳴らす)テクニック、でしょうか。

クラリネットに関しては毎回僕から言うことは殆ど何もないですね・・・いつも素晴らしいと思います。ご自身の音から発信してる情報を、周りのメンバーがきちんと理解しているか、ということにもっと興味を持って、分かってないな、と思ったらなるべく声をかけてみましょう。そのコミュニケーション込みでアンサンブルです。

ホルンは木五向きの柔らかい音色がとってもいいですね。この曲ではそこまでホルンの爆発力に頼る部分も多くないし曲にハマってるな、という印象で聴くことができました。課題があるとすれば音の方向性でしょうか。この音はどこの小節のどの音まで向かっているのか。向かった後はしばらくそのままなのか、すぐおさまっていくのか。おさまったあとはどうなるのか、など、方向性はどこのどんな音にも必ずあります。「方向性がない方向性」というのもあります。なんのこっちゃ。もうちょっと新しい曲でのお話です。

ファゴットは個人レッスンの方でも触れたのであまり言う事はないですね。ただ周りに仲間がいると力をより発揮するタイプみたいです、人と吹くのが好きなのがよく伝わってきました。人と吹くのが好きなら、もっと上手くなりましょう。人のために上手くなると、自分ももっと楽しめます。間違いなくそうです、僕はそう思って頑張っていたらいつのまにか音大に入りプロになっていました。

木五で総合力の演奏、なんて、いやいや珍しいことだ。

 

10.ダンスホール組曲/キーティング

講評なんてないです。笑 アマチュア中心のうちの発表会で音大生が四重奏をやることになるなんて、僕からするとなかなか感慨深いのですが・・・その話はまたそのうちに。

質も魅力も十分でした。レッスンでいった「おふざけ」も思った以上に発揮されていて聴いていてとっても楽しめました。ちゃんとお金の取れる演奏でしたよ!自分の学生時代を思うと大学2年~4年が半分くらい初めましてで四重奏、なんてケンカでもしそうだなと思ってましたが、そこはリーダーの力もあってか上手くいっていたようでよかった。

 

11.ソナタ第3番/A.ヴィヴァルディ

久しぶりに自身も演奏しました。以下自分用のメモ。

ある種の発見があって音楽の表現を考えたり実践するのが面白くてしょうがなかった、ソロという分野がこんなに面白いんだなと気付けたの、やはりバロックもののソナタだからだからだろうか。6曲あるのだしぜんぶ自分で吹いておきたいなー。

同時にある種の衰えも感じて、やっぱり年3回僕も吹かなきゃいけないなーと思った。生徒たちにレパートリーの紹介という意味も含めて。

自分が吹かなくなった理由は以前ブログにも書きましたので割愛。吹くようになった理由は音大生が増えてきて色々な意味でみんな気にならなくなったかな、と思うから。僕としては運営しながらなので大変なんだけど、それでもやっぱり貴重な本番なのでどうしたもんか、と思っていたのですが。何人かに「講師演奏なのだしアンコールで演奏してはどうか」というお言葉を頂き、確かにそれなら、とも思ったのだけど、僕はこの発表会を、お客様のために演奏する「コンサート」の体裁を保ちたいと思っていて、そういった意味では最後を飾るのは生徒の演奏であってほしい、と思うんですよね。たまにアンコール企画しちゃったりした会もありますが・・・

とにかく自身の演奏は大事だ、皆に還元できることも増えるから、これからはうまいこと挟み込んでいこうと思います。短い曲ちょろっと吹くという手段もあるのだし。

 

12.ファゴット大協奏曲より第1楽章/フンメル

しっかりとした自分の意思を感じる演奏でした。レッスンで言った「習ってきたんでしょ感」は払拭されていて、本番の演奏で僕はようやく君がどういう子なのか分かった気がします。短い期間で、それもこの難曲で、ちゃんとそれができたことがまず素晴らしい。もうこれは時代だし老人くさい言い方だけど僕が学生の時代に、2年生でこの曲をここまできっちり吹ける子なんて1人もいなかったと思うのでなおさらそう思います。

この曲で難しいのはテンポ感。疾走感は欲しいけど、そのせいで速い跳躍や連符での表現が浅くなってしまうのは本末転倒で、さてどんなテンポで吹こうか、どう操作していこうか、と悩む必要のある曲で、そこが少し浅かったかな。もちろん疾走感と音楽表現を両立できている箇所もあったけど、全部というわけには・・・。具体的には、おそらくそもそものテンポが少し速い。テンポが速いことと疾走感があるのは似ているけど、音楽表現としては全く違う要素なので、少し基本テンポを落とし、アゴーギグをつけつつもっと表現重視の演奏をしてほしかった。そのうえで今回のような疾走感があれば、どんなコンクールでも負けない演奏になったことでしょう。

テンポと技術と音楽表現とスピード感。すべて大事なことですから、そこは練習量とは別のこととして、1人の音楽家としての「選択」としてよく考えてみるといいですね。

あ、「憧れのフンメル」にちゃんと聴こえたと思います。これ帰り際に直接言うの忘れてました。

 

13.ファゴットソナタ/ハールストン

会うたび君の成長に驚かされます。正直、僕の話どのくらい聞いてるのかな、と思うときもあるのですが、数日で噛み砕いてそれを越えたものを表現してくるの、(1人目の)師としてとっても嬉しく思います。誰に何を習おうと、それをしっかり自分で考え噛み砕き音楽家としての糧としていければ、みるみる力をつけていけることでしょう。意志の強さと柔軟さが君の武器だと思いますので大事に育てていってくださいね。

今回の演奏については、音色の変化・使い分けが大変見事でした。レッスンで言った発音も含めて、目まぐるしく変わる曲の雰囲気にしっかり対応できていました。(君の環境だとそうでもないのかもしれませんが)ファゴットの音大生は楽譜にまみれる学生時代だと思いますが、すべて今回取り組んだようなことを忘れずにやっていけるといいですね!

 

14.コンチェルティーノ/ダビッド

正直、曲も曲だしこんなに伸びしろが残されてるとは思わなかった。もっとレッスン時間取ればよかった、と思うくらい。それは基礎的な力がしっかりしてるのも関係しています、普段の訓練と習ってる先生のお力の賜物ですね。しかし基礎があっても普通ここまで変わるものではないのだから、なにか特別な、光るものを持っているんだと思います。たぶん自分なりに気付きや手ごたえはあると思うのでそれをぜひ大切にしていってほしいものです。あまり僕から言うことはありません。

一つ課題を与えるとするなら、アゴーギグの操作が非常に上手なのですが前進するアゴーギグが多すぎる。縮んだゴムが元に戻るように、そのぶん緩む場所も作ったほうがいい、それは速い部分も同様です。速い楽章で緩む方のアゴーギグってすごく難しいのですが・・・それを身につければまた一皮むけてくるんじゃないかな。

たぶん君の武器はまじめな顔でふまじめなができること。あ、演奏の話ですよ。

 

15.ファゴットソナタ/サンサーンス

いっや難しいですねこの曲は本当に。吹いてる方は何回やっても後悔ばかりが残るんだけど、聴いてる方は意外と面白く聴けるもので。そーいうものです、この曲は。そのうち後悔が少しずつ薄くなって、「あ、少し分かることが増えたけど、分からなくてできないことがもっと増えた」と思うようになります。たぶん。

1楽章は音色の操作が見事でした。音量以上の音楽変化が聴こえてくるのは音色によるところが大きく非常に効果的でした。レッスンでも言った通りビブラートの操作がもっとあればより変化が生まれて、(技術的、でなく音楽的)ダイナミクスレンジが一級品になると思いますのでぜひ扱えるようになってみて。

2楽章の完成度はやっぱり高いですね、どう考えてもこの楽章に時間割くもんね・・・。足りないのはスピード感と2拍子感。テンポはこのままでももっとできたことがあるかもしれませんね。ピアニスト置いて行ってでももっと仕掛けてよかった。ちょっと周りを気にしすぎるところがあるみたい。たまにはついてこないことを前提に突き進んでみる勇気も大事よ。

3楽章はちょっと健全過ぎですね。これだけ音色操作が上手なのにどうして薄いほうをもっと使わないのか。現世じゃなくていいんですよね、この楽章は。そういう意味では2楽章のあともっと時間取っても良かったかもしれない。きれいだし安定してるんだけど、震えるような音楽表現が残念ながらほとんど見受けられなかった。こだわりは感じるのだけど。こだわりよりまず、曲の魅力です、本当に。

薄い音の操作、もっと身につけましょう。絶対評価での「良い音」なんてくそくらえ、ですよ。

 

16.ドルフィンズバラード/一瀬恒星

レッスンでも思ったけど安心して聴けるようになった。これはすなわち上達ということです。「自分で考える」ことには僕に会う前から長けていた君なので、とにかくソロを吹く時の安定感が身に付いたのは本当に良かった。また、いい息がしっかりリードに入ったまっすぐな音もいま非常に魅力的です。中低音域が多い曲だったのもあるだろうけど、音の取りこぼしが一つも起きないのがいいですね、これも安定感の一つでしょうか。

新しい作品なのもあって音楽表現はちょっと難しかったしレッスンでも苦労しましたが本番はよく表現できていたと思います。山場がどこなのかしっかり計算された演奏ができています。

課題は積極性、かな。安定してきたのだから当たり前といえば当たり前なのだけど、もっと攻めた場所があっていいし欲があっていいし。しみじみと「いいねぇ」という演奏ができていますが、震えるほどか、と言われると・・・。印象に残る演奏、って聴いていてあると思うのだけど、やっぱりそういった演奏というのは積極性があるのよね。計算して吹いてしまう君だからこそ、どこか感覚的、積極的にいく部分を作らないと平坦に聴こえてしまいます。そこに挑むからこそ必要になってくる技術というものもあるのです。

 

17.演奏会用独奏曲/ピエルネ

ピアニスト含めて、いつも君の演奏への心配は最後まであって、本番を聴くとほんとんど杞憂で終わる。これもうパターンにするの、やめませんか。笑

心配だったリズム、タンギング、楽器の鳴り、音程、ほとんどにおいて本番でクリアできていました。本番強さ、というのは確かにあるね・・・。僕は本番強さの実態は本番前の練習にあると思うのですが。

とにかくその一夜漬けのような本番強さは、まぁ、武器として取っておくとして。もっと基礎的な部分に真剣に向き合っていきましょう。曲もいいです、ぜひやってください、やってなきゃここまでは上手くなってないはずなのだけど。しかしまずは場数が必要です。楽譜をきちんと読んで技術的にしっかりクリアして、それを当たり前にしていく。その繰り返しで安定感をもっと身につけましょう・・・!

とにかく次のレッスンは近いうち、やったことある曲でいいのでエチュードを。僕がここまで「基礎!!!」って言うのかなり珍しいんですからね。

 

18.アルペジオーネソナタ/シューベルト

まぁたくさんレッスンやったよね。僕ちょっと飽きてたんだけど、いい意味で飽きずに毎回ちゃんと言ったことクリアしてくるの立派だなと思っていました。ダイナミクスに音色変化が伴うようになって、君は音楽表現技術に関してかなり高いレベルに達していると思います。あとは魅力的に聴かせるための選択する美的感覚と客観性よね。それでも僕が「それは変だからやめなさい」と言うシーンは確実に減っていますからよく努力できていると思います。

ピアニストとのアンサンブルも申し分ありません。ピアニストが上手いのも確かですが、ピアニストが上手く聴こえる演奏がちゃんとできているので、それが今回一番素晴らしいと思った点です。共演者を活かしてこそファゴット。そこから返ってくるもので更に力を貰えるのがファゴット。よく覚えておきましょう。

課題もあります。君は音楽表現の練習をすると技術練習が手薄になります。逆もしかり。両立しましょう。聴いている人の印象は残酷なもので、悪いほうにどうしても耳が引っ張られてしまいます。今回そこがすごく勿体なかった。難しいところをもっと丁寧に真摯に練習できていれば・・・。技術と表現のバランスを取る意識を持ちましょう。

 

19.ファゴット協奏曲第1楽章/ウェーバー

珍しいミスについては、もう直接お話したので割愛します、もう起きることでもないでしょうから。

今まで挑戦した曲と比べるとそこまで難しくもないこの曲だと思いますが、大曲というものには魔物が住んでいるのでしょうか。しかしとにかく、ウェーバーで覚えてほしいことはしっかり伝えられたと思うので、そこは大丈夫でしょう。もうわりと長くエチュードをやっていることもあり、楽譜の読み方に関してかなり力を持っていますね。この曲は楽譜を読む力があまり役に立たないのが悔しいのですが・・・

曲が進むごとに楽器が鳴るようになり安定感が増していきました。そんなに必要じゃない、と思うかもしれませんがもっと演奏前に音出しをした方がいいかもしれませんね。意外と木管楽器にも慣らし運転は必要なものです。そうもいかないときは、とにかく出だしは鳴らすことを中心に強く集中力を使うこと。ありがちですが「再現部からは特によかった」という評価は音出し不足から来ます。発表会ですから満足に音出しはできませんが・・・前半が鳴らないことが分かっているなら鳴らしにかかればいいのです。「息を入れる」だけでは楽器が鳴らないことは、もうお分かりですから説明は不要でしたでしょうか。

技術的にはじゅうぶん達した演奏でした。しかし付点への意識はやっぱり甘いままでした、とにかくそれが発揮されなかったのが残念でした。あれだけ言っているのでもう言及すべきでもないのかもしれませんが、講評としてはそれが一番です。リズムは言語に近い。イントネーションだとかアクセントの位置だとかが風習から自然に決まってくるものなので、少し大げさに、強引にでもとらえていかないとネイティブには聴こえないんですよね。

 

20.サロン風小品/カリヴォダ

レッスンで本当に心配だったけど、フィジカル強化に成功したのは素晴らしかったですね、コーチもよかったのかな。こうまで発揮されるなら、同タイプの子にはフィジカルの話はした方がいいのかな・・・。スポーツ経験のある男性だと、とりあえず楽器演奏に関してはあまり縁のない要素なのですが。僕も勉強になりました。

持ち前のソルフェージュ力がしっかりファゴットに伝わった演奏だったと思います。ピアノとの噛み合い方もそうですが、聴いていてうんうん、とうなずきながら聴ける演奏でした。場面転換もうまく、わくわくしながら聴けました。場面転換のうまさはリズム表現のうまさからくるのかな。

しかし欲しいのは音色の変化かなやっぱり。他の子への講評でも書いたけど、絶対評価としての「良い音」なんてどこにも使わないのでこの場面ではもっとこんな音を、という欲望がまずほしい。まずは欲望から。技術面は誰かが教えてくれるし自分でも気付けるだけの地力はあるでしょう。君の言う「練習」がもっとそこに割けるようになると、よりよい演奏ができるでしょう。

一番最後、もっと馬力が出ると良かった、惜しかった。

ハイトーン言う事なしです!お見事!

 

21.ファゴット三重奏のためのディベルティスマン/ボザ

難曲をきっちり演奏できていました。レッスン時なんとなくだった強弱についてもしっかり解決してきていて、とにかくこの曲を「らしく」演奏できていました。ボザは「らしく」ができていればだいたいいい演奏に聴こえる、良くも悪くもコストパフォーマンスに優れた曲が多いですね。ただ曲の強弱だけじゃなく、もっと音の濃淡などで変化が聴きたかった。とりあえず同じ拍感で音を並べる、が目標になっているように聴こえるシーンが多く、全体としては平坦に聴こえることが多かったのが勿体なかったですね。

1stは、「こう吹けばいいはず」と考えるのではなく、どう吹いたらより魅力的に聴こえるのか、を常に模索しないと伸びないですね。「これでいいでしょ」って心理が演奏から透けて見えるんですよね・・・それは箇所箇所に現れていて。そうではなくて、魅力的に聴かせる努力を。実際どうで、どんな経歴があるにしろ1stを張る以上いちばん魅力的である責任があるのではないかな。言うまでもなくパワーとテクニックはじゅうぶんあるので「魅力」をテーマにぜひファゴットを練習してみて。

2ndは出るところ引くところの操作がうまくいいつなぎ役ができていました。出るところはもっと出ててもよかったけど、引くところがうまいから、そこまで気にもならなかったかな。適材適所、という感じ。でもいいファゴットアンサンブルはパートが入れ替わっても面白いはずなので、1stや3rdだったらどうなっていたかな・・・?と考え、自分に足りないと思う技術を磨いていってくださいね。ソロでの参戦楽しみにしていますね!

3rdはいい仕事してました、出るところでしっかり出て引くところでしっかり引く、はレッスン前と本番では別人のようでした。今回、引く面白さを知れたんじゃないかな。ファゴットアンサンブルは特に引くところが大事ですからね。欲しかったのはある種の積極性。例えば音楽の停滞が起きたときに下の音から運び出すような動きとか、ダイナミクスの変化を一番最初に起こして上2人を煽る、とか。合わせるのもつなぐのも上手だったけど、運ぶことを覚えれば立派な下吹きになれることでしょう。

 

22.ファゴット協奏曲第1楽章/ウェーバー

初参加かつ大曲への挑戦、それを感じさせない舞台度胸を感じました。じっさい緊張していたかはどうかは別の話として。いい意味でオーソドックスな奏者として、非常に成長しました。運指の強制や楽譜についてのことなど、はじめてやることが多かったと思いますがしっかり対応してきてくれたので教えるこっちも楽だったし、面白かったです。いくらでも教えてあげたくなるから、情報量多めで大変だったと思いますがよくついてきてくれました。身に付いた奏法はまだまだ入口ですので、よかったらこの先も一緒に頑張っていきましょう。

演奏について特に僕から言うことはありませんが、さっきも言ったようにオーソドックスなんですよね。これはこのままでもいいのですが・・・僕の好みとしては、もっと個性を前面に押し出してもいいと思う。個性がどういったところに発揮されてもいいのだけど、「ここはこうやって吹く!」という意思がもっとたくさんあっていい。ウェーバーはしばしば演奏されるレパートリーなぶん、サンプルも多いし選択肢も本来すごく広い曲なはずなのでもっと自由でもよかったかな、と思います。教えた分の奏法については本当に言うことありません、よくやってきました。楽器との相性の良さ、僕もちょっとわかる気がします。

しかしやはり響きの線が細いことは気になりますので、太く太く、と意識を持つといいかと思います。もしかしたらナントカボーカルの力もいつか必要になってくるかもしれませんね。次回の参加の楽しみにしてます!

 

23.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

非常に安定感があって、それでいて変化に富んだ演奏でした。もともと持っている太くていい音色が曲ともよくマッチしていました。発音の操作も非常にうまくなっていました。それだけの操作ができれば、オケの弱奏も発音さえやさしければけっこう大きく吹けたりします。印象の問題ですからね。

全体を通して課題は、薄い音の操作性とクオリティの向上ですね。太い音に対してしっかり薄い音を出す技術は持っているのですが、出すだけでは・・・。大きな音も出す技術だけあってもしょうがないように、薄い音にも操作性と質の高さが欲しくなります。レチタティーヴォの弱奏部、アレグロの冒頭、中間部など、薄い音のまま操作ができないと平坦になってしまうところが意外にもこの曲には多いんですね。全体的なクオリティが高いから、とにかくそこが気になりました。弱奏部の操作性、ちょっと気にして練習するようにしてみてくださいね。

 

24.ファゴット協奏曲ロ短調RV497/ヴィヴァルディ

パワフルかつ繊細で非常にハイクオリティの演奏でした!変化に富んだ場所も多く、曲の性格と自分で選んだ強弱やアーティキュレーションがしっかり生きた演奏になっていました。技術的に音楽を操作する力に長けているので、選択さえしっかりできていればあとは練習するだけ、に持っていけるんですよね、これは素晴らしいことです。端的にいえばそれを「うまい」と言うのだと思いますから。

課題があるとすればアゴーギグのバリエーションでしょうか。大きくて重い、小さくて軽い、この2択しか今持っていませんので、大きいけど軽い、小さいけど重い、という選択肢はもっと取り入れていってもいいでしょう。また重くした分どこかで軽く、軽くした分どこかを重く、というのはアゴーギグの基本ですが、けっこう重くしっぱなし軽くしっぱなしが気になるところが多かった。

とにかく僕はうちの会においては自分の意志で好きな演奏をしてほしいので、それがもし「先生の言う通り吹きたい」なのなら止めませんしそういう時期はあっていいと思うのですが、きっと自分でやりたいことがもっとあったのではないかな・・・?それがより発揮できていたら、僕はもっと嬉しかったかな。

何にせよ最高峰クオリティのヴィヴァルディ。良いもの聴かせてもらいました!

 

25.プルミエソロ/ブルドー

やはりトリには短かったか。いやそんなことを感じさせない圧巻の演奏でしたので僕はこれでよかったと思っています。意外と譜面の指摘がしつこい(わりに版によっていろいろある)この曲ですが、表記をうまくつかって表現ができていました。またダイナミクスと音色が綺麗にリンクしていてそれがとにかく魅力的でした。音量以上の変化を感じる演奏ですね、その感覚を忘れないように。

アウフタクトから始まる音楽が多いこの曲ですが、関係性の整理がもうひとつでした。うまくいっているところも多いですが、アウフタクトから1拍目、アウフタクトから1拍目。とにかく意識をしないと不格好なフレーズになってしまいます、そこはもっと神経質にとらえてほしかったかな。

しかしパッと見そんなに難しいこの曲を慢心せず丁寧にさらいこみ、音楽変化をしっかり計算し表現できた演奏でした。出会った頃の力任せな君はもうどこにもいませんね。トリに相応しい名演でした。次回も楽しみにしてます!

 

第21回門下発表会でした。講評と次回のことと、最近のこと

こんにちは。ファゴット奏者のとのむぅです。暑い日が続いていますがいかがお過ごしでしょうか。

僕は今月何かとバタバタしていて、発表会のある月に数えてみると本番が6件。いや月に6回本番、ってそこまで多いわけでもないんですが自主公演があったり遠征が合ったりで何かと心と体をすり減らす日々でした。もっと余力もって暮らしたいものですねー。

 

さてそんな7月でしたが、古い付き合いの仲間たちとの木管五重奏にピアニストを招いた6重奏のコンサートがありました。

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この歳になってくると10年来の友達と会えるだけでも嬉しいのに、5人全員が現役のプレイヤーでいることも嬉しく、そんなメンバーでコンサートをやったらそりゃもう面白いに決まっていて。リハーサルから本番まで幸せな気持ちでいっぱいでした。

7/19に行った東京公演のほかにフルート菅野さんの地元である山梨公演も開催し、たくさんのお客様にご来場頂きました。本当にありがとうございました。

東京公演ではオンライン配信も行ったため、なんとまだアーカイブで聴けるらしい。ご興味のあるからはぜひこちらから。

https://twitcasting.tv/c:farbe_winds/shopcart/69837
終わってしまったコンサートを聴き返せる、ってすごい時代になりましたよね・・・。

 

時系列は逆ですが、7月10日に第21回の門下発表会も行われました。

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演奏水準の高まりを感じつつ、今回は会場がすごくよく響くところだったのもありみんな気持ちよさそうに演奏していてよかった。とにかく音楽をやる側というのは楽しくなくちゃ。より楽しむために、腕を磨くのです、楽器なんて上手けりゃ上手いだけ楽しいんだから。

しかし広いところで写真撮るとそんなに人数多く見えないですね。笑 今回は遅れて参加・早退者が多かったこともあり集合写真がちょっと寂しいですね。それでも写真の人数がけっこういる理由は後述。

今回は特に音大生が2名も参加してくれて、それぞれ面白いものを聴かせてくれました。彼女らが居ついてくれることでよりこのコミュニティも盛り上がっていくことでしょう・・・!

 

毎回場所探しに苦労しています。だれか大出世してうちの門下のためにホール立ててくれないかなぁ。笑

次回もなんとかなりました。次回発表会のご案内です。

秋のひとときコンサート(第22回とのむら門下発表会)@東久留米

2021年11月13日(土)お昼ごろ開演予定、終演時間未定

参加費:

ファゴットソロ参加(社会人)15000円

ファゴットソロ参加(学生)10000円

アンサンブル参加(一律、1人あたり)6000円(編成人数によって多少の増減あり)

ファゴット吹きか、アンサンブル団体ならどなたでもご参加頂けます。いずれも本番までに僕のレッスンを1回以上受けて頂きます(レッスン代1回分は参加費に含まれています)

いつもこんな人が参加しています

・月に1~2回うちにレッスンに来ている僕の生徒

不定期にレッスンに来る僕の生徒

・オケでファゴットを吹いていてレッスンには通ってはいない人で、ソロ曲を演奏したいと思っている人

・とにかくファゴットが吹きたい人(初心者やブランク有の人も・・・!)

・普段は他の先生にファゴットを習っているが、ソロ曲を演奏してみたい人(まず普段習っている先生に相談してみてくださいね)

・本番に飢えたファゴット専攻の音大生たち(学校の先生に必ずご相談ください・・・!音大生割引あります)

・アンサンブルの演奏機会を探している人たち(ファゴットがいない団体でも可です)

などなど。多岐にわたる参加者たちが、毎回20名以上参加しています。ファゴット吹きの友達が必ず1人以上増える1日です(たぶん)

 

うちの門下発表会のコンセプトは

「とにかくレッスンを受けて人前で1曲吹けば手っ取り早くファゴットが上手くなるはず」

です。実際その通りで、毎回毎回1曲を通してたくさんの技術と経験を得てみんなすごく上手になっています。エントリーお待ちしております!直接僕までご連絡頂くか、下記のフォームからどうぞ!

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

 

さてここから先は第21回門下発表会の講評となります。参加者以外の方は読んでも分からない内容になります。ご容赦ください。

と毎回アナウンスしているんですが、けっこうこの講評記事、参加者以外の人に読まれているんですよね・・・。奏者以外の人が読んで意味の分かるようには書いていないつもりなんですが、実際どうなんでしょうか。

でも講評記事がオープンであることで、僕がどんなふうに生徒たちの演奏を聴いているかが分かるのはいいのかな。基本的には本番を聴いていて一番楽しいのは僕だと思います。1回目のレッスン、最後のレッスン、本番、と成長の過程を見ているのは僕だけですから。なのでいつも発表会の日はとっても楽しいです。次回もみんなの演奏が楽しみだぞー。

ではいきましょう。

 

 

1.ヴィヴァルディチェロソナタ4番より1.2楽章/ヴィヴァルディ
演奏時間としては短かったですが、内容のある良い演奏でした。安定感を感じるようになったには「上達」の一つの基準になるでしょう。また音程も非常に良くなりました。
演奏開始の合図でしっかり曲のテンポを感じましょう。「アンダンテ」や「アレグロ」等の発想記号(≒テンポ表記)が曲の一番最初に書いてあるのはテンポ設定が曲を決定付ける大きな要素だからです。最低でも頭の中で1小節数えてから合図のためのカウントを始めるようにしましょう、それで最初の事故は防げたはず。
音の濃淡のコントロールが非常に上手になりました。これを忘れることのないように。どんな時代の曲でも使える技術です。それに実際の曲の強弱が乗ればより効果的です。具体的な表記のない曲だからこそ、決定した強弱をはっきり示すようにできるとよかったでしょう。
はやい楽章はレッスンでも言いましたがハツラツとした雰囲気やスピード感がもっとあるとよかったですね。例えばアウフタクトの息のスピード、シンコペーションのリズムの取り方、装飾の入れ方など方法はいくらでもあるのですが、まずは意識からかな。
そしてこれはソナタなので、もっとピアニストとの運びが統一できるとよりよかったと思います。バスの進行を意識して(実際に吹いてみて)演奏できると合わせの時間は少なくても良かったと思います。
しっかり成長してきてくれて嬉しく思います。この安定感が幻でありませんように!

 

2.ファゴット協奏曲より第1楽章/ウェーバー
とにかく楽器の鳴りが各段に良くなりました。鳴りが良くなれば弱奏も光ります。明らかにレッスンに通うようになる以前の演奏よりレベルアップしていてすごく嬉しいです。ここまですぐに成果が演奏に出るのはよく考えて練習してきたからだと思います、まずはそれを誇りに思ってほしい。
懸念されていたアリアの部分も非常にのびやかに歌えていました。もっと積極的でもいいかなとは思いますが、ここから先は趣味の世界だったりするのでね。
さて得られた楽器の鳴りや歌心ですが、ぜひ厄介な連符の中にも活かせるようになるかどうかが今後の課題になってきます。ただ速く音符を並べている、という印象に取られないような工夫はどこまでいっても続けていってほしい。時たまうまくいっているシーンもあるのですが・・・。
楽器は鳴るようになりましたが、今回のような響きのいい会場ばかりではありませんので、もっと全身をつかった演奏を心がけるといいですね。もちろん腰から下は直接音に影響は与えないのですが、人間の体は繋がっていますので、棒立ちではやはり限界があります。重心を落とす、とかお腹を使う、とか、色々な言い方がありますが、最後は自分の感覚で掴むものだと思いますので、またそこらへんはレッスンで。
ファゴット協奏曲あるあるですが、再現部の方が提示部より良い音がします。もっと第1音を大切にする訓練、大事なのかもしれませんね。

 

3.ファゴット協奏曲より2.3楽章/ウェーバー
まずは表情かな。礼は作ってでもいいから笑顔で。どんな立場であれステージに上がって人に演奏を聴いてもらう以上、「いいかっこ」をする必要はあります。
とにかく久しぶりの参加なのに堂々と演奏していてすごいなと思いました。もともと君の持っている歌心はすばらしいのですが、それがファゴットを介して伝える技術がいまひとつ、という印象だったのですが今回の2楽章は非常によく伝わってくる演奏でした。かなり細かく言ったから、というのはもちろんありますが、しっかり歌い方が身体に入っていないとここまで安定しては演奏できないと思います。これが他の作品でもできるといいのですが・・・・。
課題としてはやっぱり安定感です。どんなウットリする旋律でも落とす音符が多いと人の心は動きません。また音符は落としていなくてもたまに細すぎる音を出してしまい、それが旋律にハマらないんですよね。
ファゴットの経験年数のわりにきっちり譜面を読んできた回数が少ないんだろうなという印象は1回目のレッスンでいつも思います。楽譜をきっちり読む力といわゆる基礎力、これを効率よく身につけるにはやっぱりエチュードのレッスンです。1曲ずつでもいいから持ってきてみるのはいかがでしょう?無理のないペースでね。

 

4.夜の音楽のための3つの小品/ボザ
急、かつ拙い代役で申し訳ない、とにかく本番で演奏ができてよかった。
「夜の」というところに重きを置いたレッスンでしたが、雰囲気が出ていてとってもよかったです。また旋律・伴奏の関係性や和音の構成音のとしてのバランス感覚が非常にいい演奏だったと思います。そこが木管アンサンブルの難しいところなはずですが、苦にしない演奏はさすがでした。これによって旋律はより浮いて聴こえるし和音は実際以上に良い音程に聴こえてきます。バランスを取りつつ個性を出す、というのが木管アンサンブルの醍醐味ですね。
2楽章のヘミオラ、上手くいってはいますがもっと楽しめるといいですね、本番だけ1人奏者が違うのでそこは余裕がなかったのだとは思いますが・・・。レッスンで課題としたトリルについては2割ほど改善されていた、という印象でしょうか。トリルはとどのつまり2度の音程による高速連符です。綺麗に入るなら練習は必要ありませんが、うまくいかないのなら連符としてキッチリ練習しましょう。ファゴットの弟子たちには徹底させていますがそれによってかなり演奏全体の印象が違ってきますのでぜひお試しください。
さて3人それぞれ素敵な音色と音楽性を持っていますが、旋律を歌うときの第1音、というのをもっと大切にしましょう。フレーズによってどんな音がいいかは違いますが、おのおの「とりあえず音を出してから作ろう」という印象に聴こえてくるので非常に勿体ないです。自分のことなので大変恐縮ですが、そこが4人で演奏してると僕とはずいぶん違うようです。ぜひ意識して今後も色んな曲に挑戦してみてくださいね。

 

5.アンテルフェランス/ブートリー

難曲に挑戦してくれてありがとう、まず僕の弟子たちじゃ手の出ない曲です。笑

カデンツァのテンポ操作が雑なのが気になりました。「それっぽく」はあるのですが、自分で操作している、というよりは曲のイメージでなんとなくいっていて、それが上手くはまる演奏もあるのですが・・・・そのあたりが丁寧、もしくは上手くはめてる奏者がプロの世界には多いようです。参考までに。

あと癖なんだと思うけど、特定のタイミングで足で地面たたくみたいで、今回の衣装・会場なら気になるほどではなかったけど、シーンによってはかなり雑音になるので気を付けてみた方がいいかも。関連して、立って演奏するときにリラックスはとてもよくできているのでもう少し力の入れ方や抜き方(重心の位置を気にしたり、逆にしっかり演奏に関係ない部分の動きを止めるとか)を考えると、全身つかって演奏ができるようになると思います。そうすると今少しだけ力任せに鳴ってる楽器が自然な鳴りを見せてくれるはず。

ピアニストとのアンサンブルは見事でした!少なくとも縦はバッチリだったので、和声感なんかもピアノの音から拾えるといいですね。

もしまた参加するときがあれば、歌う曲やバロック・古典ものあたりの演奏も聴きたいですね、僕だけじゃなくて、ほかの生徒たちもそう思ってるはず。

 

6.ファゴットソナタ/グリンカ

音楽に思い切りの良さとそれに見合った楽器の鳴りに惚れこんでお声掛けしたのですが、良さはそのままに色のあるグリンカ、大変に見事でした!グリンカ3人いましたが、いわゆる「いろけ」の部分で一番良かったと思ってます。レッスンで課題としたフレーズのブツ切れ問題も非常に良くなっていて、安心して聴いていられる演奏でした。

更に課題を与えるとするならアゴーギグをもっとできるようになるといいです。やってるんだけど、音楽の流れが止まってしまったり、逆に流れすぎてしまったり、弊害が必ずついてくるので、やりたい音楽をきちんと生かせる自然なアゴーギグを身につけましょう。例えばいわゆる名演の演奏の物まねをしてみるとか、そういった練習が効果的かもしれません。

あとは発音。レッスンでも触れましたが、もともと持っている「強い発音」に新しく「優しい発音」が加わって非常に多彩な演奏だったのですが、例えば「甘い発音」「意志のある発音」「合わせにいく発音」なんてものがあっても面白いですよね。非常に抽象的ですが。素晴らしい音楽性を持っているので、もっとそのための技術の引き出しを増やしてほしい。先述のアゴーギグもその一つかな。

また楽器の悪いところでもあるのですが音色が一辺倒になりがち。ハッとするような優しい音、ゾッとするような暗い音、なんかも突き詰めていってほしい。色々と高望みになってしまいますが、ぜひまたレベルアップして(しに)なにか吹きにきてくださいね!

 

7.ファゴットソナタホ短調/テレマン

昔と比べて明らかに変わったのは安定感。とりあえず聴いていてずっこけることがなくなったこと、これは大きな進歩でしょう。しつこいくらいに教えた曲の様式やフレージングなんかはうまく演奏できていました。高望みするのであれば、これを「教わったこと」ではなく「自分の意志=音楽」として聴こえるところまで昇華できるといいでしょう。以前「それは変だからヤメナサイ」と散々レッスン言ってきましたが、ここまでレベルが上がってくれば自分で思うことを色々と試してみてもいいでしょう。

またピアニストともっとアンサンブルしましょう。「合わせてもらう」のは簡単ですが「こちらから乗りにいく」という事も全然ありうることです。確かにここはファゴットの発表会で、ピアニストたちはたくさんの共演者を抱えていますが、1人1人に全力投球してくれていますから乗りにいけば必ず答えてくれます。

また丁寧に吹こうとしすぎるとテンポが後退していくのはお約束みたいなものですね。気を付けましょう。音楽は丁寧に扱いすぎると腐ってしまうこともあります。

また音色が1種類なのも気になります。発音の種類が少ないが主な原因でしょう。(とても)良くも(少し)悪くも眠い演奏に寄ってしまっているので、これからはもっと刺激的な演奏を意識してきましょう。

4楽章の連符は見事でした。もっと色がつけば言うことナシ。

 

8.ファゴット協奏曲2.3楽章/ウェーバー

今回一番伸びたのがあなたです。最初のレッスンから比べれば全くの別人です、安定感も音色も音程もテクニックも各段に良くなりました。これから向き合う譜面すべてに今回のような向き合い方をしてくれることを僕は切に願います。

技術的な課題の一つとしては、上のG以降の音域への慣れでしょうか。いわゆる基礎練習であるロングトーンやスケールをこの音域まできちんと扱うようにし、中・低音と遜色のないところまでやってみてほしいところです。この音域が絡むと途端に危なくなってくるので、まずは慣れから。指も嫌ですが音のツボもけっこう難しい音域です。

また音の処理が少しいい加減なところがあるようです。伸ばした音をどう切るか、フレーズ最後の音をどんなふうに扱うか、というのは聴いている人への印象をかなり操作する要素だと思いますので、今後気にしてみて。

3楽章のタンギングが大方どうにかなったこと、本当に安心してます。まだまだ入口に立ったところなので油断してほしくはないけど、この3楽章が吹ければたいていの曲はどうにかなります。まだまだブレスが浅いので、息のスピードに頼ったタンギングなんかも覚えていくとこの先便利でしょう。

つぎに取り組む曲は恐らく、今回もそうですがちゃんとフレーズの切れ目(=休符)がある曲を選び、おなかいっぱい息を吸ってタップリ楽器を鳴らせるものにしましょう。もし曲への挑戦は少し休むにしても、せっかく身につけた技術ですから忘れてしまわないうちに、エチュードでもなんでもいいのでぜひレッスンに持ってきてくださいね。ここからが大変だったりするのです。忘れるのは早いぞー。

 

9.無伴奏チェロ組曲1番よりメヌエット1.2、ジーグ/J.S.バッハ

繰り返し見事でした!よく吹き切りましたが、ふらふらするほど無理するのもちょっと考えものです。本番は確かに大切ですが、聴いている方もドキドキしてしまうので。

とにかくバテる前までに関して、テクニック的にも音楽的にも非常にいい演奏ができていました。音色・音程もかなり高水準だったと思います。

今回事故が多くなってしまった原因の一つとして、ご自身の練習が「うまくいったとき」を想定していたからだと思われます。実際、うまくいっている箇所は非常にいい演奏ですし危なげなく聴こえます。しかし逆のところは・・・。特に無伴奏のような体力的にも精神的にもきつい曲を演奏するときは「うまくいかないとき」を想定して練習しましょう。そうすれば自ずとテンポの設定も定まってきます。また起きたミスのほとんどがブレスの前後なので、とにかくバッハを吹く時はブレスのことにもっと執着して。もっと時間使って吸っても良かったし、ブレスをまたぐ練習が圧倒的に足りていない印象を受けました(うまくいくときはいいのですが・・・)

またこれも無伴奏曲あるあるですが、吹きなおしはやはりNGです。ミスをしても音楽は先に進んでいますから、カウントを止めることはしないように、ましては巻き戻しは絶対にダメですので、「通り過ぎる練習」をもっと心がけましょう。上手い人はミスのリカバリーも上手いものです。

うまくいかなかったところばかり言っても仕方がないので、全体としては音楽性にあふれた非常にいい演奏だったと思います。「バッハはつまらない」と思わせない演奏ができていたのは、丁寧に楽譜に向き合った結果ですでぜひ胸を張っていただきたい。そのうえで、本番でいかに聴いている人の心に響く演奏をできるか、というところに標準を合わせて頑張っていきましょう。

大変な世の中ですが、またレッスンお待ちしてます。

 

10.ピアノ三重奏曲1番より1楽章/ブラームス

弦と管の違いについて、ピアニストも含めてすごく苦心したのが良い意味で伝わる演奏でした。僕の持論としては「どう頑張ってもチェロの音は出ないし、出したければチェロを弾いたほうが早い」なのであまり気にしないほうなのですが、突き詰めるとそれはそれでいいものですね、勉強になりました。

まあとにかくピアニストありきですね、この曲のアンサンブルは。奏者ひとりひとりの地力があってこそのアンサンブルがたくさん聴けて、僕が思う理想のアンサンブル象で聴いていてちょっとうれしくなりました。「けっきょくアンサンブルなんて個人技の集まりなんだから上手い人が正義」って常々思ってるんですよね。

ヴァイオリンは音価が短い時にもっと楽器が鳴るといいですね。僕は弦楽器についてまるでわかりませんが、例えば使える弓の量が多ければ変わってくるんでしょうか。短い音を大きく、というのはどの楽器でも難しいものですね。しかしとっても大切なことですので是非意識していってみてください。ファゴットに関してあまり言う事はありませんが、やっぱり弦楽器と一緒になるとビブラートは欲しいですね。ビブラートの目的も手段も弦楽器と管楽器じゃ違うけど、完全ノンビブラートだとちょっとなぁ、という印象でした。pizz.の表現ももう少しこだわってほしかった。

続きの楽章もできればいつか聴いてみたいですね!

 

11.狩人の英雄

何の曲かはお察し。ユニゾンを上手く使ったアレンジ、のつもりがやっぱり音程は気になりましたね。同じ楽器でユニゾン時、音程というのは本当に個人技によるところが大きいです。自分のクセを理解していれば「合ってないな」と思ったとき上げればいいのか下げればいいのかすぐ分かるはず。格上のプレイヤーとのユニゾンならなおさらです。これに関しては7人(僕もです)全員思い当たるところがあると思うので気にしていきましょう。ユニゾンが合う、というのはアンサンブルにおいては本来基本中の基本なはずなので。

コントラはとにかくパワー不足でしたね。一番大きくていいところでいまいち鳴ってこないのがもったいなかった。音色・音程のことも大事ですがとにかくコントラファゴットは音量の幅がないと室内楽では役に立ちません、リードのことから見直してみましょう。

とは言え、とにかくそれぞれが良い責任を果たしてくれたから少ない合わせでいいクオリティの演奏ができたと思います。「発表会で吹く」というのが久しぶりだった人たちも半分くらいいましたが、面白かったと思います(?)のでぜひ今度はソロ曲吹きに戻ってきてくださいね。僕は生きてる限り何年でも何十年でもこの会続けていきますので、いつでも!

 

12-17は今回限りで参加して頂いたサックスの方々の演奏となります。僕は本番しか聞いていませんし曲もすべて初めて聴いたものですので軽く講評・感想などを。

 

12.25の日課練習より11番/クローゼ、13.50のエチュードより13番/ラクール

訳も分からず参加したことかと思いますが堂々と演奏していて立派でした。僕がまず関心したのはステージの立ち姿がいいこと。礼も綺麗でしたが、みんな大きな拍手をしていたのでそれにこたえるような礼(礼の長さ、顔を上げたときの表情などなど)ができるとより素敵でした。「聴いてくださってありがとう」の気持ちをちゃんと一連のしぐさに組み込めるといいですね。

厳しいレッスンを受けてることかと思います。技術的に僕が言う事は何もないのですが、ブレス後の1音目がだいたい発音や音の輪郭がボヤけているのが非常に勿体なかった。曲によって色んな発音があると思うけど、いつもボヤけた発音ではメリハリがなくなってしまうのでまずは発音を「選択」することから始めましょう。

あとは「私はこう教わったのでこう吹きます」という思考が丸見えです。教わったことを精一杯、でもいいので、「私はこう吹きます」と聴こえるように音楽を自分のものにできるといいですね。将来プロの現場でお会いできたら素敵ですね!楽しみにしています。

 

14.スペイン組曲より第3曲「セビーリャ」/アルベニス

第1音目から「スペイン組曲」らしい明るい音が聴こえてきて素敵でした。まず曲の「色」が見える演奏ができるのは本当に素晴らしいことだと思います。テンポ感も素敵でしたが、技術の問題なのかもしれませんが短い音のタンギングがすべて重たく暗いためせっかくの明るさ・軽さが損なわれてしまう傾向にありました。終始バリトンの先生がやっている軽いタンギングをもっとまねできるとよかったんじゃないかなと思います。速さの問題で間に合わないのであれば、ぜひダブルタンギングを・・・!ダブルタンギングは速さのためというより質をコントロールするリソース(余裕)を得るために使うものだと僕は考えています。

和音の変化が鮮やかで聴いていてわくわくする演奏でした。ソプラノのリーダーシップが光っていて素晴らしかったです。

 

15.海の上のピアニストより「愛を奏でて」/モリコーネ、16.夏の思い出/中田喜直

美しい旋律で始まって素敵でした。それぞれが色々な旋律の歌い方をしていましたが・・・・僕には全体的にすこし「棒吹き」に聴こえてしまいました。原因は音色が一つであること、ビブラートの種類が少ないこと、発音が1種類であること、などなどたくさんありますが、まずは「欲」から、と僕は自分の生徒には教えています。いい演奏をしてどうなりたいか、どうしたいか、はそれぞれ違っていいので、例えばモテたい、例えば曲のすばらしさを伝えたい、例えば聴いている人を喜ばせたい、例えば共演者が気持ちよく演奏できるよう支えたい、なんでもいいので、まずは強い「欲」を持つことです。音を並べて満足してしまわないで、「あなたのサックスが好き」と言われる奏者にぜひなって頂きたいです。

アンサンブルは綺麗にまとまっていましたが、和声感がたまにどこかへ行ってしまうので聴いている側の集中力が切れる瞬間がありました。音程を取る、というのはチューナーでどうこうではなく、今鳴ってる音の一番いいところにハマりにいく作業ですので、もっと感覚でそういうものがつかめるといいですね・・・!

夏の思い出はリズム隊がもっとオシャレだとよかったですね・・・どこか野暮ったく聴こえるのはリズムなのか発音なのか。ぜひ先生に聞いてみてくださいね。

 

17.グラーヴェとプレスト/リヴィエ

とにかく「グラーヴェ感」が僕の趣味でした。笑 遅い速いではなく、重量感。ねとねとしてて前に進めない感じ。大変見事な表現だったと思います。

一方でプレストは、テンポ感のわりに遅れて聴こえる印象があったのは、やっぱり発音でしょうか・・・。縦ノリになるとどうしても印象は遅く聴こえます。拍子を広く取ったり、プレストの中にも少しだけアゴーギグを入れたり、工夫の仕方は色々あるんじゃないかなーと思いますのでぜひお試しください。

それでもやっぱり圧倒的なサウンドでした。終わり方はもっと「なんちゃって」感があったほうが好みだったかなー、とも思いました。

 

18.6つの三重奏曲より/ワイセンボーン

今回参加してくれた音大生2人と僕で演奏しました。

楽しくやれればそれでよかったのだけど、2人にはどんな感じだったのか、ゆっくり話を聞く時間もなかったのが悔やまれますね・・・。

さて同族楽器のアンサンブル、ましてファゴットアンサンブルなんてこの世でもっともマイナーな音楽ジャンルはどんなふうに演奏すれば人の心に響くんでしょうか。これは持論ですが、同族アンサンブルというものは聴いてる人に「合ってるのに違う」を伝えることこそ極意だと思っています。同族でアンサンブル参加する子には全員に言ってる言葉なのですが、そもそも同族である以上アンサンブルがうまくまとまるのは当然で、その先の何をするか、が問題であるわけで。フルートアンサンブルなんかとの一番の違いは、ファゴットアンサンブルは全パート全てに見せ場、ソロがきっちり用意されているので、聴いている側はそれを楽しみにしているんですよね。個性はもっとぶつけていいし、多少逸脱してでも持ってる面白い音楽は見せてほしいし。それで多少乱れたって、そこは同族ですから、いくらでも修正がきくはずなので。

僕は、僕のレッスンを受けた子にはもっとやんちゃに吹ける奏者になってほしいなと思ってます。今後も期待してます。またぜひ一緒に演奏しましょう!

 

19.ファゴットソナタ/グリンカ

攻めの姿勢がたくさん見えていい演奏でした。音楽表現が非常に豊かになって、成長を感じました。音楽を仕掛けた箇所で技術的にほころびが起きやすいのは普段やらないようなことを今回だけやっているから、だと予想できるので、オケや室内楽でも今回みたいな積極的な音楽性を見せられるといいですね。

何度目かですが不規則ではありますが拍で体が動いてしまうのはやっぱりやめた方がいいですね、体の使い方うんぬんもありますが見た目に良くないです。まずは不動で演奏するところから。そこから体を使うことを考えていけば改善されていくんじゃないでしょうか。

アゴーギグにもっと魅力を感じたかった。ピアニストがついてくるしかないような、そんな圧倒的なリーダーシップを取れれば面白かった。乗っかるだけがアンサンブルではないです。逆にいうと乗っかるアンサンブルは非常に上手なんだけど。二重奏としての攻めがもっと聴きたかったかな・・・。

あと音量の変化は非常に豊かでしたが音色がすべて一緒なので、実際変わっている以上に聴いている方の印象は変わらないかも。暗い音、柔らかい音、いつでも引き出せるようになるといいですね。発音がやっぱりヒントになるかな。

自分でよく悩んでるだけあってしっかりいい方向に変わってきていると思います。次回の演奏も楽しみにしてます。

 

20.演奏会用小品/ピエルネ

変化に富んだ名演だったと思います。この曲の見せどころをよく理解し表現できていたため、「みんな大好きピエルネ」ではなく名曲ピエルネになっていました、お見事!

以前も思ったのですが、バランスとして少しピアノに負けてしまうところがあるみたいです。狭い部屋や近くで聴いているとそうでもないので、いわゆる傍鳴りになっているのかもしれません。どうすれば改善される、というものではないのですが・・・・フォルテが少々力任せに聴こえるところもあるので、力を抜くことによるフォルテ、ちょっと研究してみるといいかもしれません。抜けのいい音ってどんな音なんでしょうねー。

冒頭はもっとパワフルでもよかったかなぁ、と思いましたが、曲が進むにつれて楽器が鳴ってきているのでいわゆるスロースターターなのかもしれません。意識的に冒頭・前半を大きめに演奏するとそうは聴こえなくなりますのでお試しください。やっぱり何事も第一印象と言うのは大事なものです。

後半のリズム感は非常に素敵でした。これぞ6拍子、というリズム表現がたくさんあったので聴いていて面白かったです、ご自分でも何か掴んだ感覚はあるんじゃないでしょうか。

あまりレッスンで触れる余裕がありませんでしたが、インテンポの箇所にも少しずつのアゴーギグがあってもよかったかもしれませんね・・・・メトロノーム通りな印象を受ける演奏に聴こえるところもちょこちょこありました。もっと自由で良いです!

次回のレッスンで音の質(というか種類)に触れられたらいいなと思ってます。次回の参加も楽しみにしております!

 

21.パーセルの主題による演奏会用前奏曲/ピエルネ

衣装とっても素敵でした、各方面からも好評でした!

楽器の鳴り、技術共に本当に上手になりましたね。危なげのない演奏で安心して聴いていられました。曲の雰囲気が目まぐるしく変わるのが難しかったと思いますが、音色がちゃんと変化しそれぞれきちんと表現できていたのは素晴らしい。曲のイメージと実際のテクニックがバランスよく発揮されていました。

課題があるとすればピアニストとのアンサンブル。というか単純にテンポ感が乱れる瞬間があって、ピアニストとズレてしまうところがあるのが惜しかった。曲の雰囲気をよく理解していましたがテンポももっとイメージできればよかったですね。合わせが少ないのは仕方のないことですから、普段の練習から伴奏の音形をもっと想像しながら練習しましょう。

ここまでよく響く会場、考えてみれば初めてだった気がしますが、よく響いていました。音、技術、表現とあらゆる方面での成長を感じる演奏でした。

 

22.ファゴットソナタより1.2楽章/サンサーンス

名曲にして難曲、よく演奏できていました!レッスンでも少し指摘しましたが、細く鳴りがちな楽器なのでリードやボーカルの選択からもう少しふくよかな音色を意識できるといいかもしれません。響く会場だとより顕著ですね。

レッスンで指摘したダイナミクスについては非常に良くなっていました。「なんとなく」の部分がなくなることで、演奏がここまで魅力的になるのは地力の高さがうかがえます。バテに関しては色々な理由が考えられますが・・・腰から上しか意識していないように見えるので、もっと重心を落とし、全身を使った演奏ができるようになるとずいぶん改善するんじゃないかと思います。意識してみてください。楽章間、もっと空けても良かったですよ!

2楽章はもっとスピード感が欲しかった。1.4拍目(大きい1.2拍目)を意識するあまり重たくなってしまうのが原因なのかなと思います。テンポが変わらなくてもスピード感を、なんていうのは簡単なんですが、この曲でそれをやるのは本当に難しい・・・。そして1楽章で見せたようなダイナミクスの変化が2楽章でも見たかった。どうしてもテクニックのことばかりになってしまうのが気になりました。テクニック的には非常に安定して聴きやすくはあったのですが。

最初にテクニックを練習するときに、音量の変化、音楽の方向、スピード感、和声感、なんかも一緒に意識してしまえばいいのです。「まずは指と舌!」と思って速い楽章をなぞってしまうと、本当に指と舌だけになってしまうんですよね。

この会は年3回やるとんでもない会ですので、ぜひまたエントリーしてください!お待ちしてます。

 

23.ファゴット協奏曲より1楽章/J.C.バッハ

以前と比べて楽器の鳴りが増え、パワフルな印象になりました。小さい体がハンデにならなそうで安心しています。繊細な表現も覚えて、普段からいい意識で音楽に向き合っているんだなぁと感じました。

和声は勉強していますよね。あれは特に初期は暇すぎる学問ですが分かってくると、ある時から演奏に直結してきます。我々は単旋律楽器ですが、だからこそ和声感が大事です。Cdurだった旋律がFdurになったらどんな変化があるといいのか、Ⅴ7からⅠに戻るときどんな解決をしたらいいのか、といった具合に。技術的にはすごく成長していると思うので、もっと音楽家としての中身の成長を。もしかしたら今はファゴットを触っている時間以外のほうが大事かもしれません。「うまいファゴット」ではなく「あなたのファゴット」を愛してもらえるように。

それと、これは僕が言うことでもないですがそろそろ楽器のことを考えてもいいかもしれませんね・・・。将来ファゴットで仕事をしていくのであれば、考え始めるのは早いに越したことはないです。大学で習っている先生にも相談してみるといいかもしれません。

 

24.ファゴットソナタ/グリンカ

散々みんなから言われてると思いますが、繊細な表現が本当に本当に上手になりましたね。楽器が変わったことによってやりたいことができることが増えた、ということなのでしょうか。あらためてヤマハファゴットのポテンシャルの高さを思い知りました。音量の変化に加えた音色の変化が大変みごとで、コロコロと変わるこの曲の雰囲気にしっかり対応していました。

柔らかい音や弱奏に寄ったリード選びだったと思うのでそれでいいといえばいいのですが、当然ながらフォルテはもっと鳴っていてよかった。リードのくわえる位置だとかアンブシェアだとか、普通に吹いているだけでは得られないくらいの変化が何か所かあってもいいかもしれませんね、それだけ感情的な曲ですので。

また、僕が一番いいなと思ったのはピアニストとのアンサンブルです。縦が噛み合うのもそうですが、音楽の流れが2人で一体化していて、それが(いうべきではないのかもしれないけど)あとの2人との決定的な違いでした。合わせ1回でここまで合うようになるものなのか。みごとです。しかしところどころ音程感だけ惜しかったかな。要確認。

とにかく今回の演奏は完成度が高く素晴らしかった。うちの発表会史上最高クオリティのグリンカかもしれない・・・!

 

25.ファゴットソナタ/ヒンデミット

持ち前の音楽性と効率のいい練習・曲の勉強が噛み合った結果、このクセのある曲をここまで高いクオリティで演奏できるとは・・・!正直、驚きました。プロ顔負けの演奏でした、素直に尊敬します。

また、たぶん自分が一番わかっているのでしょうが少なくともこの曲を吹くには最高のリードでしたね。僕の持論でリードは100点満点中20点~60点くらいをどうにかするのが普通、と思うのですが、80点~90点のリードを用意できるならそりゃそれが一番だわ、と思わされました。2楽章冒頭Fisなんかもう名手も名手でした。これはなかなかできることじゃない。リードが噛み合えばやっぱりFOX以上の楽器はないですね・・・!

課題はピアニストとのアンサンブル。とにかくそれに尽きます。ズレるのは音楽的に攻めた結果、と思いきや君は攻めてる時はズレません。「ここは大丈夫」と思っているところでズレます、冒頭がいい例で。システム上少ない合わせになってしまうのは仕方ないですから、あとはこちら側がいかに普段からピアノの音を想像しながら練習しているか、です。今後はそこを課題としていってください。

次回もとても楽しみにしています。ハードルは高いぞ。

 

26.無伴奏チェロ組曲1番よりプレリュード、サラバンドメヌエット1.2、ジーグ/J.S.バッハ

全体として、軽すぎる。プレリュードはそれでいいし、正直すごい名演を期待したのですが、同じ温度で最後まで行ってしまったのが非常に非常に勿体ない・・・。組曲ですから、シーンをもっとバチっと切り替えていかないといけません。無伴奏曲はピアノに頼れない分、より個人としてのダイナミクスが問われることになりますから、技術的にも音楽的にもより積極的になる必要があるのです。もしかしたらテンポももっと違ってよかったのかも。サラバンドはより重厚に、メヌエットはより軽く。それだけでずいぶん印象が違ったかも。

悪いことばかり言いましたが高水準なバッハだったのは間違いないです、正直1回のレッスンでここまで仕上げてくるとは思っていなかったのでポテンシャルの高さを感じました。歌い方やフレージングのアイディアが豊富なところは特に素晴らしかった(メヌエット2とかプレリュードの後半とか)のですが、逆にいうとアイディアの数にムラがあって、ただ流れているだけのシーンがかなりあったのはもったいなかった。組曲からこれだけの曲数をやると仕方のないことだけど、まだやれることはたくさんあったと思うので、もう一押しほしかったな。

しかし人前で無伴奏バッハを吹くというのは難しく・(他人が)厳しく・疲れますが、それに見合うだけの多幸感がありますね。ぜひまた取り組んでみてほしい、2番が特に僕はおすすめです。

 

27.木管五重奏曲/クルークハルト

メンバー考えれば当然と言えば当然かもしれませんが発表会史上最高クオリティの木管五重奏でした。完成度、安定感、表現力にバランスとすごい高水準でした。木管五重奏って違う楽器が5つも集まっているのにレパートリーが豊富で、「やってるだけ」で楽しめてしまうのにここまで突き詰められるのは本当にすごいことだと思います・・・!

長い曲であまり密度の高いレッスンができなかったですし色々と駆け足だったのでどこまで伝わるか、と心配でしたが、それぞれよく噛み砕いていて、それも本当にすごいと思いました、こんなにできるならもっと言えばよかったな・・・笑

散々ファゴット大きく、と言ってきましたが本番はよく鳴っていました。室内楽はとにかくパワーです、シーンによっては遠鳴りより傍鳴りが求められるんじゃないか、と思います。オケに比べて小さい会場で演奏しがち、というのも理由の一つです。アンサンブルが上手くなりたければまずはダイナミクスレンジを大きくすること、それに尽きます。この木五はオーボエがppの名手なので、大きいだけでは困ってしまうかも。

名演になった理由の一つは、ホルンが木管によく溶ける音でいいアンサンブルをしてくれるのに、フォルテでガツンと出てきてくれること。正直(夜だったのもあるでしょうが)レッスンの時はそうは思わなかったのですが、本番は素晴らしかった。逆にいうと他の4人がもっと音楽に対する音色の変化を意識してほしかった。それぞれいろんなことを仕掛けてくれていいのですが「どうした!?」みたいなフォルティッシモ、「えっ吹いてた?」と思うようなピアニッシモ、そしてそれに付随して音色も変化すると、木管五重奏には無限の可能性が生まれます。

音楽にあった音色、ぜひそれぞれ考えてみて。音色というのは発音とフレージングでずいぶん印象が変わってきます、参考までに。

ぜひぜひまた同じメンツで演奏しに来てください・・・!ホルンがいいのでピアノ入りの六重奏なんかも聴いてみたいですね!できればプーランク以外で。僕の好みですが

 

28.ファゴットソナタ/シュレック

本番でこんなに余裕持って音楽で遊べるアマチュア奏者、他にいるんでしょうか・・・?放任主義の先生、異様なまでのソロの舞台経験、そして自身の技術的なポテンシャルの高さがそうさせるんでしょうけど、いや、本当に、いい意味で異常です。僕はシュレックそこまで好きじゃなかったけど、さすがにやりたくなってきました。

ピアニストとの二重奏そのものを楽しみなさい、というのはいつも言ってることですがここまで体現されると「いつも言う」って大事だなと、思いますね。

フレーズの語尾をちょっと雑に処理してしまうことがあるみたいです。語尾ほど演奏者側と聞いている側にギャップのあるところもないもので、かなり気を遣っていかないといけない要素です、気を付けて。演奏者、つい発音にばかり気がいってしまいがち。

ピアニストとの噛み合いの良さは文句なし、むしろ2人して遊んでいるので何の不安も感じずに聴けました。この曲はいつもバランスが懸念されますが問題無しでした。音程も良かったし今回つかったリードは楽器に合っていると思うのでしばらく使ってみるといいかも。

 

第20回門下発表会でした。講評と次回のご案内、近況など

こんにちは。ファゴット奏者のとのむぅです。今回、ちょっと遅くなってしまいました。

コロナ禍、まだまだ続いていきますね・・・。演奏家・音楽家としての在り方を考える毎日です。

また私事ですが引越しをしました。以前は小田急線沿いの川崎市民でしたが、新しい家は京王線沿いの府中市となりました。府中には当分住むと思いますし、僕は出身の千葉県では活動がないので地域に密着した仕事ができるといいなぁ、と思っています。ご用命お待ちしております。

お問い合わせフォーム

 

先日のファゴット三重奏の配信コンサート、ご視聴頂いたみなさまありがとうございました。24日いっぱいまでアーカイブご視聴頂けますのでお見逃しなく!

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お申込みはこちら→

https://twitcasting.tv/toppo_bassoon/shopcart/55081

 

そして4月14日に予定していましたハルモニームジークはコロナの影響で6月9日に延期となりました。同メンバー、同プログラムでお届けできますので合わせてぜひ!チラシは延期以前のものですが。

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重ねてのご案内ですが6月9日に延期となっております。

お席のご予約はこちら→お問い合わせフォーム

配信チケットはこちら→ハルモニームジーク vol.25 - TwitCasting

 

 

また、延期になってしまったアンサンブルファルベ(木管五重奏+ピアノ)による公演は7月18日に山梨公演、7月19日に東京公演を予定しておりますので追ってまた詳細ご案内いたします。

 

さて、先月のことになってしまいましたが3月20日に門下発表会が開催されました。

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感染症対策をしつつ、打ち上げはオンラインで、というのも、出演者の皆様もそろそろ慣れてきてしまいましたね。ありがたいやらむなしいやら・・・。

ここ数回の傾向として「色んなレベルの人がいる発表会」から「わりとレベルの高い発表会」みたいな雰囲気が出てきました。いや、言ってしまうのも悪いのですが、僕の生徒たちはどなたでも歓迎している以上上手い人ばかりではなく、むしろ奏法や環境に問題を抱えて来る人が多数派です。しかしそれぞれの立場で効率よく時間と労力を注ぎ、地力がキッチリ付いてきたからこそ、「レベルが高い」と言われるようになったのでしょう。

しかしこれはハードルが高い、ということではありません。うちの発表会のテーマは「とりあえずソロ曲を本番に向けて練習してレッスンさえ受ければ楽器はうまくなるはず」というものです。どうぞお気楽にご参加くださいませ。

自分の演奏に自信が持てない方、どうしてもうまく吹けないフレーズがある方、基礎から徹底的に見直したい方、楽器を再開し(はじめ)たいのにきっかけがつかめない方、レッスンのお申込みお待ちしておりますね。もちろん選曲の相談にも乗ります!

お申込み・お問合せはこちら→レッスンお問い合わせフォーム

 

そして相変わらずハイペースですが次回発表会のご案内です。

夏のひとときコンサート(第21回とのむら門下発表会)

2021年7月10日(土)お昼ごろ開演(終演時間未定)

カルッツかわささき アクトスタジオ(川崎駅より徒歩15分)

参加費

社会人ファゴットソロ 15000円(レッスン代1回分、ピアニスト謝礼、会場費など)

学生ファゴットソロ10000円(レッスン代1回分、ピアニスト謝礼、会場費など)

アンサンブル 6000円(1人あたり。人数により増減あり、レッスン代1回分、会場費など)

ファゴットのソロかアンサンブル(ファゴットを含んでも含まなくても可)ならどなたでも参加できます。知り合いが1人もいなくても心配することはありません。本番でしか会ってないはずなのに、不思議と必ずファゴット吹きの友達がたくさんできます。エントリーお待ちしております!

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さてここからは第20回の演奏講評となります。参加者以外の方からは面白くない記事なのでスルー推奨です。

ブログ更新滞ってしまい申し訳ありません。できたらまた近いうちに更新します!

 

総評としては、前述の通りハイレベルでした。真新しいメンツが多いわけではなくレベルが高い、ということは、レッスンに通い続けている出演者がきっちり腕前を上げているということに他ならないので、先生として鼻が高いです。また、技術としての表現力以上に表現に欲のある演奏が多く、聴いていてわくわくする時間を過ごすことができました。お客様からの評判も全体的に上々でしたので、この調子で頑張っていきましょう!

 

1.ファゴット協奏曲より第1楽章/シュターミッツ

初参加、トップバッターお疲れさまでした。音程・音色ともに安定感があり、また2人の先生から厳しく叩き込まれた(はず)の様式やフレージングもよく理解して演奏していたと思います。難しいところもよく練習してきて、「シュターミッツを履修した」と言っていい演奏でした(これはなかなか難しいことなのです)

さて、音程と音色の安定感、いい意味でも悪い意味でもありました。よく言えば安心して聴いていられる演奏でしたが、悪く言うと平坦だったとも言えます。音色にも音程にも「良い」「悪い」はなく、曲のその場その場でどう「したい」か、が大切なことです。誰かの演奏の真似でもいいから、まずは「したい」を見つけ試してみる事が大切ですので、今後はそれを意識して練習していってほしいです。「したい」が見つかってようやく「しよう」と思い、そしてほしい技術のために練習やレッスンが楽しくなるのです。

今度はなるべく人の演奏もたくさん聴いて行ってください。ヒントがたくさんあるはず。

よかったらウェーバー、ぜひ挑戦してみて!

 

2.ファゴットソナタより第1.3楽章/シュレック

レッスンで指摘した楽器の鳴りについて、非常によくなったと思います。安定感と音程・音色の良さは以前からありますが曲のシーンごとに色んな音色が聴こえて飽きのこない良い演奏でした。手持ちの絵の具(=鳴りのコントロール)が少し増えただけでこんなに化けるとは、と、たぶん自分でも気付いているんじゃないかな。

楽器の鳴りについてはまだまだ入口に立ったに過ぎないので、習慣的にコントロールしていけるといいでしょう。ずっと課題だったダイナミクスが広がってきて今気になることは音楽表現の問題です。もともと発音の操作もうまく、鳴りが出てきて、今度身につけるべきことは「アゴーギグ」と「フレージング」です。「速くする」「遅くする」といった操作だけではなく、アゴーギグの範囲内での微妙な操作で、実際に操作しているダイナミクス以上に表現幅を感じる演奏を目指していきましょう。またフレージングももっと自分発信で表現していきましょう。山を作ることと同じくらい谷を作ることが大切で、そのための鳴り、と思えばもっと磨きたくなるはず・・・。

アゴーギグもフレージングも、あらゆるフレーズで試行錯誤した経験でしか身に付きません。今手元にある譜面だけでもいいので、ちょこっと見直して考えて吹いてみると得るものがあるかもしれません。

いつもいい演奏聴かせてくれますが、ぼちぼちいわゆる「派手な曲」が聴きたいですね!タンスマンやボザあたり、挑戦してみるのはどうでしょう?

 

3.無伴奏組曲第3番より/J.S.バッハ

圧巻、でした。相当しつこくレッスンもしましたが、よく嚙み砕き飲み込めた演奏になっていて、「憧れの無伴奏」と思える演奏でした。楽器による響きも十分得られていて、会場中に音が広がっていました。やはり我々の楽器が世界一ですね!

とにかくブレス管理が見事でした。今回つかんだ感覚は決して忘れず、大切にしてくださいね。

キツい曲でしたが、フレーズ終わりがちょっとアッサリしすぎていることが多い印象でした。ブレスに時間使っていいので、体の中のテンポ感でしっかり拍通り伸ばしましょう。実にうまく書かれている曲なのでそれだけでうまくいきます。またフレーズおさめをゆっくりにするのは上手いのですが、盛り上がりで加速していく、という部分がもっとあってよかった。速い楽章だと難しいですが、今回速いのは最後の楽章だけだったので、前半もっとその手の表現が聴きたかった。

ブーレは八分音符の表現に音の長い・短いによる表現がもっとあるとよかった。全部短いのではちょっと芸がないかな・・・。

無伴奏曲による傷(ミスや音程不良・バテなど)は付き物ですし目立ちがちですが、後に引きずることなく演奏できていたのが大変に好印象でした。

大変な時期にお疲れさまでした。この発表会はずっと続きますし、僕はいつでもレッスンやりますのでまたお待ちしてます!

 

4.ファゴット協奏曲ホ短調/ヴィヴァルディ

1年以上越しのヴィヴァルディ、よく準備してありました。良くも悪くも派手な曲なので相性どうかな、と思いましたが、音楽的にも綺麗に組み立てされていて好印象でした。

レッスンで話題になった拍子感については、もう一つだったかな。そもそもテンポを上げずにこの曲を拍子通り吹くのは至難の業ですね・・・。

オケ(ピアノ)の音がないところでもファゴットの調子が変わらないのがちょっと気になりました。いるときはとりあえずうまく乗っかればいいのですが、1人だと止まって聴こえてしまいます。そんなところを工夫できるととてもよかった。

また短い音の鳴りが弱いのが気になります。バロック作品、短い=弱い、という工夫をすることは多いのですが、それはそれでいいので「短くて強い音=強く聴こえる音」というのも奏法として身に付くと幅が広がるでしょう。

君は大変ハイレベルな演奏ができる人ですが、たぶんバロックの作品が得意なタイプではないので、それを踏まえてまたやるか、いったん違うところにいくか・・・。いずれにせよ、今後の演奏も楽しみにしています。

 

5.ファゴットソナタ/グリンカ

派手でセクシーなこの曲、どんな風に仕上げてくるかな、と楽しみにしていました。複雑なところもうまくピアニストとアンサンブルできていましたが、レッスンの時のほうが積極的だったかな、という印象がありました。リードなのか何なのか。「うまい」とされてる人たちはやっぱり空間いっぱいに音を広げます。狭いところで吹くことが多いのは仕方ないので、もっと広い空間を意識した音を意識して普段から吹くといいでしょう。

課題だった楽器の鳴りもずいぶんよくなってきました、最初グリンカをやる、と聞いたとき、そこをどうにかしてやらなきゃ、と思っていましたが曲の力かリードの力か分かりませんがクリアできていました。しかし広い空間になるとやっぱりまだまだですので、前述の通りです。

長い曲なので、集中力というか没頭する力が必要ですね。君はいい意味でも悪い意味でも書いてある音を並べにいく、という印象になりがちなので、もっと音楽そのものに没頭できるといいです。例えば同じ曲を同じようなレベルの人と交互に吹いたとき、自分の演奏をよく聴かせるにはどう工夫すればいいのか、そんなことを考えていくといいのかもしれません。「うまい」って何なんでしょうね。もっともっと愛されるファゴット吹きに育ってほしい。

 

6.7音のシランダ/ヴィラロボス

繊細な表現がとてもうまく、この曲の魅力的なところをよく表現できていました。意識して繊細な表現をしていたと思うのですが、この表現ができるリードを用いてフォルテで温かい音が出るとなおよかったのかな、と思います。音色というのはイメージからくるものです。もっともっと楽器のポテンシャルを生かせるよう基礎的なところに執着していきましょう。

また、ピアニストとのアンサンブルがうまくいっていて素晴らしかったです。この曲でそれができるのは音が頭に入っている証拠です。楽器を触っているとは別の時間の使い方が良かったのかもしれません。

ちょっと低音の音程が上がりがちです。オケではないのでそこまでシビアではありませんが、工夫できるといいですね。リードのくわえる位置を低音で少し調整(たぶん浅いほうに)するといいでしょう。

どんな曲でも「さすが、うまいね!」という評価を更に越えてくるのがとにかく素晴らしい。その曲への誠実さ、大切にしていってくださいね。次回も楽しみにしてます!

 

7.ファゴット協奏曲より第1楽章/ウェーバー

ウェーバーは原点回帰することの多い曲ですね、僕も覚えがあります。とにかくレッスン前とは楽器の鳴りが別人のようで、そのお陰でできた表現がたくさんあったんじゃないかと思います、それだけでこの発表会のコンセプトである「ソロ曲練習してうまくなる」というところはクリアでしょう。もちろん、それだけじゃつまらないよね。

やりたい表現が明確で、それに伴う技術もしっかり持っているので聴いていて安心できる演奏でした。丁寧に練習したこともよく伝わってきて好感の持てる演奏でした。ここまで丁寧なウェーバーってそう聴けるものじゃないですね。

さて、いい鳴りを手に入れた君にとって今後気にしていきたいのは「鳴った音」のクオリティアップです。例えば冒頭の音はもっと豊かに響くフォルテがいいし、低音はもっとコントロールが取れるといいし。挙げればキリがないけど、鳴った音をもっと使いこなせるための技術を磨きましょう。ほしいな、と思う音を出すことに執着してほしい。

この曲は「ダサい」と「歌」の使い分けが難しいけど、「歌」の部分がもっと大きな表現でもよかったかな。ここは好みが分かれるところですが・・・。

今後もレベルアップに期待してます。自身がレベルアップすることは、大好きな共演者にできるたった一つの誠意なのだから。

 

8.ファゴット協奏曲より第2.3楽章/ウェーバー

オンラインレッスン、合わせ、本番という不慣れな環境でしたがよく準備してきたと思います。2楽章、本当に美しかったです、澄んだ湖のような。レッスンで伝えたこともよく反映されていました、オンラインは成果が得られているか不安なのでこちらも不安ではあったのですが・・・。

ところでビブラートは我流でしょうか。いまかかっているものがあまり効果的ではなさそうです。こればっかりはオンラインで伝えるのは難しい気もしますが・・・機会があったらみっちりとやりましょう。

緊張によるところでしょうが、発音が不安定なことが多いようです。音は出るのですが、出だしの音程だったり音色がまちまちで、非常に勿体なかった。やはりもう少し基礎に立ち返ったようなレッスンが必要かもしれませんね。これだけ表現力があるとそこが非常に惜しく聴こえます。

3楽章もよく練習してあります。曲(楽譜)に書いてある仕掛けをうまく使って変化に富んだ演奏ができています。本来苦労するであろう速いタンギングも問題なくクリアできています。

全体を通して、もっと広い空間を意識した音色・鳴りが作れるといいですね。このご時世ですし狭い部屋で練習する時間が多いのは仕方のないことですが・・・広い部屋いっぱいに自分の音が響く感覚、機会があったらやってみてください。そーいう部屋で吹くとき、どんな音がいいのか、それを感覚的につかむことができればもっとレベルアップできると思います。

今後も楽しみにしてます!もうなんでも吹けますから、フランスものでもぜひ!

 

9.組曲/タンスマン

ある種の覚悟のようなものを感じました。演奏、というより、演奏の背景にある誠実な練習時間に対して。間違いなく背伸びと言える難曲を魅力たっぷりに演奏できていました。遅いところの音程や音色が以前は気になったのですが、今回そういった不安は一切感じませんでした。発音、伸ばし、切り、の基本がよくできていました。またピアニストとのアンサンブルも非常にうまかったです、聴くことや分析することもそうですが、合わせものである、という意識なしに練習していてはここまで合わせることはできないはずです。今回のような練習の仕方を忘れないように!

アゴーギグの付け方は改善の余地がありそうです。遅くするのは上手いのですが、そのぶん速くするところが必要で、遅い→インテンポ→遅い→インテンポ、の繰り返しで間延びした印象に聴こえる場所も少なくありませんでした。誠実に練習する、だけでは得られるものではないですね・・・。芸事の基本は「ものまね」です、もっといろいろな人の真似をしてみて。

技術的にあまり言うことはないです。厄介な譜面への挑み方も理解できたでしょうから、今後はやりたい曲をやりたいように。楽しみにしてます!

 

10.7音のシランダ/ヴィラロボス

音色の変化に富んだ演奏でした。様々なシーンが出てくるこの曲はそれが一番難しいのですが、キツいのでリードの選択肢は狭いし・・・というところです。しかしよく変化して聴こえていました。イメージする、ということの大切さがよく分かりましたね。

レッスンでも言いましたが気になるのは、音価の大きい音ほど楽器がよく鳴り、小さい音ほど鳴らない、というのはどこまでいっても付きまといますので、長い音ばかりで歌わないクセをつけましょう。動いている音をいかにして美しく聴かせるか、が大切なのです。

変化はよく感じる演奏でしたが、繊細な表現がもう少しできるといいですね。繊細=音量が小さい、ということではなく。印象の問題なのでもう少し場数が必要かもしれません。大きい音と小さい音だけではなく、フレーズをどんな印象に聴かせるか、そのためにどんなダイナミクスの変化と発音と時間の使い方をするのか。そんなところを感じて演奏できるようになるといいですね。

バロック作品なんかやるといいかもしれませんね。ファゴット協奏曲、ではなく・・・例えばヴィヴァルディのチェロソナタテレマンソナタ、バッハの無伴奏なんかもいいかもしれませんね。そういえば昔門下にはファッシュを愛してやまない男がいました。

 

11.オーボエ四重奏曲より第1楽章/モーツァルト

一番評価すべき点は、いい意味で合わせの回数がちゃんと演奏に反映されていたこと。いや僕は何回合わせをしてどのくらい集中していたのかは知りませんが、良くも悪くも色々あったでしょうに演奏そのものの安定感があったこと、これはいい合わせをたくさんできたからだと思います。ここは非常に評価できるところです。急な代打がいるにもかかわらず。これは素晴らしいことです。

オーボエはもうこれ以上褒めてもしょうがないですが本当に成長しました。一つ目標をもってレッスンに通う、ということの重要さと成果が自分が一番よくわかっているでしょう。さて、これから君は「上手なオーボエ吹き」の一角なわけですが、ここからが修羅の道です。上達があるとすればもうそれは重箱の隅のようなところばかりで、しかしその積み重ねでしか「上手い」という世界はもうありません。これからたくさんの場数を踏んで、また会ったとき「さすがだ」と僕や今回の演奏を聴いていた面々に言わせなきゃいけないので、これは大変なことです。

チェロの安定感は抜群でした、レッスンで触れた「ただの四分音符」にしっかり音楽があり、全体にいい効果をもたらしていました。いわゆるチェロ的な「いいところ」のない曲ではあるのですが・・・。高望みをするなら、室内楽ですから、もっと全体を運ぶような弾き方があるとよかったです、ヴァイオリンやオーボエが音楽の行き場を失っているときに先導するようなラインを低音側から引いてあげられるとなお素敵でした。もっと攻めた演奏が聴きたかったですね。

ヴィオラは急な代打でよく弾いてくれていました。まさにヴィオラの仕事らしく、上下の繋ぎとソロパートの間を埋める役を実に見事にこなされていました。リハーサルも何もあったものではなかったのでこれ以上は、というところですが・・・今度はぜひ正規エントリーでご参加くださいませ。楽しみにしております。

ヴァイオリンに関して、というか弦楽器に僕は明るくないのですが、まず目指すところとして、目の前にある楽譜から、取りこぼしをゼロにする、ということから始めましょう。難しい、弾けない、できない、ではなく、「ぜんぶ弾ける」を目指しましょう。もちろん、いい音で、ダイナミクス等々楽譜の指示を守ったうえで、です。もちろんできないでしょうから、テンポを落として。それでもできなければ、目の前の楽譜=乗りを減らすしかないですね。とにかくもっと、演奏そのものに没頭できるようなってほしい。演奏会に出ることは、誰でもできるのです。それだけじゃなくて。

 

12.さくらのうた/福田洋介

毎回言ってますが「同族楽器アンサンブルは合って当然、よくて当然」です。が、ダブルリードアンサンブルだけはそれが適用されないかもしれません、バランスやアレンジのこと、とても苦労したことでしょう。個々のレベルの高さ、誠実な準備、いいリハーサルで結果として本番でいい演奏ができてよかった。

オーボエはトップとしての仕事がもっとできるとよかった。少なくともオーボエパートはよく生かされたアレンジだったので、一番の花形としてもっと魅力的な音楽を奏でることと、周りを引っ張る力があればいいですね。経験どうこうより、技術面でもっと表現の幅が広がるといいですね。木五だとフルートがいますが、あの楽器並みの表現力があれば勝手に周りはついてきます。

イングリッシュホルンはメンバーですてきな表現をしていました、いわゆる特殊管ですし「音色ありき」の楽器でここまで攻めた表現ができるのはすごいことです。しかしレッスンでも言いましたが曲のアーティキュレーション、これは大前提です、アンサンブルなのでしつこくは言いませんでしたが、それを見落とした演奏に、先生としては本来何もかける言葉はないのです・・・。まずは遵守すること、そこから。気持ちは、よくわかるのですが。

ファゴット3人はそれぞれのパートでいい仕事はできています。が、旋律が来た時の楽器の鳴りが貧弱すぎる。もちろんファゴットにはオーボエのような立った音は出ませんし、メロディックな美しい曲ですから馬鹿でかい音を吹けということではないのですが、その場でとりあえず音を並べればいいかな、という印象に聴こえます。同じ楽器が3人いて、それぞれ違うところでメロディを吹くのだから、聴いている人は3人それぞれが違った意味でいいところを見せてほしいのに、3人そろって小さくまとまりにいくので・・・。競う必要はないけど、とりあえずメロディ吹こ、ではなくて、魅力的に聴こえるための努力と工夫をしましょう。他の人にも書いたけど、共演者を大切にするたった一つの方法が「うまくなること」です!努力はともかく工夫するための材料は教えてあるはずなんだけどなぁ・・・。

 

13.ファゴット協奏曲/コジェルフ

本当に久しぶりに演奏が聴けてよかった!制限の多いご時世ですが、しっかり自分のファゴットに向き合った時間を過ごしてきたことでしょう、それだけのレベルアップを感じました。

長い曲をレッスン1回だったので伝えられることも限定的でしたが、よく噛みくだいていました、指摘した悪いクセもちゃんと抜けて、自然なフレーズが聴いていてとっても心地よかったです。聴いているほかの出演者やお客様からの評判も上々で、僕も1人目の先生として鼻が高い思いでした。

しかし君が真面目に練習し先生の言うことを聞いていても、かならず望む道に進めるわけではありません。音楽家という暮らしの面白さは言語化が難しいですが確かです。しかし今のままでは、どうかな・・・という印象も、僕は持ってしまいました。学校にいる以上、演奏に成績がつき、単位を取れば卒業はできるでしょう。ですが、それだけでは望む道には進めません。数多のプロ奏者たちの中で、君の演奏を聴きたい、君を呼びたい、君と一緒に演奏したい、と思ってもらえる演奏ができる人にならないと生きてはいけません。そのためにもっと色々な工夫をしましょう。変わったことをする必要はありません、自分で考えて動き、それが周りにどう映るのか、考えることからでしょう。

演奏としては、もっと気まぐれだったりふざけたり、時には豊かに歌ったり踊ったり、表現がもっと幅広く欲しいなという印象を受けました。「上手い」ではなく「好き」と思ってもらえる演奏を目指していってほしい。これからまた忙しくなったりもすると思いますが、タイミングが合えばぜひまた参加してくださいね。

 

14.プルミエソロ/ブルドー

良い演奏でした。上手くなった、なんて評価はもう君に対しては失礼で、この曲の魅力をしっかりを引き出した名演でした。傷も目立ちますが、気にならないくらい攻めの姿勢の音楽、すごく心に響きました。音色・音程の良さはもはや折り紙付き、ですね。今回出したような音と音楽、忘れずに。

さて気にならない、とは言いましたが傷は確かに多いですし、ここまで来ると君にとってそれが唯一にして最大の欠点と言えます。技術的に解決することはまだたくさんありますが、必要なのは音をもっと頭に入れること。楽器の練習だけではなく、心の中で(ある程度音程をつけて)曲を歌えるようになりましょう。それだけでずいぶんミスが減らせるようになります。もしかしたら、歌詞のある曲、つまり歌曲の類をファゴットで演奏したら掴めることがあるかもしれませんね。

またこれから楽器を触る時間は減るでしょうから、短い時間で、もしくは(例えば)週1日に詰め込んだ練習の仕方、といった、ある意味、毎日楽器にさわる僕には絶対に教えてあげられない領域のところと戦うことになります。やり方は本当に人によると思うので、自分のペースをつかんでいってほしい、そのうえで、時間をかけずレベルアップしていってほしい。もう君は「うまいひと」の1人です、何の曲を吹いてもどこのオケでどのパートを吹いてもそう思ってもらえるように、これからまた頑張っていきましょう!

 

15.演奏会用独奏曲/ピエルネ

名曲ピエルネ、と思わせる演奏でした。派手なだけではなく、憂いがあったりおどけてみたり、聴いていて飽きのこない演奏は見事でしたね。力の入れ方と抜き方がとてもうまくなりました。音の響き方もよく、広い空間でソロを吹くことにもいい意味で慣れが出てきましたね。

短い曲で難しいところも多くないですから、基礎的なところに立ち返りやすかったでしょうか。うまく力の抜けた弱奏やいい意味でナチュラルな強奏には技術的な進歩が見られました。一方で、ハッとするような弱奏や心を鷲掴みにするような強奏も見られませんでした。心地よく聴ける演奏でしたが曲の山場がどこなのかハッキリしない印象も見受けられましたので、もっと攻めたところがあってもよかったかもしれませんね。

名演だったのは確かなので、この調子で!今後はその自然な奏法からダイナミクスがもっと広がるように意識して練習してみてくださいね。

 

16.歌劇「どろぼうかささぎ」より/ロッシーニ

こちらも1年越し。しかし間でもレッスンに通い続けた成果が確実に出ていて、技術的に音楽的に飛躍的に伸びたと思います。楽器の鳴らし方とコントロールが抜群に上手になりました。歌曲の演奏は器楽とはまた違った難しさがあります。何でもないフレーズが楽器だとなんだかうまく決まらなかったりするのですが、非常にうまく表現できていました。

課題としてはタンギングでしょうか。単純に入れたい速度や性質で入らない、いわゆる「ろれつがまわっていない」タンギングがちょこちょこ見受けられました。指、息、と同じくらい舌の操作は自分から見えず感覚的なところが多く慣れが必要ですので、アーティキュレーションをもっとうまく表現するためにタンギングに意識を向けていきましょう。

いつも僕も知らない曲を持ってきて、僕も勉強しながらレッスンを続けていきますが、そろそろ王道やら定番のレパートリーが聴きたいところでしょうか・・・?もちろん、演奏する曲はご自分で決めてくださっていいのですが。

 

17.ファゴット協奏曲より第1楽章/シュターミッツ

貫禄のある演奏だった、と言えます。やることと学びの多いこの曲をよく仕上げてきていました。また楽器がよく鳴っていて、(僕は前のほうにいたのでわかりませんが)おそらく会場の端まで良い音が響いていたことでしょう。しつこく教えた様式についてもうまく表現しており、誠実な取り組みを感じました。

課題はとしてはダイナミクスです。強弱自体はよくついていますが、意識的に音量操作を行うと、持ち前の音色やら音程の良さが失われてしまうことが多いです。逆に言うとダイナミクスの操作が行われていないときは非常にまとまっていてレベルが高いのですが・・・それでは音楽の表現もできません。つまり「ダイナミクスをつけずになんとなく音を並べる」箇所が多いのでそう感じるのも確かです。その場その場、どんな音を出したいかのイメージに必ずダイナミクスも加えるようにしましょう。そうすれば持ち前の誠実さでうまくいくよう工夫ができるでしょう。そうすることで生まれてくる課題もきっとあるはず。今後挑戦する曲は、何でもいいと思います、やることは何をやっても同じですので好みの曲を!

 

18.アンダンテとハンガリー風ロンド/ウェーバー

本番近いタイミングでのタンギング変更、どうかなと思いましたが・・・本当によくやりました、普通できません、君だからできたことです。せっかく覚えたトリプルタンギング、この曲でいいですから時々練習して忘れない・衰えないようにしましょう、ダブルタンギングへの意識も少し変わってくると思います。

タンギングのこともありますから反応の良いリードを使うのはいいのですが、そのコントロールがいまひとつでした。実は反応のいいリードほど扱いは難しく、また変化もしやすいので注意が必要です。しかしアンダンテでのピアニストのアンサンブルは抜群でした。ピアニストもとても弾きやすそうな印象でした、よく研究・練習したと思います。

ロンドもよく研究しました、2拍子感、というのをあえて出しに行くのは実は難しいことなのが今回よく分かったと思います。またコロコロ変わるシーンにもよく対応できていました。イメージがちゃんと音になっていました。

どんどん新しいことを覚えていきますね!力任せだった昔の印象はもうないです。次の演奏も楽しみにしていますね!

 

19.無言歌/メンデルスゾーン

非常に難しい選曲をしましたね。譜面は簡単、さてその表現はどうか、という曲は試されることが多く、苦労が絶えなかったと思いますがよく表現できていました。弱奏のとき、ただ弱く薄い音だけではなくその中に歌がもっと表現できるといいですね。アゴーギグももっとあってよかったかもしれません。決してうるさい印象にはしたくないので、難しいですが・・・・。

ピアニストのアンサンブルはかなり精度が高くよかったです、つけてもらっているのは確かですが、よくリードもできていました。

短調のところはもっとガラッと印象が変わると素敵でしたね、やり方は色々会ったと思いますが、合わせのこともあるのでなかなか難しいですね。やはりそこも聴いて分からない程度のテンポの変化やビブラートなど、ちょっとしたことで印象が変わっていたのでしょう。

しかしこの曲で得た経験は今後も生きていくことでしょう。そろそろフランスものの定番、ボザやフランセに手を出してもいいかもしれませんね、もちろん好きな曲を!

 

20.3つのロマンス/シューマン

本当に最後の最後まで心配していました、が、きちんとやるべきことをやってきて良かった、とにかくこの曲の期待に対してのハードル越えの難しいこと。ハイトーンがどうのこうの、以前に本当に厄介な曲です。

レッスンで伝える情報量が多く、毎回大丈夫かな、と思っていたのですが最終的にはきちんと飲み込めていましたね。音楽の流れも本番ではとても自然で、安心して聴いていられる演奏に仕上がっていました(この曲でそれはすごい!)ピアニストとのアンサンブルを意識する余裕はなかったですね。ピアニストにはよくお礼を言っておきましょう。

フォルテ、ピアノもきちんと表現できていましたが、それでもあまり変化を感じないのは音色が一定だからです。ハッとするようなフォルテ、息のつまるピアノ、そしてそれらから始まる強弱の変化から音楽の移り変わりを聞いている人に感じてもらえる演奏ができるといいですね。ちょっと汚いかな、と思うようなフォルテも、あっていいんです、ぜんぶ綺麗な音色じゃ飽きてしまうから。

また音階練習の成果はよく出てると思います。この曲に限ったものを徹底させましたが、ゆっくりでいいですから24調を2-3オクターブで同じように吹けるようになれば更なるレベルアップがのぞめます。ぜひ挑戦してみて!

環境も変わり大変かと思いますが、また演奏を聴けるのを楽しみにしています!

 

21.2本のファゴットによる協奏曲/ヴァンハル

ファゴット2本、って楽しいことがたくさんですね、聴いていてその気持ちがよく伝わってきました。本番へのブランクのせいで色々あったとは思いますが、練習して人前で音を出すことの面白さ、やりたいことができた時の気持ちよさ、できなかったときの悔しさなど、思い出せたことがたくさんありそうでよかった。

ところで2人ともすこし音程が下方向に来すぎる傾向にあるようです。ファゴットは性質上、楽器が鳴れば鳴るほど下に来やすいので、もう少し自分の音程をきちんと向き合って。そのためにはロングトーンで吹ける最高の音をスケールといういちばん基礎的な音形に落とし込む、と僕がレッスンでさんざん言ってきた基礎練習を積む必要があるでしょう。音程は感覚もありますが、楽器を正しく扱えば必ず良くなります、そこは怠けないように。

トリルや装飾の入れ方、この時代の音楽の様式、アーティキュレーションのことなどたくさん教えましたが、どんな曲でも生かせる技術ですしそこまでパターンも多くないので今回覚えたことを忘れないように。

そろそろ、それぞれのソロ曲が聴きたいですね!

 

22.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

冒頭の低音の響きとっても良かったです、楽器のポテンシャルがしっかり生きてきました。中~高音においても同じくらい発揮できるといいですね、唇によるコントロールと息圧をしっかり操作して。音楽的に言うことはほとんどありません、僕が教えたことをしっかり飲み込み自分のものにしていました。今後は自分発信で、「こう吹きたいんですがどうでしょうか」なんて言ってくれたら僕は嬉しいです、本来レッスンってそーいうもの。材料はもうたくさん持っているはずでしょ?

速い楽章になると楽器の鳴りが弱くなりやすいようです。いわゆる連符でもしっかりリードが振動している状態で練習すること、そのためにゆっくり練習を始めるのです。死んだ音で連符を並べても効果は薄いです。

ピアニストとのアンサンブルはうまくいっていました。よくかみ合っていますし音楽的にも同じ方向を向いています。そこまでできるなら、自分が先導したり相手に乗っかってみたり、の遊びがもっとあるといいですね。合わせは1回ですがイメージ次第でじゅうぶん可能なレベルですから、次回はそういったことができると素敵ですね。

 

23.ファゴット小協奏曲/ダビッド

最後を飾る演奏にふさわしいクオリティでした。なんとなくわかる通り、上手い人を最後にしているわけではなく、伸びしろが一番面白いことになりそうな人をいつも最後にするのですが・・・今回はいろんなところで面白い演奏が聴けたので、緊張しながらもいい刺激とプレッシャーになったのではないでしょうか。

基礎的な部分にかなりレッスン時間を使いましたが、抜群に楽器の鳴りと音程がよくなりました。そんなに難しいことを教えたわけではないのですが、これをきちんと継続していくのは難しいことです。とにかくフリックは押す、左手小指は端折らずきちんと操作する、そしてそのためにゆっくり練習する、ということを今後も徹底していきましょう。

演奏の傾向がいわゆる「優等生」なところがあります。もちろんいい意味でもそうなのですが、僕個人としてはもうちょっと「やんちゃ」な方が好きですし、気まぐれなことを仕掛けられるのも技術です、色々と試してみてほしい。「ここはこう吹こう」と決めても、練習のたびに気まぐれで「あれこっちでもいいのかも」なんてのを自分で気付き始めると、曲を人前で吹くのが面白くてしょうがなくなります、もっと色々と試してみて。

環境も変わりますが、楽器を吹く面白さは変わりません、これからは大人として、素敵なファゴットのたしなみ方ができますように。また演奏聴けるのを楽しみにしています!

 

 

 

長くなりましたが以上です。次の発表会も楽しみですね!

第19回発表会でした。講評とか運営のこととか

コロナ禍続いておりますがいかがお過ごしでしょうか、ファゴット奏者のとのむぅです。

仕事も少しずつ元に戻ってきつつありますが、私のような末端フリーランス奏者にオケの仕事がわんさか、ってわけにもいかず、まだまだ影響がある状態が続いております。それでも楽器に触る時間が増え、また人前で演奏できる機会がたくさんあること、とても幸せに思います。当たり前じゃないんだな、と思うことが大切のようです。

 

さて少しだけ出演情報を。

モーツァルトの時代に栄えた「ハルモニームジーク」と呼ばれる編成、木管八重奏(オーボエクラリネット、ホルン、ファゴットが2人ずつ)でのコンサートに出演します。客席では食事と飲み放題がつきます。またオンライン配信もありますので合わせてご検討いただければ幸いです。

ハルモニームジークvol.23
2020年12月9日(水)19:00開演(18:30開場)池袋オンリーユー(池袋駅西口徒歩6分)

魔笛/モーツァルト
八重奏曲/ベートーヴェン

来場チケット(食事・飲み放題付き)一般4000円 学生3000円 オンラインチケット:2000円

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来場チケットは下記フォームからお申込みください。

お問い合わせフォーム

オンラインチケットは下記のページからどうぞ。お申込みの際にメッセージ欄に「ファゴットの殿村から案内を受けました」とご記入頂ければ幸いです。

ハルモニームジーク vol.23 - TwitCasting

 

 

続いて、年明けになりますが・・・。数年前から結成しつつもメンバーの渡仏・渡独などでなかなか公演できずにいましたが、今回タイミングが合いコンサートをやることになりました。久しぶりの友人たちとどんな音がするか今からとっても楽しみです。

アンサンブルファルベ(管楽器メンバーによるコンサート)

2021年1月8日(金)19:00開演(18:30開場)

スペースDo(管楽器専門店ダク地下、新大久保駅より徒歩3分)

チケット:一般3000円、学生2500円、オンライン配信1500円

出演:菅野芽生(フルート)高田園子(オーボエ)米倉森(クラリネット)堀風翔(ホルン)殿村和也(ファゴット)紅谷麻美(ピアノ)

ディベルティメント/ルーセル(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.Pf)

オーボエファゴットとピアノのための三重奏曲/プーランク(Ob.Fg.Pf)

バラード、パストラーレとダンス/エヴァイゼン(Fl.Hn.Pf)

木管五重奏曲/キラール(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg)

六重奏曲/プーランク(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.Pf)

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チケットは同じく下記のフォームまで。

お問い合わせフォーム

配信チケットはこちらから。

アンサンブルファルベウィンズコンサート - TwitCasting

 

 

どちらも素晴らしいメンバーによるコンサートですので、ぜひ足をお運び/ご視聴ください。お待ちしております!

 

 

さて、先日第19回の門下発表会がありました。今回はディスタンスを取るため、また配信の都合もあり公共のホールをおさえて開催しました。ソロ14人、アンサンブル6組と全盛期ほどではないにしろたくさんの演奏をお届けしました。ゲストに静岡交響楽団ファゴット奏者の東実奈さんとサキソフォン奏者の田村哲さんをお招きし素晴らしい演奏を聴かせてくださいました。

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1000人近い収容人数のホールでの発表会開催は初めてで戸惑うことも多かったのですが、広いホールで吹く、ということも生徒たちにもいい刺激になったようでした。

今回の反省点として、ゲスト奏者を含めたプロの演奏(自分も含めて)が出演者、特に前後の出番の人にプレッシャーを与えている、という声を何人から頂きました。それを踏まえて、ゲスト奏者を招くことと僕自身の発表会での演奏は今後しないこととします。最後のゲストがこのお2人で僕はとっても幸せでした。

 

また「配信もするぞ」と言ってはいましたが電波状況が悪くまともなお届けができなかったこと、ここにお詫び申し上げます。視聴しようとしてくださった方は個別にご連絡(torakitsune.fox@gmail.com)頂ければ、全員の演奏が聴けるURLをお送り致します。申し訳ありませんでした。

 

今回はコロナ禍の中ということもありましたが、最近になって楽器への意欲を取り戻した人とコロナ禍でもオンラインレッスンなどで継続してきた人がいて、レッスンの進め方などがそれぞれいつもと少し異なったりもしました。以前できなくなった発表会で演奏予定だった曲を持ってきた人もいれば、新しい曲に挑んだ人もいて、長くやった成果を出すことの難しさ、というのも感じたようです。本当に今回は、いやいつも通りではあるのですが、面白い演奏がたくさん聴けました。幸せなことです。

 

次回発表会は来年3月を予定しております。ファゴットのソロか、アンサンブル(ファゴットを含まなくてもOKです)でのエントリーで、どちらも1回以上僕のレッスンを受けて頂ければどなたでも出演可能です。日程未定ですが決まり次第各所でアナウンスさせていただきます。

春のひとときコンサート(殿村門下発表会)

2021年3月20日(土)お昼ごろ開演

参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン1回分謝礼含む)

ファゴットソロ(社会人)15000円

ファゴットソロ(学生)10000円

アンサンブル(1人あたり)6000円

お申込みは下記フォームからどうぞ。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

さてここから先は各演奏の講評となります。参加者以外の方が読んでもよく分からないものになってしまうこと、ご了承ください。

 

1.レチタティーヴォシチリアーノとロンド/ボザ

もう褒めなくていいでしょ、って思うかもしれないけど素晴らしかった。君がこの曲を演奏できたことについて、君自身はもちろんとして僕にも周りの子たちのもとてもいい刺激になりました。ハイEは出るに決まっていると思ってた。ハイトーンへの探求はここで終わりではないので、教えた指を使って日々研究を。色んなリードで試してみることも大事です。タンスマン、サンサーンス、ビッチ、すべてハイEの出し方は違ってきます。

やはり中~低音域の音程は重要な課題として残ります。基本的にファゴットの低音の音程は高いもの、そう思って警戒していきましょう。

レチタティーヴォはもっとアゴーギグが効くとよかった。またピアノとの絡み方ももっと頭に入れておくべきだったと思います。ピアニストとのアンサンブルに関してはもっと経験を積む必要がありそう。無条件でつけてもらえる、という状態はそろそろ卒業しないとやりたい曲は吹けないかも。

今回身につけた「練習の仕方」を今後すべての譜面に活かせますように。

 

 

2.レチタティーヴォアレグロ/ギャロン

緊張してるのかな、と心配してたけど、伸び伸びとしたいい音で演奏できていたと思います。音楽の運びなんかは今までのどの演奏より素晴らしかったです、欲が出てきて、鳥肌の立つ瞬間がたくさんありました。楽器もよく鳴るようになりました。

ピアノとのアンサンブルがすこしうまくいきませんでしたね。普段からどんな音がピアノから出てくるのか想像しながら練習をすることがとても大切です。合わせも聞けなかったので何とも言えませんでしたが・・・不安なら「もう1回お願いします」と食い下がってみるのも大切です。それでも、なにかあった後ちゃんと戻ってこれるのは、長くこの曲をやっただけのことはありますね。

我々の「ソロ」というのは音楽のジャンルとしては室内楽、つまりアンサンブルですから、合わせられないとせっかく練習したものがうまく聴かせられない結末になってしまいます、今回でよくわかったんじゃないかなと思います。

とはいえ「上達」が目的であるこの発表会としては、それでもいいんだと思います。よく練習したことは僕が一番わかってます。次は本番でそれを発揮できるように、また一緒に頑張っていきましょう!

 

3.4つの標識/シュテインメッツ

曲自体が「ん?」と思うほど不思議なつくりだったり、すごく美しかったりかっこよかったり、のコントラストが魅力だと思いますが、よく表現できていたと思います。また2人ともホールとの相性もあるかもしれませんがとっても楽器がよく鳴って遠くまで響いていました。レッスンで触れた「音程」のこともよくできていました。言ったか忘れてしまいましたが、ファゴットは大体において音程さえ取れていればよく響くしいい音色で吹けます。今回つかんだ奏法のコツを自分のものにできるよう今後も頑張っていってほしいと思います。

アンサンブルとしては、二重奏なのでそりゃ合います。というか、完璧に合わなくてもいいんですが、良くも悪くもよく合っていました。ただ二重奏ですから(しつこい?)もっと片方が目立ったり引っ込んだり、仕掛けたり反応したり、と不確定要素があったほうが僕好みではありました。仲はいいけど、本音で喋るほどではない、くらいの関係性のアンサンブルでした。そこは惜しいところですね。

コントラは、まだまだです。決して下手くそではありませんでしたしよく練習したのだとは思いますが印象としては荒くいい加減なところが多かったです。やかましい低音楽器、ではなく、低音特化のソロ楽器として丁寧に練習を積んでいきましょう。せっかく買ったんだから、達人を目指しましょう。

 

4.ファゴットソナタヘ短調/テレマン

レッスンで課題にした「欲」について、よく表現できていたと思います。またもともと持っているやさしい発音が曲によくマッチしていました。よく響くいい音で楽器を鳴らせていたとも思います。ただ音楽の盛り上がりがまだいびつ(急に大きくなったりしがち)でした。自然な流れを作るためには楽器を鳴らす技術がもっと高くならないとできません。「欲」のための「技術」、もっと磨いていきましょう。

2楽章の加速については色々な要因があります。合図、ピアニストとの絡み方、特定の短い音で転んでしまうなどです。いくらでも止められたと思いますから諦めずに冷静にやれればよかったのですが・・・それでも食らいつく根性と技術は見事ではあったのですが、その速さで音楽を乗せるだけの力はまだなかったですね。早くなってしまっても「いっちゃえ!」ではなく、頭の中に2割は冷静な司令塔を残し「まてまてまてまて」とできるようになるとよかったですね。ただ速いおかげか、バテが少なく済みましたね、それは怪我の功名とでも言いましょうか。

音程がいいのでピアノの左手の音とよく絡んでいました。その音程でもっと楽器が鳴るようになれば、素敵ですね。今後も頑張っていきましょう!次も楽しみにしてます。

 

5.ファゴットソナタ/グリンカ

なにせ当日の付け焼刃レッスンだったので、なかなか伝えられないことも多かったのですが・・・・安定感はさすがでした。この曲で「安定する」のは、なかなかできないことでと思います。また、やはり音程がいいのでよく響きピアノとも合っていました。

強弱がきちんとついているのですが、「強」のときのアクセントやスタカート(短い音)で奏法乱れが原因か良い音が鳴らなくて音楽の流れが止まることが多い印象でした。音楽のためにもっと技術を身につけていきましょう。

また、少し体の使い方が硬いような印象もありました。体は横に動かすのではなく上下、特に下方向への意識を持つと楽器がよく鳴ってくれますのでお試しください。

次回はもう少し長期的にと言いますか、じっくり取り組めるといいですね・・・早めに日程調整しましょう。でも今回のような歌う曲、とってもいい刺激になると思いますからぜひまた。お待ちしてます。

 

6.2つのヴァイオリンのための5つの小品/ショスタコーヴィチ

ピアニストの腕前によるところが大きいですが曲想が非常によく伝わってくる良い演奏でした。実は僕は「ショスタコーヴィチ」という作曲家にほとんどなじみがないのですが、今回の演奏を聴いてとても興味が湧きました。

さてまずは、楽譜のことです。どのようなものを使ったのか僕は見ていませんが、ステージに上がった瞬間から「音楽家」という役を演じる必要があるのでもっとしっかり準備をしてきましょう。譜面台に置いたらどうめくるのか、どうたたんで次の楽章にいくのか。地味なことですが、室内楽においてはとっても大切な要素だと思います。恩師の受け売りですが、僕の本番中譜面がガサガサなってしまったときに「舞台に上がったら、自分の味方は楽器と楽譜だけ」なんてお説教をされたことを思い出しました。

ヴァイオリンとクラリネットのお2人については、腰から上しか使わず演奏をしているのが気になりました。いやヴァイオリンは両手と首、クラリネットは両手と口しか使わないのですが、二人して完全に「棒立ち」なのが」気になりました。もちろん音楽にも影響が出てきます。膝は伸ばさずもっと全身を使った演奏方法を見つけると幅が広がっていくと思います。ヴァイオリンは大変よく理解して音を並べていますが「きまじめ」な印象が拭えません。もっと「やんちゃ」しましょう。今回の曲もそれが足りてない印象でした。クラリネットは息の長い曲で大変だったと思います。内声に入るとき、ただ小さく隠れるだけではなく一番いいところ(音程とか音色とかバランスとか色々と)にサッと入り込めるとアンサンブルの達人と呼べるようになるでしょう。

ピアニストは大変ブラボーでした。僕のお願いした「誰も出てこなきゃいいと思えるような前奏」というのは本番で見事に発揮されていて嬉しかったです。この手の編成ではピアニストがリーダーですから「俺がこんなかましてるのにお前らはなんでそんなつまらなそうに弾く(吹く)んだ?」なんて一声、あったでしょうか?なければ、言ってほしかったな、と思います。

ファゴットばかりでアウェイに感じたかもしれませんが、僕はアンサンブルにファゴットが含まない編成が入るのをすごくうれしく思っています。ぜひまたなにか挑戦しにきてください。

 

7.ファゴットソナタホ短調/テレマン

まず第一に音がよくホールに響いていました。遠鳴りする音、というのはすなわち「いい音」だと僕は思います。

音楽の流れも大変美しかったと思います。ふわふわとした雰囲気が続く曲ですが平坦にもならず聴いていて心地のいい演奏でした。2楽章は特にいやな音列が地味に続く、という曲ですがそれを苦にしておらず、よく練習したのが分かりました。

3楽章は難しい楽章でしたね。特に前半は体に音があまり入ってないような印象でした。「よくわからない」ものこそ時間をかけて何度も音を並べてみることが大事ですから、油断ないように準備するようにしましょう。レッスンで触れた発音についてもよく復習できていたと思います。

4楽章のテンポ感は自然で大変よかったです。他の楽章でもそうですがフレーズの語尾がいい加減なことが時折ありもったいない箇所がいくつかありました。ブレスの前は特に気を使いましょう。連符はよく回っていましたがレッスンでも言ったように息が入らない連符は聞いてるほうは「ふーん」という印象になりがちなので、難しいところこそ息遣いに注意して。せっかく回るのにもったいないですよ。

そろそろ少し厄介なフランスもの、挑戦してもいいかもね。また楽しみにしてます。

 

8.プルミエソロ/ブルドー

実はみんなからの評判が一番よかったのがこの曲でした。レッスンで教えなきゃいけないことが多くどうなるかと思いましたが5教えたところ10伝わっていた、という印象で今回ほんとうに素晴らしい演奏だったと思います。これだけ熱いブルドー、そうそう聴けるものじゃないです。

何がよかったかと言えば、思いと技術のかみ合わせがよかった、ということだと思います。どちらか片方が空回りすればこんな演奏はできませんので、いい練習をたくさんした結果ですね、この演奏は誇っていいので自信をつけてください。

よく練習した副産物として、連符がすごく丁寧です。丁寧でいいのですが、少し停滞して聴こえる箇所もありましたので、練習は練習として丁寧に、演奏自体は熱く。連符に息は入っているのですが流れがあまりなく、惜しかったです。

音程はもうひとつ課題、といったところでしょうか。しっかり意志をもって鳴らしているところは悪くないのですが、気持ちが入ってない音が軒並み音痴なので(普通わりと逆なのですが・・・)もう少し全体に気を遣って。しかし音程と(悪い意味での)丁寧さくらいしか指摘するところがない、と言ってもいいくらいいい演奏だったと思います。この調子でほかの曲も取り組んでみてください。

 

9.ドゥジエムソロ/ブルドー

楽器を変えてからあまり日が経っていないのを心配していましたがよく吹きこなしていました。まだまだ鳴るポイントを探せると思うのでもっと仲良くなれるように日々過ごしてみてくださいね。

丁寧によく練習したのが伝わる演奏でした。連符に音楽が乗っている、というのは(上記いくつかの講評を見ればわかると思いますが)なかなかできることじゃないし、意識して練習した成果だと思います。もちろん歌うところの音楽も素晴らしく、成長著しいな、と思いました。腕前についてもそうですが、なんというか大人になったのかな、という気がします。器用なだけの演奏は卒業できたと思います。

さて課題ですが、「やめグセ」です。ある種の完璧主義からくるこのクセがずいぶん深く根付いてしまいました、レッスンでも傾向があったのできっちり指摘すればよかったのですが・・・。克服の仕方は2つ。間違えても突っ切る練習をするか、ぜったいにミスのない演奏習慣をつけるようにするか。どちらも大切だと思います。それにしてもあれだけやめグセを発動しながら寄せてくれたピアニストにはしっかり感謝しましょう。おそらくやめグセさえなければもっと音が並んでいたはずなので・・・そこが悔やまれます。克服できるよう、定番レパートリーから未履修の曲を丁寧に丁寧に練習してみるのがいいですね。エチュード持ってくるのもいいかも。ミルデのスケールなんかどうですか?とてもいい効果が見込めると思います。お待ちしてます。

 

10.2つの幻想的小品/ニールセン

部の最後だったのもあって、音出し不足と緊張もあって出だしは不調でしたね。空気を読まずしっかり音出しをしてしまう度胸も大切です。そーいうのを僕は「舞台さばき」なんて読んだりしてます。

音楽の流れと色彩感が抜群でした。音域を広く使えない曲なので難しいところをよく表現できていました。ピアニストのかみ合わせもよく、安心して聴ける演奏でした。課題だった中・低音域の音程も非常に良くなりました。いつまでも難しいところなので探求していきましょう。

2楽章はよく練習できていましたが・・・・いわゆる「本番テンポ」へ慣れが足りなかったような気がします。スピード感についていけず、聴かせどころが今一つでした、非常に惜しい。それでもピアニストとズレないのはいい耳を持っているなぁ、と感心しながら聴いていました。いい耳を持っていても演奏中はなかなか発揮できないものなのですが、そこは大きな長所かもしれませんね。

レッスンでも言いましたが2楽章最後の表現は完璧でした、作曲家の意図通り、って感じ。オーボエ界ではそれなりに定番レパートリーのようで、名曲らしさが光っていました。次回もまた楽しみにしていますね。

 

11.田園風コンセール/トマジ

まず、聴いた印象以上に難しいこの曲を3人ともよく練習してきたな、と思いました。レッスンではまだ不安定だった箇所もずいぶんまとまって聴こえました。「アンサンブルなんぞしょせん個人技の集まり」と僕はいつも言っていますが、それを体現するような演奏でした。もちろんしっかりまとまってもいました。それは3人ともが普段から「まとまり」を意識して演奏しているからなのかな、と思ったのですが、どうでしょうか。

オーボエは「簡単そうに難しいところを吹く」という点においてピカイチだったと思います。それは誠意のある練習と勉強の賜物だと思いますので誇っていいのですが、レッスンで何か所も指摘したフレーズの歌い方については・・・。「このくらいでいいかな」ではなく「これじゃやりすぎかな」くらいやって、ようやくほんの少し伝わる程度、なんだと思います、誰でも最初は。もっと思い切った音楽表現を。テクニック面がピカイチ、歌い方が足りない、だと、どうしても「棒吹き」の印象が抜けません。もし音色ってやつにこだわりがあるのだとしたら、いったんそれを捨てて音楽に特化したところにこだわってみませんか?

クラリネットはこのアンサンブルの要でした、大変すばらしい演奏でした。オーボエファゴットも突然好きにやりたがるところがあるのをうまく仲介している印象でした、アンサンブルの達人、と言ったところ。旋律を取るところも大変美しい歌心をお持ちなのですが、旋律を吹く時に少し線の細い音になってしまうクセがあるようで、それがダブルリード相手だとすこし厄介なのでもっと太い音を意識してみると周りがやりやすくなると思いました。

ファゴットはソロも大変ななかこの難しい曲をよく練習してきたと思います。というか、ソロで掴んだことをこちらにもずいぶんよく落とし込んでいて良かった。アンサンブルになると線の細い音がよくコントロールできているのですが、そればかりではなく時には太い音でオーボエクラリネットを支えるようなシーンがあるともっとよかった。アンサンブルのときこそ楽器の性能が問われるのでもっとポテンシャルを生かせるように。

半年以上取り組んできた3人だと思いますので、同じメンバーでまた別の曲、というのもいいんじゃないでしょうか。次回も楽しみにしてますね!

 

12.サマーミュージック/バーバー

アンサンブルなんてしょせんは個人技の集まり。5人それぞれがいいパフォーマンスを発揮できればそれでもういい演奏。と通算2回のレッスンで言っているのを見事に体現してくれました。それぞれがきちんとレベルアップしてくればアンサンブルとして成長します。合わせはそのかみ合わせの確認作業、に集中することができますから、「合って聴こえる」箇所を増やすことに時間を使えるわけですね。合わせも有意義な時間だったんだろうな、と想像できます。

5人の和やかな性格のためか、長くやったためか分かりませんが結束感も感じられました。「木5を長く継続する」というのは思ってる以上に難しいことなので、もし今後も、ということであれば未来永劫一緒にやっていってほしいものです。

曲の頭から後ろにかけて、だんだん5人とも楽器が鳴るようになっています。じっくり音出しができる環境ではないのですが、曲間でしっかり音出しをすればもう少し頭からみんな楽器が鳴ったのかな、という気がします。舞台さばき、とでも申しましょうか。本番直前の音出しだけではなく、もう少し(いい意味で)ふてぶてしく自分のパフォーマンス発揮を意識できるといいですね。そうすれば緊張も少しは和らぐはず。

とにかく木5ってやつはみんなの憧れ編成なのだから、この団体を基準に、くらいに思って皆さんには取り組んで頂きたい。

 

16.ソナチネ/クレメンティ

まずは礼をしましょう。演奏前と後に礼。立派な演奏家はみんなステージのふるまいも素敵なものですから、そこから真似してみることは大事なことです。

実はこの曲は僕が音大受験で弾いた曲でした。こんなにしっかり弾けなかったのはよく覚えていますが・・・。笑

僕はピアノは完全に専門外なのでコメントはあまり多くできませんが、指の力がしっかり鍵盤に伝わった良い演奏だったと思います。ミスが起きるところについては、おそらく家で(学校で?)練習しているときにミスを通り過ぎて弾いているところだと思います。ミスは偶然ではなく必然で起きるので、間違えたらこれ幸いとその箇所を責めて練習するのが大切です。それができたら、今度は少し前からミスした箇所を通り過ぎる練習をしましょう。その「通り過ぎる練習」が不足していたような印象があります。参考になれば嬉しいです。

 

17.ワイセンボーン1巻より1番、2番

東さんのお弟子さん、ということは忘れて、僕がレッスンで聴いたらこんなコメントをすると思います。

1番

ブレスの回数が多い。僕個人としてはこの曲はブレス無しで吹き切るもの。mpでpocoadagioの2拍子であればそこまで非現実的な息の長さではないはずです。特に中~低音域であんなに音量を出しては持つはずもないですので、息の管理をきっちりと。また息がまっすぐ入らず音ごとに揺れてしまうので、ロングトーンのような息をしっかり入れて指を動かす、というレガートの基本をもっと忠実に。もし息を途中で取るのであれば多くて1回か2回、決まった場所でブレスを取る練習をする必要があると思います。

2番

E→Fisの動きをもっとしつこく練習して。ハーフホールの音は音程が上がりがちで、ちゃんと理由があります。ハーフホールがきちんと空いてないと口を閉めないとオクターブ下が出てしまう=口を閉めてなんとかひねり出す→音程が上がる、ということです。まずは指がしっかり動くことを確認して。E→Fisの運指はどこまで上達しても苦労しますから、今のうちに丁寧に練習しておきましょう。5小節目以降でミスが生じるのはamollのスケール練習がまだ足りてない証拠なので、まずはそちらから。ピアノのほうでも触れましたがミスというのは偶然ではなく必然で起きるものなので、見過ごさず丁寧に練習するクセをつけましょう。

なんて厳しいことばかり書いてしまいましたが、基本的にいい息がたくさん楽器に入っていてホール中に良い音がたくさん響いていました。その音の良さは僕の弟子たちは誰も真似できないくらい素晴らしいものでした。

次お会いするときがあったらまた素敵な演奏を聴かせてください。大人ばかりのなか不安も多かったと思いますが、参加してくれてありがとう。

 

18.2つのファゴットのためのロマンス/ブルッフ

本番のときくらい、きっちり練習したうえで合わせ・レッスンに挑みましょう、もう少し完成した状態でこそ言いたいことはたくさんありました。そこはアンサンブルもソロも一緒ですね。

「全然ちがう演奏がなぜか合う」ということについてお2人は最高の相性といえると思いますし、それこそがファゴット2本の魅力だと僕は考えますので、聴いていて幸せな気持ちになれる演奏でした。課題だったトリルもきれいに入っていてよかったと思います。中音域に対して高音域の鳴りが弱い傾向が2人ともあるので、高音域を太い音で、というのを今後ぜひ身につけていってほしいですね。もっと華やかな演奏ができるとよかった。ピアニストとの絡み方が2人ともとてもよかった。3人で演奏している感、というのは合わせも少ない中よく出ていたと思います。

細かい音はもっと丁寧に並べてほしかった。インテンポに無理やりはめる、というよりは時間を使っていいから息をしっかり入れて並べるだけで印象がずいぶん違ってきます。2本で演奏する箇所なら合っても聴こえます。

再現部直前~再現部が世界で一番うまい演奏だったと思います。(この譜面は2回しか演奏されていませんが)

お2人の演奏、今後も楽しみにしてます。もちろんそれぞれのソロも!

 

19.5つの民謡風小品より1.2.5楽章/シューマン

大ブランク明けでよく演奏しました。練習に関しても、ブランク明けの焦りもあったのか今までより質も量も多く感じましたがどうだったのでしょうか。課題である表現幅も今までと比べてすごく大きくなったと思います。「楽器を鳴らす」いうことについて、今回ずいぶん理解できたと思います。

安定感やピアニストとの噛み合い方は昔から上手でしたが今回のようなピアノ主体の作品でこそその力はよく発揮されていて、安心して聴ける演奏でした。

とは言え、いつか挑むであろう大曲に向けて今の成長ペース、ちょっと心配になります。確実に上手にはなっていますが、等しく自身の理想も高くなっているでしょうから・・・腕前のほうを追いつかせるのは今のペースだと苦労するような気がします。

楽器を触る習慣を増やすというのも含めて、直前に1時間だけでも練習してレッスンに来る、というのを月1回でも続けていく、というのが今できる最善プランだと思いますが、どうでしょうか?ミルデのコンチェルトスタディか、本番機会がなくてもバッハの無伴奏作品は一通り、よく効いてきますよ。

 

20.ファゴットソナタより第1楽章/シュレック

半年以上越しのシュレック、思いを感じる演奏でした。美しい曲想がよく表現できていました。技術的にも安定した演奏だったのでピアニストともよく合っていました。

しかし何といっても鳴りが足りない。きれいな音だけでは音楽の表現はできませんから、もっと楽器が鳴る方法を模索して。素敵な表現ですが幅が狭いのでピアノの音が厚いと埋もれてしまうのが残念でした。楽器の鳴りというのは簡単に得られるものではないですし、慣れも必要です。コントロールも難しくなるでしょう。しかしやはりそれがないとこれ以上の上達は見込めませんのでぜひ挑戦してみて。やり方が分からなければいつでもレッスンしますのでご連絡くださいね。

これは現実でも妄想でもいいのですが、客席にいる全員があなたのファゴットを心待ちにしていて、それに(練習や合わせなどの準備を含めて)あなたが答えようとするような、そんな姿勢に欠けているのかもしれません。最低でも僕は楽しみにしていますしあなたのファゴットが好きな人だってたくさんいるはずですから、その人たちのためにもっと。技術や表現もそうですが、もしかしたら衣装も。もしご自分のテンションを高める結果につながるのであれば気にしてみてください。次回も楽しみにしてます!

 

21.ロマンス/ブルッフ

いい演奏でした。いつも少し力んでしまうところがありますが、今回はきっちり力が演奏に乗っていました。「ない力は抜けない」と僕はよくみんなに言うのですが、力が乗っているからこそ抜ける力があって、メリハリの利いたいい演奏でした。何より熱い思いを感じました。もしかしたら大きいホールでこそ発揮されるタイプの音質なのかもしれませんね。臆せず今のような楽器の鳴りを大切にしてください。

課題があるとすればもっとピアノ(オーケストラ)とのアンサンブルが関係性としてはっきり出てきてほしかったと思いました。ピアニストはよく合わせてくれていましたが、それに応える力がまだなかったか、余力がなかったか、どちらかでした。また全体としてもっと弱奏があってもよかった。小さい音、というよりは暗い音とか沈んだ音とか静かな音とか、色んな呼び名があると思いますがその手の音の引き出しがもっと増えるといいですね。

とにかく文句なしのMVPでした。この曲をこれだけ熱く演奏できるのは今、僕の弟子の中では君くらいのものでしょう。

 

22.三重奏曲/ドゥビエンヌ

はるばる東京(神奈川)までようこそ。Bチューニングは正解だったと思います。レッスンでしつこく指摘した終止の形やタンギングの種類についてはよくできていたと思います。あれだけの指摘でよく理解したな、と感心しながら聴いていました。レッスンの最後で(僕が吹いて)伝えたスピード感についてもずいぶん良くなっていました。3人とも耳と反応がよく僕も教えて本番聴いてすごく楽しかったです。

フルートは音も音楽も素晴らしいのですが、真正面からぶつかるばかりではなく、ひねくれたり仲間に音楽でケンカを売ったりふざけたり誘惑したり、とにかく正直すぎるのでもっと引き出しを増やすといいですね。それでこそ必要になってくる技術がたくさんあると思います。

クラリネットは抜群の伸びしろを見せてくれました。たぶん(楽器の特性上)苦手とする古典の音楽をよくあそこまで理解して演奏できたな、と思います、そこらの音大生よりよっぽど分かって吹いていました。ぜひ新天地でベートーヴェンモーツァルト交響曲をオーケストラで体験してみてください。ドゥビエンヌで殿村にあれこれ言われたのはこーいうことか!と気付きがたくさんあるはず。

ファゴットは相も変わらずと言いますか、好きな奏者と並ぶと本当にいい音を出しますね、それは君の最大の長所であり、今回特に光っていました。が、ここでも「やめグセ」が目立ちました。本当によく練習してきたので食らいつけばもっと吹けたと思うのにやめちゃうから・・・。非常に惜しかったです。ファゴットはソロ楽器ですから、アンサンブルにおいても伴奏系よりも旋律を取るときが本業です。伴奏や合わせるのがうまいのはよくわかったしそれが楽しいのは分かるから、他楽器を食うような腕前を、「好きな奏者」のためにもっと身につけよう。そのためにやるべきことは僕が言わなくてもわかってるはず、ですよね?

MVPでもいいな、と思いましたが期待値がそもそも高かったので・・・でも悩みました。この発表会でも稀にみる良いアンサンブルだったと思います。

 

23.ファゴットソナタより第1楽章/シュレック

第5部は「卒業式」なんて言いましたが、その名に恥じぬ演奏だったと思います。とにかく楽器がよく鳴って、会場いっぱいに響いていました。音列の関係で楽器を鳴らしづらいこの曲でこれができれば、鳴らす技術的に「歌う曲」で困ることはしばらくないんじゃないでしょうか。非常に高水準の演奏でした。

音楽表現も見事でした。「シュレックソナタは名曲だ」と誰もが思ったでしょう。しかしここまで水準が高いと、細かいアンサンブルのズレが気になってきてしまいます。和音が動く瞬間、テンポの変わり目、細かい音の前後が軒並みピアニストとズレてしまうのが非常に惜しかった。余裕がないのもわかりますが、特にソナタものはもっとアンサンブルを意識した練習を。どんな音がピアノから鳴るのか想像しながら練習するだけでだいぶ変わります。合わせが少ない中、よくやったとは思うのですが。ピアノ譜とにらめっこしながら録音を聴いてみると自分がどうアンサンブルを壊してしまったかがわかると思いますのでぜひやってみて。

あと君のいいところは音程の良さです。それは初心者の頃から徹底した運指の丁寧さと練習の誠実さによるところですから、誇っていいと思います。普段オケでどうなのか僕は分かりませんが・・・

まだまだ楽器人生は始まったばかりです。先も長いですから、また一緒に頑張りましょう!バロック系の作品、今やったらぜんぜん世界が違って見えると思いますよ。

 

24.ファゴット協奏曲第1楽章/モーツァルト

これだけのモーツァルト、そこらの音大生でも演奏できません。まして並のアマチュア奏者ではまず不可能な領域で演奏していたこと、僕が認めます。本当に素晴らしかった。君が「別にレッスンが厳しいと感じなかった」くらいですから、モーツァルトの難しさというのは僕が君に普段から言ってることの集大成でしかなかった、とも言えるかもしれません。

レッスンで触れたモーツァルト特有の難しさ、トリルやタンギングなどの技術面はずいぶん高い水準でクリアしていたと思います。モーツァルトの1楽章でよく課題になりがちなスピード感もピアニストのサポートもあってずいぶんよかったと思います。2楽章はまだ違った難しさがありますからいつか挑戦してみてもいいですね。

課題があるとするならカデンツァですね。かなり具体的に指示をしたつもりですが・・・いびつな箇所が多かったです。今後はレチタティーヴォカデンツァを含んだ曲に挑戦し、伴奏のない音楽でしっかり聴かせる技術を身につけるといいでしょう。

 

 

25.ファゴットソナタ/サンサーンス

これだけのサンサーンスを吹けるアマチュア奏者が世界にいったい何人いるのでしょうか。僕は君しか知りません。誇張でも何でもなくそう思いますし、僕は誇りに思います。緊張も気負いもあったと思いますが全く感じさせない演奏でした。ハイEも見事でした。

まず言わなきゃいけないのは楽器のキーの音。ちょっと常識の範囲内を越える大きさで鳴っていますからきっちりメンテナンスをしましょう。きれいな音楽だったのに勿体なかった。

奏法についてあまり触れてこなかったですが、全体的に少し重心が高い印象があります。体の使い方、音程感、音色のイメージなど、もう少し低くダークに取るとよりホールで響く音がするでしょう。

ピアニストとのアンサンブルも抜群でした。この曲は意外にもそれが難しいのですが・・・(前の本番からの)ピアニストの違いにもよく対応していたと思います。ただよく聴いている弊害で2楽章、だんだん停滞した印象もありました。聴いて寄せる、だけではなく、自ら運ぶようなアンサンブルも身につけるとオケや室内楽で生きてくると思います。

 

 

講評は以上です。半年越しの挑戦も多く、今回かなりレベルが高かったような気がします。

繰り返しご案内になりますが、次回発表会は来年3月を予定しております。ファゴットのソロか、アンサンブル(ファゴットを含まなくてもOKです)でのエントリーで、どちらも1回以上僕のレッスンを受けて頂ければどなたでも出演可能です。日程未定ですが決まり次第各所でアナウンスさせていただきます。

春のひとときコンサート(殿村門下発表会)

2021年3月20日(土)お昼ごろ開演

参加費(会場代、ピアニスト謝礼、レッスン1回分謝礼含む)

ファゴットソロ(社会人)15000円

ファゴットソロ(学生)10000円

アンサンブル(1人あたり)6000円

お申込みは下記フォームからどうぞ。

発表会参加・お問い合わせフォーム

 

お待ちしてます~!

この時期に私がリサイタルを開催する、ということについて。想いと思考

こんにちは。ファゴット奏者のとのむぅです。

まず初めに、告知から。告知としてはかなり急なのですが、リサイタルを開催します。

 

殿村和也ファゴットリサイタル~ファゴット吹きのたからもの~
2020年9月6日(日)14:00開演
liveチケット 3000円(全席自由、限定30席予定)
web視聴チケット 2000円 
※web視聴チケットご購入の方は9/9 19時~9/20 19時の間アーカイブ配信もご視聴頂くことができます。
出演
殿村和也(ファゴット
大堀晴津子(ピアノ)
プログラム
ファゴットソナタ/ヒンデミット(live演奏、リアルタイム配信のみ)
ソナタイ短調/テレマンアーカイブ配信のみ)
無伴奏パルティータ/J.S.バッハ
トスカファンタジー/プッチーニ
パガニーニへのオマージュ/三浦真理(ファゴット版初演)
演奏会用小品/ピエルネ
ファゴットソナタ/ケックラン

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9月3日現在、ありがたいことに客席はほとんど満席(某ウィルス対策で大幅に席を減らしております)頂いておりまして、ご興味のある方はweb視聴チケットをご購入頂いてオンラインでご視聴いただければと思います。お申込みはこちら↓

【Web視聴チケット】9月6日 殿村和也ファゴットリサイタル | 音楽ダウンロードはドルチェ・クラシックチャンネル

ドルチェ楽器のweb視聴、それはそれは高画質・高音質でものすごく評判のいいもののようです。こちらのページから視聴テストもできるみたいですのでご確認いただければよく分かると思います↓

https://www.dolce.co.jp/onlineconcert/check/

お申込みお待ちしております。

 

とまぁこれで終わればただの告知・宣伝なわけですが、今、この世の中において私がリサイタルを開催する、ということについて、思考のメモというべきか議事録というべきか。

とにかく想いについて、綴っていきたくて、本番数日前の今日この記事を書いています。

 

まず僕にとってリサイタルの開催はどういうものなのか。

そもそもリサイタルに限らず、木管五重奏やらファゴットアンサンブルやらの自主公演(出演者自身で会場を取り各種事務作業をし広報活動をするコンサートのこと)について僕にとってはライフワークのようなもので、たぶん一生何かしら続けていく音楽活動になると思います。

「こんなメンバーで、こんなプログラムをやったら面白いし、絶対楽しんでもらえるはずだ」という考えは日々頭の中をめぐり、そのために自分の演奏を突き詰めたい、というのが僕にとっての音楽のへの原動力であり、この仕事を続けていく理由の一つであるわけです。

リサイタルは僕の中ではそのうちの1つで、やりたいプログラムが決まると開催を考え始め、場所を取り、共演者を決め、公演に至るわけです。

つまり「自主公演も打たずに何が音楽家か」というのが僕の信条なので、その自主公演にリサイタルが含まれるため、(今のところ)数年に一度の開催となっているわけです。

 

リサイタルが近づくと、いつも僕の思考を支配するもの。

それは「自身の死」についてです。今のところそんな予定はありませんし、重大な疾患などもありません。ですが「これが最期のリサイタルかもしれない」とか「コンサートまでに何かがあれば中止になってしまうのか」とか「これが終わったらどう生きていくんだろうか」とか、とめどもなく「自身の死」についての思考が流れては消えていき、ある意味で正気を失っていくような、そんな日々を過ごしています。

ただ決してネガティブな感情で考えているわけではない、というのは明言しておきたい。僕にとって音楽は仕事ですから、仕事を理由に死んでしまう、なんて悲しい人生送りたくはないのです。しかし僕にとって音楽は「仕事」ですが、音楽家にとって奏でる音楽は「生き様」のようなものです。その「生き様」をたくさんの方々に2時間弱聴いて頂くというリサイタルの準備期間は、それはそれは色々な想いが頭をめぐるわけです。

 

「自身の死」について考えることは、決してネガティブな感情ではないと、今は思うようになりました。「自身の死」について考えるということは、「自身の生」について考えること、だと思います。

 

今回のプログラムについても、少し触れておきましょうか。曲目解説については今の時代、いくらでも情報探せば出てきますので基本的に割愛していきます。紹介する順番はプログラム順とは関係ありません。

ヒンデミットファゴットソナタファゴット奏者にとって重要レパートリーの1つであるにも関わらず、意外にも演奏される機会の少ない作品です。僕はこの曲を初めて聴いたとき、ちっともいい曲だとは思いませんでした。2楽章の冒頭が、まぁ綺麗かな、くらいのイメージ。しかしこの作品、やればやるど、知れば知るほど面白く完成度が非常に高いものになっています。ファゴットの性能を「あますところなく」使い切るような曲で、今回のコンサートの1曲目に選びました。

ピエルネの演奏会用小品もやはり重要レパートリーの1つだと思います。ファゴットの作品としては(珍しく?)聴き映えもしますしピアノパートも見せ場が多いのですが、僕はヒンデミットと同じく、あまりこの曲が好きではありませんでした。ですが各所でこの曲に触れるたび魅力に気が付くことができ、去年夏に聴いたとあるファゴット奏者(https://kaspar2019.blog.ss-blog.jp/)のリサイタルで聴き、次はこれをやろう、と決めたのでした。

メイン曲として取り上げたケックランのファゴットソナタ。もうそれはそれは難しい作品です。いいえ指や舌ではなくて。16歳でファゴットに触れ始め18歳から本格的な勉強をし24歳で音大を卒業し、今年33歳になる僕が「そろそろケックランがいい感じに演奏できるんじゃないか」という慢心から取り上げた次第であります。さてどんな風に聴こえるでしょうか・・・?ケックランは天文学者を志すが20歳で病気になり、療養中に独学で学び始めた和声学をもとに音楽家としての活動を始め、ピアノや声楽を中心にたくさんの作品を世に残した作曲家です。またオーケストラ編曲家としての顔も持っていたようで、ピアノの作品にもオーケストラのような色彩感が表れているなと個人的には思うのです。美しい作品に自分のファゴットが追い付かない。非常に悔しくもあり、また、これほど探求していくのが面白い作品がほかにあるだろうか・・・?と、面白くてしょうがない、という思いもあり、ケックランに取り組む時間は僕にとって「たからもの」のようなものだったりするわけです。

 

三浦真理さん作曲の「パガニーニへのオマージュ」は、元々フルートとピアノ用に書かれた作品です。ファゴット版の楽譜が今年の冬発売します。(詳しくはこちら→https://www.gakufu.co.jp/ )

 そのファゴット版初演を今回のリサイタルでさせて頂きます。三浦真理さんには、フルートアンサンブル曲である「思い出は銀の笛」を僕がはじめて聴いたとき、これはファゴットでやっても絶対面白いはずだ!と思い、数年前に演奏する機会があり許諾のため連絡させて頂いて以来、色々な面でお世話になっています。出版されてないものも多いですが、実は三浦真理さんはファゴットアンサンブル作品もたくさん書かれているため憧れの存在だったため、まさか(ファゴット版)初演をさせて頂ける機会があるとは・・・!演奏者として、これほど嬉しいこと、なかなかないものです。

トスカファンタジーはサックス用に出版されている楽譜を演奏します。僕は歌劇というジャンルの魅力に取りつかれて音楽家の道を志したのですが、このトスカという作品はとにかく儚く悲しい話ですがそんなところも含めて大好きなのです。とある場所でこのトスカファンタジーに触れ、これはファゴットでやったろう、と思ったわけです。今回のプログラム、なんというか変化球を投げるような表現が多く(ヒンデミット、ケックラン等)この曲は僕が全力ストレートをたくさん投げます。しかし僕はたぶん、奏者としては軟投派なため、どう聴こえることやら・・・。

J.S.バッハ作曲の無伴奏パルティータはフルートのための作品ですが、ファゴット演奏用の楽譜も出版されています。数年前のリサイタルで「バッハの無伴奏」は取り上げたのですが、それはそれは体力的にきつく、二度とやるもんか、と思っていたのですが、おっかしいなぁ・・・。きつかったのですが、やはりというべきか、お客様の一部に「バッハが一番よかったよ」とお声かけ頂いたのは取り上げた理由の一つではあります。また「ファゴットリサイタル」である以上、少しくらいは(実はプログラム中最も長尺がこの曲だったりしますが)まじりっけなしのファゴットの音を聴いてもらおうじゃないか、と思うところもあります。

 

書き終わってみればプログラムについてばっかりの記事でした。でもなかなか曲への想いについて語れることは少ないので、いい機会かな、と思って。

 

もともとあまり日本語が上手くない人間が、しかも「想いと思考」なんてタイトルにしてしまったものだから、読みづらく荒い文章だなと自分でも思うのですが。書き留めて頭の中を整理する、ということには成功しました。自己満足で申し訳ありません。

 

重ねてのご案内になりますが、web視聴チケットに関してはまだまだ受け付けています。web視聴チケットでしたら当日ご都合悪い方も、9/9の19時~9/20の19時の期間はアーカイブ配信(動画視聴)でご視聴頂くことができます。ご興味ある方はぜひよろしくお願い致します。お申込みはこちらから↓

dolce-classic-ch.com

 

ほんと、あと数日かぁ・・・。


第18回門下発表会でした。講評と発表会開催への想いについて

お久しぶりです。

第17回が抜けてるぞ、とか、久しぶりの発表会ですね、とか、このブログまだあったんですね、とか、色々言われそうですが・・・。

第17回は間際まで開催の方向で動いていましたがやむなく中止となりました。ある意味、それを忘れないためにも今回の発表会は第18回としました。

第18回の発表会は某ウィルス対策として、リスクを最低限にするため会場にお客様は入れずオンライン配信(これについては後述)を行い、またピアニストも呼ばず無伴奏もしくはエチュードのみ、またアンサンブルのエントリーはお断りし、稀にみる小規模開催となりました。参加者は7名。また僕の親しい同業を何人かお招きし、演奏もして頂きいました(ゲスト、という扱いにはできませんでしたが・・・)

参加者の中には某ウィルス禍以前と変わらないペースで練習を続けている人も多く、緊急事態宣言後、すぐにレッスン開始(できうる限りの感染拡大対策は行っています)し、着々と力をつけていることに僕は先生として感動を覚えるばかりでした。僕は練習は本番のためにすればいい、レッスンはその成果をより実践的に仕上げるもの、という考えを持っているのですが、生徒たちの方がよっぽど意識も行動もハイレベルでした。脱帽。

 

このブログでも何度か書いているとは思いますし公言もしているのですが、この門下発表会は「普段オケや吹奏楽などで練習している楽譜よりもずっと難しく、しかもすべての音が客席にダイレクトに聴こえる(いわゆる)ソロ曲を演奏する機会を作ればいっぱい練習するし手っ取り早く上手になるはず」というコンセプトのもと行われており、ほとんどの人があらゆる演奏機会を失ってしまった今、どうなってしまうのか、と思ってはいたのですが・・・。僕自身がアレコレ考える以前に、ある人は日々練習を重ねレベルアップするため、ある人はブランクを取り戻すため、「来るべき日」に向けて力をつける手段として存在していければいい、と、そう身に沁みました。

できうる限りの対策を取ったうえで、次回以降また、開催していければいいなと思っております。日時場所など未定ですが、決まり次第このブログでもご案内していこうと思います。

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ここからは第18回発表会の講評記事となりますので、出演者以外の方は読み飛ばしを推奨いたします。

 

1.無伴奏パルティータよりアルマンド/J.S.バッハ

技術的な成長をすごく感じました、無伴奏曲を聴いていて安心できる、というのはすごいことだと思います。

出だしつまづくことが多かったのは、ある種無伴奏特有の概念なのですがピアノ合わせがないため、練習にリアリティがなく本番を想定したイメージトレーニングが足りなかったためだと思います。慣れてからは安定感抜群だったので、そこは今後の課題としていきましょう。

音の濃淡もよく表現できていたと思います。誰もが苦戦するところをよく表現できていたのですが、その分、と言いますか、本来そちらの方が簡単はなずなのですが全体の抑揚そのものが足りませんでした、山をいくつか設定し、そこまでしっかり音量の変化を持っていく、等の工夫があればもっとよかったのではないでしょうか。落ち着いた演奏ではあるのですが、心が震える、という領域には一歩、届かない印象でした。技術的には、普段からもっとフォルテ、フォルテ、フォルテ、で音を出しましょう。きれいな音はフォルテがあってこそ活きるものです。

 

2.無伴奏チェロ組曲第1番よりアルマンドジーグ/J.S.バッハ

文句なしMVP。アルマンド、最後のレッスンより本番の方が良かったと思います。

流れを作るのがとにかく上手く、「そうそうこーいう曲なのよこれ」と思って聴ける演奏でした。また楽器のポテンシャルが高い故に難しい音の濃淡もよく表現できていました。その楽器でそれだけ淡い音がコントロールできれば、人と(ピアニストと)演奏した時より表現の幅が広がるはず。感覚として忘れないでいてほしいと思います。

あまりレッスンで触れる余裕がなかったこともありましたが、もう少しアゴーギグがあってもよかった。表現についてはそこが唯一気になるところでした。

技術的には、音楽のピークかつ中音域以上において、気を抜くと音程が許容できる範囲以上にぶら下がってしまうこと。ぶら下がったフォルテはある意味気持ちいいものですが度を越えてしまうと・・・・。フォルテで音程がぶら下がる傾向は楽器がよく鳴っている証拠でもある(と書いてしまうとどうかと思いますが、少なくとも逆はあまりないです)のですが、そこから先はいかに自分を冷静にコントロールできるか、という領域なのかもしれません。

ジーグは色々と届かず。それを差し引いても今回いちばんいい演奏でした。今回をいい踏み台にできますように!

 

3.ワイセンボーン2巻より44番

何度でも言いますが本当によくこんなややこしい曲を持ってきました。少人数ながら色んな(メーカーの)楽器や技術の人が集まった回ですが、ダイナミクスレンジの広さが本当にずば抜けていました。発音と楽器の鳴りを合わせるのがとても上手くなったと思います。

以前はもっと荒い演奏が目立つところがありましたが、ある意味こんな状況下だからこそ自分のファゴットによく向き合えたためかいい意味で落ち着いた印象も感じました。また音程もすごくよくなってきました、次オケに乗る機会があったら、きっと自分の進歩に気付くはず。

色々褒めましたが今回の演奏で一番いいなと思ったのは、テンポ変化だったり曲想の変わるところでの雰囲気づくりの旨さです。つくりたい世界観を1音目(もしくはその直前のブレス)でしっかり見せてくれるので、変奏をより楽しめる演奏になっていたなと思いました。

この繊細さや表現力、ぜひキープして!次回も楽しみにしています。

 

4.無伴奏パルティータよりアルマンド/J.S.バッハ

今回は枠が余ることが想定できたため、数人ファゴット以外の方にもお声かけしました。結果この人だけ出演となりました。でもすごく楽しんで準備してきてくれたようで、また紹介した先生のとの相性もすごくよかったんじゃないかなと思います、ぜひ今後もたまにでいいから通って成長していってほしい。

演奏自体の講評は先生から聞いてもらえればいいと思います、が、僕なりに少し。

バロック作品のキモはバスの音です。楽器の性質上難しいのかもしれませんが、もっとバスの音による音楽の支配が欲しかった。それがないので、悪い意味でフワフワした印象になってしまいます。音楽の流れ自体はよく作られているからこそそこが惜しかったなぁ、と思いました。

次回はアンサンブルでぜひ!またご案内します。

 

5.無伴奏チェロ組曲第3番よりブーレ1/J.S.バッハ

オンラインレッスン1回のみでよく仕上げてきた、と思います。対面でなくこの手の曲のアレコレを伝えるのも難しければ受け取るのも難しかったと思うのですが、そこは持ち前のセンスと勤勉さが良く発揮されていたなと思います、さすが。

ハツラツとした曲なので出だしの印象が抜群にいいのですが、ブレス明けがすべて元気いっぱい出てきてしまうので、ブレスを取る、発音の準備をする、柔らかく発音する、の3ステップの技術を今一度見直して。またよく鳴るいい(新しい?)リードは気持ちいいですが、音程が下方向に散ることも多いです、そこは冷静に見直して。

ある意味、ブーレ2も取り組んでいれば1に活かせることが多かった気もしますね・・・・。次回は繊細な表現とダイナミックな表現、どちらもあるような曲に挑戦できれば、幅が広がっていいんじゃないかと思います。

とはいえこの状況下、よく挑戦してくれました。ありがとう。

 

6.無伴奏パルティータよりアルマンド/J.S.バッハ

満を持して登場、という印象、なのは僕が組んだ曲順のせいでしょうか。笑

別の人への講評にも書いていますが、出だしのトラブル多発は、ピアノ合わせのない無伴奏本番にありがちで、本番へのイメージが足りないまま本番に来てしまうとありがちです。目をつぶり本番会場をイメージし吹き始める、というイメージトレーニングは、この手の曲を演奏するうえで絶対に必要なことかなと思います。

この曲が(全員違う調で!)3人いる中、もっともよく理解し噛み砕き洗練された演奏だったと思います。聴きどころも多く表現力もとっても豊かでした。特に高音域の伸びの良さが素晴らしかったと思います、宝物にしていってください。

アゴーギグも大変すばらしかったのですが、伸び縮みで表現するなら少し縮み過ぎで、伸びがもっとあってもよかったかもしれません。もしくは伸び方に問題がありました。それゆえ慌てて聴こえてしまう箇所が少しあったのが惜しかったのですが、それは攻めた演奏だったのでもう一息練りがあればうまく昇華されていたんじゃないかなと思います。

いつもと少し様相の違う門下発表会ではありましたが、今後もよかったらぜひエントリーしてください!お待ちしてます。

 

0.ワイセンボーン2巻より25番

オンライン参加。

大変精度の高い演奏だったと思います。ブレスの差し込み方なんかも大変うまく、よく練習したと思います。そして親指の使い方がよくないとここまで綺麗なオクターブ跳躍もできないですから、丁寧な練習の成果ですね。

元々音楽的な内容が薄い曲だかこそ、強弱の表現はもっとこだわっても良かった。変わってないとまでは言いませんが、pの表現に限界のあるパッセージですからもっとfを強く。多少荒くても良かったかもしれません。最後2小節はfで終わる、というのも、ちょっと伝わってこなかった。そこが惜しいところでした。

こんなご時世になるとは、と誰もが思ってるところでしょうが、色々苦労も多いかと思いますが、この会は僕がこの仕事を続けてる限りやり続けますので、今度は直接演奏を聴けるの、楽しみにしてます!

 

0.ワイセンボーン1巻よりes-moll

オンライン参加2人目。

録音での参加なのに多方面で後日話題になりまくったのはこの演奏でした。本人以外のために先に言っておくとこの彼は「エチュードで参加しますが、曲はレッスンの進み具合で決めます!」と、ある意味すごくストイックにレッスンに通い続け、(よりにもよって)この曲になった、という事情です。

嫌な調性であることはもちろん、アンダンテで付点のリズムを演奏し続ける、というのは体にちゃんとリズムが入っていないと難しく、また慣れない音列も多く音程が取り辛く、そして最後に出てくる突然のシャープ系でより絶望する、という嫌な曲のはずなのに・・・いい意味でどの難しさも感じさせない名演でした、このクオリティでこの曲が吹けるアマチュア奏者が世の中に一体何人いるでしょうか(言い過ぎ?)

褒めるのは誰でもできるので、先生らしいことを言いましょうか。付点のリズムにおいてフリックキーは生命線です。ほとんどうまくいっていますがオケ中だともっと難しい音列も多く、テンポが速いこともあります。フリックを逃すことのないよう、もっと4親指の練習に時間を使ってほしかった。また高音域はもっと的確に狙えるように。口が閉まると上のGesはあたりづらくなってしまいます。あと最後の1段は本当にうまかったと思います、この感覚を忘れる事のないように!

 

 

※「オンライン参加」について

今回、無観客でオンライン配信の予定だったのだが、会場からオンライン配信NGとのお達しがあったため、録った録音をリアルタイムでアップロードしていき、そのアップロード先のドライブを観客希望の人と共有する、という形を取りました。オンライン参加の2人は本番の数日前まで参加する予定だったしレッスンも受けていたのだが諸々の事情で参加が叶わなくなってしまったため、当日みんなの本番が終わるまでに録音を送ってもらい、ドライブ上において参加する、という形式を取ることができました。

 

僕がレッスンでビブラートとハイトーンの出し方を教えたがらない理由

どうでもいいけどタイトルを〇〇つの理由にすると怪しいブログみたいですよね。笑 伝える人いるかな。

 

お久しぶりです、ファゴット奏者のとのむぅです。ブログの更新怠っていてすみません。実は下書きくらいまではいくつか書いてるんですがなかなかまとめるのが得意ではなくて。

気長にお待ちください。

 

さてタイトルについて。僕はファゴットの個人レッスンについて、ビブラートについてほとんど触れません。触れるとしたら「そのビブラートはかけない方がいい」という指示が殆どです。もちろん人や演奏によるのですが・・・。定期的に通ってくれてる人に時にはビブラート禁止令まで出したりします。これはビブラートによって本来の音色や音程を見失っている場合、期間付きで設けるもので、正直な話、僕の前以外でいくらかけてようと知りようがないので、あとは本人次第、といったところでしょうか。

ビブラートは奏法として大変効果が高いものですし、表現力(特に強弱の幅について)に乏しいファゴットを演奏する者にとっては本来ぜったいに必要なものですし、きちんと使っている子に「かけない方がいい」なんて言い方は絶対にしませんし、僕自身、ビブラートのかかった演奏は好きですし僕自身もたくさん用います。

そういえば僕のことを直接知らず、かつTwitter等でも関わりのない方でこのブログを読んでくださってる方(そんな方がいるのでしょうか)がいたら説得力に欠けるでしょうか・・・?

宣伝になってしまいますが、2月半ばごろからYouTubeに毎日投稿を始めました。「まいにちファゴット」と称して1分程度の演奏動画を毎日投稿してます。途切れたら「ほぼまいにちファゴット」に変わります。笑 いつまで続くか分かりませんけど、もし興味があればいろいろ聴いてみてください。

こんな感じです。個人的にはお気に入り。

youtu.be

チャンネルこちら↓

https://www.youtube.com/channel/UCb2c8vaSridkXUdPTn91J1Q

さて上の動画を聴いてもらえれば分かると思いますが僕はビブラートをしっかり多用します。生徒さんにお手本を聴かせる時も同様です。

それでもレッスンで、あまりビブラートの使用を勧めることはしません。これには大したことではありませんが、僕なりには理由があるんです。

 

僕は高校1年生の秋ごろ、部活でファゴットをはじめました。万年銅賞でもなければ強豪でもないような、そんな部活だったのでほとんどの楽器に「講師のセンセイ」がたまに来る環境の中、なぜかファゴットには来てもらえませんでした。僕はファゴット初日、わりと本気で、リードを糸の方から吹いてみるくらい、「ファゴットの吹きかた」が分からなかったんですよね。他の楽器経験すらほとんどなかった僕は楽譜も読めず、奏法は独学、何か月たっても周りが驚くほど成長せず、それでもがむしゃらに練習をする高校生でした。

その後そんな僕を見かねた顧問の先生がOBの方を呼んでくださったり、最終的にはひょんな事からこの道に進むきっかけとなる1人目の師匠である太田茂先生に出会い、1年後には音楽大学を受験します。その話はまたそのうちに。

つまり僕にとってファゴットは独学ではちっとも上達しなかったんですね。レッスンに通うようになって師匠に「僕はこんなことまで君に教えなきゃいけないのか・・・」とぼやかれるくらいに何も知らないまま1年以上独学で演奏していました。どのくらい下手だったか、というのは言葉で説明できるものではないですが・・・。部活顧問の先生が県内で有名な上手な中学生を紹介してくれて、その中学生が僕の演奏を聴いて「えっ恥ずかしくないんですかそんな演奏で?」と半笑で言ってくれるくらい、下手でした。ちなみにその中学生とは大人になり再会し、彼はその時の非礼を詫びてくれ、今ではいい友人となっています。独学時代の僕は、とにかく、下手だったんです。

 

ところで僕は近ごろ、「ファゴットの生徒がやたらと沢山いる人」という評価を思った以上に多くに人に頂いています。同時に「なぜそんなに生徒がいるのか」という質問も受けます。僕のレッスンは何も特殊じゃないと思うのですが、一つ気づいたのは

「僕は誰よりも下手だったから、なぜ「できない」かがよく分かる」

からだと思います。だからレッスンに来た方の悩みもすぐわかるし、解決策も与えることができます。

だから「褒めてほしい」「レッスンで楽しく吹きたい」という方には、もしかしたら合わないのかもしれません。色々な方がレッスンに来てくださっていますが、全員が何度も来てくださるわけでは、もちろんないわけですから。当たり前のことだと思ってます。

 

僕は誰よりも下手だったけど、決して勤勉な学生でもありませんでした。だから練習も好きじゃなかったし、今も人より練習時間は少ないと思います。

だから練習時間を取れなかった生徒さんを叱るような事も絶対にしません。昔の僕は「下手だし練習もたくさんしない人」だったわけですからね。

 

そんな僕でもやり方は間違っていたのでしょうがビブラートはかけることができたんですよね。もちろん独学ですから「それらしいもの」だったわけで、レッスンで厳しく指導を受けて今の状態なわけですが。

またハイトーン(春祭冒頭のCより上)の吹きかたも教え方がよく分かりません。僕は大学時代、曲がうまく吹けてないくせにハイEだけはポンッと出す人でした。僕はその昔ハイトーンだけは得意だったんですね、あまり名誉なことではありませんが・・・・

ビブラートは「これは絶対にビブラートを用いる必要がある」時以外教えようとしません。もちろん生徒さんが望めば教えますが・・・。ハイトーンももちろん教えますが、運指とリードやボーカルの事を伝えてそれきり(実際それでみんな出るんですけど)

 

だから僕は、自分は昔、何もかもできなかったので、そのおかげで生徒さんが「なぜできないか」が手に取るようにわかります。だから解決策がすぐ浮かびますが、ビブラートとハイトーンは「すぐできてしまった」ので悩んだ経験が少ないため教えるのがあまり得意ではない、というわけです。もちろん、得意ではありませんが、ノウハウはありますから、大丈夫です、たぶん。気になる方はレッスンを受けてみてご判断ください。笑

 

 

うーん伝わるんでしょうか、この文章。ブログって難しいですね。

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また近いうちに更新できたらいいな。